説明

連続測定式の距離計を有する照準器

照準器は、起動するとすぐに連続測定モードで作動する距離計を含む。この距離計は連続測定モードのときには標的までの距離を連続的に決定しているため、ユーザは標的に狙いを定めつつ、照準を合わせたその標的までの距離の測定値を得るために一切のボタンを押す時間を取らなくてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にライフルで使用するための、距離計を有する照準器に関する。
【背景技術】
【0002】
照準器からこの照準器のクロスヘア内の標的までの距離を測定する距離計を照準器、特に望遠照準器に設けることが知られている。このような望遠照準器の一例が米国特許第5,771,623号(特許文献1)に示されている。ユーザは、望遠照準器側にあるボタンを押して距離計をオンにする。この時点で、距離計は一切の測定をしようとしていない。ユーザは、望遠照準器のレティクルのクロスヘアに標的を位置させることでこの標的に照準を合わせる。そしてユーザはもう1度ボタンを押し、距離計が標的に向けてレーザービームを発生するようにし、そうすることで標的までの距離を決定する。ユーザに距離が知らされると、このユーザは標的までの距離によって生じるあらゆる着弾を考慮して標的に適切に狙いを定めることができる。距離計をオンにした後に(例えばボタンを1回押すことによって)、ユーザがそのボタンを押すことで距離計がレーザービームを発生し続け、望遠照準器からレティクルのクロスヘアに位置する目標物までの距離を測定し続ける連続測定モードのある距離計もある。
【特許文献1】米国特許第5,771,623号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在利用されている距離計を有する照準器の問題は、標的が照準器のクロスヘアにくるためには、ユーザが距離計の取り付けられた銃を標的に向けつつ、距離計に測定させるためにボタンを押さなければならないという点である。標的に狙いを定めつつボタンを押すのはやっかいで銃を動かしてしまうおそれがあり、このことが射撃の精度に明らかに悪影響を及ぼす。狙いを定めた後にボタンを押すのは若干時間もかかるため標的への射撃に遅延が生じ、これによってユーザは良い射撃のチャンスを逃してしまうかもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の態様によると、照準器は、起動するとすぐに連続測定モードで作動する距離計を含む。この距離計は連続測定モードのときには標的までの距離を連続的に決定しているので、ユーザは、この標的に狙いを定めつつ照準を合わせた標的までの距離の測定値を得るために一切のボタンを押す時間を取らなくてもよい。
【0005】
第1実施形態によると、この照準器は、距離計と標的を見通すレティクルを含む。この距離計は、送信機と受信機を含む。送信機は標的に向かってエネルギーを発し、受信機はこの標的から反射したエネルギーを受け取る。距離計は、受信機が受け取ったエネルギーから標的までの距離を決定する。好適な第1実施形態では、距離計は、レーザー送信機と、標的から反射したレーザー光を受け取るレーザー受信機とを有するレーザー距離計である。
【0006】
第1実施形態によると、距離計は、その起動時(オン時)に自動的に作動するデフォルトモードとして、ユーザが距離計を連続測定モードまたはユーザ指定測定モードのいずれかに選択的にすることができるデフォルトモード設定スイッチを含む。
【0007】
別の実施形態によると、距離計は、ユーザが距離計を連続測定モードの代わりにユーザ指定測定モードにすることができるモードオーバーライドスイッチを含む。
【0008】
距離計は、標的までの測定距離を示す。例えば、距離計は、照準器のユーザが見られるように標的までの測定距離を表示するディスプレイを含むことができる。ディスプレイは、照準器のレティクルに測定距離を表示することができる。別の実施形態によると、距離計は標的に狙いを定めるのに使用するレティクルの照準エリアを特定することで標的までの測定距離を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を例示の実施形態の添付図面に関連させて説明する。添付図面においては、同一参照番号は同一要素を示す。
【0010】
図1は、本発明の態様を適用可能な望遠照準器10の斜視図である。用いられる特定の光学配置を含めた望遠照準器を作動する方法と、距離計が目標物までの距離を決定する方法は変わる可能性があり、本発明の必須の態様ではない。したがって、距離計を含む望遠照準器の特定の光学的構造および他の構造は、ここでは詳細に説明しない。本発明の態様を適用可能な望遠照準器と距離計の一例が前述した米国特許第5,771,623号に説明されており、この開示は全体が参照としてここに援用される。米国特許第5,771,623号の望遠照準器は、スコープのレティクルの中央クロスヘア(すなわち、距離計の光学系と照準器の光学系が一体化されている)に照準を合わせた標的までの距離を測定する。この距離計は、発生した光ビームが距離計から標的まで進み再び距離計に戻って来るのに要する時間に基づいて、標的までの距離を決定する。本発明は、米国特許第5,771,623号に示されているものと異なる照準器/距離計システムに適用することもできる。
【0011】
照準器(またはスコープ)10は、一体型距離計50、以下で説明するモード選択スイッチ60aまたは60b、そしてスコープ10をライフルなどの銃に取り付けた後にこのスコープの照準点を調節するのに使用する1つ以上の調節ノブ53を含む。例えば、スコープ10をライフルに取り付けた後に1つ以上の調節ノブ53を調節し、照準器の中央のクロスヘアが周知の距離(例えば、200ヤード)でライフルによる発射弾で当てられる標的に対応するようにする。
【0012】
図2は、距離計50の主な構成要素を示すブロック図である。中央コントローラ52は、レーザー発生器54、レーザー受信機56、以下でより詳細に説明する距離指示器40を含めた装置の全体的な動作を制御する。スコープ10がモード選択スイッチ(60aまたは60b)を含むならば、コントローラ52はそのスイッチによって選択されたモードで作動する。
【0013】
上述のように、距離計50は、レーザー発生器54から発生した光ビームが距離計50から標的へと進み、そしてレーザー受信機56へと戻ってくるのに要する測定時間の1/2と、よく知られている空気中における光の速さとに基づいて、照準を合わせた標的までの距離を決定する。そして、決定した距離を距離指示器40によってユーザに伝える。この距離指示器40は、典型的にはスコープ10のレティクルに距離を(例えばヤードで)表示する。
【0014】
コントローラ52として、種々の構造を利用できる。例えば、コントローラは特定用途向け集積回路(ASIC)またはプログラムされた汎用処理ユニットでもよい。
【0015】
既述のように、既存の距離計はユーザ指定測定モードまたは連続測定モードのいずれでも作動可能である。ユーザ指定測定モードは、ユーザが測定をするように(例えばボタンを押すことによって)コマンドを発したときだけ、照準を合わせた標的までの測定を行うモードである。そして決定した距離を距離指示器40によって表示する。連続測定モードは、距離計が照準を合わせた標的までの距離を連続的に決定し、決定した距離を連続的に表示するモードである(この決定した距離は、標的が移動したりスコープ10の照準エリアが異なる標的へと移動したりするにつれ常に変化している可能性がある)。上述のように、既存の距離計はユーザ指定測定モードを繰り返した後に制御ボタンを押し続けると、連続測定モードでしか作動できない。
【0016】
本発明の第1態様によると、コントローラ52は、距離計50が起動する(オンになる)とすぐに連続測定モードで作動するように、距離計50を制御する。そうすると、ユーザは標的がスコープ10の照準エリアに位置するとすぐにその標的までの距離を知ることができる。したがってユーザは標的までの距離を直ちに知ることができ、距離計50をそれ以上一切操作または制御することなく適切に銃を向けて発射することができる。そのためユーザは既存のスコープよりも迅速に標的に発射することができ、銃の移動によって生じる、射撃に悪影響を及ぼし得るスコープおよび/または距離計の操作を一切行わなくてよい。距離計は、ユーザがボタンまたはスイッチを押し続けなくても連続測定モードで作動する。第1実施形態では、モード選択スイッチ60aまたは60bは単なるオン/オフスイッチで、オン/オフスイッチがオンの位置にあるときにコントローラ52が距離計を自動的に連続測定モードにする。
【0017】
ユーザがユーザ指定測定モードで距離計を使いたいという状況も依然としてあると思われる。したがって本発明の幾つかの態様によると、距離計50は、動作モードを連続測定モードとユーザ指定測定モードとに交互に切り替えるモード選択スイッチを含む。オン/オフスイッチ以外に、このようなスイッチを設けることができる。
【0018】
第1実施形態によると、モード選択スイッチは、例えば別個のオン/オフスイッチによって距離計50を最初に起動した(オンにした)時にこの距離計が作動するデフォルトモードとして、ユーザが連続測定モードまたはユーザ指定測定モードのいずれかに選択的に距離計を置くことができるデフォルトモード設定スイッチ60aである。したがって距離計50にデフォルトモード設定スイッチ60aが備えられているときは、この距離計は起動時にはユーザ指定測定モードにある既存の距離計のように作動することもできるし、または起動する(オンになる)とすぐに連続測定モードで作動することもできる。
【0019】
別の実施形態によると、距離計は常に起動するとすぐに連続測定モードで作動するが、起動後にユーザがモードオーバーライドスイッチ60bを作動させて距離計を連続測定モードの代わりにユーザ指定測定モードにすることができる。
【0020】
図1に示す実施形態では、デフォルトモード設定スイッチ60aとモードオーバーライドスイッチ60bは2位置のトグルスイッチとして示されている。しかし、例えばプッシュボタンスイッチなどの他の種類のスイッチも使用可能である。
【0021】
図3は、スコープ10に組み込み可能なある種のレティクル20とディスプレイ30を示す。図3のレティクル20は、中央に位置する水平線と中央に位置する垂直線とから形成されるクロスヘアを含む。これら2本の線が交わる中心点22が、距離計50によって使用される照準エリアである。つまり、距離計50は中心照準エリア22に対応する標的までの距離を決定する。距離計50は、決定した標的までの距離を表示領域30に表示する。例えば、距離計は距離(例えば、標的までのヤードを示す数字)を当該技術分野でよく知られている方法で表示領域30に映し出すLEDディスプレイを含むことができる。
【0022】
図3のレティクル20は、中心の照準エリア22の下に位置する付加的な照準エリア24a、24b、24cを設けた弾着補正(bullet drop compensation、BDC)レティクルとして知られている。付加的な照準エリア24a〜24cは、標的までの距離に基づいて標的に照準を合わせるために当該技術分野でよく知られている方法で使用される。当該技術分野で知られているように、弾丸などの発射弾は、空気中を進んで垂直に落下する。したがってユーザは、標的が銃から遠く離れて位置するときにこの標的に狙いを定めなければならない。
【0023】
つまり当該技術分野でよく知られているように、ユーザが標的までの距離を知ると、このユーザは距離に応じて照準エリア22、24a、24b、24cの1つを使用し、標的に狙いを定める。例えば、標的が銃から約200ヤードに位置するときには照準エリア22を使用し、標的が銃から300ヤード、400ヤード、500ヤードに位置するときには照準エリア24a、24b、24cをそれぞれ使用する。もちろん照準エリアに対応する距離は銃と発射弾に依存し、典型的には銃のユーザによって経験に基づいて決定される。
【0024】
図4は、標的までの距離をユーザに伝える方法を除いて図3のレティクル20に類似する、別のレティクル20’を示す。ヤード数をディスプレイに表示することで標的までの距離を示す代わりに、図4の実施形態は決定した距離に基づく適切な照準エリアをハイライトする。図4では、他の照準エリアよりも濃く表示することで照準エリア24bをハイライトする。図4の実施形態のヘアラインと照準エリアは、くっきりと描かれた直線や円などの物理的な形であるというよりもむしろ、レティクルへの投影によって表示される。したがって適切な照準エリアのハイライトは、表示する画像を変えることで実現できる。
【0025】
例示の実施形態はレーザー距離計を使用しているが、例えば、電波、電磁波、音波、超音波を使用する距離計といった他の種類の距離計も本発明で使用可能である。
【0026】
本発明をその好適な実施形態を参照して説明してきたが、本発明はこういった実施形態または構造に限定されないことを理解されたい。本発明は、種々の改変やアレンジを含むことを意図している。例示の実施形態の種々の要素が種々の組み合わせや構成で示されているが、より多くの要素、より少ない要素、単一の要素を含めた他の組み合わせや構成も本発明の趣旨および範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る望遠照準器の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る、距離計を組み込んだ望遠照準器の構成要素を示すブロック図である。
【図3】望遠照準器に組み込まれ、標的までの距離が表示されるレティクルを示す図である。
【図4】望遠照準器の他の実施形態に組み込まれ、標的までの測定距離に基づく照準器の照準エリアをハイライトすることによって標的までの距離がユーザに示されるレティクルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的を見通すレティクルと、
前記標的に向けてエネルギーを発する送信機と前記標的から反射したエネルギーを受け取る受信機とを含み、前記受信機が受け取ったエネルギーから前記標的までの距離を決定する距離計と、を備える照準器であって、
前記距離計は起動するとすぐに連続測定モードで作動し、前記連続測定モードのときには前記標的までの距離を連続的に決定する、照準器。
【請求項2】
前記距離計が、その起動時に最初に作動するデフォルトモードとして、ユーザが前記距離計を前記連続測定モードまたはユーザ指定測定モードのいずれかに選択的にすることができるデフォルトモード設定スイッチを含む、請求項1記載の照準器。
【請求項3】
前記距離計は、ユーザが前記距離計を前記連続測定モードの代わりにユーザ指定測定モードにすることができるモードオーバーライドスイッチを含む、請求項1記載の照準器。
【請求項4】
前記距離計が、前記照準器のユーザが見られるように前記標的までの測定距離を表示するディスプレイを含む、請求項1記載の照準器。
【請求項5】
前記ディスプレイが前記レティクルに前記測定距離を表示する、請求項4記載の照準器。
【請求項6】
前記距離計が前記標的までの測定距離を示す、請求項1記載の照準器。
【請求項7】
前記距離計が、前記標的に狙いを定めるのに使用する前記レティクルの照準エリアを特定することで前記標的までの測定距離を示す、請求項6記載の照準器。
【請求項8】
前記距離計が、前記測定距離に基づく前記レティクルの照準エリアをハイライトすることで前記標的までの測定距離を示す、請求項6記載の照準器。
【請求項9】
前記距離計は、ユーザが一切の制御部材を押し続けなくとも前記連続測定モードで作動する、請求項1記載の照準器。
【請求項10】
前記照準器が可変倍率の望遠照準器である、請求項1記載の照準器。
【請求項11】
前記距離計がレーザー距離計であって、前記送信機がレーザー送信機で前記受信機がレーザー受信機である、請求項1記載の照準器。
【請求項12】
標的を見通すレティクルと、
前記標的に向けてレーザービームを発するレーザー送信機と前記標的から反射した光を受け取るレーザー受信機とを含み、前記レーザー受信機が受け取った反射光から前記標的までの距離を決定するレーザー距離計と、を備える望遠照準器であって、
前記レーザー距離計は起動するとすぐに連続測定モードで作動し、前記連続測定モードのときには前記標的までの距離を連続的に決定する、望遠照準器。
【請求項13】
前記レーザー距離計は、その起動時に最初に作動するデフォルトモードとして、ユーザが前記レーザー距離計を前記連続測定モードまたはユーザ指定測定モードのいずれかに選択的にすることができるデフォルトモード設定スイッチを含む、請求項12記載の望遠照準器。
【請求項14】
前記レーザー距離計は、ユーザが前記レーザー距離計を前記連続測定モードの代わりにユーザ指定測定モードにすることができるモードオーバーライドスイッチを含む、請求項12記載の望遠照準器。
【請求項15】
前記レーザー距離計が、前記望遠照準器のユーザが見られるように前記標的までの測定距離を表示するディスプレイを含む、請求項12記載の望遠照準器。
【請求項16】
前記ディスプレイが前記レティクルに前記測定距離を表示する、請求項15記載の望遠照準器。
【請求項17】
前記レーザー距離計が前記標的までの測定距離を示す、請求項12記載の望遠照準器。
【請求項18】
前記レーザー距離計が、前記標的に狙いを定めるのに使用する前記レティクルの照準エリアを特定することで前記標的までの測定距離を示す、請求項17記載の望遠照準器。
【請求項19】
前記距離計が、前記測定距離に基づく前記レティクルの照準エリアをハイライトすることで前記標的までの測定距離を示す、請求項17記載の望遠照準器。
【請求項20】
前記レーザー距離計は、ユーザが一切の制御部材を押し続けなくとも前記連続測定モードで作動する、請求項12記載の望遠照準器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−525458(P2009−525458A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553284(P2008−553284)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/002375
【国際公開番号】WO2007/092191
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(508235265)ニコン インク (2)
【Fターム(参考)】