説明

遅延量決定装置及び遅延量決定方法並びに多重信号通信システム及び多重信号通信方法

【課題】複数の信号を意図的に遅延して多重化した遅延多重方式での通信において、各信号間での干渉を考慮した適切な遅延量を決定する。
【解決手段】同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重して通信する送信側装置及び受信側装置で用いられるべき遅延量を計算するための遅延量計算装置が、前記拡散符号と遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記遅延量を計算する計算手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトル拡散通信方式を用いた、遅延量決定装置及び遅延量決定方法並びに多重信号通信システム及び多重信号通信方法、における信号遅延量の決定に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおいて通信を行う場合に、スペクトラム拡散(SS:Spread Spectrum)方式に準拠して通信を行う場合がある。
【0003】
ここで、スペクトラム拡散通信方式とは、通信の信号を本来よりも広い帯域に拡散して通信する方式である。
【0004】
具体的には、送信側において、送信データを擬似雑音(PN:Pseudo random noise)系列等の符号(以下、適宜「拡散符号」と呼ぶ。)で拡散して符号化データを作成し、その符号化データを受信側に送信すると共に、受信側において、受信した符号化データを上記の拡散符号で逆拡散することで受信データを生成する。そして、スペクトラム拡散通信方式では受信側で送信側と同じ拡散符号を利用しないと元の信号が復元できないため、機密性を確保できるという効果を奏する。加えて、使用帯域が広いため伝送路ノイズに強く、また、過密状態になっても急激な品質低下を起こさない、といった効果も奏する。
【0005】
このように、スペクトラム拡散通信方式には種々の効果を奏するというメリットが存在する。もっとも、拡散符号の数には一定の制限があるため、多数のユーザ収容の観点から、拡散符号を効率的に使用するための技術が求められている。
【0006】
この、拡散符号の効率的な使用に関する技術の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の技術では、データをシリアル/パラレル変換し、変換後のデータを同一の拡散符号を用いて拡散し、複数の拡散後のデータを相互にずらして遅延させることにより多重して通信するという方式を提案している。
【0007】
これは、限られた帯域で高速伝送を行うために、同一の拡散符号で拡散した信号を意図的に遅延させることにより多重する方式(以下、適宜「遅延多重方式」と呼ぶ)である。図16を参照して具体的に説明すると、データ発生部121で発生したデータは、その後、S/P変換部123で多重する数にシリアル/パラレル変換され、それぞれに、乗算器124−1〜124−5でPN発生器125からのPN符号をかけて拡散する。その後、遅延素子126−1〜126−5にて、各々遅延する。そして、それらを合波器127で合波して、多値のデジタル信号としたもので、RF発振器129からの発振信号を変調器128にて変調して、周波数変換部130で周波数変換し、電力増幅部131等を経て、送信される。そして、通信システムの受信側において、この遅延多重した信号を受信、復調することにより高速のデータ通信を行うことができるようになる。
【0008】
なお、このような遅延多重方式を行う技術としては、他にも例えば、特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−303783号公報
【特許文献2】特開平09−055714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載されたような遅延多重方式を用いることによって、限られた帯域で高速伝送ができ、且つ、拡散符号を効率的に使用することが可能となる。
【0011】
他方、多重性を上げるということは、多重させた信号間での干渉が増加するということである。そのため、上述した遅延多重方式を用いる場合にも干渉の影響を減らす必要が生じる。
【0012】
この点、遅延量が異なれば各信号間での干渉は増える、又は減る、ということが考えられる。
【0013】
もっとも、上述した技術では、各信号間での干渉を削減するという観点に立って遅延量を決定している訳では無かった。
例えば、特許文献2には、「必要な伝送レートや所望の誤り率から、送受信機の設置時に、多重数および遅延量を決定し、送受信機の外部から入力する。そして、その入力に応じて、多重数/遅延量コントローラは、送受信部の多重数および遅延量を設定する」との記載がある。よって、遅延量を設定するという概念自体は存在しているといえる。
【0014】
しかしながら、遅延多重方式での通信時に具体的にどのようにして遅延量を設定するかということについては記載されていない。また、そもそも各引用文献は、各信号間での干渉を考慮して遅延量を決定しているわけではない。
【0015】
そこで、本発明は、複数の信号を意図的に遅延して多重化した遅延多重方式での通信において、各信号間での干渉を考慮した適切な遅延量を決定することが可能な、遅延量決定装置及び遅延量決定方法並びに多重信号通信システム及び多重信号通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の観点によれば、同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重して通信する送信側装置及び受信側装置で用いられるべき遅延量を計算するための遅延量計算装置であって、前記拡散符号と前記遅延された拡散符号との間の相関値に基づいて前記遅延量を計算する計算手段を備えることを特徴とする遅延量計算装置が提供される。
【0017】
本発明の第2の観点によれば、送信側装置と、前記送信側装置と通信を行う受信側装置とを含んだ多重信号通信システムであって、前記通信は、同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重して通信することにより実現され、前記遅延量は前記拡散符号と前記遅延された拡散符号との間の相関値に基づいて計算されたものであることを特徴とする多重信号通信システムが提供される。
【0018】
本発明の第3の観点によれば、同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重して通信する送信側装置及び受信側装置で用いられる遅延量を計算するための遅延量計算方法であって、前記拡散符号と遅延された拡散符号との間の相関値に基づいて前記遅延量を計算する計算ステップを備えることを特徴とする遅延量計算方法が提供される。
【0019】
本発明の第4の観点によれば、送信側装置と、前記送信側装置と通信を行う受信側装置と、前記送信側装置及び受信側装置で用いられるべき遅延量を計算する遅延量計算装置とを含むシステムにおける多重信号通信方法であって、前記通信は、同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重して通信することにより実現され、前記遅延量は、前記遅延量計算装置が前記拡散符号と前記遅延された拡散符号との間の相関値に基づいて計算したものであることを特徴とする多重信号通信方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、或る信号に対して干渉を与える複数の信号の内、干渉の影響が大きい方の信号からの干渉が小さくなるように遅延量を決定することから、複数の信号を意図的に遅延して多重化した遅延多重方式での通信において、各信号間での干渉を考慮した適切な遅延量を決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態全体の基本的構成を表す図である。
【図2】本発明の実施形態における送信側装置の基本的構成を表す図である。
【図3】本発明の実施形態における切替器の切り替えについて表す図である。
【図4】本発明の実施形態における遅延多重方式について説明する図である。
【図5】本発明の実施形態における受信側装置の基本的構成を表す図である。
【図6】本発明の実施形態における遅延量計算装置の基本的構成を表す図である。
【図7−1】本発明の実施形態における干渉信号を説明するための概念図である。
【図7−2】本発明の実施形態における遅延量を説明するための概念図である。
【図8】本発明の実施形態における干渉成分の表記方法について表す図である。
【図9】本発明の実施形態における干渉成分について表す図である。
【図10】本発明の実施形態における遅延量と相関値の関係について表す図である。
【図11】本発明の実施形態における閾値について表す図である。
【図12−1】本発明の実施形態2の基本的動作を表すフローチャート(1/2)である。
【図12−2】本発明の実施形態2の基本的動作を表すフローチャート(2/2)である。
【図13】本発明の実施形態を適用した第1の具体例を表す図である。
【図14】本発明の実施形態を適用した第2の具体例を表す図である。
【図15】本発明の実施形態を適用した第3の具体例を表す図である。
【図16】特許文献1の図20に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
[実施形態1]
図1を参照すると、本発明の実施形態1は送信側装置100、受信側装置200及び遅延量計算装置300を含む。また、送信側装置100及び受信側装置200はそれぞれ遅延を付加するための遅延付加部140及び270を含む。更に、遅延量計算装置300は、遅延量を計算するための遅延量計算部310を含む。なお、送信側装置100、受信側装置200及び遅延量計算装置300には図1に図示した以外の構成要素を含むが、これらについては後述することとし、図1では図示を省略する。また、図1においては、遅延付加部140及び270がそれぞれ1つ図示されているが、各遅延付加部は複数存在していてもよい。
【0024】
送信側装置100と、受信側装置200はスペクトラム拡散方式に準拠して通信を行っている。また、この通信では、同一の拡散符号で拡散した複数信号を意図的に相互にズラして遅延して多重するという遅延多重方式を用いている。
【0025】
遅延量計算装置300は、遅延付加部140及び270に対して遅延量を通知する。そして、送信側装置100はこの通知された遅延量に基づいて送信データを遅延させた後に多重させ、送信信号として送信させる。また、受信側装置200では、この通知された遅延量に基づいて拡散符号を遅延させた後に復号をする。
【0026】
また、本実施形態では送信側装置100及び受信側装置200は具体的にどのような装置により実現されてもよい。例えば、両装置の片方又は両方が地上に設けられた基地局であってもよく、通信衛星であってもよく、無線LAN(Local Area Network)を構成するコンピュータであってもよい。また、両装置の片方又は両方が移動体通信端末として実現されてもよい。移動体通信端末とは例えば携帯電話機である。更に、遅延量計算装置300もどのような装置であってもよく、遅延量計算装置300と、送信側装置100及び受信側装置200間の通信は無線通信であってもよいがその一部又は全部が有線通信であってもよい。
【0027】
続いて、図2を参照して送信側装置100の構成について説明する。図2を参照すると、送信側装置100は、切替器110、拡散符号生成部120、拡散部130−1、拡散部130−2、拡散部130−3、拡散部130−4、遅延付加部140−2、遅延付加部140−3、遅延付加部140−4、複数の加算器150及びアンテナ160を含む。
【0028】
なお、本実施形態では、拡散部130を4個含み、遅延付加部140を3個含んでいるが、これはあくまで一例に過ぎない。拡散部130を、任意の数設け、これに応じて遅延付加部140の数を決めることが可能である。すなわち、本実施形態において送信信号に含まれる送信データの多重数は任意の数とすることが可能である。
【0029】
切替器110は、送信データを入力し、入力した送信データを各拡散部に対して出力する。具体的には、切替器110は、出力先となる拡散部を、拡散部130−1、拡散部130−2、拡散部130−3及び拡散部130−4から順次切り替える。
【0030】
図3を参照して切替器110が行う切り替えについて説明する。図3を参照すると、送信データとして、a、a、a、a、a、a、a及びaがあった場合、最初のaは、拡散部130−1に入力される。続いて、aは、拡散部130−2に入力される。また、aは、拡散部130−3に入力される。aは、拡散部130−4に入力される。同様に、aは、拡散部130−1に入力される。続いて、aは、拡散部130−2に入力される。また、aは、拡散部130−3に入力される。また、aは、拡散部130−4に入力される。
【0031】
拡散符号生成部120は、拡散符号を生成し、生成した拡散符号を拡散部130−1、拡散部130−2、拡散部130−3及び拡散部130−4に出力する。各拡散部に出力する拡散符号は同一のものである。
【0032】
各拡散部は、切替器110から送信データを入力すると、その送信データに拡散符号生成部120から入力した拡散符号を乗算することにより拡散をし、拡散後データを生成する。拡散部130−1が生成した拡散後データは直接加算器150に出力される。一方、拡散部130−2、拡散部130−3及び拡散部130−4が生成した拡散後データはそれぞれ遅延付加部140−2、遅延付加部140−3、遅延付加部140−4を介して加算器150に出力される。
【0033】
遅延付加部140−2、遅延付加部140−3及び遅延付加部140−4が加える遅延の遅延量は遅延量計算装置300から通知されるものとする。この通知は、無線又は有線による通信により実現される。
【0034】
加算器150は、各拡散部から直接又は間接に入力した拡散後データを全て加算し、加算後の拡散後データをアンテナ160に出力する。
【0035】
加算器150における加算後の拡散データについて示す図が図4である。図4を参照すると拡散符号C1により拡散されたa、及びaは遅延無しで、a及びaは遅延Δ1を加えられて、a及びaは遅延Δ2を加えられて、a及びaは遅延Δ3を加えられて、多重化されていることが分かる。図4に示すようにして本実施形態は遅延多重方式による通信を行う。
【0036】
アンテナ160は、加算器150から入力した拡散後データを送信信号として受信側装置200に対して送信する。
【0037】
なお、加算器150とアンテナ160との間の周波数変換部は、説明の簡略化のために省略した。以下の説明においても、同様に周波数変換部を省略する。また、送信側装置100の各遅延付加部140と、遅延量計算装置300が有線接続される場合には、有線接続のためのインターフェースが必要となるが、このインターフェースについても説明の簡略化のために省略した。
【0038】
続いて図5を参照して受信側装置200の構成について説明する。
【0039】
図5を参照すると、受信側装置200は、アンテナ210、等化部220、逆拡散部230−1、230−2、230−3、230−4、利得調整部240−1、240−2、240−3、240−4、検出部250−1、250−2、250−3、250−4、拡散符号生成部260、遅延付加部270−2、270−3、270−4を含む。
【0040】
アンテナ210、等化部220及び拡散符号生成部260以外の各部は4系統あるが、以下では、必要な場合を除き、説明の簡略化のために系列を表す接尾の数字を省略する。
【0041】
アンテナ210は、送信側装置100のアンテナ160から通信路を介して送信されてきた送信信号を受信信号として受信する。
【0042】
等化部220は、送信側装置100と受信側装置200間の通信路の影響を受けた受信信号を通信路の影響を受ける前の信号に戻し、各逆拡散部230に出力する。
【0043】
拡散符号生成部260は、送信側装置100の拡散符号生成部120が生成した拡散符号と同一の拡散符号を生成し、生成した拡散符号を各逆拡散部230−1、遅延付加部270−2、遅延付加部270−3及び遅延付加部270−4に出力する。
【0044】
各逆拡散部230は、等化部220から入力した信号と、拡散符号生成部260から直接入力された拡散符号又は遅延付加部270−2、遅延付加部270−3及び遅延付加部270−4の何れかを介して入力された遅延後の拡散符号とに基づいて逆拡散を行う。逆拡散後の信号は各利得調整部240に出力される。
【0045】
各利得調整部240は、各逆拡散部230から入力した信号に対して利得調整を行う。利得調整後の信号は各検出部250に対して出力される。
【0046】
各検出部250は、各利得調整部240から入力した信号から、送信信号に含まれているシンボルを検出する。検出したシンボルは、受信データとして出力される。
【0047】
遅延付加部270−2、遅延付加部270−3及び遅延付加部270−4は、拡散符号生成部260から入力した拡散符号を遅延させた後に、各逆拡散部230に対して出力する。
【0048】
ここで、遅延付加部270−2、遅延付加部270−3及び遅延付加部270−4が加える遅延は、それぞれ、送信側装置100の遅延付加部140−2、遅延付加部140−3及び遅延付加部140−4が加える遅延と同一の遅延である。この遅延の遅延量は遅延量計算装置300から通知されるものとする。
【0049】
次に、図6を参照して遅延量計算装置300の構成について説明する。図6を参照すると、遅延量計算装置300は、遅延量計算部310、無線通信部320、有線通信部330、有線接続部340及びアンテナ350を含む。
【0050】
遅延量計算部310は、適切な遅延量を算出し、算出した遅延量を無線通信部320又は有線通信部330を介して送信側装置100と、受信側装置200に通知する。なお、遅延量計算部310が行う具体的な算出方法は後述する。
【0051】
無線通信部320及びアンテナ350は、送信側装置100及び受信側装置200と無線通信を行う機能を実現する。また、有線通信部330及び有線接続部340は、送信側装置100及び受信側装置200と有線通信を行う機能を実現する。なお、有線通信又は無線通信をする際にはどのような規格に準拠して接続してもよい。一般的な規格に準拠して通信を行ってもよく、本実施形態特有の規格に準拠して通信を行ってもよい。
【0052】
なお、遅延量計算装置300を、上述したような有線通信又は無線通信は行わずに、単に遅延量を計算する装置として実現してもよい。この場合は、遅延量計算装置300に情報を表示するための表示部を設ける。そして、この表示部に算出した遅延量を表示する。そして、利用者が表示された遅延量を読み取り、読み取った遅延量を利用するようにする。
【0053】
読み取った遅延量は単にデータとして学術的に利用してもよいし、実際に送信側装置100及び受信側装置200に読み取った遅延量を設定し、送信側装置100及び受信側装置200に通信を行わせるようにしてもよい。
【0054】
送信側装置100及び受信側装置200への遅延量の設定にあたっては、送信側装置100及び受信側装置200を直接操作して入力するようにしてもよいし、他の通信装置を用いて有線通信又は無線通信により遅延量を通知するようにしてもよい。
【0055】
次に、上述した本実施形態における遅延量の算出方法について説明する。
【0056】
本実施形態では、同一の拡散符号で拡散した複数信号を意図的に相互にズラして遅延して多重するという遅延多重方式を用いている。この遅延多重方式では、限られた帯域で高速伝送ができ、且つ、拡散符号を効率的に使用することが可能となるという利点があるが、反面多重させた信号間での干渉が増大することが危惧される。そこで、本実施形態では遅延量を制御することにより干渉を削減する。
【0057】
図7−1は、本実施形態における遅延多重信号を示す図である。図7では、4つの信号が多重されており、一番上の信号の破線で囲まれた箇所を逆拡散する場合には、それ以外の3つの信号の破線で囲まれた箇所が干渉となることが分かる。そこで本実施形態ではそれ以外の3つの信号の破線で囲まれた箇所の干渉を小さくすることを考える。
【0058】
今回の説明では、図8に示すように各遅延を特定するために各遅延にA、B、Cの符号を付す。信号W1を基準とすると、W1に対するX1の遅延は遅延Aであり、信号X1を基準とすると、X1に対するY1の遅延は遅延Bであり、信号Y1を基準とすると、Y1に対するZ1の遅延は遅延Cである。また、Dはコード(拡散符号)一周期の長さを示す。
【0059】
更に、以下に示す各数式において、拡散符号を「SPN」と表記する。なお、本実施形態においては、例えば2種類のPN系列を加算して得られるGold系列を拡散符号として利用することが可能である。
【0060】
続いて、図7−2に示されたように多重数を4とした場合にW1、X1、Y1、及びZ1を抽出する際の干渉成分はそれぞれ以下のとおりとなる。
【0061】
ここで、各干渉成分を示すにあたり、本実施形態における干渉成分の表記方法についてW1を抽出する際のX0に関する干渉成分を例に取って説明する。
【0062】
図8の(a)を参照すると、拡散符号SPNはD個のチップにより一周期の長さを形成している。そして、D個のチップの最初及び最後に含まれるA個のチップが干渉成分の要素となる。この干渉成分の要素を抜き出したのが図8の(b)である。
【0063】
そして、図8の(c)に示されるように最初のA個をSPN[1:A]と表記する。また、最後のA個をSPN[D−(A−1):D]と表記する。この2つを乗算し、更に送信されるデータであるX0を乗算したものが干渉成分となる。
【0064】
上述の表記方法に基づくとW1、X1、Y1、及びZ1を抽出する際の干渉成分はそれぞれ以下のとおりとなる。
■W1を抽出する際の干渉成分は、以下のとおりとなる。
X0に関する干渉
PN[1:A]×SPN[D−(A−1):D]×X0
X1に関する干渉
PN[(A+1):D]×SPN[1:D−A]×X1
Y0に関する干渉
PN[1:(A+B)]×SPN[D−(A+B−1):D]×Y0
Y1に関する干渉
PN[(A+B+1):D]×SPN[1:D−(A+B)]×Y1
Z0に関する干渉
PN[1:(A+B+C)]×SPN[D−(A+B+C−1):D]×Z0
Z1に関する干渉
PN[(A+B+C+1):D]×SPN[1:D−(A+B+C)]×Z1
■X1を抽出する際の干渉成分は、以下のとおりとなる。
W1に関する干渉
PN[1:D−A]×SPN[(A+1):D]×W1
W2に関する干渉
PN[D−(A−1):D]×SPN[1:A]×W2
Y0に関する干渉
PN[1:B]×SPN[D−(B−1):D]×Y0
Y1に関する干渉
PN[(B+1):D]×SPN[1:D−B]×Y1
Z0に関する干渉
PN[1:(B+C)]×SPN[D−(B+C−1):D]×Z0
Z1に関する干渉
PN[(B+C+1):D]×SPN[1:D−(B+C)]×Z1
■Y1を抽出する際の干渉成分は、以下のとおりとなる。
W1に関する干渉
PN[1:D−(A+B)]×SPN[(A+B+1):D]×W1
W2に関する干渉
PN[D−(A+B−1):D]×SPN[1:(A+B)]×W2
X1に関する干渉
PN[1:D−B]×SPN[(B+1):D]×X1
X2に関する干渉
PN[D−(B−1):D]×SPN[1:B]×X2
Z0に関する干渉
PN[1:C]×SPN[D−(C−1):D]×Z0
Z1に関する干渉
PN[(C+1):D]×SPN[1:D−C]×Z1
■Z1を抽出する際の干渉成分は、以下のとおりとなる。
W1に関する干渉
PN[1:D−(A+B+C)]×SPN[(A+B+C+1):D]×W1
W2に関する干渉
PN[D−(A+B+C−1):D]×SPN[1:(A+B+C)]×W2
X1に関する干渉
PN[1:D−(B+C)]×SPN[(B+C+1):D]×X1
X2に関する干渉
PN[D−(B+C−1):D]×SPN[1:(B+C)]×X2
Y1に関する干渉
PN[1:D−C]×SPN[D−(C+1):D]×Y1
Y2に関する干渉
PN[D−(C−1):D]×SPN[1:C]×Y2
【0065】
次に、上記の各信号の中からW1を抽出する際の干渉成分を例に取って検討する。本実施形態において遅延量がコード長よりもかなり小さいとするとW1を抽出する際の干渉成分について以下が考えられる。
■X0に関する干渉<X1に関する干渉
PN[1:A]×SPN[D−(A−1):D]×X0<SPN[(A+1):D]×SPN[1:D−A]×X1
■Y0に関する干渉<Y1に関する干渉
PN[1:(A+B)]×SPN[D−(A+B−1):D]×Y0<SPN[(A+B+1):D]×SPN[1:D−(A+B)]×Y1
■Z0に関する干渉<Z1に関する干渉
PN[1:(A+B+C)]×SPN[D−(A+B+C−1):D]×Z0<SPN[(A+B+C+1):D]×SPN[1:D−(A+B+C)]×Z1
【0066】
そこで、干渉が大きくなると思われる方について、その干渉を小さくするための遅延量を決めることにする。なお、図9の左側にX0、Y0及びZ0に関する干渉成分を示す。また、図9の右側に示すのがX1、Y1及びZ1に関する干渉成分である。図9からも分かるように今回の説明では干渉が大きくなると思われるX1、Y1及びZ1に関して考慮する。
【0067】
そして、上述したような相関を持つとした場合に、影響の大きい干渉を考慮すると、各信号を抽出する際の干渉成分は、以下のとおりとなる。
■W1を抽出する際の干渉成分は、以下のとおりとなる。
X1に関する干渉
C[(A+1):D]×C[1:D−A]×X1
Y1に関する干渉
C[(A+B+1):D]×C[1:D−(A+B)]×Y1
Z1に関する干渉
C[(A+B+C+1):D]×C[1:D−(A+B+C)]×Z1
■X1を抽出する際の干渉成分は、以下のとおりとなる。
W1に関する干渉
C[1:D−A]×C[(A+1):D]×W1
Y1に関する干渉
C[(B+1):D]×C[1:D−B]×Y1
Z1に関する干渉
C[(B+C+1):D]×C[1:D−(B+C)]×Z1
■Y1を抽出する際の干渉成分は、以下のとおりとなる。
W1に関する干渉
C[1:D−(A+B)]×C[(A+B+1):D]×W1
X1に関する干渉
C[1:D−B]×C[(B+1):D]×X1
Z1に関する干渉
C[(C+1):D]×C[1:D−C]×Z1
■Z1を抽出する際の干渉成分は、以下のとおりとなる。
W1に関する干渉
C[1:D−(A+B+C)]×C[(A+B+C+1):D]×W1
X1に関する干渉
C[1:D−(B+C)]×C[(B+C+1):D]×X1
Y1に関する干渉
C[1:D−C]×C[D−(C+1):D]×Y1
【0068】
これより、以下の各場合における相関値に基づき、干渉が最小となる遅延パターンを決定する。
■W1とX1の間の干渉に対応する遅延量(すなわちズレ量)がAのとき
■W1とY1の間の干渉に対応する遅延量(すなわちズレ量)がA+Bのとき
■X1とY1の間の干渉に対応する遅延量(すなわちズレ量)がBのとき
■W1とZ1の間の干渉に対応する遅延量(すなわちズレ量)がA+B+Cのとき
■X1とZ1の間の干渉に対応する遅延量(すなわちズレ量)がB+Cのとき
■Y1とZ1の間の干渉に対応する遅延量(すなわちズレ量)がCのとき
【0069】
そして、図10に示されるようなズレ量に応じた相互相関値(同一の信号についての相関値であるため自己相関値と同一。以下、単に「相関値」という。)を持つコードを使用した場合には、ズレ量がAのとき、ズレ量がA+Bのとき、ズレ量がBのとき、ズレ量がA+B+Cのとき、ズレ量がB+Cのとき及びズレ量がCのとき、の各場合における相関値に基づき、干渉が最小となる遅延パターンを算出する。算出方法自体に特に制限はないが、本実施形態においては、ズレ量として取りうる値を全てあてはめ、ズレ量がAのときの相関値(W1とX1との干渉に対応する)、ズレ量がA+Bのときの相関値(W1とY1との干渉に対応する)、ズレ量がBのときの相関値(X1とY1との干渉に対応する)、ズレ量がA+B+Cのときの相関値(W1とZ1との干渉に対応する)、ズレ量がB+Cのときの相関値(X1とZ1との干渉に対応する)、ズレ量がCのときの相関値(Y1とZ1との干渉に対応する)を合計した値が最小となる遅延量を選択したものとする。
【0070】
そして、この選択の結果、
A=1
B=3
C=4
と遅延値を設定することにより干渉が小さくなる。
【0071】
上述したように本実施形態では、自系列の或るデータ(例えばW1)に影響を及ぼす各他系列に含まれる先行するデータ(例えばX0)及び後続するデータ(例えばX1)のうち片方(例えばX0)からの干渉が少なくなるように大まかな遅延量を予め決定しておき(例えば、遅延量をゼロに近くしておき)、干渉の影響が大きくなると思われる方(例えば、X1)について、それからの干渉を小さくするための遅延量を決める。従って、大まかな遅延量を予め決定しない場合に比べ、遅延量を決定するための計算量を大幅に減らすことができる。すなわち、例えば、上述の4系列の例では、大まかな遅延量を予め決定した場合には、考慮するべき干渉の数が6(、実質的には、2つの干渉が組になるため3つ)であり、6つの干渉が少なくなるように遅延量を調整すればよいのに対し、大まかな遅延量を予め決定しない場合には、考慮するべき干渉の数が12(2×、実質的には、2つの干渉が組になるため6つ)であり、その上、遅延量の間には付加的な拘束がある(例えば、X0の遅延とX1の遅延との間には拘束がある)ので、遅延量の調整が困難となるので、大まかな遅延量を予め決定しない場合に比べ、大まかな遅延量を予め決定しておくと、遅延量を決定するための計算量を大幅に減らすことができる。
【0072】
また上述した本実施形態の説明ではもっぱら4系列の場合を例にとって説明したが、本実施形態における多重数は任意であるので、2系列、3系列の場合にも本実施形態を適用可能である。また、更に5系列、6系列・・・、というように系列数を増加してもよい。
【0073】
この場合、例えば2系列の場合は遅延量Aのときの1つの干渉を考慮すればよく、3系列の場合は遅延量A、B、A+Bのときの3つの干渉を考慮すればよい。更に5系列であればA、B、C、D、A+B、A+B+C、A+B+C+D、B+C、B+C+D、C+Dのときの10の干渉を考慮すればよい。
【0074】
すなわち、N多重の場合は「/2」(実質的には、2つの干渉が組になるためを2で除算する)のときの干渉を考慮すれば任意の系列数に本実施形態を適用することが可能である。
【0075】
加えて、本実施形態では、遅延量を変更するにあたって考慮すべき相関値の全てを割り出し、割り出した全ての相関値に基づいて遅延量を設定している。このように、考慮すべき相関値は残らずに検討しているため、不適切な相関値をとることのない適切な遅延量を設定することが可能となる。
【0076】
[実施形態2]
次に、上述した実施形態1を変形した実施形態である実施形態2について説明する。実施形態2は、遅延量の計算において計算量を減少させることを目的とする実施形態である。
【0077】
そのため、実施形態2は基本的な構成等は実施形態1と同じであるが、遅延量の具体的な算出方法において相違している。
【0078】
続いて、実施形態2における遅延量の算出について説明する。本実施形態では、相関値に閾値を定め、この閾値を下回る、すなわち閾値以下(又は閾値未満)となるように遅延量を設定する。閾値とすべき数値に特に制限はなく、本実施形態を実装する環境に応じて任意の数値とすることが可能である。
【0079】
この、閾値について示す図が図11である。今回は閾値を±10に設定する。また、今回は、同一の拡散符号を用いて遅延を加える信号として3系統を同時に送信するものとする。すなわち、遅延を加えない系統を加えると、4系統の信号を多重した多重遅延方式で通信を行うものとする。
【0080】
そして、これらの状況下で、本実施形態における遅延量計算部310は、図12−1及び図12−2のフローチャートに示す動作を行う。
【0081】
まず、遅延量計算が開始されると遅延量計算部310は、1系統目の遅延量を決める(ステップS401)。そして、その遅延量での相関値が閾値を下回るか確認する(ステップS402)。
【0082】
下回る場合(ステップS402においてYes)、2系統目の遅延量を0とする(ステップS403)。そして、2系統目の遅延量を+1とする(ステップS404)。そして、その遅延量での相関値が閾値を下回るか確認する(ステップS405)。
【0083】
下回る場合(ステップS405においてYes)、1系統目+2系統目の遅延量を計算する(ステップS406)。そして、その遅延量での相関値が閾値を下回るか確認する(ステップS407)。
【0084】
下回る場合(ステップS407においてYes)、3系統目の遅延量を0とする(ステップS408)。そして、3系統目の遅延量を+1とする(ステップS409)。そして、その遅延量での相関値が閾値を下回るか確認する(ステップS410)。
【0085】
下回る場合(ステップS410においてYes)、1系統目+3系統目の遅延量を計算する(ステップS411)。そして、その遅延量での相関値が閾値を下回るか確認する(ステップS412)。
【0086】
下回る場合(ステップS412においてYes)、2系統目+3系統目の遅延量を計算する(ステップS413)。そして、その遅延量での相関値が閾値を下回るか確認する(ステップS414)。
【0087】
下回る場合(ステップS414においてYes)、1系統目+2系統目+3系統目の遅延量を計算する(ステップS415)。そして、その遅延量での相関値が閾値を下回るか確認する(ステップS416)。
【0088】
下回る場合(ステップS417においてYes)、1系統目、2系統目及び3系統目の遅延量が決定する(ステップS417)。
【0089】
これにより遅延量の計算は終了する。
【0090】
一方、ステップS402において下回らない場合(ステップS402にNo)は、ステップS420に進む。
【0091】
ステップS420では、1系統目の遅延量を+1できるか確認する(ステップS420)。この際、1系列目の遅延量、2系列目の遅延量及び3系列目の遅延量の合計が拡散符号の長さDの範囲内であるかを確認する。よって、下述するステップS419及び418でも同様である。
【0092】
しかしながら選択しうる遅延量が多くなるに従い、選択できる遅延量の組合せも増え、計算量が膨大なものとなってしまう。そのため、選択しうる遅延量を拡散符号の長さDの範囲内から更に限定するようにしてもよい。すなわち、本実施形態では予め許容できる遅延量を定めておき、この範囲内であれば遅延量を+1できると判断するようにしてもよい。
【0093】
そして、1系統目の遅延量を+1できる場合(ステップS420においてYes)、1系統目の遅延量を+1、とした値を1系統目の遅延量として(ステップS401)、動作を継続する。一方、1系統目の遅延量を+1できない場合(ステップS420においてNo)、遅延量の組合せはないと判断し(ステップS421)、遅延量計算動作を終了する。
【0094】
また、ステップS405又は407において下回らない場合(ステップS405又は407においてNo)は、ステップS419に進む。
【0095】
ステップS419では、2系統目の遅延量を+1できるか確認する(ステップS419)。
【0096】
そして、2系統目の遅延量を+1できる場合(ステップS419においてYes)、ステップS404に戻り動作を継続する。一方、2系統目の遅延量を+1できない場合(ステップS419においてNo)、ステップS420に進む。
【0097】
また、ステップS410、412、414若しくは416において下回らない場合(ステップS405、412、414若しくは416においてNo)は、ステップS418に進む。
【0098】
ステップS418では、3系統目の遅延量を+1できるか確認する(ステップS418)。
【0099】
そして、3系統目の遅延量を+1できる場合(ステップS418においてYes)、ステップS409に戻り動作を継続する。一方、3系統目の遅延量を+1できない場合(ステップS418においてNo)、ステップS419に進む。
【0100】
以上の説明した動作により遅延量の算出を行うことにより、各系統の考え得る遅延量全ての組合せについて検討する必要が無くなる。よって各系統の考え得る遅延量全ての組合せについて検討する場合と比較し、遅延量を減少することが可能となるという効果を奏する。
【0101】
最後に、図13〜15を参照して本実施形態を用いた場合の具体例を3つ示す。
【0102】
本具体例では、GPS(Global Positioning System)等において使用されるGold系列を拡散符号として用いることを想定する。
【0103】
Gold系列は一組の低い相互相関値プリファードペアM系列から低い相互相関値のPN系列を得ることが可能である。また、これは二つの同じ長さのM系列M1とM2に対して、ビットごとに加算して得た系列で、その長さはもとになる系列の長さと同じ長さである。
【0104】
図13〜15において左上に示すのは2系列のM系列を作成するためのシフトレジスタであり、初期値が格納されている。また、次の入力ビットに影響を与えるビットであるTAPの位置をTAP値として表す。
【0105】
そして、2系列のシフトレジスタの出力を加算することによりGold系列が得られる。
【0106】
なお、シフトレジスタの下に記載されているのが今回の例におけるTAP値及び初期値である。そして、このTAP値及び初期値に基づいて得られたGold系列の相関特性が図の右側に記載される。特に右下に記載されている相関特性が干渉の影響が大きいと思われる信号である。そして、この信号の影響を除去するために適切な遅延量は図の左下に示される。
【0107】
このように、本実施形態を用いることにより多様な拡散符号に対応することが可能となるという効果を奏する。
【0108】
なお、本発明の実施形態である信号遅延量決定装置は、ハードウェアにより実現することもできるが、コンピュータをその信号遅延量決定装置として機能させるためのプログラムをコンピュータがコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み込んで実行することによっても実現することができる。
【0109】
また、本発明の実施形態による信号遅延量決定方法は、ハードウェアにより実現することもできるが、コンピュータにその方法を実行させるためのプログラムをコンピュータがコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み込んで実行することによっても実現することができる。
【0110】
なお、本実施形態を実現するためのプログラムが、信号遅延量決定装置に予め記憶されていてもよい。しかし、コンピュータを信号遅延量決定装置の全部又は一部として動作させ、あるいは、上述の処理を実行させるためのプログラムを、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto Optical Disk(Disc))BD(Blu-ray Disc)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、これを別のコンピュータにインストールし、上述の手段として動作させ、あるいは、上述の工程を実行させてもよい。
【0111】
さらに、インターネット上のサーバ装置が有するディスク装置等にプログラムを格納しておき、例えば、搬送波にプログラムを重畳させて、コンピュータにダウンロード等してプログラムを実行してもよい。
【0112】
また、上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0113】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0114】
(付記1)
同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重して通信する送信側装置及び受信側装置で用いられる遅延量を計算するための遅延量計算装置であって、
前記拡散符号と遅延された拡散符号との間の相関値に基づいて前記遅延量を計算する計算手段を備えることを特徴とする遅延量計算装置。
【0115】
(付記2)
付記1に記載の遅延量計算装置であって、
前記計算手段は、
或る系列の任意のデータと他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなるようにおおまかな遅延量を予め定めておく手段と、
おおまかに定められた遅延量の近傍で、前記或る系列の前記任意のデータと前記他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記遅延量を計算する手段と、
を備えることを特徴とする遅延量計算装置。
【0116】
(付記3)
付記1又は2に記載の遅延量計算装置であって、
第1の信号と、前記第1の信号より第1の遅延量だけ遅延される第2の信号と、前記第第2の信号より第2の遅延量だけ遅延される第3の信号が存在する場合に、
前記第1の遅延量だけ遅延させた場合と、前記第2の遅延量だけ遅延させた場合と、前記第1及び第2の遅延量を合算した遅延量だけ遅延させた場合のそれぞれの場合における前記相関値に基づいて前記通知する遅延量を決定することを特徴とする遅延量計算装置。
【0117】
(付記4)
付記3に記載の遅延量計算装置であって、
前記それぞれの場合における前記相関値を合計した値が最小となるように前記通知する遅延量を決定することを特徴とする遅延量計算装置。
【0118】
(付記5)
付記1又は2に記載の遅延量計算装置であって、
前記相関値が許容可能な範囲に収まるように予め閾値を定めておき、前記相関値が前記閾値を下回る範囲内で前記通知する遅延量を決定することを特徴とする遅延量計算装置。
【0119】
(付記6)
付記5に記載の遅延量計算装置であって、
自然数であるN個の信号を多重させる場合に存在する、N−1個の遅延量のそれぞれの量を単独で遅延させた場合と、前記N−1個の遅延量を組合せて合算した量で遅延させた場合、の全ての場合において前記相関値が前記閾値を下回るように遅延量を決定することを特徴とする遅延量計算装置。
【0120】
(付記7)
付記1又は2に記載の遅延量計算装置であって、
前記他の系列は、第1の他の系列を含み、
前記計算手段は、
或る系列の任意のデータと第1の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記第1の他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなるようにおおまかな遅延量を予め定めておく手段と、
おおまかに定められた遅延量の近傍で、前記或る系列の前記任意のデータと前記第1の他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記遅延量を計算する手段と、
を備えることを特徴とする遅延量計算装置。
【0121】
(付記8)
付記1又は2に記載の遅延量計算装置であって、
前記他の系列は、第1の他の系列及び第2の他の系列を含み、
前記計算手段は、
或る系列の任意のデータと第1の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記第1の他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなり、前記或る系列の任意のデータと第2の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記第2の他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなり、前記第1の他の系列の第1のデータと第2の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記第1の他の系列の第1のデータと前記第2の他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなるように、前記或る系列に対する前記第1の他の系列の第1の遅延量及び前記第1の他の系列に対する前記第2の系列の第2の遅延量をおおまかに定めておく手段と、
おおまかに定められた第1の遅延量及び第2の遅延量の近傍で、前記或る系列の前記任意のデータと前記第1の他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第1の遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値、前記或る系列の前記任意のデータと前記第2の他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第1の遅延量と前記第2の遅延量とを合わせた遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値及び前記第1の他の系列の前記第1のデータと前記第2の他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第2の遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記第1の遅延量及び前記第2の遅延量を計算する手段と、
を備えることを特徴とする遅延量計算装置。
【0122】
(付記9)
付記1又は2に記載の遅延量計算装置であって、
前記他の系列は、第1乃至第Nの他の系列を含み、
前記計算手段は、
或る系列の任意のデータと第i(ここで、i=1、2、・・・、N。以下、同様。)の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記第iの他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなり、前記第iの他の系列の第1のデータと第j(ここで、j=1、2、・・・、N。i<j。以下、同様。)の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記第iの他の系列の第2のデータと前記第jの他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなるように、前記或る系列に対する前記第iの他の系列の第iの遅延量及び前記第iの他の系列に対する前記第jの系列の第(i、j)の遅延量をおおまかに定めておく手段と、
おおまかに定められた第iの遅延量及び第(i、j)の遅延量の近傍で、前記或る系列の前記任意のデータと前記第iの他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第iの遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値、及び前記第iの他の系列の前記第1のデータと前記第jの他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第(i、j)の遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記第iの遅延量及び前記第(i、j)の遅延量を計算する手段と、
を備えることを特徴とする遅延量計算装置。
【0123】
(付記10)
送信側装置と、前記送信側装置と通信を行う受信側装置とを含んだ多重信号通信システムであって、
前記通信は、同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重して通信することにより実現され、
前記遅延量は前記拡散符号と遅延された拡散符号との間の相関値に基づいて計算されたものであることを特徴とする多重信号通信システム。
【0124】
(付記11)
付記10に記載の多重信号通信システムであって、
前記遅延量を計算する装置である遅延量計算装置を更に含み、当該遅延量計算装置が、付記1乃至9の何れか1に記載の遅延量計算装置であることを特徴とする多重信号通信システム。
【0125】
(付記12)
受信側装置と通信を行う送信側装置であって、
前記通信を、同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重した信号を生成して、送信することにより実現し、
前記遅延量は、前記拡散符号と遅延された拡散符号との間の相関値に基づいて計算されたものであることを特徴とする送信側装置。
【0126】
(付記13)
受信側装置と通信を行う送信側装置と、遅延量を計算する装置である遅延量計算装置を含む多重通信システムであって、
前記送信側装置が付記12に記載の送信側装置であり、
当該遅延量計算装置が、付記1乃至9の何れか1に記載の遅延量計算装置であることを特徴とする多重信号通信システム。
【0127】
(付記14)
送信側装置と通信を行う受信側装置であって、
前記通信を、同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重した信号を受信することにより実現し、
前記遅延量は、前記拡散符号と遅延された拡散符号との間の相関値に基づいて計算されたものであることを特徴とする受信側装置。
【0128】
(付記15)
送信側装置と通信を行う受信側装置と、遅延量を計算する装置である遅延量計算装置を含む多重通信システムであって、
前記受信側装置が付記14に記載の受信側装置であり、
当該遅延量計算装置が、付記1乃至9の何れか1に記載の遅延量計算装置であることを特徴とする多重信号通信システム。
【0129】
(付記16)
同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重して通信する送信側装置及び受信側装置で用いられる遅延量を計算するための遅延量計算方法であって、
前記拡散符号と遅延された拡散符号との間の相関値に基づいて前記遅延量を計算する計算ステップを備えることを特徴とする遅延量計算方法。
【0130】
(付記17)
付記16に記載の遅延量計算方法であって、
前記計算ステップは、
或る系列の任意のデータと他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなるようにおおまかな遅延量を予め定めておくステップと、
おおまかに定められた遅延量の近傍で、前記或る系列の前記任意のデータと前記他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記遅延量を計算するステップと、
を備えることを特徴とする遅延量計算方法。
【0131】
(付記18)
付記16又は17に記載の遅延量計算方法であって、
第1の信号と、前記第1の信号より第1の遅延量だけ遅延される第2の信号と、前記第第2の信号より第2の遅延量だけ遅延される第3の信号が存在する場合に、
前記第1の遅延量だけ遅延させた場合と、前記第2の遅延量だけ遅延させた場合と、前記第1及び第2の遅延量を合算した遅延量だけ遅延させた場合のそれぞれの場合における前記相関値に基づいて前記通知する遅延量を決定することを特徴とする遅延量計算方法。
【0132】
(付記19)
付記18に記載の遅延量計算方法であって、
前記それぞれの場合における前記相関値を合計した値が最小となるように前記通知する遅延量を決定することを特徴とする遅延量計算方法。
【0133】
(付記20)
付記16又は17に記載の遅延量計算方法であって、
前記相関値が許容可能な範囲に収まるように予め閾値を定めておき、前記相関値が前記閾値を下回る範囲内で前記通知する遅延量を決定することを特徴とする遅延量計算方法。
【0134】
(付記21)
付記20に記載の遅延量計算方法であって、
自然数であるN個の信号を多重させる場合に存在する、N−1個の遅延量のそれぞれの量を単独で遅延させた場合と、前記N−1個の遅延量を組合せて合算した量で遅延させた場合、の全ての場合において前記相関値が前記閾値を下回るように遅延量を決定することを特徴とする遅延量計算方法。
【0135】
(付記22)
付記16又は17に記載の遅延量計算方法であって、
前記他の系列は、第1の他の系列を含み、
前記計算ステップは、
或る系列の任意のデータと第1の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記第1の他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなるようにおおまかな遅延量を予め定めておくステップと、
おおまかに定められた遅延量の近傍で、前記或る系列の前記任意のデータと前記第1の他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記遅延量を計算するステップと、
を備えることを特徴とする遅延量計算方法。
【0136】
(付記23)
付記16又は17に記載の遅延量計算方法であって、
前記他の系列は、第1の他の系列及び第2の他の系列を含み、
前記計算ステップは、
或る系列の任意のデータと第1の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記第1の他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなり、前記或る系列の任意のデータと第2の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記第2の他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなり、前記第1の他の系列の第1のデータと第2の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記第1の他の系列の第1のデータと前記第2の他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなるように、前記或る系列に対する前記第1の他の系列の第1の遅延量及び前記第1の他の系列に対する前記第2の系列の第2の遅延量をおおまかに定めておくステップと、
おおまかに定められた第1の遅延量及び第2の遅延量の近傍で、前記或る系列の前記任意のデータと前記第1の他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第1の遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値、前記或る系列の前記任意のデータと前記第2の他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第1の遅延量と前記第2の遅延量とを合わせた遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値及び前記第1の他の系列の前記第1のデータと前記第2の他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第2の遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記第1の遅延量及び前記第2の遅延量を計算するステップと、
を備えることを特徴とする遅延量計算方法。
【0137】
(付記24)
付記16又は17に記載の遅延量計算方法であって、
前記他の系列は、第1乃至第Nの他の系列を含み、
前記計算ステップは、
或る系列の任意のデータと第i(ここで、i=1、2、・・・、N。以下、同様。)の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記第iの他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなり、前記第iの他の系列の第1のデータと第j(ここで、j=1、2、・・・、N。i<j。以下、同様。)の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記第iの他の系列の第2のデータと前記第jの他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなるように、前記或る系列に対する前記第iの他の系列の第iの遅延量及び前記第iの他の系列に対する前記第jの系列の第(i、j)の遅延量をおおまかに定めておくステップと、
おおまかに定められた第iの遅延量及び第(i、j)の遅延量の近傍で、前記或る系列の前記任意のデータと前記第iの他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第iの遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値、及び前記第iの他の系列の前記第1のデータと前記第jの他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第(i、j)の遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記第iの遅延量及び前記第(i、j)の遅延量を計算するステップと、
を備えることを特徴とする遅延量計算方法。
【0138】
(付記25)
送信側装置と、前記送信側装置と通信を行う受信側装置と、前記送信側装置及び受信側装置で用いられる遅延量を計算する遅延量計算装置とを含むシステムにおける多重信号通信方法において、
前記通信は、同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重して通信することにより実現され、
前記遅延量は、前記遅延量計算装置が前記拡散符号と遅延された拡散符号との間の相関値に基づいて計算する計算ステップにより計算したものであることを特徴とする多重信号通信方法。
【0139】
(付記26)
付記25に記載の多重信号通信方法であって、
前記計算ステップは、
或る系列の任意のデータと他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなるようにおおまかな遅延量を予め定めておくステップと、
おおまかに定められた遅延量の近傍で、前記或る系列の前記任意のデータと前記他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記遅延量を計算するステップと、
を備えることを特徴とする多重信号通信方法。
【0140】
(付記27)
付記25又は26に記載の多重信号通信方法であって、
第1の信号と、前記第1の信号より第1の遅延量だけ遅延される第2の信号と、前記第第2の信号より第2の遅延量だけ遅延される第3の信号が存在する場合に、
前記第1の遅延量だけ遅延させた場合と、前記第2の遅延量だけ遅延させた場合と、前記第1及び第2の遅延量を合算した遅延量だけ遅延させた場合のそれぞれの場合における前記相関値に基づいて前記通知する遅延量を決定することを特徴とする多重信号通信方法。
【0141】
(付記28)
付記27に記載の多重信号通信方法であって、
前記それぞれの場合における前記相関値を合計した値が最小となるように前記通知する遅延量を決定することを特徴とする多重信号通信方法。
【0142】
(付記29)
付記25又は26に記載の多重信号通信方法であって、
前記相関値が許容可能な範囲に収まるように予め閾値を定めておき、前記相関値が前記閾値を下回る範囲内で前記通知する遅延量を決定することを特徴とする多重信号通信方法。
【0143】
(付記30)
付記29に記載の多重信号通信方法であって、
自然数であるN個の信号を多重させる場合に存在する、N−1個の遅延量のそれぞれの量を単独で遅延させた場合と、前記N−1個の遅延量を組合せて合算した量で遅延させた場合、の全ての場合において前記相関値が前記閾値を下回るように遅延量を決定することを特徴とする多重信号通信方法。
【0144】
(付記31)
付記25又は26に記載の多重信号通信方法であって、
前記他の系列は、第1の他の系列を含み、
前記計算ステップは、
或る系列の任意のデータと第1の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記第1の他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなるようにおおまかな遅延量を予め定めておくステップと、
おおまかに定められた遅延量の近傍で、前記或る系列の前記任意のデータと前記第1の他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記遅延量を計算するステップと、
を備えることを特徴とする多重信号通信方法。
【0145】
(付記32)
付記25又は26に記載の多重信号通信方法であって、
前記他の系列は、第1の他の系列及び第2の他の系列を含み、
前記計算ステップは、
或る系列の任意のデータと第1の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記第1の他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなり、前記或る系列の任意のデータと第2の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記第2の他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなり、前記第1の他の系列の第1のデータと第2の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記第1の他の系列の第1のデータと前記第2の他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなるように、前記或る系列に対する前記第1の他の系列の第1の遅延量及び前記第1の他の系列に対する前記第2の系列の第2の遅延量をおおまかに定めておくステップと、
おおまかに定められた第1の遅延量及び第2の遅延量の近傍で、前記或る系列の前記任意のデータと前記第1の他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第1の遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値、前記或る系列の前記任意のデータと前記第2の他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第1の遅延量と前記第2の遅延量とを合わせた遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値及び前記第1の他の系列の前記第1のデータと前記第2の他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第2の遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記第1の遅延量及び前記第2の遅延量を計算するステップと、
を備えることを特徴とする多重信号通信方法。
【0146】
(付記33)
付記25又は26に記載の多重信号通信方法であって、
前記他の系列は、第1乃至第Nの他の系列を含み、
前記計算ステップは、
或る系列の任意のデータと第i(ここで、i=1、2、・・・、N。以下、同様。)の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記第iの他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなり、前記第iの他の系列の第1のデータと第j(ここで、j=1、2、・・・、N。i<j。以下、同様。)の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記第iの他の系列の第2のデータと前記第jの他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなるように、前記或る系列に対する前記第iの他の系列の第iの遅延量及び前記第iの他の系列に対する前記第jの系列の第(i、j)の遅延量をおおまかに定めておくステップと、
おおまかに定められた第iの遅延量及び第(i、j)の遅延量の近傍で、前記或る系列の前記任意のデータと前記第iの他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第iの遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値、及び前記第iの他の系列の前記第1のデータと前記第jの他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第(i、j)の遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記第iの遅延量及び前記第(i、j)の遅延量を計算するステップと、
を備えることを特徴とする多重信号通信方法。
【0147】
(付記34)
受信側装置と通信をする送信側装置が行う多重信号通信方法であって、
前記通信を、同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重した信号を生成して、送信することにより実現し、
前記遅延量は、前記拡散符号と遅延された拡散符号との間の相関値に基づいて計算されたものであることを特徴とする多重信号通信方法。
【0148】
(付記35)
送信側装置と通信をする受信側装置が行う多重信号通信方法であって、
前記通信を、同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重した信号を受信することにより実現し、
前記遅延量は、前記拡散符号と遅延された拡散符号との間の相関値に基づいて計算されたものであることを特徴とする多重信号通信方法。
【符号の説明】
【0149】
100 送信側装置
110 切替器
120 拡散符号生成部
130 拡散部
140 遅延付加部
150 加算器
160 アンテナ
200 受信側装置
210 アンテナ
220 等化部
230 逆拡散部
240 利得調整部
250 検出部
260 拡散符号生成部
270 遅延付加部
300 遅延量計算装置
310 遅延量計算部
320 無線通信部
330 有線通信部
340 有線接続部
350 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重して通信する送信側装置及び受信側装置で用いられるべき遅延量を計算するための遅延量計算装置であって、
前記拡散符号と遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記遅延量を計算する計算手段を備えることを特徴とする遅延量計算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の遅延量計算装置であって、
前記計算手段は、
或る系列の任意のデータと他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなるようにおおまかな遅延量を予め定めておく手段と、
おおまかに定められた遅延量の近傍で、前記或る系列の前記任意のデータと前記他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記遅延量を計算する手段と、
を備えることを特徴とする遅延量計算装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遅延量計算装置であって、
前記他の系列は、第1乃至第Nの他の系列を含み、
前記計算手段は、
或る系列の任意のデータと第i(ここで、i=1、2、・・・、N。以下、同様。)の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記或る系列の前記任意のデータと前記第iの他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなり、前記第iの他の系列の第1のデータと第j(ここで、j=1、2、・・・、N。i<j。以下、同様。)の他の系列の第1のデータとの間の干渉が、前記第iの他の系列の第2のデータと前記第jの他の系列の第2のデータとの間の干渉よりも大きくなるように、前記或る系列に対する前記第iの他の系列の第iの遅延量及び前記第iの他の系列に対する前記第jの系列の第(i、j)の遅延量をおおまかに定めておく手段と、
おおまかに定められた第iの遅延量及び第(i、j)の遅延量の近傍で、前記或る系列の前記任意のデータと前記第iの他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第iの遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値、及び前記第iの他の系列の前記第1のデータと前記第jの他の系列の第1のデータとの間の干渉の量に対応した、前記拡散符号と前記第(i、j)の遅延量だけ遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて前記第iの遅延量及び前記第(i、j)の遅延量を計算する手段と、
を備えることを特徴とする遅延量計算装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の遅延量計算装置であって、
第1の信号と、前記第1の信号より第1の遅延量だけ遅延される第2の信号と、前記第第2の信号より第2の遅延量だけ遅延される第3の信号が存在する場合に、
前記第1の遅延量だけ遅延させた場合と、前記第2の遅延量だけ遅延させた場合と、前記第1及び第2の遅延量を合算した遅延量だけ遅延させた場合のそれぞれの場合における前記相関値に基づいて前記通知する遅延量を決定することを特徴とする遅延量計算装置。
【請求項5】
請求項4に記載の遅延量計算装置であって、
前記それぞれの場合における前記相関値を合計した値が最小となるように前記通知する遅延量を決定することを特徴とする遅延量計算装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の遅延量計算装置であって、
前記相関値が許容可能な範囲に収まるように予め閾値を定めておき、前記相関値が前記閾値を下回る範囲内で前記通知する遅延量を決定することを特徴とする遅延量計算装置。
【請求項7】
請求項6に記載の遅延量計算装置であって、
自然数であるN個の信号を多重させる場合に存在する、N−1個の遅延量のそれぞれの量を単独で遅延させた場合と、前記N−1個の遅延量を組合せて合算した量で遅延させた場合、の全ての場合において前記相関値が前記閾値を下回るように遅延量を決定することを特徴とする遅延量計算装置。
【請求項8】
送信側装置と、前記送信側装置と通信を行う受信側装置とを含んだ多重信号通信システムであって、
前記通信は、同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重して通信することにより実現され、
前記遅延量は前記拡散符号と遅延された前記拡散符号との間の相関値に基づいて計算されたものであることを特徴とする多重信号通信システム。
【請求項9】
請求項8に記載の多重信号通信システムであって、
前記遅延量を計算する装置である遅延量計算装置を更に含み、当該遅延量計算装置が、請求項1乃至7の何れか1項に記載の遅延量計算装置であることを特徴とする多重信号通信システム。
【請求項10】
同一の拡散符号により拡散され、相互に異なった遅延量が与えられた複数系列の信号を多重して通信する送信側装置及び受信側装置で用いられる遅延量を計算するための遅延量計算方法であって、
前記拡散符号と遅延された拡散符号との間の相関値に基づいて前記遅延量を計算する計算ステップを備えることを特徴とする遅延量計算方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−191422(P2012−191422A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52901(P2011−52901)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)