説明

遊技機の演出用動力伝達機構及びこれを備える遊技機

【課題】モータ寿命の低下を抑えるため、演出用可動部品の降下時にモータの逆回転を規制可能な演出用動力伝達機構及びこれを備えた遊技機を提供する。
【解決手段】演出用動力伝達機構は、モータの回転軸11aに取り付けられた内歯車25と、回転自在に支持されて一面側に内歯車が配置された側面部材26と、内歯車25の内側に配置され、内歯車25と同軸上に回転自在に支持されて側面部材26と一体的に結合された爪部材27を有する。爪部材27は、内歯車25の内側に回動自在に支持された回動部27aと、一端側が回動部27aに接続され他端側が内歯車25の内周に沿って延びて弾性変形可能な腕部27bと、腕部27bの他端側先端部に設けられた爪部27cを有する。爪部27cは、腕部27bによって内歯車25の歯部に附勢状態で接触して、内歯車25の一方側の回転時に内歯車25の回転を許容し、内歯車25の逆回転時に内歯車25の逆回転を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機の遊技盤上に設けられた演出用可動部品を昇降させるための
遊技機の演出用動力伝達機構及びこれを備える遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ぱちんこ等の遊技機には、画像表示装置、電飾装置、演出用可動部品等が設けられて遊技内容の多様性を図り、遊技の進行中における入賞、その他の状況変化を契機として演出用可動部品を所定方向に動作させることにより演出効果が高められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、遊技のゲーム性に合わせて昇降する演出用可動部品を備えたぱちんこ遊技機が開示されている。この演出用可動部品は、遊技盤の中央部に配設された画像表示装置の周囲を囲む飾り枠の上側中央部に遊技機幅方向に設けられた一対の吊り下げ部材の伸縮によって昇降可能に構成されている。
【0004】
吊り下げ部材は、吊り下げ上部材の下部に吊り下げ下部材を回動自在に取り付けて屈伸可能に構成される。一方の吊り下げ下部材の下端部が演出用可動部品の一方側端部に回動自在に取り付けられ、他方の吊り下げ下部材の下端部が演出用可動部品の他方側端部に回動自在に取り付けられて、演出用可動部品は一対の吊り下げ部材によって支持されている。一対の吊り下げ上部材の上部には、吊り下げ部材を回動させて演出用可動部品を昇降させる駆動手段が設けられている。駆動手段は、モータと、モータの回転軸に取り付けられた駆動ギヤと、駆動ギヤに歯合する従動ギヤと、従動ギヤに設けられた係合ピンと、吊り下げ上部材に設けられピンが係合する長孔とを有してなる。
【0005】
駆動手段のモータが駆動すると、従動歯車が一方側へ回動し、それに伴い係合ピンが長孔内を移動して、一方の吊り下げ上部材が上下方向に回動し、これと同時に他方の吊り下げ上部材も上下方向に回動する。そして、これら一対の吊り下げ上部材の回動に応じてこれらに対応する吊り下げ下部材も上下方向に回動して、演出用可動部品を昇降させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−240629号公報(段落0020〜0024,図5、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この演出用可動部品は、モータを正回転及び逆回転することによって昇降するが、遊技の内容によってモータが正逆転し続けたり、瞬時に反対方向に回転したりすると、モータ温度が過度に上昇してモータ寿命を低下させる虞が生じる。
【0008】
そこで、演出用可動部品の降下時にモータの逆回転を規制し、これに伴って駆動ギヤを従動ギヤから離すように昇降装置の動力伝達機構を構成した場合、モータの逆回転時に駆動ギヤを従動ギヤから離すだけのモータの逆回転動作を行うだけで、演出用可動部品をその自重で降下させることができる。よって、モータ逆回転時におけるモータの消費電力を小さくすることができ、モータ寿命の低下を抑えることができる。
【0009】
本発明はこのような要望に応えるものであり、演出用可動部品の降下時において、モータの逆回転を規制可能な遊技機の演出用動力伝達機構及びこれを備える遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するため、本発明は、遊技機に設けられた演出用可動部品にモータの動力を伝達して演出用可動部品を移動させる遊技機の演出用動力伝達機構であって、モータの回転軸に取り付けられて回転軸の回転とともに回転する内歯車と、回転自在に支持されて一面側に内歯車が配置された側面部材と、内歯車及び側面部材の間であって内歯車の内側に配置され、該内歯車と同軸上に回転自在に支持されるとともに、側面部材と一体的に結合された爪部材を有し、爪部材は、内歯車の内側に回動自在に支持された回動部と、一端側が回動部に接続されて他端側が内歯車の内周に沿って延びて内歯車径方向に弾性変形可能に支持された腕部と、腕部の他端側先端部に設けられ内歯車の歯部と接触する爪部とを有し、爪部は、腕部によって内歯車の歯部に附勢された状態で接触し、内歯車の一方側の回転時に内歯車の歯部の移動を許して内歯車の回転を許容し、内歯車の逆回転時に歯部に突き当たって内歯車の逆回転を規制することを特徴とする(請求項1)。
【0011】
内歯車は、モータの回転軸に直接に取り付けられたものや、モータの回転軸に取り付けられた他のギヤと一体的に形成されたものや、側面部材の内側に配置されたものでもよい。側面部材は、モータの回転軸に回動自在に設けられ、又はモータの回転軸と同軸上であって内歯車に設けられた回転軸に回動自在に設けられてもよい。
【0012】
爪部材は、内歯車の内側に配置され、内歯車と同軸上に回転自在に支持されるので、小型で内歯車の逆回転を規制可能な演出用動力伝達機構を提供することができ、遊技機内での演出用動力伝達機構の設置スペースを小さくすることができる。
【0013】
爪部材の腕部は、回動部に一端側が接続されて他端側が内歯車の内周に沿って延びた片持ち支持の部材である。腕部はその先端側が内歯車の内側に形成された歯部に弾性変形した状態で接触する。このため、腕部の先端部に設けられた爪部は常に内歯車の歯部を附勢した状態で接触する。
【0014】
爪部は、例えば、鋸刃状の三角突起を有してなる。三角突起は、内歯車の内周に対して傾きの小さい小傾斜部と傾きの大きい大傾斜部を有する。このように爪部を構成すると、内歯車の歯部が小傾斜部の底部側から頂部側へ進むように内歯車が回転すると、腕部が内歯車の内側に弾性変形して爪部に対する内歯車の歯部の移動が許容される。一方、内歯車の歯部が大傾斜部側に接近する方向に進むと、歯部が大傾斜部に突き当たって内歯車の逆回転が規制される。
【0015】
爪部材は、回動部に対して回動部周方向に所定間隔を有して複数設けられていることを特徴とする(請求項2)。爪部材は回動部周方向に等間隔を有して設けられてもよい。爪部材は、複数の爪部を備えることで、各爪部を内歯車の歯部に突き当てることができる。このため、内歯車の回転規制強度を増加させることができるとともに、爪部材の耐久強度を向上することができる。
【0016】
また本願発明は、請求項1及び2の少なくともいずれかの請求項に記載された演出用動力伝達機構を備えていることを特徴とする遊技機である(請求項3)。演出用動力伝達機構を備える遊技機は、ぱちんこ遊技機やスロットマシン等を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係わる遊技機の演出用動力伝達機構及びこれを備える遊技機によれば、モータの回転軸に取り付けられて回転軸の回転とともに回転する内歯車と、回転自在に支持されて一面側に内歯車が配置された側面部材と、内歯車及び側面部材の間であって内歯車の内側に配置され、該内歯車と同軸上に回転自在に支持されるとともに、側面部材と一体的に結合された爪部材を有することで、内歯車の逆回転時に内歯車の歯部が爪部材に突き当たって内歯車の逆回転を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる遊技機の演出用動力伝達機構の部分構造図を示し、同図(a)は演出用動力伝達機構の背面側の部分構造図であり、同図(b)は演出用動力伝達機構の背面側の内部構造図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係わる遊技機の演出用動力伝達機構の部分構造図を示し、同図(a)は演出用動力伝達機構の背面側の部分構造図であり、同図(b)は演出用動力伝達機構の背面側の内部構造図である。
【図3】遊技盤の正面図を示す。
【図4】遊技盤の正面図を示す。
【図5】演出用可動部品を上方位置に移動させた演出用動力伝達機構の斜視図を示す。
【図6】演出用動力伝達機構の前側斜視図を示し、同図(a)は伸縮手段が縮小時の演出用動力伝達機構の斜視図であり、同図(b)は伸縮手段が伸長時の演出用動力伝達機構の斜視図である。
【図7】演出用動力伝達機構の背面図を示し、同図(a)は伸縮手段が縮小時の演出用動力伝達機構の背面図であり、同図(b)は伸縮手段が伸長時の演出用動力伝達機構の背面図である。
【図8】演出用動力伝達機構の背面側の斜視図を示し、同図(a)は伸縮手段の縮小時における演出用動力伝達機構の背面側の斜視図であり、同図(b)は伸縮手段の伸長時における演出用動力伝達機構の背面側の斜視図である。
【図9】演出用動力伝達機構の分解斜視図を示す。
【図10】伸縮手段の伸長時における演出用動力伝達機構の構造斜視図である。
【図11】演出用動力伝達機構の内部構造図を示し、同図(a)は中間歯車が従動歯車から離反した状態にあるときの演出用動力伝達機構の内部構造図であり、同図(b)は中間歯車が従動歯車に歯合した状態にあるときの演出用動力伝達機構の内部構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0020】
図3(正面図)は遊技盤101の上部中央に設けられた演出用可動部品126を昇降可能な遊技機1の演出用動力伝達機構の構成例を示す。なお、遊技機1は、ぱちんこ機を例にして説明するが、遊技機はぱちんこ機に限るものではなく、スロットマシン等でもよい。
【0021】
初めに遊技機全体の説明をする。遊技機1の遊技盤101の下方位置には、発射部を備える図示しない操作ハンドルが配置され、発射部の駆動によって発射された遊技球がレール102a、102b間を上昇して遊技盤101の上部位置に達した後、遊技領域103内を落下する。遊技領域103には、遊技球を不特定の方向に向けて落下させるための複数の釘104に加え、遊技球の落下方向を変化させる風車や入球口が配置されている。
【0022】
遊技領域103の中央部分には例えば液晶表示器(LCD)を用いた図柄表示部105が配置される。図柄表示部105の左右方向中央部の下方には遊技球を受入れ可能な第1始動口106が配置される。図柄表示部105の左側の下方には、遊技球が入球したときに所定数(例えば10個)の賞球払い出しの権利を獲得する普通入賞口107が配置される。
【0023】
図柄表示部105の右側の下方には、一対の可動片110aを有する第2始動口110が配置される。第2始動口110は一対の可動片110aが閉状態のときに遊技球の受入れを困難にし、開状態のときに遊技球の受入れを容易にする。第2始動口110の右側上方には、遊技球の通過を検出し、第2始動口110を一定時間だけ開放させる普通図柄の抽選を行うための入賞ゲート112が配置される。第2始動口110の下方には、大当たり遊技(長当たり遊技)が開始されると、開閉扉120aが一定時間、開放する大入賞口開閉装置120が配置される。遊技領域103の最下部にはどの入球口にも入球しなかった遊技球を回収する回収口121が配置される。
【0024】
図柄表示部105は第1始動口106、または第2始動口110に遊技球が入球したときに複数の装飾図柄の変動表示を開始し、所定時間経過後に当該装飾図柄の変動を停止させる。停止時に特定図柄(例えば「777」)が揃えば、大当たり遊技(長当たり遊技)を実行する権利を獲得したこととなり、その後、大当たり遊技(長当たり遊技)が開始される。大当たり遊技(長当たり遊技)が開始されると、大入賞口開閉装置120の開閉扉120aが一定時間、開放する動作を所定回数(例えば15回)繰り返し、入球した遊技球に対応する賞球が払い出される。
【0025】
図柄表示部105の左右両側、上方、下方には、演出用可動部品125、125'、126、127(図4参照)が配置される。これらの可動部品は所定方向に移動可能に構成されている。図柄表示部105の上方に配設された演出用可動部品116の演出用動力伝達機構については後述する。
【0026】
遊技盤101の外周部分には、遊技領域103の周囲を囲む形状で、遊技盤101から遊技者側に突出する形状の枠部材130が配置され、枠部材130の上側には複数のライトを備えた演出ライト131(ランプユニット)が設置される。枠部材130の下側には、図示しない貸し玉装置から貸し出される遊技球が供給される受け皿ユニットが設置される他、操作ハンドルが配置されている。操作ハンドルは遊技盤101から遊技者側へ突出し、上記発射部の駆動によって遊技球を発射させる際に遊技者によって操作される。
【0027】
枠部材130の下側には、遊技者による操作を受け付ける図示しないチャンスボタンが配置される。チャンスボタンの操作は例えば遊技中における特定のリーチ演出に際し、チャンスボタンの操作を促すガイダンスが表示されている間有効となる。
【0028】
このように構成された遊技機1の演出用可動部品126の演出用動力伝達機構10は、図5(斜視図)、図6(a)(斜視図)、図6(b)(斜視図)に示すように、モータ11と、モータ11の動力を伝達する動力伝達部20と、動力伝達部20からの動力を受けて演出用可動部品126を昇降させる昇降機構部40とを有してなる。
【0029】
モータ11はステッピングモータであり、主に演出用可動部品126を下端位置PL(図4参照)から上端位置PH(図3参照)に移動させる際に駆動される。演出用可動部品126を上端位置PHに停止させるには、演出用可動部品126を上端位置PHに合わせたときのモータ11の回転軸の回転量を設定し、その設定量に達したときにモータ11への電力供給を停止するようにする。モータ11は動力伝達部20の一部を構成する収容ケース21に取り付けられる。
【0030】
動力伝達部20は、図7(a)(背面側内部構造図)、図8(a)(背面側内部斜視図)、図9(分解斜視図)に示すように、一端側が開口してキャップ状に形成された収容ケース21と、収容ケース21内に回転自在に支持された歯車機構部23と、歯車機構部23からの動力を受けて回転する従動プーリ31と、従動プーリ31に巻かれたワイヤ33と、ワイヤ33の繰り出し方向を変更する方向変更プーリ34と、方向変換プーリ34から繰り出されたワイヤ33を演出用可動部品126側に案内する案内プーリ35を有してなる。
【0031】
収容ケース21は、側面視において矩形状に形成され、底面部21aとこの周囲に設けられた側壁部21bとを有してなる。底面部21aにはモータ11の回転軸11aを挿通するための挿通孔21cが設けられている。モータ11は底面部21aの背面側から回転軸11aを挿通孔21cに挿通した状態で底面部21aに固定される。挿通孔21cの近傍位置には底面部21aに対して直交する方向に延びる軸部21dが設けられる。この軸部21dには後述する従動歯車30が回転自在に取り付けられる。
【0032】
収容ケース21内に延出したモータ11の回転軸11aに歯車機構部23が取り付けられる。歯車機構部23はモータ11の回転軸11aに取り付けられた駆動歯車24と、駆動歯車24の表面側の側面に形成されて駆動歯車24の回転とともに回転する内歯車25(図1(b)、図9参照)と、回転軸11aと同軸上に回転自在に支持されて一面側に内歯車25が配置された側面部材26と、内歯車25及び側面部材26の間であって内歯車25の内側に配置され、内歯車25と同軸上に回転自在に支持されるとともに、側面部材26と一体的に結合された爪部材27(図1(b)、図9参照)と、側面部材26に回転自在に支持されて駆動歯車24と歯合する中間歯車29と、中間歯車29と歯合して軸部21dに回転自在に取り付けられた従動歯車30とを有してなる。
【0033】
駆動歯車24は、モータ11の回転軸11aと同軸上に配置されて回転軸11aに取り付けられる。このため、回転軸11aの回転に伴って駆動歯車24が回転する。駆動歯車24の軸方向先端側には、円盤部24aが設けられている。円盤部24aの外径は駆動歯車24の外径と略同一径を有している。内歯車25は、駆動歯車24の回転中心軸(回転軸11a)と同軸上にあって円盤部24aの内側に形成されている。内歯車25の歯部は、内歯車25の内周に沿って鋸刃状の三角突起を連続的に設けて構成されている(図1(b)参照)。
【0034】
駆動歯車24の内歯車側の側面には、駆動歯車24を取り付けた回転軸11aと同軸上に配置されて回転軸11aよりも大径の突部24b(図9参照)が設けられている。この突部24bには、回転軸11aと同軸上に配置されて側面部材26を支持する軸部24cが設けられる。
【0035】
突部24bには、図1(b)(内部構造図)に示すように、爪部材27が回動自在に挿入されている。爪部材27は、合成樹脂材料製であって一体的に形成され、突部24bに回動自在に挿入された回動部27aと、一端側が回動部27aに接続されて他端側が内歯車25の内周に沿って延びて内歯車径方向に弾性変形可能に支持された腕部27bと、腕部27bの他端側先端部に設けられ内歯車25の歯部と接触する爪部27cとを有してなる。
【0036】
回動部27aは円環状に形成されて、突部24bに対して回動可能に嵌合される。回動部27aの外周の両側には一対の突出部27dが設けられている。この突出部27dの先端部に腕部27bの基端部が繋がっている。爪部27cは、内歯車25の歯部と同様に、鋸刃状の三角突起状に形成されている。爪部27cは、内歯車25の内周に対向して傾きの小さい小傾斜部27c1と傾きの大きい大傾斜部27c2を有する。
【0037】
このように構成された爪部材27は、図2(b)(内部構造図)に示すように、内歯車25の歯部が爪部27cの小傾斜部27c1の底部側から頂部側へ進む方向(矢印A方向、以下、「一方向」と記す)に内歯車25が回転すると、腕部27bが内歯車25の内側に弾性変形して撓んで爪部27cに対する内歯車25の回転を許容する。一方、図1(b)に示すように、爪部材27は、内歯車25の歯部が大傾斜部27c2側に接近する方向(矢印B方向、以下、「逆方向」と記す)に内歯車25が回転すると、内歯車25の歯部が爪部27cの大傾斜部27cに突き当たって内歯車25の逆回転を規制する。つまり、内歯車25と爪部材27によって、内歯車25の回転を一方向のみに規制するワンウェイクラッチとしての機能を発揮する。
【0038】
なお、内歯車25の回転許容時に内歯車25に作用する回転抵抗は、爪部材27の腕部27bの長さ、厚さ、材質等に依存する。このため、これらのパラメータを考慮することで、内歯車25の回転抵抗を所望の大きさにすることができる。
【0039】
爪部材27の回動部27aの軸方向外側端部には、軸方向外側に突出する図示しない係止突起部が形成されている。この係止突起部は側面部材26と係合して爪部材27と側面部材26とを一体的に連結する。
【0040】
側面部材26は、図8(a)、図9に示すように、円盤状に形成され、その外周には駆動歯車24側へ張り出す鍔部26aが環状に設けられている。鍔部26aは、その内径が駆動歯車24の円盤部24aの外径よりも僅かに大きな径を有するとともに、側面部材26を軸部24cに挿入した状態で円盤部24aの外周を覆うことが可能な長さを有している。
【0041】
側面部材26の中央部には駆動歯車24に設けられた軸部24cを挿通する貫通孔が設けられ、この貫通孔の外側には爪部材27に設けられた係止突起部を挿入する挿入孔26b(図9参照)が設けられている。このため、係止突起部を挿入孔26bに挿入すると、側面部材26の回動方向に対して爪部材27を側面部材26と一体的に結合することができる。
【0042】
側面部材26の外周には、駆動歯車24の外周よりも外側へ突出する突出部26c(図8(a)参照)が設けられている。この突出部26cに駆動歯車24と歯合する中間歯車29が回転自在に支持されている。中間歯車29は駆動歯車24よりも小径であり、駆動歯車24の回転に伴って回転する。
【0043】
このように、内歯車25と爪部材27によって内歯車25の回転方向を一方向側のみに規制するワンウェイクラッチが構成され、また爪部材27は側面部材26の回動方向に対して側面部材26に一体的に繋がっている。このため、図2(a)、図2(b)に示すように、モータ11の回転軸11aが内歯車25の回転を許容する方向(矢印A方向)に回転するときに、中間歯車29が従動歯車30と歯合していない場合、内歯車25の歯部が爪部27cを乗り越えるために腕部27bを撓ませる力は腕部27bに作用しない。このため、内歯車25と側面部材26は爪部材27を介して一体的に結合した状態になる。従って、内歯車25の回動に伴って中間歯車29は回転軸11aを回転中心として回転軸11aの回動方向(矢印A方向)に公転する。
【0044】
また、図1(a)、図1(b)に示すように、中間歯車29が従動歯車30と歯合した状態でモータ11の回転軸11aが内歯車25の回転を許容する方向(矢印A方向)に回転する場合には、側面部材26は、中間歯車29が従動歯車30と歯合しているので、従動歯車30側への回動が規制されるが、内歯車25は爪部材27に対して矢印A方向に回動する。このため、駆動歯車24の回転に伴って中間歯車29を回転させることができる。
【0045】
一方、中間歯車29が従動歯車30と歯合した状態でモータ11の回転軸11aが逆回転(矢印B方向)すると、内歯車25の歯部が爪部材27の爪部27cに突き当たって内歯車25が爪部材27を介して側面部材26と一体化する。このため、側面部材26に設けられた中間歯車29はモータ11の回転軸11aを回転中心として従動歯車30から離れる方向(矢印B方向)に公転する。
【0046】
従動歯車30は、収容ケース21(図9参照)に設けられた軸部21dに挿入されて回転自在に支持されている。従動歯車30は中間歯車29よりも大径である。従動歯車30は、図1(a)(内部構造図)に示すように、中間歯車29の従動歯車30への歯合時において、中間歯車29の歯部と従動歯車30の歯部との噛み合い時の接点Pに作用する力Fの方向が、中間歯車29の公転中心Oと接点Pとを結ぶ仮想線Lと略平行になる位置に配設されている。このため、中間歯車29の回転力が従動歯車30に伝達されるときに、中間歯車29が従動歯車30から離反する方向の力は殆ど生じない。このため、中間歯車29と従動歯車30との歯合状態を良好な状態に維持することができ、中間歯車29から従動歯車30への動力伝達を確実に行うことができる。なお、力Fの方向は、仮想線Lに対して従動歯車30側に傾くように、従動歯車30を配置してもよい。
【0047】
中間歯車29が従動歯車30側へ公転することで、中間歯車29は従動歯車30と歯合するが、両者の歯部の噛み合いが浅くなる場合や、摩擦等によって歯部が摩耗する場合がある。これらの場合、力Fの向きが仮想線Lに対して従動歯車30側から離れる方向に傾くと、中間歯車29が従動歯車30から離れ方向に公転する虞が生じる。
【0048】
そこで、側面部材26には、図11(a)(内部構造図)、図11(b)(内部構造図)に示すように、中間歯車29を従動歯車30側へ附勢する引っ張りばね28が設けられている。引っ張りばね28は、側面部材26の径方向外側端部に設けられた板側掛止部26dと収容ケース21側に設けられるケース側掛止部21eとの間に設けられている。板側掛止部21dは中間歯車29に対して従動歯車30側と反対側に設けられ、ケース側掛止部21eは板側掛止部21dよりも下方に設けられている。引っ張りばね28は、中間歯車29と従動歯車30が歯合した状態で、僅かに伸長した状態になり、中間歯車29が従動歯車30から離反するとさらに伸長した状態になる。つまり引っ張りばね28は常に延びた状態にある。このため、側面部材26は、常に中間歯車29を従動歯車30側へ公転させる方向に附勢している。
【0049】
従動歯車30の側面には、図8(b)、図9に示すように、従動プーリ31と連結するための係止突起部30aが設けられている。従動プーリ31は、従動歯車30から延びる軸部21dに挿入されて回転自在に支持され、従動歯車30に面する側面には係止突起部30aに係合する係合凹部31cが設けられている。従動プーリ31の従動歯車側の側面には環状の凹溝31aが形成されている。また従動プーリ31の周縁部には、従動プーリ31の周溝と凹溝31aとの間を通されたワイヤ33の一端部を凹溝31aに係止し、他端側のワイヤ33を周溝に巻くための孔部31bが設けられている(図9参照)。
【0050】
ワイヤ33は、従動プーリ31の従動歯車側から見たときに反時計方向に巻かれる。
【0051】
従動プーリ31の従動歯車側と反対側には、従動プーリ31の外周を覆うカバー部材37が設けられている。カバー部材37は、従動プーリ31の従動歯車側と反対側の側面に対向配置される円盤状の側面部37aと、側面部37aの周縁部から従動プーリ側へ張り出して従動プーリ31の周溝を覆う鍔部37bを有してなる。側面部37aの中央部には軸部21dを挿通可能な孔部37cが設けられている。鍔部37bは、孔部37cに挿通された軸部21dを中心として環状に形成されるとともに、側面部37aに対して直交する方向に延びる。鍔部37bの内径は従動プーリ31の外径よりも僅かに大きな径を有し、鍔部37bの長さ寸法は従動プーリ31の厚さよりもやや大きな寸法を有している。鍔部37bには外側に突出するフランジ部37dが複数設けられ、このフランジ部37dに挿通されたねじを介してカバー部材37が収容ケース21に締結される。
【0052】
このため、従動プーリ31はカバー部材37の内部に収容された状態で回転可能に支持される。
【0053】
カバー部材37の鍔部37bには従動プーリ31の周溝を露出可能な切り欠き37eが設けられている。この切り欠き37eは、カバー部材37が収容ケース21に取り付けられた状態で、従動プーリ31を収容する側からカバー部材37を見たときのカバー部材37の左側上部に設けられている。切り欠き37eの上部には、従動プーリ31に巻かれたワイヤ33を従動プーリ31の径方向外側に離すために下方へ突出する案内部37fが設けられている。案内部37fは、側面視において下側が凸状に突出した三角状に形成されている。
【0054】
案内部37fの上方のカバー部材37の鍔部37bには、方向変換プーリ34が回転自在に支持されている。この方向変換プーリ34は、カバー部材37に挿通される軸部21dに対して横方向に直交する方向に延設された軸部37gに回転自在に支持される。方向変換プーリ34は従動プーリ31よりも小径であり、従動プーリ31の周溝の上方に方向変換プーリ34の周溝が位置するように方向変換プーリ34が配置される。このため、案内部37fによって従動プーリ31から離されたワイヤ33を上方へ延ばすとそのまま方向変換プーリ34の周溝に巻くことができる。このため、ワイヤ33が従動プーリ31や方向変換プーリ34から外れる虞を抑えることができる。
【0055】
方向変換プーリ34の上方には、カバー部材37の鍔部37bから張り出して方向変換プーリ34の外周に沿って延びて方向変換プーリ34の周溝を覆う張出部材37h(図8(a)参照)が設けられている。カバー部材37の側面部の下部には、方向変換プーリ34から繰り出されたワイヤ33を巻いて演出用可動部品側へ延ばす案内プーリ35が設けられている。
【0056】
案内プーリ35は、方向変換プーリ34を支持する軸部37gと略平行に延びる軸部37iに回転自在に支持されている。案内プーリ35は、これに巻かれて垂直下方へ繰り出したワイヤ33の延びる方向の延長線上に昇降機構部40が位置するように配置されている。
【0057】
昇降機構部40は、図9、図10に示すように、伸縮自在に構成された伸縮手段41を有している。伸縮手段41は、収容ケース21の幅方向両側に取り付けられて上下方向に延びる一対のレール支持基板43、44に対してスライド自在に取り付けられた一対の第1レール部材45と、一対の第1レール部材45に対してスライド自在に取り付けられた一対の第2レール部材46と、第2レール部材47間に取り付けられスライド板47とを有してなる。
【0058】
一対のレール支持基板43間には装飾を施した装飾板48が取り付けられている。スライド板47の下部には、案内プーリ35から垂直下方に繰り出されたワイヤ33の下端部を係止するための係止突起部47aが設けられている。スライド板47の表面側には円盤状の演出用可動部品126が回動可能に設けられている。従動プーリ31に巻かれたワイヤ33を巻き取り及び繰り出すことにより、昇降機構部40が伸縮してスライド板47に取り付けられ演出用可動部品126を昇降させることができる。なお、昇降機構部40が全伸長状態になったときの演出用可動部品126の位置を下方位置とし、昇降機構部40が全縮小状態になったときの演出用可動部品126の位置を上方位置として、以下説明する。
【0059】
このように構成された演出用動力伝達機構10は、演出用可動部品126が下方位置に移動した状態でモータ11の回転軸が一方向(矢印A方向)に回転すると、図1(a)、図8(a)に示すように、中間歯車29が従動歯車30側に公転して歯合し、モータ11(図9参照)の回転力が駆動歯車24、中間歯車29、従動歯車30を介して従動プーリ31に伝達される。その結果、従動プーリ31はワイヤ33を巻き取る方向に回動して演出用可動部品126を下方位置PLから上方位置PHに移動させることができる。
【0060】
一方、演出用可動部品126が上方位置PHに移動した状態でモータ11を逆方向(矢印B方向)に回転させると、図2(a)、図7(b)に示すように、中間歯車29が従動歯車30から離れる方向に公転して、従動歯車30は回転自在なフリーな状態になる。その結果、従動歯車30と結合された従動プーリ31もフリーな状態になり、伸縮手段41はその下端部に設けられた演出用可動部品126等の自重によって伸長し、演出用可動部品126を下方位置PLに移動させることができる。
【0061】
このように、本願発明の演出用動力伝達機構10は、内歯車25の内側に爪部材27が設けられ、駆動歯車24の逆回転時に内歯車25の逆回転を規制可能に構成されている。その結果、駆動歯車24の逆回転時に従動プーリ31と側面部材26が一体化され、中間歯車29が従動歯車30から離反する方向に公転し、演出用可動部品126を自重で降下させることができる。このため、演出用可動部品126の降下時には、中間歯車29を従動歯車30から離れる方向に公転させるためのモータ逆回転動作を行えばよい。従って、モータ11への負荷が軽減され、モータ寿命の低下を抑えることができる。
【符号の説明】
【0062】
1……遊技機、10……演出用動力伝達機構、11……モータ、11a……回転軸、25……内歯車、26……側面部材、27……爪部材、27a……回動部、27b……腕部、27c……爪部、126……演出用可動部品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機に設けられた演出用可動部品にモータの動力を伝達して前記演出用可動部品を移動させる遊技機の演出用動力伝達機構であって、
前記モータの回転軸に取り付けられて前記回転軸の回転とともに回転する内歯車と、
回転自在に支持されて一面側に前記内歯車が配置された側面部材と、
前記内歯車及び前記側面部材の間であって前記内歯車の内側に配置され、該内歯車と同軸上に回転自在に支持されるとともに、前記側面部材と一体的に結合された爪部材を有し、
前記爪部材は、前記内歯車の内側に回動自在に支持された回動部と、一端側が前記回動部に接続されて他端側が前記内歯車の内周に沿って延びて内歯車径方向に弾性変形可能に支持された腕部と、前記腕部の他端側先端部に設けられ前記内歯車の歯部と接触する爪部とを有し、
前記爪部は、前記腕部によって前記内歯車の前記歯部に附勢された状態で接触し、前記内歯車の一方側の回転時に前記内歯車の前記歯部の移動を許して前記内歯車の回転を許容し、前記内歯車の逆回転時に前記歯部に突き当たって前記内歯車の逆回転を規制することを特徴とする遊技機の演出用動力伝達機構。
【請求項2】
前記爪部材は、前記回動部に対して回動部周方向に所定間隔を有して複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の遊技機の演出用動力伝達機構。
【請求項3】
前記請求項1及び2の少なくともいずれかの請求項に記載された前記演出用動力伝達機構を備えていることを特徴とする遊技機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−110201(P2011−110201A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268858(P2009−268858)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000161806)京楽産業.株式会社 (4,820)
【Fターム(参考)】