説明

遊戯機用前面板

【課題】組立作業工程における密閉工程数を削減し、密閉作業の不具合の発生を防止できる遊戯機用前面板を提供する。
【解決手段】遊戯盤の前方に配置される遊戯機用前面板10であって、前記遊戯盤側に配置される内側透明板11aと、遊戯者側に配置される外側透明板11bと、外側透明板11bと内側透明板11aとの外周部を固定し、少なくとも一部外縁方向に突出した拡張部12dを有する枠体12と、内外各透明板11a、11bと枠体12によって囲まれる空間と、拡張部12dに収容される吸湿部材15と、吸湿部材15を拡張部12dに収容保持し、枠体12の拡張部12dが設けられた枠体内周部と着脱自在な係合部を有する蓋部材16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉作業の不具合の発生を防止できるパチンコ機等の遊戯機用前面板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機等の弾球遊戯機において遊戯盤を透視するものであって、遊戯盤面側に対応する内側透明板と、該内側透明板から所定間隔を隔てて配置され前面に露出される外側透明板からなる二重の複層構造をなす遊戯機用前面板が知られている。
【0003】
遊戯機用前面板として、各透明板の外周部を樹脂などの枠体に固定してそれらを一体化し、枠体と各透明板によって囲まれた密閉空間を形成させたものが一般的である。この密閉空間の空気を乾燥させ、各透明体の板面の結露を防止するためにゼオライトやシリカゲルなどの吸湿剤が枠体周辺域の所定位置に収容された遊戯機用前面板が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1および特許文献2には、枠体の外周側に吸湿剤を収納する収納室を設け、この収納室の開口部を蓋部材によって密閉し吸湿剤を封入する遊戯機用前面板が開示されている。上記文献では、枠体の外周部に設けられた収納室と各透明板間に形成される密閉空間は、収納室の内周側に設けられた通気孔を介して連通されている。
【0005】
また、特許文献3には、枠体と各透明板によって囲まれた空間内において、吸湿手段と前記吸湿手段を位置決めするための位置決め部を枠体の内周側に設け、枠体に沿って各透明板を接着し、枠体と各透明板によって囲まれた空間を密閉することを特徴とした遊戯機用前面板(透明組立体)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−24120号公報
【特許文献2】特開平9−718号公報
【特許文献3】特開2004−321713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2に記載の遊戯機用前面板では、組立作業工程において、枠体の内外両側に各透明板を接着し密閉する工程に加え、吸湿剤を収納する収納室を蓋部材にて密閉する工程が必要となる。密閉箇所はできるだけ作業精度を高める必要があり、密閉箇所の増加にともない作業工程に負担が掛かり、組立作業効率が低下するという問題点があった。
【0008】
特許文献3に記載の遊戯機用前面板では、枠体の形状に沿った内外各透明板を使用する必要があり、外周部に拡張部を有するような複雑な形状の枠体を使用する場合、その枠体の形状に応じて、透明板の形状が複雑になり、特に複雑な形状の透明板の角部において、密閉作業の不具合が生じやすいという問題点があった。また、取り扱い等の管理上の観点から、内外各透明板の形状は略円形などのできるだけシンプルな形状のものが望ましい。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、組立作業工程における密閉工程数を削減し、密閉作業の不具合の発生を防止できる遊戯機用前面板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、遊戯盤の前方に配置される遊戯機用前面板であって、前記遊戯盤側に配置される内側透明板と、遊戯者側に配置される外側透明板と、該外側透明板と前記内側透明板との外周部を固定し、少なくとも一部外縁方向に突出した拡張部を有する枠体と、前記内外各透明板と前記枠体によって囲まれる空間と、前記拡張部に収容される吸湿部材と、前記吸湿部材を前記拡張部に収容保持し、前記枠体の拡張部が設けられた枠体内周部と着脱自在な係合部を有する蓋部材と、を備えることを特徴とする遊戯機用前面板である。
【0011】
また、本発明は、前記内側透明板と、前記外側透明板が実質的に同一な略円形状であることを特徴とする上述の遊戯機用前面板である。
【0012】
また、本発明は、上述の遊戯機用前面板の製造方法において、前記内外各透明板と前記枠体を圧着することによって、前記拡張部の封止と前記空間の封止を同時に行うようにしたことを特徴とする遊戯機用前面板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の遊戯機用前面板によれば、組立作業工程における密閉工程数を削減し、さらに、密閉作業の不具合の発生を防止できる遊戯機用前面板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】遊技機本体の概略図である。
【図2】本発明に係る遊戯機用前面板の分解斜視図である。
【図3】本発明に係る遊戯機用前面板の断面図A−AおよびB−Bである。
【図4】本発明に係る遊戯機用前面板の拡張部の近傍拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の遊戯機前面板10の実施形態例を、図面を用いて説明する。図1に例示したように、遊戯機前面板10は、パチンコ機等の遊技機1本体の扉枠3に取り付け、取外し使用されるものである。
【0016】
遊戯機用前面板10は、図2に示すように、遊戯盤2側に配置される内側透明板11aと、遊戯者側に配置される外側透明板11bと、を所定間隔隔てて配置し、内外各透明板11a、11bの外周部を固定する枠体12と、を備える。さらに、図3および図4に示すように、遊戯機用前面板10には、枠体12と内外各透明板11a、11bとによって囲まれる密閉空間14が形成されている。
【0017】
また、図2に示すように、枠体12は、略円環状であり、枠体12の外周側、少なくとも一部において、枠体12の外縁方向に拡張された拡張部12dが形成されている。この拡張部12dには、内外各透明板11a、11bと枠体12によって閉鎖される密閉空間14において、内外各透明板11a、11bの内側表面に結露が生じないように、ゼオライトやシリカゲル等の吸湿部材15が収容される。
【0018】
さらに、この拡張部12dを除いて、枠体12の内周側中央付近は、断面略凸状部12aが周設される段付形状であり、断面略凸状部12aの両側面12b、12bは互いに略平行となっている。この両側面12b、12bに接着剤を塗布し接着層13を形成させる。この接着層13を介することによって、内外各透明体11a、11bと枠体12が一体化される。
【0019】
図4に示すように、枠体12の拡張部12dの内周側には、開口部12eが設けられており、さらに、この開口部12eの側面には、それぞれ凸部12cが形成されており、拡張部12dに収容される吸湿部材15を収容保持するための蓋部材16が、開口部12eに嵌め込まれる。
【0020】
具体的には、蓋部材16の側面部には、凹部16aが形成されており、一方、枠体12の拡張部12aの内周側に位置する開口部12eの側面部には、凹部16aとの係合を可能にした凸部12cが形成されている。この着脱自在で係合可能な凹部16aと凸部12cによって、蓋部材16を枠体12の拡張部12aに容易に嵌込み取付けることができる。また、蓋部材16には吸着剤15が収容される拡張部12aと密閉空間14とを連通させるための複数の通気孔16bが設けられている。
【0021】
なお、上記説明では枠体12の内周側に位置する開口部12eの側面部に凸部12cを形成し、一方、蓋部材16の側面部には、凹部16aを形成し、枠体12と蓋部材16を係合自在とする構成としたが、逆に、枠体12に凹部を、蓋部材16に凸部を設けるようにしてもよい。また、各凹凸部を形成する穴の形状、大きさは特に制限されず適宜設計されるべきものである。
【0022】
また、枠体12の外周部には、適宜数箇所、対称関係となる位置に取付部12fが設けられており、各取付部12fには取付孔が形成されている。図1に示すように、この取付孔に蝶ネジ等の締結具(図示せず)を挿通し遊戯機1本体の扉枠3に取り付けられる。
【0023】
枠体12の材質は、軽量性や取扱性の観点からスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂を採用するとよい。
【0024】
接着層13を形成する接着剤としては、シリコーン系、ポリサルファイド系、ブチルゴム系などのゴム系接着剤を使用することができ弾力性があり耐候性、耐久性に優れるものを用いるとよい。
【0025】
内外各透明板11a、11bには、強化ガラス板、半強化ガラス板、フロートガラス板等のガラス板、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル等の透明樹脂板、あるいは遮音中間膜等をガラス板で挟み込み接着した合わせガラス板を用いることができる。なお、騒音低減効果を向上させるには内側透明板11aに合わせガラス板を用いるとよい。
【0026】
また、本発明における遊戯機用前面板10に用いる内外各透明板11a、11bの形状は共に実質的に同一な形状を用いることが好ましく、特に、内外各透明板11a、11bともに、略円形状にすることが好ましい。その理由としては、両者の形状を略円形の実質的に同一な形状にすることによって、少なくとも一部に外部方向に拡張した部分を有する複雑な形状の透明板を用いるより、密閉作業に不具合が少なく、取り扱いの管理が行いやすいためである。
【0027】
次に、本発明に係る遊戯機用前面板10の製造方法について、内外各透明板11a、11bと枠体12の組立手順を中心に説明する。なお、本発明では、内側透明板11aと外側透明板11bを組み付ける順番については特に制限されないが、ここでは、便宜上のため内側透明板11a、外側透明板11bの順に組み込む手順について説明する。
【0028】
まず、枠体12を作業台に載置した状態で、枠体12の断面略凸状部12aの側面12bに接着剤を塗布し接着層13を形成させる。この接着層13を介して内側透明板11aを貼着させる。さらに、内側透明板11aを貼着した枠体12の内側透明板11aを下面にして作業台に載置する。
【0029】
次いで、内側透明板11aを貼着した枠体12の拡張部12dに吸湿部材15を収容し、拡張部12dの内周側に位置する開口部12eの側面部に設けられた凸部12cと蓋部材16の側面部に設けられた凹部16aとを係合させることによって、吸湿部材15を拡張部12d内に収容保持する。
【0030】
さらに、内側透明板11aと同様に、外側透明板11bを、接着層13を介して枠体12に貼着させることによって、内側透明板11aと、外側透明板11b、枠体12によって囲まれる空間14を形成し、遊戯機用前面板10が組み立てられる。
【0031】
上述のような組み立て工程を経ることによって、拡張部12d内の封止と、枠体12と内外各透明板11a、11bとによって囲まれる密閉空間14との封止を簡便な操作で同時に行うことが可能となり、密閉作業の負担を大幅に低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、パチンコ機等の遊戯機用前面板として利用でき、遊戯機用前面板の組立工程において、密閉作業の不具合の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 遊戯機
2 遊戯盤
3 扉枠
10 遊戯機前面板
11a 内側透明板
11b 外側透明板
12 枠体
12a 断面略凸状部
12b 断面略凸状部側面
12c 凸部
12d 拡張部
12e 枠体開口部
12f 取付部
13 接着層
14 密閉空間
15 吸湿剤
16 蓋部材
16a 凹部
16b 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊戯盤の前方に配置される遊戯機用前面板であって、
前記遊戯盤側に配置される内側透明板と、
遊戯者側に配置される外側透明板と、
該外側透明板と前記内側透明板との外周部を固定し、少なくとも一部外縁方向に突出した拡張部を有する枠体と、
前記内外各透明板と前記枠体によって囲まれる空間と、
前記拡張部に収容される吸湿部材と、
前記吸湿部材を前記拡張部に収容保持し、前記枠体の拡張部が設けられた枠体内周部と着脱自在な係合部を有する蓋部材と、
を備えることを特徴とする遊戯機用前面板。
【請求項2】
前記内側透明板と、前記外側透明板が実質的に同一な略円形状であることを特徴とする請求項1に記載の遊戯機用前面板。
【請求項3】
前記請求項1又は請求項2に記載の遊戯機用前面板の製造方法において、前記内外各透明板と前記枠体を圧着することによって、前記拡張部の封止と前記空間の封止を同時に行うようにしたことを特徴とする遊戯機用前面板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−157631(P2012−157631A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20870(P2011−20870)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】