説明

遊技台間イオン発生機

【課題】遊技に興じる人に対し、隣の人の煙草の臭い、その一人の空間内での空気に含まれる細菌、カビ、またウィルス等を殺菌、除去、不活性化させることができ、快適な空間を作り出すイオン発生機を提供する。
【解決手段】隣接する遊技台の間のスペースに設置される筺体11と、空気を吸い込む吸込口12と、空気を吹き出す吹出口13と、イオンを発生するイオン発生装置1と、筺体11の内部に設けられ、吸込口12から吸い込んだ空気をイオン発生装置1が発生するイオンとともに吹出口13から送出する送風機2とを備えた遊技台間イオン発生機であって、吹出口13からの空気の吹き出し方向を、向かって右側に隣接する遊技台側に傾斜させる偏向部材17を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンを空間に放出するイオン発生装置を備えた遊技台間イオン発生機に関する。
【背景技術】
【0002】
居住空間を居心地のよい環境にするために、その空間の空気を清浄化するための空気調和機が一般的に用いられている。その空気調和機としては、空間内の温度、湿度を快適な状態に保つもの、また空気を清浄化するフィルタ等を有した空気清浄機等がある。それらの機器において、さらに空気中にイオンを放出するイオン発生装置を内在されることで、浄化または温度、湿度調整された空気と共にイオンを放出させることができる。特に、負イオンの量が増えることで、人に対しリラックス効果が期待できる。
【0003】
そのため、空気清浄機を含む空気調和機に、イオン発生装置を登載されていれば、快適な空気環境を提供できると同時に、放出される負イオンで人をリラックスさせる効果が期待できる。
【0004】
また、イオン発生装置において、負イオンだけでなく、正イオンも放出させることで、上記効果に加え、空気中に浮遊する細菌、黴、臭い等を殺菌、分解、除去等、不活性化させることが可能となる。そのイオン発生装置においては、例えば大気中におけるコロナ放電によって空気中に正イオンであるH(HO)m(mは任意の自然数)と、負イオンであるO(HO)n(nは任意の自然数)を同等量放出するようにしている。これにより、両イオンが空気中の浮遊カビ菌やウィルスの周りを取り囲んで付着し、その際に反応生成される活性種の水酸基ラジカル(・OH)の作用により、前記浮遊カビ菌等を不活化することが可能となる。このようなイオン発生装置に関する発明については、既に特許文献1、特許文献2、特許文献3等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−047651号公報
【特許文献2】特開2002−319472号公報
【特許文献3】特開2010−055960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に開示されているイオン発生機によれば、コロナ放電を行なうための一つの電極部分に交流電圧を加えることで正または負のイオンを交互に発生させている。これに対し、特許文献3に開示されているイオン発生機においては、負と正イオンを発生させる電極部を別々に設け、それぞれの電極部分で正負イオンを発生させるイオン発生機を開示している。
【0007】
従来のイオン発生機においては、正イオンと負イオンが別々に発生するイオン装置を搭載する場合、特許文献3記載のように正イオン発生部と負イオン発生部の並び方向を、送風機から送出される風に対し、垂直になる様に設置していた。その配置状態を図に従って説明する。
【0008】
図13に示すようにイオン発生装置100は、正イオン発生部101と負イオン発生部102の中心を結ぶ直線の方向が、イオン発生機110内に配置される送風機(図示せず)による送風方向AまたはBに対し、交差(略直交)するようにイオン発生機110内に搭載される。
【0009】
しかし、そのような搭載方法ではイオン発生機110本体の外郭のイオン発生部を結ぶ直線方向の幅が少なくともイオン発生装置100の長手方向の幅よりも大きくなる。そのため、イオン発生機110を設置する幅が限られてしまう。例えば、イオン発生機110を載置する空間(隙間)が、イオン発生機の幅よりも大きければ問題ないものの、イオン発生部間よりも狭い空間内には配置できなくなる。従って、設置する場所に制限され、狭い空間でも配置できる薄型の装置が望まれる。
【0010】
その問題点を解消するためには、正イオン発生部101と負イオン発生部101を結ぶ直線の方向が、送風機からの風に対して図14に示すように平行に設置すれば、送風される方向の長さが長くなるが、それと直交する方向の幅が狭くなる。図14に示すように、イオン発生装置100の正イオン発生部101と、負イオン発生部102の中心を結ぶ直線方向が、送風方向に沿うように配置すれば、イオン発生機110がイオン発生装置100の短手方向の幅程度になる。
【0011】
しかしながら、このような配置の場合、風上側の正イオンが風下側で発生する負イオンの影響を受けて減少してしまう。すわなち、風上で発生する正イオンが風下で発生した負イオンと結合し中和され、発生させたイオンの多くが消滅する。その結果、多くの正イオンと負イオンをバランスよく大量に機外へと放出させることが困難となり、放出させる正負イオンの量が非常に少なくなる。
【0012】
本発明は、狭い空間にも配置が可能なイオン発生機を提供することを第1の目的とする。
【0013】
本発明の目的の一つは、発生した正負イオンを効率よく機外へと放出することができるイオン発生機を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、イオン発生機の薄型を可能にし、発生した正負イオンを効率よく機外へと放出できるイオン発生機を提供する。特に発生したイオンの消滅をできるだけ抑制し、多くの正負イオンを機外へと放出させるイオン発生機を提供する。
【0015】
さらに、本発明の目的は、機外へと放出させる正負イオンのバランスを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る遊技台間イオン発生機は、隣接する遊技台の間のスペースに設置される筺体と、空気を吸い込む吸込口と、空気を吹き出す吹出口と、イオンを発生するイオン発生装置と、筺体の内部に設けられ、吸込口から吸い込んだ空気をイオン発生装置が発生するイオンとともに吹出口から送出する送風機とを備える。また、吹出口からの空気の吹き出し方向を、向かって右側に隣接する遊技台側に傾斜させる偏向部材を備える。
【0017】
また、本発明に係る遊技台間イオン発生機は、偏向部材は、吹出口からの空気の吹き出し方向を約3°傾斜させる。
【0018】
また、本発明に係る遊技台間イオン発生機は、送風機の吐出口と吹出口とを連結する通気路と、通気路を区分する仕切部材をさらに備える。イオン発生装置は、正イオンを発生する正イオン発生部と負イオンを発生する負イオン発生部とを別々に設けられる。正イオン発生部は区分された一方の通気路に、負イオン発生部は区分された他方の通気路に臨ませて設置し、偏向部材は、仕切部材の端縁から延長され傾斜して設けられている偏向板である。
【発明の効果】
【0019】
遊技台の隣同士をイオン発生機で区切られた空間を再現することができる。そのため、遊技に興じる人に対し、隣の人の煙草の臭い、その一人の空間内での空気に含まれる細菌、カビ、またウィルス等を殺菌、除去、不活性化させることができ、快適な空間を作り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の基本構成におけるイオン発生装置を送風機からの風に対し、平行に取り付けたイオン発生機を側面側から目視した内部構造を示す概略構造模式図。
【図2】本発明の基本構成におけるイオン発生装置を送風機からの風に対し、平行に取り付けたイオン発生機を上部から目視した内部構造を示す概略構造模式図。
【図3】基本構成のイオン発生機の内部構造と共に、通気路を区分した各通気路の風量比を示す図。
【図4】イオン発生機の吹出口側にイオン拡散装置を取付けた状態を示す斜視図。
【図5】イオン発生機を取付けたイオン拡散装置の構造の一例を示す概略構造模式図。
【図6】イオン発生機によるイオン濃度を測定するための空間の概要、およびイオン発生機の設置位置を示す配置図。
【図7】図6のイオン濃度測定を行う空間の上部から目視したイオン発生機の配置図。
【図8】本発明のイオン発生機の第1の実施形態における構造を説明するための上部から目視した概略構造模式図。
【図9】本発明の第1の実施形態による2つの通気路の風量の違いを説明するための図。
【図10】本発明のイオン発生機の第2の実施形態における構造を説明するための上部から目視した概略構造模式図。
【図11】本発明のイオン発生機の第3の実施形態における構造を説明するための上部から目視した概略構造模式図。
【図12】本発明のイオン発生機の第4の実施形態における構造を説明するための上部から目視した概略構造模式図。
【図13】送風機からの送風方向に対しイオン発生装置を交差する方向に配置したれを示す図。
【図14】送風機からの送風方向にイオン発生装置を配置した例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明のイオン発生機の構成について図面に従って説明する。
【0022】
(イオン発生機の基本構成)
図1から図3は本発明の基本構成におけるイオン発生機の構成を説明するためのもので、図1はイオン発生機の内部構造を示す側面から目視した概略構造の模式図、図2はイオン発生機を上部より目視した送風方向の配置構造を示す図、また図3は送風量の違いを説明するための図である。
【0023】
まず、図1においてイオン発生機10は、その外郭を構成する筐体11内に正および負のイオンを個別に発生するイオン発生装置1が設けられている。イオン発生装置1の横、図1においては左横には発生イオンを機外へと放出させるための送風機2が設けられている。この送風機2は、図2に示すように例えばシロッコファン21を有し、そのファンを回転させるモータ22を備えている。送風機2を構成するファンついては、シロッコファン限らず、送風を目的とするものであれば、いずれの構造のファンでもよい。
【0024】
筐体11は、一例として略直方体形状をなし、上記送風機2を構成するファン21に対向し、外部空気を筐体内に吸引する吸込口12が形成されている。この吸込口12に対し、外部から吸引された空気はファン21の回転により、上記イオン発生装置1の方向へと方向変換され、機外へと放出する吹出口13が、吸込口12に対し直交する方向の面側に設けられている。送風機2の下流にはイオン発生装置1のイオン発生部を通る通気路24が連通されている。この通気路24は、吸込口12と吹出口13とを連通する送風路の一部を構成するもので、送風路の上流側に送風機2が配置される。
【0025】
送風機2は、ファン21と所定の間隔を隔てた外周面を囲うように送風ガイド23を有する。この送風ガイド23は上記通気路24の流入口26に通じるように設けられており、吸引した空気を効率よくイオン発生装置1を通じて吹出口13から放出できるようにしている。
【0026】
また、イオン発生装置1は、それぞれ正負のイオンを個別に発生するよう負イオン発生部3と、正イオン発生部4とを設けている。この負イオン発生部3および正イオン発生部4が、上記通気路24に放出口を臨ませてイオン発生装置1が設けられている。
【0027】
イオン発生装置1の負イオン発生部3と正イオン発生部4は、その配置状態を例えば図2に示すように通気路24に対し、傾斜するように配置されている。つまり、負イオン発生部3と正イオン発生部4の中心を結ぶ直線方向が、通気路24の通風方向に対し傾斜するようにして、各正負イオン発生部が配置される。図2においては、通気路24の風上側に負イオン発生部3、風下側に正イオン発生部4が、配置されている。
【0028】
上記通気路24は、その通気路の流入口26から吹出口13までを2分し、通気路を区分するための仕切部材25が設けられている。仕切部材25で2分された通気路24の一方の第1通気路24Aには、負イオン発生部3が位置付けられ、他方の第2通気路24Bには、正イオン発生部4が位置付けられている。これにより、送風機2による送風により、風上側に位置する負イオン発生部3で発生した負イオンは、第1通気24Aを通り、風下側の正イオン発生部4で発生した正イオンと結合し中和されることが阻止された状態で、吹出口13より放出される。これに対し、風下側の正イオン発生部4で発生した正イオンは、負イオンと通気路24内で結合されることなく、そのまま吹出口13から放出される。
【0029】
以上のようにイオン発生装置1でそれぞれ個別に発生した正負イオンは、吹出口13より効率よく放出される。この場合、通気路24の送風方向に沿って、イオン発生装置1の負イオン発生部3と正イオン発生部4とが送風方向に間隔を隔てて離間した状態で配置された格好となるため、送風方向と直交する方向の寸法(幅)が大きくなることなく、できる限り幅狭のイオン発生機10を提供できる。
【0030】
また、イオン発生機10によれば、通気路24内で、正負イオン同士が結合されるのを仕切部材25にて阻止される格好で、吹出口13より放出されるため、発生した正負イオンを効率よく機外へと送出できる。
【0031】
そのため、狭い限られた空間でもイオン発生機10を設置することができ、配置位置等が制限されるのを少なくでき、発生イオンで除菌、殺菌、また臭い等を除去できる。
【0032】
次に、本発明において、上述した基本構成のイオン発生機を用い、さらに正負イオンの発生効率を高める検証を行なった。その検証は、図1等に示したイオン発生機10については、正負イオン発生部を区分するように仕切部材25を設け、発生イオンしたイオンが結合等で消滅するのをできるだけ抑制し、効率よく正負イオンを放出し、そのときのイオンバランスを良好にできるイオン発生機を得るためでもある。
【0033】
(基本構成の検証)
基本構成のイオン発生機10は、先に説明したとおり風上側に対する風下側イオンの影響を無くすために、正イオン発生部と負イオン発生部を区分するように間に仕切部材25を設置している。その区分としては配置されたイオン発生装置1を空気が送付される通気路24を仕切部材25にて2等分(断面積でも同等)している。また、イオン発生装置1は、送風機2からの風向きに対して、正負のイオン発生部3、4の並びが平行になるように配置している。また、正負イオン発生部3、4は、仕切部材25にて区分された各通気路24A、24Bに対応させるために、中心を結ぶ直線が傾斜するように配置されている。
【0034】
このイオン発生装置1を搭載してなるイオン発生機10本体の外郭大きさ、つまり寸法を以下に示す。
【0035】
吹出される風向きの方向を前後として吹出口13側を前部、その反対側の奥を後部とする。その前後方向の長さ(奥行き)を図1に示すように140mm、図1においてイオン発生装置1側を上部、通気路24側を下部としてその上下方向の高さを93mm、図2においてイオン発生機10の吹出口13側から見た左右方向の幅を32mmに設定している。
【0036】
また、送風機2のファンについてはシロッコファン21を設け、その最大風量を0.39m/minとした。このとき、負イオン発生部3を送風機2からの風に対し、風上側に、正イオン発生部4を風下側に配置している。2つのイオン発生部3、4の間には仕切部材25を設け、2つのイオン発生部3、4を通過する通気路24を第1通気路24Aと第2通気路24Bに区分しており、上述したとおり、通気路24を2等分している。
【0037】
この場合、2つの通気路24A、24Bの断面積は等しいが、通過する風量については吹出口13において計測すると図3に示すように、風量比は第1通気路24A:第2通気路24B=0.6:1となった。つまり、通気路24Bの方が、通気路24Aよりも、風量が多く、その風量差が約2倍程度になる。これはシロッコファン21の特性にもよるが、またファン21の吹出口(通気路24の流入する口側)からイオン発生機10の吹出口13までの距離が図1に示したように70mm程度と短いため、ファンから送出される風が安定していないためである。
【0038】
このイオン発生機10に、図4に示すようなイオン拡散装置15を吹出口13に対応ささせて取付ける。このイオン拡散装置15の風の吹出口16は、イオン発生機10本体の吹出口13の上部、特にイオン発生装置1と対応する吹出口13が存在しない部分にも形成されている。そのイオン発生装置1と対向する部分からも空気が吹出されるように、イオン拡散装置15の吹出口16が、上記吹出口13の幅よりも狭く絞り込むような形状に、かつイオン発生装置1側にも延長されて形成されている。しかも、風向きがイオン拡散装置15の正面吹出し方向に対して、図5に示すように約3°程度、空間内向きにとなるように、偏向板(偏向部材)17が仕切部材25の端縁から延長されるような格好で傾斜して設けられている。
【0039】
以上説明したイオン拡散装置15を取付けたイオン発生機10によるイオンバランスの状況を確認するためにイオン測定用の空間を準備した。その空間は、各壁で区切られた空図6に示すような空間である。図6に示す空間30に上記イオン発生機10を配置する。
【0040】
空間30は、イオン発生機10を取付ける前部および後部の壁31および32、イオン発生機10に対する左右の側壁33および34、上下方向の天壁35、底壁(底面)36で囲まれている。
【0041】
2個のイオン発生機10は、空間30を構成する前後壁31、32に、それぞれの吹出口13が対向するように取付けられている。この空間30の大きさ、つまり容積としては、図6に示すように、イオン発生機10を前後方向の壁の間隔(奥行き)を、2000mm(2m)、上下方向の天壁35と底壁36との間隔である高さを2500mm(2.5m)、空間の側面となる側壁33、34の側面間の幅を1000mm(1m)とした。
【0042】
この空間30の前後面に設けられたイオン発生機10は、図6において左右の側壁から100mm、底面からの高さ1165mmの位置にイオン拡散装置15の吹出口16中心が位置するように対向して取付けた。また、図7に示すように、各イオン発生機10においては、左右の側壁33、34の面に対し、約3°内面に吹出すようにした上述したイオン拡散装置15が取付けられている。
【0043】
以上のように配置したイオン発生機10を動作させ、放出されたイオンの量を確認するために、イオンカウンターを使用して、イオン濃度を測定した。そのイオンカウンターの設置位置、つまり測定ポイントPが、底板(底壁)36からの高さ1200mm、左右の側壁の中心、つまり側壁33、34から500mm、イオン発生機10を取付けた後部壁から500mmとなるように、イオンカウンターを設置した。
【0044】
以上の結果、図6、図7に示した状態でイオン濃度の状況を測定した結果を以下の表1に示す。
【0045】
【表1】

以上の表1に示す結果によれば、正イオンの濃度が負イオン濃度よりも高くなった。これは、風量が多い風下側で発生した正イオンが、風上側で発生した負イオンに影響を及ぼし、正イオン:32,600個/cm、負イオン:11,000個/cmと、風下側の正イオンが負イオンの約3倍程度となり、このように、単純に二つのイオン発生部3、4を仕切部材25でもって等分して区分しても、放出されるイオンバランスはさほど向上していない。
【0046】
以上、基本構成によるイオン発生機10においては、イオン発生部3、4から発生したイオンを互いに干渉しないように仕切部材25で区分するようにしても、イオンバランスは向上されない。しかし、負イオンについても、比較的高い濃度になっており、仕切部材25を設けて、各イオン発生部の通気路を区分することによる効果はある。
【0047】
本発明の上述した基本構成によるイオン発生機10の構造を踏まえて、さらにイオンバランスを向上させてなる最良の実施形態による構成を以下に順を追って説明する。
(第1の実施形態)
図8は、第1の実施形態によるイオン発生機10を示す図であり、内部構造を示すもので、特に基本構成を説明した図2のイオン発生機10に対応するものである。なお、説明の都合上、イオン発生機については、同一符号10を示して説明することにする。以下に説明するイオン発生機10については、基本構成と異なる部分について符号を異ならせ、その詳細について説明することにする。つまり、同一符号については、基本構成において説明した構成と同様である。
【0048】
先に説明した基本構成によるイオン発生機10に対し、この第1の実施形態によるイオン発生機10については、仕切部材25が異なる。特に、第1の実施形態における仕切部材は、図8に示すように符号25Aとして示している。
【0049】
この第1の実施形態における仕切部材25Aは、通気路24を2分するための仕切りの中ほど付近から風上側の部分が、吸込口12の方に向くように、くの字形状に形成されている。つまり、通気路24が区分された第1通気路24A側の流入口26Aの断面積を、第2通気路24Bの流入口26Bよりも大きくした。これは、正イオンと負イオンのバランスを向上させるために、第1通気路24Aの流入口26Aの断面積を第2通気路24Bに比べて広げることで、風上側の負イオン発生部3が設置されている第1通気路24Aの風量比を、増やすためである。つまり、仕切部材25Aは、通気路24を区分するとともに、区分した一方の第1通気路24Aを通過する風量が、他方の第1通気路24Aを通過する風量と異なるようにしており、第1通気路24A側の風量が多くなるようにしている。
【0050】
ここで、第1通気路24Aと第2通気路24Bの流入口26A、26Bにおける断面積の比は、第1通気路24A:第2通気路24B=3:1とした。この時、イオン発生機10の吹出口13における風量比は、図9に示すように、第1通気路24A:第2通気路24B=2.5:1となった。
【0051】
仕切部材25Aを用いたイオン発生機10に基本構成と同様にイオン拡散装置15を、吹出口13に対向して取付け、基本構成の検証と同様に、図6および図7に示す空間30でのイオン濃度を測定した。その測定結果については、表2に示したとおりである。
【0052】
【表2】

この第1の実施形態のイオン発生機10によれば、各イオン濃度は、正イオン:37,500個/cm、負イオン:25,100個/cmとなった。そのイオンバランスとしては、正イオンが、負イオンの約1.5倍となった。このように、風量比が2.5倍にも関わらず、風上側のイオン量は風下側のイオン量に対して少なくなる。しかしながら、イオンバランスは、向上し、改善されている。
【0053】
以上のように、イオン発生部3、4に対する通気路24を仕切部材25Aを用いて各通気路24A、24Bに区分したとき、吸込口12側の第2通気路24Bへの風量を、他方よりも少なくなるように構成した。これにより、イオンバランスの向上が図られ、大きく改善できた。これにより、正負イオンによる効果を高めることが可能となった。
【0054】
この第1の実施形態において、風上側に配置するイオン発生部3の第1通気路24Aの風量を、風下側に配置される正イオン発生部4の第2通気路24Bよりも多くするために、仕切部材25による通気路の区分する形状による。つまり、風量を多くするために仕切部材25は、通気路24の流入口26の断面積を変えるような形状に形成されている。
(第2の実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態におけるイオン発生機10の構成を示す図である。この第2の実施形態のイオン発生機10と、先に説明した第1の実施形態によるイオン発生機10との違いは、イオン発生装置1において、負イオン発生部3と正イオン発生部4の配置位置を入れ替えたものである。
【0055】
この第2の実施形態によるイオン発生機10についても、第1の実施形態におけるイオン発生機同様に、図6および図7に示した空間内でのイオン濃度を測定した。なお、第2の実施形態のイオン発生機10においても、第1の実施形態によるイオン発生機10同様、図9に示したように第1通気路24Aと第2通気路24Bとに風量比と同等である。
【0056】
つまり、第1通気路24Aと第2通気路24Bの流入口26A、26Bにおける断面積の比は、第1通気路24A:第2通気路24B=3:1とした。この時、イオン発生機10の吹出口13における風量比は、第1通気路24A:第2通気路24B=2.5:1である。
【0057】
この第2のイオン発生機10において、イオン拡散装置15を取付け、図6、図7に示した空間30内でのイオン濃度測定を実施した。その結果は、表3に示すとおりである。
【0058】
【表3】

表3に示したとおり、正イオン:30,700個/cm、負イオン:32,600個/cmとなり最もイオンバランスが良くなった。第1の実施形態によるイオン発生機10の結果と比べて、正イオン濃度より負イオン濃度が高くなっただけでなく、正イオンの減少比率が約18%に対して負イオンの増加比率が約30%となり、負イオンの濃度増加に対して、正イオンの濃度低下が少なかった。これは自然界にはもともと正イオンが負イオンに比べ多く存在していることから分かるように、正イオンが負イオンに比べて消滅しにくいためである。
【0059】
以上のように、仕切部材25Aを使用し、正イオン発生部4を風上側、負イオン発生部3を風下側に設置することで、イオン発生装置1をほぼ風向きに対して平行に使用したイオン発生機10においてもイオンバランスのとれた空間を作り出せることが可能となった。
【0060】
第2の実施形態においても、イオン発生機10より吹出される風にてエアカーテンを形成するイオン拡散装置15を搭載した場合について述べた。しかし、このような第2の実施形態、および第1の実施形態で示したイオン発生機10にエアカーテン機能を備えるイオン拡散装置15を設けるものに限らず、イオン発生装置1を有し、室内の空気を浄化して室内に送出する空気清浄機及びそれを備えた空気清浄方法に利用することができる。これは、以下に示す実施形態においても同様である。
(第3の実施形態)
図11は、本発明の第3の実施形態によるイオン発生機10の構成を示す図である。この第3の実施形態のイオン発生機10と、上述した第1の実施形態によるイオン発生機10との違いは、通気路24を区分した仕切部材25を基本構成によるものと同様にした。また、基本構成によるイオン発生機10の違いとしては、第1の通気路24Aと第2の通気路24Bを通る風量を先に説明したように第1通気路24A:第2通気路24B=2.5:1の比率なるように第2通気路24B側の風量を制限するための抵抗体27を、流入口26Bに対応させて設けた点で異なる。このように抵抗体27を設けることで、仕切部材25Aのように、流入口26B側の断面積を小さくした場合と同等の効果を奏することになる。
【0061】
以上、抵抗体27を設けたことで、第2通気路24Bに流入する風量を制限させることで、先に説明したように第1通気路24Aとの風量比を2.5:1の比率とした。
【0062】
この第3の実施形態によるイオン発生機10について、第1の実施形態におけるイオン発生機同様に、図6および図7に示した空間内でのイオン濃度を測定した。なお、第2の実施形態のイオン発生機10においても、第1の実施形態によるイオン発生機10同様、第1通気路24Aと第2通気路24Bとの風量比は、上述した通り同等にした。
【0063】
この第2のイオン発生機10において、イオン拡散装置15を取付け、図6、図7に示した空間30内でのイオン濃度測定を実施した。その結果は、表4に示すとおりである。
【0064】
【表4】

以上、イオン発生機10の構成は、本発明の基本構成のものと同様の構成としており、かつイオン発生装置1については、第1の実施形態と同様にし、抵抗体27を設けることで風量比を第1通気路24Aと第2通気路24Bとの比を2.5:1の比率とした。この第3の実施形態においても、第1の実施形態同様の結果を得ることができた。
【0065】
また、この第3の実施形態のイオン発生機10によれば、抵抗体27を設けることで、両通気路の風量比率を調整することが可能となる。特に仕切部材25を直線形状にでき、製造面で有利となる。
【0066】
なお、上記抵抗体27の構造として、メッシュや格子または穴明き板などが使用できる。
(第4の実施形態)
図12は、本発明の第4の実施形態によるイオン発生機10の構成を示す図である。この第4の実施形態のイオン発生機10は、図12に示すようにイオン発生装置1のイオン発生部3、4の発生部中心を結ぶ直線を、通気路24の風の通気方向と一致させて配置している。そこで、通気路を区分するための仕切部材25Bとしては、吸込口12側に近い第2通気路24Bの流入口26Bの断面積に対し、第1通気路24Aの流入口26Aの断面積の比率を1:3にし、流入口26Aの断面積を流入口26Bに対し3倍にしている。
【0067】
また、仕切部材25Bについては、第1通気路24Aと第2通気路24Bの吹出口13側については、流入口側と逆となるようにしている。そして、仕切部材25Bの中央部側が傾斜、つまり斜めになるように通気路24を区分している。この傾斜した部分については、湾曲形状としてもよい。
【0068】
このような第4の実施形態によるイオン発生機10の仕切部材25Bによれば、イオン発生装置1のイオン発生部3、4を通気方向に並行して直線状に配置しても、第1通気路24Aと第2通気路24Bとの風量比を、第1〜第3の実施形態と同程度にすることができる。 その結果、イオン発生装置1において、第1通気路24Aの風上側に正イオン発生部4を、第2通気路24Bの風下側に負イオン発生部3を配置することで、第2の実施形態と同程度の作用効果が期待できる。
【0069】
また、イオン発生装置1において、第1通気路24Aの風上側に負イオン発生部3を、第2通気路24Bの風下側に正イオン発生部4を配置することで、第1の実施形態、第2の実施形態と同程度の作用効果が期待できる。
【0070】
また、この第4の実施形態によれば、イオン発生装置1の正負イオン発生部4、3を通気方向に直線状に配置できるため、イオン発生装置1を例えば斜めに配置することがないため、幅方向の寸法をさらに小さくできる。
【0071】
以上、各実施形態のイオン発生機10の構成を説明したが、各実施形態に共通する事項、構成は、イオン発生装置1の各イオン発生部3、4については、通気路に送風方向に沿って、並ぶように風上側と風下側に離間させて設けている。この時、各イオン発生部3、4の送風経路の通気路を、仕切部材25を設けて区分し、区分された各通気路に対応させて、各イオン発生部を個別に配置している。
【0072】
また、仕切部材25で区分した各通気路においては、同一風量とするのではなく、異なる風量となるようにしている。特に、イオン発生装置1の一方のイオン発生部を一方の通気路の風上側に配置した場合、他のイオン発生部が風下側となる他方の通気路の風量よりも多くなるように設定する。この設定のための一例としては、一方の通気路に流入する流入側の断面積を他方の通気路の流入側の断面積よりも大きくする。その一具体例としては、仕切部材25にて、その断面積を調整するような形状に形成している。また、風量が少なくするために、その通気路側の流入側に風量を制限する抵抗体等を設けることもできる。
【0073】
さらに、本発明によれば、送風方向において風上側に対向配置されるイオン発生部に対応する通気路の風量が、風下側に対向して配置される他のイオン発生部に対応する他の通気路の風量よりも大きくすることで、イオンバランスを向上できる。
【0074】
しかも、各通気路の風量差として風量を多くする側を少ない側の2.5倍程度としている。これにより、イオンバランスを良好にすることができる。
【0075】
また、イオン発生部については、正イオン発生部を通気路の風上側に配置する。これにより、イオンバランスをさらに向上できる。
【0076】
以上の各実施形態および基本構成において説明したイオン発生機10については、第1通気路24Aを風上側としてイオン発生部を対向配置させ、その風量を風下側として説明した第2通気路24Bの風量よりも多く、例えば2.5倍程度とすることを説明した。そこで、第2通気路24B側を風上として、イオン発生部を対向配置させる場合は、この第2通気路24Bの風量を、第1通気路24Aよりも多く、例えば2.5倍程度に設定すればよい。つまり、イオン発生部を通気路24の風上側に設けた通気路側の風量を上述した各形態となるように設定すればよいことである。
【0077】
また、シロッコファン21を備える送風機2でなく、他の送風ファンを備える送風機においても、仕切部材25を設ける通気路を区分した場合、イオン発生装置1のイオン発生部を風上側に配置した通気路側の風量を、もう一方の通気路側の風量よりも多くし、例えば2.5倍程度になるように仕切部材25による通気路を区分するための形状等を工夫すればよいことである。また、通気路24の流入口26の一方側に抵抗体27を設けるようにしてもよい。
【0078】
また、以上の説明において通気路を流通する風量の比率が重要であるとしたが、通気路断面が同じであれば、風量の比率は風速の比率と説明することも同じ意味となるのは明確であり、以上の実施例における構成を風速比で実現することも可能である。
【0079】
以上説明したように、本発明のイオン発生機10によれば、幅方向、つまり吹出口13を前面から目視した時の左右方向の幅(寸法)を狭くすることが可能となり、かつ発生するイオンを効率よく機外へと放出できる。この時のイオンバランスを向上させることができる。そのため、イオン発生機10を配置するスペースの制約を受けることが少なくなり、狭いスペースでも設置可能となる。
【0080】
例えば、遊技場等において、遊技台が多数隣接するよう併設されているような環境において、設置スペースが限られるが、その狭いスペースでも設置可能となる。例えば遊技台を前にして人が座り、その遊技台に興じる場所において、各遊技台間の狭いスペースに本発明のイオン発生機10を設置できる。通常、遊技台、例えばパチンコ台、スロットマシン等、人が座った後ろにも遊技台が多数隣接して整列されて配置されている。
【0081】
その前後の列において整列された各遊技台間にイオン発生機10が設置されると、隣同士の遊技台とは別に前後の遊技台間にも配置されたイオン発生機10とで、図6に示すような空間30が作り出される。この場合、天壁35が存在しないが、その区切られた空間領域内を発生イオンで正負の比較的高いイオン濃度の雰囲気を作り出すことができる。
【0082】
そのため、遊技台の隣同士をイオン発生機10で区切られた空間を再現することができる。そのため、遊技に興じる人に対し、隣の人の煙草の臭い、その一人の空間内での空気に含まれる細菌、カビ、またウィルス等を殺菌、除去、不活性化させることができ、快適な空間を作り出すことができる。
【0083】
また、イオン発生機は、イオン発生装置の正負イオン発生部を送風方向に互いに離間させ、風上と風下側になるようにイオン発生装置を設ける。
【0084】
イオン発生機やイオン発生装置の設置幅が限られていて、イオン発生装置の正イオン発生部と負イオン発生部の並びを送風機からの風に対して平行に設置せざるを得ない場合においても、正イオンと負イオンをバランス良く放出させることができる。この結果、浮遊カビ菌や細菌の殺菌、ウィルスやアレルゲンの不活性化、空間や物品の除電効果が良好に得られる。
【0085】
また、正負イオンが送風方向において互いに結合するのを避けるために、仕切部材を設け、送風路を正イオン用の通気路と、負イオン用の通気路に区分する。
【0086】
また、本発明のイオン発生機は、送風路における風上側のイオン発生部を通過する風量が、風下側のイオン発生部を通過する風量に対して異なるように仕切部材に区分された各通気路を構成する。
【0087】
上記仕切部材は、風上側のイオン発生部を通過する風量が、風下側のイオン発生部を通過する風量よりも多くなるように通気路を区分する形状に形成されている。
【0088】
上記風上側のイオン発生部を通過する風量を、風下側のイオン発生部を通過する風量の2.5倍とする。
【0089】
また、正イオンと負イオンを送出する場合には、より環境影響を受けやすい負イオンを減少させないように負イオン発生部を正イオン発生部よりも吹出口に近くする。つまり、風下側に負イオン発生部を配置する。
【符号の説明】
【0090】
1 イオン発生装置
2 送風機
21 シロッコファン
22 モータ
24 通気路
24A 第1通気路
24B 第2通気路
25 仕切部材
25A 仕切部材
25B 仕切部材
26 流入口
26A 流入口(区分された流入口)
26B 流入口(区分された流入口)
3 負イオン発生部
4 正イオン発生部
10 イオン発生機
11 筐体
12 吸込口
13 吹出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する遊技台の間のスペースに設置される筺体と、空気を吸い込む吸込口と、空気を吹き出す吹出口と、イオンを発生するイオン発生装置と、前記筺体の内部に設けられ、前記吸込口から吸い込んだ空気を前記イオン発生装置が発生するイオンとともに前記吹出口から送出する送風機とを備えた遊技台間イオン発生機であって、
前記吹出口からの空気の吹き出し方向を、向かって右側に隣接する遊技台側に傾斜させる偏向部材を備えることを特徴とする遊技台間イオン発生機。
【請求項2】
前記偏向部材は、前記吹出口からの空気の吹き出し方向を約3°傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の遊技台間イオン発生機。
【請求項3】
前記送風機の吐出口と前記吹出口とを連結する通気路と、該通気路を区分する仕切部材をさらに備え、
前記イオン発生装置は、正イオンを発生する正イオン発生部と負イオンを発生する負イオン発生部とを別々に設け、前記正イオン発生部は区分された一方の通気路に、前記負イオン発生部は区分された他方の通気路に臨ませて設置し、
前記偏向部材は、前記仕切部材の端縁から延長され傾斜して設けられている偏向板であることを特徴とする請求項1または2に記載の遊技台間イオン発生機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−74395(P2012−74395A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268582(P2011−268582)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【分割の表示】特願2010−171281(P2010−171281)の分割
【原出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】