説明

運動用マット及びその製造方法

【課題】
表面に突起がなく、且つ、全体の引張強度が従来より良い上、面層、特に、上面層の抗剥離力も従来より遥かに優れた運動用マット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
芯層と、前記芯層を挟むように該芯層の上下二面に熱圧固定されている上下二面層と、を備えている運動用マットであって、前記上下二面層は、いずれも発泡材からなる上、それらの面には芯層までに至った複数の貫通孔が開けてあり、また、前記芯層は、前記発泡材と熱相溶性がある上、密度がそれより高い弾性材からなっていることを特徴とする運動用マット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動用マットに関し、特にヨーガやピラティスなど、床上に行う運動時に使用される運動用マット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ヨーガや、ピラティス、腹筋運動、腕立て伏せなど、床上で運動を行う時、運動用マットがよく補助道具として利用されている。
【0003】
このような運動用マットとして、発泡材からなる柔らかい面層を有するのが、傷つけを防ぐ機能がよく果たせるので、一番人気がある(下記特許文献1の第七実施例参照)。
【0004】
しかし、今まで、このような発泡面層を有する運動用マットの製造法は、2層の発泡層を重ね合わせる上、金型で加圧・加熱を行うのが基本であるので、製造過程で空気やこの製造過程に発生する気体を層間に巻き込んで、そこに残って製品のマット表面に運動時の不快感を与える突起をもたらす上、層間の結合力にも悪影響を与える。
【0005】
それに、製品のマット全体の引張強度はおおよそ発泡材だけで働かすので、運動の激しい動作によってマットは皺んだり変形したり乃至破裂したりし、改良の呼び掛けが頗る高まっている。
【0006】
ところで、前記のような2層の発泡面層の層間に織物製の網層が挟まれていて引張強度が従来より強いものも提案されている(下記特許文献2参照)が、それをそのまま前記構造に引用しても、発泡層と網層との間の熱相溶性があまりよくない上、前記空気や気体による問題もあるため、やはり結合力がやや弱くて運動時に生ずる摩擦によるシヤー力で上面層が剥離しやすいという欠点がある。
【特許文献1】台湾專利新型公告第M312342号
【特許文献2】台湾專利新型公告第M251621号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記問題点を解消するために、発明者は、表面に突起がなく、且つ、全体の引張強度が従来より良い上、その面層、特に、その上面層の抗剥離力も従来より遥かに優れた運動用マット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明者は、まず、芯層と、前記芯層を挟むように該芯層の上下二面に熱圧固定されている上下二面層と、を備えている運動用マットであって、前記上下二面層は、いずれも発泡材からなる上、それらの面には芯層までに至った複数の貫通孔が開けてあり、また、前記芯層は、前記発泡材と熱相溶性がある上、密度がそれより高い弾性材からなっていることを特徴とする運動用マットを提供する。
【0009】
そして、前記運動用マットの製造法として、それぞれ上下二面を有する発泡材板体で上下二面層を形成する二面層形成工程と、前記発泡材板体と熱相溶性がある上、密度がそれより高い弾性材で芯層を形成する芯層形成工程と、前記二面層形成工程に形成した二面層に、それぞれのある前記上下二面を貫通する貫通孔を複数形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔形成工程後の二面層で、前記芯層形成工程で形成した芯層を挟む上、金型に置いて熱圧する熱圧工程と、で運動用マットを製造することを特徴とする運動用マット製造法が挙げられる。
【0010】
前記熱圧工程時に、前記金型に対し、強制排気を行うことが好ましい。
【0011】
また、必要があれば、本発明も、従来のように、マット内に織物層を挟んでマット全体の引張強度をさらに上げることができる。
【0012】
前記織物層は、前記芯層と前記上面層との間に、または、前記芯層と前記下面層との間に挟んでも良いが、両方に挟んでも良い。
【0013】
しかし、特に激しい運動に専用されるものならば、その上面層の抗剥離力を少しだけでも確保するために、前記織物層は、やはり前記芯層と前記下面層との間に挟んだ方が良い。
【発明の効果】
【0014】
前記構造による運動用マットは、まず、その製造時の熱圧工程に、元来の空気やこの工程実施中に発生する気体がすべて上下二面層に開けてある複数の貫通孔から逸脱し、層間に挟まれていないので、前記芯層と前記上下二面層との結合力に悪影響を与えない上、マットの表面に空気などの存在による突起もない。
【0015】
そして、その芯層は、その上下二面層を構成する発泡材と熱相溶性がある弾性材で作成し、それに前記上下二面層との間に空気や気体が挟まれていないので、上下二面層と丈夫に結合し、抗剥離力がかなり良く、また、その密度も前記発泡材より高いので、上下二面層、乃至、マット全体の引張強度を上げることができる。
【0016】
また、従来のように、マット内に織物層を挟めば、マット全体の引張強度を上げることができ、特に、織物層を前記芯層と前記下面層との間だけに挟む方式では、上面層の抗剥離力に少しでも影響を与えないので、需要に応じる構成や製造法と考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず、図1〜図3に示す本発明の第1実施形態を挙げて説明する。
【0018】
図1は本発明の運動用マットの第1実施形態の熱圧前の分解断面図であり、図2はそれが製造時の金型内に熱圧工程を受けているうちの断面図であり、図3はその熱圧後の、製品となった時の断面図である。
【0019】
この運動用マットは、(A)二面層形成工程と、(B)芯層形成工程と、(C)貫通孔形成工程と、(D)熱圧工程と、で製造したものであるので、まず、以下のように、前記図面を参照しながら前記工程を逐一に説明する。
【0020】
(A)二面層形成工程
二面層形成工程(A)は、それぞれ上下二面を有する発泡材板体で、上面層10及び下面層20を形成する工程である(図1参照)。
【0021】
この発泡材板体を構成する発泡材としては、熱可塑性ポリウレタン弾性体、熱可塑性ゴム、ポリオレフィン系弾性体、ニトリルブタジエンゴム(Nitrile Butadiene Rubber)、メタクリレートブタジエンゴム(Methacrylate Butadiene Rubber)又はスチレンブタジエンゴム(Styrene Butadiene Rubber)などの熱可塑性弾性体の発泡体が挙げられる。
【0022】
原則上、上面層10は使用者と接触する面層とされ、下面層20は床と接触する面層とされるが、使用材質は両方が異なってもよく、同一でも良く、層間結合力のため、下記芯層との三者も同じ材質の採用が考えられる。
【0023】
本実施形態におけるこの工程に製作した上面層10及び下面層20は、いずれも厚さ約2〜3mm程度の平板体である。
【0024】
(B)芯層形成工程
芯層形成工程(B)は、前記発泡材板体と熱相溶性がある上、密度がそれより高い弾性材で芯層30を形成する工程である。
【0025】
ここでいう弾性材は、密度が前記発泡材より良い弾性材だけでなく、発泡もさせられていないものが特に良い。例としては、熱可塑性ポリウレタン弾性体、熱可塑性ゴム、ポリオレフィン系弾性体、ニトリルブタジエンゴム、メタクリレートブタジエンゴム又はスチレンブタジエンゴムなどの、上面層10とも下面層20とも熱相溶性がある熱可塑性弾性体の非発泡体が挙げられる。
【0026】
本実施形態におけるこの工程に製作した芯層30は、厚さ約1〜2mm程度の平板体である。
【0027】
(C)貫通孔形成工程
貫通孔形成工程(C)は、前記工程(A)に形成した上面層10及び下面層20に、該上面層10及び下面層20のそれぞれにある上下二面(即ち、上面層の上表面12、上面層の下表面11、下面層の上表面21、下面層の下表面22)を貫通する貫通孔13、23を複数形成する工程である。
【0028】
本実施形態における貫通孔成形法は、周面に複数の針が付いているローラを回転させながら、コンベヤで送られて通りかかっている上面層10や下面層20に押圧することにより貫通孔13、23を形成したのである。
【0029】
貫通孔13、23のサイズは、下記熱圧工程(D)においてかける圧力で面層(上面層10及び下面層20)と芯層30との間に存在している空気や気体を逸脱させることができる程度で良く、特に、金型に強制排気を行えば、もっと小さくしても良いが、使用者に不快感を与えない限り少し大きくしても良く、あまり制限がない。
【0030】
(D)熱圧工程
熱圧工程(D)は、(C)工程後の上面層10及び下面層20で、(B)工程で形成した芯層30を挟む上、金型200に置いて熱圧する工程である。
【0031】
この熱圧工程は、90〜120℃の温度で行い、時間は3〜5秒間で足りる。
【0032】
図2に示すように、前記上面層10及び前記下面層20はそれぞれ複数の貫通孔13、23があるため、この工程(D)を行う時、圧力が金型を介してかかるので、層間に巻き込まれた空気または熱圧のために発生した他の気体が複数の貫通孔13、23から逸脱でき、従来のようにマットの表面に突起をもたらすことは無い。
【0033】
図面に示していないが、この実施形態例におけるこの工程には、真空吸引ポンプをも使って、前記金型に対し強制排気を行って、層間に巻き込まれた空気や発生した気体を完全に排出したので、完成したもの層間には空気や気体が挟まれておらず、芯層30と上下二面層10、20との結合力に悪影響を与えなく、表面に空気や気体含有による突起もまったくない。
【0034】
この工程(D)の完成品は、通常、最終製品(図3参照)となるが、その周縁にバリや反りがある場合、それに少々仕上げを与えれば良い。
【0035】
図3に示すのは、芯層30と、前記芯層30を挟むように該芯層30の上下二面(即ち、上表面31及び下表面32)に熱圧固定されている上下二面層(即ち、上面層10及び下面層20)と、を備えている、本実施形態の完成品である運動用マット100である。その特徴は、その上下二面層10、20のそれぞれの表面に芯層30までに至った複数の貫通孔が開けてあるという、目にみえることのほか、その芯層30が、前記発泡材と熱相溶性がある上、密度がそれより高い弾性材からなっているという、目にみえないこともある。それに、該完成品をもっとみてみると、その表面には、空気や他の気体の含有による突起が全然ない。
【0036】
また、前記熱圧工程において、金型の代わりに、一対の加熱ローラを回転させながら、コンベヤで送られて通りかかっている上面層10と芯層30と下面層20との積層体に押圧することにより行っても良い。
【0037】
前記運動用マット100における上下二面層10、20の表面は、もちろん平滑面と形成されても良いが、図3に示すような凹凸面に形成されてもよい。通常、上面層10の方が平滑面に、下面層20の方が凹凸面に形成された方が良いが、マサージ機能を付与するために、上面層10の方にも凹凸面と形成されても良い。
【0038】
そして、この実施形態に形成した完成品は、マット全体の厚さが何種類もあるが、好ましいのが6〜8mmの範囲内にあって、柔軟性がよい上、変形したり破裂したりまたは面層が剥離したりしないので、品質が極めて良い。
【0039】
また、図4は本発明の運動用マットの第2実施形態の熱圧前の分解断面図であり、図5はそれが製造時の金型内に熱圧工程を受けているうちの断面図であり、図6はその熱圧後の、製品となった時の断面図である。
【0040】
この第2実施形態の運動用マット300は、その構造内織物層40が更に挟まれている外、他の構造が第1実施形態と全く同様である。
【0041】
この第2実施形態における織物層40は、網状であって、下面層20と芯層30との間に挟まれているので、マット全体の強度が一層高まる上、上面層10の、芯層30にかかる工夫によって上げられた抗剥離力も、この織物層40の挿入に影響されない。
【0042】
もちろん、マットの用途に応じ、この織物層40は、上面層10と芯層30との間に挿入されても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
叙上のように、本発明の運動用マットは、その製造時の熱圧工程に、元来の空気やこの工程実施中に発生する気体がすべて上下二面層に開けてある複数の貫通孔から逸脱することができるので、空気や気体が層間に挟まれておらず、芯層と上下二面層との結合力に悪影響を与えないし、マットの表面に空気や気体の存在による突起がなく、見栄えが良い上、使用者にも不快感を与えない。
【0044】
そして、その芯層は、その上下二面層を構成する発泡材と熱相溶性がある弾性材で作成し、それに前記上下二面層との間に空気や気体が挟まれていないため、上下二面層と丈夫に結合し、抗剥離力がかなり良く、また、その密度も前記発泡材より高いので、上下二面層、乃至、マット全体の引張強度を上げることができるので、従来のように変形したり破裂したりすることがなく、品質が従来より頗る良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の運動用マットの第1実施形態の熱圧前の分解断面図である。
【図2】前記第1実施形態の、製造時の金型内に熱圧工程を受けているうちのの断面図である。
【図3】前記第1実施形態の熱圧後の、製品となった時の断面図である。
【図4】本発明の運動用マットの第2実施形態の熱圧前の分解断面図である。
【図5】前記第2実施形態の、製造時の金型内に熱圧工程を受けているうちの断面図である。
【図6】前記第2実施形態の、熱圧後、製品となった時の断面図である。
【符号の説明】
【0046】
10 上面層
11 上面層の下表面
12 上面層の上表面
13 上面層の貫通孔
20 下面層
21 下面層の上表面
22 下面層の下表面
23 下面層の貫通孔
30 芯層
31 芯層の上表面
32 芯層の下表面
40 織物層
100 運動用マット
200 金型
300 運動用マット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯層と、前記芯層を挟むように該芯層の上下二面に熱圧固定されている上下二面層と、を備えている運動用マットであって、
前記上下二面層は、いずれも発泡材からなる上、それらの面には芯層までに至った複数の貫通孔が開けてあり、
また、前記芯層は、前記発泡材と熱相溶性がある上、密度がそれより高い弾性材からなっていることを特徴とする運動用マット。
【請求項2】
前記発泡材及び前記弾性材は、いずれも熱可塑性ポリウレタン弾性体、熱可塑性ゴム、ポリオレフィン系弾性体、ニトリルブタジエンゴム、メタクリレートブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムからなる群より選ばれたことを特徴とする請求項1に記載の運動用マット。
【請求項3】
前記上下二面層の少なくとも一面層と前記芯層との間に、織物層が更に挟まれていることを特徴とする請求項1に記載の運動用マット。
【請求項4】
前記下面層と前記芯層との間に、織物層が更に挟まれていることを特徴とする請求項1に記載の運動用マット。
【請求項5】
それぞれ上下二面を有する発泡材板体で上下二面層を形成する二面層形成工程と、
前記発泡材板体と熱相溶性がある上、密度がそれより高い弾性材で芯層を形成する芯層形成工程と、
前記二面層形成工程に形成した二面層に、該二面層のそれぞれにある前記上下二面を貫通する貫通孔を複数形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔形成工程後の二面層で、前記芯層形成工程で形成した芯層を挟んで熱圧する熱圧工程と、
で運動用マットを製造することを特徴とする運動用マット製造法。
【請求項6】
前記熱圧工程において、前記貫通孔形成工程後の二面層及び前記芯層を金型内に置いてから、前記金型に対し強制排気をも行うことを特徴とする請求項5に記載の運動用マットの製造方法。
【請求項7】
前記二面層形成工程における発泡材板体としても、前記芯層形成工程における弾性材としても、いずれも熱可塑性ポリウレタン弾性体、熱可塑性ゴム、ポリオレフィン系弾性体、ニトリルブタジエンゴム、メタクリレートブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムからなる群より選ばれた材料またはそれからなる板体を使用することを特徴とする請求項5に記載の運動用マットの製造方法。
【請求項8】
前記熱圧工程において、前記上下二面層の少なくとも一面層と前記芯層との間に、織物層を更に挟むことを特徴とする請求項5に記載の運動用マットの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−148763(P2010−148763A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331802(P2008−331802)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(599038086)
【Fターム(参考)】