説明

運動場の構造体

【目的】 芝の根腐れが発生せず、運動場の表面が常に理想的な軟らかさを保持できるような運動場の構造体を提供することを目的とするものである。
【構成】 芝15を植える土砂14の中に、短繊維物17、樹皮チップ18、ゴムチップ19、ネット状物20のいずれか1つか、または2以上を適宜組み合わせたものを5〜30%混合した軟質の芝床層22を基礎地盤13の表面に所定厚さで形成する。すると、運動場の構造体として、理想的な軟らかさが得られ、しかも長期間効果が持続すること、水分が芝15の根腐れを生じない程度に少なくても軟らかさを保つことができること、スパイク11の穴の復元性を有すること、芝床22を所定の大きさに切り取って運搬するのが容易であること、サッカー場などの地面に直接芝床22を作り出せることなどの効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、芝の生えている特にサッカー場として用いられる運動場の構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般にサッカーには、摩擦による火傷をしないなどの安全性のため、自然芝の生えているサッカー場が用いられる。この自然芝の生えているサッカー場は、特に表面が理想的な軟らかさを有することが強く望まれている。これは、足の疲れが少ない、ボールに一定速度の制動がかかる、ボールが転がり過ぎない、ボールがはずみ過ぎない、ボールがイレギュラーしないなどのためである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような理想的な状態に管理するには、常にサッカー場に散水をして十分に水分を含有させておくことが必要である。ところが、軟らかさを保持するのに十分な水分を含有させておくと、日本では、湿度が高いためバクテリヤが発生して、芝が病虫害の被害を受け、根腐れが発生し、はげてしまう。そのためどうしても水分含有量が必要最小限になり、サッカー場の表面が硬くなってしまい、理想的な軟らかさが得られないという問題があった。
【0004】本発明は、芝の根腐れが発生せず、サッカー場の表面が常に理想的な軟らかさを保持できるような運動場の構造体を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、芝15を植える土砂14の中に、短繊維物17、樹皮チップ18、ゴムチップ19、ネット状物20のいずれか1つか、または2以上を適宜組み合わせたものを5〜30%混合した軟質の芝床層22を基礎地盤13の表面に所定厚さで形成してなることを特徴とする運動場の構造体である。
【0006】
【作用】以上のような構成により、理想的な軟らかさが得られ、しかも長期間効果が持続すること、特に植物性の短繊維物17、針葉樹などの樹皮チップ18を用いると、水分が芝15の根腐れを生じない程度に少なくても軟らかさを保つことができること、スパイク11の穴がすぐに復元する程度の復元性を有すること、専用の畑で軟質の芝床層22として作り出した場合、芝15を植えつけて生長した後、所定の大きさに切り取って運搬するのが容易であること、サッカー場などの地面に直接軟質の芝床層22を作り出すことも容易であることなどの効果を有する。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。図1において、13は、サッカー場の基礎地盤で、この基礎地盤13の表面に、軟質の芝床層22が15〜30cm程度の厚さで形成されて本発明による運動場の構造体が構成される。この運動場の構造体は、以下の条件を満足するものであることが望まれる。
(1)理想的な軟らかさを有すること。具体的には、サッカーシューズ10のスパイク11がサッカー場に刺さったとき、サッカーシューズ10の底部12がサッカー場の表面に接する程度の軟らかさであること。
(2)水分が芝15の根腐れを生じない程度に少なくても理想的な軟らかさを保つこと。
(3)スパイク11の穴がすぐに復元する程度に復元力性を有すること。ただし、反発力はそれほど大きくないこと。
(4)専用の畑で軟質の芝床層22として作り出した場合、芝15を植えつけて生長した後、所定の大きさに切り取って運搬できること。
(5)サッカー場に直接芝15を植えつけた場合でも、軟質の芝床層22が容易に作り出せること。
【0008】以上のような条件を満足する具体的実施例を説明する。
第1実施例:図1に示すように、軟質の芝床層22を構成する土砂14の中に、芝の肥料などとともに、短繊維物17を5〜30%、好ましくは15〜20%混合する。この短繊維物17は、植物繊維、例えば椰子果実繊維、マニラ麻、ジュート、アマ、ラミー、綿、カポックなどが用いられる。特にジュートは、吸湿性に優れているので根腐れ防止には好適で、しかも安価である。また、弾力性を付加するために植物繊維に化学繊維を混合してもよい。
【0009】第2実施例:図2に示すように、軟質の芝床層22を構成する土砂14の中に樹皮チップ18を5〜30%、好ましくは15〜20%混合する。この樹皮チップ18として針葉樹の樹皮は、吸湿性に優れ、腐食しにくく、弾力性を有するので、長期間の使用に耐え得ることができ、好ましい材料の1つである。この針葉樹などの樹皮チップ18の大きさは、1〜10mm程度とする。
【0010】第3実施例:図3に示すように、軟質の芝床層22を構成する土砂14の中に、天然ゴム、合成ゴムまたはこれらの混合したゴムチップ19を5〜30%、好ましくは15〜20%混合する。このゴムチップ19は、特に腐食しにくく、弾力性を有するので、長期間の使用に耐え得る。このゴムチップ19の大きさは、1〜10mm程度とする。
【0011】第4実施例:図4に示すように、軟質の芝床層22を構成する土砂14の中にネット状物20を複数枚埋設する。このネット状物20は、土砂14とよくなじみ、かつ芝15の根16が張りやすいように、できるだけ網目の大きなものが用いられる。また、このネット状物20は、植物繊維が好ましいが、専用の畑で軟質の芝床層22を作り、剥がして、サッカー場に運搬する場合には、最下層に化学繊維のものを用いて剥がし易くするようにしてもよい。
【0012】その他の実施例:前記第1実施例から第4実施例までの材料の適宜の組み合わせとすることもできる。具体的には、いずれか2つの組み合わせとして、短繊維物17と樹皮チップ18の組み合わせ、短繊維物17とゴムチップ19の組み合わせ、短繊維物17とネット状物20の組み合わせ、樹皮チップ18とゴムチップ19の組み合わせ、樹皮チップ18とネット状物20の組み合わせ、ゴムチップ19とネット状物20の組み合わせができ、いずれか3つの組み合わせとして、短繊維物17と樹皮チップ18とゴムチップ19の組み合わせ、短繊維物17と樹皮チップ18とネット状物20の組み合わせ、短繊維物17とゴムチップ19とネット状物20の組み合わせ、樹皮チップ18とゴムチップ19とネット状物20の組み合わせができ、4つの組み合わせとして短繊維物17と樹皮チップ18とゴムチップ19とネット状物20の組み合わせができる。これらの組み合わせは、気候、土質、使用目的などの違いに応じて適宜選択される。
【0013】
【発明の効果】本発明は、芝15を植えた軟質の芝床層22の土砂14の中に、短繊維物17、針葉樹などの樹皮チップ18、ゴムチップ19、ネット状物20、またはこれらのいずれか2以上の組み合わせからなるものを5〜30%混合したので、以下の効果を有する。
(1)サッカーシューズ10のスパイク11がサッカー場に刺さり込み、底部12がサッカー場の表面に接する程度の理想的な軟らかさが得られ、しかも長期間効果が持続する。
【0014】(2)特に植物性の短繊維物17、針葉樹などの樹皮チップ18を用いると、水分が芝15の根腐れを生じない程度に少なくても理想的な軟らかさを保つことができる。
【0015】(3)植物性の材料だけではスパイク11の穴の復元力が不足するときには、化学的な材料を付加混合すると、スパイク11の穴がすぐに復元する程度の復元力性を有する。
【0016】(4)ネット状物20を使用すると、専用の畑で軟質の芝床層22として作り出した場合、芝15を植えつけて生長した後、所定の大きさに切り取って運搬するのが容易である。
【0017】(5)サッカー場などの地面を掘り起こし、直接、短繊維物17、針葉樹などの樹皮チップ18、ゴムチップ19、ネット状物20、またはこれらのいずれか2以上の組み合わせからなるものを5〜30%混合して軟質の芝床層22を容易に作り出せることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による運動場の構造体の第1実施例として、短繊維物17を5〜30%混合した軟質の芝床層22の場合を示すもので、(a)は断面図、(b)は一部の拡大図である。
【図2】本発明による運動場の構造体の第2実施例として、針葉樹などの樹皮チップ18を5〜30%混合した軟質の芝床層22の場合を示すもので、(a)は断面図、(b)は一部の拡大図である。
【図3】本発明による運動場の構造体の第3実施例として、ゴムチップ19を5〜30%混合した軟質の芝床層22の場合を示す部分的拡大図である。
【図4】本発明による運動場の構造体の第4実施例として、植物繊維および/または化学繊維からなるネット状物20を5〜30%混合した軟質の芝床層22の場合を示す部分的拡大図である。
【符号の説明】
10…サッカーシューズ、11…スパイク、12…底部、13…基礎地盤、14…土砂、15…芝、16…根、17…短繊維物、18…針葉樹などの樹皮チップ、19…ゴムチップ、20…ネット状物、22…軟質の芝床層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 芝15を植える土砂14の中に植物繊維および/または化学繊維からなる短繊維物17を5〜30%混合した軟質の芝床層22を基礎地盤13の表面に所定厚さで形成してなることを特徴とする運動場の構造体。
【請求項2】 芝15を植える土砂14の中に針葉樹などの樹皮チップ18を5〜30%混合した軟質の芝床層22を基礎地盤13の表面に所定厚さで形成してなることを特徴とする運動場の構造体。
【請求項3】 芝15を植える土砂14の中にゴムチップ19を5〜30%混合した軟質の芝床層22を基礎地盤13の表面に所定厚さで形成してなることを特徴とする運動場の構造体。
【請求項4】 芝15を植える土砂14の中に植物繊維および/または化学繊維からなるネット状物20を5〜30%混合した軟質の芝床層22を基礎地盤13の表面に所定厚さで形成してなることを特徴とする運動場の構造体。
【請求項5】 芝15を植える土砂14の中に短繊維物17、樹皮チップ18、ゴムチップ19、ネット状物20のいずれか2以上を適宜組み合わせたものを5〜30%混合した軟質の芝床層22を基礎地盤13の表面に所定厚さで形成してなることを特徴とする運動場の構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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