説明

進入装置及びその使用方法

医療器具を内視鏡に沿って患者の体内の選択された目標とする解剖学的構造に向かって進入させるための装置が提供されている。該進入装置はテザーを備えており、該テザーは、内視鏡のワーキングチャネル内に配置される第一の部分と、内視鏡の外部に配置される第二の部分とを備えている。該進入装置は、医療器具を内視鏡の遠位部分を越えて選択された目標とする解剖学的構造へと進入させる構造とされているガイド器具を備えている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療器具に関し、更に特定すると、医療器具を内視鏡に沿って選択された目標とする解剖学的構造へ送り込むための進入装置及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医師は、低侵襲性処置中に内視鏡を使用して、患者の解剖学的構造を可視化し、種々の状態を診断し、そして器具を治療部位へ送り込む。これらの器具は、典型的には内視鏡のワーキングチャネルを通して送り込まれるが、該ワーキングチャネルは、直径が一般に約2.0mm〜3.5mmの範囲内であり、カテーテル、鉗子、はさみ、ブラシ、スネア、バスケットを含むその他の細長い器具を導入するために使用される。ある種の特別な内視鏡においては、直径が5.0mmの比較的大きなワーキングチャネルが使用でき、該比較的大きなワーキングチャネルは、比較的大きな器具を通すために又は改良された吸引又は減圧の機能を提供するために使用される。しかしながら、幾つかの器具は使用できる内視鏡内を通すにはあまりにも大きすぎる。更に、比較的大きなワーキングチャネルを備えた特別な内視鏡は、剛性が高く且つ外径が大きいことにより高価であると共に挿管するのが難しい。
【0003】
内視鏡のワーキングチャネルに対して大き過ぎる器具は、代替的で侵襲性であることが多い処置、例えば腹腔鏡手術又は観血療法によって導入しなければならない。腹腔鏡外科手術は、患者の腹壁に0.5〜1.5cmの切開部を形成して腹腔鏡及びその他の器具を腹腔及び骨盤腔内へ導入することができるようにする手順を含んでいる。観血療法は、概ね、患者の体に1以上の切開部を形成し、その後、広い範囲におよぶ筋肉の剥離、長期に亘る組織の縮退、神経の麻痺、及び組織の脈管遮断を伴う。腹腔鏡外科手術及び観血療法は、比較的大きな器具の導入に対しては効果的であるけれども、患者に対する合併症及び外傷の虞れを増すと共に回復時間及び入院期間を延ばす。
【0004】
従って、侵襲性処置の使用を必要とさせることなく、内視鏡のワーキングチャネルに対して大きすぎる医療器具を内視鏡を介して導入するための器具及び方法が必要とされている。特に、医療器具を内視鏡に沿って且つ内視鏡の外側で導入する器具及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書には、医療器具を患者の解剖学的構造内へ導入する器具及び方法が開示されており、更に特定すると、医療器具を内視鏡の外側に沿って選択された目標とする解剖学的構造へ進入させる器具及び方法が開示されている。該進入装置は、概ね、器具を内視鏡に沿って進入させるためのテザーを備えている。該進入装置は更に、器具を内視鏡の遠位部分を越えて進入させるガイド器具を備えている。該器具は、テザーに結合され、その後に、内視鏡の遠位端、幾つかの実施形態においてはガイド器具の遠位端へと、好ましくは選択された目標とする解剖学的構造へと進められる。
【0006】
一つの特徴に従って、医療器具を患者の体内の選択された目標とする解剖学的構造へ進入させるための装置が提供されている。一つの実施形態においては、該進入装置は内視鏡と共に使用するようになされている。該内視鏡は、近位部分と、遠位部分と、該近位部分から遠位部分まで延びているワーキングチャネルと、前記遠位部分に設けられており且つ前記ワーキングチャネルと連通している穴と、前記近位部分に設けられており且つ前記ワーキングチャネルと連通しているポートとを備えている。該進入装置は、前記内視鏡の外側を前記近位部分から前記遠位部分の穴まで延び且つ該穴から前記ワーキングチャネルを通って前記ポートに至って該ポートから外方へと延びている。
【0007】
もう一つ別の実施形態においては、該進入装置は、近位部分及び遠位部分を備えている細長いシャフトと、前記遠位部分に設けられており且つその中にテザーを受け入れることができる構造とされている支点と、前記細長いシャフト内に配置されている剛性が可変のケーブルと、前記近位部分の近位側に設けられているアクチュエータとを備えている。該剛性が可変のケーブルは、前記細長いシャフトの近位部分から遠位部分まで延びている螺旋状のばねと、該ばね内を延びているワイヤとを備えている。該ワイヤは、前記遠位部分において前記のばねに操作可能に結合されている。前記アクチュエータは、前記ワイヤに操作可能に結合されている。
【0008】
もう一つ別の特徴に従って、医療器具を患者の体内の選択された目標とする解剖学的構造へと進入させる方法が提供されている。一つの実施形態においては、該方法は、内視鏡を選択された目標とする解剖学的構造へと進入させるステップと、医療器具をテザーに結合するステップと、該テザーを使用して前記医療器具を前記内視鏡に沿って進入させるステップとを含んでいる。前記内視鏡は、近位部分と、遠位部分と、前記近位部分から前記遠位部分まで延びているワーキングチャネルと、前記遠位部分に設けられており且つ前記ワーキングチャネルと連通している穴と、前記近位部分に設けられており且つ前記ワーキングチャネルと連通しているポートとを備えている。最初に、前記テザーが内視鏡の外側を前記近位部分から前記遠位部分まで延びて前記穴に至り、該穴から前記ワーキングチャネルを通って前記ポートに至って該ポートから外方へ延びている。結合された医療器具は、前記テザーを前記ポートから引っ張り出すことによって内視鏡に沿って前記近位部分から遠位部分へ進められる。
【0009】
もう一つの実施形態においては、該方法は、ガイドワイヤを前記ワーキングチャネル内を通して前記穴まで進入させ、その後に、内視鏡の遠位部分を越えて目標とする解剖学的構造へと進入させるステップを含んでいる。ガイド器具がワーキングチャネル内を前記穴まで進められ、その後、内視鏡の遠位部分を越えて目標とする解剖学的構造へと進められる。医療器具は、前記ガイド器具に沿って前記の目標とする解剖学的構造へと進められる。
【0010】
本発明のこの他の装置、方法、特徴、及び利点は、図面及び以下の詳細な説明を精査することにより当業者に明らかとなるであろう。このような付加的な装置、方法、特徴、及び利点の全てが、本明細書に含まれ、発明の範囲に含まれ、特許請求の範囲によって保護されていることを意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
該装置は、図面及び以下の説明を参照することによって更によく理解できる。図面に示されている構成部品は、必ずしも等尺ではなく、本発明の原理を示す際に強調されている。更に、図面において、種々の図面を通して同様の符号は対応する部品を示している。
【0012】
【図1A】図1Aは、進入装置100を示している図である。
【0013】
【図1B】図1Bは、器具120を示している図である。
【0014】
【図2A】図2Aは内視鏡102上に設けられているガイドリング200を図示している図である。
【図2B】図2Bは内視鏡102上に設けられているガイドリング200を図示している図である。
【0015】
【図2C】図2Cは、ガイドリング200の斜視図である。
【0016】
【図2D】図2Dは、図2Cの線のaaに沿って断面されたガイドリング200の断面図である。
【0017】
【図3A】図3Aは、ガイド器具300を図示している図である。
【図3B】図3Bは、ガイド器具300を図示している図である。
【図3C】図3Cは、ガイド器具300を図示している図である。
【0018】
【図3D】図3Dは、テザー及びガイドワイヤ上へのガイド器具300の装填状態を示している図である。
【0019】
【図3E】図3Eは、ガイド器具300の代替的な実施形態を示している図である。
【図3F】図3Fは、ガイド器具300の代替的な実施形態を示している図である。
【0020】
【図3G】図3Gは、目標とする解剖学的構造380内へ進められた状態の細長い部材302を示している図である。
【0021】
【図4A】図4Aは、固定された傾斜部を備えている内視鏡キャップ400を図示している図である。
【図4B】図4Bは、固定された傾斜部を備えている内視鏡キャップ400を図示している図である。
【0022】
【図4C】図4Cは、枢動可能な傾斜部を備えている内視鏡キャップ400を図示している図である。
【図4D】図4Dは、枢動可能な傾斜部を備えている内視鏡キャップ400を図示している図である。
【図4E】図4Eは、枢動可能な傾斜部を備えている内視鏡キャップ400を図示している図である。
【0023】
【図4F】図4Fは、結合棒440を示している図である。
【0024】
【図5A】図5Aは、内視鏡シース500を示している図である。
【0025】
【図5B】図5Bは、キャップ部材530を示している図である。
【図5C】図5Cは、キャップ部材530を示している図である。
【0026】
【図5D】図5Dは、管腔520に結合されている結合部材550を図示している図である。
【0027】
【図6A】図6Aは、進入装置100を使用して大きい柔軟なステントを総胆管内へ送り込む状態を示している図である。
【図6B】図6Bは、進入装置100を使用して大きい柔軟なステントを総胆管内へ送り込む状態を示している図である。
【図6C】図6Cは、進入装置100を使用して大きい柔軟なステントを総胆管内へ送り込む状態を示している図である。
【図6D】図6Dは、進入装置100を使用して大きい柔軟なステントを総胆管内へ送り込む状態を示している図である。
【図6E】図6Eは、進入装置100を使用して大きい柔軟なステントを総胆管内へ送り込む状態を示している図である。
【図6F】図6Fは、進入装置100を使用して大きい柔軟なステントを総胆管内へ送り込む状態を示している図である。
【図6G】図6Gは、進入装置100を使用して大きい柔軟なステントを総胆管内へ送り込む状態を示している図である。
【図6H】図6Hは、進入装置100を使用して大きい柔軟なステントを総胆管内へ送り込む状態を示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[定義]
他の意味として規定されていない限り、本明細書において使用されている全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術における当業者が通常理解している意味と同じ意味を有している。矛盾する場合には、定義を含む本明細書によって支配されるであろう。以下、好ましい方法及び材料を記載するが、ここに記載されているものと類似している又は等価な方法及び材料が本発明の実施又は試験において使用することができる。ここに記載している材料、方法、及び実施例は単に例示的なものであり、限定されることを意図したものではない。
【0029】
本明細書において使用されている、“備えている”、“含んでいる”、“有している”、“ことができる”、“包含している”という用語及びそれらの変形体は、状況に応じて変形され得る伝統的な語句、用語、又は文字であることを意図されており、付加的な作用又は構造の可能性を排除するものではない。本発明はまた、明示的に記載されているか否かに拘わらず、ここに記載されている実施形態又は部材を“含む”、“からなる”、及び“から実質的に構成されている”他の実施形態をも意図している。
【0030】
本明細書において使用されている“生体適合性の”という用語は、それが意図されている生体内の使用環境内で実質的に無害であり且つ患者の生理系によって実質的に拒絶されない材料を指している。生体適合性構造又は材料は、大多数の患者の体内に導入されたときに、不所望に有害な、長期に亘る、又は増大する生物学的反応又は応答を生じさせない。このような反応は、典型的には、外科手術又は生体系内への異物の埋め込みに伴う極端ではない一時的な炎症とは区別される。
【0031】
本明細書において使用されている“遠位”という用語は、医療処置中に患者の解剖学的構造の目標部位に概ね近づく方向を指している。
【0032】
本明細書において使用されている“近位”
という用語は、医療処置中に概ね医師に近づく方向を指している。
【0033】
本明細書において使用されている“狭窄”という用語は、体管腔が隣接の管腔部分より狭くなっていることを指している。
【0034】
図1Aは、テザー104を備えている進入装置100を図示している。該進入装置は内視鏡102と共に使用するようになされている。内視鏡102は、近位部分106と、遠位部分108と、該近位部分から遠位部分まで延びているワーキングチャネル110とを備えている。ワーキングチャネルは遠位部分に設けられている穴112につながっている。テザー104は、内視鏡に沿って該内視鏡の外側を近位部分106から遠位部分108まで延びて、穴112を介してワーキングチャネル110内に入っている。該テザーは、ワーキングチャネル内を延びて近位部分106へと戻り、ポート114から出て行っている。該テザーは第一の端部105と第二の端部107とを備えている。該テザーは、好ましくは第二の端部107に配置されている結合部材116を備えている。該結合部材は、テザー104に取り付けられても良いし又はテザー104と一体化されていても良い。該結合部材は、例えば、にかわ、接着剤、又は縫合材によってテザーに取り付けられている。
【0035】
図1Bは、選択された目標とする解剖学的構造へ送り込まれる器具120を図示している。器具120は、ここに開示されている進入装置によって送り込まれる器具の一般的な描写を意図したものである。器具120は、選択された目標とする解剖学的構造に対して治療又は診断を行うようになされている器具であるか、又は代替的には選択された目標とする解剖学的構造に別の治療又は診断器具を送り込む構造とされている器具とすることができる。器具120は、例えば、経鼻挿管、PEG−JチューブのJ部分、結腸減圧チューブ、胆管ステント、給送カテーテル、オーバーチューブ、導入器シース、又はその他の器具とすることができる。器具120は、近位端124及び遠位端126を備えており且つ結合部材122を備えており、結合部材122は、結合部材116と相補形であり且つ結合部材116と結合する構造とされている。別の方法として、結合部材122は、テザー104に直に取り付けられる構造とされていても良い。以下に更に詳細に説明するように、内視鏡102が選択された目標とする解剖学的構造へと進められて器具120がテザーに結合されると、該器具は、テザーをワーキングチャネル110を通してポート114から引っ張り戻すことによって内視鏡の遠位部分へ進められる。テザーが遠位端126から引っ張るために使用されている間に、器具120をその近位端124から押すことができる。
【0036】
テザー104は、ストラップ、ワイヤ、縫合糸、紐、又は意図されている使用方法に適したテザーとして機能することができる他の何らかの部材とすることができる。該テザーは、捩れることなく曲がる構造とされているのが好ましい。追加の器具が、内視鏡のワーキングチャネル内に導入されるか又はワーキングチャネルが吸引又は減圧を提供するために使用される場合には、テザーは、その内部に最小の空間を占め且つ実質的に処置を妨げないのが好ましい。一つの実施形態においては、テザーは、直径が0.035ミリメートルのワイヤとすることができ且つ例えば直径が4.8ミリメートルのワーキングチャネルを有している内視鏡と共に使用することができる。別の実施形態においては、テザーは、内視鏡のワーキングチャネルの内面と合致する構造とされているナイロンストラップのような可撓性のストラップとされている。テザーは金属合金及び高分子材料を含む種々の生体適合性材料によって作ることができる。適切な高分子材料としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、及びポリプロピレンがある。適切な金属合金としては、例えば、ニッケルチタン合金がある。テザーには1以上の材料をコーティングすることができる。テザーの少なくとも一部分は、患者の解剖学的構造内へのテザーの進入を容易にすることができる親水性材料又はその他の潤滑性材料でコーティングされるのが好ましい。テザーは、例えば、SLIP―COAT(登録商標)生体ポリマー(ニューヨーク州ヘンリエッタにあるSTS Biopolymer, Inc.,)をコーティングされる。
【0037】
結合部材116,122は、2つの医療器具を一時的に給合させる構造とされた何らかの適当な構造を備えている。例えば、該結合部材は、図1A〜1Bに図示されている閉ループ構造を備えていても良い。該結合部材としては、解くか切ることができる縫合糸、一時的な若しくは溶解可能なボンド若しくは接着剤、磁石、又はこれらの組み合わせがある。該結合部材は、クリンプされるか、接着されるか、さもなければ十分な大きさの引っ張り力、(例えば、3ポンド(1.36キログラム))をかけることによって滑り落ちるか又は外れる構造とされており且つそれによってその後胃腸系内を安全に通過されるか又は吸収される生体適合性のボールを備えている。任意であるが、器具120は、例えば切断可能な又は溶解可能な縫合糸によってテザーに直に結合される。
【0038】
図2A〜2Bには、内視鏡102の外側面に沿って設けられているガイドリング200が図示されている。テザーは、内視鏡に沿って移動して該内視鏡に堅密に追従するときにガイドリング内を通されるのが好ましい。テザーが該リング内に維持されることによって、テザー又は器具120によって生じる粘膜の外傷が低減され、加えて、テザー又は器具120が内視鏡の視覚機器(例えば、カメラ、CCD、又は光ファイバ部材)と干渉するのが防止される。器具120が内視鏡の遠位部分へと送り込まれるときに、図2Bに示されているように、ガイドリング内の定位置内へ滑り込む構造とされている。器具120は、次いで、内視鏡の遠位部分と協働して曲がり且つ動く。該ガイドリングは、器具120がその中を完全に通り抜けるのを許容する構造とされている。図2Cにはガイドリング200が示されており、該ガイドリングは、内視鏡用の管腔202と器具120用の管腔204とを備えている。該ガイドリングは、概ね、環状又は環状に近い形状とされており且つ図2Dの頂部断面図に図示されているもののような丸味が付けられた端縁を有している外傷性が低い外形を有しているのが好ましい。該ガイドリングは、生体適合性の接着剤によって取り付けられるか、内視鏡上にスナップ式に嵌められるか、又はこれらの組合せによって内視鏡と一体化されている。
【0039】
図3A〜3Gには、器具を内視鏡の遠位部分を越えて進入させるために使用できるガイド器具300が示されている。ガイド器具300は、可撓性又は半可撓性の細長い部材302と、支点304と、剛性が可変のケーブル306とを備えている。細長い部材302は、遠位部分310と近位部分312とを備えている。該細長い部材は、使用される内視鏡のワーキングチャネルの大きさ及び行なわれる処置に応じたある範囲の長さ及び直径を有している。細長い部材302の長さは、概ね約100cm〜約300cmの範囲内である。断面の直径は、概ね約1mm〜約3mmであり且つ内視鏡のワーキングチャネル内を進入できる構造とされているのが好ましい。当業者は、ここに提供されている全ての寸法が単なる例として意図されたものであり、種々の寸法のガイド器具が特定の用途に対して代用できることがわかるであろう。
【0040】
細長い部材302は、剛性が可変のケーブル306を患者の解剖学的構造に直に曝されないように遮蔽している生体適合性の材料を含んでいる。該材料は、例えば、発泡ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、又はポリウレタンとすることができる。一つの例示的な実施形態においては、細長い部材302は、熱収縮性ポリテトラフルオロエチレンチューブのような熱収縮チューブを剛性が可変のケーブル306を覆うように配置し、次いで、該チューブを定位置で熱収縮させることによって作られる。該細長い部材は、解剖学的構造の蛇行した領域を横切るために、十分な剛性、可撓性、及び圧縮強度の特性を、部材に付与する1以上の材料を含んでいる。このような材料としては、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、又はこれらの組み合わせがある。しかしながら、当業者は、該細長い部材は所望の特性を提供するために当該技術において知られている他の生体適合性材料によって作ることができることがわかるであろう。
【0041】
支点304は、細長い部材302の遠位部分310に取り付けられるか又は該遠位部分と一体に形成されている。該支点は、テザー104を受け入れ且つ該テザーをその中を又はその周囲を進入させる支点を提供する構造とされている何らかの適切な構造である。支点304は、例えば、単一ループ構造(図3A)、双ループ構造(図3B)、又は管腔305がその中を貫通して伸長している筒状構造(図3C)とすることができる。該支点の直径dは約1mm〜約3mmの範囲内であるのが好ましい。幾つかの実施形態においては、該支点は、ワイヤ、縫合糸、又は紐によって作られている。他の実施形態においては、該支点はより剛性の高い材料によって作られる。しかしながら、一般的には、支点304は、意図されている用途に適する何らかの材料によって構成される。該支点は、例えば、ナイロンのような高分子材料及び/又はニッケル−チタン合金のような金属材料を含んでいる。
【0042】
該ガイド器具の一部に1以上の材料をコーティングすることができる。細長い部材302の少なくとも一部分は、親水性又はその他の潤滑性材料をコーティングされているのが好ましい。親水性コーティング又はその他の潤滑性のコーティングは、器具が患者の解剖学的構造又は導入器器具内を進入するのを容易にするものとして知られている。幾つかの実施形態においては、支点304は、テザーがその中をスムーズに進入できるようにする材料によって作られ且つ/又はコーティングされている。好ましい材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ナイロン、及びポリオキシメチレンがある。
【0043】
剛性が可変のケーブル306が、細長い部材302内に配置されており、該ケーブルは、近位部分312から支点304の近くの遠位部分310まで延びているらせん状のばね342を備えている。該ばねは、隣接している巻き間のピッチが小さい。ステンレス鋼製ワイヤなどのワイヤ344がばね342の中心の穴を貫通して延びており、該ワイヤは該ばねの遠位端に固定されている。別の場合には、該ワイヤとばねとの両方が遠位端に固定される。別の方法として、ワイヤとばねとの両方が遠位先端に固定されていても良い。ワイヤ344は、近位部分312の近位側に配置されているハンドアセンブリ313に操作可能に結合されている。ハンドアセンブリ313はアクチュエータ314を備えており、アクチュエータ314はばね342を圧縮するために又は展開するために使用することができる。例えば、幾つかの実施形態においては、該アクアチェータを近位方向に後退させることによってワイヤ344が引かれる。ワイヤをこのように後退させることによって、ばね342内の巻き間の距離が小さくでき、その結果、ばねの可撓性が低くなる。剛性が可変のケーブルの付加的な例が米国特許第4,215,703号及び第3,854,473号に開示されている。これらの米国特許の開示内容は、これらに言及することにより、本明細書に参考として組み入れられている。
【0044】
ガイド器具300は、テザー104の第一の端部105を支点304に通すことによって内視鏡の近位部分においてテザー104上に装着される。該ガイド器具はまたガイドワイヤ350の近位端にも装着され、ガイドワイヤ350は、ポート114を出ており、目標とする解剖学的構造にカニューレを挿入するために使用されている。該テザーとガイドワイヤとは、例えば、図3Dに図示されている双ループからなる支点304に通される。次いで、細長い部材302がポート114を介してワーキングチャネル110内へ進められる。その後に、該細長い部材はワーキングチャネル内を進められ、選択された目標とする解剖学的構造に向かって穴112から遠位部分108を越えて進められる。幾つかの実施形態においては、内視鏡起子装置が使用されて、該細長い部材の選択された目標とする目標領域内への進入が補助される。該細長い部材が内視鏡の遠位部分を越えて進入するとき、テザーは、支点の周りでループ状になり且つ目標とする解剖学的構造内へと進められるのが好ましい。
【0045】
代替的な実施形態においては、細長い部材302は、支点304として機能する穴318を備えている(図3E〜3F)。穴318は、遠位端310に配置されており且つ管腔316と連通しており、管腔316は穴320まで近位方向に延びている。ガイド器具は、“ショートワイヤ技術”を使用して内視鏡の近位部分においてテザー104上に装填される。特に、テザーの第一の端部105は、穴318内を管腔316へと通され、次いで穴320に達して該穴320を通される。その後に、細長い部材302がワーキングチャネル110の中を進められる。該細長い部材が内視鏡の遠位部分を越えて進入するとき、テザーは該細長い部材に沿って引っ張られるのが好ましく、このときテザーは穴318からループ状に戻される。同じ方法で、ガイド器具がガイドワイヤ350上に装填される。しかしながら、当業者は、該ガイド器具は、該器具がショートワイヤ技術かロングワイヤ技術かのどちらかを使用して装填できるように穴及び管腔によって形成されても良いことがわかるであろう。これらの技術の両方が、米国特許出願公開第2007/0167923号に開示されている。該米国特許出願公開の開示内容は、これに言及することによってその全体が本明細書に参考として組み入れられている。
【0046】
細長い部材302の遠位部分310が目標とする解剖学的構造380に到達すると、剛性が可変のケーブル306が使用されて該細長い部材が補強され且つ定位置に係留される(図3G)。次いで、テザーがワーキングチャネル110を介してポート114から引っ張り戻され、その結果、該テザーに結合されている器具120が目標とする解剖学的構造内へと進められる。器具120は、その遠位端126をテザーによって引っ張られている最中にその近位端124を押されるのが好ましい。器具の一端を押し且つ他端を引っ張ることによって、導入経路の周りの組織が受ける外傷の発生が少なくされると共にスムーズな進入が容易になる。幾つかの実施形態においては、器具120は、器具に効率の良い押し込みのための十分な剛性を付与するために、強化又は補強部材を備えている。
【0047】
目標とする解剖学的構造内への内視鏡の導入及びガイド器具の伸長中に、テザーは必要に応じて保持固定される。テザーは、内視鏡及びガイド器具が目標とする解剖学的構造へと進められる間にその両端における制御が維持できるように十分に長いのが好ましい。別の言い方をすると、テザーの長さは内視鏡の長さの2倍より長いのが好ましい。ガイド器具を使用している実施形態においては、テザーは、内視鏡の長さと穴112から目標とする解剖学的構造まで延びている細長い部材302の部分の長さとの和の2倍より長いのが好ましい。ポート114から出て行っているテザーの部分は、例えば、係止具(例えば、Fusion(登録商標)ガイドワイヤ係止具;ノースカロライナ州ウイストン−セーラムにあるCook Endoscopy Inc .,)によって、すなわちテザーを保持することによって、ポートに固定保持することができる。同様に、テザーの他端、特に内視鏡に沿って近位部分106まで外側を延びているテザーの部分は、係止機構又はこれに類似の器具によって、すなわちテザーを保持することによって、固定保持することができる。細長い部材302又は器具120が目標とする解剖学的構造内へ進められると、テザーは必要に応じて係止を解かれる。
【0048】
任意であるが、傾斜部を備えている内視鏡キャップが該進入装置と共に使用されて器具120の給送を補助することができる。器具120が内視鏡102の遠位部分に達すると、該キャップが使用されて、器具が目標とする解剖学的構造、例えば膵管内に向かって偏向される。図4A〜4Bには、十二指腸用として作られた内視鏡キャップ400が図示されている。該キャップは、近位端404と遠位端406とを有している本体402を備えている。近位端404は、内視鏡の遠位部分を受け入れる構造とされている穴403を備えている。キャップ400は更に傾斜部405を備えており、傾斜部405は、医療器具を目標とする解剖学的構造に向けて偏向させるために使用されている。キャップ400は更に側方穴407を備えており、側方穴407は、内視鏡の視覚機器(例えば、カメラ、CCD、又は光ファイバ部材)とワーキングチャネルとに適合する構造とされている。
【0049】
本体402及び傾斜部405は剛性材料によって作られている。幾つかの実施形態においては、本体及び傾斜部の全て又は一部は概ね透明である。例えば、本体は透明なポリカーボネートポリマによって作られる。別の方法として、該本体は、別の透明か半透明か又は不透明な高分子材料、例えばポリウレタン、アクリル樹脂、又はナイロンによって作ることができる。本体402は、その外径(該傾斜部を除く)がキャップ400が使用されている内視鏡の外径とほぼ同じであるような寸法とされている。例えば、本体402は、これらの外径を有している内視鏡と共に使用するために約8.5mm〜約12mmの外径を有している。当業者は、本体402は、直径がこれより大きいか又は小さい内視鏡と共に使用するために適当な寸法とすることができ且つ類似の形状の内視鏡と共に使用できる構造とされている断面を有していることがわかるであろう。
【0050】
幾つかの実施形態においては、キャップは、該キャップを内視鏡に固定する構造とされている係合部分410を備えている。該係合部分は、キャップの近位端404と一体化されているか又は近位端404に取り付けられている。本体402から近位方向に延びているのが好ましい該係合部分は、摩擦内径面を提供する可撓性材料によって作られている。例えば、該係合部分は、本体402に成形される透明なポリウレタンによって作ることができる。他の実施形態においては、該係合部分は、キャップ400を内視鏡に装着し且つ摩擦によって(しかしながら、取り外し可能な形態で)取り付ける機能を付与する例えばシリコーン又は別の軟質ポリマーによって作られる。
【0051】
代替的な実施形態においては、係合部分を備えているキャップ全体が剛性材料によって作られている。該キャップは、キャップを内視鏡に取り付ける構造とされている何らかの適当な構造又は材料を含んでいる。例えば、該キャップは、接着剤、磁石、ねじが切られた面、戻り止め構造、又は当該技術において公知の他の構造及び材料を含んでいる。別の代替的な実施例においては、内視鏡は、その遠位端の近くにキャップと係合する構造、例えば、相補形のねじ面、連結タブ/長穴、又はキャップを内視鏡に取り付ける構造とされている別の構造を備えている。このような係合部分の例示的な例が米国特許出願公開第2009/0105539号に見出すことができる。該米国特許出願公開の開示内容は、これに言及することにより、その開示内容全体が本明細書に参考として組み入れられている。
【0052】
図4C〜4Eは、傾斜部420が枢動可能に取り付けられているキャップ400の別の実施形態が示されている。該傾斜部は、横断通路422及び424を備えている。任意であるが、対応する通路の各々は金属スリーブ423,425を備えている。傾斜部420は、傾斜部回転支持部426によってキャップに枢動可能に取り付けられており、その一部が横断通路424の中に部分的に配置されている。該キャップは更に、内視鏡の外面から傾斜部420までのスムーズな移行を付与する構造とされている固定された傾斜部428を備えている。
【0053】
図4D〜4Eには、内視鏡102の遠位端上に設けられている図4Cのキャップが図示されている。該内視鏡は、起子430を備えており、起子430は、結合棒440によって傾斜部420に取り外し可能な形態で結合されている。起子430は、横断通路432,434,436を備えている。任意であるが、各通路は金属スリーブ433,435,437を備えている。該起子は、起子回転支持部438によって内視鏡に枢動可能に取り付けられており、起子回転支持部438の一部は横断通路434内に配置されている。起子ワイヤ439は、一端が起子430に結合されており且つ他端が内視鏡の近位部分に配置されている制御装置に操作可能に結合されている。該制御装置の操作によって、起子ワイヤが内視鏡に対して動かされる。起子ワイヤが内視鏡の近位部分に向かって後退されると、起子430は、起子回転支持部438を中心に動かされる。起子は、ワーキングチャネル110を介して送り込まれた器具を所望の方向へ偏向させるために使用される。例えば、起子は、ガイドワイヤ350及びガイド器具300を患者の胆管系内へと偏向させるために使用される。これと類似の内視鏡の更に詳細な説明は、米国特許出願公開第2007/0208219号に見出すことができる。該米国特許出願の開示内容は、これに言及することによって、その全体が本明細書に参考として組み込まれている。
【0054】
結合棒440は、2つの細長い部材442と2つの取り付け部材444とを備えている(図4F)。該結合棒は、取り付け部材を横断通路422,432内に挿入することによって起子430及び傾斜部420に取り付けられている。取り付け部材444は、細長い部材442に取り付けられるか又は該細長い部材と一体化されている筒形状の構造である。該取り付け部材は、それらの対応する中心軸線の周りに軸線動作によって係合することができるのが好ましい。例えば、該取り付け部材は、外側部分と内側部分とを備えており、該外側部分と内側部分とは軸受によって隔離されており、該軸受けは、外側部分が取り付け部材の中心軸線を中心として回転できるようにしている。該取り付け部材は、起子430と傾斜部420とを係合させるのに必要な何らかの適当な構造部材を備えている。例えば、取り付け部材444と横断通路422,432とは、相補形のねじ面を備えている。
【0055】
起子430と傾斜部420とが結合棒440によって取り付けられている場合には、起子430が傾斜部420を起動させる。図4Dは、第一の形態にある起子430と傾斜部420とを示しており、該第一の形態においては、起子ワイヤ439は内視鏡の近位部分に向かって後退されていない。図4Eは、第二の形態にある起子430と傾斜部420とを示しており、該第二の形態においては、起子ワイヤは内視鏡の近位部分に向かって後退されている。器具が内視鏡に沿って進められると、傾斜部420は、前記の第一の形態から第二の形態まで操作されて、器具を選択された目標とする解剖学的構造に向かって偏向させる。当業者は、幾つかの場合には、傾斜部420は、第一の形態から第二の形態まで完全に操作される必要はなく、むしろ特定の処置のために必要とされる形態へと操作されることがわかるであろう。
【0056】
任意であるが、内視鏡シースが進入装置と一緒に使用されて内視鏡に沿った器具の給送を補助する。図5Aは、近位部分502と遠位部分504とを備えているシース500を示している。該シースは、内視鏡のための第一の管腔510と、内視鏡に沿って給送される器具のための第二の管腔520とを備えている。管腔520は、近位部分502から遠位部分504まで延びており且つ遠位側に配置されている穴522と、近位側に配置されている穴524とを備えている。図示されているように、内視鏡102が、管腔510内に配置されると、シースは、内視鏡の近位部分106を越えてその遠位部分108まで伸長する。該シースは、使用されている内視鏡のサイズに応じたある範囲の幅及び長さを有している。一般的には、シースの長さは約100cm〜約200cmの範囲内にあり、該シースの壁の厚みは約0.1mm〜約8mmである。一つの実施形態においては、シースは発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)によって作られている。
【0057】
任意であるが、該シースはキャップ部材530を備えており、該キャップ部材530は、端部から見た内視鏡として示されている図5Aにおいて示すように、内視鏡102の遠位端に取り付けられている。該キャップ部材は、近位端532と遠位端534とを備えている管状構造である。近位端532はシースの遠位端と係合する構造とされている。別の方法として、該キャップはシースの遠位端に固定して取り付けられていても良い。遠位端534は穴536,538を備えており、これらの穴は、各々、穴112及び内視鏡の視覚機器と整合する構造とされている。
【0058】
キャップ部材530は更に、穴522において管腔520と係合する構造とされている結合部材540を備えている(図5C)。結合部材540は、穴522の近くで管腔520の内側面と摩擦係合する構造とされている。該結合部材は、近位端542と、遠位端544と、近位端542から遠位端544まで貫通して延びている管腔546とを備えている。器具120は、内視鏡に沿ってシースの管腔520内を進められ、管腔546内に入り、その後、患者の解剖学的構造内に向かって出て行くのが好ましい。
【0059】
任意であるが、該シースは別の結合部材550を備えており、この結合部材550は穴524において管腔520に結合されているか結合されるような構造とされている(図5D)。結合部材550は管腔552を備えており、器具は、管腔552内に挿入され、その後に、管腔520内を内視鏡の遠位部分に向かって進められる。結合部材550は、シースの近位端に取り付けることができるか又は該近位端と一体化することができる。結合部材550は、内視鏡に取り外し可能な形態で取り付けられる構造とされているのが好ましい。例えば、該結合部材は、内視鏡及び/又はシースの近位部分に摩擦係合する構造とされている。
【0060】
図6A〜6Hは、医療器具が内視鏡に沿って選択された目標とする解剖学的構造へと導入される方法を例示している。一つの例示的な実施形態においては、該装置は、内視鏡的逆行性胆道膵管撮影法(ERCP)において使用することができる。ERCPは十二指腸内視鏡を患者の口の中、及び食道、胃、十二指腸内を介して、胆樹及び膵臓の導管が十二指腸内へと開口している領域内に到達するまで挿入するステップを含んでいる。内視鏡のワーキングチャネルを介して送り込まれた器具は、次いで、導管系へアクセスするためにファータ乳頭を横切る。この位置で、これらの器具は診断及び治療処置を行なうために使用することができる。このような器具の例としては、ガイドワイヤ、バスケット、スネア、ステント、エクスラクションバルーン、導入器ブラシ、カテ−テル、及び通常は直径が約0.8mm〜4mmの子内視鏡がある。
【0061】
一つのERCP処置は、狭窄によって流体の排出が遮られている胆臓又は膵管の領域内へ柔軟な胆管ステントを送り込むことを含んでいる。この閉塞は胆管又は膵管内の腫瘍によって惹き起される。典型的には、症状が患者の体内に現れるまで、腫瘍は進行段階にあり且つ手術不能であると考えられる。その結果、腫瘍の管理は、通常は腫瘍を抑止することに焦点が絞られる。抑止のためのバイパス外科処置の代替例として、ステントがERCPによって送り込まれ且つ閉塞された領域内に位置決めされ、流体が該閉塞された領域を通り越して流れる経路が維持される。しかしながら、柔軟な胆管ステントの最大直径は、概ね内視鏡のワーキングチャネルの直径に依存する。その結果、幾つかの例においては、多数のステントを狭窄部内に配置して十分な排出を可能にしなければならない。ここに開示されている内視鏡キャップを使用すると、直径が内視鏡のワーキングチャネルよりも大きい可塑性の胆管ステントを胆管又は膵管へ送り込むことができる。これらの比較的大きなチューブは、導管の更に効率の良い排出を補助し且つそれらの比較的小さな対抗品と比較して詰まりを受け難い。
【0062】
図6A〜6Hは、大きな柔軟な胆管ステント610を総胆管内へ送り込む方法を図示している。この方法は、内視鏡102及びテザー104が図1Aに示されている定位置にある状態で開始される。次いで、内視鏡が患者の体内へ進められ且つ十二指腸602内に位置決めされて、総胆管606及び膵管への穴の位置にあるオッディ括約筋及びファータ乳頭604が見えるようにされる。次いで、ガイドワイヤ350が穴112からファータ膨大部を通って胆臓系内へと伸長される(図6A)。ガイドワイヤは、狭窄部608を通過して進められるのが好ましい。導管内へのカニューレの挿入を補助するために、拡張管カテーテルが必要に応じて使用される。拡張管カテーテルの補助によって総胆管にカニューレを挿入する方法の更に詳細な説明が米国特許出願公開第2005/0059890号に開示されている。該米国特許出願公開の開示内容は、これに言及することによってその全体が本明細書に参考として組み入れられている。ガイド器具300は、内視鏡の近位部分においてガイドワイヤ及びテザー104の外周に装填される。該ガイド器具の細長い部材302は、内視鏡のワーキングチャネル内を進められ、その後に、穴112から導管系内へと伸長され、その間ずっと支点304を介してガイドワイヤの外周に沿って進入する(図6B)。細長い部材302が導管系内へ進入するにつれて、テザーもまた支点304との接触を介して進められる。支点304は、狭窄部608を通過して進められ、胆管ステントは、目標とする解剖学的構造内へ進められるときに定位置へと引き込まれるのが好ましい。ひとたび細長い部材302が所望の位置まで進められると、アクチュエータ314を操作することによって剛性が可変のケーブル406が係合され、その結果、細長い部材302の補強がなされる(図3A及び6B)。この補強によって、該細長い部材が定位置に係留され且つ器具120の給送中の巻きつぶれを防止することができる剛性が付与される。
【0063】
次に、胆管ステントが内視鏡の近位部分においてテザーに結合される。該ステントは、テザーに結合する構造とされている給送カテーテルを介して装填され且つ送り込まれるのが好ましい。器具120としての該給送カテーテルは、テザーに結合するための結合部材122を備えており且つカテーテルがその近位端124から押されるように補強部材又は部分的に堅牢な部分を備えているのが好ましい。ステント又は給送カテーテルを押し込むことによって、導入中にテザーにかかる引っ張り力が減じられ且つ粘膜の外傷の発生が減じられる。器具120がひとたび結合されると、器具120はポート114においてテザーを近位方向へ引き出すことによって内視鏡に沿って進められる。
【0064】
該給送カテーテルは、内視鏡の遠位部分に到達すると、テザー104によって引っ張られながら近位端から押し続けることによって、ガイド器具300の細長い部材302に沿って進められる。該給送カテーテルは、遠位部分310従って目標とする解剖学的構造へと進められるのが好ましい(図6C)。給送カテーテルがひとたび目標部位(すなわち、狭窄部)に到達すると、次いで、該給送カテーテルはテザーから分離される。例えば、給送カテーテルは近位端に保持され、一方、テザーは、結合部材116を結合部材122から分離させるのに十分な力でポート114において引き戻され、その結果、該給送カテーテルがテザーから分離される。次いで、テザーが胆管系から引き出されて内視鏡のワーキングチャネル110内へ戻される。ガイド部材300とこれに続くガイドワイヤ350とが、胆管系から進められて内視鏡内へ戻される。次いで、胆管ステント610が、内側の押込カテーテルを使用して該ステントを給送カテーテルから押し出すことによって、狭窄部608の部位へと送り込まれる(図6D)。該給送カテーテルは、次いで、患者の解剖学的構造から取り出される。当業者は、アクセスステップ、給送ステップ、分離ステップ、及び器具を目標とする解剖学的構造から取り出すステップは、必要に応じて変更することができることが分かるであろう。例えば、ガイドワイヤを使用して追加の処置が行われる場合には、該ガイドワイヤを胆管からほんの部分的に後退させることが好ましい。
【0065】
上記のERCP処置の代替的な実施形態においては、内視鏡キャップ400及び/又は内視鏡のシース500が該進入装置と共に使用されて器具120を狭窄部608へ送り込むようにされている。図6Eは、内視鏡102の遠位端上に設けられている内視鏡キャップ400を示している。傾斜部405は、給送カテーテル(器具120)が内視鏡の遠位部分へと送り込まれるときに該給送カテーテルの角度方向の動きを補助する。図6Fは、内視鏡シース500を備えている内視鏡を示している。該給送カテーテルは、シースの管腔520を通して内視鏡の遠位部分へ進められる。図6Gは、組み合わせて使用されている内視鏡キャップ400とシース500とを示している。この実施形態においては、キャップは管腔520に結合される結合部材540を備えている。該キャップはまた管腔546(図示せず)をも備えており、管腔546は、傾斜部405と整合されていて、ひとたび器具120がシース管腔及び管腔546を出て行くと、該器具が傾斜部405と干渉して、その結果偏向されるようになされている。
【0066】
以上、本発明の種々の実施形態を説明したが、本発明の範囲内で更に多くの実施形態及び具体例が可能であることは当業者に明らかであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその等価物が参考にされることを除いて限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0067】
100 進入装置、 102 内視鏡、
104 テザー、 105 テザーの第一の端部、
106 近位部分、 107 テザーの第二の端部、
108 遠位部分、 110 ワーキングチャネル、
112 穴、 114 ポート、
116 結合部材、 120 器具、
122 結合部材、 124 器具の近位端、
126 器具の遠位端、 200 ガイドリング、
202 内視鏡用の管腔、 204 器具用の管腔、
300 ガイド器具、 302 細長い部材、
304 支点、 305 管腔、
306 剛性が可変のケーブル、
310 細長い部材の遠位部分、 312 細長い部材の近位部分、
313 ハンドアセンブリ、 314 アクチュエータ、
316 管腔、 318 穴、
320 穴、 342 らせん状のばね、
344 ワイヤ、 350 ガイドワイヤ、
380 解剖学的構造、 400 内視鏡キャップ、
402 キャップの本体、 403 穴、
404 キャップの近位端、 405 傾斜部、
406 キャップの遠位端、 407 側方穴、
410 係合部分、 420 傾斜部、
422,424 横断通路、 423,425 金属スリーブ、
426 傾斜部回転支持部、 428 固定された傾斜部、
430 起子、 432,434,436 横断通路、
433,435,437 金属スリーブ、 438 起子回転支持部、
439 起子ワイヤ、 440 結合棒、
442 細長い部材、 444 取り付け部材、
500 シース、 502 シースの近位部分、
504 シースの遠位部分、 510 内視鏡のための第一の管腔、
520 器具のための第二の管腔、 522 穴、
524 穴、 530 キャップ部材、
532 キャップ部材の近位端、 534 キャップ部材の遠位端、
536,538 穴、 540 結合部材、
542 結合部材の近位端、 544 結合部材の遠位端、
546 結合部材の管腔、 550 結合部材、
552 結合部材の管腔、 602 十二指腸、
604 ファータ乳頭、 606 総胆管、
608 狭窄部、 610 胆管ステント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位部分と、遠位部分と、前記近位部分から前記遠位部分まで延びているワーキングチャネルと、前記遠位部分に設けられており且つ前記ワーキングチャネルと連通している穴と、前記近位部分に設けられており且つ前記ワーキングチャネルと連通しているポートと、を備えている内視鏡と、
前記内視鏡の外側において前記近位部分から前記遠位部分に延び、さらに該穴から前記ワーキングチャネル内を通って前記近位部分にまで延びているテザーと、
を備えていることを特徴とする進入装置。
【請求項2】
前記テザーが医療器具と結合される構造とされている結合部材を備えており、該結合部材が、閉ループ構造、取り外し可能若しくは切断可能な縫合糸、一時的な若しくは溶解可能なボンド、接着剤、磁石、又はこれらの組合せからなる、ことを特徴とする請求項1に記載の進入装置。
【請求項3】
前記テザーが親水性若しくは潤滑性のコーティングを有している、ことを特徴とする請求項1に記載の進入装置。
【請求項4】
前記テザーが、ワイヤ、ストラップ、紐、又は縫合糸からなる群から選択されたものである、ことを特徴とする請求項1に記載の進入装置。
【請求項5】
前記内視鏡の外面上に設けられ且つ前記テザーを前記内視鏡に沿って前記近位部分から前記遠位部分までガイドする構造とされた少なくとも1つのガイドリングを更に備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の進入装置。
【請求項6】
ガイド器具を更に備えており、該ガイド装置が、
シャフトの近位部分とシャフトの遠位部分とを備えている細長いシャフトと、
前記シャフトの遠位部分に設けられ且つ前記テザーを受け入れる構造とされた支点とを備えており、
前記細長いシャフトが剛性が可変のケーブルを備えており、該剛性が可変のケーブルが、
前記シャフトの近位部分から前記シャフトと遠位部分まで延びている螺旋状のばねと、
該ばねを貫通して延びており且つ前記シャフトの遠位部分において前記ばねに操作可能に結合されているワイヤと、
前記ワイヤに操作可能に結合されており且つ前記シャフトの近位部分の近位側に配置されているアクチュエータであって、該アクチュエータを起動させることによって前記ばねが圧縮されるようになされた前記アクチュエータと、を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の進入装置。
【請求項7】
前記支点が、単一ループ状にされた構造と、双ループ状にされた構造と、円筒形の構造とのうちの1つからなる、ことを特徴とする請求項6に記載の進入装置。
【請求項8】
前記細長いシャフトが親水性の又は潤滑性のコーティングを備えている、ことを特徴とする請求項6に記載の進入装置。
【請求項9】
近位部分と、遠位部分と、前記近位部分から前記遠位部分まで延びているワーキングチャネルと、前記遠位部分に設けられており且つ前記ワーキングチャネルと連通している穴と、前記近位部分に設けられており且つ前記ワーキングチャネルと連通しているポートと、を備えている内視鏡と共に使用する構造とされている進入装置であって、
前記内視鏡の外側において前記近位部分から前記遠位部分まで延び、さらに該穴から前記ワーキングチャネル内を通って前記近位部分にまで延びているテザーと、
ガイド器具であって、
シャフトの近位部分とシャフトの遠位部分とを備えている細長いシャフトと、
前記シャフトの遠位部分に設けられており且つ前記テザーを受け入れる構造とされている支点と、
前記細長いシャフト内に配置されている剛性が可変のケーブルであって、前記シャフトの近位部分から前記シャフトの遠位部分まで延びている螺旋状のばねと、該ばね内を貫通して延びており且つ前記シャフトの遠位部分において前記ばねに操作可能に結合されているワイヤとを備えている剛性が可変のケーブルと、
前記ワイヤに操作可能に結合されており且つ前記シャフトの近位部分の近位側に配置されているアクチュエータと、
を有しているガイド器具と、
を備えていることを特徴とする進入装置。
【請求項10】
前記支点が、単一ループ状にされた構造と、双ループ状にされた構造と、円筒形の構造とのうちの1つからなる、ことを特徴とする請求項9に記載の進入装置。
【請求項11】
前記細長いシャフトが前記シャフトの遠位部分に第一の穴を備えており、該第一の穴は、該第一の穴の近位側で且つ前記シャフトの遠位部分に配置されている第二の穴と連通している、ことを特徴とする請求項9に記載の進入装置。
【請求項12】
前記細長いシャフトの少なくとも一部分が親水性の又は潤滑性の材料を含んでいる、ことを特徴とする請求項9に記載の進入装置。
【請求項13】
前記支点の直径が約1mm〜約3mmの範囲内である、ことを特徴とする請求項9に記載の進入装置。
【請求項14】
前記細長いシャフトが親水性又は潤滑性のコーティングを備えている、ことを特徴とする請求項9に記載の進入装置。
【請求項15】
前記テザーが、ワイヤ、ストラップ、紐、又は縫合糸からなる群から選択されたものである、ことを特徴とする請求項9に記載の進入装置。
【請求項16】
前記テザーが親水性又は潤滑性のコーティングを備えている、ことを特徴とする請求項9に記載の進入装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【公表番号】特表2013−514149(P2013−514149A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544741(P2012−544741)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060442
【国際公開番号】WO2011/075510
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】