遊技機
【課題】 より簡便に遊技者の動作に対応させて遊技情報の表示を変化させ得て、しかも遊技者の興趣をより惹き得る変化を与え得る画像表示部を有する遊技機の提供。
【解決手段】 遊技情報を表示するための表示パネルを含む画像表示部を有する遊技機である。遊技者の着座すべき方向へ向けて設置されたカメラを含む撮像部と、撮像部から送出されるカメラ画像データを解析する解析部と、解析部からの解析データに基づいて画像表示部の表示パネルに表示すべき表示画像データを決定する画像表示制御部と、を含む。解析部は、撮像部から送出された所定時間だけ隔てて得られた2つのカメラ画像データを比較して遊技者の動き方向ベクトルを求める。画像表示制御部は、動き方向ベクトルに対応させて表示画像データを視覚的に連続するような時間間隔で変更する。
【解決手段】 遊技情報を表示するための表示パネルを含む画像表示部を有する遊技機である。遊技者の着座すべき方向へ向けて設置されたカメラを含む撮像部と、撮像部から送出されるカメラ画像データを解析する解析部と、解析部からの解析データに基づいて画像表示部の表示パネルに表示すべき表示画像データを決定する画像表示制御部と、を含む。解析部は、撮像部から送出された所定時間だけ隔てて得られた2つのカメラ画像データを比較して遊技者の動き方向ベクトルを求める。画像表示制御部は、動き方向ベクトルに対応させて表示画像データを視覚的に連続するような時間間隔で変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技情報を表示するための表示パネルを含む画像表示部を有する遊技機に関し、特に、遊技者の興趣をより惹き得る変化を与え得る画像表示部を有する遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遊技機の遊技盤面中央部に大型の液晶パネルを含む表示装置を配置し、かかる表示装置に多彩な画像を表示させて遊技情報の提供を行うことが広く行われている。かかる画像について、2次元的な平面画像だけではなく、遠近法を利用した擬似3次元手法による3次元的な立体画像を提供することが試みられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、擬似3次元手法の1つである1点透視図法を用いて奥行き感を与えた画像で遊技情報を表示する表示装置を含むドラム式遊技機を開示している。詳細には、空間内の迷路(ダンジョン)を進もうとする主人公の視線の方向をドラム停止ボタンの操作に対応させて変化させている。つまり、ドラム停止ボタンの操作により、迷路内を進行する主人公の視線がさも移動したかのように、迷路の画像を断続的に変化させるのである。表示装置内の主人公の表示と主人公の視線の先の迷路の風景の表示とが1点透視図法により前後に距離感を有するように表示されているので、遊技者は主人公の視線がさも移動したかのように強く認識するのである。
【0004】
ところで、特許文献1では、表示装置の遊技情報の表示を遊技者の遊技操作に対応させて変化させているが、2次元的な平面画像を提供する表示装置を含む遊技機でも古くから同様の表示手法が行われている。しかしながら、2次元的な平面画像は3次元的な立体画像に比べ、変化のインパクトに乏しかった。そこで、遊技者の遊技操作だけではなく、より意外性の高いパラメータに対応させて2次元的な遊技情報の表示を変化させることも考慮されてきた。
【0005】
例えば、特許文献2では、遊技機において、遊技者の顔の位置や向きに対応させて2次元的な遊技情報の表示を変化させることが開示されている。詳細には、弾球式遊技機の飾り枠の上部に設置されたデジタルカメラにより、座席に着席している遊技者の顔を中心に静止画像を撮影する。この画像データを処理し、顔を判別した上で、顔の位置座標や、所定の時間間隔で得られる画像データからの位置座標の時間変化などを計算し、遊技情報としての隠し画像を表示装置に表示させている。かかる構成によれば、隠れている画像を顔の様々な角度や位置から探し出す擬似体験をさせ、遊技者により高いゲーム性を与え得ると述べている。
【0006】
また、例えば、特許文献3では、遊技者の視線の動きに対応させて2次元的な遊技情報の表示を変化させることが開示されている。詳細には、回胴式遊技機の筐体正面左側から遊技者の方向へ向けて伸びるアームの先端に遊技者の眼球を撮像し視線を検出する視線センサを設置する。かかる視線センサから近赤外線を遊技者の眼球に向けて照射するとともに、視線センサに含まれるカメラで眼球の瞳孔及び角膜からの反射光を撮像するのである。この画像データを処理し、眼球の位置と視線の向きを求め、演出画像の表示される座標を変化させている。視線を検出することで、敢えて遊技者が注視していない領域を特定できて、かかる部分に演出画像を表示させて、運良くその演出画像に気づいた場合にあってのみ遊技者に特典を付与するなどの新たなゲーム性を付加することもできると述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−310860号公報
【特許文献2】特開2005−052418号公報
【特許文献3】特開2009−101013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
遊技機にカメラなどの撮像部を与えて遊技者の特定の部位の動作を捕捉しこれに対応させて遊技情報の表示を変化させることで、意外性を高めるとともに、新たなゲーム性を追加することもでき得て、遊技者の興趣を惹き得るが、一方で、遊技機が複雑化し、製造コストが大幅に上昇してしまうといった問題もあった。
【0009】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、より簡便に遊技者の動作に対応させて遊技情報の表示を変化させ得て、しかも遊技者の興趣をより惹き得る変化を与え得る画像表示部を有する遊技機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による遊技機は、遊技情報を表示するための表示パネルを含む画像表示部を有する遊技機であって、遊技者の着座すべき方向へ向けて設置されたカメラを含む撮像部と、前記撮像部から送出されるカメラ画像データを解析する解析部と、前記解析部からの解析データに基づいて前記画像表示部の前記表示パネルに表示すべき表示画像データを決定する画像表示制御部と、を含み、前記解析部は、前記撮像部から送出された所定時間だけ隔てて得られた2つの前記カメラ画像データを比較して前記遊技者の動き方向ベクトルを求め、前記画像表示制御部は、前記動き方向ベクトルに対応させて前記表示画像データを視覚的に連続するような時間間隔で変更することを特徴とする。
【0011】
かかる発明によれば、遊技者の動作に対応する動き方向ベクトルを簡便に求めることができて、これに対応した遊技情報の表示変化を簡便に達成し得ることから、遊技者に与える意外性を高め遊技者の興趣をより惹き得る画像表示部を有する遊技機を提供できるのである。
【0012】
上記した発明において、前記表示画像データは、前記表示パネルに遠近法による奥行き画像を与えてもよい。かかる発明によれば、奥行き感のある画像を変化させて遊技者に与えるインパクトを高め得て、遊技者の興趣をより惹き得る画像表示部を有する遊技機を提供できるのである。
【0013】
上記した発明において、前記撮像部は、前記遊技機の台枠上部近傍に与えられることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、動き方向ベクトルを感度良く得ることができて、これに対応した遊技情報の表示変化を簡便に達成し得ることから、遊技者に与える意外性を高め遊技者の興趣をより惹き得る画像表示部を有する遊技機を提供できるのである。
【0014】
上記した発明において、前記撮像部は、前記遊技機の前記画像表示部近傍に与えられることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、撮像部を画像表示部とともにモジュール化できて、動き方向ベクトルに対応した遊技情報の表示変化を与える画像表示部を有する遊技機を安価に提供できるのである。
【0015】
上記した発明において、前記遊技者の動き方向ベクトルは1次元であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、動き方向ベクトルに対応した遊技情報の表示変化を与える画像表示部を簡便に得ることができるのである。
【0016】
上記した発明において、前記遊技者の動き方向ベクトルは2次元であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、より高度に動き方向ベクトルに対応した遊技情報の表示変化を与える画像表示部を簡便に得ることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による遊技機の正面図である。
【図2】本発明による遊技機の要部のブロック図である。
【図3】本発明による遊技機の要部の動作フロー図である。
【図4】本発明による遊技機の要部の動作フロー図である。
【図5】カメラによる画像の1つの例を示す図である。
【図6】カメラによる画像の他の例を示す図である。
【図7】図5の画像を2値化した画像の例を示す図である。
【図8】図6の画像を2値化した画像の例を示す図である。
【図9】図7の2値化画像の基準点を示す図である。
【図10】図8の2値化画像の基準点を示す図である。
【図11】動き方向ベクトルを示す図である。
【図12】表示画像の1つの例を示す図である。
【図13】表示画像の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による1つの実施例としての遊技機について、図1及び図2を用いてその詳細を説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、遊技機1はいわゆるパチンコ機であって、台枠2を介して図示しない遊技場内の島設備に固定される。台枠2の内側には筐体21が設けられており、これに対して開閉自在であって、前面ガラス31を与えられた上部前面パネル3及び下部前面パネル4が取り付けられている。筐体21の内部には、複数の基板からなり、遊技を進行するための制御部100が収容されている。
【0020】
詳細には、筐体21内の遊技盤32の上には、センター役物33、スタートチャッカー34及びアタッカー35などの入賞口、その他図示しない釘や役物などが設けられている。なお、スタートチャッカー34などの入賞口は図示しない遊技球の入賞検出センサを含み、遊技球の入賞を検出すると、電気的に接続された主制御部101に対して入賞を知らせる所定の信号を送出する。
【0021】
センター役物33は、その中央部に液晶表示装置36を有するとともに、その上部には遊技機1の前方を撮像するカメラ37aを有する。カメラ37aは、モノクロCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はモノクロCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどである。カメラ37aはカメラ基板37bを介して画像処理基板111に電気的に接続され、遊技機1の前方に着席する遊技者の周囲を撮像して画像処理基板111に常に信号を送出している。液晶表示装置36は画像制御基板113と電気的に接続され、画像制御基板113から送出される信号に基づいて所定の画像を表示させる。なお、センター役物33が液晶表示装置36や撮像部37(カメラ37a及びカメラ基板37b)を含むようにモジュール化されることで、センター役物33を遊技機1から容易に取り外し、他の遊技機へのリサイクルを容易にできる。
【0022】
制御部100は、遊技動作を制御する主制御部101を含む。さらに、画像処理基板111と、主制御部101及び画像処理基板111に電気的に接続された画像制御基板113などからなる各種副制御部を含む。さらに、画像処理基板111に電気的に接続されたカメラ画像記憶部112と、画像制御基板113に電気的に接続された画像データベース114とを含む。
【0023】
主制御部101は、図示しないメインCPU、ROM及びRAMなどを有し、ROMに記憶されたプログラムに従って、入賞口からの信号などに対応して大当たり判定等を行って、遊技球の払い戻しを行ったり、又は、アタッカー35を開放したりするなど、遊技の基本的な処理を決定し、各副制御部に処理内容を指示する。
【0024】
画像処理基板111は、図示しないCPU、所定のプログラムの収容されたROM、及び、RAM等を有し、更に、データを入出力するためのSSDやHDDのような大記憶容量の記憶媒体からなるカメラ画像記憶部112と接続されている。上記したように、カメラ37aで撮像されたアナログ電気信号はカメラ基板37bで所定サンプリングレート毎にデジタル電気信号に変換された上で、すなわち1フレーム毎の画像データとして画像処理基板111に送出され、順次、カメラ画像記憶部112に格納される。画像処理基板111では、カメラ画像記憶部112から所定時間毎の画像データを読み出してRAM等に一時的に転送しつつ、後述するような画像処理を行って、動き方向ベクトルを決定する。
【0025】
画像制御基板113は、図示しないCPU、所定のプログラムの収容されたROM、及び、RAM等を有し、更に、データを入出力するためのSSDやHDDのような大記憶容量の記憶媒体からなる画像データベース114と接続されている。画像制御基板113では、主に、液晶表示装置36における遊技状態に対応した画像演出のための表示の制御を行う。かかる液晶表示装置36の表示画像データは、画像処理基板111によって算出された動き方向ベクトルを受けて、表示画像データを蓄積した画像データベース114から所定の表示画像データを読み出して、RAM等に一時的に転送しつつ、液晶表示装置36に立体的な動きのある画像を表示させる。詳細は後述する。
【0026】
なお、画像データベース114には、例えば、消失点を1つ有する1点透視図法により描写された背景表示のための表示画像データをあらかじめ蓄積されている。ここで、消失点が表示画像データごとに画面の中央、右上、右下、左上、左下などの様々な位置に配置され、すなわち視点を変えた画像に対応する表示画像データとして複数蓄積されている。
【0027】
なお、遊技盤32の下部には、遊技球を発射するためのハンドルレバー40や払い出された遊技球を貯留する貯留皿41などが設置されている。詳細については、公知の遊技機と同様であるため省略する。
【0028】
次に、遊技機1の動作について、図3及び図4に沿って、図5乃至13を参照しつつ説明する。
【0029】
遊技球の発射、入賞、大当たり判定、払出しなどについては公知の遊技機と同様であるので説明を省略する。ここでは主に、画像処理基板111及び画像制御基板113におけるそれぞれのプログラムに従った処理について説明する。
【0030】
図3に示すように、画像処理基板111では、そのCPUにおいて、ROMに収容された所定のプログラムに従って、動き方向ベクトルの算出処理を行う。まず、カメラ基板37bから送出されてくる1フレーム毎のデジタル電気信号からなる画像データをカメラ画像記憶部112に格納していく(撮像ステップS11)。つまり、遊技機1の前方に着席した遊技者の周囲を撮像した1フレーム毎の画像データを格納していく。かかる画像データに対応する画像は、例えば、図5又は図6に示すように、遊技機1の前方に着席する遊技者と、遊技機1を含む島設備に対向する遊技者の背後の島設備などである。なお、カメラ画像記憶部112の容量を確保するため、一定時間を経過した画像データは順次消去することが好ましい。
【0031】
続いて、カメラ画像記憶部112から所定時間間隔で撮像された2つの画像データを選択し、RAM等に格納する(静止画選択ステップS12)。例えば、図5及び図6に示す画像のような、2つの所定時間を空けて撮像された画像データを選択する。図5に示す画像には、概略、遊技機1の前方に着席した遊技者を示す第1遊技者オブジェクト50と、遊技者の背後の島設備を示す第1背景オブジェクト60とが示される。また、図6に示す画像には、概略、上体を遊技機1に向かって左方向に傾けて上方に伸ばした遊技者を示す第2遊技者オブジェクト50’と、遊技者の背後の島設備を示す第2背景オブジェクト60’とが示される。ここで、第1遊技者オブジェクト50と第2遊技者オブジェクト50’の輝度は、いずれも第1背景オブジェクト60と第2背景オブジェクト60’の輝度と比較して低くなっている。
【0032】
続いて、上記した2つの画像データを輝度に関して2値化処理し2値化画像データを得て、再度、RAM等に格納する(2値化処理ステップS13)。詳細には、選択した画像データに含まれる全ての画素の輝度の平均値などを閾値とし、閾値に対する輝度の高低により各画素の輝度を変更し、2値化画像データとするのである。ここで、閾値を画像データに含まれる全ての画素の輝度の平均値とすることで、遊技場の明るさなどの影響を減じて、2値化画像データを安定して得られる。
【0033】
2値化処理において、例えば、図5に示す画像に対応する画像データは、図7に示す2値化画像に対応する2値化画像データとなる。すなわち、第1遊技者オブジェクト50は、周辺の第1背景オブジェクト60と比較して低い輝度を有し、第1低輝度オブジェクト51に変換される。また、第1背景オブジェクト60の画素の大部分は、輝度の高い画素からなる第1高輝度オブジェクト61に変換される。第1背景オブジェクト60の画素の一部は、輝度の低い画素からなる第1ノイズオブジェクト52に変換される。
【0034】
同様に、図6に示す画像に対応する画像データは、図8に示す2値化画像に対応する2値化画像データとなる。すなわち、第2遊技者オブジェクト50’は、周辺の第2背景オブジェクト60’と比較して低い輝度を有し、第2低輝度オブジェクト51’に変換される。また、第2背景オブジェクト60’の画素の大部分は、輝度の高い画素からなる第2高輝度オブジェクト61’に変換される。第2背景オブジェクト60’の画素の一部は、輝度の低い画素からなる第2ノイズオブジェクト52’に変換される。
【0035】
なお、2値化処理ステップS13に当たって、平滑化フィルタやメディアンフィルタなどの公知のフィルタリング処理を実施すると、第1ノイズオブジェクト52や第2ノイズオブジェクト52’などのノイズオブジェクトの小さい2値化画像データを得ることができる。
【0036】
続いて、2値化画像データから輝度の低い画素の重心として基準点の座標を算出する(基準点算出ステップS14)。詳細には、2値化画像データから、輝度の低い画素の座標データを抽出し、この座標データのX−Y座標の値を座標成分ごとに相加平均して、基準点の座標データのX−Y座標の値を得る。これにより、図9に示すように、輝度の低い画素からなる第1低輝度オブジェクト51及び第1ノイズオブジェクト52の重心に位置する第1基準点P1が求められる。同様に、図10に示すように、オブジェクトの重心に位置する第2基準点P2が求められる。なお、図9及び図10では、第1基準点P1、第2基準点P2を視認しやすくするため、第1低輝度オブジェクト51、第1ノイズオブジェクト52、第2低輝度オブジェクト51’及び第2ノイズオブジェクト52’の輪郭を実線で示している。
【0037】
さらに、得られた第1基準点P1、第2基準点P2の座標データから動き方向ベクトルを算出する(ベクトル算出ステップS15)。詳細には、図11に示すように、第2基準点P2の座標データのX−Y座標の値から第1基準点P1の座標データのX−Y座標の値を座標成分ごとに減算して、2次元ベクトルである動き方向ベクトルVのX軸成分Vx、及び、Y軸成分Vyを得る。得られた動き方向ベクトルに対応する信号は、画像制御基板113へ順次送出される。
【0038】
なお、第1基準点P1は、第1ノイズオブジェクト52を含めて求めたので、第1低輝度オブジェクト51の重心とは異なる座標となる。同様に、第2基準点P2も第2低輝度オブジェクト51’の重心とは異なる座標となる。ここで、第1ノイズオブジェクト52及び第2ノイズオブジェクト52’は遊技者の背後の島設備などの動作の少ない背景に基づいて得ているため、互いの変化は小さい。したがって、第1ノイズオブジェクト52の与える第1基準点P1の座標への影響と、第2ノイズオブジェクト52’の与える第2基準点P2の座標への影響とは、ほぼ同じである。よって、動き方向ベクトルを算出すると、第1ノイズオブジェクト52及び第2ノイズオブジェクト52’による影響は相殺される。故に、2値化画像のノイズオブジェクトの有無による動き方向ベクトルへの影響は小さくなる。
【0039】
次に、図4に示すように、画像制御基板113では、そのCPUにおいて、ROMに収容された所定のプログラムに従って、遊技状態に応じて決められる特定の演出状態における動き方向ベクトルに応じた画像を表示する処理を行う。なお、画像制御基板113のCPUにより、主制御部101から特定の演出状態であることを示す信号を受信した場合に以下の処理は実行される。
【0040】
詳細には、画像データベース114に蓄積された表示画像データから、基準画像として表示させる画像に対応する表示画像データを決定する(基準画像決定ステップS21)。かかる表示画像データは、背景表示のために1点透視図法により描写された画像に対応する。例えば、図12に示すように、消失点P3を画像の中央に配置した表示画像Aを基準画像とする。一方で、画像制御基板113では、主制御部101による大当たり判定の結果に基づいた遊技情報を数字の組み合わせで表示する数字オブジェクト70を表示画像Aの上に重ねて表示させることを決定したとする。
【0041】
続いて、画像処理基板111から動き方向ベクトルを取得する(ベクトル取得ステップS22)。画像処理基板111から送出された動き方向ベクトルVのデータ、つまり、X軸成分Vx、及び、Y軸成分Vyの値を、画像制御基板113に含まれるRAM等に一旦、格納する。
【0042】
続いて、動き方向ベクトルに応じて表示画像データを決定する(表示画像決定ステップS23)。動き方向ベクトルに基づいて、基準画像である表示画像Aに関連付けて画像データベース114に蓄積された複数の表示画像データから、液晶表示装置36に表示させる表示画像データを決定するのである。例えば、消失点P3を画像の中央に配置した上記した表示画像Aに代えて、図13に示すように、消失点P4を画像の左上に配置した表示画像Bを背景とする表示画像を決定し、これに対応する表示画像データを決定する。
【0043】
続いて、決定した表示画像データに対応する画像を液晶表示装置36に表示する(画像表示ステップS24)。
【0044】
次に、特定演出状態が終了しているかを確認する(S25)。詳細には、主制御部101からの特定演出状態の終了を示す信号を受信しない限り(S25;NO)、基準画像決定ステップS21に戻って、それ以降の処理を繰り返す。
【0045】
なお、画像表示ステップS24において表示された画像を次の基準画像として基準画像決定ステップS21で選択する。つまり、例えば、ある時刻において、図12に示すような消失点P3を画像の中央に配置した表示画像Aを基準画像として液晶表示装置36に表示させ、所定時間が経過後、遊技者が上体を遊技機1に向かって左方向に傾けたとき、表示画像Aから図13に示すような消失点P4を画像の左上に配置した表示画像Bへ表示を変更するのである。
【0046】
また、特定演出状態では、基準画像決定ステップS21から画像表示ステップS24までを繰り返して、遊技者に連続的に変化していると視覚的に感じさせるような短い時間間隔で表示画像を順次切り替えて表示させる。これにより、遊技者は、あたかも自らの動作に追従して消失点が移動しているように感じ、つまり、1点透視図法により描写された背景を有する表示画像の奥行き感をより強く感じる。
【0047】
一方、主制御部101から特定演出状態の終了を示す信号を受信すると(S25;YES)、遊技者に連続的に変化していると視覚的に感じさせるような短い時間間隔で表示画像を順次切り替えて表示させる処理を終了する。
【0048】
上記した実施例において、カメラ37aを液晶表示装置36の上方近傍に設置することで、遊技者を略正面から撮像でき、遊技機1の前方に着席して2次元的に動く遊技者の動き方向ベクトルを感度良く算出し得る。そして、動き方向ベクトルに対応させて遊技情報の表示変化を簡便に得て、遊技者に与える意外性を高めつつ遊技者の興趣をより惹き得るのである。
【0049】
以上、本実施例によれば、遊技者の着座する方向へ向けてカメラ37aを設置し遊技者の動きに対応して液晶表示装置36に表示される画像を連続的に変化させる。より詳細には、遊技者の顔や眼球などの身体の特定の部位を捕捉することなく遊技者の着席が想定される箇所を撮像した2つの画像データを比較するだけで、より簡便に遊技者の2次元的な動作に対応する動き方向ベクトルを算出できる。しかも、遊技者の遊技操作でなく、動き方向ベクトルに対応させて表示画像データを変更するので、これによって変化する遊技情報の表示を簡便に成し得る。これらにより遊技者に与える意外性を高め、遊技者の興趣をより惹き得る画像表示部を有する遊技機を提供できるのである。
【0050】
なお、上記した実施例において、動き方向ベクトルを、X軸成分及びY軸成分で構成される2次元ベクトルとしたが、X軸成分又はY軸成分のどちらか一方で構成される1次元ベクトルとしてもよい。これにより、2つの画像データから簡便に動き方向ベクトルを求め得るので、より簡便に遊技者の動作に対応させて表示画像を変化させることができる。特に、遊技機1の前方に着席した遊技者が主に動く方向はX軸方向であるので、動き方向ベクトルをX軸成分のみで構成される1次元ベクトルとした場合、遊技者の主に動く方向に基づいて、遊技者の、特に、比較的動きの大きい頭部の動きを一定の精度で推定し得て、より簡便に遊技者の動作に応じて表示画像を決定して表示させることができる。
【0051】
また、上記した実施例において、カメラ37aを液晶表示装置36の上部に設置したが、台枠2の上部近傍に設置してもよい。すなわち、カメラ37aを、台枠2の上部近傍に設置し、遊技機1の上部から前方斜め下を撮像できるように方向を固定する。すると、カメラ37aは、遊技機1の上部から前方斜め下に着席した遊技者の比較的動きの大きい頭部を近距離で撮像できる。よって、頭部の動きに基づく大きな動き方向ベクトルを算出し得て、感度良く遊技者の位置を推定し得る。そのため、表示画像の変化による、遊技者に与えられる意外性をより高め得るのである。
【0052】
また、上記した実施例において、遊技機1のハンドルレバー40に押圧センサを取り付けたり、カメラ37aの近傍に赤外線距離センサを取り付けたりするなどして遊技者の奥行き方向の位置について計測してもよい。これらのセンサにより検出された圧力や遊技者の位置に基づく信号を画像処理基板111に送信し、遊技者の奥行き方向の動きや位置を測定し、これに基づき動き方向ベクトルのZ軸成分を得てもよい。これにより、単純な構造で3次元の動き方向ベクトルを算出できて、簡便でありながらも、遊技者のより細かな動作に応じて多彩な表示画像を選択して表示させることができ、遊技者にさらなる興趣を与えることができる。
【0053】
さらに、上記した実施例において、表示画像データは方向ベクトルに基づき計算によって作成されてもよい。例えば、1点透視図法により描写された画像であれば、その消失点の位置を方向ベクトルに沿って算出し、これに合わせた表示画像を作成して順次表示させるのである。これによれば、遊技者の動作により細かに応じた画像を表示させることができる。
【0054】
また、ここまで、弾球式遊技機について説明したが、回胴式遊技機においても同様に遊技情報の表示を変化得る。
【0055】
ここまで本発明による代表的実施例及びこれに基づく改変例を説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した請求項の範囲を逸脱することなく種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0056】
1 遊技機
32 遊技盤
33 センター役物
36 液晶表示装置
37a カメラ
37b カメラ基板
101 主制御部
111 画像処理基板
112 カメラ画像記憶部
113 画像制御基板
114 画像データベース
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技情報を表示するための表示パネルを含む画像表示部を有する遊技機に関し、特に、遊技者の興趣をより惹き得る変化を与え得る画像表示部を有する遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遊技機の遊技盤面中央部に大型の液晶パネルを含む表示装置を配置し、かかる表示装置に多彩な画像を表示させて遊技情報の提供を行うことが広く行われている。かかる画像について、2次元的な平面画像だけではなく、遠近法を利用した擬似3次元手法による3次元的な立体画像を提供することが試みられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、擬似3次元手法の1つである1点透視図法を用いて奥行き感を与えた画像で遊技情報を表示する表示装置を含むドラム式遊技機を開示している。詳細には、空間内の迷路(ダンジョン)を進もうとする主人公の視線の方向をドラム停止ボタンの操作に対応させて変化させている。つまり、ドラム停止ボタンの操作により、迷路内を進行する主人公の視線がさも移動したかのように、迷路の画像を断続的に変化させるのである。表示装置内の主人公の表示と主人公の視線の先の迷路の風景の表示とが1点透視図法により前後に距離感を有するように表示されているので、遊技者は主人公の視線がさも移動したかのように強く認識するのである。
【0004】
ところで、特許文献1では、表示装置の遊技情報の表示を遊技者の遊技操作に対応させて変化させているが、2次元的な平面画像を提供する表示装置を含む遊技機でも古くから同様の表示手法が行われている。しかしながら、2次元的な平面画像は3次元的な立体画像に比べ、変化のインパクトに乏しかった。そこで、遊技者の遊技操作だけではなく、より意外性の高いパラメータに対応させて2次元的な遊技情報の表示を変化させることも考慮されてきた。
【0005】
例えば、特許文献2では、遊技機において、遊技者の顔の位置や向きに対応させて2次元的な遊技情報の表示を変化させることが開示されている。詳細には、弾球式遊技機の飾り枠の上部に設置されたデジタルカメラにより、座席に着席している遊技者の顔を中心に静止画像を撮影する。この画像データを処理し、顔を判別した上で、顔の位置座標や、所定の時間間隔で得られる画像データからの位置座標の時間変化などを計算し、遊技情報としての隠し画像を表示装置に表示させている。かかる構成によれば、隠れている画像を顔の様々な角度や位置から探し出す擬似体験をさせ、遊技者により高いゲーム性を与え得ると述べている。
【0006】
また、例えば、特許文献3では、遊技者の視線の動きに対応させて2次元的な遊技情報の表示を変化させることが開示されている。詳細には、回胴式遊技機の筐体正面左側から遊技者の方向へ向けて伸びるアームの先端に遊技者の眼球を撮像し視線を検出する視線センサを設置する。かかる視線センサから近赤外線を遊技者の眼球に向けて照射するとともに、視線センサに含まれるカメラで眼球の瞳孔及び角膜からの反射光を撮像するのである。この画像データを処理し、眼球の位置と視線の向きを求め、演出画像の表示される座標を変化させている。視線を検出することで、敢えて遊技者が注視していない領域を特定できて、かかる部分に演出画像を表示させて、運良くその演出画像に気づいた場合にあってのみ遊技者に特典を付与するなどの新たなゲーム性を付加することもできると述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−310860号公報
【特許文献2】特開2005−052418号公報
【特許文献3】特開2009−101013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
遊技機にカメラなどの撮像部を与えて遊技者の特定の部位の動作を捕捉しこれに対応させて遊技情報の表示を変化させることで、意外性を高めるとともに、新たなゲーム性を追加することもでき得て、遊技者の興趣を惹き得るが、一方で、遊技機が複雑化し、製造コストが大幅に上昇してしまうといった問題もあった。
【0009】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、より簡便に遊技者の動作に対応させて遊技情報の表示を変化させ得て、しかも遊技者の興趣をより惹き得る変化を与え得る画像表示部を有する遊技機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による遊技機は、遊技情報を表示するための表示パネルを含む画像表示部を有する遊技機であって、遊技者の着座すべき方向へ向けて設置されたカメラを含む撮像部と、前記撮像部から送出されるカメラ画像データを解析する解析部と、前記解析部からの解析データに基づいて前記画像表示部の前記表示パネルに表示すべき表示画像データを決定する画像表示制御部と、を含み、前記解析部は、前記撮像部から送出された所定時間だけ隔てて得られた2つの前記カメラ画像データを比較して前記遊技者の動き方向ベクトルを求め、前記画像表示制御部は、前記動き方向ベクトルに対応させて前記表示画像データを視覚的に連続するような時間間隔で変更することを特徴とする。
【0011】
かかる発明によれば、遊技者の動作に対応する動き方向ベクトルを簡便に求めることができて、これに対応した遊技情報の表示変化を簡便に達成し得ることから、遊技者に与える意外性を高め遊技者の興趣をより惹き得る画像表示部を有する遊技機を提供できるのである。
【0012】
上記した発明において、前記表示画像データは、前記表示パネルに遠近法による奥行き画像を与えてもよい。かかる発明によれば、奥行き感のある画像を変化させて遊技者に与えるインパクトを高め得て、遊技者の興趣をより惹き得る画像表示部を有する遊技機を提供できるのである。
【0013】
上記した発明において、前記撮像部は、前記遊技機の台枠上部近傍に与えられることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、動き方向ベクトルを感度良く得ることができて、これに対応した遊技情報の表示変化を簡便に達成し得ることから、遊技者に与える意外性を高め遊技者の興趣をより惹き得る画像表示部を有する遊技機を提供できるのである。
【0014】
上記した発明において、前記撮像部は、前記遊技機の前記画像表示部近傍に与えられることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、撮像部を画像表示部とともにモジュール化できて、動き方向ベクトルに対応した遊技情報の表示変化を与える画像表示部を有する遊技機を安価に提供できるのである。
【0015】
上記した発明において、前記遊技者の動き方向ベクトルは1次元であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、動き方向ベクトルに対応した遊技情報の表示変化を与える画像表示部を簡便に得ることができるのである。
【0016】
上記した発明において、前記遊技者の動き方向ベクトルは2次元であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、より高度に動き方向ベクトルに対応した遊技情報の表示変化を与える画像表示部を簡便に得ることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による遊技機の正面図である。
【図2】本発明による遊技機の要部のブロック図である。
【図3】本発明による遊技機の要部の動作フロー図である。
【図4】本発明による遊技機の要部の動作フロー図である。
【図5】カメラによる画像の1つの例を示す図である。
【図6】カメラによる画像の他の例を示す図である。
【図7】図5の画像を2値化した画像の例を示す図である。
【図8】図6の画像を2値化した画像の例を示す図である。
【図9】図7の2値化画像の基準点を示す図である。
【図10】図8の2値化画像の基準点を示す図である。
【図11】動き方向ベクトルを示す図である。
【図12】表示画像の1つの例を示す図である。
【図13】表示画像の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による1つの実施例としての遊技機について、図1及び図2を用いてその詳細を説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、遊技機1はいわゆるパチンコ機であって、台枠2を介して図示しない遊技場内の島設備に固定される。台枠2の内側には筐体21が設けられており、これに対して開閉自在であって、前面ガラス31を与えられた上部前面パネル3及び下部前面パネル4が取り付けられている。筐体21の内部には、複数の基板からなり、遊技を進行するための制御部100が収容されている。
【0020】
詳細には、筐体21内の遊技盤32の上には、センター役物33、スタートチャッカー34及びアタッカー35などの入賞口、その他図示しない釘や役物などが設けられている。なお、スタートチャッカー34などの入賞口は図示しない遊技球の入賞検出センサを含み、遊技球の入賞を検出すると、電気的に接続された主制御部101に対して入賞を知らせる所定の信号を送出する。
【0021】
センター役物33は、その中央部に液晶表示装置36を有するとともに、その上部には遊技機1の前方を撮像するカメラ37aを有する。カメラ37aは、モノクロCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はモノクロCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどである。カメラ37aはカメラ基板37bを介して画像処理基板111に電気的に接続され、遊技機1の前方に着席する遊技者の周囲を撮像して画像処理基板111に常に信号を送出している。液晶表示装置36は画像制御基板113と電気的に接続され、画像制御基板113から送出される信号に基づいて所定の画像を表示させる。なお、センター役物33が液晶表示装置36や撮像部37(カメラ37a及びカメラ基板37b)を含むようにモジュール化されることで、センター役物33を遊技機1から容易に取り外し、他の遊技機へのリサイクルを容易にできる。
【0022】
制御部100は、遊技動作を制御する主制御部101を含む。さらに、画像処理基板111と、主制御部101及び画像処理基板111に電気的に接続された画像制御基板113などからなる各種副制御部を含む。さらに、画像処理基板111に電気的に接続されたカメラ画像記憶部112と、画像制御基板113に電気的に接続された画像データベース114とを含む。
【0023】
主制御部101は、図示しないメインCPU、ROM及びRAMなどを有し、ROMに記憶されたプログラムに従って、入賞口からの信号などに対応して大当たり判定等を行って、遊技球の払い戻しを行ったり、又は、アタッカー35を開放したりするなど、遊技の基本的な処理を決定し、各副制御部に処理内容を指示する。
【0024】
画像処理基板111は、図示しないCPU、所定のプログラムの収容されたROM、及び、RAM等を有し、更に、データを入出力するためのSSDやHDDのような大記憶容量の記憶媒体からなるカメラ画像記憶部112と接続されている。上記したように、カメラ37aで撮像されたアナログ電気信号はカメラ基板37bで所定サンプリングレート毎にデジタル電気信号に変換された上で、すなわち1フレーム毎の画像データとして画像処理基板111に送出され、順次、カメラ画像記憶部112に格納される。画像処理基板111では、カメラ画像記憶部112から所定時間毎の画像データを読み出してRAM等に一時的に転送しつつ、後述するような画像処理を行って、動き方向ベクトルを決定する。
【0025】
画像制御基板113は、図示しないCPU、所定のプログラムの収容されたROM、及び、RAM等を有し、更に、データを入出力するためのSSDやHDDのような大記憶容量の記憶媒体からなる画像データベース114と接続されている。画像制御基板113では、主に、液晶表示装置36における遊技状態に対応した画像演出のための表示の制御を行う。かかる液晶表示装置36の表示画像データは、画像処理基板111によって算出された動き方向ベクトルを受けて、表示画像データを蓄積した画像データベース114から所定の表示画像データを読み出して、RAM等に一時的に転送しつつ、液晶表示装置36に立体的な動きのある画像を表示させる。詳細は後述する。
【0026】
なお、画像データベース114には、例えば、消失点を1つ有する1点透視図法により描写された背景表示のための表示画像データをあらかじめ蓄積されている。ここで、消失点が表示画像データごとに画面の中央、右上、右下、左上、左下などの様々な位置に配置され、すなわち視点を変えた画像に対応する表示画像データとして複数蓄積されている。
【0027】
なお、遊技盤32の下部には、遊技球を発射するためのハンドルレバー40や払い出された遊技球を貯留する貯留皿41などが設置されている。詳細については、公知の遊技機と同様であるため省略する。
【0028】
次に、遊技機1の動作について、図3及び図4に沿って、図5乃至13を参照しつつ説明する。
【0029】
遊技球の発射、入賞、大当たり判定、払出しなどについては公知の遊技機と同様であるので説明を省略する。ここでは主に、画像処理基板111及び画像制御基板113におけるそれぞれのプログラムに従った処理について説明する。
【0030】
図3に示すように、画像処理基板111では、そのCPUにおいて、ROMに収容された所定のプログラムに従って、動き方向ベクトルの算出処理を行う。まず、カメラ基板37bから送出されてくる1フレーム毎のデジタル電気信号からなる画像データをカメラ画像記憶部112に格納していく(撮像ステップS11)。つまり、遊技機1の前方に着席した遊技者の周囲を撮像した1フレーム毎の画像データを格納していく。かかる画像データに対応する画像は、例えば、図5又は図6に示すように、遊技機1の前方に着席する遊技者と、遊技機1を含む島設備に対向する遊技者の背後の島設備などである。なお、カメラ画像記憶部112の容量を確保するため、一定時間を経過した画像データは順次消去することが好ましい。
【0031】
続いて、カメラ画像記憶部112から所定時間間隔で撮像された2つの画像データを選択し、RAM等に格納する(静止画選択ステップS12)。例えば、図5及び図6に示す画像のような、2つの所定時間を空けて撮像された画像データを選択する。図5に示す画像には、概略、遊技機1の前方に着席した遊技者を示す第1遊技者オブジェクト50と、遊技者の背後の島設備を示す第1背景オブジェクト60とが示される。また、図6に示す画像には、概略、上体を遊技機1に向かって左方向に傾けて上方に伸ばした遊技者を示す第2遊技者オブジェクト50’と、遊技者の背後の島設備を示す第2背景オブジェクト60’とが示される。ここで、第1遊技者オブジェクト50と第2遊技者オブジェクト50’の輝度は、いずれも第1背景オブジェクト60と第2背景オブジェクト60’の輝度と比較して低くなっている。
【0032】
続いて、上記した2つの画像データを輝度に関して2値化処理し2値化画像データを得て、再度、RAM等に格納する(2値化処理ステップS13)。詳細には、選択した画像データに含まれる全ての画素の輝度の平均値などを閾値とし、閾値に対する輝度の高低により各画素の輝度を変更し、2値化画像データとするのである。ここで、閾値を画像データに含まれる全ての画素の輝度の平均値とすることで、遊技場の明るさなどの影響を減じて、2値化画像データを安定して得られる。
【0033】
2値化処理において、例えば、図5に示す画像に対応する画像データは、図7に示す2値化画像に対応する2値化画像データとなる。すなわち、第1遊技者オブジェクト50は、周辺の第1背景オブジェクト60と比較して低い輝度を有し、第1低輝度オブジェクト51に変換される。また、第1背景オブジェクト60の画素の大部分は、輝度の高い画素からなる第1高輝度オブジェクト61に変換される。第1背景オブジェクト60の画素の一部は、輝度の低い画素からなる第1ノイズオブジェクト52に変換される。
【0034】
同様に、図6に示す画像に対応する画像データは、図8に示す2値化画像に対応する2値化画像データとなる。すなわち、第2遊技者オブジェクト50’は、周辺の第2背景オブジェクト60’と比較して低い輝度を有し、第2低輝度オブジェクト51’に変換される。また、第2背景オブジェクト60’の画素の大部分は、輝度の高い画素からなる第2高輝度オブジェクト61’に変換される。第2背景オブジェクト60’の画素の一部は、輝度の低い画素からなる第2ノイズオブジェクト52’に変換される。
【0035】
なお、2値化処理ステップS13に当たって、平滑化フィルタやメディアンフィルタなどの公知のフィルタリング処理を実施すると、第1ノイズオブジェクト52や第2ノイズオブジェクト52’などのノイズオブジェクトの小さい2値化画像データを得ることができる。
【0036】
続いて、2値化画像データから輝度の低い画素の重心として基準点の座標を算出する(基準点算出ステップS14)。詳細には、2値化画像データから、輝度の低い画素の座標データを抽出し、この座標データのX−Y座標の値を座標成分ごとに相加平均して、基準点の座標データのX−Y座標の値を得る。これにより、図9に示すように、輝度の低い画素からなる第1低輝度オブジェクト51及び第1ノイズオブジェクト52の重心に位置する第1基準点P1が求められる。同様に、図10に示すように、オブジェクトの重心に位置する第2基準点P2が求められる。なお、図9及び図10では、第1基準点P1、第2基準点P2を視認しやすくするため、第1低輝度オブジェクト51、第1ノイズオブジェクト52、第2低輝度オブジェクト51’及び第2ノイズオブジェクト52’の輪郭を実線で示している。
【0037】
さらに、得られた第1基準点P1、第2基準点P2の座標データから動き方向ベクトルを算出する(ベクトル算出ステップS15)。詳細には、図11に示すように、第2基準点P2の座標データのX−Y座標の値から第1基準点P1の座標データのX−Y座標の値を座標成分ごとに減算して、2次元ベクトルである動き方向ベクトルVのX軸成分Vx、及び、Y軸成分Vyを得る。得られた動き方向ベクトルに対応する信号は、画像制御基板113へ順次送出される。
【0038】
なお、第1基準点P1は、第1ノイズオブジェクト52を含めて求めたので、第1低輝度オブジェクト51の重心とは異なる座標となる。同様に、第2基準点P2も第2低輝度オブジェクト51’の重心とは異なる座標となる。ここで、第1ノイズオブジェクト52及び第2ノイズオブジェクト52’は遊技者の背後の島設備などの動作の少ない背景に基づいて得ているため、互いの変化は小さい。したがって、第1ノイズオブジェクト52の与える第1基準点P1の座標への影響と、第2ノイズオブジェクト52’の与える第2基準点P2の座標への影響とは、ほぼ同じである。よって、動き方向ベクトルを算出すると、第1ノイズオブジェクト52及び第2ノイズオブジェクト52’による影響は相殺される。故に、2値化画像のノイズオブジェクトの有無による動き方向ベクトルへの影響は小さくなる。
【0039】
次に、図4に示すように、画像制御基板113では、そのCPUにおいて、ROMに収容された所定のプログラムに従って、遊技状態に応じて決められる特定の演出状態における動き方向ベクトルに応じた画像を表示する処理を行う。なお、画像制御基板113のCPUにより、主制御部101から特定の演出状態であることを示す信号を受信した場合に以下の処理は実行される。
【0040】
詳細には、画像データベース114に蓄積された表示画像データから、基準画像として表示させる画像に対応する表示画像データを決定する(基準画像決定ステップS21)。かかる表示画像データは、背景表示のために1点透視図法により描写された画像に対応する。例えば、図12に示すように、消失点P3を画像の中央に配置した表示画像Aを基準画像とする。一方で、画像制御基板113では、主制御部101による大当たり判定の結果に基づいた遊技情報を数字の組み合わせで表示する数字オブジェクト70を表示画像Aの上に重ねて表示させることを決定したとする。
【0041】
続いて、画像処理基板111から動き方向ベクトルを取得する(ベクトル取得ステップS22)。画像処理基板111から送出された動き方向ベクトルVのデータ、つまり、X軸成分Vx、及び、Y軸成分Vyの値を、画像制御基板113に含まれるRAM等に一旦、格納する。
【0042】
続いて、動き方向ベクトルに応じて表示画像データを決定する(表示画像決定ステップS23)。動き方向ベクトルに基づいて、基準画像である表示画像Aに関連付けて画像データベース114に蓄積された複数の表示画像データから、液晶表示装置36に表示させる表示画像データを決定するのである。例えば、消失点P3を画像の中央に配置した上記した表示画像Aに代えて、図13に示すように、消失点P4を画像の左上に配置した表示画像Bを背景とする表示画像を決定し、これに対応する表示画像データを決定する。
【0043】
続いて、決定した表示画像データに対応する画像を液晶表示装置36に表示する(画像表示ステップS24)。
【0044】
次に、特定演出状態が終了しているかを確認する(S25)。詳細には、主制御部101からの特定演出状態の終了を示す信号を受信しない限り(S25;NO)、基準画像決定ステップS21に戻って、それ以降の処理を繰り返す。
【0045】
なお、画像表示ステップS24において表示された画像を次の基準画像として基準画像決定ステップS21で選択する。つまり、例えば、ある時刻において、図12に示すような消失点P3を画像の中央に配置した表示画像Aを基準画像として液晶表示装置36に表示させ、所定時間が経過後、遊技者が上体を遊技機1に向かって左方向に傾けたとき、表示画像Aから図13に示すような消失点P4を画像の左上に配置した表示画像Bへ表示を変更するのである。
【0046】
また、特定演出状態では、基準画像決定ステップS21から画像表示ステップS24までを繰り返して、遊技者に連続的に変化していると視覚的に感じさせるような短い時間間隔で表示画像を順次切り替えて表示させる。これにより、遊技者は、あたかも自らの動作に追従して消失点が移動しているように感じ、つまり、1点透視図法により描写された背景を有する表示画像の奥行き感をより強く感じる。
【0047】
一方、主制御部101から特定演出状態の終了を示す信号を受信すると(S25;YES)、遊技者に連続的に変化していると視覚的に感じさせるような短い時間間隔で表示画像を順次切り替えて表示させる処理を終了する。
【0048】
上記した実施例において、カメラ37aを液晶表示装置36の上方近傍に設置することで、遊技者を略正面から撮像でき、遊技機1の前方に着席して2次元的に動く遊技者の動き方向ベクトルを感度良く算出し得る。そして、動き方向ベクトルに対応させて遊技情報の表示変化を簡便に得て、遊技者に与える意外性を高めつつ遊技者の興趣をより惹き得るのである。
【0049】
以上、本実施例によれば、遊技者の着座する方向へ向けてカメラ37aを設置し遊技者の動きに対応して液晶表示装置36に表示される画像を連続的に変化させる。より詳細には、遊技者の顔や眼球などの身体の特定の部位を捕捉することなく遊技者の着席が想定される箇所を撮像した2つの画像データを比較するだけで、より簡便に遊技者の2次元的な動作に対応する動き方向ベクトルを算出できる。しかも、遊技者の遊技操作でなく、動き方向ベクトルに対応させて表示画像データを変更するので、これによって変化する遊技情報の表示を簡便に成し得る。これらにより遊技者に与える意外性を高め、遊技者の興趣をより惹き得る画像表示部を有する遊技機を提供できるのである。
【0050】
なお、上記した実施例において、動き方向ベクトルを、X軸成分及びY軸成分で構成される2次元ベクトルとしたが、X軸成分又はY軸成分のどちらか一方で構成される1次元ベクトルとしてもよい。これにより、2つの画像データから簡便に動き方向ベクトルを求め得るので、より簡便に遊技者の動作に対応させて表示画像を変化させることができる。特に、遊技機1の前方に着席した遊技者が主に動く方向はX軸方向であるので、動き方向ベクトルをX軸成分のみで構成される1次元ベクトルとした場合、遊技者の主に動く方向に基づいて、遊技者の、特に、比較的動きの大きい頭部の動きを一定の精度で推定し得て、より簡便に遊技者の動作に応じて表示画像を決定して表示させることができる。
【0051】
また、上記した実施例において、カメラ37aを液晶表示装置36の上部に設置したが、台枠2の上部近傍に設置してもよい。すなわち、カメラ37aを、台枠2の上部近傍に設置し、遊技機1の上部から前方斜め下を撮像できるように方向を固定する。すると、カメラ37aは、遊技機1の上部から前方斜め下に着席した遊技者の比較的動きの大きい頭部を近距離で撮像できる。よって、頭部の動きに基づく大きな動き方向ベクトルを算出し得て、感度良く遊技者の位置を推定し得る。そのため、表示画像の変化による、遊技者に与えられる意外性をより高め得るのである。
【0052】
また、上記した実施例において、遊技機1のハンドルレバー40に押圧センサを取り付けたり、カメラ37aの近傍に赤外線距離センサを取り付けたりするなどして遊技者の奥行き方向の位置について計測してもよい。これらのセンサにより検出された圧力や遊技者の位置に基づく信号を画像処理基板111に送信し、遊技者の奥行き方向の動きや位置を測定し、これに基づき動き方向ベクトルのZ軸成分を得てもよい。これにより、単純な構造で3次元の動き方向ベクトルを算出できて、簡便でありながらも、遊技者のより細かな動作に応じて多彩な表示画像を選択して表示させることができ、遊技者にさらなる興趣を与えることができる。
【0053】
さらに、上記した実施例において、表示画像データは方向ベクトルに基づき計算によって作成されてもよい。例えば、1点透視図法により描写された画像であれば、その消失点の位置を方向ベクトルに沿って算出し、これに合わせた表示画像を作成して順次表示させるのである。これによれば、遊技者の動作により細かに応じた画像を表示させることができる。
【0054】
また、ここまで、弾球式遊技機について説明したが、回胴式遊技機においても同様に遊技情報の表示を変化得る。
【0055】
ここまで本発明による代表的実施例及びこれに基づく改変例を説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した請求項の範囲を逸脱することなく種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0056】
1 遊技機
32 遊技盤
33 センター役物
36 液晶表示装置
37a カメラ
37b カメラ基板
101 主制御部
111 画像処理基板
112 カメラ画像記憶部
113 画像制御基板
114 画像データベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技情報を表示するための表示パネルを含む画像表示部を有する遊技機であって、
遊技者の着座すべき方向へ向けて設置されたカメラを含む撮像部と、
前記撮像部から送出されるカメラ画像データを解析する解析部と、
前記解析部からの解析データに基づいて前記画像表示部の前記表示パネルに表示すべき表示画像データを決定する画像表示制御部と、を含み、
前記解析部は、前記撮像部から送出された所定時間だけ隔てて得られた2つの前記カメラ画像データを比較して前記遊技者の動き方向ベクトルを求め、
前記画像表示制御部は、前記動き方向ベクトルに対応させて前記表示画像データを視覚的に連続するような時間間隔で変更することを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記表示画像データは、前記表示パネルに遠近法による奥行き画像を与えることを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記撮像部は、前記遊技機の台枠上部近傍に与えられることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記撮像部は、前記遊技機の前記画像表示部近傍に与えられることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。
【請求項5】
前記遊技者の動き方向ベクトルは1次元であることを特徴とする請求項1乃至4のうちの1つに記載の遊技機。
【請求項6】
前記遊技者の動き方向ベクトルは2次元であることを特徴とする請求項1乃至4のうちの1つに記載の遊技機。
【請求項1】
遊技情報を表示するための表示パネルを含む画像表示部を有する遊技機であって、
遊技者の着座すべき方向へ向けて設置されたカメラを含む撮像部と、
前記撮像部から送出されるカメラ画像データを解析する解析部と、
前記解析部からの解析データに基づいて前記画像表示部の前記表示パネルに表示すべき表示画像データを決定する画像表示制御部と、を含み、
前記解析部は、前記撮像部から送出された所定時間だけ隔てて得られた2つの前記カメラ画像データを比較して前記遊技者の動き方向ベクトルを求め、
前記画像表示制御部は、前記動き方向ベクトルに対応させて前記表示画像データを視覚的に連続するような時間間隔で変更することを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記表示画像データは、前記表示パネルに遠近法による奥行き画像を与えることを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記撮像部は、前記遊技機の台枠上部近傍に与えられることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記撮像部は、前記遊技機の前記画像表示部近傍に与えられることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。
【請求項5】
前記遊技者の動き方向ベクトルは1次元であることを特徴とする請求項1乃至4のうちの1つに記載の遊技機。
【請求項6】
前記遊技者の動き方向ベクトルは2次元であることを特徴とする請求項1乃至4のうちの1つに記載の遊技機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2013−111448(P2013−111448A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263506(P2011−263506)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(595112915)株式会社ヤマダ (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(595112915)株式会社ヤマダ (10)
【Fターム(参考)】
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