遊技盤およびその製造方法
【課題】遊技盤の表面を傷から保護するハードコート層をムラなくきれいに、しかも簡単に形成できるようにすることで合成樹脂製の遊技盤の製造を容易にする。
【解決手段】ベースフィルム3aに離形層3cとハードコート層3bと絵柄層3dと接着層3eとを積層してなる転写フィルム3を、各種入賞装置20や装飾体が取り付けられる大小の透孔2a〜2hが形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤1の表面に該接着層3eが内側となるように配設し、該転写フィルム3をロール式転写装置4により遊技盤1の表面に圧着し前記ベースフィルム3aを離形することにより、該遊技盤1の表面に絵柄層2dを内側にしてハードコート層3bを転写する。
【解決手段】ベースフィルム3aに離形層3cとハードコート層3bと絵柄層3dと接着層3eとを積層してなる転写フィルム3を、各種入賞装置20や装飾体が取り付けられる大小の透孔2a〜2hが形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤1の表面に該接着層3eが内側となるように配設し、該転写フィルム3をロール式転写装置4により遊技盤1の表面に圧着し前記ベースフィルム3aを離形することにより、該遊技盤1の表面に絵柄層2dを内側にしてハードコート層3bを転写する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ、アレンジボール、雀球等のパチンコ球を遊技媒体とする遊技機に用いられる遊技盤とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ、アレンジボール、雀球等の遊技盤は、周知のように、合板または合成樹脂製で平板状に射出成形されたものであり、前面の遊技領域に釘や風車、入賞口等が配置される。そして発射装置から発射された遊技球が該遊技領域を釘や風車等に衝突しながら流下し、入賞口または下端部のアウト口へと流れ込むようにするものであり、遊技者はその遊技球の動きを見て楽しむものである。係る遊技盤は、木材の変形による不良製品発生の問題、および、環境保護の観点や意匠上の観点から、合板に代えて合成樹脂製のものが提案され、特に透明な合成樹脂により成形された遊技盤は、裏面に図柄表示装置や各種装飾部材を配置できることから、斬新なデザインを採ることができ興趣が高められるといった利点があるものである。
【0003】
しかし、一般に合成樹脂製の遊技盤は、遊技球との接触によって傷が付き易いという問題があり、特に透明な遊技盤では裏側に設けられた図柄表示装置や各種装飾部材がその傷によって見難くなってしまうといった問題がある。
【0004】
また、図12にパチンコ機の要部の縦断面図を示し、1は透明な合成樹脂製の遊技盤、101は該遊技盤に設けられた入賞口、102はアウト球排出口、103は該遊技盤の裏面に設けられ入賞口101またはアウト球排出口102等から入った遊技球を集合させるカバー体、104は前面ガラスである。このパチンコ機では、透明な遊技盤1の裏面に絵柄層105が設けられ、該絵柄を前面から透視し得るようにすることにより、奥行きのある演出ができるようにしている。このように裏面まで透視できるようにする遊技盤1においては、入賞口101に入った遊技球がカバー体103内で落下する際に該遊技盤1の裏面の特定部分だけに頻繁に接触するので、絵柄層105に筋状の傷が付き易く、この傷が前面からも透視されるようになり、見難くなるおそれがあった。
【0005】
一方、下記特許文献1に示された発明は、遊技球と接する遊技盤の表面にUV硬化樹脂を透明な溶剤とともに噴射(スプレー)した後、紫外線を照射することにより薄幕層を形成し、傷付きを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3720829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示された遊技盤では、噴射によって遊技盤の表面に凹凸(通称、ゆず肌)が生じ、均一な塗膜を形成し難いため、光沢のある鏡面状に仕上げ難いといった問題、および、製造にあたって噴射工程と硬化工程が必要であるので、生産効率が悪く、製造ラインも大型化するといった問題がある。
本発明は、このような問題点を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、請求項1に記載した遊技盤は、各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面にロール式転写装置によりハードコート層が転写されていることを特徴とする。
また、請求項2に記載した遊技盤は、各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面にロール式転写装置により透明なハードコート層が転写されているとともに、該ハードコート層の内側に絵柄層が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載した遊技盤の製造方法は、ベースフィルムに離形層とハードコート層と接着層とを積層してなる転写フィルムを、各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面に該接着層が内側となるように配設し、該転写フィルムをロール式転写装置により遊技盤の表面に加圧し前記ベースフィルムを離形することにより、該遊技盤の表面にハードコート層を転写することを特徴とする。
また、請求項4に記載した遊技盤の製造方法は、ベースフィルムに離形層とハードコート層と絵柄層と接着層とを積層してなる転写フィルムを、各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面に該接着層が内側となるように配設し、該転写フィルムをロール式転写装置により遊技盤の表面に加圧し前記ベースフィルムを離形することにより、該遊技盤の表面に絵柄層を内側にしてハードコート層を転写することを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、上記請求項2に記載した遊技盤において、転写フィルムの絵柄層は遊技盤の透孔との合致部位およびその周縁部位を除いて設けたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
遊技盤の表面を傷から保護する耐摩耗性のハードコート層がロール式転写装置によって凹凸などのムラが生じることなく簡単にきれいに形成することができ、合成樹脂製の遊技盤の製造が容易になる。
また、転写フィルムに絵柄層を設けることにより、遊技盤への絵柄付け処理が同時にでき、生産効率が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る遊技盤の正面の斜視図。
【図2】本発明に係る遊技盤の裏面の斜視図。
【図3】本発明に係る転写フィルムの層構造図。
【図4】本発明に係るロール式転写装置の正面図。
【図5】本発明に係るロール式転写装置の水平断面平面図。
【図6】本発明に係るロール式転写装置の側面図。
【図7】本発明に係る遊技盤の転写過程の要部の縦断面図。
【図8】本発明に係る遊技盤に入賞装置を取り付けた要部の縦断面図。
【図9】本発明に係る遊技盤の転写後の斜視図。
【図10】本発明に係る遊技盤の転写後の縦断面図。
【図11】本発明に係る遊技盤の転写後の斜視図。
【図12】パチンコ機の要部の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施形態を図面に従い説明する。図1、図2に転写前の合成樹脂製の遊技盤1を示す。この遊技盤1は、アクリル、ABS樹脂、ポリカーボネイト、ポリスチロール等の透明な合成樹脂を射出成形または押出成形することにより、障害釘が植設可能な8〜10mmの厚さの略正方形板状に成形され、パチンコ遊技機において周知の開閉翼片可動型入賞口、可変大入賞口等の各種入賞装置、或いは電子ディスプレイ、ランプ、その他の装飾体を取り付けるための大小の透孔2a〜2hが形成される。なお、この遊技盤1は図2の裏面にて分かるように外周縁部に額縁状に補強リブを一体に形成している。なお、これらの透孔2a〜2hは、射出成形装置によっては同時に成形することが容易であるが、押出成形により成形する場合は、NCルータ加工機により後加工することにより形成し得る。
【0013】
図3は本発明にて使用する転写フィルム3の層構造を示し、3aは厚さ19〜38μmのベースフィルム、3bは該ベースフィルムに剥がれ易くするための離形層3cを介して貼着された厚さ4〜10μmの透明なハードコート層、3dは該ハードコート層に遊技盤1の即した所望の絵柄を印刷することにより形成された印刷インク等からなる絵柄層である。このハードコート層3bは絵柄層3dを表面から見られるようにするため透明にしている。なお、絵柄層3dは前記遊技盤1に形成された透孔2a〜2hとの合致部位およびその周縁部位を除いて設けられる。3eは該絵柄層3dまたはハードコート層3bに設けられた接着層である。
【0014】
また、ロール式転写装置4は、図4に正面図、図5に平面図、図6に側面図を示したように、ワーク予熱装置4aと、転写装置本体4bと、該転写装置本体4bに設けられたターンテーブル4cとを備えている。ワーク予熱装置4aは、遠赤外線ヒータが内蔵されたヒータボックス6を備え、該ヒータボックス6の側面開口から該ヒータが矢印A方向に移動して遊技盤1を両面から加熱する。そして該ワーク移載装置7は、該遊技盤1を転写装置本体4bのターンテーブル4c上に移載する。また、10は転写装置本体4bの一端部に設けられたフィルム巻出部、11は他端部の設けられたフィルム巻取部で、該フィルム巻出部10からターンテーブル4c上の遊技盤1の上に前記転写フィルム3が巻き出され、フィルム巻取部11に前記ベースフィルム3aが巻き取られるようにしている。また、12は外周面にゴムが張られた加圧ロールで、ターンテーブル4cの上方に門型アングル13が形成され該アングル上のレールに沿って矢印B方向(図4に示す)に水平移動可能に移動体14が設けられ、該移動体14に加圧シリンダ15が鉛直に設けられ、該加圧シリンダによって該加圧ロール12が昇降動可能に支持されている。なお、このような転写装置本体4bの基本構造は、実公平6−6923号公報に示されたものとほぼ同じであるので、その詳しい説明は割愛する。
【0015】
このロール式転写装置4では、図1に示したような透孔2a〜2hが形成されたポリカーボネイト製の遊技盤1の上下両面を上記のようにヒータにより40〜50℃に加熱し、その後、該遊技盤1をワーク移載装置7によってターンテーブル4c上に移載する。そして該遊技盤1上にフィルム巻出部10から転写フィルム3を巻き出し、接着層3eが内側(図では下側)となるように該転写フィルム3を配設し、図4に示したように、ヒータにより予め加熱された加圧ロール12を圧下させることで該転写フィルム3を該遊技盤1の一端部に表面に加圧力400kgf程度で圧着し、その圧着状態のまま該加圧ロール12を回転させ該遊技盤1の他端部まで移動させる。これにより、接着層3eが加圧ロール12の熱および遊技盤1の予熱により熱溶融してハードコート層3bが絵柄層3dとともに該遊技盤1の表面に強固に接着する。なお、該加圧ロール12は、外周の長さが遊技盤1の外寸よりも長くなるような外径のものに設定することにより、ハードコート層3bの接着不良が生じないようにできる。その後、ベースフィルム3aは転写装置本体4bに設けられた箔はがれ機構により剥がされる。このとき離形層3cのためにベースフィルム3aはハードコート層3bから容易に離脱し、該ハードコート層3bおよび絵柄層3dは該遊技盤1の表面に転写された状態となる。剥がされたベースフィルム3aはフィルム巻取部11に巻き取られる。そしてターンテーブル4cを180度回転することにより、該遊技盤1は転写装置本体4bの側方に取り出され次の部品取付工程に移動される。図9はこうして絵柄層3dを内側にして透明なハードコート層3bが転写された遊技盤1を示す。
【0016】
なお、遊技盤1の透孔2a〜2hが形成された部位では、図7に示したように、ハードコート層3bの一部3b′がベースフィルム3aに接着したままとなって該ベースフィルム3aとともにフィルム巻取部11に巻き取られる。また、転写フィルム3の透孔2a〜2hが形成された部位と合致する部位およびその周縁部位は、前記したように絵柄層3dが設けられていないため、ベースフィルム3aを剥がした際にハードコート層3bの破片3b′′が透孔2a〜2h中に残ることがあるが、絵柄層3dの破片が透孔2a〜2h中に残るようなことがない。そして図8にこの透孔2cに入賞装置20を取付した状態を例示したように、該入賞装置20の取付フランジ21が該透孔2cの周縁部上を覆うように取り付けられる。なお、図9に示したように、遊技盤1の外周縁部についても、透孔2a〜2hの周縁部位と同様に、絵柄層3dを設けないことにより、その破片が外周縁部にはみ出すのが防がれる。
【0017】
また、このロール式転写装置4では、遊技盤に転写フィルム3を圧着している間に次の遊技盤を予熱することができるので、作業性が良く、しかも、転写フィルム3を圧着させる所要時間は数十秒間であるので、短時間の間に多数の遊技盤のハードコート層3bを形成させることができ、しかも、凹凸などのムラが生じることなく、簡単にきれいに仕上げることができ、遊技球との接触によって表面に傷が付き易いという問題が解決され、透明な遊技盤における傷付きによる図柄表示装置や各種装飾部材が見難くなる問題も解決される。また、転写フィルムに絵柄層を設けることによっては、絵柄付け処理が同時にできるようになるので、生産効率をさらに高めることができる。
【0018】
また、図5に示したように、ワーク予熱装置4a付近に遊技盤1をセットするための一人の作業者(イ)を配置し、転写加工済みの遊技盤1をターンテーブル4c上から取り出す別の作業者(ロ)を配置することにより、同一作業者がハードコート層3bの破片に触れないようにすることで、ハードコート層3bの破片が未転写の遊技盤1に付着するのが防止される。このため、ハードコート層3bの破片が遊技盤1の表面とハードコート層3bの間に挟み込まれるような不良品の発生を防止することができる。
なお、この実施形態では転写性を向上させるために遊技盤1を予熱したが、必ずしも予熱はしなくてもよく、転写性を向上させるために遊技盤1の表面をコロナ放電加工し、該表面の濡れ指数を50(ダイン、mN/m)以上になるようにしてもよい。
【0019】
また、図10、図11は、上記転写装置および転写方法により、透明な合成樹脂製の遊技盤1の裏面に絵柄層3dを内側にしてハードコート層3bを転写した状態を示す。このように遊技盤1の裏面に絵柄層3dおよびハードコート層3bを転写することによっては、該絵柄層3dの絵模様が遊技盤1の前面から透視されるので、遊技者の視覚に訴えるような奥行きのある演出をすることができる。そして、該絵柄層3dはハードコート層3bにより保護されることから、図12に示したような使用態様においても遊技球との接触による損傷が防止され、長期に亘り見栄えを維持することができる。
【0020】
このように本発明では、遊技盤の前面にハードコート層や絵柄層を転写するだけでなく、遊技盤の裏面にハードコート層や絵柄層を転写することも可能であり、遊技盤のデザインに応じて種々の使い分けがなされる。換言すれば、本発明によれば、遊技盤の前面・裏面を問わず、ハードコート層をムラなくきれいに、しかも簡単に形成することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 遊技盤
2a〜2h 透孔
3 転写フィルム
3a ベースフィルム
3b ハードコート層
3c 離形層
3d 絵柄層
3e 接着層
4 ロール式転写装置
4a ワーク予熱装置
4b 転写装置本体
4c ターンテーブル
20 入賞装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ、アレンジボール、雀球等のパチンコ球を遊技媒体とする遊技機に用いられる遊技盤とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ、アレンジボール、雀球等の遊技盤は、周知のように、合板または合成樹脂製で平板状に射出成形されたものであり、前面の遊技領域に釘や風車、入賞口等が配置される。そして発射装置から発射された遊技球が該遊技領域を釘や風車等に衝突しながら流下し、入賞口または下端部のアウト口へと流れ込むようにするものであり、遊技者はその遊技球の動きを見て楽しむものである。係る遊技盤は、木材の変形による不良製品発生の問題、および、環境保護の観点や意匠上の観点から、合板に代えて合成樹脂製のものが提案され、特に透明な合成樹脂により成形された遊技盤は、裏面に図柄表示装置や各種装飾部材を配置できることから、斬新なデザインを採ることができ興趣が高められるといった利点があるものである。
【0003】
しかし、一般に合成樹脂製の遊技盤は、遊技球との接触によって傷が付き易いという問題があり、特に透明な遊技盤では裏側に設けられた図柄表示装置や各種装飾部材がその傷によって見難くなってしまうといった問題がある。
【0004】
また、図12にパチンコ機の要部の縦断面図を示し、1は透明な合成樹脂製の遊技盤、101は該遊技盤に設けられた入賞口、102はアウト球排出口、103は該遊技盤の裏面に設けられ入賞口101またはアウト球排出口102等から入った遊技球を集合させるカバー体、104は前面ガラスである。このパチンコ機では、透明な遊技盤1の裏面に絵柄層105が設けられ、該絵柄を前面から透視し得るようにすることにより、奥行きのある演出ができるようにしている。このように裏面まで透視できるようにする遊技盤1においては、入賞口101に入った遊技球がカバー体103内で落下する際に該遊技盤1の裏面の特定部分だけに頻繁に接触するので、絵柄層105に筋状の傷が付き易く、この傷が前面からも透視されるようになり、見難くなるおそれがあった。
【0005】
一方、下記特許文献1に示された発明は、遊技球と接する遊技盤の表面にUV硬化樹脂を透明な溶剤とともに噴射(スプレー)した後、紫外線を照射することにより薄幕層を形成し、傷付きを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3720829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示された遊技盤では、噴射によって遊技盤の表面に凹凸(通称、ゆず肌)が生じ、均一な塗膜を形成し難いため、光沢のある鏡面状に仕上げ難いといった問題、および、製造にあたって噴射工程と硬化工程が必要であるので、生産効率が悪く、製造ラインも大型化するといった問題がある。
本発明は、このような問題点を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、請求項1に記載した遊技盤は、各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面にロール式転写装置によりハードコート層が転写されていることを特徴とする。
また、請求項2に記載した遊技盤は、各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面にロール式転写装置により透明なハードコート層が転写されているとともに、該ハードコート層の内側に絵柄層が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載した遊技盤の製造方法は、ベースフィルムに離形層とハードコート層と接着層とを積層してなる転写フィルムを、各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面に該接着層が内側となるように配設し、該転写フィルムをロール式転写装置により遊技盤の表面に加圧し前記ベースフィルムを離形することにより、該遊技盤の表面にハードコート層を転写することを特徴とする。
また、請求項4に記載した遊技盤の製造方法は、ベースフィルムに離形層とハードコート層と絵柄層と接着層とを積層してなる転写フィルムを、各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面に該接着層が内側となるように配設し、該転写フィルムをロール式転写装置により遊技盤の表面に加圧し前記ベースフィルムを離形することにより、該遊技盤の表面に絵柄層を内側にしてハードコート層を転写することを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、上記請求項2に記載した遊技盤において、転写フィルムの絵柄層は遊技盤の透孔との合致部位およびその周縁部位を除いて設けたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
遊技盤の表面を傷から保護する耐摩耗性のハードコート層がロール式転写装置によって凹凸などのムラが生じることなく簡単にきれいに形成することができ、合成樹脂製の遊技盤の製造が容易になる。
また、転写フィルムに絵柄層を設けることにより、遊技盤への絵柄付け処理が同時にでき、生産効率が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る遊技盤の正面の斜視図。
【図2】本発明に係る遊技盤の裏面の斜視図。
【図3】本発明に係る転写フィルムの層構造図。
【図4】本発明に係るロール式転写装置の正面図。
【図5】本発明に係るロール式転写装置の水平断面平面図。
【図6】本発明に係るロール式転写装置の側面図。
【図7】本発明に係る遊技盤の転写過程の要部の縦断面図。
【図8】本発明に係る遊技盤に入賞装置を取り付けた要部の縦断面図。
【図9】本発明に係る遊技盤の転写後の斜視図。
【図10】本発明に係る遊技盤の転写後の縦断面図。
【図11】本発明に係る遊技盤の転写後の斜視図。
【図12】パチンコ機の要部の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施形態を図面に従い説明する。図1、図2に転写前の合成樹脂製の遊技盤1を示す。この遊技盤1は、アクリル、ABS樹脂、ポリカーボネイト、ポリスチロール等の透明な合成樹脂を射出成形または押出成形することにより、障害釘が植設可能な8〜10mmの厚さの略正方形板状に成形され、パチンコ遊技機において周知の開閉翼片可動型入賞口、可変大入賞口等の各種入賞装置、或いは電子ディスプレイ、ランプ、その他の装飾体を取り付けるための大小の透孔2a〜2hが形成される。なお、この遊技盤1は図2の裏面にて分かるように外周縁部に額縁状に補強リブを一体に形成している。なお、これらの透孔2a〜2hは、射出成形装置によっては同時に成形することが容易であるが、押出成形により成形する場合は、NCルータ加工機により後加工することにより形成し得る。
【0013】
図3は本発明にて使用する転写フィルム3の層構造を示し、3aは厚さ19〜38μmのベースフィルム、3bは該ベースフィルムに剥がれ易くするための離形層3cを介して貼着された厚さ4〜10μmの透明なハードコート層、3dは該ハードコート層に遊技盤1の即した所望の絵柄を印刷することにより形成された印刷インク等からなる絵柄層である。このハードコート層3bは絵柄層3dを表面から見られるようにするため透明にしている。なお、絵柄層3dは前記遊技盤1に形成された透孔2a〜2hとの合致部位およびその周縁部位を除いて設けられる。3eは該絵柄層3dまたはハードコート層3bに設けられた接着層である。
【0014】
また、ロール式転写装置4は、図4に正面図、図5に平面図、図6に側面図を示したように、ワーク予熱装置4aと、転写装置本体4bと、該転写装置本体4bに設けられたターンテーブル4cとを備えている。ワーク予熱装置4aは、遠赤外線ヒータが内蔵されたヒータボックス6を備え、該ヒータボックス6の側面開口から該ヒータが矢印A方向に移動して遊技盤1を両面から加熱する。そして該ワーク移載装置7は、該遊技盤1を転写装置本体4bのターンテーブル4c上に移載する。また、10は転写装置本体4bの一端部に設けられたフィルム巻出部、11は他端部の設けられたフィルム巻取部で、該フィルム巻出部10からターンテーブル4c上の遊技盤1の上に前記転写フィルム3が巻き出され、フィルム巻取部11に前記ベースフィルム3aが巻き取られるようにしている。また、12は外周面にゴムが張られた加圧ロールで、ターンテーブル4cの上方に門型アングル13が形成され該アングル上のレールに沿って矢印B方向(図4に示す)に水平移動可能に移動体14が設けられ、該移動体14に加圧シリンダ15が鉛直に設けられ、該加圧シリンダによって該加圧ロール12が昇降動可能に支持されている。なお、このような転写装置本体4bの基本構造は、実公平6−6923号公報に示されたものとほぼ同じであるので、その詳しい説明は割愛する。
【0015】
このロール式転写装置4では、図1に示したような透孔2a〜2hが形成されたポリカーボネイト製の遊技盤1の上下両面を上記のようにヒータにより40〜50℃に加熱し、その後、該遊技盤1をワーク移載装置7によってターンテーブル4c上に移載する。そして該遊技盤1上にフィルム巻出部10から転写フィルム3を巻き出し、接着層3eが内側(図では下側)となるように該転写フィルム3を配設し、図4に示したように、ヒータにより予め加熱された加圧ロール12を圧下させることで該転写フィルム3を該遊技盤1の一端部に表面に加圧力400kgf程度で圧着し、その圧着状態のまま該加圧ロール12を回転させ該遊技盤1の他端部まで移動させる。これにより、接着層3eが加圧ロール12の熱および遊技盤1の予熱により熱溶融してハードコート層3bが絵柄層3dとともに該遊技盤1の表面に強固に接着する。なお、該加圧ロール12は、外周の長さが遊技盤1の外寸よりも長くなるような外径のものに設定することにより、ハードコート層3bの接着不良が生じないようにできる。その後、ベースフィルム3aは転写装置本体4bに設けられた箔はがれ機構により剥がされる。このとき離形層3cのためにベースフィルム3aはハードコート層3bから容易に離脱し、該ハードコート層3bおよび絵柄層3dは該遊技盤1の表面に転写された状態となる。剥がされたベースフィルム3aはフィルム巻取部11に巻き取られる。そしてターンテーブル4cを180度回転することにより、該遊技盤1は転写装置本体4bの側方に取り出され次の部品取付工程に移動される。図9はこうして絵柄層3dを内側にして透明なハードコート層3bが転写された遊技盤1を示す。
【0016】
なお、遊技盤1の透孔2a〜2hが形成された部位では、図7に示したように、ハードコート層3bの一部3b′がベースフィルム3aに接着したままとなって該ベースフィルム3aとともにフィルム巻取部11に巻き取られる。また、転写フィルム3の透孔2a〜2hが形成された部位と合致する部位およびその周縁部位は、前記したように絵柄層3dが設けられていないため、ベースフィルム3aを剥がした際にハードコート層3bの破片3b′′が透孔2a〜2h中に残ることがあるが、絵柄層3dの破片が透孔2a〜2h中に残るようなことがない。そして図8にこの透孔2cに入賞装置20を取付した状態を例示したように、該入賞装置20の取付フランジ21が該透孔2cの周縁部上を覆うように取り付けられる。なお、図9に示したように、遊技盤1の外周縁部についても、透孔2a〜2hの周縁部位と同様に、絵柄層3dを設けないことにより、その破片が外周縁部にはみ出すのが防がれる。
【0017】
また、このロール式転写装置4では、遊技盤に転写フィルム3を圧着している間に次の遊技盤を予熱することができるので、作業性が良く、しかも、転写フィルム3を圧着させる所要時間は数十秒間であるので、短時間の間に多数の遊技盤のハードコート層3bを形成させることができ、しかも、凹凸などのムラが生じることなく、簡単にきれいに仕上げることができ、遊技球との接触によって表面に傷が付き易いという問題が解決され、透明な遊技盤における傷付きによる図柄表示装置や各種装飾部材が見難くなる問題も解決される。また、転写フィルムに絵柄層を設けることによっては、絵柄付け処理が同時にできるようになるので、生産効率をさらに高めることができる。
【0018】
また、図5に示したように、ワーク予熱装置4a付近に遊技盤1をセットするための一人の作業者(イ)を配置し、転写加工済みの遊技盤1をターンテーブル4c上から取り出す別の作業者(ロ)を配置することにより、同一作業者がハードコート層3bの破片に触れないようにすることで、ハードコート層3bの破片が未転写の遊技盤1に付着するのが防止される。このため、ハードコート層3bの破片が遊技盤1の表面とハードコート層3bの間に挟み込まれるような不良品の発生を防止することができる。
なお、この実施形態では転写性を向上させるために遊技盤1を予熱したが、必ずしも予熱はしなくてもよく、転写性を向上させるために遊技盤1の表面をコロナ放電加工し、該表面の濡れ指数を50(ダイン、mN/m)以上になるようにしてもよい。
【0019】
また、図10、図11は、上記転写装置および転写方法により、透明な合成樹脂製の遊技盤1の裏面に絵柄層3dを内側にしてハードコート層3bを転写した状態を示す。このように遊技盤1の裏面に絵柄層3dおよびハードコート層3bを転写することによっては、該絵柄層3dの絵模様が遊技盤1の前面から透視されるので、遊技者の視覚に訴えるような奥行きのある演出をすることができる。そして、該絵柄層3dはハードコート層3bにより保護されることから、図12に示したような使用態様においても遊技球との接触による損傷が防止され、長期に亘り見栄えを維持することができる。
【0020】
このように本発明では、遊技盤の前面にハードコート層や絵柄層を転写するだけでなく、遊技盤の裏面にハードコート層や絵柄層を転写することも可能であり、遊技盤のデザインに応じて種々の使い分けがなされる。換言すれば、本発明によれば、遊技盤の前面・裏面を問わず、ハードコート層をムラなくきれいに、しかも簡単に形成することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 遊技盤
2a〜2h 透孔
3 転写フィルム
3a ベースフィルム
3b ハードコート層
3c 離形層
3d 絵柄層
3e 接着層
4 ロール式転写装置
4a ワーク予熱装置
4b 転写装置本体
4c ターンテーブル
20 入賞装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面にロール式転写装置によりハードコート層が転写されていることを特徴とする遊技盤。
【請求項2】
各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面にロール式転写装置により透明なハードコート層が転写されているとともに、該ハードコート層の内側に絵柄層が形成されていることを特徴とする遊技盤。
【請求項3】
ベースフィルムに離形層とハードコート層と接着層とを積層してなる転写フィルムを、各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面に該接着層が内側となるように配設し、該転写フィルムをロール式転写装置により遊技盤の表面に圧着し前記ベースフィルムを離形することにより、該遊技盤の表面にハードコート層を転写することを特徴とする遊技盤の製造方法。
【請求項4】
ベースフィルムに離形層とハードコート層と絵柄層と接着層とを積層してなる転写フィルムを、各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面に該接着層が内側となるように配設し、該転写フィルムをロール式転写装置により遊技盤の表面に圧着し前記ベースフィルムを離形することにより、該遊技盤の表面に絵柄層を内側にしてハードコート層を転写することを特徴とする遊技盤の製造方法。
【請求項5】
転写フィルムの絵柄層は遊技盤の透孔との合致部位およびその周縁部位を除いて設けたものであることを特徴とする請求項2に記載した遊技盤。
【請求項1】
各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面にロール式転写装置によりハードコート層が転写されていることを特徴とする遊技盤。
【請求項2】
各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面にロール式転写装置により透明なハードコート層が転写されているとともに、該ハードコート層の内側に絵柄層が形成されていることを特徴とする遊技盤。
【請求項3】
ベースフィルムに離形層とハードコート層と接着層とを積層してなる転写フィルムを、各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面に該接着層が内側となるように配設し、該転写フィルムをロール式転写装置により遊技盤の表面に圧着し前記ベースフィルムを離形することにより、該遊技盤の表面にハードコート層を転写することを特徴とする遊技盤の製造方法。
【請求項4】
ベースフィルムに離形層とハードコート層と絵柄層と接着層とを積層してなる転写フィルムを、各種入賞装置や装飾体が取り付けられる大小の透孔が形成された合成樹脂製の所定厚さの板状の遊技盤の表面に該接着層が内側となるように配設し、該転写フィルムをロール式転写装置により遊技盤の表面に圧着し前記ベースフィルムを離形することにより、該遊技盤の表面に絵柄層を内側にしてハードコート層を転写することを特徴とする遊技盤の製造方法。
【請求項5】
転写フィルムの絵柄層は遊技盤の透孔との合致部位およびその周縁部位を除いて設けたものであることを特徴とする請求項2に記載した遊技盤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−101791(P2011−101791A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225799(P2010−225799)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(591044614)株式会社足立ライト工業所 (114)
【出願人】(000110642)ナビタス株式会社 (15)
【出願人】(596044446)ナビタス インモールディング ソリューションズ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(591044614)株式会社足立ライト工業所 (114)
【出願人】(000110642)ナビタス株式会社 (15)
【出願人】(596044446)ナビタス インモールディング ソリューションズ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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