説明

通気管カバー

【課題】屋上スラブ上に設置された鉛直通気管と水平通気管との連結部を短時間に簡単にカバーすることができ、外部からの衝撃から連結部を保護することでき、かつ美観に優れた通気管カバーを提供する。
【解決手段】下面と水平通気管14b側が開口している接頭四角錐形の中空本体16と、中空本体16の水平通気管14b側の開口を塞ぐ上下のフロントパネル17a,17bとを備え、中空本体16は、エルボ14cに下端が固定される鉛直ボルト18aを通す貫通穴と、水平通気管14b側に水平に突出して設けられた複数の水平ボルト18bとを有しており、上下のフロントパネルはそれぞれ水平ボルト18bが遊動可能に貫通するルーズ孔18dを有しており、中空本体16は、鉛直ボルト18aと螺合する第1ナット20aで屋上スラブ1上に固定され、上下のフロントパネルは、水平ボルト18bと螺合する第2ナット20bで中空本体16に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上スラブを通して排水立て管の上部に外気を取り入れる屋上通気装置についての通気管カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やビルなどの高層建築における排水立て管は、その内部を雑排水がスムースに流下するために、その上部に外気を取り入れる必要がある。
そのため、一般的に、排水立て管の上部に連結された鉛直中空の通気管と、この通気管を外気に連通させて外気を取り入れる外気導入部とが設けられている。
かかる外気導入部の例として、例えば、以下の特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4492948号公報、「屋上通気装置とその設置方法」
【特許文献2】特開平7−139144号公報、「屋上床貫通孔の上屋の施工方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている外気導入部は、鉛直中空の通気管を用いているため、先端部が屋上から突出することになる。
そのため、屋上から突出した部分についてはこれを保護部材で覆うことによって外気等から保護する構造になっている。
【0005】
ここで、例えば、上記通気管が突出した場所が、ルーフバルコニー等のように住戸の一部として使用している場所である場合、通気管の周囲を住民が行き来するため、臭気等の問題が生じる。
そのため、かかる場合においては、エルボ等を用いることによって、通気管の方向を調整した上で、住民に生活に影響が出ない場所まで、通気管を延長させることによって臭気を逃がす必要がある。
【0006】
しかし、エルボ等によって向きが途中で変更される通気管の場合には、特許文献1に記載されているような保護部材を用いることができない。
また、住民が行き来するルーフバルコニー等に上記外気導入部を設置した場合、ボルト等の鋭利な部分が外部に露出しているために、住民に対する安全性の観点から問題が生じる場合がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載の外気導入部は、保護部材の横に通気ダクトを設けつことによって、ある程度臭気等を逃がすための対策が採られている。
しかし、かかる保護部材を設置するために下地フレームを組む必要があり、さらに、パネルをネジ止めするための部材点数が多く、組立作業が煩雑で手間が係るという問題点があった。
この点、特に外気導入部を住戸の一部であるルーフバルコニー等に設置するものであることを考慮すると、設置に長期間を確保することが難しい場合があるため、設置工数を可能な限り少ない構造であることが求められていた。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するために創案したものである。すなわち、本発明の目的は、屋上スラブ上に設置された鉛直通気管と水平通気管との連結部を短時間に簡単にカバーすることができ、雨水、異物や小動物等が侵入しにくく、外部からの衝撃から連結部を保護することでき、かつ美観に優れた通気管カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、屋上スラブを鉛直に貫通する鉛直通気管と屋上スラブ上において水平に設置された水平通気管とをエルボによって連結した連結部を保護する通気管カバーであって、
間隔を隔てて連結部を覆い、下面と水平通気管側が開口している接頭四角錐形の中空本体と、
水平通気管を囲む半円形切欠部をそれぞれ有し、中空本体の水平通気管側の開口を塞ぐ上下のフロントパネルとを備え、
前記中空本体は、エルボに下端が固定され鉛直上方に延びる鉛直ボルトを通す貫通穴と、水平通気管側に水平に突出して設けられた複数の水平ボルトとを有しており、
前記上下のフロントパネルはそれぞれ前記水平ボルトが遊動可能に貫通するルーズ孔を有しており、
前記中空本体は、前記鉛直ボルトと螺合する第1ナットで屋上スラブ上に固定され、
前記上下のフロントパネルは、前記水平ボルトと螺合する第2ナットで中空本体に固定される、ことを特徴とする通気管カバー。
【0010】
また、本発明によれば、前記ナットは、前記中空本体又は前記フロントパネルと同じ材質からなり、かつ、前記ルーズ孔よりも大きい径を有している。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の構成によれば、間隔を隔てて連結部を覆い、下面と水平通気管側が開口している接頭四角錐形の中空本体と、水平通気管を囲む半円形切欠部をそれぞれ有し、中空本体の水平通気管側の開口を塞ぐ上下のフロントパネルとを有することによって、屋上スラブ上に設置された鉛直通気管と水平通気管との連結部を短時間に簡単にカバーし、かつ、外部からの衝撃から連結部を保護することが可能になる。
【0012】
また、中空本体を鉛直ボルトと螺合するナットによって、屋上スラブ上に固定することによって、接合部の隙間が小さく異物や小動物の侵入を防止することができる。
【0013】
さらに、ナットの材質が、中空本体又は前記フロントパネルと同じ材質であるため、全体として美観に優れている。

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の通気管カバーの断面図である。
【図2】本発明の通気管カバーの斜視図である。
【図3】本発明の通気管カバーの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の通気管カバーの斜視図であり、図2は、本発明の通気管カバーの斜視図、図3は、本発明の通気管カバーの正面図である。
この図において、1は屋上スラブ、2は目地材、3は防水シート、10は通気カバー、14は通気管、16は中空本体、17a,17bはフロントパネル、18aは鉛直ボルト、18bは水平ボルト、18cは接続金物、20aは第1ナット、20bは第2ナットである。
【0017】
屋上スラブ1は、屋上の床において面に垂直な荷重を支える板である。本発明における屋上スラブ1は、住戸の一部として機能するルーフバルコニー等を想定しているため、住民の行き来が可能な場所に位置している。
【0018】
目地材2は、屋上スラブ1と後述する通気管14との間に位置している。
屋上スラブ1がコンクリート製である場合に、日光等による熱を吸収することによって体積が膨張することが考えられるため、かかる場合に屋上スラブ1からの圧迫によって通気管14が破損することを防止する。
なお、かかる目地材2は、通気管14に対して熱を吸収した屋上スラブ1から熱が伝わることを防ぐために、断熱材としても機能させる構造であってもよい。かかる場合には、目地材2は、ポリエチレン等からなる場合が望ましい。
【0019】
防水シート3は、雨水や虫等が通気管カバー10内に入り込んだ場合に、通気管14内への侵入を防ぐためのものである。
【0020】
通気管14は、鉛直通気管14a、水平通気管14b及びエルボ14cからなる。
鉛直通気管14aは、この例では鉛直直管であり、両端が軸線に垂直に切断されそれぞれ開口しており、その上端が屋上スラブ1より所定の長さだけ上方に突出すように設定される。
なお、上記所定の長さについて必要に応じて任意に設定することができるように設計されているものであってもよい。
水平通気管14bは、この例では鉛直直管であり、屋上スラブ1に対して水平に設置されており、鉛直通気管14aと90度の角度ともって、エルボ14cによって接続されている。
この例においては、水平通気管14bは直管であるが、鉛直通気管14a方向からの臭気を逃がすことができれば、例えば、途中で湾曲しているものであってもよい。
鉛直通気管14a及び水平通気管14bの材質は、好ましくは硬質プラスチック(例えば、塩化ビニール樹脂)であるが、アルミニウム、銅合金等の耐食性金属であってもよい。
エルボ14cは、鉛直通気管14aと水平通気管14bを所定の角度を持って連結するものである。
エルボの材質は、好ましくは硬質プラスチック(例えば、塩化ビニール樹脂)であるが、アルミニウム、銅合金等の耐食性金属であってもよい。
【0021】
中空本体16は、通気管14を覆うための部材であり、通気管カバー10を主要構成部である。水平通気管14bを横引きする方向の面が開放されており、全体として逆さ容器形状を有している。
中空本体16は、繊維強化セメント(GRC)で形成されているため、各面の厚さを薄く設計することが可能になり、さらに耐火性、耐候性に優れているというメリットを有している。
なお、屋上スラブ1と中空本体16の間は、硬質ゴムからなる固定部材19によって固定されているが、固定部材19によって完全に密閉されている必要はなく、中空本体16を屋上スラブ1に固定するために必要な程度だけ固定部材19を用いる構造であってもよい。
【0022】
フロントパネル17a,17bは、それぞれ分離して中空本体16に対して脱着可能になっている。
フロントパネル17a,17bは、中空本体16に設置した場合において、水平通気管14bを貫通させる貫通孔(図示しない)を有している。なお、中空本体16からそれぞれ分離して取り外した場合には、貫通孔について2分割した半円をそれぞれ含む形で分離される構造になっている。
かかる構造を有することによって、水平通気管14bに対してフロントパネル17a,17bを挟み込む形で、中空本体16に取り付けることが可能になる。そのため、水平通気管14bの長さに依存することなく、中空本体16に近い位置で取り付けることが可能になるというメリットを有している。
なお、フロントパネル17a,17bについても、中空本体16と同様に繊維強化セメント(GRC)で形成されている。
また、フロントパネル17a,17bは、突合せ部においてZ型に嵌合する形状を有しているため、2枚のフロントパネルの横ズレを防止する構成になっている。
【0023】
鉛直ボルト18aは、エルボ14cと中空本体16の上端部とを接続金物18cによって接続するための部材である。
また、水平ボルト18bは、フロントパネル17a,17bと中空本体16とを接続するための部材である。
接続金物18cは、例えば、水平通気管14aの上端に対して直径方向に跨いで水平に延び、その中間部に鉛直な雌ネジ部を有し、両端部にビス孔を有する形状であってよい。
また、接続金物18cは、この例においては、エルボ14cにおいて固定されているが、水平通気管14aにおいて固定する構造であってよい。
【0024】
第1ナット20aは、鉛直ボルト18aが中空本体16の上端部から突出した部分について覆いながら締めるための部材であり、第2ナット20bは、水平ボルト18bがフロントパネル17a,17bから突出した部分について覆いながら締めるための部材である。
第1ナット20a及び第2ナット20bは、中空本体16及びフロントパネル17a,17bと同様に繊維強化セメント(GRC)で形成されており、さらに、取付け位置についての微調整を可能にするために中空本体16及びフロントパネル17a,17bに開けられたいわゆるルーズ孔よりも大きい径を有しているため、外観上、材質の統一感を有している。
また、本発明が、住民が行き来するルーフバルコニー等によって用いられることを考慮すると、かかる構造を有していることによって、ネジ止め等された場合と比較してけが等を防止することによる安全性を担保することができるというメリットを有している。
【0025】
さらに、従来の通気管カバーと比較して、横引き管取出し開口面以外を一体的なカバーからなる中空本体16を採用し、当該開口を2枚のフロントパネル17a,17bで覆う構造としたため、部材点数を少なく抑えることが可能になり、施工が容易になるというメリットを有している。
【0026】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0027】
1 屋上スラブ、2 目地材、3 防水シート、
10 通気管カバー、14 通気管、
14a 鉛直通気管、14b 水平通気管、14c エルボ、
16 中空本体、17a,17b フロントパネル、
18a 鉛直ボルト、18b 水平ボルト、
18c 金属金物、18d,18e ルーズ孔、
19 固定部材、20a 第1ナット、20b 第2ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋上スラブを鉛直に貫通する鉛直通気管と屋上スラブ上において水平に設置された水平通気管とをエルボによって連結した連結部を保護する通気管カバーであって、
間隔を隔てて連結部を覆い、下面と水平通気管側が開口している接頭四角錐形の中空本体と、
水平通気管を囲む半円形切欠部をそれぞれ有し、中空本体の水平通気管側の開口を塞ぐ上下のフロントパネルとを備え、
前記中空本体は、エルボに下端が固定され鉛直上方に延びる鉛直ボルトを通す貫通穴と、水平通気管側に水平に突出して設けられた複数の水平ボルトとを有しており、
前記上下のフロントパネルはそれぞれ前記水平ボルトが遊動可能に貫通するルーズ孔を有しており、
前記中空本体は、前記鉛直ボルトと螺合する第1ナットで屋上スラブ上に固定され、
前記上下のフロントパネルは、前記水平ボルトと螺合する第2ナットで中空本体に固定される、ことを特徴とする通気管カバー。
【請求項2】
前記ナットは、前記中空本体又は前記フロントパネルと同じ材質からなり、かつ、前記ルーズ孔よりも大きい径を有している、ことを特徴とする通気管カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−24004(P2013−24004A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163012(P2011−163012)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)