説明

遊技機用成形体

【課題】 釘打ち性の良い遊技機用成形体の提供。
【解決手段】 熱可塑性樹脂とセルロース繊維を含有する樹脂組成物から成形されてなり、前記セルロース繊維がαセルロースを80質量%以上含有するものである遊技機用成形体。熱可塑性樹脂には、セルロース繊維が解繊された状態で分散配合されているので、成形体の外観もよく、発泡構造に近似した嵩密度を有しているので、釘打ち性も良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機基板、枠材等の遊技機の製造に用いる遊技機用成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ台、パチンコ店に設置されているスロットマシーン等の遊技機では、木製のベニヤ合板等の遊技盤基板表面に、様々な意匠が施された合成樹脂製の化粧シートが酢酸ビニル系のエマルジョン接着剤等を用いて貼着され、更に遊技盤基板に複数の釘が打ち付けられたものが用いられている。
【0003】
このように遊技盤基板には、化粧板が貼り付けられたり、釘が打ち付けられたりするため、化粧シートが剥がれ難いこと、釘打ち時に打ち込んだ釘の根本部分の基板が盛り上がったり、基板にひび割れが生じたりしないことが求められている。
【特許文献1】特許第2732724号公報
【特許文献2】特許第2966380号公報
【特許文献3】特開2005−208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、基板の裏面に釘を打ち込むためのボスを一体形成したものであり、構造が複雑であり、製造手順も煩雑となる。特許文献2は、密度の高いスキン層と密度の低い発泡層を有するポリエチレン板を用いるもので、やはり構造が複雑であり、製造手順も煩雑となる。特許文献3は、植物系廃棄物(古紙)と熱可塑性樹脂からなる遊技板が開示されているが、古紙は熱可塑性樹脂への分散性が悪いため、得られた遊技板は均質性の点で劣っている。
【0005】
本発明は、化粧シートとの接着性が良く、釘打ち性が良い、パチンコ等の弾球遊技機用の製造材料として好適な遊技機用成形体及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、課題の解決手段として、熱可塑性樹脂とセルロース繊維を含有する樹脂組成物から成形されてなり、前記セルロース繊維がαセルロースを80質量%以上含有するものである遊技機用成形体を提供する。
【0007】
また本発明は、他の課題の解決手段として、請求項1〜6のいずれかに記載の遊技機用成形体の製造方法であって、熱可塑性樹脂とセルロース繊維を混合する際、セルロース繊維を解繊し、熱可塑性樹脂に分散させた後に、必要に応じて発泡させながら成形する、遊技機用成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の遊技機用成形体は、釘打ち性や合成樹脂フィルムのような他部材との接着性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の遊技機用成形体の製造原料となる樹脂組成物は、熱可塑性樹脂とセルロース繊維、及び必要に応じて他の添加剤を含有するものである。
【0010】
熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂(好ましくはポリプロピレン)、スチレン系樹脂(ホモポリマー、AS樹脂、HIPS等)、ゴム含有スチレン系樹脂(ABS樹脂、AES樹脂、ABSM樹脂、AAS樹脂等)、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、非結晶(透明)ナイロン、液晶ポリマー、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、生分解性樹脂(PBS系、PBSA系、PCL系、PLA系、セルロースアセテート系)等を挙げることができ、これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。また、これらの重合体を主体とする共重合体若しくは混合物、これらにゴム又はゴム状樹脂等のエラストマーを配合した熱可塑性樹脂、及びこれらの樹脂を10質量%以上含有するポリマーアロイ等も挙げることができる。
【0011】
セルロース繊維は、αセルロースの含有率が80質量%以上のものであり、好ましくは85質量%以上のものである。
【0012】
平均繊維径は、好ましくは0.1〜1000μm、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは10〜50μm、特に好ましくは20〜30μmである。
【0013】
平均繊維長さは、好ましくは0.1〜1000mm、より好ましくは0.2〜500mm、更に好ましくは0.3〜50mm、特に好ましくは0.5〜5mmである。
【0014】
セルロース繊維の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、1〜500質量部、好ましくは5〜300質量部、より好ましくは5〜100質量部、更に好ましくは10〜50質量部である。
【0015】
樹脂組成物には、必要に応じて、カーボンブラック、無機顔料、有機顔料、染料、助色剤、分散剤、安定剤、可塑剤、改質剤、紫外線吸収剤又は光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、離型剤、結晶促進剤、結晶核剤、及び耐衝撃性改良用のエラストマー等を配合することができる。
【0016】
本発明の遊技機用成形体は、遊技機用成形体表面の50cm当たり、最大径又は最大長さが1mm以上の未解繊又は解繊されたセルロース繊維の塊の数が10個以下であることが好ましく、より好ましくは5個以下である。最大径とは、球の場合には直径を意味し、楕円の場合には長径を意味し、不定形の場合には最大長さを意味する。
【0017】
このようにセルロース繊維の塊の数が10個以下であることにより、成形体の外観が美しくなるだけでなく、成形体への他部材の貼り付け性が向上する。
【0018】
本発明の遊技機用成形体は、非発泡構造でもよいし、発泡構造でもよいが、嵩密度が0.4〜1.3g/cmであることが好ましく、0.5〜1.2g/cmであることがより好ましく、0.6〜1.1g/cmであることがより好ましい。嵩密度を前記範囲にすることで、特に成形体への釘打ち性が向上する。
【0019】
次に、本発明の遊技機用成形体の製造方法を説明する。熱可塑性樹脂とセルロース繊維を混合する際、セルロース繊維を解繊し、熱可塑性樹脂に分散させる。このような解繊を用いた方法の具体例としては、下記の方法1と方法2を挙げることができる。
【0020】
(方法1)
熱可塑性樹脂及びセルロース繊維を上記比率範囲で使用し(望ましくは予め予備混合する)、これらをヘンシェルミキサー(例えば、三井鉱山社製、ヒーター付き)に投入し、攪拌しながら加温する。このときの条件は次のとおりである。
【0021】
混合槽容量20Lのミキサー内に、熱可塑性樹脂及びセルロース繊維の合計1000〜3000gを投入し、使用した樹脂の溶融温度近傍にて、周速10〜50m/secで、10〜30分間混練する。
【0022】
(方法2)
熱可塑性樹脂及びセルロース繊維を予備混合したもの50kgを、2軸高混練型押出機〔例えば、シーティーイー社製,HTM65,スクリュー径65mm、ホットカット(水中)カット付き〕に投入し、使用した樹脂の溶融温度近傍にて、スクリュー回転数200〜800r/mで溶融混練する。
【0023】
続いて、方法1と方法2等により溶融混練した樹脂組成物を所望形状に成形する。なお、遊技機用成形体を発泡構造のものにする場合には、予め樹脂組成物に公知の発泡剤を混合しておき、成形時に発泡処理をする。
【0024】
本発明の製造方法では、上記したようにセルロース繊維を解繊した上で、熱可塑性樹脂に分散させているため、最終的に得られた成形体中において、セルロース繊維がほぼ均一に分散されている。このため、非発泡構造であっても、実質的に発泡構造と類似の構造(成形体中に微少な間隙が存在している構造)にすることができる。
【0025】
本発明の遊技機用成形体は、パチンコ台、パチンコ店に設置されているスロットマシーン等の遊技機の構成材料として使用することができ、具体的には基板(遊技盤)、枠材、筺体等に使用することができる。
【実施例】
【0026】
実施例1〜5、比較例1〜3
表1に示す各成分からなる樹脂組成物を用い、押出機により、成形体を製造した。セルロース繊維は、上記した方法1により解繊して、熱可塑性樹脂と混合した。押出機は40mm単軸押出機、ダイスは200×10mmのシートダイを用いた。押出条件は下記のとおりである。
【0027】
(押出条件)
C1:200℃
C2:210℃
C3:220℃
C4:230℃
AD:230℃
ダイス:230℃
サイジング温度:175〜190℃
スクリュー回転数:80rpm
引き取り速度:0.15〜0.30m/min
(表1の成分)
PMB60A:ポリプロピレン,サンアロマー社製
PMB70A:ポリプロピレン,サンアロマー社製
溶解パルプ:日本製紙社製,溶解パルプNDP−T,平均繊維径約30μm,平均繊維長さ約2mm,αセルロース含有量90%
ジュート:カット長さ3mmの繊維,αセルロース含有量70%
ケナフ:カット長さ5mmの繊維,αセルロース含有量50%
イルガノックス1010:安定剤,チバガイギー社製
スミライザーTPS:安定剤,住友化学社製
UMX1010:酸変性ポリプロピレン,三洋化成工業社製
(試験方法)
(1)釘打ち性
縦200mm、横400mm、厚み10mmの成形体を2枚重ねて厚み20mmとして、その一面に5本の釘(長さ34mm、太さ2mm)を、縦100mmの位置に、横方向に約60mm間隔で、16mmの深さまで打ち付けた。両端の釘は、板の縁から約60mm離れた位置に打ち付けた。
【0028】
このようにして5本の釘を打ったとき、全てにおいて成形体に割れが生じることがなく、成形体と釘の接触部分に盛り上がりが見られない場合(○表示)、全て又は一部において成形体に割れが生じるか又は成形体と釘の接触部分に盛り上がりが見られる(×表示)で評価した。
【0029】
(2)臭気
成形体の臭いの有無を観察した。無臭(○表示)、嫌な臭いがある(×表示)により評価した。
【0030】
(3)シート(化粧板)の接着性
縦120mm、横120mm、厚み10mmの成形体の一面に、酢酸ビニル系接着剤を用いて、化粧板(表面がセルロイドで、紙基材を裏打ち材料として貼り付けたもの。厚み0.2mm)を人の手で貼り付けた後、化粧板の上に20kgの重りを置き、45時間放置した。その後、60℃で4時間乾燥し、室温で5時間放置したものを試験サンプルとした。その後、この試験サンプルの化粧板を人の手で剥がしたとき、容易には剥がれない(○表示)、容易に剥がれる(×表示)で評価した。
【0031】
(4)外観
目視により、成形体の外観を観察した。外観が平滑で美しい場合(○表示)、外観に凹凸が見られる場合(×表示)で評価した。
【0032】
【表1】

【0033】
発泡構造の実施例1、2の成形体と、非発泡構造の実施例3〜5の成形体では、嵩密度には大きな差がなく、釘打ち性も同程度であった。これは、実施例1〜5では、熱可塑性樹脂中にセルロース繊維が解繊された状態で配合されており、成形体中に分散されたセルロース繊維の作用により、成形体内部が発泡構造に類似した構造となっており、釘を打った場合の逃げが可能な空隙が存在しているためであると考えられる。
【0034】
なお、実施例1〜5は、成形体表面の50cm当たり、最大径又は最大長さが1mm以上の未解繊又は解繊されたのセルロース繊維の塊の数は2個であった。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂とセルロース繊維を含有する樹脂組成物から成形されてなり、前記セルロース繊維がαセルロースを80質量%以上含有するものである遊技機用成形体。
【請求項2】
遊技機用基板である請求項1記載の遊技機用成形体。
【請求項3】
前記セルロース繊維の平均繊維径が100μm以下である請求項1又は2記載の遊技機用成形体。
【請求項4】
遊技機用成形体表面の50cm当たり、最大径又は最大長さが1mm以上の未解繊又は解繊されたセルロース繊維の塊の数が10個以下である請求項1〜3のいずれかに記載の遊技機用成形体。
【請求項5】
嵩密度が0.4〜1.3g/cmである請求項1〜4のいずれかに記載の遊技機用成形体。
【請求項6】
発泡構造である請求項1〜5のいずれかに記載の遊技機用成形体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の遊技機用成形体の製造方法であって、熱可塑性樹脂とセルロース繊維を混合する際、セルロース繊維を解繊し、熱可塑性樹脂に分散させた後に、必要に応じて発泡させながら成形する、遊技機用成形体の製造方法。



【公開番号】特開2007−89632(P2007−89632A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279315(P2005−279315)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(599172793)プラスコ 有限会社 (1)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】