説明

連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラム

【課題】連続エネルギーモンテカルロ法を用いて随伴角中性子束を高精度で計算することを可能にする。
【解決手段】原子炉出力を評価する複数の中性子源を設定するステップ(S4)と、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源毎に連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算するステップ(S5,S6)と、世代毎の核分裂中性子発生数同士を除して各世代間の中性子発生数比を算出するステップ(S7)と、各世代間の中性子発生数比を掛け合わせてS4の処理において設定した各中性子源に由来する原子炉出力の極限値を算定するステップ(S8)とを有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、連続エネルギーモンテカルロ法を用いた重要度関数の計算技術並びに当該重要度関数を用いた炉心パラメータを計算する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
臨界で運転される原子炉での角中性子束φは数式1の定常中性子輸送方程式の固有関数である。
【0003】
【数1】

ここに、r:原子炉中の位置(x,y,z方向;単位はそれぞれ〔m〕),
φ:角中性子束〔m-2(MeV)-1(sr)-1〕若しくは〔m-2(MeV)-1(sr)-1-1〕 ,
E:エネルギー〔MeV〕,
eff:実効増倍率〔無次元〕,
ν:核分裂あたりの中性子発生数〔無次元〕,
Ω:飛行方向(単位方向ベクトル)(x,y,z方向;〔無次元〕),
χ:中性子放出スペクトル〔(MeV)-1〕,
∇:微分演算子〔x,y,z方向;〔m-1〕〕,
Σtot:全断面積〔m-1〕,
Σs(r,E'→E,Ω'→Ω):エネルギーE',飛行方向Ω'の中性子が
エネルギーE,飛行方向Ωに散乱される
という巨視的散乱断面積〔m-1〕,
Σf:巨視的核分裂断面積〔m-1〕,
添え字t:全中性子 をそれぞれ表す。
なお、E'及びΩ'は、散乱(式の2行目),核分裂(式の3行目)を起こす中性子の
エネルギー及び飛行方向であることを表す。
【0004】
一方、数式1の共役な方程式である数式2は随伴方程式と呼ばれ、当該式の固有関数は随伴角中性子束φ*と呼ばれる。
【0005】
【数2】

ここに、φ*:随伴角中性子束〔無次元〕 を表す。
また、他の記号が表すものは数式1と同じである。
なお、E'及びΩ'は、散乱(式の2行目),核分裂(式の3行目)で生成された中性子の
エネルギー及び飛行方向であることを表す。
【0006】
随伴角中性子束φ*(r,E,Ω)は原子炉中の位置rにあるエネルギーE,飛行方向Ωの中性子及びその中性子の引き起こす核反応が原子炉の反応度にもたらす寄与を示す量である。このため、随伴角中性子束φ*(r,E,Ω)は重要度関数と呼ばれる。随伴角中性子束φ*(r,E,Ω)を角中性子束φ(r,E,Ω)と共に評価しておくと、例えば制御棒がどの位置に挿入されるとより効果的に原子炉の反応度を負にすることができるかということを例えば数式3を用いて定量評価することができる。
【0007】
【数3】

ここに、ρ:反応度〔無次元〕,
δΣa:吸収断面積の変化量〔m-1〕,
σf:微視的核分裂断面積〔m2〕,
N:核種数密度〔m-3〕,
〈 〉:r,E,Ωでの積分,
Sum:和算(なお、Σと同義),
添え字i:核種 をそれぞれ表す。
また、他の記号が表すものは数式1及び数式2と同じである。
【0008】
また、反応度の計算値と共に安全解析に用いられる動特性パラメータである実効遅発中性子割合βeff,中性子世代時間Λはそれぞれ数式4,数式5で角中性子束φと随伴角中性子束φ*とを用いて定義される。
【0009】
【数4】

ここに、βeff:実効遅発中性子割合〔無次元〕,
添え字j:遅発中性子先行核群,
添え字d:遅発中性子 をそれぞれ表す。
また、他の記号が表すものは数式1から数式3と同じである。
【数5】

ここに、Λ:中性子世代時間〔s〕,
V:中性子の速さ〔ms-1〕 をそれぞれ表す。
また、他の記号が表すものは数式1から数式3と同じである。
【0010】
ここで、中性子の輸送を中性子と原子核との個々の反応を逐一追跡することで評価する連続エネルギーモンテカルロ法が開発されており、当該方法を用いて数式1を解いて高精度の角中性子束φの計算値を得ることが可能になっている(例えば特許文献1)。一方、数式2の随伴方程式については連続エネルギーモンテカルロ法による解法が困難とされており、エネルギーEと角度Ωとを離散化した計算によってのみ随伴角中性子束φ*(r,E,Ω)が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−47078号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、エネルギーEと角度Ωとを離散化した計算によって随伴方程式を解く場合には、エネルギーEと角度Ωとの離散化という作業は任意性を伴うものであるので、得られる随伴角中性子束φ*(r,E,Ω)の精度の保証は難しいという問題がある。
【0013】
また、信頼性の高い炉心設計のためには、実効遅発中性子割合βeff及び中性子世代時間Λも高精度で算定されることが望まれる。
【0014】
そこで、本発明は、連続エネルギーモンテカルロ法を用いて随伴角中性子束φ*を高精度で計算することができる連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラムを提供することを目的とする。また、本発明は、連続エネルギーモンテカルロ法を用いて実効遅発中性子割合βeff及び中性子世代時間Λを高精度で計算することができる連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法は、原子炉出力を評価する複数の中性子源を設定するステップと、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源毎に連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算するステップと、世代毎の核分裂中性子発生数同士を除して各世代間の中性子発生数比を算出するステップと、各世代間の中性子発生数比を掛け合わせて先に設定した中性子源に由来する原子炉出力の極限値を算定するステップとを有するようにしている。
【0016】
また、請求項2記載の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計装置は、原子炉出力を評価する複数の中性子源を設定する手段と、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源毎に連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段と、世代毎の核分裂中性子発生数同士を除して各世代間の中性子発生数比を算出する手段と、各世代間の中性子発生数比を掛け合わせて先に設定した中性子源に由来する原子炉出力の極限値を算定する手段とを有するようにしている。
【0017】
また、請求項3記載の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計プログラムは、原子炉出力を評価する複数の中性子源を設定する手段、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源毎に連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段、世代毎の核分裂中性子発生数同士を除して各世代間の中性子発生数比を算出する手段、各世代間の中性子発生数比を掛け合わせて先に設定した中性子源に由来する原子炉出力の極限値を算定する手段としてコンピュータを機能させるようにしている。
【0018】
また、請求項4記載の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法は、中性子源を設定するステップと、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算するステップと、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における遅発中性子発生事象を記録するステップと、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて世代毎の全ての中性子発生数及び記録された遅発中性子に由来する中性子発生数を算出するステップと、世代毎の全ての中性子発生数に対する遅発中性子に由来する中性子発生数の比率を算出するステップと、世代毎の比率に基づいて実効遅発中性子割合を決定するステップとを有するようにしている。
【0019】
また、請求項5記載の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計装置は、中性子源を設定する手段と、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段と、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における遅発中性子発生事象を記録する手段と、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて世代毎の全ての中性子発生数及び記録された遅発中性子に由来する中性子発生数を算出する手段と、世代毎の全ての中性子発生数に対する遅発中性子に由来する中性子発生数の比率を算出する手段と、世代毎の比率に基づいて実効遅発中性子割合を決定する手段とを有するようにしている。
【0020】
また、請求項6記載の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計プログラムは、中性子源を設定する手段、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における遅発中性子発生事象を記録する手段、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて世代毎の全ての中性子発生数及び記録された遅発中性子に由来する中性子発生数を算出する手段、世代毎の全ての中性子発生数に対する遅発中性子に由来する中性子発生数の比率を算出する手段、世代毎の比率に基づいて実効遅発中性子割合を決定する手段としてコンピュータを機能させるようにしている。
【0021】
また、請求項7記載の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法は、中性子源を設定するステップと、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算するステップと、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における中性子毎の飛跡の長さを速さで除して算定される飛行時間を算出するステップと、中性子毎の予め指定された世代における飛行時間に中性子の子孫の世代毎の中性子発生数を乗じた値を世代内の全中性子について合算して世代毎の重み付き飛行時間を算定するステップと、世代毎の重み付き飛行時間を当該重み付き飛行時間の世代の次の世代の中性子発生数で除して算出される値に基づいて中性子世代時間を決定するステップとを有するようにしている。
【0022】
また、請求項8記載の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計装置は、中性子源を設定する手段と、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段と、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における中性子毎の飛跡の長さを速さで除して算定される飛行時間を算出する手段と、中性子毎の予め指定された世代における飛行時間に中性子の子孫の世代毎の中性子発生数を乗じた値を世代内の全中性子について合算して世代毎の重み付き飛行時間を算定する手段と、世代毎の重み付き飛行時間を当該重み付き飛行時間の世代の次の世代の中性子発生数で除して算出される値に基づいて中性子世代時間を決定する手段とを有するようにしている。
【0023】
また、請求項9記載の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計プログラムは、中性子源を設定する手段、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における中性子毎の飛跡の長さを速さで除して算定される飛行時間を算出する手段、中性子毎の予め指定された世代における飛行時間に中性子の子孫の世代毎の中性子発生数を乗じた値を世代内の全中性子について合算して世代毎の重み付き飛行時間を算定する手段、世代毎の重み付き飛行時間を当該重み付き飛行時間の世代の次の世代の中性子発生数で除して算出される値に基づいて中性子世代時間を決定する手段としてコンピュータを機能させるようにしている。
【0024】
これらの連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラムによると、下記に説明する原理により、随伴角中性子束φ*に比例する物理量を介して連続エネルギーモンテカルロ法を用いて随伴角中性子束φ*を高精度に評価することができ、また、実効遅発中性子割合βeff及び中性子世代時間Λを高精度に評価することができる。
【0025】
臨界の原子炉中の位置rにあるエネルギーE,飛行方向Ωに投入された中性子が十分な時間を経過した後に生み出す原子炉出力(Iterated Fission Probability;以下、IFP(r,E,Ω)と表記する)が随伴角中性子束φ*に比例することが証明されている。そして本発明はこの原子炉出力の極限値であるIFP(r,E,Ω)を連続エネルギーモンテカルロ法で計算するようにしている。
【0026】
連続エネルギーモンテカルロ法による中性子輸送方程式の固有値である実効増倍率keffの計算では、原子炉中の或る位置rにあるエネルギーE,飛行方向ΩにS0個の初期中性子源を与えて中性子を輸送させて次世代の中性子発生数S1と発生位置とを計算し、続いてそれらを入力とした輸送計算を繰り返し行う。そして、この際に世代間の中性子源強度比kn=Sn/Sn-1(但し、添え字nは世代を表す1以上の整数である)を求め、knの極限値から固有値としての実効増倍率keffを得る。ここで、極限値は初期条件である(r,E,Ω)に依存せずに臨界では1となる。
【0027】
一方、位置rに置かれたエネルギーE,飛行方向ΩであるS個の中性子が十分な時間経過後に生み出す原子炉出力は世代あたりの中性子発生数の極限値Sに比例するので、原子炉出力IFP(r,E,Ω)はS/S0に比例する。そこで数式6によって原子炉出力IFP(r,E,Ω)を評価することができる。
【0028】
【数6】

【0029】
そして、前述のIFP∝φ*の関係から、(r,E,Ω)毎に原子炉出力IFP(r,E,Ω)を計算することによって随伴中性子束φ*(r,E,Ω)が得られる。また、本発明では中性子の輸送を時間を追ってシミュレートすることでIFP∝φ*を評価するようにしているので、連続エネルギーモンテカルロ法による計算が可能である。
【0030】
さらに、数式4,数式5は、IFP∝φ*の関係から、随伴角中性子束φ*を原子炉出力IFPに変更することが可能である。この変更により、数式7によって実効遅発中性子割合βeffが、数式8によって中性子世代時間Λがそれぞれ計算される。
【0031】
【数7】

なお、式中の記号が表すものは数式1から数式4と同じである。
【数8】

なお、式中の記号が表すものは数式1から数式3及び数式5と同じである。
【0032】
数式7は、分母の( )が核分裂中性子発生密度であり、分子の( )が遅発中性子発生密度であるので、遅発中性子と全核分裂中性子の子孫とが十分な世代が経過した後に生み出す原子炉出力の比を意味する。これは、或る世代での核分裂中性子,遅発中性子に対してそれらの子孫の数の比を世代毎にとってその極限値を得ることによって評価することが可能である。数式8は、分子のφ/Vが中性子の飛行時間を示す量であるので、或る世代での中性子の飛行時間に当該中性子が十分な世代が経過した後に生み出す中性子数を乗じて積分することによって評価することが可能である。そして、数式7及び数式8は両方共に連続エネルギーモンテカルロ法による計算が可能である。
【0033】
そして、請求項1から請求項3に記載の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラムによると、連続エネルギーモンテカルロ法を用いて原子炉出力IFP(r,E,Ω)を求めることによって随伴角中性子束φ*が評価される。
【0034】
また、請求項4から請求項6に記載の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラムによると、連続エネルギーモンテカルロ法を用いて実効遅発中性子割合βeffが評価される。
【0035】
さらに、請求項7から請求項9に記載の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラムによると、連続エネルギーモンテカルロ法を用いて中性子世代時間Λが評価される。
【発明の効果】
【0036】
本発明の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラムによれば、連続エネルギーモンテカルロ法を用いて原子炉出力IFP(r,E,Ω)を求めることによって随伴角中性子束φ*を評価するようにしているので、連続エネルギーモンテカルロ法によっては従来は解法が困難或いは精度保証をすることができなかった随伴角中性子束φ*を高精度で評価することができ、随伴方程式の解法の、そして炉心設計全体の信頼性の向上が可能になる。
【0037】
本発明によれば、また、実効遅発中性子割合βeff及び中性子世代時間Λも高精度で評価することができ、炉心設計の信頼性の向上が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第一の実施形態の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法を説明するフローチャートである。
【図2】第一の実施形態の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法をプログラムを用いて実施する場合の炉心設計装置の機能ブロック図である。
【図3】第二の実施形態の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法を説明するフローチャートである。
【図4】第二の実施形態の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法をプログラムを用いて実施する場合の炉心設計装置の機能ブロック図である。
【図5】第三の実施形態の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法を説明するフローチャートである。
【図6】第三の実施形態の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法をプログラムを用いて実施する場合の炉心設計装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0040】
まず、図1及び図2に、本発明の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラムが随伴角中性子束φ*の高精度の評価を行うために原子炉出力IFP(r,E,Ω)を算定することを目的とする場合の実施形態の一例を示す。以下においては、本実施形態のことを第一の実施形態と呼ぶ。
【0041】
第一の実施形態の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法は、図1に示すように、原子炉出力を評価する複数の中性子源を設定するステップ(S4)と、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源毎に連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算するステップ(S5,S6)と、世代毎の核分裂中性子発生数同士を除して各世代間の中性子発生数比を算出するステップ(S7)と、各世代間の中性子発生数比を掛け合わせてS4の処理において設定した各中性子源に由来する原子炉出力の極限値を算定するステップ(S8)とを有するようにしている。
【0042】
なお、第一の実施形態の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法は、本発明に必須である上記の処理ステップに加え、輸送方程式の解法に連続エネルギーモンテカルロ法を適用する従来の場合と同様の処理ステップとして、評価対象の原子炉の諸元を設定するステップ(S1)と、計算手順の条件を設定するステップ(S2)と、核計算において用いられる核データライブラリを設定するステップ(S3)とを更に有するようにしている。
【0043】
上記炉心設計方法は、本発明の炉心設計装置として実現される。第一の実施形態の炉心設計装置は、原子炉出力を評価する複数の中性子源を設定する手段と、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源毎に連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段と、世代毎の核分裂中性子発生数同士を除して各世代間の中性子発生数比を算出する手段と、各世代間の中性子発生数比を掛け合わせて先に設定した中性子源に由来する原子炉出力の極限値を算定する手段とを備える。
【0044】
なお、第一の実施形態の炉心設計装置は、本発明に必須である上記の手段に加え、輸送方程式の解法に連続エネルギーモンテカルロ法を適用する従来の場合と同様の手段として、評価対象の原子炉の諸元を設定する手段と、計算手順の条件を設定する手段と、核計算において用いられる核データライブラリを設定する手段とを更に有するようにしている。
【0045】
上述の炉心設計装置は、本発明の炉心設計プログラムをコンピュータ上で実行することによっても実現される。本実施形態では、炉心設計プログラムをコンピュータ上で実行する場合を例に挙げて説明する。
【0046】
炉心設計プログラム17を実行するための第一の実施形態の炉心設計装置10の全体構成を図2に示す。この炉心設計装置10は、制御部11、記憶部12、入力部13、表示部14及びメモリ15を備え相互にバス等の信号回線により接続されている。また、炉心設計装置10にはデータサーバ16がバス等の信号回線により接続されており、その信号回線を介して相互にデータや制御指令等の信号の送受信(即ち出入力)が行われる。
【0047】
制御部11は、記憶部12に記憶されている炉心設計プログラム17によって炉心設計装置10全体の制御並びに原子炉出力の算定等の炉心設計に係る演算を行うものであり、例えばCPU(即ち中央演算処理装置)である。記憶部12は少なくともデータやプログラムを記憶可能な記憶手段であり、例えばハードディスクである。メモリ15は制御部11が各種の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。
【0048】
入力部13は少なくとも作業者の命令を制御部11に与えるためのインターフェイスであり、例えばキーボードである。
【0049】
表示部14は制御部11の制御により文字や図形等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
【0050】
そして、炉心設計プログラム17を実行することによって炉心設計装置10の制御部11には、原子炉出力を評価する複数の中性子源を設定する手段としての中性子源設定値読込部11dと、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源毎に連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段としての輸送計算部11e及び核分裂計算部11fと、世代毎の核分裂中性子発生数同士を除して各世代間の中性子発生数比を算出する手段としての中性子発生数比算出部11gと、各世代間の中性子発生数比を掛け合わせて先に設定した中性子源に由来する原子炉出力の極限値を算定する手段としての原子炉出力算定部11hとが構成される。
【0051】
なお、第一の実施形態の炉心設計プログラム17を実行することによって炉心設計装置10の制御部11には、本発明に必須である上記の構成に加え、輸送方程式の解法に連続エネルギーモンテカルロ法を適用する従来の場合と同様の構成として、評価対象の原子炉の諸元を設定する手段としての原子炉設定値読込部11aと、計算手順の条件を設定する手段としての計算手順取得部11bと、核計算において用いられる核データライブラリを設定する手段としての核データライブラリ読込部11cとが更に構成される。
【0052】
ここで、本発明は連続エネルギーモンテカルロ法を用いるものであるところ、当該連続エネルギーモンテカルロ法自体は周知の技術であるので、本発明の本質に関わるものではなく従来の炉心設計における連続エネルギーモンテカルロ法の適用と同様の処理については以下においては詳細な説明は適宜省略する。なお、炉心設計に用いられ得る連続エネルギーモンテカルロ法のコードとしては、例えばMCNP(ロスアラモス国立研究所等)やMVP(日本原子力研究開発機構)などがある。
【0053】
本発明の実施にあたっては、まず、制御部11の原子炉設定値読込部11aが記憶手段から評価対象の原子炉についての設定値の読み込みを行う(S1)。
【0054】
原子炉の設定値としては、輸送方程式の解法に連続エネルギーモンテカルロ法を適用する従来の場合と同様に、原子炉の燃料及び各部材の形状,組成,温度,密度が用いられる。本実施形態では、原子炉の設定値は予め設定されて記憶手段としてのデータサーバ16に格納される原子炉設定値データベース16aに記録される。なお、以下においては、データベースのことをDBと表記する。
【0055】
そして、原子炉設定値読込部11aは、データサーバ16に格納されている原子炉設定値DB16aから原子炉の設定値データを読み込み、当該データをメモリ15に記憶させる。
【0056】
次に、制御部11の計算手順取得部11bが入力手段を介して計算手順の取得を行う(S2)。
【0057】
計算手順にまつわるものとして、具体的には、輸送方程式の解法に連続エネルギーモンテカルロ法を適用する従来の場合と同様に、S5〜S7の処理において用いられる1世代あたりの中性子数,計算世代数L(必要に応じて前段評価世代数L0及び本評価世代数L)が少なくとも設定される。なお、第一の実施形態においては前段評価世代数L0と本評価世代数Lとの区別は必要がないので単に計算世代数Lとして設定されれば良い。そして、計算世代数Lは作業者が適宜設定すれば良い。
【0058】
計算手順取得部11bは、予め設定されると共に入力手段としての入力部13を介して作業者によって入力された計算手順の設定内容データを取得し、当該データをメモリ15に記憶させる。
【0059】
次に、制御部11の核データライブラリ読込部11cが記憶手段から核計算において用いられる核データライブラリの読み込みを行う(S3)。
【0060】
核データライブラリには、輸送方程式の解法に連続エネルギーモンテカルロ法を適用する従来の場合と同様に、少なくとも、微視的全断面積σtot〔m2〕,微視的散乱断面積σs(r,E'→E,Ω'→Ω)〔m2〕、核分裂あたりの中性子発生数ν,微視的核分裂断面積σf〔m2〕,中性子放出スペクトルχが含まれる。本実施形態では、核データライブラリは予め設定されて記憶手段としてのデータサーバ16に格納される核データライブラリDB16bに記録される。
【0061】
核データライブラリ読込部11cは、データサーバ16に格納されている核データライブラリDB16bから核データライブラリデータを読み込み、当該データをメモリ15に記憶させる。
【0062】
次に、制御部11の中性子源設定値読込部11dが記憶手段から核計算において評価の対象とする初期中性子源についての設定値の読み込みを行う(S4)。
【0063】
初期中性子源の設定値としては、輸送方程式の解法に連続エネルギーモンテカルロ法を適用する従来の場合と同様に、中性子の発生位置r,エネルギーE,飛行方向Ωが用いられる。
【0064】
そして、本発明では、中性子源に由来する原子炉出力の極限値であるIFPを評価する複数の中性子源が設定される。
【0065】
本実施形態では、核計算において評価の対象とする初期中性子源(以下適宜、評価対象中性子源とも呼ぶ)の設定値は予め設定される。ここで、本発明では、S8の処理において初期中性子源に由来する原子炉出力の極限値IFPを評価する(r,E,Ω)の組み合わせが複数設定され用意される。
【0066】
なお、初期中性子源に由来する原子炉出力の極限値IFPを評価する複数の(r,E,Ω)の組み合わせの設定(言い換えれば初期中性子源の(r,E,Ω)の生成)の仕方は特定の方法に限定されるものではなく、作業者が適当な生成方法を選択するようにすれば良い。具体的には例えば、作業者が逐一生成するようにしたり、作業者が選択した任意の関数に従って自動的に生成するようにしたり、或いは、特定の関数の選択もなしに完全に自動的に生成するようにしたりしても良い。また、原子炉出力の極限値IFPを評価する(r,E,Ω)の組み合わせの数も作業者が適宜決定すれば良い。
【0067】
本実施形態では、評価対象中性子源の設定値は記憶手段としてのデータサーバ16に格納される中性子源設定値DB16cに記録される。
【0068】
そして、制御部11は、S4〜S7の処理を、中性子源設定値DB16cに記録されている評価対象中性子源の設定値データ群としての複数の(r,E,Ω)の組み合わせデータ毎に繰り返して行う。
【0069】
中性子源設定値読込部11dは、データサーバ16に格納されている中性子源設定値DB16cから、評価対象中性子源の設定値データ群を構成する組み合わせデータを一組読み込み、当該組み合わせデータをメモリ15に記憶させる。
【0070】
次に、制御部11の輸送計算部11eがSm個の中性子に対して中性子毎の輸送の計算を行う(S5)。
【0071】
本発明における中性子の輸送の計算自体は、S1〜S4の処理においてメモリ15に記憶された種々のデータを用い、輸送方程式の解法に連続エネルギーモンテカルロ法を適用する従来の場合と同様に行われる。
【0072】
S5の処理として具体的には、輸送計算部11eは、第0世代の場合には、S4の処理においてメモリ15に記憶された一組の位置rとエネルギーEと飛行方向Ωとの組み合わせデータである(r,E,Ω)に対してS0個の初期中性子源を与えて輸送の計算を行う。なお、S0の値は、計算手順の一つである1世代あたりの中性子数として予め設定され、S2の処理においてメモリ15に記憶された値が用いられる。
【0073】
一方、第1世代以降の場合には、輸送計算部11eは、S6の処理において次世代中性子源DB16dに記録された中性子源データであって位置rとエネルギーEと飛行方向Ωとの組み合わせデータである(r,E,Ω)を次世代中性子源DB16dからSm個読み込んでメモリ15に記憶させて中性子の輸送の計算を行う(なお、mは世代数である)。
【0074】
そして、輸送計算部11eは、中性子源から発生した一個の中性子が体系から消滅するまでの散乱点,消滅位置,飛跡,中性子の時間を確率論的に計算する。そして、中性子の飛跡から当該中性子源から発生した一個の中性子による中性子束を計算する。すなわち、r位置からエネルギーE,飛行方向Ωの次世代の核分裂中性子が打ち出される確率関数sm(S6;数式10)から選択された一個の中性子に対して数式9を解いて中性子束φmを求める。
【0075】
【数9】

【0076】
そして、輸送計算部11eは、計算された中性子束φmのデータをメモリ15に記憶させる。
【0077】
次に、制御部11の核分裂計算部11fが次世代の核分裂事象の計算を行う(S6)。
【0078】
本発明における核分裂事象の計算自体は、S1〜S5の処理においてメモリ15に記憶された種々のデータを用い、輸送方程式の解法に連続エネルギーモンテカルロ法を適用する従来の場合と同様に行われる。
【0079】
具体的には、核分裂計算部11fは、消滅地点で核分裂によって生成する次世代の核分裂中性子の数,エネルギー,飛行方向を確率論的に計算する。すなわち、数式10を用い、r位置からエネルギーE,飛行方向Ωの次世代の核分裂中性子が打ち出される確率関数sm+1から次世代の核分裂中性子の発生位置r,エネルギーE,飛行方向Ωを確率的に選択する。これにより、中性子源から発生した一個の中性子による次世代(即ち、処理対象の世代である第m世代に対して第(m+1)世代)の核分裂中性子の発生数Sm+1,発生位置,エネルギー,飛行方向が決定される。
【0080】
【数10】

【0081】
そして、核分裂計算部11fは、計算によって得られた次世代の核分裂中性子として発生した数(即ちSm+1個)の、当該次世代の核分裂中性子毎の発生位置r,エネルギーE,飛行方向Ωの組み合わせデータを、記憶手段としてのデータサーバ16に格納される次世代中性子源DB16dに書き込んで記録する。
【0082】
核分裂計算部11fは、さらに、計算によって得られた次世代の核分裂中性子の発生数Sm+1の値をメモリ15に記憶させる。
【0083】
次に、制御部11の中性子発生数比算出部11gが各世代間の中性子発生数の比の算出を行う(S7)。
【0084】
具体的には、中性子発生数比算出部11gは、S6の処理においてメモリ15に記憶された、処理対象の世代である第m世代の中性子発生数Smと次世代即ち第(m+1)世代の中性子発生数Sm+1とをメモリ15から読み込み、数式11によって各世代間の中性子発生数比kmを算出する。なお、第0世代の中性子発生数はS0である。
【0085】
(数11)km=Sm+1/Sm
【0086】
そして、中性子発生数比算出部11gは、算出された世代間毎の中性子発生数比kmの値をメモリ15に記憶させる。
【0087】
ここにおいて、制御部11は、計算手順の一つとして予め設定されてS2の処理においてメモリ15に記憶された世代数Lに亘ってS5〜S7の処理がなされた場合には処理ステップをS8の処理へと進め、前記世代数Lに亘る処理が未だ残っている場合には処理ステップをS5の処理に戻す(L1)。
【0088】
そして、S5〜S7の処理が所定の世代数に亘って繰り返され終了した場合には、制御部11の原子炉出力算定部11hが原子炉出力の算定を行う(S8)。
【0089】
具体的には、原子炉出力算定部11hは、S7の処理においてメモリ15に記憶された世代間毎の中性子発生数比kmをメモリ15から読み込み、数式12によって初期中性子源に由来する原子炉出力の極限値IFPを算定する。
【0090】
【数12】

【0091】
そして、原子炉出力算定部11hは算定された初期中性子源に由来する原子炉出力の極限値IFPの値をメモリ15に記憶させる。
【0092】
そして、制御部11は、算定された原子炉出力の極限値IFPの値を表示部13に表示したり記憶部12内に結果ファイルとして記録したりし、与えられた条件における初期中性子源に由来する原子炉出力の極限値IFPの算定の処理を終了する。
【0093】
また、制御部11は、中性子源設定値DB16cに予め準備された複数の初期中性子源に対しての当該初期中性子源に由来する原子炉出力の極限値IFPの計算が終了していない場合には処理ステップをS4の処理に戻す(L2)。一方、中性子源設定値DB16cに予め準備された分の全てについて処理が終了した場合には制御部11は全ての処理を終了する(END)。
【0094】
以上の処理により、複数の(r,E,Ω)の組み合わせに対する初期中性子源に由来する原子炉出力の極限値IFPが得られ、したがって初期中性子源に由来する原子炉出力の極限値IFPの相対分布が得られるので、当該原子炉出力の極限値IFPに比例する随伴角中性子束φ*の高精度の分布が得られ、これにより炉心設計に高精度で有用な情報を提供することが可能になる。
【0095】
以上の構成を有する本発明の第一の実施形態としての連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラムによれば、連続エネルギーモンテカルロ法を用いて原子炉出力IFP(r,E,Ω)を求めることによって随伴角中性子束φ*を評価するようにしているので、連続エネルギーモンテカルロ法によっては従来は解法が困難或いは精度保証をすることができなかった随伴角中性子束φ*を高精度で評価することができ、随伴方程式の解法の、そして炉心設計全体の信頼性の向上が可能になる。
【0096】
次に、図3及び図4に、本発明の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラムが実効遅発中性子割合βeffを算定することを目的とする場合の実施形態の一例を示す。以下においては、本実施形態のことを第二の実施形態と呼ぶ。
【0097】
第二の実施形態の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法は、図3に示すように、中性子源を設定するステップ(S4)と、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算するステップ(S5,S6)と、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における遅発中性子発生事象を記録すると共に中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて世代毎の全ての中性子発生数及び記録された遅発中性子に由来する中性子発生数を算出して世代毎の全ての中性子発生数に対する遅発中性子に由来する中性子発生数の比率を算出するステップ(S8)と、世代毎の比率に基づいて実効遅発中性子割合を決定するステップ(S9)とを有するようにしている。
【0098】
上記第二の実施形態の炉心設計方法は、本発明の第二の実施形態の炉心設計装置として実現される。第二の実施形態の炉心設計装置は、中性子源を設定する手段と、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段と、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における遅発中性子発生事象を記録すると共に中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて世代毎の全ての中性子発生数及び記録された遅発中性子に由来する中性子発生数を算出して世代毎の全ての中性子発生数に対する遅発中性子に由来する中性子発生数の比率を算出する手段と、世代毎の比率に基づいて実効遅発中性子割合を決定する手段とを備える。
【0099】
上述の第二の実施形態の炉心設計装置は、本発明の第二の実施形態の炉心設計プログラムをコンピュータ上で実行することによっても実現される。本実施形態では、炉心設計プログラムをコンピュータ上で実行する場合を例に挙げて説明する。
【0100】
本発明の第二の実施形態の炉心設計プログラム17を実行することによって炉心設計装置10の制御部11には、中性子源を設定する手段としての中性子源設定値読込部11dと、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段としての輸送計算部11eと、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における遅発中性子発生事象を記録すると共に中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて世代毎の全ての中性子発生数及び記録された遅発中性子に由来する中性子発生数を算出して世代毎の全ての中性子発生数に対する遅発中性子に由来する中性子発生数の比率を算出する手段としての核分裂計算部11f及び中性子発生数比算出部11gと遅発中性子比率算出部11iと、世代毎の比率に基づいて実効遅発中性子割合を決定する手段としての実効遅発中性子割合決定部11jとが構成される。
【0101】
ここで、第二の実施形態のS1〜S4,S7の処理はそれぞれ第一の実施形態のS1〜S4,S7の処理と同様であり、また、これらの処理に係る手段も第一の実施形態と第二の実施形態とで同様であるので、これらの処理及び手段については第二の実施形態としては具体的な説明は省略する。また、以下に説明する第二の実施形態において第一の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0102】
ただし、計算手順の設定(S2)に関し、第二の実施形態においては計算世代数Lについて前段評価世代数L0と本評価世代数Lとがそれぞれ設定される。なお、前段評価世代数L0とは、具体的には、原子炉の任意の箇所に中性子源を置いて中性子の輸送の計算(S5)と核分裂事象の計算(S6)とを繰り返し処理した場合に中性子源の分布が或る形に収束すると共にその際に各世代間の中性子発生数比kmが極限値としてのkeffに収束するところ、当該収束に要する世代数のことである。そして、どこに中性子源を置いたとしても中性子源の分布が或る形にほぼ収束するように作業者が前段評価世代数L0を適宜選択して設定する。また、本評価世代数Lについても作業者が適宜設定する。
【0103】
また、第二の実施形態においては、初期中性子源は一個のみ予め設定され、中性子源設定値DB16cに当該一個の初期中性子源の設定値が記録されると共にS4の処理において中性子源設定値読込部11dによって読み込まれてS5〜S8の処理に用いられる。
【0104】
またここで、輸送方程式の解法に連続エネルギーモンテカルロ法を適用する場合の前提として、第一の実施形態のS6の処理に係る計算では、次世代の核分裂中性子として具体的には遅発中性子と即発中性子とが確率的に選択されて発生する。
【0105】
そして、第二の実施形態のS6の処理では、第一の実施形態のS6の処理内容に加えて以下のことを行う。
【0106】
すなわち、核分裂計算部11fは、第一の実施形態と同様の核分裂事象の計算を行うことに加え、予め指定された第L0世代についての中性子の輸送の計算において第(L0+1)世代の中性子源を作る際に核分裂中性子が遅発中性子か即発中性子かの判定を行うと共に当該中性子の種類の識別標識を核分裂中性子毎に付与する。なお、中性子の輸送の計算に基づいて識別標識を付与するのは前述の世代に対してのみである。
【0107】
核分裂計算部11fは、また、S6の処理の結果として、第一の実施形態と同様に次世代の核分裂中性子毎の(r,E,Ω)の組み合わせデータを次世代中性子源DB16dに書き込んで記録すると共に次世代の核分裂中性子の発生数Sm+1をメモリ15に記憶させることに加え、第(L0+1)世代以降では、核分裂中性子毎に第(L0+1)世代の祖先が遅発中性子であるか即発中性子であるかの識別標識データを記憶手段としてのデータサーバ16に格納される次世代中性子標識DB16eに書き込んで記録する。なお、次世代中性子標識DB16eには、次世代中性子源DB16dと同様に、計算によって得られた次世代の核分裂中性子として発生した数(即ちSm+1個)の識別標識データが記録される。
【0108】
ここで、核分裂計算部11fは、核分裂中性子毎の識別標識データとして、第L0世代の処理では次世代即ち第(L0+1)世代の中性子の標識標識を次世代中性子標識DB16eに書き込んで記録し、第(L0+1)世代以降の処理では祖先の中性子の第(L0+1)世代における標識標識を次世代中性子標識DB16eに書き込んで記録する。
【0109】
上述の次世代中性子への標識情報の付与に関連し、第二の実施形態のS5の処理では、第一の実施形態のS5の処理内容に加えて以下のことを行う。
【0110】
すなわち、輸送計算部11eは、第一の実施形態と同様に次世代中性子源DB16dに記録された中性子源データであって位置rとエネルギーEと飛行方向Ωとの組み合わせデータである(r,E,Ω)をSm個読み込んでメモリ15に記憶させて中性子の輸送の計算を行うことに加え、第(L0+1)世代以降は、データサーバ16に格納されている次世代中性子標識DB16eから評価対象中性子源の識別標識の情報データを読み込んで当該標識情報データをメモリ15に記憶させる。
【0111】
そして、第二の実施形態では、第(L0+1)世代以降の場合に、S7の処理の次に、制御部11の遅発中性子比率算出部11iが世代毎に全ての中性子発生数に対する第(L0+1)世代の遅発中性子に由来する中性子発生数の比率の算出を行う(S8)。
【0112】
具体的には、第(L0+1)世代以降の場合に、遅発中性子比率算出部11iは、第(m+1)世代における全ての中性子の発生数Sam+1を数式13によって算出し、第(L0+1)世代の遅発中性子に由来する第(m+1)世代における中性子の発生数Sdm+1を数式14によって算出する。ここで、Sdm+1は第(L0+1)世代の遅発中性子の標識が付与されている中性子を計数することで算出され、Sam+1は第(m+1)世代の中性子発生数を計数することで算出される。
【0113】
【数13】

【数14】

【0114】
そして、遅発中性子比率算出部11iは、数式15によって第(m+1)世代の遅発中性子比率βm+1を算出する。
【0115】
(数15)βm+1=Sdm+1/Sam+1
【0116】
そして、遅発中性子比率算出部11iは、算出された世代毎の遅発中性子比率βm+1の値をメモリ15に記憶させる。
【0117】
ここにおいて、制御部11は、計算手順の一つとして予め設定されてS2の処理においてメモリ15に記憶された世代数L0+Lに亘ってS5〜S8の処理がなされた場合には処理ステップをS9の処理へと進め、前記世代数L0+Lに亘る処理が未だ残っている場合には処理ステップをS5の処理に戻す(L1)。
【0118】
次に、制御部11の実効遅発中性子割合決定部11jが実効遅発中性子割合の決定を行う(S9)。
【0119】
具体的には、実効遅発中性子割合決定部11jは、S8の処理においてメモリ15に記憶された第(L0+1)世代以降の遅発中性子比率βm+1の値をメモリ15から読み込む。そして、前後の世代間の値の差違が一定の範囲に収まり世代間における遅発中性子比率βの値の変化が収束していると判断される場合には前記世代間の後の世代の遅発中性子比率βの値を実効遅発中性子割合βeffとする。なお、世代間における遅発中性子比率βの値の変化が収束していると判断するための一定の範囲は特定の範囲に限定されるものではなく、作業者が適宜設定すれば良い。
【0120】
そして、制御部11は、決定された実効遅発中性子割合βeffの値を表示部13に表示したり記憶部12内に結果ファイルとして記録したりし、与えられた条件における実効遅発中性子割合βeffの算定の処理を終了する(END)。
【0121】
以上の構成を有する本発明の第二の実施形態としての連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラムによれば、実効遅発中性子割合βeffを高精度で評価することができ、炉心設計の信頼性の向上が可能になる。
【0122】
さらに、図5及び図6に、本発明の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラムが中性子世代時間Λを算定することを目的とする場合の実施形態の一例を示す。以下においては、本実施形態のことを第三の実施形態と呼ぶ。
【0123】
第三の実施形態の連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法は、図5に示すように、中性子源を設定するステップ(S4)と、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算するステップ(S5,S6)と、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における中性子毎の飛跡の長さを速さで除して算定される飛行時間にその中性子の子孫の世代毎の中性子発生数を乗じた値を世代内の全中性子について合算して世代毎の重み付き飛行時間を算定するステップ(S8)と、世代毎の重み付き飛行時間を当該重み付き飛行時間の世代の次の世代の中性子発生数で除して算出される値に基づいて中性子世代時間を決定するステップ(S9)とを有するようにしている。
【0124】
上記第三の実施形態の炉心設計方法は、本発明の第三の実施形態の炉心設計装置として実現される。第三の実施形態の炉心設計装置は、中性子源を設定する手段と、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段と、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における中性子毎の飛跡の長さを速さで除して算定される飛行時間にその中性子の子孫の世代毎の中性子発生数を乗じた値を世代内の全中性子について合算して世代毎の重み付き飛行時間を算定する手段と、世代毎の重み付き飛行時間を当該重み付き飛行時間の世代の次の世代の中性子発生数で除して算出される値に基づいて中性子世代時間を決定する手段とを備える。
【0125】
上述の第三の実施形態の炉心設計装置は、本発明の第三の実施形態の炉心設計プログラムをコンピュータ上で実行することによっても実現される。本実施形態では、炉心設計プログラムをコンピュータ上で実行する場合を例に挙げて説明する。
【0126】
本発明の第三の実施形態の炉心設計プログラム17を実行することによって炉心設計装置10の制御部11には、中性子源を設定する手段としての中性子源設定値読込部11dと、予め設定された世代数に亘って世代毎に中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段としての輸送計算部11eと、中性子の輸送の計算及び核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における中性子毎の飛跡の長さを速さで除して算定される飛行時間にその中性子の子孫の世代毎の中性子発生数を乗じた値を世代内の全中性子について合算して世代毎の重み付き飛行時間を算定する手段としての核分裂計算部11f及び中性子発生数比算出部11gと重み付き飛行時間算定部11kと、世代毎の重み付き飛行時間を当該重み付き飛行時間の世代の次の世代の中性子発生数で除して算出される値に基づいて中性子世代時間を決定する手段としての中性子世代時間決定部11mとが構成される。
【0127】
ここで、第三の実施形態のS1〜S4,S7の処理はそれぞれ第一の実施形態のS1〜S4,S7の処理と同様であり、また、これらの処理に係る手段も第一の実施形態と第三の実施形態とで同様であるので、これらの処理及び手段については第三の実施形態としては具体的な説明は省略する。また、以下に説明する第三の実施形態において第一の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0128】
ただし、計算手順の設定(S2)に関し、第三の実施形態においては計算世代数Lについて前段評価世代数L0と本評価世代数Lとがそれぞれ設定される。そして、第二の実施形態と同様に、前段評価世代数L0及び本評価世代数Lは作業者が適宜設定する。
【0129】
また、第三の実施形態においては、第二の実施形態と同様に、初期中性子源は一個のみ予め設定され、中性子源設定値DB16cに当該一個の初期中性子源の設定値が記録されると共にS4の処理において中性子源設定値読込部11dによって読み込まれてS5〜S8の処理に用いられる。
【0130】
またここで、輸送方程式の解法に連続エネルギーモンテカルロ法を適用する場合の前提として、第一の実施形態のS5の処理に係る計算では、中性子源から発生した一個の中性子が体系から消滅するまでの飛跡と各飛跡での中性子の速さVとが確率論的に計算される。
【0131】
そして、第三の実施形態のS5の処理では、第一の実施形態のS5の処理内容に加えて以下のことを行う。
【0132】
すなわち、輸送計算部11eは、第一の実施形態と同様に次世代中性子源DB16dからSm個の中性子源の(r,E,Ω)データを読み込んでメモリ15に記憶させることに加え、第(L0+1)世代以降は、データサーバ16に格納されている飛行時間DB16fから第L0世代の祖先にあたる中性子の飛行時間データを読み込んで当該飛行時間データをメモリ15に記憶させる。
【0133】
輸送計算部11eは、さらに、第一の実施形態と同様の中性子輸送の計算を行い、第L0世代においてのみ中性子の飛跡の長さd〔m〕を速さVで除して合算し、数式16によって第L0世代の飛行時間TLO,ηを個々の中性子に対して算出する。なお、ηは個々の中性子を表す。
【0134】
(数16)TLO,η=Sum(d/V)
【0135】
また、上述の飛行時間TLO,ηの算出に関連し、第三の実施形態のS6の処理では、第一の実施形態のS6の処理内容に加えて以下のことを行う。
【0136】
すなわち、核分裂計算部11fは、第一の実施形態と同様の核分裂事象の計算を行って中性子毎に次世代の核分裂中性子の発生数を確率論的に計算すると共に、第(L0+1)世代以降においては、核分裂を引き起こした中性子の第L0世代の祖先にあたる中性子の飛行時間TLO,ηに先述の次世代の核分裂中性子の発生数を乗じた値をメモリ15に保存する。
【0137】
核分裂計算部11fは、さらに、S6の処理の結果として第一の実施形態と同様に次世代の核分裂中性子毎の(r,E,Ω)の組み合わせデータを次世代中性子源DB16dに書き込んで記録することに加え、核分裂を引き起こした中性子の第L0世代の祖先にあたる中性子の飛行時間TLO,ηのデータを記憶手段としてのデータサーバ16に格納される飛行時間DB16fに書き込んで記録する。なお、飛行時間DB16fには、次世代中性子源DB16dと同様に、計算によって得られた次世代の核分裂中性子として発生した数(即ちSm+1個)の飛行時間データが記録される。
【0138】
そして、第三の実施形態では、第(L0+1)世代以降の場合に、S7の処理の次に、制御部11の重み付き飛行時間算定部11kが世代毎に中性子の第L0世代の飛行時間に各世代の核分裂中性子数を乗じた値を集計して重み付き飛行時間の算定を行う(S8)。
【0139】
具体的には、第(L0+1)世代以降の場合に、重み付き飛行時間算定部11kは、S6の処理においてメモリ15に記憶された第m世代の輸送の結果核分裂を引き起こした中性子の第L0世代の祖先にあたる中性子の飛行時間TLO,ηに核分裂で発生する第(m+1)世代の中性子の発生数を乗じた値(この値を本発明においては重み付き飛行時間と呼ぶ)をメモリ15から読み込んで合算する。当該処理の結果に算定される値は数式8の分子即ち数式17に相当する。
【0140】
【数17】

【0141】
そして、重み付き飛行時間算定部11kは、算出された世代毎の重み付き飛行時間の値をメモリ15に記憶させる。
【0142】
ここにおいて、制御部11は、計算手順の一つとして予め設定されてS2の処理においてメモリ15に記憶された世代数L0+Lに亘ってS5〜S8の処理がなされた場合には処理ステップをS9の処理へと進め、前記世代数L0+Lに亘る処理が未だ残っている場合には処理ステップをS5の処理に戻す(L1)。
【0143】
次に、制御部11の中性子世代時間決定部11mが中性子世代時間の決定を行う(S9)。
【0144】
具体的には、中性子世代時間決定部11mは、S6の処理においてメモリ15に記憶された第(m+2)世代の中性子発生数Sm+2の値及びS8の処理においてメモリ15に記憶された第(L0+1)世代以降の世代毎の重み付き飛行時間(即ち数式17に相当)の値をメモリ15から読み込み、数式18によって世代毎の中性子世代時間Λm+1を算出する。
【0145】
【数18】

【0146】
そして、中性子世代時間決定部11mは、前後の世代のΛm+1の値の差違が一定の範囲に収まり前後世代間における中性子世代時間Λm+1の値の変化が収束していると判断される場合には前記前後世代間の後の世代の中性子世代時間Λm+1の値を最終的な中性子世代時間Λとする。なお、前後世代間における中性子世代時間Λの値の変化が収束していると判断するための一定の範囲は特定の範囲に限定されるものではなく、作業者が適宜設定すれば良い。
【0147】
そして、制御部11は、決定された中性子世代時間Λの値を表示部13に表示したり記憶部12内に結果ファイルとして記録したりし、与えられた条件における中性子世代時間Λの算定の処理を終了する(END)。
【0148】
以上の構成を有する本発明の第三の実施形態としての連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法、炉心設計装置及び炉心設計プログラムによれば、中性子世代時間Λを高精度で評価することができ、炉心設計の信頼性の向上が可能になる。
【0149】
なお、上述の第一の実施形態から第三の実施形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では、各種DB16a〜16eが記憶手段としてのデータサーバ16に格納されるようにしているが、これに限られず、記憶手段としての記憶部12に格納されるようにしても良いし、炉心設計装置10とは別体の各種記憶媒体に格納されるようにしても良い。
【0150】
また、上述の実施形態では、初期中性子源(即ち評価対象中性子源)の設定値として飛行方向Ωが予め設定され中性子源設定値DB16cに記録されるようにしているが、これに限られず、飛行方向Ωが予め設定されることなく等方的な発生が仮定され確率的に選択されるようにしても良い。
【符号の説明】
【0151】
10 連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計装置
11 制御部
12 記憶部
13 入力部
14 表示部
15 メモリ
16 データサーバ
17 連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉出力を評価する複数の中性子源を設定するステップと、予め設定された世代数に亘って世代毎に前記中性子源毎に連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って前記世代毎の核分裂中性子発生数を計算するステップと、前記世代毎の核分裂中性子発生数同士を除して各世代間の中性子発生数比を算出するステップと、前記各世代間の中性子発生数比を掛け合わせて前記中性子源に由来する原子炉出力の極限値を算定するステップとを有することを特徴とする連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法。
【請求項2】
原子炉出力を評価する複数の中性子源を設定する手段と、予め設定された世代数に亘って世代毎に前記中性子源毎に連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って前記世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段と、前記世代毎の核分裂中性子発生数同士を除して各世代間の中性子発生数比を算出する手段と、前記各世代間の中性子発生数比を掛け合わせて前記中性子源に由来する原子炉出力の極限値を算定する手段とを有することを特徴とする連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計装置。
【請求項3】
原子炉出力を評価する複数の中性子源を設定する手段、予め設定された世代数に亘って世代毎に前記中性子源毎に連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って前記世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段、前記世代毎の核分裂中性子発生数同士を除して各世代間の中性子発生数比を算出する手段、前記各世代間の中性子発生数比を掛け合わせて前記中性子源に由来する原子炉出力の極限値を算定する手段としてコンピュータを機能させるための連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計プログラム。
【請求項4】
中性子源を設定するステップと、予め設定された世代数に亘って世代毎に前記中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算するステップと、前記中性子の輸送の計算及び前記核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における遅発中性子発生事象を記録するステップと、前記中性子の輸送の計算及び前記核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて前記世代毎の全ての中性子発生数及び前記記録された遅発中性子に由来する中性子発生数を算出するステップと、前記世代毎の全ての中性子発生数に対する前記遅発中性子に由来する中性子発生数の比率を算出するステップと、前記世代毎の比率に基づいて実効遅発中性子割合を決定するステップとを有することを特徴とする連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法。
【請求項5】
中性子源を設定する手段と、予め設定された世代数に亘って世代毎に前記中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段と、前記中性子の輸送の計算及び前記核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における遅発中性子発生事象を記録する手段と、前記中性子の輸送の計算及び前記核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて前記世代毎の全ての中性子発生数及び前記記録された遅発中性子に由来する中性子発生数を算出する手段と、前記世代毎の全ての中性子発生数に対する前記遅発中性子に由来する中性子発生数の比率を算出する手段と、前記世代毎の比率に基づいて実効遅発中性子割合を決定する手段とを有することを特徴とする連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計装置。
【請求項6】
中性子源を設定する手段、予め設定された世代数に亘って世代毎に前記中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段、前記中性子の輸送の計算及び前記核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における遅発中性子発生事象を記録する手段、前記中性子の輸送の計算及び前記核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて前記世代毎の全ての中性子発生数及び前記記録された遅発中性子に由来する中性子発生数を算出する手段、前記世代毎の全ての中性子発生数に対する前記遅発中性子に由来する中性子発生数の比率を算出する手段、前記世代毎の比率に基づいて実効遅発中性子割合を決定する手段としてコンピュータを機能させるための連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計プログラム。
【請求項7】
中性子源を設定するステップと、予め設定された世代数に亘って世代毎に前記中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って前記世代毎の核分裂中性子発生数を計算するステップと、前記中性子の輸送の計算及び前記核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における中性子毎の飛跡の長さを速さで除して算定される飛行時間を算出するステップと、前記中性子毎の前記予め指定された世代における飛行時間に前記中性子の子孫の世代毎の中性子発生数を乗じた値を世代内の全中性子について合算して世代毎の重み付き飛行時間を算定するステップと、前記世代毎の重み付き飛行時間を当該重み付き飛行時間の世代の次の世代の中性子発生数で除して算出される値に基づいて中性子世代時間を決定するステップとを有することを特徴とする連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計方法。
【請求項8】
中性子源を設定する手段と、予め設定された世代数に亘って世代毎に前記中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って前記世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段と、前記中性子の輸送の計算及び前記核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における中性子毎の飛跡の長さを速さで除して算定される飛行時間を算出する手段と、前記中性子毎の前記予め指定された世代における飛行時間に前記中性子の子孫の世代毎の中性子発生数を乗じた値を世代内の全中性子について合算して世代毎の重み付き飛行時間を算定する手段と、前記世代毎の重み付き飛行時間を当該重み付き飛行時間の世代の次の世代の中性子発生数で除して算出される値に基づいて中性子世代時間を決定する手段とを有することを特徴とする連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計装置。
【請求項9】
中性子源を設定する手段、予め設定された世代数に亘って世代毎に前記中性子源に対して連続エネルギーモンテカルロ法によって中性子の輸送の計算を行って前記世代毎の核分裂中性子発生数を計算する手段、前記中性子の輸送の計算及び前記核分裂中性子発生数の計算の結果に基づいて予め指定された世代における中性子毎の飛跡の長さを速さで除して算定される飛行時間を算出する手段、前記中性子毎の前記予め指定された世代における飛行時間に前記中性子の子孫の世代毎の中性子発生数を乗じた値を世代内の全中性子について合算して世代毎の重み付き飛行時間を算定する手段、前記世代毎の重み付き飛行時間を当該重み付き飛行時間の世代の次の世代の中性子発生数で除して算出される値に基づいて中性子世代時間を決定する手段としてコンピュータを機能させるための連続エネルギーモンテカルロ法を用いた炉心設計プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−53187(P2011−53187A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204863(P2009−204863)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年3月6日 社団法人日本原子力学会発行の「日本原子力学会 2009年春の年会 予稿集」(CD−ROM)に発表
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】