説明

通話のためのネットワークを選択するプログラム、携帯端末及び方法

【課題】ユーザが意図的に起動させようとしなくても、無線LANを介したインターネット網を利用する通話発信をすべきか、携帯電話網を利用する通話発信をすべきかを自動的に選択して、通話発信を行うプログラム、携帯端末及び方法を提供する。
【解決手段】無線LANを経由したインターネット網の通話と、携帯電話網を利用した通話とで、共通のインターフェースにより、携帯端末10の発呼入力部30が、ユーザからの発呼操作を受付ける。そして、無線LANの電波状態を判断し、無線LANの電波状態が良好であると判断した場合であって、かつ、携帯端末10が移動していないと判断した場合は、無線LANを介してインターネット網を利用した発呼処理を実行するが、無線LANの電波状態が良好でないと判断した場合には、携帯電話網(3G)の発呼処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通話のためのネットワークを選択するプログラム、携帯端末及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末として、スマートフォンの普及により、無線LANを介してインターネット網を利用した通話が一般的になってきている。例えば、非特許文献1に示すように、IP電話用のアプリケーションを使用すると、携帯端末から発信した場合に、通話料が無料で通話を行うことが可能である。
【0003】
また、このような携帯端末では、従来より、この無線LANのインターネット網とは別に、第3世代移動通信システム等の携帯電話網を利用することで、通常の通話を行うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】スカイプ・テクノロジー社、“Skype”、[online]、[平成22年10月6日検索]、インターネット<URL:http://www.skype.com/intl/en/home/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような無線LANを介してインターネット網を利用するアプリケーションがあっても、ユーザにとっては、通話発信を行う際に、意識的にこの無線LANを介してインターネット網を利用するアプリケーションを選択して、起動しなければならない。これを忘れてしまうと、通常の通話には、携帯電話網を利用するソフトウェアを起動してしまうからである。
【0006】
ユーザにとっては、無線LANを介してインターネット網を利用するアプリケーションによる発信であれば、通話料が無料になるなどの、メリットがある場合がある。
【0007】
本発明は、ユーザが意図的に起動させようとしなくても、無線LANを介したインターネット網を利用する通話発信をすべきか、携帯電話網を利用する通話発信をすべきかを自動的に選択して、通話発信を行うプログラム、携帯端末及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0009】
第1の特徴に係る発明は、携帯電話網にアクセスするための携帯電話用通信部と、
インターネット網に接続された無線LANにアクセスするための無線LAN用通信部と、
発呼操作を受付ける発呼入力部と、を備える携帯端末を、
前記発呼入力部が、発呼を受付けた際に、前記無線LANの電波状態を判断する無線LAN電波状態判断手段、
前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好であると判断した場合に、前記インターネット網を利用した発呼処理を実行するインターネット網発呼実行手段、
前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好でないと判断した場合に、前記携帯電話用通信部を介する発呼処理を実行する携帯電話用発呼実行手段、として機能させるためのプログラム、を提供する。
【0010】
第1の特徴に係る発明によれば、発呼を受付けた際に、無線LANの電波状態を判断し、電波状態を良好であると判断した場合に、インターネット網を利用した発呼処理を実行し、電波状態を良好でないと判断した場合に、前記携帯電話用通信部を介する発呼処理を実行する。
【0011】
したがって、ユーザが意図的に起動させようとしなくても、インターネット網を利用する通話発信をすべきか、携帯電話網を利用する通話発信をすべきかを自動的に選択して、通話発信をするプログラムを提供することが可能である。
【0012】
第1の特徴に係る発明は、発明のカテゴリにおいてユーザ端末のみならず、方法、プログラムにおいても同様の作用・効果を奏する。
【0013】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、さらに、前記発呼入力部が発呼を受付けるにあたり、前記携帯電話用通信部による発呼、及び前記無線LAN用通信部による発呼の双方で共通の入力インターフェースにより構成される入力手段として、機能させるためのプログラム、を提供する。
【0014】
したがって、ユーザは、無線LANを介してインターネット網を利用する発呼か、携帯電話網を介する発呼かを、自らが選択することなく、双方で共通の一の入力インターフェースで発呼をするだけで、適切なネットワークを自動的に選択することが可能である。ここで、共通の一の入力インターフェースは、共通の一のアプリケーションが提供するインターフェースであってもよい。
【0015】
第3の特徴に係る発明は、第1又は第2の特徴に係る発明であって、
前記発呼入力部が、発呼を受付けた際に、前記携帯電話網の電波状態を判断する携帯電話網電波状態判断手段として機能させ、さらに、
前記携帯電話網電波状態判断手段が電波状態を良好であると判断した場合であっても、前記インターネット網発呼実行手段が、前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好であると判断した場合には、前記携帯電話用発呼実行手段は発呼処理を実行せず、前記インターネット網発呼実行手段が、前記インターネット網を利用した発呼処理を機能させるためのプログラムを提供する。
【0016】
したがって、携帯電話網を介する発呼が可能である場合であっても、優先的に無線LANを介してインターネット網を利用する発呼を行う。
【0017】
第4の特徴に係る発明は、第1から第3の特徴に係る発明であって、
当該携帯端末に加えられた加速度又は速度を検知する加速度検知部として、機能させ、さらに、
前記加速度検知部により検知した加速度又は速度の大きさに応じて、前記インターネット網発呼実行手段は、前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好であると判断した場合であっても、前記インターネット網を利用した発呼処理を行わず、前記携帯電話用発呼実行手段が前記携帯電話用通信部を介する発呼処理を機能させるためのプログラム、を提供する。
【0018】
無線LANの電波が到達可能なエリアは、通常、携帯電話網の電波が到達可能なエリアよりも狭いため、携帯端末が所定の速度で移動している場合は、無線LANによる発呼処理を行うと、通話中に、電波が到達不可能となり通話ができなくなる場合がある。そこで、第4の特徴に係る発明のように、加速度又は速度の大きさに応じて、携帯電話網を介する発呼を優先させることで、この課題を回避することが可能である。
【0019】
第5の特徴に係る発明は、第1から第4の特徴に係る発明であって、
前記インターネット網を利用した発呼処理による通話中に、前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好でないと判断した場合に、前記携帯電話用発呼実行手段が、前記インターネット網を利用した前記通話中の電話番号に呼接続要求を行い、当該呼接続が完了した際には、所定のタイミングで、前記携帯電話網による通話に切替えるネットワーク切替手段として、前記携帯端末を、さらに機能させるためのプログラム、を提供する。
【0020】
したがって、インターネット網を利用した発呼処理を行った後に、無線LANの電波状態が良好でなくなった場合には、並行して、この通話中の相手先に携帯電話網を利用した呼接続も行い、インターネット網を利用した通話から携帯電話網による通話に切替えることができる。ここで、ネットワークを切替える時間は、通話中のユーザが切替ったことを意識しないように、可能な限り短い方が望ましい。
【0021】
第6の特徴に係る発明は、携帯電話網にアクセスするための携帯電話用通信部と、
インターネット網に接続された無線LANにアクセスするための無線LAN用通信部と、
発呼操作を受付ける発呼入力部と、を備える携帯端末を、
前記無線LANの電波状態を判断する無線LAN電波状態判断手段、
前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好であると判断した場合には、前記インターネット網を利用した発呼処理を実行するように予め設定するインターネット網発呼設定手段、
前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好でないと判断した場合には、前記発呼入力部が、発呼を受付けた際に、前記携帯電話用通信部を介する発呼処理を実行するように予め設定する携帯電話用発呼設定手段、として機能させるためのプログラム、を提供する。
【0022】
第6の特徴に係る発明によれば、無線LANの電波状態を判断し、無線LANの電波状態を良好であると判断した場合には、発呼を受付けた際に、インターネット網を利用した発呼処理を実行するように予め設定する。そして、電波状態を良好でないと判断した場合には、発呼を受付けた際に、携帯電話用の通信部を介する発呼処理を実行するように予め設定する。
【0023】
したがって、第1の特徴に係る発明と異なり、ユーザからの発呼操作に応じて、電波状態を確認するのではなく、発呼操作前に、予め携帯端末が電波状態を確認しておき、無線LANを介したインターネット網または携帯電話網のいずれかにより発呼を行うかを設定しておく。そして、発呼操作があった場合に、その設定された通信部を利用して発呼処理を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ユーザが意図的に起動させようとしなくても、無線LANを介したインターネット網を利用する通話発信をすべきか、携帯電話網を利用する通話発信をすべきかを自動的に選択して、通話発信を行う携帯端末、方法及びプログラムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、携帯端末10の機能ブロック図である。
【図2】図2は、携帯端末10が実行する第1処理のフローを示す図である。
【図3】図3は、携帯端末10が表示する発呼インターフェースを示す図である。
【図4】図4は、携帯端末10が表示する発呼インターフェース(移動時)を示す図である。
【図5】図5は、携帯端末10が実行する第2処理のフローを示す図である。
【図6】図6は、ネットワークの電波状態が重複した際に選択するネットワークを説明する概念図である。
【図7】図7は、携帯端末10が実行する第3処理のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0027】
[各機能の説明]
図1は、携帯端末10の機能ブロック図である。図1を参照して説明する。
【0028】
携帯端末10とは、電話での通話機能及び外部とのデータ通信を行う機能を備える端末であり、第3世代移動通信システム等の携帯電話網と、無線LANのインターネット網と、接続可能な端末である。なお、携帯電話網は、第3世代移動通信システムに限定されることなく、インターネット網と異なる通信回線を利用したネットワーク網(専用回線網等)であってよい。
【0029】
携帯端末10は、OS(Operating System)を有する携帯型コンピュータ端末であって、例えば、携帯電話、携帯情報端末、コンピュータ(パソコン)、テレビ、電話機に加えて、スマートフォン、ネットブック端末、スレート端末、電子書籍端末、携帯型音楽プレーヤ、携帯型コンテンツ再生・録画プレーヤ等の携帯型情報家電であってよい。
【0030】
携帯端末10は、制御部20として、CPU(Central Processing Unit),RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)等を備え、さらに、記憶部として、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)のいずれか又は双方を備える。発呼入力部30として、画像を表示し、かつ、ユーザからの入力を受付けるタッチパネル部を備える。
【0031】
携帯端末10は、通信部50として、無線LAN用通信部51と、携帯電話用通信部52を備える。無線LAN用通信部51は、IEEE802.11に準拠した無線デバイス(WiFi(Wireless Fidelity)対応デバイス等)であってよい。携帯電話用通信部52は、第3世代移動通信システム等のIMT−2000規格に準拠した無線デバイスである。なお、無線LANの無線電波範囲は、SSID(Service Set Identifer)によって区別される個々のネットワークの電波範囲である。
【0032】
携帯端末10は、加速度検知部40として、携帯端末10が受けている加速度を計測することが可能な加速度デバイスを備える。加速度検知部40は、半導体式のピエゾ抵抗型を利用することで、3軸方向での加速度の検出が可能であることが望ましい。加速度検知部40は、加速度デバイスと、GPS(Global Positioning System)デバイスとを併用して、携帯端末10が速度又は加速度を有して移動しているかを総合的に判断してもよい。
【0033】
制御部20は、無線LAN電波状態判断手段21と、携帯電話網電波状態判断手段22と、インターネット網発呼実行手段23と、携帯電話用発呼実行手段24と、を備える。各手段の機能については、図2に基づいて説明する。
【0034】
アプリケーションとは、携帯端末10で起動可能なソフトウェア・プログラムであって、例えば、当該携帯端末10にインストールされたアプリケーションであってよい。アプリケーションは、通常、携帯端末10の表示部に表示されたアイコン等をユーザが操作することで起動する。アプリケーションが起動されると、ユーザインターフェースが表示され、ユーザからの入力を受付ける。特に、以下の実施形態で説明するアプリケーションとは、無線LANを介してインターネット網を利用した通話機能を有するIP電話用アプリケーションである。また、携帯電話用通信部52による発呼、及び無線LAN用通信部51による発呼の双方で共通の入力インターフェースの場合は、双方で共通の一の電話用アプリケーションであってよい。
【0035】
[第1処理のフローチャート]
図2は、携帯端末10が実行する第1処理のフローチャートである。
【0036】
最初に、携帯端末10は、発呼入力部30からの発呼操作をユーザから受付ける(ステップS10)。ユーザが、電話をかける際に、図3の例に示すように、携帯端末10−aの表示部に発呼のためのインターフェースを表示し、タッチパネルにより、電話番号の入力を受付ける。電話番号の入力は、数字を入力するか、アドレス帳より電話番号を選択することで受付ける。また、発信履歴、着信履歴等から、電話番号を選択してもよい。
【0037】
ここで、発呼のためのインターフェースは、無線LAN用通信部51による発呼と、携帯電話用通信部52による発呼とで、共通のインターフェースである。すなわち、ユーザが発呼を行う際に、無線LAN用通信部51、携帯電話用通信部52のそれぞれの発呼により、異なるインターフェースを選択するものではなく、発呼する相手先の入力を受けるインターフェースが双方で共通であることが望ましい。
【0038】
次に、無線LAN電波状態判断手段21は、無線LANの電波状態を参照する(ステップS11)。すなわち、無線LAN電波状態判断手段21は、無線LANの電波強度(電界強度)について、OSの通信モジュールを参照する。OSの通信モジュールは、その携帯端末10の無線LAN用通信部51が受信する電波強度に基づいて、信号の品質が「非常に良好」、「良好」、「悪い」等の判断を行う。無線LAN電波状態判断手段21は、この信号の品質を参照する。
【0039】
無線LAN電波状態判断手段21が無線LANの電波状態を良好であると判断した場合(ステップS12:「YES」)には、ステップS13に処理を移す。無線LAN電波状態判断手段21が無線LANの電波状態を良好でないと判断した場合(ステップS12:「NO」)には、ステップS15に処理を移す。
【0040】
ステップS15において、携帯電話網電波状態判断手段22は、携帯電話網の電波状態を参照する(ステップS15)。すなわち、携帯電話網電波状態判断手段22は、携帯電話網の電波強度(電界強度)についてOSの通信モジュールを参照する。OSの通信モジュールは、その携帯端末10の携帯電話用通信部52が受信する電波強度に基づいて、信号の品質が「非常に良好」、「良好」、「悪い」等の判断を行う。携帯電話網電波状態判断手段22は、この信号の品質を参照する。
【0041】
携帯電話網電波状態判断手段22が携帯電話網の電波状態を良好であると判断した場合(ステップS16:「YES」)には、ステップS17に処理を移す。すなわち、無線LANによる通話を諦めて、携帯電話網を利用した、携帯電話用通信部を介した発呼処理を携帯電話用発呼実行手段24が行う(ステップS17)。携帯電話網電波状態判断手段22が携帯電話網の電波状態を良好でないと判断した場合(ステップS16:「NO」)には、携帯電話網、無線LANによるインターネット網の双方において通話発信ができないため、双方の電波が充分でないことをユーザに通知する出力をして、処理を終了する。
【0042】
ステップS13において、加速度検知部40は、速度又は加速度を検知しているかを判断する。すなわち、加速度検知部40は携帯端末10が、この時点で、移動中であるかを判断するために、所定の加速度を受けて、一定の速度で移動しているか、または、所定の加速度により移動しているかを判断する。速度については、過去の加速度やGPSによる移動距離から判断してもよい。
【0043】
加速度検知部40が、速度又は加速度を検知していると判断した場合(ステップS13:「YES」)には、ステップS17に処理を移す。すなわち、速度又は加速度を検知していると判断した場合には、携帯端末10は移動中であると判断して、ステップS17に処理を移す。
【0044】
ステップS17において、携帯電話用発呼実行手段24が、携帯電話用通信部52を介して発呼処理を行う。
【0045】
このように、携帯端末10は移動中であると判断して、携帯電話網による発呼処理を行う際には、図3の携帯端末10ーbの表示部に表示するように、携帯端末10が移動を検知したことで、携帯電話網(3G)を発呼において選択したことを表示してもよい。
【0046】
通常、無線LANの電波強度が良好であるエリアは、携帯電話網の電波強度が良好であるエリアよりも狭いため、携帯端末10が移動している場合には、携帯電話網を利用した発呼処理を行うことで、発呼後の通話を中断させることがない。ここで、速度、加速度を検知していても、人が歩く速度(3km/h)程度であれば、無線LANに接続すると判断してもよい。
【0047】
加速度検知部40が、速度又は加速度を検知していないと判断した場合(ステップS13:「NO」)には、インターネット網発呼実行手段23は、無線LANを介してインターネット網を利用した発呼処理を行う(ステップS14)。すなわち、ユーザは、ほぼ移動していないと判断され、無線LANによる通話を選択する。
【0048】
IP電話用アプリケーションとは、無線LANを介してインターネット網を利用した通話用のアプリケーションであって、携帯端末10で起動することが可能なアプリケーションである。IP電話用アプリケーションは、インターネット網を利用しており、通常の第3世代移動通信システムの携帯電話網を利用していないため、通話料を携帯端末事業者やアプリケーション提供者が徴収しない。
【0049】
上記のような第1処理により、可能な限りIP電話用アプリケーションを利用して発呼処理を行うようにすることは、ユーザが予め設定しておくことが可能である。図4に示すように、携帯端末10は、ユーザから、発呼を行う際のネットワーク選択ルールの入力を受付けるインターフェースを表示する。
【0050】
通話料節約ルールをユーザが選択することで、携帯端末10は、第1処理を実行し、通話料がかからないIP電話用アプリケーションを利用して、携帯端末通話料を可能な限り節約するアルゴリズムを採用する。図4に示すように、「歩いていても無線エリアを使わない」は、移動している場合には、歩く程度の速度であっても、ネットワークとして、携帯電話網を選択する設定である。これが、加速度検知部40に設定されると、歩いている程度の速度であっても、携帯電話網を選択する。
【0051】
[第2処理のフローチャート]
図5は、携帯端末10が実行する第2処理のフローチャートである。
第2処理は、第1処理と異なり、発呼操作を受けてから、ネットワークを選択するのではなく、発呼操作を受ける前に、ネットワークを事前に設定する処理である。
【0052】
最初に、無線LAN電波状態判断手段21は、無線LANの電波状態を参照する(ステップS21)。本処理の内容は、第1処理のステップS11と同じである。以降、ステップS22の処理は、ステップS12の処理と同じであり、ステップS25の処理は、ステップS15と同じである。
【0053】
無線LANの電波強度が充分であると判断した場合(ステップS22)「YES」)は、インターネット網発呼設定手段25は、無線LANを介したインターネット網を利用した発呼処理を行うように設定する(ステップS23)。ここでの設定とは、例えば、発呼を行う共通のインターフェースに対して、発呼操作がユーザからあった場合には、設定されたネットワークを選択して発呼を行う、事前の設定である。
【0054】
無線LANの電波強度が充分でないと判断した場合(ステップS22)「NO」)は、携帯電話網電波状態判断手段22は、携帯電話網の電波状態を参照する(ステップS25)。そして、携帯電話網電波状態判断手段22は、携帯電話網の強度が充分であると判断した場合(ステップS26:「YES」)は、インターネット網発呼設定手段25は、携帯電話用通信部52を介して発呼処理を行うように設定する(ステップS27)。携帯電話網電波状態判断手段23は、携帯電話網の強度が充分でないと判断した場合(ステップS26:「NO」)は、ネットワークの設定ができないため、ステップS21に処理を戻す。
【0055】
次に、発呼入力部30は、ユーザからの発呼操作があったか否かを判断する(ステップS24)。ユーザからの発呼操作がなかった場合(ステップS24:「NO」)は、ステップS21に処理を移す。ユーザからの発呼操作があった場合(ステップS24:「YES」)は、ステップS28に処理を移す。
【0056】
ステップS28において、加速度検知部40は、所定の大きさの速度又は加速度を検知しているかを判断する。本処理の内容は、ステップS13の処理と同じである。ここで、加速度検知部40が所定の大きさの速度又は加速度を検知していると判断した場合(ステップS28:「YES」)には、携帯電話用通信部52を介して発呼処理を行う。本処理は、ステップS17と同じである。加速度検知部40が速度又は加速度を検知していないと判断した場合(ステップS28:「NO」)には、ステップS23又はステップS27にて設定された発呼処理を実行する(ステップS30)。
【0057】
次に、図6に基づいて、電波状態に応じたネットワークの選択について説明する。エリア2において、無線LANの電波エリアをエリア5、携帯電話網の電波エリアをエリア7とする。この場合、携帯端末10−dの位置では、エリア5、エリア7の双方で、充分な電波強度を有するため、双方の電波受信マークともに良好となっている。
【0058】
この場合には、双方のネットワークを選択可能であるが、第1処理、第2処理を実行することで、無線LANによるインターネット網を優先して選択する。エリア3においては、無線LANの電波エリアであるエリア5の電波強度が充分である一方、携帯電話網の電波エリアであるエリア7の電波強度が充分でないために、無線LANによるインターネット網を選択する。
【0059】
[第3処理のフローチャート]
次に、図7に基づいて、第3処理について説明する。第3処理は、無線LANを介してインターネット網を利用した通話中に、事後的に無線LANの電波状態が良好でなくなった場合に、携帯電話網にネットワークを切替える処理である。
【0060】
本処理は、インターネット網発呼実行手段23が、無線LANを介してインターネット網を利用した発呼処理を行っている際に、起動される処理である。無線LAN電波状態判断手段21は、無線LANの電波状態を参照し(ステップS51)、現状で電波強度が充分であるか判断する(ステップS52)。電波強度が充分であると判断した場合は、ステップS51に処理を戻す(ステップS52:「YES」)。無線LANの電波強度が充分でないと判断した場合(ステップS52:「NO」)は、携帯電話網電波判断手段22が、携帯電話網の電波状態を参照する(ステップS53)。
【0061】
携帯電話網電波判断手段22は、携帯電話網の電波強度が充分でないと判断した場合(ステップS54:「NO」)は、処理をステップS51に戻す。この場合は、ネットワーク切替えが不可能である。携帯電話網電波判断手段22は、携帯電話網の電波強度が充分であると判断した場合(ステップS54:「YES」)には、携帯電話用発呼実行手段24が、インターネット網発呼実行手段23より、通話中の相手先の電話番号を取得して、その相手先に携帯電話網を利用して呼接続要求を行う(ステップS55)。
【0062】
呼接続要求を受けた相手先の携帯端末10が、携帯電話網の電波が良好である場合には、呼接続を完了する。ここで、呼接続要求を受けたことを携帯端末10に出力せずに、呼接続を行ってもよいが、呼接続要求があったことを、音または表示により出力し、相手先であるユーザから呼接続を行うことを了承する入力操作を受け付けてもよい。呼接続要求を受けた相手先の携帯端末10が携帯電話網の電波が良好でない場合や、相手先のユーザが了承を拒否した場合には、呼接続要求を完了することはできない。
【0063】
携帯電話網用通信部52は、携帯電話網の呼接続を完了した(ステップS56:「YES」)場合には、無線LANを介してインターネット網を利用した通話から、携帯電話網を利用した通話に、ネットワークを切替える(ステップS57)。ネットワーク切替処理は、無線LANに接続した状況で、かつ、携帯電話網にも接続した状況において、所定のタイミングで、無線LANを介してインターネット網を利用した通話から、携帯電話網を利用した通話に、切替える。
【0064】
例えば、無線LANを介してインターネット網を利用するIP電話用アプリケーションと、携帯電話網を利用した電話用アプリケーションがデュアルで起動されている状況で、音声回線はどちらも接続されている状態とする。しかし、ユーザが会話で発する音声の入力は、IP電話用アプリケーションからしか入力されないとする。
【0065】
ここで、携帯端末10には、IP電話用アプリケーションのユーザインターフェースが表示され、電話用アプリケーションのインターフェースは、ほとんど表示されていない。この状態で、IP電話用アプリケーションから、携帯電話網を利用した電話用アプリケーションにユーザインターフェースを切替えると同時に、ユーザが会話で発する音声の入力は、IP電話用アプリケーションから電話アプリケーションに切替える。
【0066】
ネットワークを切替えた後は、所定時間後に、無線LANを介してインターネット網を利用した通話を切断する。例えば、IP電話用のアプリケーションを閉じることで、終了する。
【0067】
上述した手段、機能は、コンピュータ(CPU,情報処理装置,各種端末を含む)が、所定のプログラムを読み込んで、実行することによって実現される。アプリケーションプログラムは、例えば、フレキシブルディスク、CD(CD−ROMなど)、DVD(DVD−ROM、DVD−RAMなど)等のコンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供される。この場合、コンピュータはその記録媒体からアプリケーションプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送し記憶して実行する。また、そのプログラムを、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の記憶装置(記録媒体)に予め記録しておき、その記憶装置から通信回線を介してコンピュータに提供するようにしてもよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0069】
10 携帯端末、30 発呼入力部、40 加速度検知部、51 無線LAN用通信部、52 携帯電話用通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話網にアクセスするための携帯電話用通信部と、
インターネット網に接続された無線LANにアクセスするための無線LAN用通信部と、
発呼操作を受付ける発呼入力部と、を備える携帯端末を、
前記発呼入力部が、発呼を受付けた際に、前記無線LANの電波状態を判断する無線LAN電波状態判断手段、
前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好であると判断した場合に、前記インターネット網を利用した発呼処理を実行するインターネット網発呼実行手段、
前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好でないと判断した場合に、前記携帯電話用通信部を介する発呼処理を実行する携帯電話用発呼実行手段、として機能させるためのプログラム。
【請求項2】
前記発呼入力部が発呼を受付けるにあたり、前記携帯電話用通信部による発呼、及び前記無線LAN用通信部による発呼の双方で共通の入力インターフェースにより構成される入力手段として、さらに、機能させるための請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記発呼入力部が、発呼を受付けた際に、前記携帯電話網の電波状態を判断する携帯電話網電波状態判断手段として機能させ、さらに、
前記携帯電話網電波状態判断手段が電波状態を良好であると判断した場合であっても、前記インターネット網発呼実行手段が、前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好であると判断した場合には、前記携帯電話用発呼実行手段は発呼処理を実行せず、前記インターネット網発呼実行手段が、前記インターネット網を利用した発呼処理を機能させるための、請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項4】
当該携帯端末に加えられた加速度又は速度を検知する加速度検知部として、機能させ、さらに、
前記加速度検知部により検知した加速度又は速度の大きさに応じて、前記インターネット網発呼実行手段は、前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好であると判断した場合であっても、前記インターネット網を利用した発呼処理を行わず、前記携帯電話用発呼実行手段が前記携帯電話用通信部を介する発呼処理を機能させるための請求項1から3のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項5】
前記インターネット網を利用した発呼処理による通話中に、前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好でないと判断した場合に、前記携帯電話用発呼実行手段が、前記インターネット網を利用した前記通話中の電話番号に呼接続要求を行い、当該呼接続が完了した際には、所定のタイミングで、前記携帯電話網による通話に切替えるネットワーク切替手段として、前記携帯端末を、さらに機能させるための請求項1から4のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項6】
携帯電話網にアクセスするための携帯電話用通信部と、
インターネット網に接続された無線LANにアクセスするための無線LAN用通信部と、
発呼操作を受付ける発呼入力部と、を備える携帯端末を、
前記無線LANの電波状態を判断する無線LAN電波状態判断手段、
前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好であると判断した場合には、前記インターネット網を利用した発呼処理を実行するように予め設定するインターネット網発呼設定手段、
前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好でないと判断した場合には、前記発呼入力部が、発呼を受付けた際に、前記携帯電話用通信部を介する発呼処理を実行するように予め設定する携帯電話用発呼設定手段、として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
携帯電話網にアクセスするための携帯電話用通信部と、
インターネット網に接続された無線LANにアクセスするための無線LAN用通信部と、
発呼操作を受付ける発呼入力部と、を備える携帯端末であって、
前記発呼入力部が、発呼を受付けた際に、前記無線LANの電波状態を判断する無線LAN電波状態判断手段と、
前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好であると判断した場合に、前記インターネット網を利用した発呼処理を実行するインターネット網発呼実行手段と、
前記無線LAN電波状態判断手段が電波状態を良好でないと判断した場合に、前記携帯電話用通信部を介する発呼処理を実行する携帯電話用発呼実行手段と、を備える携帯端末。
【請求項8】
携帯電話網にアクセスするための携帯電話用通信部と、
インターネット網に接続された無線LANにアクセスするための無線LAN用通信部と、
発呼操作を受付ける発呼入力部と、を備える携帯端末が実行する方法であって、
前記発呼入力部が発呼を受付けた際に、前記無線LANの電波状態を判断するステップと、
前記無線LANの電波状態を判断するステップにて、電波状態を良好であると判断した場合に、前記インターネット網を利用した発呼処理を実行するステップと、
前記無線LANの電波状態を判断するステップにて、電波状態を良好でないと判断した場合に、前記携帯電話用通信部を介する発呼処理を実行するステップと、を含む方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−109641(P2012−109641A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237554(P2010−237554)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(500521522)株式会社オプティム (73)
【Fターム(参考)】