説明

連結クランプ

【課題】挟持する2本の管体の軸方向や軸ピッチ方向における相対位置にばらつきがある場合にも、それら管体への組付けを容易に行うことのできる連結クランプを提供する。
【解決手段】それぞれフューエルホースを挟持する左右2つの挟持部10L,10Rを備えて2本のフューエルホースを平行に挟持する連結クランプにおいて、その左右の挟持部10L,10Rを、それらに挟持されるフューエルホースの軸方向、及びそれらに挟持される2本のフューエルホースの軸間距離を変化させる方向の2方向にそれぞれ相対的にスライド可能に連結するようにした。そのため、挟持しようとする2本のフューエルホースにそれらの軸方向や軸ピッチ方向における相対位置にばらつきがあっても、その分、左右の挟持部10L,10Rをそれらの方向に相対的にスライドさせることでその組付けを容易に行うことができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フューエルホースなどの2本の管体を平行に挟持する連結クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
フューエルホースのクイックコネクタ部の回転防止や半嵌合防止のため、連結クランプを用いて2本のフューエルホース(メインホース、リターンホース)をそれらのコネクタ部において平行に挟持して固定することがある。こうした連結クランプは、それぞれ管体(ホース)を挟持する左右2つの挟持部を備え、それら左右の挟持部が一体に連結された構造とされている。
【0003】
そして従来、こうした連結クランプとして、特許文献1には、左右の挟持部をそれぞれ2分割して、分割された部材をスライド可能に連結することで、挟持半径を可変としたものが記載されている。また特許文献2には、それぞれ管体を挟持する複数の挟持部を、凹凸関係を通じて一体に強固に連結した構成の連結クランプが記載されている。
【特許文献1】特開2002−084640号公報
【特許文献2】特開平07−243560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したようなフューエルホースへの連結クランプの組付けに際しては、図5に示すように、挟持するフューエルホース50,51のコネクタ部52,53の軸方向や軸ピッチ方向における相対的な位置関係にばらつきがあると、連結クランプ54の組付けが困難となってしまう。ここで特許文献1に記載の連結クランプを使用しても、挟持されるフューエルホースの外径のばらつきには対応できるだけで、このような挟持する両コネクタ部52,53の軸方向や軸ピッチ方向の相対位置のばらつきには対応することはできないものとなっている。また特許文献2に記載の連結クランプを用いた場合、左右の挟持部が別部材となってはいるものの、挟持部同士は一意の位置関係でしか連結することができないため、やはり両コネクタ部52,53の軸方向や軸ピッチ方向の相対位置のばらつきには対応不能となっている。
【0005】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであって、その解決しようとする課題は、挟持する2本の管体の軸方向や軸ピッチ方向における相対位置にばらつきがある場合にも、それら管体に対する組付けを容易に行うことのできる連結クランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果を記載する。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、それぞれ管体を挟持する左右2つの挟持部を備えて2本の管体を平行に挟持する連結クランプにおいて、前記左右の挟持部は、それらに挟持される前記管体の軸方向に相対的にスライド可能に連結されてなることをその要旨としている。
【0007】
上記構成では、連結クランプの左右の挟持部を、それらに挟持される管体の軸方向に相対的にスライドすることができるようになる。そのため、挟持しようとする2本の管体にそれらの軸方向における相対位置のばらつきがあっても、その分、左右の挟持部をその方向に相対的にスライドさせることでその組付けを容易に行うことができるようになる。
【0008】
また上記課題を解決するため、請求項2に記載の発明は、それぞれ管体を挟持する左右2つの挟持部を備えて2本の管体を平行に挟持する連結クランプにおいて、前記左右の挟持部は、それらに挟持される前記2本の管体の軸間距離を変化させる方向に相対的にスライド可能に連結されてなることをその要旨としている。
【0009】
上記構成では、連結クランプの左右の挟持部を、それらに挟持される管体の軸間距離を変化させる方向に相対的にスライドすることができるようになる。そのため、挟持しようとする2本の管体にそれらの軸間距離(ピッチ)を変化させる方向における相対位置のばらつきがあっても、その分、左右の挟持部をその方向に相対的にスライドさせることでその組付けを容易に行うことができるようになる。
【0010】
さらに上記課題を解決するため、請求項3に記載の発明では、それぞれ管体を挟持する左右2つの挟持部を備えて2本の管体を平行に挟持する連結クランプにおいて、前記左右の挟持部は、それらに挟持される前記管体の軸方向、及びそれらに挟持される前記2本の管体の軸間距離を変化させる方向の2方向にそれぞれ相対的にスライド可能に連結されてなることをその要旨とする。
【0011】
上記構成では、連結クランプの左右の挟持部を、それらに挟持される管体の軸方向、及びそれら管体の軸間距離を変化させる方向の2方向に相対的にスライドすることができるようになる。そのため、挟持しようとする2本の管体にそれらの軸方向や軸ピッチ方向における相対位置にばらつきがあっても、その分、左右の挟持部をそれらの方向に相対的にスライドさせることでその組付けを容易に行うことができるようになる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の連結クランプにおいて、前記左右の挟持部の一方に形成された凹部の内部にて、他方に形成された凸部が移動可能な範囲内で前記左右の挟持部の相対的なスライドが許容されてなることをその要旨とする。
【0013】
上記構成では、左右の挟持部の上記軸方向や軸ピット方向に対する相対的なスライドを、比較的簡易な構成にて具現とすることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の連結クランプにおいて、前記左右の挟持部の一方に直方体形状の凹部を設けるとともに、前記軸方向及び前記軸間距離を変化させる方向における寸法がそれぞれ前記凹部よりも小さく形成されて同凹部内に係合される爪部を前記左右の挟持部の他方に設け、前記凹部内での前記爪部の移動範囲内で前記左右の挟持部の相対的なスライドが許容されてなることをその要旨としている。
【0014】
上記構成では、左右の挟持部の上記軸方向、及び軸ピット方向の2方向に対する相対的なスライドを、比較的簡易な構成にて具現とすることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の連結クランプにおいて、前記凹部及び前記爪部はそれぞれ、当該連結クランプの上面側及び下面側の2箇所に設けられてなることをその要旨としている。
【0015】
上記構成では、上面側、下面側の双方から爪部にて挟み込むことで、左右の挟持部を連結することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の連結クランプにおいて、当該連結クランプは、内燃機関に接続されるフューエルホースを前記管体として挟持するものであることをその要旨とする。
【0016】
このように、請求項1〜6に記載の連結クランプは、内燃機関に接続されるフューエルホースを前記管体として挟持するための連結クランプとして具現化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の連結クランプを具体化した一実施形態を、図1〜図4を参照して詳細に説明する。なお本実施形態の連結クランプは、内燃機関に接続される2本のフューエルホースを管体として挟持し、それら2つのフューエルホースの回転や半嵌合を防止するものとなっている。
【0018】
図1は、こうした本実施形態の連結クランプの平面構造を、図2はその正面構造を、図3はその斜視構造をそれぞれ示している。これらの図に示されるように、本実施形態の連結クランプは、別体の樹脂成形品としてそれぞれ形成された左右の挟持部10L,10Rによって構成されている。左右の挟持部10L,10Rには、フューエルホース(メインホース20、リターンホース21)がそれぞれ挟持される。より詳しくは、右側の挟持部10Rは、燃料を内燃機関に送るためのメインホース20をその先端に設けられたクイックコネクタの部分にて挟持するものとなっており、左側の挟持部10Lは、燃料を燃料タンクに戻すためのリターンホース21をその先端に設けられたクイックコネクタの部分にて挟持するものとなっている。
【0019】
本実施形態の連結クランプでは、これら左右の挟持部10L,10Rは、これらに挟持されるフューエルホースの軸方向(以下、「軸方向」と記載する)、及びそれらフューエルホースの軸間距離(軸ピッチ)を変化させる方向(以下、「軸ピッチ方向」と記載する)の2方向にそれぞれ相対的にスライド可能に連結されている。こうした左右の挟持部10L,10Rの連結構造の詳細は、以下の通りとなっている。
【0020】
図4に、本実施形態の連結クランプの断面構造を示す。同図に示すように、左側の挟持部10Lの右側には、右側の挟持部10Rに向けて突出する突出部11が形成されており、その突出部11の上下にはそれぞれ一定の間隔を置いて、係合片12,13が突出形成されている。これら係合片12,13の先端にはそれぞれ内側に向けて突出する爪部12a,13aが形成されている。
【0021】
一方、右側の挟持部10Rの左側には、上記突出部11と各係合片12,13とのクリアランスにそれぞれ挿入される係合片14,15が突出形成されており、それらの係合片14,15の外側の面には、直方体形状(プール形状)の凹部14a,15aがそれぞれ形成されている。そして上記左側の挟持部10Lの爪部12a,13aをそれらの凹部14a,15a内にそれぞれ係合することで、左右の挟持部10L,10Rが連結されている。
【0022】
ここで、爪部12a,13aの上記軸方向及び軸ピッチ方向の寸法はそれぞれ、凹部14a,15aの軸方向及び軸ピッチ方向の寸法よりも小さく形成されており、爪部12a,13aは、凹部14a,15a内において上記軸方向及び軸ピッチ方向に移動可能とされている。そしてこれにより、凹部14a,15a内での爪部12a,13aの移動範囲内で、軸方向及び軸ピッチ方向の2方向に対する左右の挟持部10L,10Rの相対的なスライドが許容されている。
【0023】
こうした本実施形態の連結クランプでは、互いにスライドさせることで、左右の挟持部10L,10Rの上記軸方向及び軸ピッチ方向の2方向における相対位置を変化させることが可能となっている。なお、こうした本実施形態の連結クランプでは、上記爪部12a,13aが、左右の挟持部の他方に形成されて、それらの一方に形成された凹部の内部を移動可能な上記凸部に相当する構成となっている。
【0024】
以上説明した本実施形態の連結クランプによれば、次の効果を奏することができる。
(1)本実施形態の連結クランプでは、左右の挟持部10L,10Rが、それらに挟持されるフューエルホースの軸方向に相対的にスライド可能に連結されている。そのため、挟持しようとする2本のフューエルホースのクイックコネクタにそれらの軸方向における相対位置のばらつきがあっても、左右の挟持部10L,10Rをその方向に相対的にスライドさせることでその組付けを容易に行うことができるようになる。
【0025】
(2)本実施形態の連結クランプでは、左右の挟持部10L,10Rが、それらに挟持される2本のフューエルホースの軸間距離を変化させる方向に相対的にスライド可能に連結されている。そのため、挟持しようとする2本のフューエルホースのクイックコネクタにそれらの軸間距離(ピッチ)を変化させる方向における相対位置のばらつきがあっても、その分、左右の挟持部10L,10Rをその方向に相対的にスライドさせることでその組付けを容易に行うことができるようになる。
【0026】
(3)本実施形態の連結クランプでは、左右の挟持部10L,10Rの一方に形成された凹部14a,15aの内部にて、他方に形成された凸部(爪部12a,13a)が移動可能な範囲内で左右の挟持部10L,10Rの相対的なスライドが許容されている。より詳しくは、直方体形状の凹部14a,15aを右側の挟持部10Rに設けるとともに、軸方向及び軸ピッチ方向の寸法がそれぞれ凹部14a,15aよりも小さく形成された爪部12a,13aを左側の挟持部10Lに設けるようにしている。そして爪部12a,13aをそれぞれ凹部14a,15a内に係合することで、左右の挟持部10L,10Rを互いに連結させている。そのため、左右の挟持部10L,10Rの上記軸方向、及び軸ピット方向の2方向に対する相対的なスライドを、比較的簡易な構成にて具現とすることができる。
【0027】
(4)本実施形態の連結クランプでは、上記凹部14a,15a及び爪部12a,13aをそれぞれその上面側及び下面側の双方に設けるようにしている。そのため、上面側、下面側の双方から爪部12a,13aにて挟み込むことで、左右の挟持部10L,10Rを連結することができる。
【0028】
なお上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態では、凹部14a,15a及び爪部12a,13aの係合構造を、連結クランプの上面側及び下面側の双方に設けるようにしていたが、いずれか一方の側にのみこれらを設けるようにしても、左右の挟持部10L,10Rの軸方向及び軸ピッチ方向に対する相対的なスライドを許容することが可能である。
【0029】
・上記実施形態では、左右の挟持部10L,10Rを、上記軸方向及び軸ピッチ方向の2方向に相対スライド可能に連結していたが、軸方向のみ、或いは軸ピッチ方向のみに対して左右の挟持部10L,10Rの相対的なスライドを許容するように連結クランプを構成することもできる。この場合にも、上記軸方向、或いは軸ピッチ方向のいずれか1方向における両フューエルホースの位置のばらつきに対して、容易に組付け可能な連結クランプを提供することはできる。
【0030】
・上記実施形態では、爪部12a,13aと凹部14a,15aとの係合を通じて左右の挟持部10L,10Rを相対スライド可能に連結するようにしていたが、そうした左右の挟持部10L,10Rの連結構造は、これに限らず適宜変更しても良い。要は、軸方向、軸ピッチ方向の少なくとも一方向に対して相対的にスライド可能に左右の挟持部10L,10Rを連結可能な構造であれば良い。
【0031】
・上記実施形態では、2本のフューエルホースを挟持するものとして連結クランプを構成した場合を説明したが、本発明は、フューエルホース以外の管体をその挟持の対象とする連結クランプにも、適用することができる。本発明は、要は、2本の管体を平行に挟持するそれぞれ管体を挟持する左右2つの挟持部を備えて2本の管体を平行に挟持する連結クランプであれば、上記実施形態と同様、或いはそれに順じた態様で本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る連結クランプの平面構造を示す平面図。
【図2】同実施形態の連結クランプの正面構造を示す正面図。
【図3】同実施形態の連結クランプの斜視構造を示す斜視図。
【図4】同実施形態の連結クランプの断面構造を示す断面図。
【図5】従来の連結クランプのフューエルホースの組付態様を示す斜視図。
【符号の説明】
【0033】
10L,10R…挟持部、11…突出部、12,13…係合片、12a,13a…爪部(凸部)、14,15…係合片、14a,15a…凹部、20…メインホース(フューエルホース、管体)、21…リターンホース(フューエルホース、管体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ管体を挟持する左右2つの挟持部を備えて2本の管体を平行に挟持する連結クランプにおいて、
前記左右の挟持部は、それらに挟持される前記管体の軸方向に相対的にスライド可能に連結されてなる
ことを特徴とする連結クランプ。
【請求項2】
それぞれ管体を挟持する左右2つの挟持部を備えて2本の管体を平行に挟持する連結クランプにおいて、
前記左右の挟持部は、それらに挟持される前記2本の管体の軸間距離を変化させる方向に相対的にスライド可能に連結されてなる
ことを特徴とする連結クランプ。
【請求項3】
それぞれ管体を挟持する左右2つの挟持部を備えて2本の管体を平行に挟持する連結クランプにおいて、
前記左右の挟持部は、それらに挟持される前記管体の軸方向、及びそれらに挟持される前記2本の管体の軸間距離を変化させる方向の2方向にそれぞれ相対的にスライド可能に連結されてなる
ことを特徴とする連結クランプ。
【請求項4】
前記左右の挟持部の一方に形成された凹部の内部にて、他方に形成された凸部が移動可能な範囲内で前記左右の挟持部の相対的なスライドが許容されてなる
請求項1〜3のいずれか1項に記載の連結クランプ。
【請求項5】
前記左右の挟持部の一方に直方体形状の凹部を設けるとともに、前記軸方向及び前記軸間距離を変化させる方向における寸法がそれぞれ前記凹部よりも小さく形成されて同凹部内に係合される爪部を前記左右の挟持部の他方に設け、前記凹部内での前記爪部の移動範囲内で前記左右の挟持部の相対的なスライドが許容されてなる
請求項3に記載の連結クランプ。
【請求項6】
前記凹部及び前記爪部はそれぞれ、当該連結クランプの上面側及び下面側の2箇所に設けられてなる
請求項5に記載の連結クランプ。
【請求項7】
当該連結クランプは、内燃機関に接続されるフューエルホースを前記管体として挟持するものである
請求項1〜6のいずれか1項に記載の連結クランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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