説明

連結および連結解除され得る荷重レシーバ

【課題】荷重レシーバをすばやく簡単な方法で秤量セルの荷重伝達部材に取り付け、そこから取り外すことを可能にする秤量セルを備えた重量測定装置を提供する。
【解決手段】重量測定装置は、荷重伝達部材124を有する秤量セル121を含む。荷重レシーバ110は、開放可能な連結によって荷重伝達部材124に結合され得る。機械的止め部141が、荷重伝達部材124上に形成され、対の機械的止め部143が、荷重レシーバ110上に形成される。偏心ボルト112を用いて荷重レシーバ110および荷重伝達部材124を係合させることにより、機械的止め部141は、対の機械的止め部143に対して押し付けられ得、それによって止め部141は、対の止め部143に対してきつくクランプ締めされ得る。この配置により、荷重レシーバ110は、荷重伝達部材124に堅固に固定され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重伝達部材を含む秤量セルを備えた重量測定装置であって、荷重レシーバが荷重伝達部材に開放可能に連結され得る重量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種類の重量測定装置は、たとえば多くの工業分野では、特に研究開発部の研究室において秤および秤量モジュールとしての役目を果たしているが、製造部門、たとえば品質管理においても秤量モジュールとしての役目を果たしている。秤量モジュールは、ディスプレイおよび/またはデータ入力装置が、秤量セルおよび秤量セルハウジングから離して中に配置されている秤である。
【0003】
EP1576343B1では、秤量セルを備えた秤量モジュールが、断面図で概略的に示されている。秤量セルの荷重受け領域内に配置された荷重伝達部材は、その自由端部において、円錐台の形状に構成されている。この参照に示される荷重レシーバは、この円錐台状に形成された自由端部に適合する円錐孔を有する。通常、この種類の開放可能な連結に使用される円錐台は、小さい先細角度を有しており、それにより、偏心荷重下であっても、荷重レシーバは、ひっくり返って荷重伝達部材から落下することはない。この小さい先細角度により、極めて高いレベルの接触圧力または耐力が接触表面の領域内に生じる。したがって、このタイプの連結は、連結が金属製の場合でも、小さい荷重容量を有する秤にしか適さない。さらに、このタイプの連結は、秤量セルに関連する、荷重レシーバの質量重心の規定された位置以外に、荷重レシーバの規定された向きが重要でない場合にしか、すなわち回転対称の荷重レシーバまたは秤量パンにしか使用され得ない。
【0004】
上述の理由に基づき、このタイプの連結は、たいていの場合は工業用途における秤量モジュールには適していない。したがって、荷重レシーバは、通常、荷重伝達部材上にねじ込まれる。これは、荷重レシーバ全体が秤量セルに対して回転されなければならないため、荷重レシーバの取り付けおよび取り外しは非常に時間がかかるという欠点を有する。これは、たとえばコンベヤーベルト、容器用のクランプ締め装置、および類似のものなどの用途特有の装置が荷重レシーバに取り付けられており、荷重レシーバが荷重伝達部材からねじって外され得る前に、これらの用途特有の装置が先ず荷重レシーバから取り外されなければならないほど空間的寸法が狭い場合は特に問題となる。用途特有の装置を備えた秤量モジュールは、大量生産品の分配および検査のための製造システムの充填および検査装置にしばしば使用される。そのようなシステムは、多くの場合、複数の走路を有して設計され、それにより、複数の秤量モジュールが、その搬入および搬出コンベヤー装置と共に、非常に制限された空間内に平行に配置される。
【0005】
現況技術における別の変形形態によれば、荷重レシーバまたは秤量パンは、荷重レシーバおよび荷重伝達部材の中心長手方向軸に沿って配置されたねじを用いて荷重伝達部材に取り付けられる。これによって荷重レシーバを荷重伝達部材からより容易に、すなわち荷重レシーバ全体を回転させる必要無く連結解除することが可能になるが、ねじ穴が、荷重レシーバ内に漏れを生じさせ、これは封止される必要がある。そのようなねじ連結は、ねじが水平面上に配置され、汚染物質がねじ頭周辺に堆積し得るので、多くの場合、衛生および洗浄に関する問題のために極めて望ましくないものである。洗浄するために荷重レシーバをすばやく取り付けて取り外す能力が非常に重要であることは、特にたとえば食品および製薬業界におけるそのような生産システムの洗浄に関する厳しい要件を満たすためには、自明の理である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP1576343B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、荷重レシーバをすばやく簡単な方法で秤量セルの荷重伝達部材に取り付け、そこから取り外すことを可能にする秤量セルを備えた重量測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を備えた重量測定装置によって解決される。本発明の別の好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
重量測定装置は、荷重伝達部材を備えた秤量セルを備える。荷重レシーバは、開放可能な連結によって荷重伝達部材に連結され得る。機械的止め部が荷重伝達部材上に、対の機械的止め部が荷重レシーバ上に形成される。荷重レシーバおよび荷重伝達部材と係合する偏心ボルトを用いて、機械的止め部は、対の機械的止め部に対してクランプ締めされ得、それによって止め部は、対の機械的止め部に対して予め引っ張り力がかけられ得る。この配置により、荷重レシーバは、荷重伝達部材に堅固に固定され得る。
【0010】
ねじまたは荷重レシーバ全体を何度も回転させることを必要とする代わりに、荷重レシーバは、荷重レシーバを荷重伝達部材上に簡単に設置し、偏心ボルトを挿入し、偏心ボルトを360°未満で回転させることによって荷重伝達部材に堅固に取り付けられ得る。
【0011】
本発明の1つの実施形態では、荷重レシーバが所定の位置にしっかりと固定されているとき、機械的止め部および対の機械的止め部は、荷重の方向に対して垂直である平面に沿うように方向付けられる。「荷重の方向」という用語は、荷重レシーバ上に作用する最大力の方向を意味する。これは通常、重力の方向である。その結果、秤量セルに関連する、または重量測定装置の周囲に対する荷重レシーバの位置は、垂直方向を基準として常に正確に規定される。さらに、機械的止め部および対の機械的止め部のこうした配置は、上記で述べられた円錐連結と比べて、非常に大きな荷重支持容量を有する平坦で平面的な接触表面を使用することを可能にする。また、荷重レシーバ上に作用する重量力は、止め部の接触表面に対して作用する締め付け力と同じ方向に働き、この締め付け力の方向は止め部の接触表面の向きによって決定されるため、この荷重支持容量が、偏心ボルトの締め付け力によって低減されることはない。荷重が荷重レシーバ上に置かれるとき、締め付け力は低減されるので、荷重レシーバ上に荷重を置くことで止め部の表面上に過荷重の応力は生じ得ない。
【0012】
偏心ボルトは、少なくとも1つの軸受部と、少なくとも1つの偏心シリンダとを有する。軸受部も、好ましくは、円筒状に構成される。さらに、偏心シリンダは、軸受部に対する規定された偏心度を有して配置される。
【0013】
別の実施形態では、荷重レシーバが所定の位置にしっかりと固定されるとき、荷重伝達部材および軸受部のそれぞれの中心長手方向軸は、直角に交差する。このため、連結内に均一の応力分布がもたらされ、これが、荷重支持容量のさらなる増加に寄与する。
【0014】
好ましくは、荷重伝達部材は、偏心シリンダを受け入れるための少なくとも第1のボア穴を有し、荷重レシーバは、軸受部を受け入れるための少なくとも第2のボア穴を有する。偏心ボルトを用いて締め付け力を生成することを可能にするために、対の機械的止め部と第2のボア穴の中心長手方向軸の間の距離は、止め部と第1のボア穴の中心長手方向軸の間の間隔、偏心度の量、および偏心シリンダの半径を加算し、第1のボア穴の半径を差し引いた結果よりも小さいものでなければならない。ボア穴ならびに軸受部および偏心シリンダの偏心度、距離、間隔および直径のそれぞれの量は、互いに係合状態である材料の弾性および柔軟性に合致させる必要があり、それにより、偏心ボルトは、ボア穴に着座した際、偏心ボルトの死点を超えて回転され得ず、それによって締め付け力の損失が生じる。この文脈における「死点」は、最強の締め付け力が発生させられ得る偏心ボルトの位置を言及している。これは、第2のボア穴、第1のボア穴、および偏心シリンダの個々の中心長手方向軸が、同じ平面内に互いに平行に位置合わせされることを意味している。
【0015】
さらに、荷重レシーバが所定の位置に固定されるとき、偏心ボルトは、荷重レシーバ上に作用する力または振動の結果、ボア穴内で回転できないように自己妨害型であることがたいていの場合に望ましく、この作用する力または振動は、荷重伝達部材からの荷重レシーバの分離をもたらすことがあり、重量測定装置に損傷を生じさせることがある。こうした自己妨害型の挙動を達成するためのおおよその解決策として、てこ率によって修正された偏心度が、偏心シリンダと第1のボア穴の間に存在する摩擦係数に偏心シリンダの半径を掛けた積よりも小さくなるように選択される。摩擦係数は、偏心ボルトおよび荷重伝達部材の材料および表面特性に依存する。荷重レシーバの固定された状態におけるてこ率は、第1のボア穴内の偏心シリンダの位置に依存する。当然のことながら、自己妨害挙動を高める摩擦力はまた、軸受部と第2のボア穴の間にも存在する。
【0016】
知られている現況技術の秤量セルの秤量結果の精度は、程度の差はあるが、温度変化によって強く影響される。特に本発明の用途の一次領域では、秤量対象物は、荷重レシーバ上に置かれるその時点においてそれら固有の広きにわたるさまざまな温度を有することができる。荷重レシーバから秤量セルへの熱の伝播を防止するために、荷重伝達部材は、低熱伝導性の材料を含有することができる。好ましくは荷重伝達部材の一部は、ポリマーまたはセラミック材料から作られる。
【0017】
重量測定装置における別の問題領域は、さまざまな部分の電位間の相違に関するものである。帯電の蓄積により、たとえば、荷重レシーバが重量測定装置の他の部分に引きつけられる可能性があり、これも同様に、秤量対象物の実際の秤量値からの測定された値の偏差を大きくし得る。荷重レシーバ上の帯電の蓄積を回避するために、秤量セルおよび荷重レシーバは、好ましくは導電性材料から作られ、導電性連結、たとえば接触ばねが、秤量セルと荷重レシーバの間に配置される。この配置は、重量測定装置のハウジング、装置内に配置された秤量セル、および荷重レシーバが同じ電位にあることを保証する。
【0018】
しかし、荷重レシーバへのこの種類の直接的な電気的導通(electrical continuity)を備えた重量測定装置は、荷重レシーバがアンテナのように働くため、環境からの電磁波による障害を非常に受けやすくなり得る。驚くべきことに、圧縮または伸張性の渦巻きばねの形態の接触ばねが、これらの影響を最低限に抑えるのに特に良好に適していることが見出された。ばねの巻き数が多くなるほど、秤量セルおよび秤量セルの電気的および電磁的構成要素内への電磁波による障害の伝達に関する減衰効果も大きくなる。したがって、低熱伝導性の部分の長さおよび接触ばねの巻き数が大きくなるほど、上記で述べられた周囲の影響因子が秤量セルに与える影響を最低限に抑えることがより可能になる。
【0019】
重量測定装置、すなわち秤または秤量モジュールは、従来の設計によって構築される。これは、秤量セルがハウジング内部に配置されることを意味する。ハウジングは、秤量セルに連結された荷重伝達部材がそこを通って外側に到達する貫通開口部を有する。装置がどこで使用されるかに応じて、ハウジングは、埃および/または水分が秤量セル内に浸透するのを防止するために特定の封止要件を満たす必要がある。荷重レシーバおよびハウジングは互いに接触させることができないため、ハウジングと荷重レシーバの間に非接触の封止システムが配置されることが好ましい。そのような封止システムは、たとえばEP1576343B1に開示されたようなラビリンスバッフル封止体の形態を有することができる。荷重伝達部材には、さらに、過荷重防止装置が装備され得る。過荷重防止装置は、荷重レシーバ上に置かれ得る最大秤量荷重の重量力よりもわずかに大きいばね力を有するばね要素を含む。このばね力が超過するとすぐに、秤量セルと荷重レシーバの間に配置された荷重伝達部材は、低い高さに潰れ、荷重レシーバはハウジング上に載置し、それにより、荷重レシーバ上に作用する力は、ハウジングによって直接的に吸収される。
【0020】
荷重レシーバは、好ましくは、容易に洗浄され、秤量対象物に安定した支持を与えることができるように平坦で平面的な表面を有する。平坦な表面は、さらに、用途特有の装置の取り付けを容易にする。たとえば、用途特有の装置は、適切なクランプ締め装置を用いて荷重レシーバにクランプ締めされ得る。当然のことながら、荷重レシーバ上には、少なくとも1つの準備された装着場所、たとえば用途特有の装置を取り付けるためのねじ山を含むこともできるボア穴も形成され得る。
【0021】
上記で説明されたように、軸受部または偏心ボルトのそれぞれの中心長手方向軸は、荷重伝達部材の中心長手方向軸に対して直角に配置され得る。偏心ボルトを所定の位置に設置することを可能にするために、荷重レシーバ上には、横方向のボア穴が存在する必要があり、このボア穴は、場合によっては、ごみがボア穴内に堆積できないように、あるいはごみまたは液体がハウジングの内部に浸透することさえもできるように封止される必要があり得る。しかし、封止体を使用することにより、荷重レシーバを外す際の偏心ボルトの取り外しが困難になり得る。この問題は、好ましくは、弾性の取り出し要素を用いて解決され、この弾性の突出要素を用いることによって、荷重レシーバの固定連結が開放されているときに、偏心ボルトがボア穴から少なくとも部分的に押し出される。弾性の突出要素としては、たとえば圧縮コイルばね、ゴム要素、ガスシリンダおよび類似のものが好ましい。
【0022】
原則的に、機械的止め部および対の機械的止め部は、互いに対向する平坦で平面的な表面として構成され得る。締め付け力の結果、機械的止め部は、対の機械的止め部に対して押し付けられる。十分な締め付け力のもと、止め部間の摩擦力は、たとえ水平力が荷重レシーバ上に作用している場合であっても、荷重レシーバがあらゆる水平方向に移動することを防止する。しかし、荷重レシーバを荷重伝達部材に連結するプロセスを容易にするために、特に2つの部分間の精密な予め定められた位置合わせを可能にするために、荷重レシーバおよび荷重伝達部材は、形態係止位置決め要素を有することができる。突起部、ピンおよびボア穴、カラー、スリーブ、先端面取り部を備えた輪郭および類似のものが、この機能を実行するのに適している。
【0023】
本発明による重量測定装置および荷重レシーバへのその取り付けは、以下の図に基づいてより詳細に説明され、この図においては、個々の図において同一である要素は、同じ参照記号によって特定される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】荷重レシーバが所定の位置に固定された、秤量モジュールの形態の重量測定装置の三次元図である。
【図2】図1の秤量モジュールの一方側から見た断面図である。
【図3】荷重レシーバ、偏心ボルト、および荷重伝達部材の一部の三次元展開図である。
【図4】図3の荷重レシーバの一方側から見た断面図であり、この断面図の平面は、偏心ボルトおよび荷重伝達部材の中心長手方向軸を含む。
【図5】図3の荷重レシーバの一方側から見た断面図であり、この断面図の平面は、荷重伝達部材の中心長手方向軸を含み、偏心ボルトの中心長手方向軸に直交している。
【図6】固定して締め付けられた状態にある偏心シリンダおよび第1のボア穴、ならびに連結を締め付けた結果生じる一次力を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、荷重レシーバ110が所定の位置に固定された秤量モジュール120の形態の重量測定装置100の三次元図を示している。秤量モジュール120は、基板131と、基板131に開放可能に連結されたハウジング129とを含む。秤量セル(ここでは図示されず)は、ハウジング129の内部に配置される。基板131は、締結場所132を有し、それにより、秤量モジュール120は、たとえば複数走路の秤量システム内に取り付けられ得る。荷重レシーバ110は、偏心ボルト112を用いて、荷重伝達部材(これも同様にここでは図示されず)上に堅固に固定される。
【0026】
図2は、図1の秤量モジュール120を側面図で示しており、ここでは、ハウジング129および荷重レシーバ110は、断面図で示されている。ハウジング129の内部には、平行誘導機構を備えた秤量セル121が配置されている。平行誘導機構は、固定式の平行脚部122と、可動式の平行脚部123とを有し、ここでは、可動式の平行脚部123は、2本の平行誘導部材133、134を用いて固定式の平行脚部122に連結されている。固定式の平行脚部122は、中間支持体127を経由した基板への固定連結を有する。
【0027】
また、中間支持体127上には、可動式の平行脚部123と作動係合され得る較正用分銅136を有する較正装置135が配置される。
【0028】
可動式の平行脚部123は、荷重伝達部材124に連結される。この連結は、堅固なものではない。荷重伝達部材124は、直線的な垂直の可動性を有して可動式の平行脚部123と繋がれており、過荷重安全止め部126を有する。加えて、荷重伝達部材124と可動式の平行脚部123の間には、過荷重安全ばね125が配置されている。過荷重安全ばね125のばね力は、荷重レシーバ110上に置くことが可能な最大荷重よりもわずかに大きい。より大きな荷重が荷重レシーバ110上に置かれるとすぐに、過荷重安全ばね125は降伏し、過荷重安全止め部126は中間支持体127上に載置するようになる。この過荷重安全装置は、秤量セル121の機械的破壊を回避する役目を果たす。
【0029】
荷重伝達部材124は、ハウジング129の通路137を通して伸びており、それにより、荷重レシーバ110は、秤量セル121から見て外方を向く荷重伝達部材124の端部に取り付けられ得る。荷重レシーバ110およびハウジング129の断面図が示すように、荷重レシーバ110とハウジング129の間の領域は、ラビリンスバッフル封止体138として構成され、このラビリンスバッフル封止体138は、荷重伝達部材を取り囲み、荷重レシーバ110上およびハウジング129上に交互に配置された複数の同心リング要素から構成される。荷重レシーバ110は、緊密な嵌合で荷重伝達部材124を抱えるリング要素として構成された位置決め要素150を含む。位置決め要素150は、必ずしも必要でないが、荷重伝達部材124上での荷重レシーバ110の取り付けおよび位置合わせを極めて容易にすることが、本明細書において述べられるべきである。
【0030】
図はさらに、荷重レシーバ110および荷重伝達部材124内に形成されたボア穴111、118、119、142に着座する偏心ボルト112を示している。ボア穴の各々は、特有の機能を有する。荷重伝達部材124内に形成された第1のボア穴142は、偏心ボルト112、より詳細には偏心ボルト112の一部であり、図3の文脈において説明される偏心シリンダ115の力伝達接触領域としての役目を果たす。荷重レシーバ110上、より詳細には位置決め装置150内に形成された第2のボア穴118および第4のボア穴119も、偏心ボルト112の力伝達接触領域、より詳細には図3の文脈で説明される軸受部116、117の座部としての役目を果たす。しかし、1つの軸受部のみに第2のボア穴118だけが存在することもある。荷重レシーバ110は、さらに、第3のボア穴111を有し、これは、偏心ボルト112が所定の位置に設置され、その中心長手方向軸の周りの回転によって締め付けられ得る前提条件である。偏心ボルト112がボア穴111、118、119、142内に設置された後で、これを回転させることにより、第1のボア穴142が第2のボア穴118から離れるように移動され、それにより、荷重伝達部材124上に形成された機械的止め部141が、荷重レシーバ110上に形成された対の機械的止め部143に押し付けられるために、締め付けが生じる。
【0031】
第3のボア穴111により、偏心ボルト112は、常に外側からのアクセスが可能な状態となる。さらに、第3のボア穴111の円筒状の壁は、弾性の封止体153(図3に図示される)の封止表面としての役目を果たし、それにより、ごみまたは液体が、この経路に沿ってラビリンスバッフル封止体138内に浸透できなくなる。
【0032】
図3は、荷重レシーバ110、偏心ボルト112、および荷重伝達部材124の一部の三次元の展開図を示している。荷重レシーバ110は、たとえば容器用の専用ホルダ、コンベヤーベルト、および類似のものなどの用途特有の装置200が締結され得る4つの装着場所152を有する。これらのアダプタの設計は、秤量モジュールの特有の作動状況に適合され、したがって個別的に変わるため、用途特有の装置200は、一点鎖線で描かれている。
【0033】
図3はまた、本発明による締結構成の優れた利点も示している。用途特有の装置200は、荷重レシーバ110が秤量セルから分離されている間に荷重レシーバ110に取り付けられ得る。したがって、秤量セルは、この組立てステップ中に生じる力から保護され得る。次に、荷重レシーバ110は、用途特有の装置200と共に、上記で説明された方法で偏心ボルト112を用いて荷重伝達部材124に連結される。当然のことながら、荷重レシーバ110の連結特有の要素もまた、用途特有の装置200上に直接的に形成され得る。
【0034】
荷重レシーバ110は、さらに、図2の文脈ですでに説明された第3のボア穴111、ならびに第2および第4のボア穴(ここでは見られない)を含む。荷重伝達部材124は、好ましくは、金属から作られたロッド139と、形態係止連結によってロッド139に取り付けられた、たとえばセラミックまたはポリマーなどの断熱材から作られた頭部140とを含む。また、第1のボア穴142は、頭部140内に形成される。この種類の頭部140の場合、荷重伝達部材124は、低熱伝導性の材料を含み、それによって荷重レシーバ110は、秤量セルから熱的に分離される。しかし、本明細書で先に説明されたように、荷重レシーバ110は、秤量セルに電気的に接続されなければならず、これが、接触ばね151が頭部140の制限領域内に配置されている理由である。また、平坦で輪状の表面領域を有する形態の機械的止め部141が、図では明白である。
【0035】
偏心ボルト112は、実質的にロッドの形状で構成され、ここでは、第1の軸受部116、第2の軸受部117、弾性封止体153のための封止リング溝114、および中間部分113が、共通の中心長手方向軸上に配置されている。第1の軸受部116と第2の軸受部117の間のロッド部は、偏心シリンダとして構成され、この偏心シリンダの中心長手方向軸は、軸受部116、117の中心長手方向軸を平行に通っているが、軸受部116、117の中心長手方向軸からの偏心度の量Exだけずれている。
【0036】
図4は、荷重伝達部材124上に着座し、固定された図3の荷重レシーバ110を側部から見た断面図で示しており、ここでは、断面の平面は、偏心ボルト112および荷重伝達部材124のそれぞれの中心長手方向軸を含んでいる。偏心ボルト112およびその偏心シリンダ115の配置ならびに偏心ボルト112の中心長手方向軸からの偏心シリンダ115の偏心度Exが、図4からはっきりとわかる。偏心ボルト112は、第3のボア穴111、第2のボア穴118、第4のボア穴119および第1のボア穴142を横断する。ボア穴111、118、119、142は、漸減する直径を有し、それにより、偏心ボルト112は、問題なく挿入され得る。また、第3のボア穴111内の取り付けられた位置にある弾性の封止体153も明白である。弾性の封止体153は圧縮嵌合が必要となるため、分解中、偏心ボルト112は、ボア穴111、118、119、142から取り外すことが困難になる得る可能性がある。分解工程を容易にするために、偏心ボルト112は、取り出し要素155としての役目を果たす圧縮渦巻きばねを有することができる。そのばね力は、弾性の封止体153によって引き起こされた摩擦力に打ち勝つほどの大きさのものであり、それによって偏心ボルト112は、その中心長手方向軸周りで回転させて緩められた後、取り出し要素155によってボア穴111、118、119、142から押し出されるようになる。
【0037】
図5は、ここでも、図3の荷重レシーバ110を側部から見た断面図で示しており、ここでは、断面の平面は、荷重伝達部材124の中心長手方向軸を含んでおり、偏心ボルト112の中心長手方向軸に対して直角に延びている。また、締め付けられた状態にある偏心シリンダ115の位置もここでははっきりとわかる。荷重レシーバ110の取り付け不良を防止するために、偏心ボルト112が決して全回転360°で回転され得ないように、偏心度EXは、荷重レシーバ110、偏心ボルト112および荷重伝達部材124の弾性度のそれぞれの量の余地を含めて、十分大きく選択されなければならない。また、秤量セル内への電磁波による障害の伝達に関する強度の減衰効果を有する電気接続を提供する接触ばね151も図に示されている。
【0038】
図6は、固定され、したがって締め付けられた状態の偏心シリンダ115および第1のボア穴142、ならびに固定した連結の結果生じる一次力を概略的に示している。読み手の向きに合わせて、第2のボア穴118は、破線で示されており、その中心Zでは、偏心ボルトの中心長手方向軸が図の平面に対して直角に延びている。この中心長手方向軸は、それと同時に偏心ボルトの回転軸、したがって偏心シリンダ115の回転軸でもある。偏心ボルト112をその中心長手方向軸の周りで反時計回りに回転させることにより、偏心度Exだけずれている偏心シリンダ115の中心長手方向軸は、円形路Yに沿って、重力の方向に実質的に対抗して移動される。
【0039】
したがって、第1のボア穴142は、機械的止め部141が一点鎖線によって示された対の機械的止め部143に対して載置するまで、重力の方向に対抗して第2のボア穴118に対して移動される。
【0040】
対の機械的止め部143と第2のボア穴118の中心長手方向軸の間の距離Dは、機械的止め部141と第1のボア穴142の中心長手方向軸の間の間隔A、偏心度の量E、および偏心シリンダ115の半径rを加算し、第1のボア穴142の半径rを減じることによって得られた総計よりも小さいものであるため、機械的止め部141は、対の機械的止め部143に押し付けられ得る。引き続き偏心ボルトを回転させることにより、機械的止め部141と偏心シリンダ115の間の荷重伝達部材の材料は、回転角度によって大きさが変わる圧縮力F下に置かれ得る。記号によって示されるように、偏心ボルト112と対の機械的止め部143の間にクランプ締めされた荷重伝達部材の材料は、偏心シリンダ115上に圧縮力Fを及ぼすばねのように作用する。当然ながら、偏心ボルトは、接触点P内の接触圧力が過剰にならないところまでしか回転され得ない。したがって、好ましくは、偏心ボルトを締め付けるために使用されるトルクの量が、明確に指定されるべきである。
【0041】
主要な要件として、幾何学的関係が、偏心ボルトに固定された連結がそれ自体緩むことができないような方法で、互いに係合された構成要素の摩擦特性に適合させて選択される必要がある。圧縮力F、より詳細にはその成分(substitute)代用Fは、偏心シリンダ115と第1のボア穴142の間の接触点Pで作用する。幾何学的状況により、代用力Fは、トルクMを生じさせ、ここでは、有効偏心度Exeffと称される有効レバーアームは、実際の偏心度Eではなく、代用力Fの作用線からの中心Zの垂直距離と同じである。論理的に言えば、この作用線は、偏心シリンダ115および第1のボア穴118の中心を通り、かつ接触点Pを通り抜ける。接触点P上で作用する摩擦力Fは、代用力Fの大きさおよび接触点Pのところに存在する摩擦係数μに応じて変化する。摩擦力Fは、トルクMに対抗する(hold up against)ことができるが、その理由は、この反作用するトルクMの有効レバーアームが、半径rにほぼ相当するからである。この幾何学的状況および摩擦係数μに基づき、偏心ボルトの自己妨害特性を誘発する偏心度Eは、以下の方程式を用いて近似的に決定され得る
=μ×r
偏心ボルトの自発的回転に反作用する摩擦力はまた、軸受部内にも存在するので、連結の意図されない緩みに対する十分な安全性が存在する。
【0042】
本発明は、特有の例示的実施形態を提示することによって説明されてきたが、たとえば荷重伝達部材の中心長手方向軸までしか延びない偏心ボルトの場合などの数多くの変形形態が、本発明の知識に基づいて創出され得ることが明確である。さらに、偏心ボルトの中心長手方向軸は、荷重伝達部材の中心長手方向軸と交差する必要は無く、あるいは荷重伝達部材の中心長手方向軸に直交する必要は無い。原則的に、考えられる解決策の範囲としては、荷重伝達部材上の機械的止め部を荷重レシーバ上に形成された対の機械的止め部に対して押し進めるのに適した、荷重伝達部材に対する偏心ボルトのあらゆる位置を含む。さらに、荷重レシーバを形態係止連結によって荷重伝達部材上に位置決めするのに適したスリーブ、ボア穴、ピン、機械的止め部、突起部、および類似のものなどの最も多様性のある手段が、使用されてよい。したがって、本発明の主題に加えられたそのような位置決め要素は、本発明の実体の一部であると考慮される。
【符号の説明】
【0043】
100 重量測定装置
110 荷重レシーバ
111 第3のボア穴
112 偏心ボルト
113 中間部分
114 封止リング溝
115 偏心シリンダ
116 第1の軸受部
117 第2の軸受部
118 第2のボア穴
119 第4のボア穴
120 秤量モジュール
121 秤量セル
122 固定式の平行脚部
123 可動式の平行脚部
124 荷重伝達部材
125 過荷重安全ばね
126 過荷重安全止め部
127 中間支持体
129 ハウジング
131 基板
132 締結場所
133 第1の平行誘導部材
134 第2の平行誘導部材
135 較正装置
136 較正用分銅
137 通路
138 ラビリンスバッフル封止体
139 ロッド
140 頭部
141 機械的止め部
142 第1のボア穴
143 対の機械的止め部
150 位置決め要素
151 接触ばね
152 装着場所
153 弾性の封止体
155 取り出し要素
200 用途特有の装置
A 間隔
D 距離
P 接触点
Y 円形路
Z 中心
偏心度
xeff 有効偏心度
偏心シリンダの半径
第1のボア穴の半径
μ 摩擦係数
トルク
反トルク
代用力
圧縮力
摩擦力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重伝達部材(124)を備えた秤量セル(121)を備え、荷重レシーバ(110)が前記荷重伝達部材(124)に開放可能に連結され得る重量測定装置(100)であって、機械的止め部(141)が、前記荷重伝達部材(124)上に形成され、対の機械的止め部(143)が、前記荷重レシーバ(110)上に形成され、偏心ボルト(112)を用いて前記荷重レシーバ(110)および前記荷重伝達部材(124)を係合させることにより、前記機械的止め部(141)が、前記対の機械的止め部(143)にクランプ締めされ得、それによって前記荷重レシーバ(110)が、前記荷重伝達部材(124)に堅固に固定され得ることを特徴とする重量測定装置(100)。
【請求項2】
前記荷重レシーバ(110)が固定された状態にあるとき、前記機械的止め部(141)および前記対の機械的止め部(143)が、前記荷重の方向に垂直である平面内に位置していることを特徴とする、請求項1に記載の重量測定装置(100)。
【請求項3】
前記偏心ボルト(112)が、少なくとも1つの軸受部(116、117)と、少なくとも1つの偏心シリンダ(115)とを有し、前記偏心シリンダ(115)が、前記軸受部(116、117)に対する規定された偏心度(Ex)で配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の重量測定装置(100)。
【請求項4】
前記荷重レシーバ(110)が固定された状態にあるとき、前記荷重伝達部材(124)の中心長手方向軸および前記軸受部(116、117)の中心長手方向軸が直角に交差することを特徴とする、請求項3に記載の重量測定装置(100)。
【請求項5】
前記荷重伝達部材(124)が、前記偏心シリンダ(115)を受け入れるための少なくとも第1のボア穴(142)を有し、前記荷重レシーバ(110)が、前記軸受部(116、117)を受け入れるための少なくとも第2のボア穴(118)を有し、前記対の機械的止め部(143)と前記第2のボア穴(118)の中心長手方向軸の間の距離(D)が、前記機械的止め部(141)と前記第1のボア穴(142)の前記中心長手方向軸の間の間隔(A)、偏心度の量(E)、および前記偏心シリンダ(115)の半径(r)を加算して、前記第1のボア穴(142)の半径(r)を減じた結果よりも小さいものであることを特徴とする、請求項3または4に記載の重量測定装置(100)。
【請求項6】
前記荷重レシーバ(110)が固定された状態にあるとき、てこ率によって修正された有効偏心度(Exeff)が、前記偏心シリンダ(115)と前記第1のボア穴(142)の間に存在する摩擦係数(μ)に前記偏心シリンダ(115)の前記半径(r)を掛けた積よりも小さいものであり、前記てこ率は、前記第1のボア穴(142)内の前記偏心シリンダ(115)の位置に依存することを特徴とする、請求項5に記載の重量測定装置(100)。
【請求項7】
前記荷重伝達部材(124)が、低熱伝導率性の材料、詳細にはポリマーまたはセラミック材料を含むことを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の重量測定装置(100)。
【請求項8】
前記秤量セル(121)および前記荷重レシーバ(110)が、導電性材料から作られ、導電性接触ばね(151)が、前記秤量セル(121)と前記荷重レシーバ(110)の間に配置されることを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の重量測定装置(100)。
【請求項9】
前記接触ばね(151)が、できるだけ多くの巻き数を有する圧縮コイルばねまたは引っ張りコイルばねであることを特徴とする、請求項8に記載の重量測定装置(100)。
【請求項10】
前記重量測定装置(100)が、通路(137)を備えたハウジング(129)を備え、前記秤量セル(121)が、前記ハウジング(129)内に配置され、前記秤量セル(121)の前記荷重伝達部材(124)が、前記通路(137)を通して伸びていることを特徴とする、請求項1から9の一項に記載の重量測定装置(100)。
【請求項11】
非接触封止システム(138)が、前記ハウジング(129)と前記荷重レシーバ(110)の間に配置されることを特徴とする、請求項10に記載の重量測定装置(100)。
【請求項12】
前記荷重レシーバ(110)が、平面的な表面を有することを特徴とする、請求項1から11の一項に記載の重量測定装置(100)。
【請求項13】
用途特有の装置(200)の取り付け用の少なくとも1つの装着場所(152)が、前記荷重レシーバ(110)上に形成されることを特徴とする、請求項1から12の一項に記載の重量測定装置(100)。
【請求項14】
取り出し要素(155)が存在し、それによって、前記荷重レシーバの連結を開放させるプロセスにおいて、前記偏心ボルト(112)が前記ボア穴(111、118、119、142)から少なくとも部分的に押し出されることを特徴とする、請求項1から13の一項に記載の重量測定装置(100)。
【請求項15】
前記荷重レシーバ(110)および前記荷重伝達部材(124)が、前記荷重レシーバ(110)および前記荷重伝達部材(124)の互いに対して精密な位置合わせをするための位置決め要素(150)を備えることを特徴とする、請求項1から14の一項に記載の重量測定装置(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−27735(P2011−27735A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−154655(P2010−154655)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland