説明

遅延作用触媒及び大環状オリゴマーの重合方法

エステル結合を含む環状オリゴマーを、ジアルキル錫ジカルボキシレート触媒の存在下で重合させる。この触媒は潜伏期間を与え、引き続く急速な重合によって高分子量ポリマーを生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件は、2004年6月18日に出願された米国特許仮出願第60/581,186号に優先権を主張する。
【0002】
本発明は、環状オリゴマーエステルからポリエステル及びポリエステルコポリマーを生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エステル結合を含む環状オリゴマーの開環重合は、高分子量ポリエステルを製造する便利な方法である。ポリエステルは熱可塑性であり、高分子量ポリマーとして溶融加工することができるが、環状オリゴマーの重合は、成型加工又はその他の溶融加工の操作を重合と同時に実施することの可能性を提供する。オリゴマーは、溶融して容易にポンプ輸送することができ、そして/又は種々の強化材に含浸させるために使用することができる、比較的低粘度の流体を生成する。従って、環状オリゴマーを使用することは、高分子量熱可塑性ポリマーが、多くの熱硬化性ポリマーシステムと丁度同じように加工できるような手段を提供する。
【0004】
開環重合は、商業的に妥当なサイクル時間を得るため、触媒の存在下で実施する。種々の錫、チタン及びその他の金属化合物が使用されてきた。速い重合速度を与える活性触媒は、短い誘導期を有する傾向がある。このことはある種の環境下では不利な可能性がある。例えば、流延(キャスティング)作業又は大きな部材の成型を含む作業においては、重合及びそれに伴う粘度上昇が始まる前に、潜伏期間を有することがしばしば助けになる。配合された環状オリゴマー/触媒混合物の単純な製造でさえも、環状オリゴマーをその融点より高い温度に加熱することが必要となるが、その温度では、一旦、触媒とオリゴマーが結合されれば重合が生じる可能性がある。触媒の潜伏性は、その配合された混合物にかなり時期尚早の重合があまり起こらないようにする、妥当な時間の領域を創り出すことになろう。非常に効率の悪い触媒は、実際にそのような領域を提供するが、それらはまた、分子量を高めるために長い重合時間を必要とする傾向がある。潜伏期間は示すが、その後速い重合速度を与える、高分子量ポリマーを生成する、触媒が要求されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの側面において、本発明は、大環状(macrocyclic)オリゴマー用重合触媒の存在下、その大環状オリゴマーを溶融するのに十分な温度に大環状オリゴマーを加熱することを含んでなり、重合触媒がジオルガノ錫ジカルボキシレートである大環状オリゴマーの重合方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に用いる重合触媒は、潜伏期間、典型的には継続時間おおよそ数十分(tens of minutes)を与えるが、その後、それらは大環状オリゴマーの高分子量ポリマーへの重合に、活性に且つ迅速に触媒作用を施す。潜伏期間の間には、重合(粘度の上昇により証拠付けられるが)はほとんど起こらない。一方、急速な重合の開始後の重合速度は、しばしば、ジ−n−ブチル錫グリコール酸塩などの慣用の錫触媒を用いて得られるものに大いに近づく。
【0007】
ここで用いられる重合触媒は、ジオルガノ錫二カルボン酸塩である。その触媒は、構造式(I)及び(II)で表される:
2−Sn−[OC(O)R12 (I)
及び
【0008】
【化1】

【0009】
ここで、Rは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のヒドロカルビル基であり、R1は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のヒドロカルビル基であり、そしてR2は共有結合又は、置換もしくは非置換の二価のヒドロカルビル基である。2つのR基は一緒になって、錫原子を含む環を形成する単一の二価の基を形成することもできる。
【0010】
R基は、炭素原子約1〜約20、好ましくは約2〜約12、特に好ましくは約3〜約8を有する、直鎖又は分枝鎖のアルキル基又はアリール基であることが適当である。R基は、R基の炭素原子を介して錫原子と結合している。R基は、大環状オリゴマーとは反応せず、且つ触媒活性に望ましくない影響を及ぼすことがない、1つ又はそれ以上の置換基を含んでいてもよい。そのような置換基は、炭素−炭素不飽和部位、エーテル基、ヒドロキシル基、ハロゲン等を含むことができる。好ましいR基はヒドロカルビル基である。適当なR基には、アルキル基、例えばエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、イソオクチル基、n−オクチル基、イソデシル基及びn−デシル基、フェニル基、ベンジル基、アルキル置換フェニル基、ナフチル基等が含まれる。n−ブチル基及びt−ブチル基が特に興味深い。
【0011】
複数のR基は、一緒になって、二価の基、例えば−CH2−CH2−、−CH2−CH(R3)−及び−CH2CH2−O−CH2−CH2−を形成していてもよく、ここでR3は炭素原子1〜4を含むアルキル基である。
【0012】
1基は、適当にはアルキル基、アリール基、シクロアルキル基又は、一般に、炭素原子約1〜約24、特には炭素原子約2〜約12を含む、同様のヒドロカルビル基である。R1基は直鎖状、環状又は分枝鎖状であることができる。R1基は、非置換であってもよく、また大環状(macrocyclic)オリゴマーとは反応せず、且つ触媒活性に望ましくない影響を及ぼすことがない置換基を含んでいてもよい。
【0013】
好ましいR2基は共有結合又は、炭素原子約1〜約12、特には炭素原子2〜4を含む、二価の、直鎖もしくは分枝鎖のヒドロカルビル基もしくはエーテル基である。特に注目すべきものは、−CH=CH−基、−CH2−CH2−基、−CH2−CH(R3)−基及び−CH2CH2−O−CH2−CH2−基であり、ここでR3は炭素原子1〜4を含むアルキル基である。
【0014】
構造式(I)及び(II)で表される触媒は、経験的な構造を表したものである。実際の触媒は、二量体、三量体又はその他のオリゴマー形態で存在しうる。
【0015】
適当な触媒の具体例としては、ジブチル錫オキサレート(oxalate)、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)等が含まれる。
【0016】
これらの触媒は、一般構造式R2Sn=Oの酸化錫を、カルボン酸(又は対応する酸ハライドもしくは低級アルキルエステル)、即ちHOC(O)R1の構造を有するカルボン酸、又はHOC(O)R2C(O)OHの形態を有する二酸と反応させることにより好都合に製造される。
【0017】
環状オリゴマーは、その環状構造の中に、2つ又はそれ以上のエステル結合を有する重合可能な環状物質である。エステル結合を含むその環状構造は、互いに結合して環を形成する少なくとも8原子を含んでいる。そのオリゴマーには、エステル結合を介して結びついている、2つ又はそれ以上の構造繰り返し単位を含む。構造繰り返し単位は同じでも異なっていてもよい。そのオリゴマー中の繰り返し単位の数は、適当には約2〜約8の範囲である。通常、環状オリゴマーには、繰り返し単位の数を異にする物質の混合物が含まれよう。環状オリゴマーの好ましい種類は、構造式(III)により表される:
−[O−A−O−C(O)−B−C(O)]y− (III)
式中、Aは二価のアルキル基、二価のシクロアルキル基又は二価のモノ−もしくはポリオキシアルキレン基であり、Bは二価の芳香族基又は脂環族基であり、そしてyは2〜8の数である。構造式(III)の末端に示されている結合子は、連結して環を形成する。構造式(III)に対応する適当な大環状オリゴマーの例としては、1,4−ブチレンテレフタレート、1,3−プロピレンテレフタレート、1,4−シクロヘキセンジメチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート、及び1,2−エチレンー2,6−ナフタレンジカルボキシレートのオリゴマー、並びにこれらの2種又はそれ以上を含むコポリエステルのオリゴマーを含む。大環状オリゴマーは、好ましくは、約200℃より低い、好ましくは約150〜190℃の範囲の溶融温度を有している。特に好ましい環状オリゴマーは、1,4−ブチレンテレフタレートオリゴマーである。
【0018】
大環状オリゴマーを製造する適当な方法は、米国特許第5,039,783号、第6,369,157号及び第6,525,164号の各明細書並びに国際出願公開(WO)第02/18476号及び第03/031059号に記載されている。一般に、環状オリゴマーは、ジオールを二酸、二酸クロリド又はジエステルと反応させることにより、又は線状ポリエステルを解重合することにより、好適に製造される。環状オリゴマーを製造する方法は、一般に、本発明に対して臨界的なものではない。
【0019】
同様に、環状オリゴマーの重合方法も周知である。そのような方法の例としては、その他多くのものの中でも特に、米国特許第6,369,157号及び第6,420,048号の各明細書、国際出願公開第03/080705号並びに米国特許出願公開第2004/0011992号明細書に記載されている。これら慣用の重合法はいずれも本発明での使用に適しているが、それらの方法は、上記の重合触媒の存在下で重合が実施されるように修正される。
【0020】
重合は、生のままで(即ち無溶媒で)実施してもよく、また溶媒の存在下で実施してもよい。
【0021】
一般に、重合は、有効量の触媒の存在下に、環状オリゴマーをその溶融温度より高く加熱することにより実施される。重合反応混合物は、所望の分子量及び転化率が得られるまでその高温に保持される。適当な重合温度は、約100℃〜約300℃であり、約100℃〜約280℃の温度範囲が好ましく、約180〜約270℃の温度範囲が特に好ましい。
【0022】
触媒は、有利には環状オリゴマーのモル当たり、触媒約0.0001〜約0.05モルの量で使用する。触媒は約0.0005〜約0.01モル/環状オリゴマーモルの量で使用されてもよい。特に有用な触媒の量は、約0.001〜約0.006モル/環状オリゴマーモルである。その量は、個々の触媒の活性度及び所望の反応速度によって幾らか変わってもよい。
【0023】
重合は、閉鎖型中で実施して成型品を形成してもよい。環状オリゴマー重合法の利点は、それらが、熱可塑性樹脂成型作業を、通常、熱硬化性樹脂に適用しうる技法を用いて実施することを可能にすることである。溶融したとき、環状オリゴマーは、典型的には比較的低い粘度を有する。このことは、環状オリゴマーが、液体樹脂成型、反応射出成型及び樹脂移送成型などの反応成型法において使用されることを可能にすると共に、構造複合体を形成するために、繊維束の個々の繊維の間に樹脂を浸透させることが求められる、樹脂フィルム浸出、繊維マット又は織物の含浸、プリプレグ形成、引抜成型及びフィラメントワインディングなどの方法において使用することも可能にする。これらのタイプのある種の方法は米国特許第6,420,047号明細書に記載されている。
【0024】
得られるポリマーは、脱型前に、固化する温度に達していなければならない。従って、ポリマーを脱型する(又は別の加工を完了する)前に冷却することが必要である。幾つかの事例、特にブチレンテレフタレートオリゴマーの重合においては、オリゴマーの溶融温度及び重合温度は得られるポリマーの結晶化温度より低い。そのような場合、有利には重合温度はオリゴマーの溶融温度とポリマーの結晶化温度の間である。このことは、ポリマーが分子量の増加に従って重合温度で結晶化すること(等温硬化)を可能にする。そのような場合、脱型が起こる前にポリマーを冷却する必要はない。
【0025】
環状オリゴマー重合工程用の慣用の触媒に伴う問題点は、時期尚早の重合である。環状オリゴマーは室温では固体なので、それを多くの成型工程及び含浸工程で使用するためには、溶融温度より高く加熱することが必要である。成型ライン又は含浸ラインに液体として容易に移送されるように、溶融オリゴマーの容器を維持することが便利である。予熱はサイクル時間を短縮し、そして、従って工程の効率を改善する。しかしながら、もし溶融オリゴマーが触媒の存在下にあれば、重合が保持容器中又は移送ライン中で生じる可能性がある。このことは、望ましくない粘度上昇や、早すぎる仕上がり(set-up)にさえも生ずるおそれがある。本発明の利点は、これらの触媒が十分に長い潜伏期間を示し、その間には重合がほとんど又は全く起こらないため、粘度の上昇は遅くなり、より長い作業領域が与えられることである。
【0026】
コポリエステルは、環状オリゴマー及び1種又はそれ以上の共重合可能なモノマーを重合することにより製造できる。そのようなコポリマーはランダムコポリマーであることができ、それは環状オリゴマーとコモノマーの混合物を反応させることによって製造される。コポリマーはブロックコポリマーであることもでき、便利には環状オリゴマーとコモノマーとを重合に逐次的に導入することにより製造する。適当な共重合可能なモノマーには、ラクトンなどの環状エステルが含まれる。ラクトンは、便利には1つ又はそれ以上のエステル結合を含む4〜7員環を含む。ラクトンは置換されていても、非置換であってもよい。適当な置換基には、ハロゲン、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、シアノ基、エーテル基、スルフィド基又は第三級アミン基が含まれる。置換基は、好ましくは、エステル基と反応して開始剤化合物として機能するようなものではないのがよい。そのような共重合可能なモノマーの例としては、グリコリド、ジオキサノン、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン、ε−カプロラクトン、テトラメチルグリコリド、β−ブチロラクトン、ラクチド、γ−ブチロラクトン及びピバロラクトンが含まれる。更に、ポリエーテルジオール及びポリエステルジオールなどの高分子ジオール物質も、ブロックコポリマーを生成させるため環状オリゴマー混合物に組み込むことができる。
【0027】
必要に応じて、多様な物質を重合工程に組み入れてもよい。そのような物質の例としては、充填剤、微細充填剤(nanofillers)、強化材(例えばガラス繊維、炭素繊維又はその他の繊維など)、難燃剤、着色料、酸化防止剤、防腐剤、離型剤、滑剤、UV安定剤等が含まれる。
【実施例】
【0028】
以下の実施例は、本発明を詳述するために提供されるものであり、その範囲を限定することを意図するものではない。別段の指示がない限り、全ての部及び%は重量による。
【0029】
実施例1及び比較実験A
1リットル三ツ口丸底フラスコに、酸化ジ−n−ブチル錫(8g、32ミリモル)を、シュウ酸4.05g及びトルエン450mLと一緒に充填する。頭上攪拌機及び“Dean−Stark”冷却管を取り付け、混合物を還流下に1時間加熱する。冷却管は、次いでモレキュラシーブを含む戻り枝管(a return arm)付きの改造冷却管と交換する。還流を更に1時間(for a second hour)継続し、その後、そのモレキュラシーブを新しいものと取り替えて、更に1時間、還流を実施する。混合物は冷却して、濾過により生成物を収集する。
【0030】
環状ブチレンテレフタレートオリゴマーは、減圧下、100℃で6時間乾燥する。その乾燥オリゴマー3gを、ジブチル錫オキサレート触媒13mgと、それぞれの固体を混合し振盪することにより組合せる。
【0031】
環状ブチレンテレフタレートオリゴマーの重合における触媒の活性度は、重合条件下に保持されたオリゴマー/触媒混合物における粘度を、時間の関数として追跡することにより評価する。重合は、“RSI Orchestrator”ソフトウェアを用い、“Advanced Rheometric Expansion System”動的機械的分光光度計(Rheometric Scientific製)中で、窒素雰囲気下に実施する。装置には、特注のアルミニウム製カップ・プレート治具が装備されている。そのカップとプレートの直径は、それぞれ25mm及び7.9mmである。乾燥した環状ブチレンテレフタレートオリゴマー/触媒混合物約3gが、160℃まで(to ~160℃)予熱されているカップに充填される。プレートは、オリゴマーの表面に接触するように、カップ中に下ろし、カップとプレートの間隔を測定する。オリゴマーは160℃で溶融し、次いでプレートとカップの温度を急速に190℃まで暖め、そしてオリゴマーの重合を監視するため190℃で平衡に維持する。
【0032】
低歪振幅振動が、カップに取り付けたアクチュエーターを介してカップの内容物に負荷される。アクチュエーターがカップを、鉛直軸の周りに正弦的に捻り挙動で振動させる。このエネルギーの幾らかが、試料を通してプレートに伝えられ、プレートに正弦的な捻り運動を起こさせる。その試料の複素剪断粘度η*は、カップの角度変位の振幅、プレート上のトルクの振幅、カップに対するプレートの位相の遅れ、正弦信号の角度周波数、及び試料の大きさから評価される。複素剪断粘度の|η*|の大きさは、重合の進行の基本的な測定基準であり、以下簡単に粘度という。この方法は、約20Pから約10,000Pを幾らか超えたところまでの粘度上昇の良好な推定値を提供し、観察されるべき重合の進行を可能にする。
【0033】
粘度は、温度190℃に保持している間、時間の関数として観察する。
【0034】
比較のため、環状ブチレンテレフタレート3gと、触媒としてジ−n−ブチル錫エチレングリコール酸塩との混合物を用いて、同様の実験を反復する(比較実験A)。
【0035】
比較実験Aにおいて、重合の開始は、測定可能な粘度上昇で示されるように、1分より短い。急速な粘度上昇が、重合開始後、直ちに観察する。ジ−n−ブチル錫シュウ酸塩触媒を用いた試料では、60〜70分の間に測定できる粘度上昇はなく、その後、急速な重合が、比較実験Aで観察されるよりも幾らか遅い速度で生じる。
【0036】
実施例2
1リットル三ツ口丸底フラスコに、酸化ジ−n−ブチル錫(8g、32ミリモル)を、フタル酸10.7g及びトルエン450mLと一緒に充填する。混合物は、実施例1と同様に処理し、粗ジ−n−ブチル錫フタル酸塩20gを得る。
【0037】
環状ブチレンテレフタレートオリゴマーの重合における、粗ジ−n−ブチル錫フタレート触媒の活性度が、オリゴマー2.973g及び触媒15.6mgを用いて、実施例1におけるのと同様に評価する。ジ−n−ブチル錫フタレート触媒を用いた試料では、10〜12分の間に測定できる粘度上昇はなく、その後、比較実験Aで観察されるよりも遅い速度で重合が生じる。
【0038】
実施例3
環状ブチレンテレフタレートオリゴマー重合用の触媒としての、ジ−n−ブチル錫マレエートの活性度を、オリゴマー3.0g及び触媒14.2mgを用いて、実施例1におけるのと同様に評価する。ジ−n−ブチル錫マレエート触媒を用いた試料では、1〜2分の間に測定できる粘度上昇はなく、その後、比較実験Aで観察されるよりも遅い速度で重合が生じる。
【0039】
実施例4
環状ブチレンテレフタレートオリゴマー重合用の触媒としての、ジ−n−ブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)の活性度を、オリゴマー3.0g及び触媒21.2mgを用いて、実施例1におけると同様に評価する。ジ−n−ブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)触媒を用いた試料では、2分間に測定できる粘度上昇はなく、その後、比較実験Aで観察されるよりも遅い速度で重合が生じる。
【0040】
当然のことながらここに記載されている本発明に対して、本発明の精神、添付された請求項により規定された範囲から逸脱することなく、多くの修正が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大環状オリゴマー用重合触媒の存在下に、大環状オリゴマーを溶融するのに十分な温度に大環状オリゴマーを加熱することを含んでなり、前記重合触媒がジオルガノ錫ジカルボキシレートである大環状オリゴマーの重合方法。
【請求項2】
重合触媒が構造式(I)又は構造式(II)を有し、構造式(I)が:
2−Sn−[OC(O)R12 (I)
(式中、各Rは、それぞれ独立して、アルキル基であるか又は、複数のR基が一緒になって、錫原子を含む環を形成する単一の二価の基を構成し、且つR1は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のヒドロカルビル基である)
であり、そして構造式(II)が:
【化1】

(式中、各Rは、それぞれ独立して、アルキル基であるか又は、複数のR基が一緒になって、錫原子を含む環を形成する単一の二価の基を構成し、且つR2は共有結合又は置換もしくは非置換の二価のヒドロカルビル基である)
である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各R基が、それぞれ独立して、炭素原子約1〜約20を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各R基が、それぞれ独立して、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、イソオクチル基、n−オクチル基、イソデシル基又はn−デシル基である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各R基が、それぞれn−ブチル基又はt−ブチル基である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
重合触媒が構造式(I)を有し、且つ各R1基が、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基又は炭素原子約2〜約24を含むその他のヒドロカルビル基である請求項2に記載の方法。
【請求項7】
重合触媒が構造式(II)を有し、且つ各R2基が、それぞれ独立して、炭素原子約1〜約12を含む、二価の直鎖又は分枝鎖のヒドロカルビル基又はエーテル基である請求項2に記載の方法。
【請求項8】
2基が、それぞれ、−CH2−CH2−、−CH2−CH(R3)−又は−CH2CH2−O−CH2−CH2−であり、R3が炭素原子1〜4を含むアルキル基である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
触媒がジ−n−ブチル錫オキサレートである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
環状オリゴマーが環状1,4−ブチレンテレフタレートである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
環状オリゴマーが環状1,4−ブチレンテレフタレートである請求項2に記載の方法。
【請求項12】
環状オリゴマーが環状1,4−ブチレンテレフタレートである請求項6に記載の方法。
【請求項13】
環状オリゴマーが環状1,4−ブチレンテレフタレートである請求項7に記載の方法。
【請求項14】
環状オリゴマーが環状1,4−ブチレンテレフタレートである請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2008−503610(P2008−503610A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516681(P2007−516681)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/021126
【国際公開番号】WO2006/009735
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】