説明

速度検出装置及び画像形成装置

【課題】回転軸の回転速度を検出する上で演算処理の負荷を軽減可能な簡素化された構成の速度検出装置を提供する。
【解決手段】速度検出装置に、回転軸に取り付けられ、円周に沿って等間隔に径方向に伸びるスリットが形成された円盤と、円盤の一方の面側に設けられた発光部と、円盤の他方の面側に設けられ、スリットを介して発光部から出射された光を受光したか否かに対応する2つのレベルの電圧を出力する受光部と、受光部から出力された電圧を積分する積分回路と、積分回路から出力された出力電圧を検出電圧として検出する電圧検出部と、回転軸の回転速度と、検出電圧の変化の態様との対応関係を示す電圧特性情報とを予め対応付けて記憶する電圧特性記憶部と、回転軸が回転を開始した後に電圧検出部によって検出された検出電圧の変化の態様から、電圧特性情報に基づき回転速度を取得する回転速度検出部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度検出装置及び当該速度検出装置を備えた画像形成装置に関し、特に、回転軸の回転速度を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に記載されているように、回転軸に取り付けられた円盤状のエンコーダディスクと、エンコーダディスクの一方の面側に位置する発光素子及び他方に位置する受光素子を備えたフォトインタラプタと、を備えたロータリエンコーダを用いて、回転軸の回転速度を検出する方法が知られている。
【0003】
円盤状のエンコーダディスクには、円周に沿って等間隔にスリットが形成されており、フォトインタラプタの発光素子から発光された光は、回転軸の回転によってスリット1ピッチ毎に光路を遮られることによって、回転軸の回転量に比例した回数の明暗を繰り返す。この明暗がフォトインタラプタの受光素子によって電気信号として出力されると、ロータリエンコーダは、当該電気信号を波形整形してパルス信号を出力する。そして、CPUによって、ロータリエンコーダから出力されたパルス信号の周波数とスリット間隔に対応する円周方向の角度を用いて回転軸の回転速度が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−223956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法を用いて回転軸の回転速度を検出する場合、パルス信号のパルス数をカウントしながら、CPUのタイマーポートを用いて得られる経過時間を用いて、パルス信号の周波数としての単位時間当たりのパルス数を算出し、当該算出したパルス信号の周波数とスリット間隔に対応する円周方向の角度を用いて回転軸の回転速度を算出する演算処理の負荷がCPUにかかる。つまり、回転軸の回転速度を検出する上で、演算処理の負荷を軽減する余地があった。
【0006】
例えば、F/Vコンバータ(frequency/voltage converter)を用いて、ロータリエンコーダから出力されたパルス信号をパルスの周波数に比例した直流電圧に変換して、当該直流電圧の電圧値から回転速度を算出し、これによって、演算処理の負荷を軽減することが考えられる。しかし、この場合、F/Vコンバータを設ける必要があるため、装置の構成が複雑化する虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、回転軸の回転速度を検出する上で、演算処理の負荷を軽減することができる簡素化された構成の速度検出装置及び当該速度検出装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る速度検出装置は、回転軸に取り付けられ、円周に沿って等間隔に径方向に伸びるスリットが形成された円盤と、前記円盤の一方の面側に設けられた発光部と、前記円盤の他方の面側に設けられ、前記スリットを介して前記発光部から出射された光を受光したか否かに対応する2つのレベルの電圧を出力する受光部と、前記受光部から出力された電圧を積分する積分回路と、前記積分回路から出力された出力電圧を検出電圧として検出する電圧検出部と、前記回転軸の回転速度と、前記検出電圧の変化の態様との対応関係を示す電圧特性情報とを予め対応付けて記憶する電圧特性記憶部と、前記回転軸が回転を開始した後に前記電圧検出部によって検出された検出電圧の変化の態様から、前記電圧特性情報に基づき前記回転速度を取得する回転速度検出部と、を備える。
【0009】
この構成によれば、回転軸が回転すると、当該回転に伴って受光部から2つのレベルの電圧が交互に出力され、積分回路から出力された出力電圧は、滑らかに上昇または下降を交互に繰り返した後、略一定の電圧レベルで安定する。積分回路から出力される出力電圧は、電圧検出部によって検出されており、回転軸の回転開始後に検出された検出電圧の変化の態様から、電圧特性情報に基づいて回転軸の回転速度が取得される。
【0010】
このため、回転軸の回転速度を検出する上で、電圧特性記憶部に記憶されている電圧特性情報に基づいて回転軸の回転速度を取得するための処理負荷がかかることになる。しかし、例えば、受光部から出力される2つのレベルの電圧の変化を示すパルス信号のパルス数をカウントしながら、CPUのタイマーポートを用いて得られる経過時間を用いて、パルス信号の周波数としての単位時間当たりのパルス数を算出し、当該算出したパルス信号の周波数とスリット間隔に対応する円周方向の角度を用いて回転軸の回転速度を算出する場合に比して、当該2つの演算処理を行うことがない分、演算処理の負荷を軽減することができる。
【0011】
また、例えば、F/Vコンバータ(frequency/voltage converter)を用いて、受光部から出力される2つのレベルの電圧の変化を示すパルス信号を、パルスの周波数に比例した直流電圧に変換し、当該直流電圧の電圧値から回転軸の回転速度を算出する場合に比して、F/Vコンバータを設ける必要がない分、速度検出装置の構成を簡素化することができる。
【0012】
また、前記電圧特性情報は、前記回転軸の回転が開始されてから予め設定された基準時間が経過したときの前記検出電圧と前記回転軸の回転速度とを対応付ける情報であり、前記回転速度検出部は、前記回転軸の回転開始から前記基準時間が経過したとき、前記電圧特性情報によって前記電圧検出部によって検出された検出電圧と対応付けられた前記回転軸の回転速度を、前記回転軸の回転速度として前記電圧特性記憶部から取得することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、例えば試験運転等の実験値に基づいて、回転軸の回転が開始されてから回転速度が安定するまでの経過時間を基準時間として予め設定することによって、回転速度検出部は、安定しているときの回転速度を検出することができる。これによって、回転速度検出部は、精度良く回転速度を検出することができる。
【0014】
または、前記電圧特性情報は、前記回転軸の回転速度と、前記回転軸の回転が開始された後前記電圧検出部によって検出された検出電圧が略一定になるときのその検出電圧とを対応付ける情報であり、前記回転速度検出部は、前記回転軸の回転開始後、前記検出電圧の単位時間当たりの変化量が予め定められた基準値を下回ったときに前記電圧検出部によって検出された検出電圧と、前記電圧特性情報によって対応付けられた前記回転軸の回転速度を、前記回転軸の回転速度として取得してもよい。
【0015】
この構成によれば、回転速度検出部は、回転軸の回転開始後、検出電圧の単位時間当たりの変化量が基準値を下回ったときには、電圧検出部によって検出された検出電圧が略一定になったものとして、当該検出電圧に対応付けられた回転軸の回転速度を取得する。
【0016】
このため、例えば試験運転等の実験値に基づいて、回転軸の回転開始後、回転速度が安定したときに電圧検出部によって検出された検出電圧の単位時間当たりの変化量を基準値として予め設定することによって、回転速度検出部は、安定に回転しているときの回転速度を検出することができる。これによって、回転速度検出部は、精度良く回転速度を検出することができる。
【0017】
また、前記電圧特性情報は、前記回転軸の回転開始後、前記検出電圧が予め設定された基準電圧になるまでの時間と、前記回転速度とを対応付ける情報であり、前記回転速度検出部は、前記回転軸の回転開始後、前記電圧検出部によって検出された検出電圧が前記基準電圧になるまでの時間を計時し、その計時された時間と、前記電圧特性情報によって対応付けられた前記回転軸の回転速度を、前記回転軸の回転速度として取得してもよい。
【0018】
この構成によれば、回転速度検出部は、例えば、例えば試験運転等の実験値に基づいて、回転軸の回転開始後、回転速度が安定して検出電圧が略一定になるまでの間の過渡期の検出電圧を基準電圧に設定することによって、電圧検出部によって検出された検出電圧が当該基準電圧になった時点で、回転速度を検出することができる。これによって、回転速度検出部は、迅速に回転速度を検出することができる。
【0019】
また、前記積分回路は、前記受光部から出力された電圧を積分した後、平滑化して前記出力電圧として出力してもよい。
【0020】
この構成によれば、積分回路からの出力電圧が平滑化されることによって、電圧検出部によって検出される検出電圧が平滑化される。このため、回転速度検出部は、平滑化された検出電圧の変化の態様から、電圧特性情報に基づき回転速度をより精度良く取得することができる。
【0021】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記何れか一の構成の速度検出装置と、用紙に画像を形成する画像形成部と、前記回転速度検出部によって取得された回転速度を用いて、前記画像形成部の動作を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、回転軸の回転速度を検出する上で、演算処理の負荷を軽減することができる簡素化された構成の速度検出装置及び当該速度検出装置を備えた画像形成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例である複写機の概略構造図。
【図2】複写機の電気的構成の一例を示すブロック図。
【図3】速度検出装置の構成の一例を示す回路図。
【図4】円盤の構成の一例を示す説明図。
【図5】積分回路の出力電圧の変動を説明するための説明図であり、(a)は、ある目標の回転速度に対応する出力電圧の時系列変化の一例を示す説明図。(b)は、目標の回転速度が(a)の場合に比して速いときの出力電圧の時系列変化の一例を示す説明図。(c)は、目標の回転速度が(b)の場合に比して速いときの出力電圧の時系列変化の一例を示す説明図。
【図6】電圧特性情報の一例を説明するための説明図。
【図7】電圧特性情報の図6とは別の一例を説明するための説明図。
【図8】電圧特性情報の図6及び図7とは別の一例を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る画像形成装置の一例である複写機の概略構造図である。図2は、図1に示す複写機1の電気的構成の一例を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、複写機1は、本体部8と、本体部8の左方に配設されたスタックトレイ3と、本体部8の上部に配設された原稿読取部5と、原稿読取部5の上方に配設された原稿給送部6と、本体部8の内部に配設された制御部10と、を備えている。
【0026】
複写機1のフロント部には、操作パネル部47が備えられている。操作パネル部47は、表示部473と、操作キー部476とを備えている。表示部473は、例えばタッチパネル機能を有する液晶ディスプレイ等によって構成されている。操作キー部476は、例えばユーザが印刷実行指示を入力するためのスタートキーや、印刷部数等を入力するためのテンキー等の各種キースイッチを備えている。
【0027】
原稿読取部5は、露光ランプ511及びCCD(Charge Coupled Device)512等(図2)からなるスキャナ部51と、ガラス等の透明部材により構成された原稿台52及び原稿読取スリット53とを備える。
【0028】
スキャナ部51は、図略の駆動部によって移動可能に構成され、原稿台52に載置された原稿を読み取るときは、原稿台52に対向する位置で原稿面に沿って移動され、原稿画像を走査しつつ取得した画像データを制御部10へ出力する。また、原稿給送部6により給送された原稿を読み取るときは、原稿読取スリット53と対向する位置に移動され、原稿読取スリット53を介して原稿給送部6による原稿の搬送動作と同期して原稿の画像を取得し、その画像データを制御部10へ出力する。
【0029】
原稿給送部6は、原稿を載置するための原稿載置部61と、画像読み取り済みの原稿を排出するための原稿排出部62と、原稿載置部61に載置された原稿を1枚ずつ繰り出して原稿読取スリット53に対向する位置へ搬送し、原稿排出部62へ排出する原稿搬送機構63とを備える。
【0030】
本体部8は、複数の給紙カセット461と、給紙カセット461から用紙を1枚ずつ繰り出して画像形成部40へ搬送する給紙ローラ412と、給紙カセット461から搬出されてきた用紙に画像を形成する画像形成部40と、画像が形成された用紙が排出される排出トレイ48と、装置全体の動作制御を司る制御部10とを備える。
【0031】
画像形成部40は、用紙搬送部41、光走査装置42、感光体ドラム(感光体)43、現像部44、転写部45、及び定着部46を備えている。
【0032】
用紙搬送部41は、画像形成部40内の用紙搬送路中に設けられ、給紙ローラ412によって搬送されてきた用紙を感光体ドラム43に供給する搬送ローラ413や、用紙をスタックトレイ3まで搬送する搬送ローラ414や、用紙を排出トレイ48まで搬送する搬送ローラ415等を備えている。尚、給紙ローラ412、搬送ローラ413、搬送ローラ414、及び搬送ローラ415は、図略の回転軸に取り付けられ、当該回転軸の回転駆動力で回転駆動される。
【0033】
光走査装置42は、制御部10から出力された画像データに基づいてレーザー光を出力し、当該レーザー光によって感光体ドラム43を露光することで、感光体ドラム43上に静電潜像を形成する。
【0034】
現像部44は、感光体ドラム43上の静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する。転写部45は、感光体ドラム43上のトナー像を用紙に転写する。定着部46は、トナー像が転写された用紙を加熱してトナー像を用紙に定着させる。
【0035】
制御部10は、例えば、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、所定の制御プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、画像処理等の所定の処理を高速処理可能に構成された専用ハードウェアであるASIC(Application Specific Integrated Circuits)、及び、これらの周辺回路等を備えている。
【0036】
図2に示すように、制御部10には、原稿読取部5、画像形成部40、操作パネル部47が接続されている。制御部10は、ROM等に記憶された制御プログラムをCPUによって実行することにより、装置内の各部の動作を制御し、原稿画像の複写を実行する。
【0037】
以下では、制御部10によって行われる制御のうち、給紙ローラ412、搬送ローラ413、搬送ローラ414、及び搬送ローラ415等の回転部材の回転速度を検出する制御について説明する。当該回転速度を検出する制御に関連して、制御部10は、特に、電圧特性記憶部11及び回転速度検出部12として機能する。尚、電圧特性記憶部11及び回転速度検出部12の詳細については後述する。
【0038】
図3は、回転部材の回転速度を検出するための速度検出装置2の構成の一例を示す回路図である。速度検出装置2は、円盤21と、発光部22と、受光部23と、積分回路24と、平滑回路25と、電圧検出部26と、制御部10の電圧特性記憶部11と回転速度検出部12と、を備えて構成されている。
【0039】
円盤21は、例えば、図4に示すように、回転速度の検出対象である回転部材の回転軸RSに取り付けられ、円周に沿って等間隔に径方向に伸びるスリットSLが形成されている。
【0040】
発光部22は、電圧が印加されると発光する発光素子であり、円盤21の一方の面側に設けられている。発光部22は、例えば、レーザーダイオードによって構成されている。
【0041】
受光部23は、スリットSLを介して発光部22から出射された光を受光すると電流を導通させ、円盤21の面によって発光部22から出射された光が遮断されると電流を導通させない受光素子である。受光部23は、円盤21を介して発光部22と対向するように設けられ、抵抗R1を介して電源E1に直列に接続されている。受光部23は、例えば、フォトトランジスタによって構成され、当該フォトトランジスタのコレクタが出力端子231として用いられている。出力端子231は、抵抗R1を介して電源E1に接続されている。また、出力端子231は、積分回路24に接続されている。
【0042】
例えば、電源E1から供給される電圧がV1であるとすると、スリットSLを介して発光部22から出射された光を受光した場合に、フォトトランジスタがオンし、ローレベル(0V)の電圧が積分回路24へ出力される。
【0043】
一方、円盤21の面によって発光部22から出射された光が遮断された場合には、フォトトランジスタがオフして、出力端子231が抵抗R1によってプルアップされ、ハイレベル(V1)の電圧が積分回路24へ出力される。
【0044】
このように、受光部23は、スリットSLを介して発光部22から出射された光を受光するか否かに対応する2つのレベルの電圧を出力する。
【0045】
積分回路24は、受光部23から出力された電圧を積分する回路である。具体的には、積分回路24は、例えば、抵抗R2とコンデンサC2とを備えて構成されている。そして、コンデンサC2の端子電圧を出力電圧Vo1として平滑回路25へ出力する。
【0046】
平滑回路25は、積分回路24から出力された電圧Vo1を平滑化する回路である。具体的には、平滑回路25は、例えば、コンパレータCMPと抵抗R3とコンデンサC3とを備えて構成されている。
【0047】
電圧検出部26は、平滑回路25から出力された電圧Vo2を示す検出信号を回転速度検出部12に向けて出力するセンサである。
【0048】
例えば、図5(a)(b)(c)は、受光部23が円盤21のスリットSLを介して発光部22から出射された光を受光する状態であって、0のレベルの電圧が積分回路24を介して出力される時点を開始時点(時刻t0)とした場合における、円盤21が回転を開始した後の、積分回路24の出力電圧Vo1の時系列変化を、円盤21の目標の回転速度毎に示す説明図である。
【0049】
尚、図5(a)(b)(c)は、図5(a)における回転速度が最も遅く、図5(c)における回転速度が最も速いことを示しており、つまり、図5(c)(b)(a)の順に、目標の回転速度が速いことを示している。
【0050】
例えば、図5(a)に示すように、時刻t0において、円盤21が回転を開始すると、これに合わせてスリットSLが回転することによって、発光部22から出射された光が円盤21によって遮断される。これによって、ハイレベル(V1)の電圧が積分回路24へ出力され、コンデンサC2が次第に充電される。つまり、コンデンサC2の端子電圧である積分回路24の出力電圧Vo1が次第に上昇する。
【0051】
そして、時刻t0から時間tmが経過し、円盤21の回転に伴って再びスリットSLを介して受光部23で光が受光されるようになると、フォトトランジスタがオンして、電源E1から積分回路24に向けて電流が供給されなくなり、積分回路24のコンデンサC2からの放電が開始される。つまり、積分回路24の出力電圧Vo1が次第に下降する。
【0052】
そして、更に時間tmが経過し、円盤21の回転に伴って再び円盤21によって発光部22から出射された光が遮断されるようになると、再びハイレベル(V1)の電圧が積分回路24へ出力され、コンデンサC2が再び充電される。つまり、積分回路24の出力電圧Vo1が再び上昇する。
【0053】
尚、時刻t0から時間tmが経過するまでの出力電圧Vo1が上昇する期間では、コンデンサC2の端子電圧がハイレベル(V1)に至るまでの充電は完了していない。したがって、その後更に時間tmが経過するまでの出力電圧Vo1が下降する期間では、ハイレベル(V1)に満たない程度にしか充電されていないコンデンサC2から放電が行われる。このため、当該出力電圧Vo1が下降する期間における出力電圧Vo1電圧の下降度合いは、出力電圧Vo1が上昇する期間における出力電圧Vo1の上昇度合いよりも緩やかになっている。これによって、当該出力電圧Vo1が下降する期間においては、出力電圧Vo1が上昇する期間の間に上昇した電圧よりもΔV分少ない分しか電圧が下降しない。
【0054】
以降、同様に、円盤21の回転に応じて出力電圧Vo1は上昇と下降を繰り返す。そして、時刻taで円盤21の回転速度が目標の回転速度に到達して安定するようになると、出力電圧Vo1が上昇する期間内でコンデンサC2に十分に充電がなされるようになり、出力電圧Vo1が上昇する期間に上昇する電圧と出力電圧Vo1が下降する期間に下降する電圧との差ΔVは、略0になる。
【0055】
つまり、円盤21の回転速度が目標の回転速度に到達して安定するようになると、積分回路24の出力電圧Vo1は同じ度合いで上昇と下降を繰り返すようになり、平滑化回路25を介して出力されて、電圧検出部26によって検出される電圧(検出電圧)は、略一定のレベルを示すようになる。
【0056】
また、図5(b)(c)に示すように、目標の回転速度が異なっていても、図5(a)と同様に、円盤21の回転に応じて積分回路24の出力電圧は上昇と下降を繰り返し、円盤21の回転速度が目標の回転速度に到達して安定するようになると(図5(b)の時刻tb、図5(c)の時刻tc)、出力電圧Vo1が上昇する期間に上昇する電圧と出力電圧Vo1が下降する期間に下降する電圧との差ΔVは、略0になる。
【0057】
ただし、出力電圧Vo1が上昇する期間及び出力電圧Vo1が下降する期間は、回転速度が速くなるにつれて短くなるため、出力電圧Vo1が上昇する期間に上昇する出力電圧Vo1と出力電圧Vo1が下降する期間に下降する出力電圧Vo1との差ΔVも、回転速度が速くなるにつれて、つまり、図5(c)(b)(a)の順に小さくなる。このため、円盤21の回転速度が速いほど、立ち上がりにかかる時間の間に上昇する電圧と立ち下がりにかかる時間の間に下降する電圧との差ΔVが略0になるまでにかかる時間、つまり、出力電圧Vo1が安定するまでにかかる時間が短くなる。
【0058】
図3に戻り、電圧特性記憶部11は、円盤21の回転速度と、電圧検出部26で検出される検出電圧の変化の態様との対応関係を示す電圧特性情報とを予め対応付けて記憶する。具体的には、電圧特性記憶部11は、例えば、フラッシュメモリまたはハードディスク等によって構成されている。
【0059】
回転速度検出部12は、円盤21が回転を開始した後に電圧検出部26によって検出された検出電圧の変化の態様から、電圧特性記憶部11に記憶されている電圧特性情報に基づき回転速度を取得する。
【0060】
具体的には、例えば、図6は、平滑回路25の出力電圧Vo2、つまり、電圧検出部26によって検出された検出電圧の時系列変化の一例を示している。尚、図6は、試験運転等の実験値に基づいて、上記の図5(a)(b)(c)と同様に、受光部23が円盤21のスリットSLを介して発光部22から出射された光を受光する状態であって、0のレベルの電圧が積分回路24及び平滑回路25から出力される時点を開始時点(時刻0)とした場合における、円盤21が回転を開始した後の電圧検出部26によって検出された検出電圧Vo2の時系列変化を、円盤21の目標の回転速度va,vb,vc毎に示している。また、図6では、回転速度vc,vb,vaの順に、円盤21の目標の回転速度が速いことを示している。つまり、回転速度vcが最も速いことを示している。
【0061】
ここで、当該検出電圧Vo2の時系列変化において、円盤21の回転が開始されてから時間tdが経過した時点で、全ての回転速度va,vb,vcに対応する検出電圧が安定していることから、当該時間tdが基準時間として予め定められている。そして、円盤21の回転が開始されてから予め設定された基準時間tdが経過したときの検出電圧Va,Vb,Vcと、円盤21の回転速度va,vb,vcと、を対応付ける情報が、電圧特性情報として電圧特性記憶部11に記憶されている。
【0062】
この場合、回転速度検出部12は、円盤21の回転開始から基準時間tdが経過したとき、当該電圧特性情報によって検出電圧と対応付けられた回転速度を、回転速度として電圧特性記憶部11から取得する。
【0063】
具体的には、例えば、回転速度検出部12は、円盤21の回転開始から基準時間tdが経過したときに、電圧検出部26によって検出された検出電圧がVbを示したとすると、電圧特性記憶部11に記憶されている当該電圧特性情報から、当該検出電圧Vbに対応付けられた回転速度vbを円盤21の回転速度として取得する。
【0064】
このように、上記実施形態の構成によれば、円盤21の回転速度を検出する上で、電圧特性記憶部11に記憶されている電圧特性情報に基づいて回転速度を取得する処理負荷がかかることになる。しかし、例えば、受光部23から出力される2つのレベルの電圧の変化を示すパルス信号のパルス数をカウントしながら、CPUのタイマーポートを用いて得られる経過時間を用いて、パルス信号の周波数としての単位時間当たりのパルス数を算出し、当該算出したパルス信号の周波数とスリットSL間隔に対応する円周方向の角度を用いて回転速度を算出する場合に比して、当該2つの演算処理を行うことがない分、演算処理の負荷を軽減することができる。
【0065】
また、例えば、F/Vコンバータ(frequency/voltage converter)を用いて、受光部23から出力される2つのレベルの電圧の変化を示すパルス信号を、パルスの周波数に比例した直流電圧に変換し、当該直流電圧の電圧値から回転速度を算出する場合に比して、F/Vコンバータを設ける必要がない分、速度検出装置2の構成を簡素化することができる。
【0066】
尚、図5では、説明のために、積分回路24の出力電圧Vo1のピークトゥピーク電圧Vp−pを拡大して示しているが、円盤21の回転が開始されてから予め設定された基準時間tdが経過したときの検出電圧Va,Vb,Vcに対して、ピークトゥピーク電圧Vp−pが十分に小さくなるように、積分回路24の積分定数を設定することにより、平滑回路25を設けず、積分回路24の出力電圧Vo1を電圧検出部26によって検出する構成にしてもよい。
【0067】
また、電圧特性記憶部11に記憶しておく電圧特性情報を、例えば、図6に示すように、円盤21の回転速度va,vb,vcと、円盤21の回転が開始された後に、電圧検出部26によって検出された検出電圧が略一定になるときのその検出電圧Va,Vb,Vcとを、対応付ける情報としてもよい。
【0068】
これに合わせて、回転速度検出部12を、円盤21の回転開始後、CPUのタイマーポートから得られるクロック信号と同期を取りながら、電圧検出部26によって検出された検出電圧と、直前にRAMに記憶しておいた検出電圧との差分を算出し、これを検出電圧の単位時間当たりの変化量とするように構成してもよい。
【0069】
そして、これに合わせて、回転速度検出部12を、当該変化量が、予め定められた基準値を下回ったときに、検出電圧が略一定になったものとして、電圧特性記憶部11に記憶されている電圧特性情報から、電圧検出部26によって検出された検出電圧に対応付けられた回転速度を、円盤21の回転速度として取得するように構成してもよい。尚、予め定められた基準値には、例えば、試験運転等の実験値に基づいて、検出電圧が略一定になったときの検出電圧の変化量が予め設定されている。
【0070】
具体的には、図6に示すように、円盤21の回転開始から基準時間tdを経過した時点において、回転速度検出部12は、算出した検出電圧の単位時間当たりの変化量が予め定められた基準値を下回ったと判断すると、電圧特性記憶部11に記憶されている当該電圧特性情報から、当該判断をしたときの検出電圧Vbに対応付けられた回転速度vbを円盤21の回転速度として取得する。
【0071】
または、電圧特性記憶部11に記憶しておく電圧特性情報を、円盤21の回転開始後、検出電圧が予め設定された基準電圧になるまでの時間と、回転速度と、を対応付ける情報としてもよい。
【0072】
そして、これに合わせて、回転速度検出部12を、円盤21の回転開始後、検出電圧が基準電圧になるまでの時間を計時し、その計時された時間と、電圧特性情報によって対応付けられた回転速度を、円盤21の回転速度として取得するように構成してもよい。
【0073】
具体的には、例えば、図7は、平滑回路25の出力電圧Vo2、つまり、電圧検出部26によって検出された検出電圧の時系列変化の一例を示している。尚、図7は、試験運転等の実験値に基づいて、上記の図6と同様に、受光部23が円盤21のスリットSLを介して発光部22から出射された光を受光する状態であって、0のレベルの電圧が積分回路24及び平滑回路25から出力される時点を開始時点(時刻0)とした場合における、円盤21が回転を開始した後の電圧検出部26によって検出された検出電圧Vo2の時系列変化を、円盤21の目標の回転速度va,vb,vc毎に示している。また、図7においても、図6と同様に、回転速度vc,vb,vaの順に、円盤21の目標の回転速度が速いことを示している。つまり、回転速度vcが最も速いことを示している。
【0074】
ここで、当該検出電圧Vo2の時系列変化において、例えば、円盤21の回転開始後、回転速度が安定して検出電圧が略一定になるまでの間の過渡期の検出電圧Vdが基準電圧Vdとして予め定められている。ただし、基準電圧Vdをこれに限定する趣旨ではない。
【0075】
そして、各回転速度va,vb,vcを目標の回転速度として円盤21を回転させたときに、円盤21の回転開始時点から、検出電圧が基準電圧Vdになるまでにかかる時間ta,tb,tcと、回転速度va,vb,vcと、を対応付ける情報が、電圧特性情報として電圧特性記憶部11に記憶されている。
【0076】
これに合わせて、回転速度検出部12は、円盤21の回転開始後、検出電圧が上記の予め設定された基準電圧Vdになるまで計時した時間が、例えばtbであったとすると、電圧特性記憶部11に記憶されている当該電圧特性情報から、当該時間tbに対応付けられた回転速度vbを円盤21の回転速度として取得する。
【0077】
つまり、この構成によれば、回転速度検出部12は、電圧検出部26によって検出された検出電圧が基準電圧Vdになった時点で、迅速に円盤21の回転速度を検出することができる。
【0078】
また、上記実施形態では、電圧特性情報を、図6及び図7に示すように、受光部23が円盤21のスリットSLを介して発光部22から出射された光を受光する状態であって、0のレベルの電圧が積分回路24及び平滑回路25から出力される時点を開始時点(時刻0)とした場合における、円盤21が回転を開始した後の検出電圧Vo2の時系列変化を用いて構成していた。
【0079】
しかし、例えば、図8に示すように、試験運転等の実験値に基づいて、円盤21によって発光部22から出射された光が遮断された状態であって、電源E1から積分回路24に向けて電流が供給され、電圧V1が抵抗R1によって降圧された後の電圧が、積分回路24及び平滑回路25から出力される時点を開始時点(時刻0)とした場合における、円盤21が回転を開始した後の検出電圧の時系列変化を、円盤21の目標とする回転速度va,vb,vc毎に示しておき、当該時系列変化を用いることによって電圧特性情報を構成してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、本発明に係る速度検出装置を複写機1に適用する例について説明したが、これに限定する趣旨ではない。本発明に係る速度検出装置は、用紙に画像を形成する画像形成部と、回転速度検出部によって取得された回転速度を用いて、画像形成部の動作を制御する制御部と、を備える、カラー画像形成用のカラープリンタや、スキャナ装置、ファクシミリ装置、プリンタ装置及びコピー装置等の画像形成装置に適用してもよい。
【0081】
また、上記実施形態において図1乃至図8に示した構成及び設定は単なる一例に過ぎず、本発明を当該実施形態に限定する趣旨ではない。例えば、速度検出装置2は、平滑回路25を備えない簡素化した構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 複写機(画像形成装置)
10 制御部
11 電圧特性記憶部
12 回転速度検出部
2 速度検出装置
21 円盤
22 発光部
23 受光部
24 積分回路
25 平滑回路
26 電圧検出部
40 画像形成部
412 給紙ローラ
413 搬送ローラ
414 搬送ローラ
415 搬送ローラ
RS 回転軸
SL スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に取り付けられ、円周に沿って等間隔に径方向に伸びるスリットが形成された円盤と、
前記円盤の一方の面側に設けられた発光部と、
前記円盤の他方の面側に設けられ、前記スリットを介して前記発光部から出射された光を受光したか否かに対応する2つのレベルの電圧を出力する受光部と、
前記受光部から出力された電圧を積分する積分回路と、
前記積分回路から出力された出力電圧を検出電圧として検出する電圧検出部と、
前記回転軸の回転速度と、前記検出電圧の変化の態様との対応関係を示す電圧特性情報とを予め対応付けて記憶する電圧特性記憶部と、
前記回転軸が回転を開始した後に前記電圧検出部によって検出された検出電圧の変化の態様から、前記電圧特性情報に基づき前記回転速度を取得する回転速度検出部と、
を備える速度検出装置。
【請求項2】
前記電圧特性情報は、前記回転軸の回転が開始されてから予め設定された基準時間が経過したときの前記検出電圧と前記回転軸の回転速度とを対応付ける情報であり、
前記回転速度検出部は、前記回転軸の回転開始から前記基準時間が経過したとき、前記電圧特性情報によって前記電圧検出部によって検出された検出電圧と対応付けられた前記回転軸の回転速度を、前記回転軸の回転速度として前記電圧特性記憶部から取得する請求項1に記載の速度検出装置。
【請求項3】
前記電圧特性情報は、前記回転軸の回転速度と、前記回転軸の回転が開始された後前記電圧検出部によって検出された検出電圧が略一定になるときのその検出電圧とを対応付ける情報であり、
前記回転速度検出部は、前記回転軸の回転開始後、前記検出電圧の単位時間当たりの変化量が予め定められた基準値を下回ったときに前記電圧検出部によって検出された検出電圧と、前記電圧特性情報によって対応付けられた前記回転軸の回転速度を、前記回転軸の回転速度として取得する請求項1に記載の速度検出装置。
【請求項4】
前記電圧特性情報は、前記回転軸の回転開始後、前記検出電圧が予め設定された基準電圧になるまでの時間と、前記回転速度とを対応付ける情報であり、
前記回転速度検出部は、前記回転軸の回転開始後、前記電圧検出部によって検出された検出電圧が前記基準電圧になるまでの時間を計時し、その計時された時間と、前記電圧特性情報によって対応付けられた前記回転軸の回転速度を、前記回転軸の回転速度として取得する請求項1に記載の速度検出装置。
【請求項5】
前記積分回路は、前記受光部から出力された電圧を積分した後、平滑化して前記出力電圧として出力する請求項1から4の何れか一項に記載の速度検出装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の前記速度検出装置と、用紙に画像を形成する画像形成部と、前記回転速度検出部によって取得された回転速度を用いて、前記画像形成部の動作を制御する制御部と、を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−96746(P2013−96746A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237426(P2011−237426)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)