説明

連続用紙切断装置

【課題】切断装置の上流側にピントラクタ装置を設けた連続用紙切断装置においての切断精度の向上を図ることができるようにする。
【解決手段】切断装置7の搬送方向上流側に、搬送方向に同期して駆動する2つのピントラクタ5a,5bを搬送方向にならべてなるピントラクタ装置5を配置し、一方のピントラクタの駆動系を断続可能にすると共に、動力系を断にした状態で手動にて回転可能にし、搬送を停止した状態で、上記一方のピントラクタの動力系を「断」とし、このピントラクタを手動にて他のピントラクタに対して連続用紙2に張力が作用する方向に回転し、この張力の作用状態で動力系を「続」にするようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピン送り方式で搬送される連続用紙を切断装置にて所定の長さの単葉シートに切断する連続用紙切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幅方向両側部に穿孔された送り穴にピントラクタ装置の送りピンを係合させて搬送し、この搬送方向下流側において上記送り穴部をスリッタにて切除し、さらにその下流側で切断装置にてこれの搬送方向に直角な方向に切断して、上記連続用紙から最終的な商品形態としての単葉シートを得るようにした連続用紙切断装置が、専用機としてのカッタ装置や丁合機の最終処理部分などに用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−113495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の連続用紙切断装置にあっては、切断装置部への連続用紙の搬送は、上記したようにピントラクタ装置にて行われ、このピントラクタ装置による搬送速度に同期して切断装置が作動して、連続用紙は所定の長さに切断されるようになっている。そしてこのときのピントラクタ装置の送りピンと連続用紙の送り穴との関係は、図1(a)に示すようになっていて、ピントラクタ装置の送りピンaは、連続用紙bの送り穴cの下流側縁に当接して連続用紙はこの送りピンaにて搬送されている。
【0005】
ピントラクタ装置の送りピンaと連続用紙の送り穴cの寸法は、送りピンaの径が3.5mm、送り穴cの径が4.0mmであり、ピントラクタ装置の送りピンaを基準にして標準的なピン径と穴径で考えると、送りピンaに対して送り穴cが搬送方向に±0.25mm移動する可能性があり、上記通常の搬送作用時には図1(a)に示すように送りピンaに対して送り穴cは0.25mm上流側にずれた状態で搬送されている。
【0006】
ところでこの種の装置にあっては、この装置のピントラクタ装置の上流側にも他のピントラクタ装置があって、この他のピントラクタ装置にて連続用紙が送給されるようになっており、この他のピントラクタ装置による連続用紙の搬送速度が変動することがある。
【0007】
また、切断装置のピントラクタ装置の下流側の連続用紙には、スリッタや切断装置に関連する搬送力が作用しており、この搬送力の変動により、この下流側での搬送速度が変動することがある。
【0008】
この場合、上記したようにピントラクタ装置の送りピンaと連続用紙bの送り穴cの穴径に差があること、及びピントラクタ装置の上流側及び下流側での連続用紙の搬送状態の変動によって、連続用紙はピントラクタ装置内において、このピントラクタ装置の作動タイミングに対して搬送方向に±0.25mmずれることがある。したがって、ピントラクタ装置の作用タイミングに同期して作動する切断装置による切断位置も、この連続用紙の変動によって搬送方向に±0.25mmずれる可能性があり、単葉シートの長さが短くなる方向の0.25mmずれて切断される場合と、長くなる方向に0.25mmずれて切断される場合があり、この両者を比較すると最大で1mm(±0.5mm)の長さの差となって現れる可能性がある。そして実際の丁合機によるサンプル取りの結果としても、ほぼ同様の切断精度であることが確認されている。
【0009】
このようなことは、切断装置部への連続用紙の送り込み側のみにピントラクタを備えた場合に特に顕著に現れる。
【0010】
また、図2(a)に示すように連続用紙bがピントラクタ装置の送りピンaに対して波状に送られる場合と、図2(b)に示すように直線状に送られる場合とで連続用紙bの送り量が微少変化することでもカット精度に影響が出てくることになる。
【0011】
本発明は上記のことに鑑みなされたもので、切断装置の搬送方向上流側にピントラクタ装置を設けた連続用紙切断装置においての切断精度を向上して製品品質を高めることができると共に、生産可能な商品の種類も増加でき、生産性を向上することができるようにした連続用紙切断装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る連続用紙切断装置は、ピン送り方式で搬送される連続用紙を切断装置にて所定の長さの単葉シートに切断する連続用紙切断装置において、切断装置の搬送方向上流側に、搬送方向に同期して駆動する2つのピントラクタを搬送方向にならべてなるピントラクタ装置を配置し、一方のピントラクタの駆動系を断続可能にすると共に、動力系を「断」にした状態で手動にて回転可能にし、搬送を停止した状態で、上記一方のピントラクタの動力系を「断」とし、このピントラクタを手動にて他のピントラクタに対して連続用紙に張力が作用する方向に回転し、この張力の作用状態で動力系を「続」にするようにした構成になっている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、切断装置の搬送方向上流側に2連構成のピントラクタ装置を配置し、このピントラクタ装置を構成する2つのピントラクタ間で連続用紙に張力を作用した状態で連続用紙を切断装置へ搬送することができ、切断装置の搬送方向上流側にピントラクタ装置を設けた連続用紙切断装置においての切断精度を向上して、製品品質を高めることができる。このことにより、生産可能な商品の種類が増加して生産性を向上することができた。
【0014】
また本発明によれば、ピントラクタを2連に設置するだけの簡単な構成であり、大がかりな装置や、複雑な技術を用いることなく、低コストで従来にない品質向上を得ることができた。
【0015】
さらに上記2連の各ピントラクタは標準的な構成のものを用いることができ、新規な部品の増加が少なく、また調整やメンテナンスを従来のものと同様に容易に行うことができる。
【0016】
さらに複数の連続用紙を丁合後に切断する場合に、複数の連続用紙が重なってからでは用紙間の摩擦などにより相互の位置関係の移動が難しい状態となるが、本発明によれば、切断装置の上流側で、上記ピントラクタ装置を各連続用紙ごとに設けることにより、上記複数の連続用紙の丁合後の切断を精度高く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a),(b)はピントラクタの送りピンと連続用紙の送り穴との関係を示す説明図である。
【図2】(a),(b)はピントラクタの送りピンによる連続用紙の送り状態を示す説明図である。
【図3】本発明装置の概略的な構成を示す正面図である。
【図4】本発明装置のピントラクタ部の概略的な構成を示す平面図である。
【図5】複数の連続用紙を丁合して切断する実施例を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を図3以下に基づいて説明する。
【0019】
図3、図4において、1は連続用紙2を所定の長さの単葉シート3に切断する連続用紙切断装置である。連続用紙2の幅方向両側に送り穴4が設けてある。5はこの連続用紙2を間欠的、あるいは連続的に搬送するピントラクタ装置、6はこのピントラクタ装置5の下流側に位置して、連続用紙2の両側の送り穴部を切除するスリッタ、7はこのスリッタ6の下流側に設けられた切断装置であり、上記ピントラクタ装置5による搬送速度に同期して作動するカッタ7aにて上記単葉シート3に切断するようになっている。切断装置7の下流側にピントラクタ装置5と同期作動する上下一対の送りローラ8が設けてある。
【0020】
ピントラクタ装置5は、2台のピントラクタ5a,5bを搬送方向にならべて配置した2連式になっていて、この各ピントラクタ5a,5bは幅方向両側において、ベルトに多数個の送りピン9を植設してなる通常の構成のものである。
【0021】
この各ピントラクタ5a,5bの各駆動軸10a,10bは、それぞれの端部に固着した従動プーリ11a,11bに巻き掛けたタイミングベルト12にて連動連結されている。このタイミングベルト12は、駆動源13にて駆動される駆動プーリ11cに巻き掛けられていて、この駆動源13により両ピントラクタ5a,5bが同期回転されるようになっている。
【0022】
上記ピントラクタ5a,5bの一方、例えば下流側のピントラクタ5bの駆動軸10bの上記従動プーリ11bの内側にクラッチ14が設けてあり、このクラッチ14の「断」、「続」により、駆動軸11bに対する駆動源13の動力が「断」、「続」されるようになっている。そしてこのクラッチ14を設けた駆動軸10bの他端には、この駆動軸10bを手動にて回転するためのハンドル15が設けてある。
【0023】
上記ピントラクタ装置5を駆動する駆動源13は、上記スリッタ6、切断装置7等を駆動する本機駆動源と同期して駆動する1個の単独モータであってもよく、また本機駆動源に連結して駆動力を得るようにしてもよい。また、各ピントラクタ5a,5bの駆動軸10a,10bを、それぞれ本機駆動源と同期して連動する単独モータにより駆動する構成としてもよく、同期がとれていれば駆動源13の配置構成は自由に選択が可能である。
【0024】
上記構成の連続用紙切断装置1にての連続用紙2の切断作動を以下に説明する。
【0025】
連続用紙切断装置1に連続用紙2を紙通しした状態で、ピントラクタ装置5の下流側のピントラクタ5bの駆動軸10bに設けたクラッチ14を「断」にし、この駆動軸10bをハンドル15にて、送りピン9が紙送り方向に移動する方向に回転する。この状態で、図4に示すようになり、下流側のピントラクタ5bの送りピン9は、連続用紙1の送り穴4内でこれの下流側に当接して、連続用紙1はこの送りピン9にて下流側へ付勢される。このとき、上流側のピントラクタ5aは停止しているので、上流側のピントラクタ5aの送りピン29は、送り穴4内の上流側に当接される。
【0026】
したがって、クラッチ14が「断」状態で、駆動軸10bを回転して送りピン9を搬送方向に移動することにより、ピントラクタ装置5内での連続用紙2は、両ピントラクタ5a,5b間において張力が作用される。
【0027】
ついで、クラッチ14を「続」にして下流側のピントラクタ5bの駆動軸10bを駆動源14に接続し、この状態で連続用紙切断装置2を駆動すると、ピントラクタ装置5内での連続用紙2は、常時両ピントラクタ5a,5b間で張力が作用した状態で、すなわち両ピントラクタ5a,5bの送りピン9と送り穴4間に遊びがない状態で搬送される。
【0028】
このようにしてピントラクタ装置5にて搬送された連続用紙2は、このピントラクタ装置5と同期作動するスリッタ6にて両側の送り穴部が切除され、ついで切断装置7にて単葉シート3に切断される。このとき、切断装置7による切断前の連続用紙2は、切断装置7の下流側に位置する送りローラ8にてけん引される。このときの送りローラ8は、上記ピントラクタ装置5の搬送速度よりわずかに速い周速度で回転されている。
【0029】
上記作用において、ピントラクタ装置5より上流側の連続用紙2に搬送速度に変動や波打ちがあっても、ピントラクタ装置5において直線状に引き伸ばされることで、ピントラクタ装置5の搬送速度と連続用紙2の走行量との誤差をなくすことができ、連続用紙2はこのピントラクタ装置5から切断装置7へ、このピントラクタ装置5の搬送速度による一定の速度で搬送され、このピントラクタ装置5と同期して作動する切断装置7にて、上記送りピン9と送り穴4の遊びによる誤差が生じることなく一定の長さに切断される。そしてこのときの単葉シート3の切断精度は、±0.2mm以上に向上し、製品品質を高めることができた。
【0030】
なお、切断装置7より下流側に設けた送りローラ8は、上記ピントラクタ装置5の搬送速度よりわずかに速い搬送速度となっていて、ピントラクタ装置5より下流で切断前の連続用紙2は、この送りローラにてけん引される。
【0031】
この実施の形態では、切断装置5の下流側にのみ送りローラ8を配置した例を示したが、図3にて2点斜線で示したように、切断装置7の上流側にも上記切断装置7の下流側に設けた送りローラ8と同期回転する他の送りローラ8aを配置してもよく、この場合の切断作動は、送りローラを切断装置7の下流側だけを設けた場合と同じである。また、スリッタ6を用いない場合も同様である。
【0032】
上記実施の形態では、ピントラクタ装置5の下流側のピントラクタ5bの駆動軸10bにクラッチ14を設けた例を示したが、図4にて鎖線で示したように、上流側のピントラクタ5aの駆動軸10aにクラッチ14′を設けてもよく、この場合はクラッチ断状態で、駆動軸10aを送りピン9が上流側へ移動するように上流側の駆動軸10aに取り付けたハンドル15′にて回転する。
【0033】
上記クラッチ14は、ねじを締めつけて固定する機械的な構成のものや、機械的な連結方式のものでもよいし、電気や磁力により作動するようにしたものでもよい。
【0034】
図5は、複数(2枚)の連続用紙2,2を積層丁合しながらシート状に切断装置7にて切断する場合を示すもので、各連続用紙ごとに2連式のピントラクタ装置5,5を用いている。
【符号の説明】
【0035】
1…連続用紙切断装置、2…連続用紙、3…単葉シート、4…送り穴、5…ピントラクタ装置、5a,5b…ピントラクタ、6…スリッタ、7…切断装置、7a…カッタ、8,8a…送りローラ、9…送りピン、10a,10b…駆動軸、11a,11b…プーリ、12…タイミングベルト、13…駆動源、14,14′…クラッチ、15,15′…ハンドル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン送り方式で搬送される連続用紙を切断装置にて所定の長さの単葉シートに切断する連続用紙切断装置において、
切断装置の搬送方向上流側に、搬送方向に同期して駆動する2つのピントラクタを搬送方向にならべてなるピントラクタ装置を配置し、
一方のピントラクタの駆動系を断続可能にすると共に、動力系を断にした状態で手動にて回転可能にし、
搬送を停止した状態で、上記一方のピントラクタの動力系を断とし、このピントラクタを手動にて他のピントラクタに対して連続用紙に張力が作用する方向に回転し、この張力の作用状態で動力系を「続」にするようにした
ことを特徴とする連続用紙切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−20813(P2011−20813A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168480(P2009−168480)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000161057)株式会社ミヤコシ (122)