連続パルス進行波加速器
【解決手段】
それぞれがビーム管の短い長さに沿って短い加速パルスを生成するためのスイッチを有する2つ以上のパルス形成ラインと、粒子ビームに対してエネルギを連続的に与えるために軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期してビーム管に沿って進行軸方向の電界が生成されるようにスイッチを連続的にトリガするためのトリガ機構と、を有する連続パルス進行波コンパクト加速器。
それぞれがビーム管の短い長さに沿って短い加速パルスを生成するためのスイッチを有する2つ以上のパルス形成ラインと、粒子ビームに対してエネルギを連続的に与えるために軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期してビーム管に沿って進行軸方向の電界が生成されるようにスイッチを連続的にトリガするためのトリガ機構と、を有する連続パルス進行波コンパクト加速器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府は、ローレンスリバーモア国立研究所の業務における米国エネルギ省とカリフォルニア大学との間の規約W−7405−ENG−48にしたがってこの発明の権利を有する。
【0002】
本出願は、2004年1月15日に出願された仮出願第60/536,943号の利益を主張する2005年1月14日に出願された先願第11/036,431号の一部継続出願であり、また、本出願は、2005年10月24日に出願された米国仮出願第60/730,128号、第60/730,129号、第60/730,161号および2006年5月4日に出願された米国仮出願第60/798016号の利益も主張し、前記出願の全ては参照することにより本願に組み入れられる。
【0003】
本発明は、線形加速器に関し、より具体的には、荷電粒子に対してエネルギを連続的に与えるために、軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期して加速器のビーム管に沿って進行軸方向の電界が生成されるように、線形加速器のパルス形成ラインを通って電気的な波面を差動伝搬(differentially propagate)させるために、スイッチを連続的にトリガする連続パルス進行波線形加速器に関する。
【背景技術】
【0004】
粒子加速器は、帯電した原子の粒子、例えば電子、陽子、または、帯電した原子核のエネルギを増大させ、それにより、それらを原子物理学者および粒子物理学者が研究できるようにするために使用される。高エネルギ帯電原子の粒子は、ターゲット原子と衝突するように加速され、また、結果として得られる生成物は検出器を用いて観察される。非常に高いエネルギにおいて、荷電粒子は、ターゲット原子の原子核を破壊でき、物質の他の基本単位と相互に作用することができる。また、粒子加速器は、核融合装置を開発する上でも、また、癌治療のための医学的用途においても重要なツールである。
【0005】
粒子加速器の1つのタイプが、参照することにより本願に組み入れられるCarderの米国特許第5,757,146号に開示されているが、これは荷電粒子の加速のために高速電気パルスを生成する方法を提供する。Carderには、切り換えられるときに高電圧を生成する一連の積層円形モジュールから成る誘電体壁加速器(DWA)システムが示されている。これらのモジュールはそれぞれ非対称ブルームラインと呼ばれ、これは、参照することにより本願に組み入れられる米国特許第2,465,840号に記載されている。Carder特許の図4A−4Bにおいて最も良く分かるように、ブルームラインは2つの異なる誘電体層から成っている。各表面上および誘電体層間には、2つの平行プレート径方向伝送ラインを形成する導体がある。構造体の一方側は低速ラインと称され、他方側は高速ラインと称される。高速ラインと低速ラインとの間の中心電極を最初に高電位に帯電させる。2つのラインは反対の極性であるため、ブルームラインの内径(ID)をわたる正味電圧は存在しない。表面フラッシュオーバーまたは同様のスイッチによって構造体の外側の両端間を短絡させると、ブルームラインのIDへ向かって径方向内側に伝搬する2つの逆極性波が発生する。高速ラインにおける波は、低速ラインにおける波の到達前に構造体のIDに達する。高速波が構造体のIDに到達すると、到達点における極性がそのラインにおいてのみ反転し、それにより、非対称ブルームラインのIDをわたる正味電圧が生じる。この高電圧は、低速ラインにおける波が最終的にIDに達するまで持続する。加速器の場合には、この間に荷電粒子ビームを注入して加速することができる。このようにして、Carder特許におけるDWA加速器は、高い加速勾配を得るために構造全体にわたって続く軸方向加速電場を与える。
【0006】
しかしながら、CarderのDWAなどの既存の誘電体壁加速器は、ビームの質および性能に影響を及ぼし得る、ある特有の問題を有している。具体的には、幾つかの問題は、Carder DWAのディスク状の幾何学的構造に存在するものであり、これにより荷電粒子を加速するという意図の使用に対して最適であるよりも装置全体が小さくなる。中心穴を有する平坦な平面導体は、伝搬する波面をその中心穴へ向けて径方向に集束させる。そのような幾何学的構成においては、波面は変化するインピーダンスを受け、これにより、出力パルスが歪められ、所定の時間依存エネルギ利得が電界を横切る荷電粒子ビームに対して与えられない場合がある。あるいは、そのような構造によって形成された電界を横切る荷電粒子ビームは、経時変化するエネルギ利得を受け、これにより、加速システムがそのようなビームを適切に輸送してそのような限られた用途のビームを形成することが妨げられ得る。
【0007】
また、そのような構造のインピーダンスは、必要とされるインピーダンスよりもかなり低い場合がある。例えば、必要とされる加速勾配を維持しつつミリアンペア以下のオーダーのビームを生成することが、多くの場合に非常に望ましい。Carderのディスク状ブルームライン構造により、過度なレベルの電気エネルギがシステムに蓄えられる可能性がある。明らかな電気的非効率性以上に、システムが起動されるときにビームに対して供給されないすべてのエネルギは、構造内に残存する可能性がある。そのような過度のエネルギは、装置全体の性能および信頼性に対して悪影響を及ぼす可能性があり、それにより、システムの早期の故障を招く可能性がある。
【0008】
また、電極の外側の外周が大きく延びることは、中心穴を有する平坦な平面導体(例えば、ディスク形状)に特有のものである。その結果、構造体を起動させるための並列スイッチの数がその外周によって決定される。例えば、10ns未満のパルスを生成するために使用される6インチの直径のデバイスでは、一般に、ディスク形状非対称ブルームライン層毎に少なくとも10個のスイッチ部位が必要となる。この問題は、長い加速パルスが必要とされる場合には更に大きな問題になる。これは、このディスク状ブルームライン構造の出力パルス長が中心穴からの径方向範囲に直接に関連付けられるからである。したがって、長いパルス幅が必要とされる場合には、それに応じて、より多いスイッチ部位も必要とされる。スイッチを起動する好ましい実施形態がレーザまたは他の同様の装置の使用である場合には、非常に複雑な分配システムが必要とされる。また、長いパルス構造は、製造が困難な大きな誘電体シートを必要とする。これによって、そのような構造の重量が増大し得る。例えば、現在の形態において、50nsパルスを供給する装置は、1メートル当たり数トン程度の重さとなり得る。長パルスの欠点の幾つかは、非対称ブルームライン内の3つ導体すべてにおいて螺旋溝を使用することにより軽減され得るが、これは、結果として、動作を妨げ得る相殺的干渉層間結合をもたらす可能性がある。すなわち、ステージ毎にかなり減少されたパルス振幅(したがって、エネルギ)が構造の出力において現れ得る。
【0009】
また、陽子ビームを使用する癌治療などの医学治療における特定の用途のために様々なタイプの加速器が開発されてきた。例えば、Coleらの米国特許第4,879,287号は、カリフォルニア州のロマ・リンダにあるロマ・リンダ大学陽子加速器施設において使用されるマルチステーション陽子ビーム治療システムを開示している。このシステムでは、施設内のある場所で粒子源生成が行なわれ、施設内の他の場所で加速が行なわれるが、患者は施設内の更に他の場所位置する。粒子源、加速、ターゲットが互いに遠く離れているため、大型でかさばる偏向磁石を有する複雑なガントリシステムを使用して粒子輸送が達成される。また、医学治療において知られる他の代表的なシステムがBertscheの米国特許第6,407,505号およびBlosserらの米国特許第4,507,616号に開示されている。Bertscheには定在波RFリニアックが示されており、また、Blosserには、支持構造体上に回転可能に装着された超伝導サイクロトロンが示されている。
【0010】
また、ある容積における低圧ガスからプラズマ放電を形成するイオン源が知られている。この容積から、イオンが抽出されて加速のために加速器内に視準される。これらのシステムは、一般に、0.25A/cm2を下回る抽出された電流密度に制限される。この低い電流密度は、抽出界面でのプラズマ放電の強度に部分的に起因する。当該技術分野において知られるイオン源の1つの例は、超短イオンパルスを生成するように構成された抽出システムを有するLeungらの米国特許第6,985,553号に開示されている。他の例は、高視準イオンビームを生成するために、抽出グリッドと加速グリッドと集束グリッドとシールドグリッドとを有するマルチグリッドイオンビーム源を開示するWahlinの米国特許第6,795,807号に示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、加速軸を取り囲む長さLの誘電体ビーム管と、ビーム管に対して、これを横切る方向に接続される少なくとも2つのパルス形成ラインであって、各パルス形成ラインが、他のパルス形成ラインから独立して当該パルス形成ラインを通って少なくとも1つの電気的な波面を伝搬してパルス幅τの短い加速パルスをビーム管の対応する短軸長δLに沿って生成するために高電圧電位に接続可能なスイッチを有する、少なくとも2つのパルス形成ラインと、荷電粒子に対してエネルギを連続的に与えるために、軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期してビーム管に沿って進行軸方向の電界が生成されるようにスイッチを連続的に制御する手段とを備える短パルス誘電体壁加速器を含んでいる。
【0012】
本発明の他の態様は、横方向加速軸へと延びる複数のパルス形成ラインであって、各パルス形成ラインが、他のパルス形成ラインから独立して当該パルス形成ラインを通って少なくとも1つの電気的な波面を伝搬して加速軸の対応する短軸長に隣接して短い加速パルスを生成するために高電圧電位に接続可能なスイッチを有する、複数のパルス形成ラインと、荷電粒子に対してエネルギを連続的に与えるために、軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期して加速軸に沿って進行軸方向の電界が生成されるようにスイッチを連続的に制御するべく動作可能に接続されるトリガとを備える連続パルス進行波線形加速器を含んでいる。
【0013】
本発明の他の態様は、加速軸を取り囲む長さLの誘電体ビーム管と、それぞれが加速軸に対して垂直なパルス形成ラインを形成する少なくとも2つのブルームラインモジュールであって、各ブルームラインモジュールが、第1の端部とビーム管に接続される第2の端部とを有する第1の導体と、第1の導体に隣接し、高電圧電位に切り換え可能な第1の端部とビーム管に接続される第2の端部とを有する第2の導体と、第2の導体に隣接し、第1の端部とビーム管に接続される第2の端部とを有する第3の導体と、第1の誘電定数を有し、第1の導体と第2の導体との間の空間を満たす第1の誘電体部材と、第2の誘電定数を有し、第2の導体と第3の導体との間の空間を満たす第2の誘電体部材とを備え、第1および第2の誘電定数がビーム管の誘電定数よりも小さい少なくとも2つのブルームラインモジュールであって、各ブルームラインモジュールが、他のブルームラインモジュールから独立して当該ブルームラインモジュールを通って少なくとも1つの電気的な波面を伝搬してパルス幅τの短い加速パルスをビーム管の対応する短軸長δLに沿って生成するために高電圧電位に接続可能な少なくとも1つのスイッチを有する少なくとも2つのブルームラインモジュールと、荷電粒子に対してエネルギを連続的に与えるために、軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期してビーム管に沿って進行軸方向の電界が生成されるようにスイッチを連続的にトリガするべく動作可能に接続されるコントローラとを備える連続パルス進行波線形加速器を含んでいる。
【0014】
開示内容の一部に組み込まれ且つ開示内容の一部を形成する添付図面は以下の通りである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
A.帯状のブルームラインを有するコンパクト加速器
ここで、図面を参照すると、図1〜図12は、第1の端部と第2の端部との間を伝搬する波面を案内し且つ第2の端部で出力パルスを制御する少なくとも1つの帯状のブルームライン(Blumlein)モジュールを有する本発明で使用されるコンパクトな線形加速器を示している。各ブルームラインモジュールは第1、第2および第3の平面導体ストリップを有しており、第1の導体ストリップと第2の導体ストリップとの間に第1の誘電体ストリップを有し、第2の導体ストリップと第3の導体ストリップとの間に第2の誘電体ストリップを有している。また、コンパクト線形加速器は、第2の導体ストリップを高電位まで帯電させるために接続された高電圧電源と、第2の導体ストリップにおける高電位を第1および第3の導体ストリップのうちの少なくとも一方へ切り換えて対応する誘電体ストリップにおいて伝搬逆極性波面を起こすスイッチとを含んでいる。
【0016】
コンパクト線形加速器は、第1の端部と第2の端部との間で伝搬波面を案内し且つ第2の端部で出力パルスを制御する少なくとも1つの帯状のブルームラインモジュールを有している。各ブルームラインモジュールは第1、第2および第3の平面導体ストリップを有しており、第1の導体ストリップと第2の導体ストリップとの間に第1の誘電体ストリップを有し、第2の導体ストリップと第3の導体ストリップとの間に第2の誘電体ストリップを有している。また、コンパクト線形加速器は、第2の導体ストリップを高電位まで帯電させるために接続された高電圧電源と、第2の導体ストリップにおける高電位を第1および第3の導体ストリップのうちの少なくとも一方へ切り換えて対応する誘電体ストリップにおいて伝搬逆極性波面を起こすスイッチとを含んでいる。
【0017】
図1および図2は、スイッチ18に接続された単一のブルームラインモジュール36を備える参照符号10で全体的に示されるコンパクト線形加速器の第1の典型的な実施形態を示している。コンパクト加速器は、スイッチ18を介して高電圧電位をブルームラインモジュール36に対して供給する適切な高電圧電源(図示せず)も含んでいる。一般に、ブルームラインモジュールは、典型的には均一な幅であるが必ずしもそうではないストリップ形態、すなわち、長くて狭い幾何学的形状である。図1および図2に示される特定のブルームラインモジュール11は、第1の端部11と第2の端部12との間に延び、且つ長さlと比べて比較的狭い幅wn(図2,4)である細長いビームまたは板状の直線形態を成している。ブルームラインモジュールのこのストリップ状の形態は、第1の端部11から第2の端部12へと伝搬電気信号波を案内し、それにより、第2の端部で出力パルスを制御するように作用する。具体的には、波面の形状は、モジュールの幅を適切に構成することにより、例えば図6に示されるように幅を次第に細くすることにより制御されてもよい。帯状の形態により、コンパクト加速器は、Carderのディスク形状モジュールに関して背景技術で議論したように、中心穴に集束するように径方向に向けられるときに起こり得る伝搬波面の変動インピーダンスを克服することができる。そして、このようにして、パルスを破壊することなくモジュール10のストリップまたはビーム状形態により平坦な出力(電圧)パルスを生成することができ、それにより、粒子ビームが経時変化するエネルギ利得を受けないようにすることができる。本明細書中および請求項中で使用されるように、第1の端部11は、スイッチ、例えばスイッチ18に接続される端部として特徴付けられ、また、第2の端部12は、粒子加速のための出力パルス領域などの負荷領域に隣接する端部である。
【0018】
図1および図2に示されるように、基本的なブルームラインモジュール10の幅が狭いビーム状構造は、薄いストリップの状態に形成され、どちらも細長いが、より厚いストリップとしても示される誘電体部材によって分離される3つの平面導体を含んでいる。具体的には、第1の平面導体ストリップ13と真ん中の第2の平面導体ストリップ15とは、それらの間の空間を満たす第1の誘電体部材14によって分離される。また、第2の平面導体ストリップ15と第3の平面導体ストリップ16とは、それらの間の空間を満たす第2の誘電体部材17によって分離される。誘電体部材によって成される分離は、図示のように平面導体ストリップ13,15,16を互いに平行となるように位置決めすることが好ましい。平面導体ストリップおよび誘電体ストリップ13−17に接続されてこれらの端部を覆う第3の誘電体部材19が更に示されている。第3の誘電体部材19は、波を組み合わせてパルス電圧だけが真空壁の両端間にかけられるようにする役目を果たし、それにより、その壁に対して応力が加えられる時間が減少され、更に高い勾配が可能になる。また、第3の誘電体部材は、波を加速器に対して加える前に波を変形させる、すなわち、電圧を上げ、インピーダンスを変化させるなどする領域として使用することもできる。したがって、第3の誘電体部材19および第2の端部12は、一般に、矢印20により示される負荷領域に隣接して示されている。具体的には、矢印20は、粒子加速の方向を向く粒子加速器の加速軸を表わしている。背景技術で説明したように、加速の方向が2つの誘電体ストリップを通じた速い伝送ラインおよび遅い伝送ラインの経路に依存していることは言うまでもない。
【0019】
図1において、スイッチ18は、第1の端部において、すなわち、モジュール36の第1の端部11において、平面導体ストリップ13,15,16のそれぞれに接続されて示されている。スイッチは、最初に、外側の平面導体ストリップ13,16をグランド電位に接続し且つ真ん中の導体ストリップ15を高電圧源(図示せず)に接続する働きをする。その後、スイッチ18は、第1の端部で短絡あっせるように動作し、それによってブルームラインモジュールを通って伝搬する電圧波面を起こし、第2の端部で出力パルスを生成する。具体的には、スイッチ18は、ブルームラインモジュールが対称動作のために構成されているか或いは非対称動作のために構成されているかに応じて、誘電体のうちの少なくとも1つにおいて伝搬逆極性波面を第1の端部から第2の端部へと起こすことができる。非対称動作のために構成される場合には図1および図2に示されるように、ブルームラインモジュールは、Carderに記載される態様と同様の態様で、誘電体層14,17の誘電定数および厚さ(d1≠d2)が異なる。ブルームラインの非対称動作は、誘電体層を通る伝搬波速度を異なるものとする。しかしながら、図12に示されるようにブルームラインモジュールが対称動作のために構成される場合には、誘電体ストリップ95,98が同じ誘電定数を有し、幅および厚さ(d1=d2)も同じになる。また、図12に示されるように、磁性部材も第2の誘電体ストリップ98に極めて接近して配置され、それにより、そのストリップ内では波面の伝搬が妨げられる。このようにして、スイッチは、第1の誘電体ストリップ95においてのみ伝搬逆極性波面を起こすようになっている。スイッチ18が例えばガス放電閉塞スイッチ、表面フラッシュオーバー閉塞スイッチ、固体スイッチ、光伝導スイッチなどの非対称または対称ブルームラインモジュール動作に適したスイッチであることは言うまでもない。また、スイッチおよび誘電体部材のタイプ/寸法の選択は、例えば20メガボルト/mを越える勾配を含む様々な加速勾配でコンパクト加速器が動作できるように適切に選択できる。しかしながら、設計の問題として更に低い勾配を達成することもできることもまた、言うまでもない。
【0020】
1つの好ましい実施形態において、第2の平面導体の幅w1は、第1の誘電体ストリップをわたる特性インピーダンスZ1=k1g1(w1,d1)によって規定される。k1は、第1の誘電体部材の誘電率に対する透過率の比率の平方根によって規定される第1の誘電体ストリップの第1の真空の電気定数であり、g1は隣接する導体の形状効果によって規定される関数であり、d1は第1の誘電体ストリップの厚さである。また、第2の誘電体ストリップの厚さは、第2の誘電体ストリップをわたる特性インピーダンスZ2=k2g2(w2,d2)によって規定される。ここで、k2は第2の誘電体部材の第2の真空の電気定数であり、g2は隣接する導体の形状効果によって規定される関数であり、w2は第2の平面導体ストリップの幅であり、d2は第2の誘電体ストリップの厚さである。このようにして、非対称ブルームラインモジュールにおいて必要とされるように、異なる誘電体は、異なるインピーダンスをもたらすため、関連するラインの幅を調整することによりインピーダンスを一定に保つことができる。したがって、負荷に対して、より大きいエネルギが伝達されることになる。
【0021】
図4および図5は、第1および第2の平面導体ストリップ41,42並びに第1および第2の誘電体ストリップ44,45の幅よりも幅が狭い第2の平面導体ストリップ42を有するブルームラインモジュールの典型的な実施形態を示している。この特定の形態では、電極41,43が延在することによって、電極42がエネルギを前の或いは後のブルームラインに対して容易に結合することができなくなるために、背景技術において説明した相殺的干渉層間結合が妨げられる。また、他の典型的な実施形態のモジュールは、その幅が長さ方向l(図2,4参照)に沿って変化し、それにより、出力パルスの形状を制御して形作れることが好ましい。これが図6に示されており、図6は、モジュールが中央負荷領域に向かって径方向内側に延びるにつれて幅が先細る状態を示している。また、他の好ましい実施形態において、ブルームラインモジュールの寸法および誘電体部材は、Z1がZ2にほぼ等しくなるように選択される。既に説明したように、インピーダンスが整合すると、振動出力を形成する波の形成が妨げられる。
【0022】
また、好ましくは、非対称ブルームライン形態において、第2の誘電体ストリップ17は、例えば3:1など、第1の誘電体ストリップ14よりもかなり伝搬速度が低い。この場合、伝搬速度はv2およびv1のそれぞれによって規定される。ここで、v2=(μ2ε2)−0.5、v1=(μ1ε1)−0.5であり、透過率μ1および誘電率ε1は第1の誘電体部材の材料定数であり、また、透過率μ2および誘電率ε2は第2の誘電体部材の材料定数である。これは、第1の誘電体ストリップの誘電定数すなわちμ2ε2よりも大きい誘電定数すなわちμ1ε1を有する部材を第2の誘電体ストリップのために選択することによって得ることができる。図1に示されるように、例えば、第1の誘電ストリップの厚さがd1として示され、第2の誘電体ストリップの厚さがd2として示され、d2がd1よりも大きくなるように示されている。d2をd1よりも大きく設定することにより、異なる配置と異なる誘電定数との組み合わせが第2の平面導体ストリップ15の両側に同じ特性インピーダンスZをもたらす。なお、特性インピーダンスは両方の半体において同じであってもよいが、各半体を通る信号の伝搬速度は必ずしも同じでなくてもよい。誘電体ストリップの誘電定数および厚さは異なる伝搬速度をもたらすように適切に選択されてもよいが、細長い帯状の構造および形態は、非対称ブルームラインの概念、すなわち、誘電体は誘電定数および厚さが異なる考え方を必ずしも利用しなくてよいことは言うまでもない。制御波形の利点は、ブルームラインモジュールの細長いビーム状の形状および形態によって可能とされるのであって、高い加速勾配を生み出す特定の方法によってではないため、他の典型的な実施形態では、他のスイッチング構造、例えば対称ブルームライン動作を伴う図12に関して説明したスイッチング構造を使用することができる。
【0023】
あるいは、コンパクト加速器は、互いに位置合わせされた状態で積み重ねられる細長いブルームラインモジュールの2つ以上を有するように構成されてもよい。例えば、図3は、互いに位置合わせされた状態で積み重ねられた2つのブルームラインモジュールを有するコンパクト加速器21を示している。2つのブルームラインモジュールは平面導体ストリップと誘電体ストリップとの交互の積層体24−32を形成しており、平面導体ストリップ32は両方のモジュールに共通である。また、導体ストリップは、積層モジュールの第1の端部22でスイッチ33に接続される。加速軸矢印35によって示される負荷領域に隣接し、積層モジュールの第2の端部23を覆う誘電体壁34も設けられている。
【0024】
コンパクト加速器は、中央負荷領域の周囲を取り囲むように位置する少なくとも2つのブルームラインモジュールを有して構成されてもよい。また、周囲を取り囲むモジュールはそれぞれ、第1のモジュールと位置合わせされるように積み重ねられる1つ以上の更なるブルームラインモジュールを更に含んでいてもよい。図6は、例えば、2つのブルームラインモジュール積層体51,53を有するコンパクト加速器50の典型的な実施形態を示しており、2つの積層体が中央負荷領域56を取り囲んでいる。各モジュール積層体は、4つの独立に動作するブルームラインモジュール(図7)から成る積層体として示されており、関連するスイッチ52,54に対して別々に接続されている。ブルームラインモジュールを互いに位置合わせした状態で積み重ねることにより加速軸に沿ってセグメントの被覆率が増大することは言うまでもない。
【0025】
図8および図9には、2つ以上の導体ストリップ61,63であって、例えば65で示されるリング電極によってそれらそれぞれの第2の端部が接続される導電ストリップ61,63を有するコンパクト加速器の他の典型的な実施形態が参照符号60で示されている。リング電極形態は、周囲を取り囲むモジュールの1つ以上が、中央負荷領域を完全に取り囲むことなく中央負荷領域へ向けて延びている図6および図7などの構造で起こる場合がある方位平均化を克服するように作用する。図9に最も良く示されるように、61,62によって表わされる各モジュール積層体は、関連するスイッチ62,64にそれぞれ接続される。また、図8,9は、リング電極の内径に沿って配置される絶縁体スリーブ68を示している。あるいは、別個の絶縁体部材69もリング電極65間に配置されて示されている。また、導体ストリップ間で使用される誘電体部材に代わる手段として、導電箔66と絶縁箔66’との交互層が利用されてもよい。交互層は、モノリシック誘電体ストリップの代わりに積層構造体として形成されてもよい。
【0026】
また、図10および図11はコンパクト加速器の2つの更なる典型的な実施形態を示しており、コンパクト加速器は、図10においては全体的に参照符号70で示され、図11においては全体的に参照符号80で示されている。各コンパクト加速器は、非線形帯状の形態を成すブルームラインモジュールを有している。ここでは、非線形帯状の形態は、曲線形状または蛇行形状として示されている。図10では、加速器70は、中央領域の周囲を取り囲み且つ中央領域へ向けて延びるように示される4つのモジュール71,73,75,77を備えている。各モジュール71,73,75,77は関連するスイッチ72,74,76,78にそれぞれ接続される。この構造から分かるように、各モジュールの第1の端部と第2の端部との間の直接的な径方向距離は非線形モジュールの全長よりも短く、これにより、送電経路を増大させつつ加速器のコンパクト化を図ることができる。図11は図10の場合と同様の構造を示しており、加速器80は、中央領域の周囲を取り囲み且つ中央領域へ向けて延びるように示される4つのモジュール81,83,85,87を有している。各モジュール81,83,85,87は関連するスイッチ82,84,86,88にそれぞれ接続される。また、モジュールの径方向内側端部すなわち第2の端部はリング電極89によって互いに接続されており、それにより、図8で説明した利点が与えられる。
【0027】
B.連続パルス進行波加速モード
休止状態の誘導線形加速器(LIA)はその全長に沿って短絡される。したがって、荷電粒子の加速は、構造体が有する、過渡的な電界勾配を形成する能力、および、連続する一連の印加加速パルスを隣接するパルス形成ラインから分離させる能力に依存する。従来技術のLIAにおいて、この方法は、好ましくは荷電粒子ビームが存在するときに、過渡期にわたって構造体の内部からパルス形成ラインを一連の積層電圧源として出現させることによって実施される。この加速勾配を形成して必要とされる分離を行なうための典型的な手段は、加速器内の磁気コアを使用し且つパルス形成ライン自体の経過時間を使用する方法である。後者は、任意にケーブルを接続することにより長さの付加を含んでいる。過渡加速が起こった後、磁気コアの飽和に起因して、システムは再びその長さに沿って短絡される。そのような従来技術のシステムの欠点は、加速領域の空間的範囲が限られていることにより、加速勾配が非常に低く(〜0.2−0.5MV/m)、また、磁性部材が高価で大きいという点である。また、良好な磁性部材であっても、電気エネルギの激しい損失なしに高速パルスに応答することができず、したがって、コアが必要とされる場合、このタイプの高勾配加速器を形成することは、良く見ても実用的とはなり得ず、最悪の場合には技術的に実現不可能である。
【0028】
図25は、全体的に参照符号160で示され、長さがlの、本発明の連続パルス進行波加速器の概略図を示している。加速器の各伝送ラインは長さがΔR、幅がδlであるように示されており、また、ビーム管は直径がdである。電気的長さ(すなわち、パルス幅)がτである加速パルスを用いてビーム管の短軸長δlを連続的に励起させて加速軸の長さ方向に沿って単一の仮想進行波164を生成するためにスイッチの組162を連続的にトリガするトリガコントローラ161が設けられている。具体的には、連続トリガ/コントローラはスイッチを連続的にトリガすることができ、それにより、エネルギを粒子に対して連続的に与えるために、軸方向に横断する荷電粒子のパルスビームと同期し、加速軸を取り囲む進行軸方向電場がビーム管に沿って生成される。トリガコントローラ161は各スイッチを個別にトリガしてもよい。あるいは、トリガコントローラは、ブロックを形成する少なくとも2つの隣り合う伝送ラインを同時に切り換えて隣り合うブロックを連続的に切り換てもよく、それにより、加速パルスが各ブロックを通って形成される。このようにして、2つ以上のスイッチ/伝送ラインから成るブロックは、ビーム管壁の短軸長nδlを励起させる。δlは、励起されたラインに対応するビーム管壁の短軸長であり、nは、任意の時間の瞬間における隣接する励起ラインの数である(n≧1)。
【0029】
例示目的としての幾つかの数値例:d=8cm、τ=数ナノ秒(例えば、陽子加速においては1−5ナノ秒、電子加速においては100ピコ秒〜数ナノ秒)、v=c/2(c=光速)。しかしながら、本発明がほぼ任意の寸法に拡大収縮可能であることは言うまでもない。好ましくは、ビーム管の直径dおよび長さlは、誘電体ビーム管の入力端および出力端におけるフリンジ磁界を減少するために基準l>4dを満たす。また、ビーム管は、基準、すなわち、γτv>d/0.6を満たすことが好ましい。ここで、vはビーム管壁上の波の速度であり、dはビーム管の直径であり、τは下式:
【0030】
【数3】
で表わされるパルス幅、γは、下式:
【0031】
【数4】
で表わされるローレンツ係数である。なお、ΔRはパルス形成ラインの長さであり、μは比透過率(通常=1)であり、εrは比誘電率である。このように、加速軸に沿って生成されるパルス高勾配は、少なくとも約30MeV/mであり、最大でも約150MeV/mである。
【0032】
加速勾配を形成するためにコアを必要とする、多くのこの種の加速器システムとは異なり、本発明の加速器システムはコアなしに動作する。これは、基準nδl<lが満たされる場合に、ビーム管の電気的活性化が一時にビーム管の小さな領域に沿って起こり、短絡が避けられるからである。コアを使用しないことにより、本発明は、Vt=AΔB(Aはコアの断面積)の場合において得られる電圧がΔBにより制限されることに起因する加速の制限など、コアの使用に関連付けられる様々な問題を回避する。また、コアの使用は、加速器の繰り返し回数を制限するように働く。これは、コアをリセットするためにパルス電源が必要とされるからである。所定のnδlにおけるパルス状の加速は、所定の軸方向セグメントに隣接する励起されない伝送ラインの過渡分離特性によって、導電ハウジングから分離される。スイッチ電流の一部が励起されない伝送ラインへと分路されるため、励起されない伝送ラインの不完全な過渡分離特性から寄生波が生じることは言うまでもない。無論、これは、この分路が流れることを防止するための磁気コア分離がなければ起こる。特定の状態下では、例えば以下の例に示されるように寄生波が有利に使用される場合がある。高速/高インピーダンス(低い誘電定数)ラインだけが切り換えられる非対称ストリップブルームラインから成る開回路ブルームライン積層体の形態では、励起されない伝送ラインで生成される寄生波は、励起されないラインにおいて更に高い電圧を生成してその電圧を最初の帯電状態を越えて増大させる一方、低速ラインにおいてより少ない量だけ電圧を増大させる。これは、2つのラインが同じ注入電流を受ける分圧器として連続して現れるからである。このとき、加速器壁に現れる波は、最初に帯電した値よりも大きい値に増大され、それにより、更に高い加速勾配が得られるようになる。
【0033】
図26および図27は、長さLのビーム管で生成される勾配の違いを示している。図26は、幅vτが長さLよりも小さい単一パルス進行波を示している。これに対し、図27は、加速器の全長Lにわたって勾配を生成するために全ての伝送ラインが同時にトリガされる積層ブルームラインモジュールの典型的な動作を示している。ここで、vτは長さL以上である。
【0034】
C.荷電粒子発生器:一体化されたパルスイオン源および注入器
図13は、単一のユニットへと一体化されたパルスイオン源112および注入器113を有する本発明の荷電粒子発生器110の典型的な実施形態を示している。激しいパルスイオンビームを生成するためには、抽出されたビームおよびそれに続く集群の変調が必要とされる。最初に、粒子発生器は、非常に密度の高いプラズマを生成するために表面フラッシュオーバー放電を用いるパルスイオン源112を使用して、激しいパルスイオンビームを形成するべく動作する。プラズマ密度の推定値は7気圧を超え、また、そのような放電は早い。これにより、極めて短いパルスの形成を可能にすることができる。従来のイオン源は、所定容積内の低圧ガスからプラズマ放電を形成する。この容積から、イオンが抽出されて加速のために加速器内に視準される。これらのシステムは、一般に、抽出された電流密度が0.25A/cm2を下回るように制限される。この低い電流密度は、抽出界面でのプラズマ放電の強度に部分的に起因する。
【0035】
本発明のパルスイオン源は、絶縁体を用いてブリッジされる少なくとも2つの電極を有している。対象のガス種は、金属電極内で溶解されているか或いは2つの電極間で固体状態である。この幾何学的形態により、絶縁体上にわたって形成されるスパークは、その物質を受けて放電し、ビームへの抽出のためにイオン化されるようになる。好ましくは、少なくとも2つの電極は絶縁部材、半絶縁部材、または、半導電部材を用いてブリッジされ、これにより、スパーク放電がこれらの2つの電極間に形成される。部材は、電極内または電極の近傍に、所望のイオン種を原子形態または分子形態で含んでいる。好ましくは、所望のイオン種を含む材料は、水素の同位体、例えばH2または炭素である。また、好ましくは、電極のうちの少なくとも1つが半多孔質であり、所望のイオン種を原子形態または分子形態で含むリザーバがその電極の下にある。図14および図15は、全体的に参照符号112で示されるパルスイオン源の典型的な実施形態を示している。セラミック121が、当該セラミックの表面上にカソード124およびアノード123を有するように示されている。カソードは、その下側のH2リザーバ114を覆うパラジウムセンターピース124を取り囲むように示されている。カソードおよびアノードが逆にされてもよいことは言うまでもない。また、開口プレート、すなわち、ゲート電極115が、その開口をパラジウムトップハット124に位置合わせされた状態で位置している。
【0036】
図15に示されるように、電子放射を発生させるためにカソード電極とアノード電極との間に高電圧が印加される。これらの電極は、十分に高い電圧において、当初は真空状態に近いため、電子がカソードから電界放出される。これらの電子は、アノードへ向けて空間を横切り、アノードとの衝突時に局部的な加熱を引き起こす。この加熱は分子を解放し、これらの分子はその後に電子と衝突し、それにより、分子がイオン化されるようになる。これらの分子は、所望の種であってもよいし、所望の種でなくてもよい。イオン化されたガス分子(イオン)は、加速してカソードへと戻って、この場合にはPdトップハットと衝突し、加熱を引き起こす。Pdは、加熱されると、ガス、具体的には水素が部材を通って透過できるようにする特性を有している。つまり、イオンによる加熱は水素ガスを上記の容積内に局所的に漏出させるのに十分であるため、これらの漏出した分子は、電子によってイオン化されてプラズマを形成する。また、プラズマが十分な密度まで増大すると、自立アークが形成される。したがって、開口プレートの反対側に配置されるパルスでマイナスに帯電した電極を使用して、イオンを抽出し、それらのイオンを加速器へ注入することができる。抽出電極が無い場合には、適切な極性の電場を同様に使用してイオンを抽出することができる。また、アークの停止時には、ガスが脱イオン化される。電極がゲッタリング部材で形成される場合、ガスは、その後に次のサイクルのために使用されるべき金属電極へと吸収される。再吸収されないガスは、真空システムによって送出される。この種の供給源の利点は、真空システムにおけるガス負荷がパルス用途において最小限に抑えられるという点である。
【0037】
荷電粒子抽出、集束、および、パルスイオン源112から線形加速器の入力へと輸送は、図13に示される一体化された注入器セクション113によって行なわれる。具体的には、荷電粒子発生器の注入器セクション113は、荷電イオンビームをターゲットへと集束させる役目を果たす。ターゲットは、荷電粒子治療設備内の患者であってもよいし、または、同位体生成のためのターゲット或いは荷電粒子ビームのための任意の他の適したターゲットであってもよい。また、本発明の一体化された注入器により、荷電粒子発生器は、電気集束場だけを使用してビームを輸送して患者に集束させることができる。システム内に磁石は存在しない。システムは、幅広い範囲のビーム電流、エネルギ、および、スポットサイズをそれぞれ独立に提供することができる。
【0038】
図13は、パルスイオン源112に対する注入器113の概略的な配置を示しており、図21は、線形加速器131と一体に組み合わされた荷電粒子発生器132の概略図を示している。コンパクト高勾配加速器のビーム抽出、輸送、および、集束の全ては、ゲート電極115と、抽出電極116と、集束電極117と、グリッド電極119とを備える注入器によって制御され、これらの電極は荷電粒子源と高勾配加速器との間に位置する。しかしながら、最小の輸送システムは、抽出電極と、集束電極と、グリッド電極とから成るべきである。また、必要であれば、各機能について複数の電極を使用することができる。また、全ての電極は、図18に示されるように、システムの性能を最適化するように形成することもできる。高速パルス電圧を伴うゲート電極115は、荷電粒子ビームを数ナノ秒以内でON/OFFするために使用される。陽子治療用に設計された高勾配加速器におけるゲート電圧の関数としてシミュレーションされた抽出ビーム電流が図17に示されており、また、様々なゲート電圧における最終的なビームスポットが図16に示されている。発明者によって行なわれたシミュレーションでは、ノミナルなゲート電極の電圧は9kVであり、抽出電極は980kVであり、集束電極は90kVであり、グリッド電極は980kVであり、また、高勾配加速器は加速勾配が100MV/mである。図16は最終的なスポットサイズがゲート電極の電圧設定に影響されないことを示しているため、ゲート電圧が、図17に示されるようにビーム電流をON/OFFするための簡単なノブとなる。
【0039】
高勾配加速器システムの注入器は、その電流が抽出電極における電圧によって決定される空間電荷支配ビーム(space charge dominated beam)を抽出して捕らえるためにゲート電極および抽出電極を使用する。加速器システムは、ビームをターゲットへ集束させるために少なくとも1つの集束電極117から成る組を使用する。図18に示される電位等高線プロットは、抽出電極および集束電極がどのように機能するのかを示している。ここでは、最小の集束/輸送システム、すなわち、1つの抽出電極と1つの集束電極とが使用される。高勾配加速器の入口での抽出電極、集束電極、および、グリッド電極における電圧は、980kV、90kV、および、980kVである。図18は、定形抽出電極(shaped extraction electrode)の電圧がゲート電極と抽出電極との間にギャップ電圧を設定することを示している。また、図18は、定形抽出電極、定形集束電極(shaped focusing electrode)およびグリッド電極における電圧が、静電集束−非集束−集束領域、すなわち、荷電粒子ビームに対して強力な正味集束力を与えるアインツェル(アインツェル)レンズを形成することも示している。
【0040】
アインツェルレンズを使用してビームを集束させることは新しくはないが、本発明の加速器システムは、集束磁石をまったく用いていない。また、本発明は、アインツェルレンズと他の電極とを組み合わせて、ターゲットにおけるビームスポットサイズをビームの電流およびエネルギに関係なく調整できるようにする。注入器の出口または高勾配加速器の入口には、グリッド電極119が存在する。抽出電極およびグリッド電極は同じ電圧に設定される。グリッド電極の電圧を抽出電極の電圧と同じにすることによって、加速器内へ注入されたビームのエネルギは、定形集束電極における電圧設定に関係無く同じままである。そのため、定形集束電極における電圧を変えると、アインツェルレンズの強度のみが変わり、ビームエネルギは変わらない。ビーム電流は抽出電極の電圧によって決定されるため、ビーム電流およびエネルギとは無関係な定形集束電極の電圧を調整することにより、最終的なスポットを自由に調整することができる。そのようなシステムでは、言うまでも無く、更なる集束は、軸方向電界における適切な勾配(すなわち、dEZ/dz)、更にその結果として電界の変化の時間速度(すなわち、z=z0におけるdE/dt)によってもたらされる。
【0041】
様々な集束電極電圧設定を伴う、磁石が無い250MeV陽子高勾配加速器を通じたビーム輸送のためのビームエンベロープのシミュレーションが図19に示されている。これらのプロットは、それらの対応する集束電極電圧が左側に与えられているが、集束電極電圧を調整することによりターゲットにおける250−MeVの陽子ビームのスポットサイズを容易に調整できることを明確に示している。また、様々な陽子ビームエネルギにおける集束電極電圧に対するスポットサイズのプロットが図20に示されている。各陽子エネルギに2つの曲線がプロットされている。上側の曲線はビームのエッジ半径を示しており、下側の曲線はコア半径を示している。これらのプロットは、100MVの加速勾配を用いる高勾配陽子治療加速器における集束電極電圧を調整することにより70−250MeV,100mAの陽子ビームに対して幅広い範囲のスポットサイズ(2mm−2cm直径)を得ることができることを示している。
【0042】
そのような一体化された荷電粒子発生器を使用するコンパクト高勾配加速器システムは、幅広い範囲のビーム電流、エネルギ、および、スポットサイズを独立に提供することができる。加速器のビーム抽出、輸送、および、集束のすべては、荷電粒子源と高勾配加速器との間に位置する、ゲート電極と、定形抽出電極と、定形集束電極と、グリッド電極とによって制御される。抽出電極およびグリッド電極の電圧設定はは同じである。これらの電極間の定形集束電極は低い電圧に設定され、それにより、アインツェルレンズが形成され、スポットサイズのための調整ノブが与えられる。最小の輸送システムは抽出電極と集束電極とグリッド電極とから成るが、システムが非常に強力な集束力を必要とする場合には、交流電圧を用いる更なるアインツェルレンズを定形集束電極とグリッド電極との間に加えることができる。
【0043】
D.医学治療用の作動可能コンパクト加速器システム
図21は、荷電粒子ビームを形成し且つビームを加速軸に沿ってコンパクト加速器へ注入するために、コンパクト線形加速器131の入力端に一体に装着され或いは前記入力端に位置する荷電粒子発生器132を有する、本発明の典型的な作動可能コンパクト加速器システム130の概略図を示している。このように荷電粒子発生器を加速器と一体化することにより、ユニット構造について比較的コンパクトなサイズを達成することができ、アクチュエータ機構134によって、矢印135によって示されるようにユニットごと動かすことが可能となり、ビーム136−138が得られる。以前のシステムでは、それらのスケールサイズに起因して、遠隔場所からビームを輸送するために磁石が必要とされた。これに対し、本発明では、スケールサイズがかなり減少されるため、磁石を使用することなく、陽子ビームなどのビームを生成して制御するとともに所望のターゲット位置の極近傍へとすべて輸送することができる。そのようなコンパクトシステムは、例えば医学治療加速器用途で用いるのに理想的である。
【0044】
そのようなユニット型装置は、一体型の粒子発生器−線形加速器を作動させて荷電粒子ビームの位置及びそれにより形成されるビームスポットを直接に制御するように構成され、全体的に133で示される支持構造体上に装着されてもよい。コンパクト加速器と荷電粒子源とのユニット型結合体を装着するための様々な形態が図22−24に示されているが、これらに限定されるものではない。具体的には、図22−24は、ビーム位置決めを制御するべく作動可能となるように様々なタイプの支持構造体上に装着される複合型コンパクト加速器/荷電粒子源を示す本発明の典型的な実施形態を示している。加速器および荷電粒子源は、固定スタンドから吊り下げられて関節結合されて、患者へ向けられてもよい(図22および図23)。図22において、ユニタリ作動は、143で示される重心の周りでユニット装置を回転させることにより可能である。図22に示されるように、一体化されたコンパクト発生器−加速器は、好ましくは、加速されたビームを方向付けるために必要とされるエネルギを減少させるためにその重心を中心に回動的に作動されてもよい。しかしながら、コンパクト加速器と荷電粒子源とのそのようなコンパクトなユニット型結合体とを作動させるための他の装着形態および支持構造が本発明の範囲内で可能であることは言うまでもない。
【0045】
コンパクトで作動可能な構造を可能にする、荷電粒子発生器と一体化させるための様々な加速器アーキテクチャが使用されてもよいことは言うまでもない。例えば、加速器アーキテクチャは、前述したブルームラインモジュール構造において2つの伝送ラインを使用してもよい。伝送ラインは平行プレート伝送ラインであることが好ましい。また、伝送ラインは、図1−12に示されるように帯状の形態であることが好ましい。また、閉塞時間が早い(ナノ秒)様々なタイプの高電圧スイッチ、例えばSiC光伝導スイッチ、ガススイッチ、または、オイルスイッチが使用されてもよい。
【0046】
また、加速器システムの作動および作用を制御するために、当該技術分野において知られる様々なアクチュエータ機構およびシステム制御方法が使用されてもよい。例えば、加速器ビームの位置決め及び動きを制御するために、単純なボールネジ、ステッピングモータ、ソレノイド、電気的に作動される並進器及び/又は空圧器などが使用されてもよい。これにより、ビーム経路のプログラミングを、CNC装置で広く使用されるプログラミング言語と同一でないとしても非常に類似させることができる。アクチュエータ機構は、一体型の粒子発生器−加速器を機械的な作用状態または動作状態に置いて加速ビーム方向およびビームスポット位置を制御するように機能することは言うまでもない。これに関連して、システムは、(例えば、質量中心周りに回動するための)少なくとも1つの回転自由度を有するが、当該技術分野において知られるように、身体またはシステムの変位位置または変形位置を完全に特定する、3つの並進および3つの回転を含む独立変位のセットである6つの自由度(DOF)を有することが好ましい。並進は、三次元のそれぞれの方向に移動できることを表わし、回転は、3つの垂直な軸の周りで角度を変えられることを表わす。
【0047】
加速ビームパラメータの精度は、能動的位置決めシステム、監視システム、および、図22において測定ボックス147により表わされる加速器の制御・位置決めシステムに構成されるフィードバック位置決めシステム(例えば、患者145に配置されたモニタ)によって制御できる。また、加速器システムを制御するシステムコントローラ146が示されており、これは、以下のパラメータ、すなわち、ビーム方向、ビームスポット位置、ビームスポットサイズ、照射量、ビーム強度、および、ビームエネルギのうちの少なくとも1つに基づいてもよい。深さは、ブラッグピークに基づくエネルギによって比較的正確に制御される。システムコントローラは、パラメータのうちの少なくとも1つに関するフィードフォワードデータを監視して供給するためのフィードフォワードシステムも含むことが好ましい。また、荷電粒子および加速器によって形成されるビームは、患者に振動投影を形成するように構成されてもよい。好ましくは、1つの実施形態において、振動投影は、連続的に変化する半径を有する円である。いずれにせよ、ビームの印加は、位置、照射量、スポットサイズ、ビーム強度、ビームエネルギのうちの1つまたは組み合わせに基づいて積極的に制御されてもよい。
【0048】
特定の動作シーケンス、材料、温度、パラメータ、および、特定の実施形態を説明し或いは図示してきたが、これらは限定を意図するものではない。改良および変更は当業者にとって明らかであり、また、本発明は添付の請求項の範囲によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のコンパクト加速器の単一のブルームラインモジュールの第1の典型的な実施形態の側面図である。
【図2】図1の単一のブルームラインモジュールの平面図である。
【図3】2つのブルームラインモジュールが互いに積み重ねられたコンパクト加速器の第2の典型的な実施形態の側面図である。
【図4】真ん中の導電ストリップの幅がモジュールの他の層よりも小さい、本発明の単一のブルームラインモジュールの第3の典型的な実施形態の平面図である。
【図5】図4の線4に沿う拡大断面図である。
【図6】中央加速領域の周囲を取り囲み且つ中央加速領域に向かって径方向に延びる2つのブルームラインモジュールを伴って示されるコンパクト加速器の他の典型的な実施形態の平面図である。
【図7】図6の線7に沿う断面図である。
【図8】中央加速領域の周囲を取り囲み且つ中央加速領域に向かって径方向に延びる2つのブルームラインモジュールを伴って、また、1つのモジュールの平面導体ストリップが他のモジュールの対応する平面導体ストリップに対してリング電極により接続されて示されるコンパクト加速器の他の典型的な実施形態の平面図である。
【図9】図8の線9に沿う断面図である。
【図10】4つの非線形ブルームラインモジュールがそれぞれ関連するスイッチに接続された本発明の他の典型的な実施形態の平面図である。
【図11】図10に類似する本発明の他の典型的な実施形態であって、4つの非線形ブルームラインモジュールのそれぞれをその第2の端部で接続するリング電極を含むものの平面図である。
【図12】図1に類似する本発明の他の典型的な実施形態であって、対称なブルームライン動作のために第1の誘電体ストリップおよび第2の誘電体ストリップの誘電定数および厚さが同じであるもの、の側面図である。
【図13】本発明の荷電粒子発生器の典型的な実施形態の概略図である。
【図14】本発明のパルスイオン源の典型的な実施形態を示す、図13の円14に沿う拡大概略図である。
【図15】図14のパルスイオン源によるパルスイオン生成の経過を示している。
【図16】様々なゲート電極電圧におけるターゲット上での最終的なスポットサイズの複数のスクリーンショットを示している。
【図17】高勾配陽子ビーム加速器におけるゲート電極電圧の関数としての抽出陽子ビーム電流のグラフを示している。
【図18】本発明の荷電粒子発生器における電位等高線を示す2つのグラフを示している。
【図19】様々な集束電極電圧設定の際の磁石が無い250MeV高勾配陽子加速器におけるビーム輸送の比較図である。
【図20】250MeV,150MeV,100MeV,70MeV陽子ビームにおける集束電極電圧に対するターゲット側でのエッジビーム半径(上側の曲線)およびコア半径(下側の曲線)の4つのグラフの比較図である。
【図21】一体化されたユニット型荷電粒子発生器・線形加速器を有する本発明の作動可能なコンパクト加速システムの概略図である。
【図22】本発明のユニット型コンパクト加速器/荷電粒子源の典型的な装着配置の側面図であり、医学治療用途を示す図である。
【図23】本発明のユニット型コンパクト加速器/荷電粒子源の典型的な垂直装着配置の斜視図である。
【図24】本発明のユニット型コンパクト加速器/荷電粒子源の典型的なハブ−スポーク装着配置の斜視図である。
【図25】本発明の連続パルス進行波加速器の概略図である。
【図26】図25の連続パルス進行波加速器の短パルス進行波の動きを示す概略図である。
【図27】従来の誘電体壁加速器の典型的なセルの長パルスの動きを示す概略図である。
【技術分野】
【0001】
米国政府は、ローレンスリバーモア国立研究所の業務における米国エネルギ省とカリフォルニア大学との間の規約W−7405−ENG−48にしたがってこの発明の権利を有する。
【0002】
本出願は、2004年1月15日に出願された仮出願第60/536,943号の利益を主張する2005年1月14日に出願された先願第11/036,431号の一部継続出願であり、また、本出願は、2005年10月24日に出願された米国仮出願第60/730,128号、第60/730,129号、第60/730,161号および2006年5月4日に出願された米国仮出願第60/798016号の利益も主張し、前記出願の全ては参照することにより本願に組み入れられる。
【0003】
本発明は、線形加速器に関し、より具体的には、荷電粒子に対してエネルギを連続的に与えるために、軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期して加速器のビーム管に沿って進行軸方向の電界が生成されるように、線形加速器のパルス形成ラインを通って電気的な波面を差動伝搬(differentially propagate)させるために、スイッチを連続的にトリガする連続パルス進行波線形加速器に関する。
【背景技術】
【0004】
粒子加速器は、帯電した原子の粒子、例えば電子、陽子、または、帯電した原子核のエネルギを増大させ、それにより、それらを原子物理学者および粒子物理学者が研究できるようにするために使用される。高エネルギ帯電原子の粒子は、ターゲット原子と衝突するように加速され、また、結果として得られる生成物は検出器を用いて観察される。非常に高いエネルギにおいて、荷電粒子は、ターゲット原子の原子核を破壊でき、物質の他の基本単位と相互に作用することができる。また、粒子加速器は、核融合装置を開発する上でも、また、癌治療のための医学的用途においても重要なツールである。
【0005】
粒子加速器の1つのタイプが、参照することにより本願に組み入れられるCarderの米国特許第5,757,146号に開示されているが、これは荷電粒子の加速のために高速電気パルスを生成する方法を提供する。Carderには、切り換えられるときに高電圧を生成する一連の積層円形モジュールから成る誘電体壁加速器(DWA)システムが示されている。これらのモジュールはそれぞれ非対称ブルームラインと呼ばれ、これは、参照することにより本願に組み入れられる米国特許第2,465,840号に記載されている。Carder特許の図4A−4Bにおいて最も良く分かるように、ブルームラインは2つの異なる誘電体層から成っている。各表面上および誘電体層間には、2つの平行プレート径方向伝送ラインを形成する導体がある。構造体の一方側は低速ラインと称され、他方側は高速ラインと称される。高速ラインと低速ラインとの間の中心電極を最初に高電位に帯電させる。2つのラインは反対の極性であるため、ブルームラインの内径(ID)をわたる正味電圧は存在しない。表面フラッシュオーバーまたは同様のスイッチによって構造体の外側の両端間を短絡させると、ブルームラインのIDへ向かって径方向内側に伝搬する2つの逆極性波が発生する。高速ラインにおける波は、低速ラインにおける波の到達前に構造体のIDに達する。高速波が構造体のIDに到達すると、到達点における極性がそのラインにおいてのみ反転し、それにより、非対称ブルームラインのIDをわたる正味電圧が生じる。この高電圧は、低速ラインにおける波が最終的にIDに達するまで持続する。加速器の場合には、この間に荷電粒子ビームを注入して加速することができる。このようにして、Carder特許におけるDWA加速器は、高い加速勾配を得るために構造全体にわたって続く軸方向加速電場を与える。
【0006】
しかしながら、CarderのDWAなどの既存の誘電体壁加速器は、ビームの質および性能に影響を及ぼし得る、ある特有の問題を有している。具体的には、幾つかの問題は、Carder DWAのディスク状の幾何学的構造に存在するものであり、これにより荷電粒子を加速するという意図の使用に対して最適であるよりも装置全体が小さくなる。中心穴を有する平坦な平面導体は、伝搬する波面をその中心穴へ向けて径方向に集束させる。そのような幾何学的構成においては、波面は変化するインピーダンスを受け、これにより、出力パルスが歪められ、所定の時間依存エネルギ利得が電界を横切る荷電粒子ビームに対して与えられない場合がある。あるいは、そのような構造によって形成された電界を横切る荷電粒子ビームは、経時変化するエネルギ利得を受け、これにより、加速システムがそのようなビームを適切に輸送してそのような限られた用途のビームを形成することが妨げられ得る。
【0007】
また、そのような構造のインピーダンスは、必要とされるインピーダンスよりもかなり低い場合がある。例えば、必要とされる加速勾配を維持しつつミリアンペア以下のオーダーのビームを生成することが、多くの場合に非常に望ましい。Carderのディスク状ブルームライン構造により、過度なレベルの電気エネルギがシステムに蓄えられる可能性がある。明らかな電気的非効率性以上に、システムが起動されるときにビームに対して供給されないすべてのエネルギは、構造内に残存する可能性がある。そのような過度のエネルギは、装置全体の性能および信頼性に対して悪影響を及ぼす可能性があり、それにより、システムの早期の故障を招く可能性がある。
【0008】
また、電極の外側の外周が大きく延びることは、中心穴を有する平坦な平面導体(例えば、ディスク形状)に特有のものである。その結果、構造体を起動させるための並列スイッチの数がその外周によって決定される。例えば、10ns未満のパルスを生成するために使用される6インチの直径のデバイスでは、一般に、ディスク形状非対称ブルームライン層毎に少なくとも10個のスイッチ部位が必要となる。この問題は、長い加速パルスが必要とされる場合には更に大きな問題になる。これは、このディスク状ブルームライン構造の出力パルス長が中心穴からの径方向範囲に直接に関連付けられるからである。したがって、長いパルス幅が必要とされる場合には、それに応じて、より多いスイッチ部位も必要とされる。スイッチを起動する好ましい実施形態がレーザまたは他の同様の装置の使用である場合には、非常に複雑な分配システムが必要とされる。また、長いパルス構造は、製造が困難な大きな誘電体シートを必要とする。これによって、そのような構造の重量が増大し得る。例えば、現在の形態において、50nsパルスを供給する装置は、1メートル当たり数トン程度の重さとなり得る。長パルスの欠点の幾つかは、非対称ブルームライン内の3つ導体すべてにおいて螺旋溝を使用することにより軽減され得るが、これは、結果として、動作を妨げ得る相殺的干渉層間結合をもたらす可能性がある。すなわち、ステージ毎にかなり減少されたパルス振幅(したがって、エネルギ)が構造の出力において現れ得る。
【0009】
また、陽子ビームを使用する癌治療などの医学治療における特定の用途のために様々なタイプの加速器が開発されてきた。例えば、Coleらの米国特許第4,879,287号は、カリフォルニア州のロマ・リンダにあるロマ・リンダ大学陽子加速器施設において使用されるマルチステーション陽子ビーム治療システムを開示している。このシステムでは、施設内のある場所で粒子源生成が行なわれ、施設内の他の場所で加速が行なわれるが、患者は施設内の更に他の場所位置する。粒子源、加速、ターゲットが互いに遠く離れているため、大型でかさばる偏向磁石を有する複雑なガントリシステムを使用して粒子輸送が達成される。また、医学治療において知られる他の代表的なシステムがBertscheの米国特許第6,407,505号およびBlosserらの米国特許第4,507,616号に開示されている。Bertscheには定在波RFリニアックが示されており、また、Blosserには、支持構造体上に回転可能に装着された超伝導サイクロトロンが示されている。
【0010】
また、ある容積における低圧ガスからプラズマ放電を形成するイオン源が知られている。この容積から、イオンが抽出されて加速のために加速器内に視準される。これらのシステムは、一般に、0.25A/cm2を下回る抽出された電流密度に制限される。この低い電流密度は、抽出界面でのプラズマ放電の強度に部分的に起因する。当該技術分野において知られるイオン源の1つの例は、超短イオンパルスを生成するように構成された抽出システムを有するLeungらの米国特許第6,985,553号に開示されている。他の例は、高視準イオンビームを生成するために、抽出グリッドと加速グリッドと集束グリッドとシールドグリッドとを有するマルチグリッドイオンビーム源を開示するWahlinの米国特許第6,795,807号に示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、加速軸を取り囲む長さLの誘電体ビーム管と、ビーム管に対して、これを横切る方向に接続される少なくとも2つのパルス形成ラインであって、各パルス形成ラインが、他のパルス形成ラインから独立して当該パルス形成ラインを通って少なくとも1つの電気的な波面を伝搬してパルス幅τの短い加速パルスをビーム管の対応する短軸長δLに沿って生成するために高電圧電位に接続可能なスイッチを有する、少なくとも2つのパルス形成ラインと、荷電粒子に対してエネルギを連続的に与えるために、軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期してビーム管に沿って進行軸方向の電界が生成されるようにスイッチを連続的に制御する手段とを備える短パルス誘電体壁加速器を含んでいる。
【0012】
本発明の他の態様は、横方向加速軸へと延びる複数のパルス形成ラインであって、各パルス形成ラインが、他のパルス形成ラインから独立して当該パルス形成ラインを通って少なくとも1つの電気的な波面を伝搬して加速軸の対応する短軸長に隣接して短い加速パルスを生成するために高電圧電位に接続可能なスイッチを有する、複数のパルス形成ラインと、荷電粒子に対してエネルギを連続的に与えるために、軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期して加速軸に沿って進行軸方向の電界が生成されるようにスイッチを連続的に制御するべく動作可能に接続されるトリガとを備える連続パルス進行波線形加速器を含んでいる。
【0013】
本発明の他の態様は、加速軸を取り囲む長さLの誘電体ビーム管と、それぞれが加速軸に対して垂直なパルス形成ラインを形成する少なくとも2つのブルームラインモジュールであって、各ブルームラインモジュールが、第1の端部とビーム管に接続される第2の端部とを有する第1の導体と、第1の導体に隣接し、高電圧電位に切り換え可能な第1の端部とビーム管に接続される第2の端部とを有する第2の導体と、第2の導体に隣接し、第1の端部とビーム管に接続される第2の端部とを有する第3の導体と、第1の誘電定数を有し、第1の導体と第2の導体との間の空間を満たす第1の誘電体部材と、第2の誘電定数を有し、第2の導体と第3の導体との間の空間を満たす第2の誘電体部材とを備え、第1および第2の誘電定数がビーム管の誘電定数よりも小さい少なくとも2つのブルームラインモジュールであって、各ブルームラインモジュールが、他のブルームラインモジュールから独立して当該ブルームラインモジュールを通って少なくとも1つの電気的な波面を伝搬してパルス幅τの短い加速パルスをビーム管の対応する短軸長δLに沿って生成するために高電圧電位に接続可能な少なくとも1つのスイッチを有する少なくとも2つのブルームラインモジュールと、荷電粒子に対してエネルギを連続的に与えるために、軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期してビーム管に沿って進行軸方向の電界が生成されるようにスイッチを連続的にトリガするべく動作可能に接続されるコントローラとを備える連続パルス進行波線形加速器を含んでいる。
【0014】
開示内容の一部に組み込まれ且つ開示内容の一部を形成する添付図面は以下の通りである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
A.帯状のブルームラインを有するコンパクト加速器
ここで、図面を参照すると、図1〜図12は、第1の端部と第2の端部との間を伝搬する波面を案内し且つ第2の端部で出力パルスを制御する少なくとも1つの帯状のブルームライン(Blumlein)モジュールを有する本発明で使用されるコンパクトな線形加速器を示している。各ブルームラインモジュールは第1、第2および第3の平面導体ストリップを有しており、第1の導体ストリップと第2の導体ストリップとの間に第1の誘電体ストリップを有し、第2の導体ストリップと第3の導体ストリップとの間に第2の誘電体ストリップを有している。また、コンパクト線形加速器は、第2の導体ストリップを高電位まで帯電させるために接続された高電圧電源と、第2の導体ストリップにおける高電位を第1および第3の導体ストリップのうちの少なくとも一方へ切り換えて対応する誘電体ストリップにおいて伝搬逆極性波面を起こすスイッチとを含んでいる。
【0016】
コンパクト線形加速器は、第1の端部と第2の端部との間で伝搬波面を案内し且つ第2の端部で出力パルスを制御する少なくとも1つの帯状のブルームラインモジュールを有している。各ブルームラインモジュールは第1、第2および第3の平面導体ストリップを有しており、第1の導体ストリップと第2の導体ストリップとの間に第1の誘電体ストリップを有し、第2の導体ストリップと第3の導体ストリップとの間に第2の誘電体ストリップを有している。また、コンパクト線形加速器は、第2の導体ストリップを高電位まで帯電させるために接続された高電圧電源と、第2の導体ストリップにおける高電位を第1および第3の導体ストリップのうちの少なくとも一方へ切り換えて対応する誘電体ストリップにおいて伝搬逆極性波面を起こすスイッチとを含んでいる。
【0017】
図1および図2は、スイッチ18に接続された単一のブルームラインモジュール36を備える参照符号10で全体的に示されるコンパクト線形加速器の第1の典型的な実施形態を示している。コンパクト加速器は、スイッチ18を介して高電圧電位をブルームラインモジュール36に対して供給する適切な高電圧電源(図示せず)も含んでいる。一般に、ブルームラインモジュールは、典型的には均一な幅であるが必ずしもそうではないストリップ形態、すなわち、長くて狭い幾何学的形状である。図1および図2に示される特定のブルームラインモジュール11は、第1の端部11と第2の端部12との間に延び、且つ長さlと比べて比較的狭い幅wn(図2,4)である細長いビームまたは板状の直線形態を成している。ブルームラインモジュールのこのストリップ状の形態は、第1の端部11から第2の端部12へと伝搬電気信号波を案内し、それにより、第2の端部で出力パルスを制御するように作用する。具体的には、波面の形状は、モジュールの幅を適切に構成することにより、例えば図6に示されるように幅を次第に細くすることにより制御されてもよい。帯状の形態により、コンパクト加速器は、Carderのディスク形状モジュールに関して背景技術で議論したように、中心穴に集束するように径方向に向けられるときに起こり得る伝搬波面の変動インピーダンスを克服することができる。そして、このようにして、パルスを破壊することなくモジュール10のストリップまたはビーム状形態により平坦な出力(電圧)パルスを生成することができ、それにより、粒子ビームが経時変化するエネルギ利得を受けないようにすることができる。本明細書中および請求項中で使用されるように、第1の端部11は、スイッチ、例えばスイッチ18に接続される端部として特徴付けられ、また、第2の端部12は、粒子加速のための出力パルス領域などの負荷領域に隣接する端部である。
【0018】
図1および図2に示されるように、基本的なブルームラインモジュール10の幅が狭いビーム状構造は、薄いストリップの状態に形成され、どちらも細長いが、より厚いストリップとしても示される誘電体部材によって分離される3つの平面導体を含んでいる。具体的には、第1の平面導体ストリップ13と真ん中の第2の平面導体ストリップ15とは、それらの間の空間を満たす第1の誘電体部材14によって分離される。また、第2の平面導体ストリップ15と第3の平面導体ストリップ16とは、それらの間の空間を満たす第2の誘電体部材17によって分離される。誘電体部材によって成される分離は、図示のように平面導体ストリップ13,15,16を互いに平行となるように位置決めすることが好ましい。平面導体ストリップおよび誘電体ストリップ13−17に接続されてこれらの端部を覆う第3の誘電体部材19が更に示されている。第3の誘電体部材19は、波を組み合わせてパルス電圧だけが真空壁の両端間にかけられるようにする役目を果たし、それにより、その壁に対して応力が加えられる時間が減少され、更に高い勾配が可能になる。また、第3の誘電体部材は、波を加速器に対して加える前に波を変形させる、すなわち、電圧を上げ、インピーダンスを変化させるなどする領域として使用することもできる。したがって、第3の誘電体部材19および第2の端部12は、一般に、矢印20により示される負荷領域に隣接して示されている。具体的には、矢印20は、粒子加速の方向を向く粒子加速器の加速軸を表わしている。背景技術で説明したように、加速の方向が2つの誘電体ストリップを通じた速い伝送ラインおよび遅い伝送ラインの経路に依存していることは言うまでもない。
【0019】
図1において、スイッチ18は、第1の端部において、すなわち、モジュール36の第1の端部11において、平面導体ストリップ13,15,16のそれぞれに接続されて示されている。スイッチは、最初に、外側の平面導体ストリップ13,16をグランド電位に接続し且つ真ん中の導体ストリップ15を高電圧源(図示せず)に接続する働きをする。その後、スイッチ18は、第1の端部で短絡あっせるように動作し、それによってブルームラインモジュールを通って伝搬する電圧波面を起こし、第2の端部で出力パルスを生成する。具体的には、スイッチ18は、ブルームラインモジュールが対称動作のために構成されているか或いは非対称動作のために構成されているかに応じて、誘電体のうちの少なくとも1つにおいて伝搬逆極性波面を第1の端部から第2の端部へと起こすことができる。非対称動作のために構成される場合には図1および図2に示されるように、ブルームラインモジュールは、Carderに記載される態様と同様の態様で、誘電体層14,17の誘電定数および厚さ(d1≠d2)が異なる。ブルームラインの非対称動作は、誘電体層を通る伝搬波速度を異なるものとする。しかしながら、図12に示されるようにブルームラインモジュールが対称動作のために構成される場合には、誘電体ストリップ95,98が同じ誘電定数を有し、幅および厚さ(d1=d2)も同じになる。また、図12に示されるように、磁性部材も第2の誘電体ストリップ98に極めて接近して配置され、それにより、そのストリップ内では波面の伝搬が妨げられる。このようにして、スイッチは、第1の誘電体ストリップ95においてのみ伝搬逆極性波面を起こすようになっている。スイッチ18が例えばガス放電閉塞スイッチ、表面フラッシュオーバー閉塞スイッチ、固体スイッチ、光伝導スイッチなどの非対称または対称ブルームラインモジュール動作に適したスイッチであることは言うまでもない。また、スイッチおよび誘電体部材のタイプ/寸法の選択は、例えば20メガボルト/mを越える勾配を含む様々な加速勾配でコンパクト加速器が動作できるように適切に選択できる。しかしながら、設計の問題として更に低い勾配を達成することもできることもまた、言うまでもない。
【0020】
1つの好ましい実施形態において、第2の平面導体の幅w1は、第1の誘電体ストリップをわたる特性インピーダンスZ1=k1g1(w1,d1)によって規定される。k1は、第1の誘電体部材の誘電率に対する透過率の比率の平方根によって規定される第1の誘電体ストリップの第1の真空の電気定数であり、g1は隣接する導体の形状効果によって規定される関数であり、d1は第1の誘電体ストリップの厚さである。また、第2の誘電体ストリップの厚さは、第2の誘電体ストリップをわたる特性インピーダンスZ2=k2g2(w2,d2)によって規定される。ここで、k2は第2の誘電体部材の第2の真空の電気定数であり、g2は隣接する導体の形状効果によって規定される関数であり、w2は第2の平面導体ストリップの幅であり、d2は第2の誘電体ストリップの厚さである。このようにして、非対称ブルームラインモジュールにおいて必要とされるように、異なる誘電体は、異なるインピーダンスをもたらすため、関連するラインの幅を調整することによりインピーダンスを一定に保つことができる。したがって、負荷に対して、より大きいエネルギが伝達されることになる。
【0021】
図4および図5は、第1および第2の平面導体ストリップ41,42並びに第1および第2の誘電体ストリップ44,45の幅よりも幅が狭い第2の平面導体ストリップ42を有するブルームラインモジュールの典型的な実施形態を示している。この特定の形態では、電極41,43が延在することによって、電極42がエネルギを前の或いは後のブルームラインに対して容易に結合することができなくなるために、背景技術において説明した相殺的干渉層間結合が妨げられる。また、他の典型的な実施形態のモジュールは、その幅が長さ方向l(図2,4参照)に沿って変化し、それにより、出力パルスの形状を制御して形作れることが好ましい。これが図6に示されており、図6は、モジュールが中央負荷領域に向かって径方向内側に延びるにつれて幅が先細る状態を示している。また、他の好ましい実施形態において、ブルームラインモジュールの寸法および誘電体部材は、Z1がZ2にほぼ等しくなるように選択される。既に説明したように、インピーダンスが整合すると、振動出力を形成する波の形成が妨げられる。
【0022】
また、好ましくは、非対称ブルームライン形態において、第2の誘電体ストリップ17は、例えば3:1など、第1の誘電体ストリップ14よりもかなり伝搬速度が低い。この場合、伝搬速度はv2およびv1のそれぞれによって規定される。ここで、v2=(μ2ε2)−0.5、v1=(μ1ε1)−0.5であり、透過率μ1および誘電率ε1は第1の誘電体部材の材料定数であり、また、透過率μ2および誘電率ε2は第2の誘電体部材の材料定数である。これは、第1の誘電体ストリップの誘電定数すなわちμ2ε2よりも大きい誘電定数すなわちμ1ε1を有する部材を第2の誘電体ストリップのために選択することによって得ることができる。図1に示されるように、例えば、第1の誘電ストリップの厚さがd1として示され、第2の誘電体ストリップの厚さがd2として示され、d2がd1よりも大きくなるように示されている。d2をd1よりも大きく設定することにより、異なる配置と異なる誘電定数との組み合わせが第2の平面導体ストリップ15の両側に同じ特性インピーダンスZをもたらす。なお、特性インピーダンスは両方の半体において同じであってもよいが、各半体を通る信号の伝搬速度は必ずしも同じでなくてもよい。誘電体ストリップの誘電定数および厚さは異なる伝搬速度をもたらすように適切に選択されてもよいが、細長い帯状の構造および形態は、非対称ブルームラインの概念、すなわち、誘電体は誘電定数および厚さが異なる考え方を必ずしも利用しなくてよいことは言うまでもない。制御波形の利点は、ブルームラインモジュールの細長いビーム状の形状および形態によって可能とされるのであって、高い加速勾配を生み出す特定の方法によってではないため、他の典型的な実施形態では、他のスイッチング構造、例えば対称ブルームライン動作を伴う図12に関して説明したスイッチング構造を使用することができる。
【0023】
あるいは、コンパクト加速器は、互いに位置合わせされた状態で積み重ねられる細長いブルームラインモジュールの2つ以上を有するように構成されてもよい。例えば、図3は、互いに位置合わせされた状態で積み重ねられた2つのブルームラインモジュールを有するコンパクト加速器21を示している。2つのブルームラインモジュールは平面導体ストリップと誘電体ストリップとの交互の積層体24−32を形成しており、平面導体ストリップ32は両方のモジュールに共通である。また、導体ストリップは、積層モジュールの第1の端部22でスイッチ33に接続される。加速軸矢印35によって示される負荷領域に隣接し、積層モジュールの第2の端部23を覆う誘電体壁34も設けられている。
【0024】
コンパクト加速器は、中央負荷領域の周囲を取り囲むように位置する少なくとも2つのブルームラインモジュールを有して構成されてもよい。また、周囲を取り囲むモジュールはそれぞれ、第1のモジュールと位置合わせされるように積み重ねられる1つ以上の更なるブルームラインモジュールを更に含んでいてもよい。図6は、例えば、2つのブルームラインモジュール積層体51,53を有するコンパクト加速器50の典型的な実施形態を示しており、2つの積層体が中央負荷領域56を取り囲んでいる。各モジュール積層体は、4つの独立に動作するブルームラインモジュール(図7)から成る積層体として示されており、関連するスイッチ52,54に対して別々に接続されている。ブルームラインモジュールを互いに位置合わせした状態で積み重ねることにより加速軸に沿ってセグメントの被覆率が増大することは言うまでもない。
【0025】
図8および図9には、2つ以上の導体ストリップ61,63であって、例えば65で示されるリング電極によってそれらそれぞれの第2の端部が接続される導電ストリップ61,63を有するコンパクト加速器の他の典型的な実施形態が参照符号60で示されている。リング電極形態は、周囲を取り囲むモジュールの1つ以上が、中央負荷領域を完全に取り囲むことなく中央負荷領域へ向けて延びている図6および図7などの構造で起こる場合がある方位平均化を克服するように作用する。図9に最も良く示されるように、61,62によって表わされる各モジュール積層体は、関連するスイッチ62,64にそれぞれ接続される。また、図8,9は、リング電極の内径に沿って配置される絶縁体スリーブ68を示している。あるいは、別個の絶縁体部材69もリング電極65間に配置されて示されている。また、導体ストリップ間で使用される誘電体部材に代わる手段として、導電箔66と絶縁箔66’との交互層が利用されてもよい。交互層は、モノリシック誘電体ストリップの代わりに積層構造体として形成されてもよい。
【0026】
また、図10および図11はコンパクト加速器の2つの更なる典型的な実施形態を示しており、コンパクト加速器は、図10においては全体的に参照符号70で示され、図11においては全体的に参照符号80で示されている。各コンパクト加速器は、非線形帯状の形態を成すブルームラインモジュールを有している。ここでは、非線形帯状の形態は、曲線形状または蛇行形状として示されている。図10では、加速器70は、中央領域の周囲を取り囲み且つ中央領域へ向けて延びるように示される4つのモジュール71,73,75,77を備えている。各モジュール71,73,75,77は関連するスイッチ72,74,76,78にそれぞれ接続される。この構造から分かるように、各モジュールの第1の端部と第2の端部との間の直接的な径方向距離は非線形モジュールの全長よりも短く、これにより、送電経路を増大させつつ加速器のコンパクト化を図ることができる。図11は図10の場合と同様の構造を示しており、加速器80は、中央領域の周囲を取り囲み且つ中央領域へ向けて延びるように示される4つのモジュール81,83,85,87を有している。各モジュール81,83,85,87は関連するスイッチ82,84,86,88にそれぞれ接続される。また、モジュールの径方向内側端部すなわち第2の端部はリング電極89によって互いに接続されており、それにより、図8で説明した利点が与えられる。
【0027】
B.連続パルス進行波加速モード
休止状態の誘導線形加速器(LIA)はその全長に沿って短絡される。したがって、荷電粒子の加速は、構造体が有する、過渡的な電界勾配を形成する能力、および、連続する一連の印加加速パルスを隣接するパルス形成ラインから分離させる能力に依存する。従来技術のLIAにおいて、この方法は、好ましくは荷電粒子ビームが存在するときに、過渡期にわたって構造体の内部からパルス形成ラインを一連の積層電圧源として出現させることによって実施される。この加速勾配を形成して必要とされる分離を行なうための典型的な手段は、加速器内の磁気コアを使用し且つパルス形成ライン自体の経過時間を使用する方法である。後者は、任意にケーブルを接続することにより長さの付加を含んでいる。過渡加速が起こった後、磁気コアの飽和に起因して、システムは再びその長さに沿って短絡される。そのような従来技術のシステムの欠点は、加速領域の空間的範囲が限られていることにより、加速勾配が非常に低く(〜0.2−0.5MV/m)、また、磁性部材が高価で大きいという点である。また、良好な磁性部材であっても、電気エネルギの激しい損失なしに高速パルスに応答することができず、したがって、コアが必要とされる場合、このタイプの高勾配加速器を形成することは、良く見ても実用的とはなり得ず、最悪の場合には技術的に実現不可能である。
【0028】
図25は、全体的に参照符号160で示され、長さがlの、本発明の連続パルス進行波加速器の概略図を示している。加速器の各伝送ラインは長さがΔR、幅がδlであるように示されており、また、ビーム管は直径がdである。電気的長さ(すなわち、パルス幅)がτである加速パルスを用いてビーム管の短軸長δlを連続的に励起させて加速軸の長さ方向に沿って単一の仮想進行波164を生成するためにスイッチの組162を連続的にトリガするトリガコントローラ161が設けられている。具体的には、連続トリガ/コントローラはスイッチを連続的にトリガすることができ、それにより、エネルギを粒子に対して連続的に与えるために、軸方向に横断する荷電粒子のパルスビームと同期し、加速軸を取り囲む進行軸方向電場がビーム管に沿って生成される。トリガコントローラ161は各スイッチを個別にトリガしてもよい。あるいは、トリガコントローラは、ブロックを形成する少なくとも2つの隣り合う伝送ラインを同時に切り換えて隣り合うブロックを連続的に切り換てもよく、それにより、加速パルスが各ブロックを通って形成される。このようにして、2つ以上のスイッチ/伝送ラインから成るブロックは、ビーム管壁の短軸長nδlを励起させる。δlは、励起されたラインに対応するビーム管壁の短軸長であり、nは、任意の時間の瞬間における隣接する励起ラインの数である(n≧1)。
【0029】
例示目的としての幾つかの数値例:d=8cm、τ=数ナノ秒(例えば、陽子加速においては1−5ナノ秒、電子加速においては100ピコ秒〜数ナノ秒)、v=c/2(c=光速)。しかしながら、本発明がほぼ任意の寸法に拡大収縮可能であることは言うまでもない。好ましくは、ビーム管の直径dおよび長さlは、誘電体ビーム管の入力端および出力端におけるフリンジ磁界を減少するために基準l>4dを満たす。また、ビーム管は、基準、すなわち、γτv>d/0.6を満たすことが好ましい。ここで、vはビーム管壁上の波の速度であり、dはビーム管の直径であり、τは下式:
【0030】
【数3】
で表わされるパルス幅、γは、下式:
【0031】
【数4】
で表わされるローレンツ係数である。なお、ΔRはパルス形成ラインの長さであり、μは比透過率(通常=1)であり、εrは比誘電率である。このように、加速軸に沿って生成されるパルス高勾配は、少なくとも約30MeV/mであり、最大でも約150MeV/mである。
【0032】
加速勾配を形成するためにコアを必要とする、多くのこの種の加速器システムとは異なり、本発明の加速器システムはコアなしに動作する。これは、基準nδl<lが満たされる場合に、ビーム管の電気的活性化が一時にビーム管の小さな領域に沿って起こり、短絡が避けられるからである。コアを使用しないことにより、本発明は、Vt=AΔB(Aはコアの断面積)の場合において得られる電圧がΔBにより制限されることに起因する加速の制限など、コアの使用に関連付けられる様々な問題を回避する。また、コアの使用は、加速器の繰り返し回数を制限するように働く。これは、コアをリセットするためにパルス電源が必要とされるからである。所定のnδlにおけるパルス状の加速は、所定の軸方向セグメントに隣接する励起されない伝送ラインの過渡分離特性によって、導電ハウジングから分離される。スイッチ電流の一部が励起されない伝送ラインへと分路されるため、励起されない伝送ラインの不完全な過渡分離特性から寄生波が生じることは言うまでもない。無論、これは、この分路が流れることを防止するための磁気コア分離がなければ起こる。特定の状態下では、例えば以下の例に示されるように寄生波が有利に使用される場合がある。高速/高インピーダンス(低い誘電定数)ラインだけが切り換えられる非対称ストリップブルームラインから成る開回路ブルームライン積層体の形態では、励起されない伝送ラインで生成される寄生波は、励起されないラインにおいて更に高い電圧を生成してその電圧を最初の帯電状態を越えて増大させる一方、低速ラインにおいてより少ない量だけ電圧を増大させる。これは、2つのラインが同じ注入電流を受ける分圧器として連続して現れるからである。このとき、加速器壁に現れる波は、最初に帯電した値よりも大きい値に増大され、それにより、更に高い加速勾配が得られるようになる。
【0033】
図26および図27は、長さLのビーム管で生成される勾配の違いを示している。図26は、幅vτが長さLよりも小さい単一パルス進行波を示している。これに対し、図27は、加速器の全長Lにわたって勾配を生成するために全ての伝送ラインが同時にトリガされる積層ブルームラインモジュールの典型的な動作を示している。ここで、vτは長さL以上である。
【0034】
C.荷電粒子発生器:一体化されたパルスイオン源および注入器
図13は、単一のユニットへと一体化されたパルスイオン源112および注入器113を有する本発明の荷電粒子発生器110の典型的な実施形態を示している。激しいパルスイオンビームを生成するためには、抽出されたビームおよびそれに続く集群の変調が必要とされる。最初に、粒子発生器は、非常に密度の高いプラズマを生成するために表面フラッシュオーバー放電を用いるパルスイオン源112を使用して、激しいパルスイオンビームを形成するべく動作する。プラズマ密度の推定値は7気圧を超え、また、そのような放電は早い。これにより、極めて短いパルスの形成を可能にすることができる。従来のイオン源は、所定容積内の低圧ガスからプラズマ放電を形成する。この容積から、イオンが抽出されて加速のために加速器内に視準される。これらのシステムは、一般に、抽出された電流密度が0.25A/cm2を下回るように制限される。この低い電流密度は、抽出界面でのプラズマ放電の強度に部分的に起因する。
【0035】
本発明のパルスイオン源は、絶縁体を用いてブリッジされる少なくとも2つの電極を有している。対象のガス種は、金属電極内で溶解されているか或いは2つの電極間で固体状態である。この幾何学的形態により、絶縁体上にわたって形成されるスパークは、その物質を受けて放電し、ビームへの抽出のためにイオン化されるようになる。好ましくは、少なくとも2つの電極は絶縁部材、半絶縁部材、または、半導電部材を用いてブリッジされ、これにより、スパーク放電がこれらの2つの電極間に形成される。部材は、電極内または電極の近傍に、所望のイオン種を原子形態または分子形態で含んでいる。好ましくは、所望のイオン種を含む材料は、水素の同位体、例えばH2または炭素である。また、好ましくは、電極のうちの少なくとも1つが半多孔質であり、所望のイオン種を原子形態または分子形態で含むリザーバがその電極の下にある。図14および図15は、全体的に参照符号112で示されるパルスイオン源の典型的な実施形態を示している。セラミック121が、当該セラミックの表面上にカソード124およびアノード123を有するように示されている。カソードは、その下側のH2リザーバ114を覆うパラジウムセンターピース124を取り囲むように示されている。カソードおよびアノードが逆にされてもよいことは言うまでもない。また、開口プレート、すなわち、ゲート電極115が、その開口をパラジウムトップハット124に位置合わせされた状態で位置している。
【0036】
図15に示されるように、電子放射を発生させるためにカソード電極とアノード電極との間に高電圧が印加される。これらの電極は、十分に高い電圧において、当初は真空状態に近いため、電子がカソードから電界放出される。これらの電子は、アノードへ向けて空間を横切り、アノードとの衝突時に局部的な加熱を引き起こす。この加熱は分子を解放し、これらの分子はその後に電子と衝突し、それにより、分子がイオン化されるようになる。これらの分子は、所望の種であってもよいし、所望の種でなくてもよい。イオン化されたガス分子(イオン)は、加速してカソードへと戻って、この場合にはPdトップハットと衝突し、加熱を引き起こす。Pdは、加熱されると、ガス、具体的には水素が部材を通って透過できるようにする特性を有している。つまり、イオンによる加熱は水素ガスを上記の容積内に局所的に漏出させるのに十分であるため、これらの漏出した分子は、電子によってイオン化されてプラズマを形成する。また、プラズマが十分な密度まで増大すると、自立アークが形成される。したがって、開口プレートの反対側に配置されるパルスでマイナスに帯電した電極を使用して、イオンを抽出し、それらのイオンを加速器へ注入することができる。抽出電極が無い場合には、適切な極性の電場を同様に使用してイオンを抽出することができる。また、アークの停止時には、ガスが脱イオン化される。電極がゲッタリング部材で形成される場合、ガスは、その後に次のサイクルのために使用されるべき金属電極へと吸収される。再吸収されないガスは、真空システムによって送出される。この種の供給源の利点は、真空システムにおけるガス負荷がパルス用途において最小限に抑えられるという点である。
【0037】
荷電粒子抽出、集束、および、パルスイオン源112から線形加速器の入力へと輸送は、図13に示される一体化された注入器セクション113によって行なわれる。具体的には、荷電粒子発生器の注入器セクション113は、荷電イオンビームをターゲットへと集束させる役目を果たす。ターゲットは、荷電粒子治療設備内の患者であってもよいし、または、同位体生成のためのターゲット或いは荷電粒子ビームのための任意の他の適したターゲットであってもよい。また、本発明の一体化された注入器により、荷電粒子発生器は、電気集束場だけを使用してビームを輸送して患者に集束させることができる。システム内に磁石は存在しない。システムは、幅広い範囲のビーム電流、エネルギ、および、スポットサイズをそれぞれ独立に提供することができる。
【0038】
図13は、パルスイオン源112に対する注入器113の概略的な配置を示しており、図21は、線形加速器131と一体に組み合わされた荷電粒子発生器132の概略図を示している。コンパクト高勾配加速器のビーム抽出、輸送、および、集束の全ては、ゲート電極115と、抽出電極116と、集束電極117と、グリッド電極119とを備える注入器によって制御され、これらの電極は荷電粒子源と高勾配加速器との間に位置する。しかしながら、最小の輸送システムは、抽出電極と、集束電極と、グリッド電極とから成るべきである。また、必要であれば、各機能について複数の電極を使用することができる。また、全ての電極は、図18に示されるように、システムの性能を最適化するように形成することもできる。高速パルス電圧を伴うゲート電極115は、荷電粒子ビームを数ナノ秒以内でON/OFFするために使用される。陽子治療用に設計された高勾配加速器におけるゲート電圧の関数としてシミュレーションされた抽出ビーム電流が図17に示されており、また、様々なゲート電圧における最終的なビームスポットが図16に示されている。発明者によって行なわれたシミュレーションでは、ノミナルなゲート電極の電圧は9kVであり、抽出電極は980kVであり、集束電極は90kVであり、グリッド電極は980kVであり、また、高勾配加速器は加速勾配が100MV/mである。図16は最終的なスポットサイズがゲート電極の電圧設定に影響されないことを示しているため、ゲート電圧が、図17に示されるようにビーム電流をON/OFFするための簡単なノブとなる。
【0039】
高勾配加速器システムの注入器は、その電流が抽出電極における電圧によって決定される空間電荷支配ビーム(space charge dominated beam)を抽出して捕らえるためにゲート電極および抽出電極を使用する。加速器システムは、ビームをターゲットへ集束させるために少なくとも1つの集束電極117から成る組を使用する。図18に示される電位等高線プロットは、抽出電極および集束電極がどのように機能するのかを示している。ここでは、最小の集束/輸送システム、すなわち、1つの抽出電極と1つの集束電極とが使用される。高勾配加速器の入口での抽出電極、集束電極、および、グリッド電極における電圧は、980kV、90kV、および、980kVである。図18は、定形抽出電極(shaped extraction electrode)の電圧がゲート電極と抽出電極との間にギャップ電圧を設定することを示している。また、図18は、定形抽出電極、定形集束電極(shaped focusing electrode)およびグリッド電極における電圧が、静電集束−非集束−集束領域、すなわち、荷電粒子ビームに対して強力な正味集束力を与えるアインツェル(アインツェル)レンズを形成することも示している。
【0040】
アインツェルレンズを使用してビームを集束させることは新しくはないが、本発明の加速器システムは、集束磁石をまったく用いていない。また、本発明は、アインツェルレンズと他の電極とを組み合わせて、ターゲットにおけるビームスポットサイズをビームの電流およびエネルギに関係なく調整できるようにする。注入器の出口または高勾配加速器の入口には、グリッド電極119が存在する。抽出電極およびグリッド電極は同じ電圧に設定される。グリッド電極の電圧を抽出電極の電圧と同じにすることによって、加速器内へ注入されたビームのエネルギは、定形集束電極における電圧設定に関係無く同じままである。そのため、定形集束電極における電圧を変えると、アインツェルレンズの強度のみが変わり、ビームエネルギは変わらない。ビーム電流は抽出電極の電圧によって決定されるため、ビーム電流およびエネルギとは無関係な定形集束電極の電圧を調整することにより、最終的なスポットを自由に調整することができる。そのようなシステムでは、言うまでも無く、更なる集束は、軸方向電界における適切な勾配(すなわち、dEZ/dz)、更にその結果として電界の変化の時間速度(すなわち、z=z0におけるdE/dt)によってもたらされる。
【0041】
様々な集束電極電圧設定を伴う、磁石が無い250MeV陽子高勾配加速器を通じたビーム輸送のためのビームエンベロープのシミュレーションが図19に示されている。これらのプロットは、それらの対応する集束電極電圧が左側に与えられているが、集束電極電圧を調整することによりターゲットにおける250−MeVの陽子ビームのスポットサイズを容易に調整できることを明確に示している。また、様々な陽子ビームエネルギにおける集束電極電圧に対するスポットサイズのプロットが図20に示されている。各陽子エネルギに2つの曲線がプロットされている。上側の曲線はビームのエッジ半径を示しており、下側の曲線はコア半径を示している。これらのプロットは、100MVの加速勾配を用いる高勾配陽子治療加速器における集束電極電圧を調整することにより70−250MeV,100mAの陽子ビームに対して幅広い範囲のスポットサイズ(2mm−2cm直径)を得ることができることを示している。
【0042】
そのような一体化された荷電粒子発生器を使用するコンパクト高勾配加速器システムは、幅広い範囲のビーム電流、エネルギ、および、スポットサイズを独立に提供することができる。加速器のビーム抽出、輸送、および、集束のすべては、荷電粒子源と高勾配加速器との間に位置する、ゲート電極と、定形抽出電極と、定形集束電極と、グリッド電極とによって制御される。抽出電極およびグリッド電極の電圧設定はは同じである。これらの電極間の定形集束電極は低い電圧に設定され、それにより、アインツェルレンズが形成され、スポットサイズのための調整ノブが与えられる。最小の輸送システムは抽出電極と集束電極とグリッド電極とから成るが、システムが非常に強力な集束力を必要とする場合には、交流電圧を用いる更なるアインツェルレンズを定形集束電極とグリッド電極との間に加えることができる。
【0043】
D.医学治療用の作動可能コンパクト加速器システム
図21は、荷電粒子ビームを形成し且つビームを加速軸に沿ってコンパクト加速器へ注入するために、コンパクト線形加速器131の入力端に一体に装着され或いは前記入力端に位置する荷電粒子発生器132を有する、本発明の典型的な作動可能コンパクト加速器システム130の概略図を示している。このように荷電粒子発生器を加速器と一体化することにより、ユニット構造について比較的コンパクトなサイズを達成することができ、アクチュエータ機構134によって、矢印135によって示されるようにユニットごと動かすことが可能となり、ビーム136−138が得られる。以前のシステムでは、それらのスケールサイズに起因して、遠隔場所からビームを輸送するために磁石が必要とされた。これに対し、本発明では、スケールサイズがかなり減少されるため、磁石を使用することなく、陽子ビームなどのビームを生成して制御するとともに所望のターゲット位置の極近傍へとすべて輸送することができる。そのようなコンパクトシステムは、例えば医学治療加速器用途で用いるのに理想的である。
【0044】
そのようなユニット型装置は、一体型の粒子発生器−線形加速器を作動させて荷電粒子ビームの位置及びそれにより形成されるビームスポットを直接に制御するように構成され、全体的に133で示される支持構造体上に装着されてもよい。コンパクト加速器と荷電粒子源とのユニット型結合体を装着するための様々な形態が図22−24に示されているが、これらに限定されるものではない。具体的には、図22−24は、ビーム位置決めを制御するべく作動可能となるように様々なタイプの支持構造体上に装着される複合型コンパクト加速器/荷電粒子源を示す本発明の典型的な実施形態を示している。加速器および荷電粒子源は、固定スタンドから吊り下げられて関節結合されて、患者へ向けられてもよい(図22および図23)。図22において、ユニタリ作動は、143で示される重心の周りでユニット装置を回転させることにより可能である。図22に示されるように、一体化されたコンパクト発生器−加速器は、好ましくは、加速されたビームを方向付けるために必要とされるエネルギを減少させるためにその重心を中心に回動的に作動されてもよい。しかしながら、コンパクト加速器と荷電粒子源とのそのようなコンパクトなユニット型結合体とを作動させるための他の装着形態および支持構造が本発明の範囲内で可能であることは言うまでもない。
【0045】
コンパクトで作動可能な構造を可能にする、荷電粒子発生器と一体化させるための様々な加速器アーキテクチャが使用されてもよいことは言うまでもない。例えば、加速器アーキテクチャは、前述したブルームラインモジュール構造において2つの伝送ラインを使用してもよい。伝送ラインは平行プレート伝送ラインであることが好ましい。また、伝送ラインは、図1−12に示されるように帯状の形態であることが好ましい。また、閉塞時間が早い(ナノ秒)様々なタイプの高電圧スイッチ、例えばSiC光伝導スイッチ、ガススイッチ、または、オイルスイッチが使用されてもよい。
【0046】
また、加速器システムの作動および作用を制御するために、当該技術分野において知られる様々なアクチュエータ機構およびシステム制御方法が使用されてもよい。例えば、加速器ビームの位置決め及び動きを制御するために、単純なボールネジ、ステッピングモータ、ソレノイド、電気的に作動される並進器及び/又は空圧器などが使用されてもよい。これにより、ビーム経路のプログラミングを、CNC装置で広く使用されるプログラミング言語と同一でないとしても非常に類似させることができる。アクチュエータ機構は、一体型の粒子発生器−加速器を機械的な作用状態または動作状態に置いて加速ビーム方向およびビームスポット位置を制御するように機能することは言うまでもない。これに関連して、システムは、(例えば、質量中心周りに回動するための)少なくとも1つの回転自由度を有するが、当該技術分野において知られるように、身体またはシステムの変位位置または変形位置を完全に特定する、3つの並進および3つの回転を含む独立変位のセットである6つの自由度(DOF)を有することが好ましい。並進は、三次元のそれぞれの方向に移動できることを表わし、回転は、3つの垂直な軸の周りで角度を変えられることを表わす。
【0047】
加速ビームパラメータの精度は、能動的位置決めシステム、監視システム、および、図22において測定ボックス147により表わされる加速器の制御・位置決めシステムに構成されるフィードバック位置決めシステム(例えば、患者145に配置されたモニタ)によって制御できる。また、加速器システムを制御するシステムコントローラ146が示されており、これは、以下のパラメータ、すなわち、ビーム方向、ビームスポット位置、ビームスポットサイズ、照射量、ビーム強度、および、ビームエネルギのうちの少なくとも1つに基づいてもよい。深さは、ブラッグピークに基づくエネルギによって比較的正確に制御される。システムコントローラは、パラメータのうちの少なくとも1つに関するフィードフォワードデータを監視して供給するためのフィードフォワードシステムも含むことが好ましい。また、荷電粒子および加速器によって形成されるビームは、患者に振動投影を形成するように構成されてもよい。好ましくは、1つの実施形態において、振動投影は、連続的に変化する半径を有する円である。いずれにせよ、ビームの印加は、位置、照射量、スポットサイズ、ビーム強度、ビームエネルギのうちの1つまたは組み合わせに基づいて積極的に制御されてもよい。
【0048】
特定の動作シーケンス、材料、温度、パラメータ、および、特定の実施形態を説明し或いは図示してきたが、これらは限定を意図するものではない。改良および変更は当業者にとって明らかであり、また、本発明は添付の請求項の範囲によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のコンパクト加速器の単一のブルームラインモジュールの第1の典型的な実施形態の側面図である。
【図2】図1の単一のブルームラインモジュールの平面図である。
【図3】2つのブルームラインモジュールが互いに積み重ねられたコンパクト加速器の第2の典型的な実施形態の側面図である。
【図4】真ん中の導電ストリップの幅がモジュールの他の層よりも小さい、本発明の単一のブルームラインモジュールの第3の典型的な実施形態の平面図である。
【図5】図4の線4に沿う拡大断面図である。
【図6】中央加速領域の周囲を取り囲み且つ中央加速領域に向かって径方向に延びる2つのブルームラインモジュールを伴って示されるコンパクト加速器の他の典型的な実施形態の平面図である。
【図7】図6の線7に沿う断面図である。
【図8】中央加速領域の周囲を取り囲み且つ中央加速領域に向かって径方向に延びる2つのブルームラインモジュールを伴って、また、1つのモジュールの平面導体ストリップが他のモジュールの対応する平面導体ストリップに対してリング電極により接続されて示されるコンパクト加速器の他の典型的な実施形態の平面図である。
【図9】図8の線9に沿う断面図である。
【図10】4つの非線形ブルームラインモジュールがそれぞれ関連するスイッチに接続された本発明の他の典型的な実施形態の平面図である。
【図11】図10に類似する本発明の他の典型的な実施形態であって、4つの非線形ブルームラインモジュールのそれぞれをその第2の端部で接続するリング電極を含むものの平面図である。
【図12】図1に類似する本発明の他の典型的な実施形態であって、対称なブルームライン動作のために第1の誘電体ストリップおよび第2の誘電体ストリップの誘電定数および厚さが同じであるもの、の側面図である。
【図13】本発明の荷電粒子発生器の典型的な実施形態の概略図である。
【図14】本発明のパルスイオン源の典型的な実施形態を示す、図13の円14に沿う拡大概略図である。
【図15】図14のパルスイオン源によるパルスイオン生成の経過を示している。
【図16】様々なゲート電極電圧におけるターゲット上での最終的なスポットサイズの複数のスクリーンショットを示している。
【図17】高勾配陽子ビーム加速器におけるゲート電極電圧の関数としての抽出陽子ビーム電流のグラフを示している。
【図18】本発明の荷電粒子発生器における電位等高線を示す2つのグラフを示している。
【図19】様々な集束電極電圧設定の際の磁石が無い250MeV高勾配陽子加速器におけるビーム輸送の比較図である。
【図20】250MeV,150MeV,100MeV,70MeV陽子ビームにおける集束電極電圧に対するターゲット側でのエッジビーム半径(上側の曲線)およびコア半径(下側の曲線)の4つのグラフの比較図である。
【図21】一体化されたユニット型荷電粒子発生器・線形加速器を有する本発明の作動可能なコンパクト加速システムの概略図である。
【図22】本発明のユニット型コンパクト加速器/荷電粒子源の典型的な装着配置の側面図であり、医学治療用途を示す図である。
【図23】本発明のユニット型コンパクト加速器/荷電粒子源の典型的な垂直装着配置の斜視図である。
【図24】本発明のユニット型コンパクト加速器/荷電粒子源の典型的なハブ−スポーク装着配置の斜視図である。
【図25】本発明の連続パルス進行波加速器の概略図である。
【図26】図25の連続パルス進行波加速器の短パルス進行波の動きを示す概略図である。
【図27】従来の誘電体壁加速器の典型的なセルの長パルスの動きを示す概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速軸を取り囲む長さLの誘電体ビーム管と、
前記ビーム管に対して、これを横切る方向に接続される少なくとも2つのパルス形成ラインであって、各パルス形成ラインが、他のパルス形成ラインから独立して当該パルス形成ラインを通って少なくとも1つの電気的な波面を伝搬して、パルス幅τの短い加速パルスをビーム管の対応する短軸長δLに沿って生成するために、高電圧電位に接続可能なスイッチを有するところの、少なくとも2つのパルス形成ラインと、
荷電粒子に対してエネルギを連続的に与えるために、軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期してビーム管に沿って進行軸方向の電界が生成されるように、スイッチを連続的に制御する手段と、
を備える短パルス誘電体壁加速器。
【請求項2】
各パルス形成ラインは、
第1の端部と、前記加速軸に隣接する第2の端部とを有する第1の導体と、
前記第1の導体に隣接する第2の導体であって、高電圧電位に切り換え可能な第1の端部と、前記加速軸に隣接する第2の端部とを有するところの第2の導体と、
前記第2の導体に隣接する第3の導体であって、第1の端部と、前記加速軸に隣接する第2の端部とを有するところの第3の導体と、
第1の誘電定数を有し、前記第1の導体と前記第2の導体との間の空間を満たす第1の誘電体材料と、
第2の誘電定数を有し、前記第2の導体と前記第3の導体との間の空間を満たす第2の誘電体材料と、
を備えるブルームラインモジュールである、請求項1に記載の短パルス誘電体壁加速器。
【請求項3】
前記第1、第2および第3の導体、並びに、前記第1および第2の誘電体部材は、前記第1の端部から第2の端部へと延びる平行な帯状構造を有している、請求項2に記載の短パルス誘電体壁加速器。
【請求項4】
前記誘電体ビーム管は、第1および第2の誘電体部材よりも大きい誘電定数を有する、請求項2に記載の短パルス誘電体壁加速器。
【請求項5】
前記誘電体ビーム管は、前記加速軸に対して垂直な面内に、導体と誘電体との交互層を備える、請求項4に記載の短パルス誘電体壁加速器。
【請求項6】
スイッチを連続的に制御する前記手段は、1つのブロックを形成する少なくとも2つの隣接するパルス形成ラインを同時に切り換えることができ、そして、隣接するブロックを連続的に切り換えることができ、それにより、各ブロックを通って加速パルスが連続的に形成される、請求項1に記載の短パルス誘電体壁加速器。
【請求項7】
前記誘電体ビーム管の入力端および出力端におけるフリンジ磁界を減少するために、ビーム管の直径dおよび長さLが基準L>4dを満たす、請求項1に記載の短パルス誘電体壁加速器。
【請求項8】
ビーム管が基準γτv>d/0.6
但し、vはビーム管壁上の波の速度、dはビーム管の直径、τは、下式:
【数1】
で表わされるパルス幅、γは、下式:
【数2】
で表わされるローレンツ係数である
を満たす、請求項1に記載の短パルス誘電体壁加速器。
【請求項9】
横方向加速軸へと延びる複数のパルス形成ラインであって、各パルス形成ラインが、他のパルス形成ラインから独立して当該パルス形成ラインを通って少なくとも1つの電気的な波面を伝搬して、加速軸の対応する短軸長に隣接して短い加速パルスを生成するために、高電圧電位に接続可能なスイッチを有するところの、複数のパルス形成ラインと、
荷電粒子に対してエネルギを連続的に与えるために、軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期して加速軸に沿って進行軸方向の電界が生成されるように、スイッチを連続的に制御するべく動作可能に接続されるトリガと、
を備える連続パルス進行波線形加速器。
【請求項10】
各パルス形成ラインは、
第1の端部と、前記加速軸に隣接する第2の端部とを有する第1の導体と、
前記第1の導体に隣接する第2の導体であって、高電圧電位に切り換え可能な第1の端部と前記加速軸に隣接する第2の端部とを有するところの第2の導体と、
前記第2の導体に隣接する第3の導体であって、第1の端部と、前記加速軸に隣接する第2の端部とを有するところの第3の導体と、
第1の誘電定数を有し、前記第1の導体と前記第2の導体との間の空間を満たす第1の誘電体材料と、
第2の誘電定数を有し、前記第2の導体と前記第3の導体との間の空間を満たす第2の誘電体材料と、
を備えるブルームラインモジュールである、請求項9に記載の連続パルス進行波線形加速器。
【請求項11】
前記第1、第2および第3の導体、並びに、前記第1および第2の誘電体部材は、前記第1の端部から第2の端部へと延びる平行な帯状構造を有している、請求項10に記載の連続パルス進行波線形加速器。
【請求項12】
スイッチを連続的に制御する前記手段は、1つのブロックを形成する少なくとも2つの隣接するパルス形成ラインを同時に切り換えることができ、そして、隣接するブロックを連続的に切り換えることができ、それにより、各ブロックを通って加速パルスが連続的に形成される、請求項9に記載の連続パルス進行波線形加速器。
【請求項13】
加速軸を取り囲む長さLの誘電体ビーム管と、
少なくとも2つのブルームラインモジュールであり、各々が、前記加速軸に対して、これを横切る方向のパルス形成ラインを形成し、そして、第1の端部と、前記ビーム管に接続される第2の端部とを有する第1の導体、前記第1の導体に隣接する第2の導体であって、高電圧電位に切り換え可能な第1の端部と、前記ビーム管に接続される第2の端部とを有するところの第2の導体、前記第2の導体に隣接する第3の導体であって、第1の端部と、前記ビーム管に接続される第2の端部とを有するところの第3の導体、第1の誘電定数を有し、前記第1の導体と第2の導体との間の空間を満たす第1の誘電体部材、及び、第2の誘電定数を有し、前記第2の導体と第3の導体との間の空間を満たす第2の誘電体部材を備え、前記第1および第2の誘電定数がビーム管の誘電定数よりも小さく、
各ブルームラインモジュールが、他のブルームラインモジュールから独立して当該ブルームラインモジュールを通って少なくとも1つの電気的な波面を伝搬して、パルス幅τの短い加速パルスをビーム管の対応する短軸長δLに沿って生成するために、高電圧電位に接続可能な少なくとも1つのスイッチを有するところの少なくとも2つのブルームラインモジュールと、
荷電粒子に対してエネルギを連続的に与えるために、軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期して、前記ビーム管に沿って進行軸方向の電界が生成されるように、スイッチを連続的にトリガするべく動作可能に接続されるコントローラと
を備える連続パルス進行波線形加速器。
【請求項14】
前記ブルームラインモジュールは、第1および第2の誘電定数が等しい対称ブルームラインである、請求項13に記載の連続パルス進行波線形加速器。
【請求項15】
前記ブルームラインモジュールは、第1および第2の誘電定数が等しくない非対称ブルームラインである、請求項13に記載の連続パルス進行波線形加速器。
【請求項1】
加速軸を取り囲む長さLの誘電体ビーム管と、
前記ビーム管に対して、これを横切る方向に接続される少なくとも2つのパルス形成ラインであって、各パルス形成ラインが、他のパルス形成ラインから独立して当該パルス形成ラインを通って少なくとも1つの電気的な波面を伝搬して、パルス幅τの短い加速パルスをビーム管の対応する短軸長δLに沿って生成するために、高電圧電位に接続可能なスイッチを有するところの、少なくとも2つのパルス形成ラインと、
荷電粒子に対してエネルギを連続的に与えるために、軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期してビーム管に沿って進行軸方向の電界が生成されるように、スイッチを連続的に制御する手段と、
を備える短パルス誘電体壁加速器。
【請求項2】
各パルス形成ラインは、
第1の端部と、前記加速軸に隣接する第2の端部とを有する第1の導体と、
前記第1の導体に隣接する第2の導体であって、高電圧電位に切り換え可能な第1の端部と、前記加速軸に隣接する第2の端部とを有するところの第2の導体と、
前記第2の導体に隣接する第3の導体であって、第1の端部と、前記加速軸に隣接する第2の端部とを有するところの第3の導体と、
第1の誘電定数を有し、前記第1の導体と前記第2の導体との間の空間を満たす第1の誘電体材料と、
第2の誘電定数を有し、前記第2の導体と前記第3の導体との間の空間を満たす第2の誘電体材料と、
を備えるブルームラインモジュールである、請求項1に記載の短パルス誘電体壁加速器。
【請求項3】
前記第1、第2および第3の導体、並びに、前記第1および第2の誘電体部材は、前記第1の端部から第2の端部へと延びる平行な帯状構造を有している、請求項2に記載の短パルス誘電体壁加速器。
【請求項4】
前記誘電体ビーム管は、第1および第2の誘電体部材よりも大きい誘電定数を有する、請求項2に記載の短パルス誘電体壁加速器。
【請求項5】
前記誘電体ビーム管は、前記加速軸に対して垂直な面内に、導体と誘電体との交互層を備える、請求項4に記載の短パルス誘電体壁加速器。
【請求項6】
スイッチを連続的に制御する前記手段は、1つのブロックを形成する少なくとも2つの隣接するパルス形成ラインを同時に切り換えることができ、そして、隣接するブロックを連続的に切り換えることができ、それにより、各ブロックを通って加速パルスが連続的に形成される、請求項1に記載の短パルス誘電体壁加速器。
【請求項7】
前記誘電体ビーム管の入力端および出力端におけるフリンジ磁界を減少するために、ビーム管の直径dおよび長さLが基準L>4dを満たす、請求項1に記載の短パルス誘電体壁加速器。
【請求項8】
ビーム管が基準γτv>d/0.6
但し、vはビーム管壁上の波の速度、dはビーム管の直径、τは、下式:
【数1】
で表わされるパルス幅、γは、下式:
【数2】
で表わされるローレンツ係数である
を満たす、請求項1に記載の短パルス誘電体壁加速器。
【請求項9】
横方向加速軸へと延びる複数のパルス形成ラインであって、各パルス形成ラインが、他のパルス形成ラインから独立して当該パルス形成ラインを通って少なくとも1つの電気的な波面を伝搬して、加速軸の対応する短軸長に隣接して短い加速パルスを生成するために、高電圧電位に接続可能なスイッチを有するところの、複数のパルス形成ラインと、
荷電粒子に対してエネルギを連続的に与えるために、軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期して加速軸に沿って進行軸方向の電界が生成されるように、スイッチを連続的に制御するべく動作可能に接続されるトリガと、
を備える連続パルス進行波線形加速器。
【請求項10】
各パルス形成ラインは、
第1の端部と、前記加速軸に隣接する第2の端部とを有する第1の導体と、
前記第1の導体に隣接する第2の導体であって、高電圧電位に切り換え可能な第1の端部と前記加速軸に隣接する第2の端部とを有するところの第2の導体と、
前記第2の導体に隣接する第3の導体であって、第1の端部と、前記加速軸に隣接する第2の端部とを有するところの第3の導体と、
第1の誘電定数を有し、前記第1の導体と前記第2の導体との間の空間を満たす第1の誘電体材料と、
第2の誘電定数を有し、前記第2の導体と前記第3の導体との間の空間を満たす第2の誘電体材料と、
を備えるブルームラインモジュールである、請求項9に記載の連続パルス進行波線形加速器。
【請求項11】
前記第1、第2および第3の導体、並びに、前記第1および第2の誘電体部材は、前記第1の端部から第2の端部へと延びる平行な帯状構造を有している、請求項10に記載の連続パルス進行波線形加速器。
【請求項12】
スイッチを連続的に制御する前記手段は、1つのブロックを形成する少なくとも2つの隣接するパルス形成ラインを同時に切り換えることができ、そして、隣接するブロックを連続的に切り換えることができ、それにより、各ブロックを通って加速パルスが連続的に形成される、請求項9に記載の連続パルス進行波線形加速器。
【請求項13】
加速軸を取り囲む長さLの誘電体ビーム管と、
少なくとも2つのブルームラインモジュールであり、各々が、前記加速軸に対して、これを横切る方向のパルス形成ラインを形成し、そして、第1の端部と、前記ビーム管に接続される第2の端部とを有する第1の導体、前記第1の導体に隣接する第2の導体であって、高電圧電位に切り換え可能な第1の端部と、前記ビーム管に接続される第2の端部とを有するところの第2の導体、前記第2の導体に隣接する第3の導体であって、第1の端部と、前記ビーム管に接続される第2の端部とを有するところの第3の導体、第1の誘電定数を有し、前記第1の導体と第2の導体との間の空間を満たす第1の誘電体部材、及び、第2の誘電定数を有し、前記第2の導体と第3の導体との間の空間を満たす第2の誘電体部材を備え、前記第1および第2の誘電定数がビーム管の誘電定数よりも小さく、
各ブルームラインモジュールが、他のブルームラインモジュールから独立して当該ブルームラインモジュールを通って少なくとも1つの電気的な波面を伝搬して、パルス幅τの短い加速パルスをビーム管の対応する短軸長δLに沿って生成するために、高電圧電位に接続可能な少なくとも1つのスイッチを有するところの少なくとも2つのブルームラインモジュールと、
荷電粒子に対してエネルギを連続的に与えるために、軸方向に横切る前記荷電粒子のパルスビームと同期して、前記ビーム管に沿って進行軸方向の電界が生成されるように、スイッチを連続的にトリガするべく動作可能に接続されるコントローラと
を備える連続パルス進行波線形加速器。
【請求項14】
前記ブルームラインモジュールは、第1および第2の誘電定数が等しい対称ブルームラインである、請求項13に記載の連続パルス進行波線形加速器。
【請求項15】
前記ブルームラインモジュールは、第1および第2の誘電定数が等しくない非対称ブルームラインである、請求項13に記載の連続パルス進行波線形加速器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2009−512985(P2009−512985A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536618(P2008−536618)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/041548
【国際公開番号】WO2008/033149
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(507410009)ローレンス リヴァーモア ナショナル セキュリティ,エルエルシー (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/041548
【国際公開番号】WO2008/033149
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(507410009)ローレンス リヴァーモア ナショナル セキュリティ,エルエルシー (14)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]