説明

運行情報を考慮したポイント還元システム

【課題】通勤時間帯などの混雑時は席に座れないことや、つり革に空きがないが、空いている時間帯に座っている乗客と支払っている乗車料金は同じである。そこで、利用者の乗車の状況に応じたインセンティブの付与が望まれている。利用者がICカード乗車券を用いて乗車券を購入する場合、過去情報に基づき、乗車予定の列車と同様の乗車履歴があった場合、乗車料金を割り引く技術はある。しかし、この技術では、過去にどのような列車に乗車したかによって乗車料金を割り引いているが、その列車がどのような状況(混雑状況など)であったかについては考慮されていない。そのため、列車の状況に合わせてインセンティブを付与することはできない。
【解決手段】そこで本発明では、ICカード乗車券の入場・退場の履歴情報から、その乗車した列車の状況に応じてポイントを算出し、ICカード乗車券に付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は公共交通機関を利用する際、乗車時の状況に応じて、ICカード乗車券に金銭的価値(ポイント:SF)を付与させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、鉄道各社では列車が混雑している場合も空いている場合も同一区間の乗車賃は一定料金となっている。特に通勤時間帯などの混雑時は席に座れないことや、つり革に空きがないこと、ドア前に押し込まれる等、車両内で不快に思う乗客がいるが、空いている時に座っている乗客と支払っている乗車料金は同じである。このように、同じ金額を支払っているにも関わらず、利用者の不快に思う度合いが違っている。そこで、利用者の乗車の状況に応じたインセンティブの付与が望まれている。
【0003】
公共交通機関を利用するユーザの満足度の向上や利用率の向上のために乗車料金を可変にすることは知られている。例えば、特許文献1では、利用者がICカード乗車券を用いて乗車券を購入する場合、ICカードに格納された過去情報に基づき、今回乗車予定の列車と同様の乗車履歴があった場合、乗車料金を割り引く技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-67460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、過去にどのような列車に乗車したかによって乗車料金を割り引いているが、その列車がどのような状況(混雑状況など)であったかについては考慮されていない。そのため、列車の状況に合わせてインセンティブを付与することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明では、ICカード乗車券の入場・退場の履歴情報から、その乗車した列車の状況を推定し、その推定に応じてポイントを算出し、ICカード乗車券に付与する。
【0007】
ここで、乗車した列車の推定は、入出金の履歴情報より、乗車駅・時刻、下車時駅・刻を推定する。また、途中駅で物品を購入した場合は、乗車経路を其々分割した経路として扱い、分割された乗車経路の毎に列車の状況毎にポイントを算出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、公共交通機関におけるICカード乗車券の利用(履歴情報)状況を活用する事が出来、各社のICカード乗車券利用を促進することが出来る。また、ポイント還元により、利用者の施設利用率を上げることが出来る。
【0009】
公共交通機関の利用者に対しては、ポイントとして還元されることにより、そのポイントを利用した乗車や購買を促進すること出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ポイント還元システムのハードウエア構成図
【図2】乗車経路特定処理部のフローチャート
【図3】乗車・下車判定処理部のフローチャート
【図4】ポイント付与処理部のフローチャート
【図5】乗車履歴DB
【図6】入出金履歴DB
【図7】乗車・下車履歴テーブル
【図8】付与ポイントDB
【図9】本実施例の概要のイメージ図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0012】
図1に発明の構成図に示す。構成要素は下記の通り。
ICカード乗車券1は外部と通信可能であり、内部にポイントを格納できるICカード乗車券である。本実施例では、ポイント付与の対象の可能性がある電車の利用者が所有していることを想定する。
【0013】
各駅には自動改札機2や自動発券機3が設置されており、これらは駅サーバ4に接続されている。駅サーバはICカード乗車券1への入金(チャージ)時の情報や、自動改札機2より駅構内へ入場・退場した時の情報をセンタサーバ10に送信する。これにより、ICカード乗車券1とセンタサーバは情報のやり取りが可能になる。
【0014】
また、駅構内にはICカード乗車券1を利用して購入することの出来る自動販売機5、ICカード乗車券を利用して購入することの出来る売店6が設けられており、ICカード乗車券1を利用した物品の購入が可能である。
【0015】
ICカード乗車券1の利用履歴(チャージ情報、入退場情報、物品購入情報)は駅ネットワーク7を経由し、センターサーバ10の記憶装置30に履歴として保存される。
【0016】
ここで、駅サーバ4内での入場・退場時の利用履歴の情報は、記憶装置30の内の乗車履歴DB 500に保存される。乗車履歴DB500には、利用日、利用時間、利用種別、利用駅の情報が保存される(図5 乗車履歴DB)。
【0017】
ICカード乗車券1を利用した物品の購入の履歴情報は、入出金履歴DB 600 に保存される。入出金履歴DB600には、利用日、利用時間、利用種別、利用駅の情報が保存される(図6 入出金履歴DB)。
【0018】
乗車・下車履歴テーブル700には、乗車履歴DB500と入出金履歴DB600を時系列に配列し、利用日、利用時間、利用種別、利用駅の情報と、乗車・下車のフラグ領域を確保したものである(図7 乗車・下車履歴テーブル)。
【0019】
センタサーバ10は、各種処理を実行する処理部と記憶部と他の装置との通信を行なうインタフェースを備える。
【0020】
処理部20の乗車経路特定処理部100は乗車履歴DB 500と入出金履歴DB 600の履歴情報を読取り、乗車経路の特定を行い、乗車・下車履歴テーブル700に書き込む。
【0021】
処理部30の乗車・下車判定処理部200は入場(乗車)時刻と退場(下車)時刻の間にICカード乗車券1を利用して物品の購入及び、ICカード乗車券1の利用履歴がないか確認し、乗車時刻・乗車駅、下車時刻・下車駅の推定を行い、乗車・下車フラグをたてる。
【0022】
処理部30のポイント付与処理部300は乗車・下車履歴テーブル700を読込み、利用時間帯、利用区間毎に設定された付与ポイントDB 800に該当する利用時間帯、利用区間がないか判定する(図8 付与ポイントDB)。該当する区分がある場合、乗車運賃×付与ポイントを付与金額として加算する。付与金額は乗車履歴DB 500に入金(チャージ)する。
図2から4を用いて本実施例の各種動作のフローチャートを説明する。本実施例の処理は乗車経路特定処理部100、乗車・下車判定処理部200、ポイント付与処理部300により実行される。
【0023】
図2を用いて、乗車経路特定処理部100が行う乗車経路特定処理部のフローチャートを説明する。動作は下記の通り。
乗車履歴読込で乗車履歴DB500から乗車履歴を読み込む(ST110)。この処理のトリガーは終電後の夜間にバッチ処理として実行される。
【0024】
購買履歴読込で入出金履歴DB600からICカード乗車券1を利用した物品の購入履歴を読み込む(ST120)。
【0025】
乗車履歴に利用種別が「入場」の情報が含まれている場合、乗車・下車判定処理(ST140)を実行する。
【0026】
乗車履歴に利用種別が「入場」の情報が含まれていない場合、すなわち、既に降車している場合、乗車経路(乗車・下車情報)を乗車・下車履歴テーブル700に書込む(ST150)。利用種別が「入場」がある限り、処理を繰り返す。
【0027】
なお、上記では、購買履歴読込(ST120)が含まれた実施例を説明したが、単に乗車履歴からだけ、すなわち、このステップ120が無いフローチャートで乗車経路を特定してもよい。
【0028】
図3を用いて、乗車・下車判定処理部200による乗車・下車判定処理のフローチャートを説明する。動作は下記の通り。
【0029】
まず、乗車履歴DB500の利用種別が「入場」の履歴情報の利用時間を乗車時刻、利用駅を乗車駅とし、利用種別が「退場」の履歴情報の利用時間を下車時刻、利用駅を下車駅とする。
【0030】
次に、入出金履歴DB600の入出金時刻が「乗車時刻<入出金時刻<下車時刻」の条件を満たすかを調べる(ST210)。ここで、この条件を満たしていない場合、乗車時刻と下車時刻の間でICカード乗車券1を利用していない為、乗車駅・時刻、下車駅・時刻を特定し、処理を終了する(ST220)。
【0031】
入出金履歴DB600の入出金時刻が「乗車時刻<入出金時刻<下車時刻」の条件を満たす場合、乗車時刻と下車時刻の間でICカード乗車券1を利用している。
【0032】
次に、乗車駅が入出金駅であるか否かを判定し(ST230)、乗車駅が入出金駅である場合、入出金時刻を乗車時刻とし、乗車・下車判定処を行う(ST240)。
【0033】
乗車駅が入出金駅ではない場合、乗車駅以外でICカード乗車券1を利用している。
【0034】
次に、下車駅が入出金駅であるか否かを判定する(ST250)。下車駅が入出金駅である場合、入出金時刻を下車時刻とし、乗車・下車判定処理を行う(ST260)。
【0035】
下車駅が入出金駅ではない場合、下車駅・時刻を入出金駅・時刻とし、また、乗車駅・時刻を入出駅・時刻とし、乗車・下車判定処理を行う(ST270)。
【0036】
図4を用いて、ポイント付与処理部300によるポイント付与処理のフローチャートを説明する。動作は下記の通り。
【0037】
乗車・下車履歴テーブル700より乗車・下車履歴情報を読み込む(ST310)。
【0038】
付与ポイントDB800より利用時間帯、利用区間毎に設定されたポイント率を読み込む(ST320)。
【0039】
次に、乗車時刻・下車時刻がポイント付与の利用時間帯か否かを判定する(ST330)。乗車時刻・下車時刻がポイント付与の利用時間帯ではない場合、次の乗車時刻・下車時刻に処理を移行し、利用時間帯がポイント付与の時間帯かを確認する。乗車時刻・下車時刻がポイント付与の時間帯である場合、次の乗車駅〜下車駅が付与区間であるかの判定へ移行する。乗車時刻・下車時刻がポイント付与の時間帯である場合、処理を終了する。
【0040】
乗車駅〜下車駅がポイント付与の利用区間に該当しない場合、次の乗車時刻・下車時刻に処理を移行する(ST340)。
【0041】
乗車駅〜下車駅がポイント付与の利用区間に該当する場合、該当区間の運賃×付与ポイントより算出した金額を付与金額として加算し、該当しない場合、次の乗車時刻・下車時刻が付与時間帯であるかの判定へ移行する(ST350)。
【0042】
最後に、上記処理より求められた付与金額を乗車履歴DB500に入金(チャージ)する(ST360)。
図5に、乗車履歴DBを示す。乗車履歴DBは、ICカード乗車券にて、駅構内への入場・退場の利用日、利用時間、利用種別、利用駅の情報が保存される。
【0043】
図6に、入手金履歴DBを示す。入手金履歴DBは、ICカード乗車券1を利用した物品の購入の履歴情報として、利用日、利用時間、利用種別、利用駅の情報が保存される。
【0044】
図7に、乗車・下車履歴テーブルを示す。乗車・下車履歴テーブルは、乗車履歴DB500と入出金履歴DB600を時系列に配列し、利用日、利用時間、利用種別、利用駅の情報と、乗車・下車のフラグ領域を確保したものである。
【0045】
図8に、付与ポイントDBを示す。付与ポイントDBは、利用時間帯、利用区間毎に設定された付与ポイントが保存される。
【0046】
図9を用いて本実施例のイメージを説明する。
【0047】
例えば、ICカード乗車券1を利用して、A駅の自動改札機2を「yyyy/mm/dd 10:10」の時刻で入場し、C駅の自動改札機2を「yyyy/mm/dd11:30」の時刻で退場する。この入場時刻と退場時刻の間にICカード乗車券1を利用してB駅で「yyyy/mm/dd 10:50」物品を購入したとする。
【0048】
乗車履歴DB500にはA駅での入場情報とC駅での退場情報が保存され、入出金履歴DB 600にはB駅での購入情報が保存される。
【0049】
入場駅(A駅)と入出金駅(B駅)で異なり、かつ、退場駅(C駅)と入手出金駅(B駅)で異なる為、入出金駅(B駅)にて乗車経路を分割する。
【0050】
時刻10:10に乗車駅1(A駅)から下車駅1(B駅)にて時刻10:50で下車する経路(乗車経路1)と、時刻10:50に乗車駅2(B駅)から時刻11:30に下車駅2(C駅)で下車する経路(乗車経路2)に乗車経路を分割する。
【0051】
乗車経路1と乗車経路2でポイント付与に該当する区分がないか判定を行い、区分に該当する場合、各乗車経路の乗車賃にポイント率をかけた金額をポイントとして入金する。
【符号の説明】
【0052】
1・・・・ICカード乗車券
2・・・・自動改札機
3・・・・自動発券機
4・・・・駅サーバ
5・・・・自動販売機
6・・・・売店
7・・・・駅ネットワーク
10・・・センタサーバ
20・・・処理部
30・・・記憶装置
100・・乗車経路特定処理部
200・・乗車・下車判定処理部
300・・ポイント付与処理部
500・・乗車履歴DB
600・・入出金履歴DB
700・・乗車・下車履歴テーブル
800・・付与ポイントDB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗車状況を反映した、インセンティブ付与方法であって、
乗車券の履歴情報から、当該乗車券の利用者が乗車した列車の状況を推定する推定ステップと、
前記推定した利用状況に応じたインセンティブポイントを算出する算出ステップと、
前記算出したインセンティブポイントを前記乗車券に付与する付与ステップと、
を備えることを特徴とするインセンティブ付与方法。
【請求項2】
請求項1に記載のインセンティブ付与方法において、
前記推定ステップでは、前記履歴情報に含まれる、乗車駅情報、乗車駅に入場した時刻、下車駅情報、下車駅を出場した時刻に基いて、前記利用者が乗車した区間及び、当該特定された区間を乗車した乗車時間帯を特定し、当該特定された前記区間と前記乗車時間帯と列車の状況として推定することを特徴とするインセンティブ付与方法。
【請求項3】
請求項2に記載のインセンティブ付与方法において、
前記履歴情報に物品購入情報が含まれる場合、
前記推定ステップは、前記物品購入情報が示す物品購入を行なった物品購入駅の情報に基づき、前記乗車駅から当該物品購入駅までの区間と、当該物品購入駅から前記下車駅までの区間とを分けて前記利用者が乗車した区間及び当該特定された区間を乗車した乗車時間帯を特定することを特徴としたインセンティブ付与方法。
【請求項4】
請求項3に記載のインセンティブ付与方法において、
前記算出ステップは、前記特定された前記区間と前記乗車時間帯とインセンティブポイントが対応付けられた表を用いて、インセンティブポイントを算出することを特徴とするインセンティブ付与方法。
【請求項5】
前記1乃至4のいずれか一項に記載のインセンティブ付与方法において、
前記乗車券は、価値情報が格納可能なIC乗車券であって、
前記付与ステップは、前記IC乗車券に価値情報を格納することでインセンティブ情報を付与することを特徴とするインセンティブ付与方法。
【請求項6】
乗車状況を反映した、インセンティブ付与装置であって、
外部装置から乗車券の履歴情報を取得し、インセンティブポイントを前記外部装置に送信するインタフェースと、
前記履歴情報と、前記乗車券を有する利用者が乗車した区間と乗車時間帯の情報と当該区間及び乗車時間帯に対応するインセンティブ情報が対応付いた対応表と、を格納する記憶部と、
前記履歴情報に基づき前記利用者が乗車した列車の区間と、当該区間を乗車した乗車時間帯を特定する経路特定処理部と、
前記特定した区間と乗車時間帯と、前記対応表と、に基いて前記利用者に付与するインセンティブポイントを算出し、当該算出したインセンティブポイントを前記インタフェースを介して前記外部装置に付与するポイント付与処理部と、
を備えることを特徴とするインセンティブ付与装置。
【請求項7】
請求項6に記載のインセンティブ付与装置において、
前記履歴情報に物品購入情報が含まれる場合、
前記経路特定部は、前記物品購入情報が示す物品購入を行なった物品購入駅の情報に基づき、前記乗車駅から当該物品購入駅までの区間と、当該物品購入駅から前記下車駅までの区間とを分けて前記利用者が乗車した区間及び当該特定された区間を乗車した乗車時間帯を特定することを特徴としたインセンティブ付与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−80308(P2013−80308A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218860(P2011−218860)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】