説明

運賃精算装置

【課題】運賃精算装置による不正な引き去り処理又は積み増し処理を防ぐ。
【解決手段】車両の運行経路上の複数の運行位置に対応する運行位置情報を記憶する経路記憶部102と、乗客が所持する記憶媒体の残存価値情報を更新する指示を取得する指示取得部104と、運賃精算装置の位置に対応する位置情報を取得する位置取得部106と、位置取得部が位置情報を取得した順序に対応づけて位置情報を記憶する位置記憶部108と、指示取得部が指示を取得した指示取得位置と位置記憶部が記憶している位置情報に対応する位置とを結ぶ経路と、運行位置情報が示す運行経路との類似度が所定の条件を満たしたときに残存価値情報を更新する情報更新部110とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通車両における乗車運賃を算出する運賃精算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
路線バス及びタクシーなどの移動する車両内でICカードの積み増しができる運賃精算装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、カード決済処理を行うことができる装置の不正使用を防止するために、GPS(Global
Positioning System)により取得された装置の位置が予め登録された位置又はエリアと一致しない場合に決済処理を禁止するシステムも知られている(例えば、特許文献2、特許文献3及び特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−100294号公報
【特許文献2】特開2005−301826号公報
【特許文献3】特開平10−56449号公報
【特許文献4】特開2010−211412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に設置された運賃精算装置は、取り外すことができる。したがって、運賃精算装置は、交通機関の社員以外の者によって盗難され、不正にICカードに対する引き去り処理又は積み増し処理が行われるおそれがある。ここで、引き去り処理とは、ICカード等の記憶媒体に記憶された支払い可能額を減額する処理である。積み増し処理とは、ICカード等の記憶媒体に記憶された運賃の支払い可能額を増額する処理である。
【0005】
運賃精算装置の電源投入時に暗証番号を入力させることにより、盗難時の不正使用を防止することは考えられる。しかし、暗証番号が漏れると、容易に不正使用が行われる。また、暗証番号を知っている運転手などの社員が運賃精算装置を持ち帰ってしまうと、暗証番号を入力することによって、不正な引き去り処理又は積み増し処理を容易に実行することができる。
【0006】
また、GPSにより取得された装置の位置が予め登録されたエリアに含まれない場合に決済処理を禁止することにより、不正な使用の抑止効果が高まる。しかし、バスの複雑な運行系統に沿って登録エリアを設定することは煩雑である。
【0007】
さらに、GPSにより取得される位置情報には誤差がある。運賃精算装置が車両内で正規に使用されているにもかかわらず車両が登録エリアに含まれないという誤認識がされることを防ぐには、GPSの精度を考慮した広さの登録エリアを設定しなければならない。登録エリアが広くなると、バスの運行経路近傍で運賃精算装置が不正使用されることを防止できないという問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明はこれらの点を鑑みてなされたものであり、運賃精算装置を用いて引き去り処理又は積み増し処理の操作がされた場所と過去に運賃精算装置が使用された場所との関係に基づいて、引き去り処理又は積み増し処理の操作が不正によるものであるか否かを判断することで、煩雑な登録エリアを設定することなく、車両からの持ち出しによる不正使用を防止できる運賃精算装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様においては、車両に乗車した乗客の運賃を精算する運賃精算装置であって、車両の運行経路上の運行位置に対応する運行位置情報を記憶する経路記憶部と、乗客が所持する記憶媒体に記憶された、運賃の支払可能額に対応する残存価値情報を更新する指示を取得する指示取得部と、運賃精算装置の位置に対応する位置情報を取得する位置取得部と、位置取得部が位置情報を取得した順序に対応づけて位置情報を記憶する位置記憶部と、指示取得部が指示を取得した指示取得位置と位置記憶部が記憶している位置情報に対応する位置とを結ぶ経路と運行位置情報が示す運行経路との類似度が所定の条件を満たしたときに残存価値情報を更新する情報更新部とを備える運賃精算装置を提供する。
【0010】
一例として、情報更新部は、指示取得部が指示を取得した指示取得位置と位置記憶部が記憶している最新の位置情報に対応する位置とを結ぶ経路のベクトルが、運行経路に含まれない場合には、残存価値情報を更新しない。位置取得部は、予め定められた第1距離ごとに位置情報を取得し、情報更新部は、指示取得位置と最新位置との間の距離が、第1距離より大きな第2距離以上である場合に、残存価値情報の更新を禁止してもよい。
【0011】
車両の運行経路上における不正を防止するために、位置取得部は、予め定められた第1の時間以内の間隔で位置情報を取得し、位置記憶部は、位置情報を取得した位置取得時刻を位置情報に対応づけて記憶し、情報更新部は、指示を取得した時刻と位置記憶部が記憶している位置取得時刻との差が第1の時間よりも大きい第2の時間以上である場合に、残存価値情報の更新を禁止してもよい。
【0012】
運賃精算装置が位置情報を取得できない場合であっても不正により残存価値情報が更新されることを防ぐために、運賃精算装置は、車両の車輪の回転に応じて生成される車速信号に基づいて車両の位置を算出する位置算出部をさらに備え、位置取得部は、運賃精算装置との間で無線通信する衛星から受信した緯度・経度情報、及び、位置算出部が算出する車両の位置に対応する算出位置情報を位置情報として取得し、位置記憶部は、緯度・経度情報及び算出位置情報を記憶し、情報更新部は、緯度・経度情報及び算出位置情報の少なくとも一つに基づいて残存価値情報を更新してもよい。
【0013】
上記の場合において、情報更新部は、引き去り処理又は積み増し処理の指示を取得したときに緯度・経度情報を取得することができず、かつ、位置記憶部が記憶する算出位置情報が、指示を取得した時刻に対して予め定められた時間より前に算出されている場合には、残存価値情報の更新を禁止してもよい。
【0014】
営業時間外に不正が行われることを防ぐために、経路記憶部は、運行位置情報に対応づけて車両の運行時刻を記憶し、情報更新部は、指示を取得した時刻と指示取得位置に対応する運行時刻との差が予め定められた時間よりも大きい場合には、残存価値情報の更新を禁止してもよい。
【0015】
車両以外での不正な引き去り処理又は積み増し処理を禁止しつつも営業所内で積み増し処理等を行うことができるように、運賃精算装置は、情報更新部による残存価値情報の更新を許可することを示す許可信号を受信する許可受信部をさらに備え、情報更新部は、指示を取得した時刻に対して予め定められた時間範囲内において許可信号を受信した場合には、残存価値情報の更新を許可してもよい。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、タクシーのように予め定められた運行経路がない場合であっても、不正な引き去り処理又は積み増し処理を防止することができる。具体的には、車両の運賃を精算する運賃精算装置であって、予め定められた距離ごとに車両の位置に対応する位置情報を取得する位置取得部と、位置取得部が位置情報を取得した順序に対応づけて位置情報を記憶する位置記憶部と、乗客が所持する記憶媒体に記憶された、運賃の支払可能額に対応する残存価値情報を更新する指示を取得する指示取得部と、指示取得部が指示を取得したときの運賃精算装置の位置と位置記憶部が記憶している最新の位置情報に対応する位置との距離が所定の距離よりも小さい場合に、残存価値情報を更新する情報更新部とを備える運賃精算装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、運賃精算装置を使用できるエリアを登録することなく、運賃精算装置の不正使用を防ぐことができるという効果を奏する。特に、本発明は、指示取得部が指示を取得した指示取得位置と位置記憶部が記憶している位置情報に対応する位置とを結ぶ経路と運行位置情報が示す運行経路との類似度に応じて残存価値情報を更新するか否かを決定することで、運賃精算装置が正規に使用される位置の近傍においても不正使用を防ぐことができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る運賃精算装置の構成を示す。
【図2】経路記憶部が位置情報を記憶している複数の運行系統の概念を示す。
【図3】運賃精算装置の動作フローチャートを示す。
【図4】経路記憶部が位置情報を記憶している複数の運行系統の概念の他の例を示す。
【図5】本発明の他の実施形態に係る運賃精算装置の構成を示す。
【図6】本発明の他の実施形態に係る運賃精算装置の構成を示す。
【図7】本発明の他の実施形態に係る運賃精算装置の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
[運賃精算装置100の基本構成]
以下、本発明の運賃精算装置に係る実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る運賃精算装置100の構成を示す。運賃精算装置100は、経路記憶部102、指示取得部104、位置取得部106、位置記憶部108及び情報更新部110を備える。運賃精算装置100は、車両に乗車した乗客の運賃を精算する。一例として、運賃精算装置100は、車両の運転席に設置された運賃精算機に取り外し可能に接続される。
【0020】
経路記憶部102は、車両の運行経路上の運行位置に対応する運行位置情報を記憶する。例えば、経路記憶部102は、バスの運行経路上において選択された複数の位置のそれぞれに対応する緯度・経度情報を記憶する。緯度・経度情報は、緯度を示す情報及び経度を示す情報を含む。経路記憶部102は、緯度・経度情報以外の情報を運行位置情報として記憶してもよい。例えば、経路記憶部102は、バスの車庫を起点としたベクトル情報を運行位置情報として記憶してもよい。
【0021】
経路記憶部102は、例えば、略同一の間隔ごとに選択された複数の位置の運行位置情報を記憶する。具体的には、経路記憶部102は、10m間隔で選択された運行経路上の緯度・経度情報を記憶してよい。経路記憶部102は、非同一の間隔で選択された複数の位置の運行位置情報を記憶してもよい。例えば、経路記憶部102は、停留所の位置の緯度・経度情報を運行位置情報として記憶する。
【0022】
経路記憶部102は、不揮発性メモリであってもよく、揮発性メモリであってもよい。一例として、経路記憶部102は、運転手により運賃精算装置100に接続された記憶媒体に記憶された運行位置情報を複製して記憶する。経路記憶部102が、上記の記憶媒体に記憶された運行位置情報を複製して記憶することにより、運賃精算装置100は、容易に運行位置情報を最新の情報に更新することができる。
【0023】
指示取得部104は、乗客が所持する記憶媒体150に記憶された残存価値情報を更新する指示を取得する。残存価値情報とは、運賃の支払可能額に対応する情報である。すなわち、残存価値情報は、記憶媒体150を用いて支払うことができる運賃の上限額を示す情報である。例えば、記憶媒体150を用いて支払うことができる運賃の上限額が5000円である場合には、残存価値情報は5000である。
【0024】
記憶媒体150は、データを記憶する領域を有する媒体である。記憶媒体150は、例えばデータを記憶するメモリを内蔵する非接触型ICカードである。記憶媒体150は、携帯電話及びスマートフォンのように記憶素子を内蔵する端末であってもよい。指示取得部104は、記憶媒体150との間で無線通信をすることにより、残存価値情報を更新する指示を取得する。指示取得部104は、記憶媒体150との間で有線通信をすることにより、当該指示を取得してもよい。
【0025】
位置取得部106は、運賃精算装置100の位置に対応する位置情報を取得する。一例として、位置取得部106は、運賃精算装置100との間で無線通信する衛星から受信したデータに基づいて算出される緯度・経度情報を取得する。具体的には、位置取得部106は、GPS衛星が送出する電波が含むデータに基づいて緯度・経度情報を算出するGPS受信機を有してよい。
【0026】
一例として、位置取得部106は、予め定められた距離ごとに位置情報を取得する。位置取得部106は、経路記憶部102が記憶する運行位置情報における運行位置の間隔と同一の間隔で位置情報を取得することが好ましい。位置取得部106は、経路記憶部102が記憶する運行位置情報が含む運行位置の間隔よりも狭い間隔で位置情報を取得してもよく、運行位置情報が含む運行位置の間隔よりも広い間隔で位置情報を取得してもよい。
【0027】
位置取得部106は、停留所ごとに位置情報を取得してもよい。位置取得部106は、予め定められた時間ごとに位置情報を取得してもよい。位置取得部106は、外部からの指示を受けて、位置情報を取得する間隔を変更してもよい。
【0028】
位置記憶部108は、位置取得部106が位置情報を取得した順序に対応づけて位置情報を記憶する。例えば、位置記憶部108は、メモリの第1のアドレスに、位置取得部106が1番目に取得した緯度・経度情報を記憶し、メモリの第2のアドレスに、位置取得部106が2番目に取得した緯度・経度情報を記憶する。位置記憶部108は、予め定められた数の位置情報を記憶した後に、さらに位置取得部106が取得した位置情報により、記憶している位置情報の一部を上書きしてもよい。位置記憶部108が当該構成を有することにより、位置記憶部108は、限られた容量のメモリを用いて予め定められた数の最新の位置情報を記憶することができる。
【0029】
情報更新部110は、指示取得部104が指示を取得した指示取得位置と位置記憶部108が記憶している位置情報に対応する位置とを結ぶ経路aと、経路記憶部102が記憶している運行位置情報が示す運行経路bとの類似度が所定の条件を満たしたときに、残存価値情報を更新する。ここで、経路aと運行経路bとの類似度とは、例えば、経路aの両端の緯度及び経度と運行経路bが含む経路cの両端の緯度及び経度とが、類似する度合である。経路aの両端の緯度及び経度が経路cの両端の緯度及び経度と一致すれば、類似度は最大になる。経路aの両端の緯度及び経度と経路cの両端の緯度及び経度との差が大きければ大きいほど、類似度は小さくなる。
【0030】
情報更新部110は、類似度が予め定められた閾値より大きい場合に、残存価値情報を更新してよい。例えば、情報更新部110は、位置情報を取得するGPSの精度に基づいて決定された閾値を用いる。具体的には、情報更新部110は、GPSの誤差を考慮すると、異なる複数の経路であっても同一の経路であると判断し得る場合に当該複数の経路が類似すると判断される閾値を用いる。
【0031】
情報更新部110は、経路a及び経路cの向きの差が小さい場合に、向きの差が大きい場合よりも類似度が大きいと判断してもよい。情報更新部110は、経路a及び経路cの大きさ及び向き(ベクトル)に基づいて類似度を判断することにより、GPSから取得する位置情報に誤差がある場合であっても、誤差の影響を抑制することができる。
【0032】
以下、情報更新部110の動作を具体的に説明する。本実施形態においては、一例として情報更新部110における積み増し処理について説明するが、情報更新部110は引き去り処理についても同様に動作する。情報更新部110は、運賃精算装置100に記憶媒体150が接続された状態で指示取得部104が積み増しの指示を取得すると、位置取得部106から位置情報を取得する。さらに情報更新部110は、位置記憶部108が記憶している位置情報を取得する。例えば、情報更新部110は、位置記憶部108が記憶している位置情報のうち、最新の位置情報を取得する。
【0033】
例えば、情報更新部110は、経路記憶部102が記憶している複数の位置情報のうち、位置記憶部108が記憶している最新の位置情報に対応する位置に最も近い位置を選択し、選択した位置と、選択した位置に隣接する位置との間の緯度差及び経度差を算出する。情報更新部110は、このようにして算出した緯度差及び経度差を、位置取得部106から取得した位置情報と位置記憶部108から取得した最新の位置情報との差に基づく緯度差及び経度差と比較することにより、類似度を判断することができる。
【0034】
経路記憶部102が記憶している複数の位置情報に対応する位置の間隔が、車両の運行中に位置記憶部108が記憶する位置情報に対応する位置の間隔と異なる場合には、情報更新部110は、位置情報を補完してもよい。例えば、情報更新部110は、経路記憶部102が記憶する複数の位置情報の緯度及び経度の中間値を中間位置に対応する位置情報とする。情報更新部110は、位置記憶部108が記憶する複数の位置情報の緯度及び経度の中間値を中間位置に対応する位置情報とする。情報更新部110は、補完処理をすることにより、経路記憶部102が記憶している位置情報及び位置記憶部108が記憶している位置情報の間隔の差異によらず、類似度を判断することができる。
【0035】
[運賃精算装置100の具体的な動作例]
図2は、経路記憶部102が位置情報を記憶している複数の運行系統の概念を示す。図2は、バスの運行系統A(以下、系統A)及び運行系統B(以下、系統B)の一部の区間を示す。
【0036】
図3は、運賃精算装置100の動作フローチャートを示す。以下、図2及び図3を参照して、運賃精算装置100の動作を具体的に説明する。
【0037】
経路記憶部102は、系統AにおけるA1からA12までの位置の緯度・経度情報、及び、系統BにおけるB1からB13までの位置の緯度・経度情報を記憶している。バスがA1からA12に向けて移動する間、位置取得部106は、予め定められた間隔で位置情報を取得する。一例として、位置取得部106は、経路記憶部102が緯度及び経度を記憶している位置(A1、A2、・・・、A13)の近傍において位置情報を取得し、位置記憶部108は、位置取得部106が取得した位置情報を順次記憶する。
【0038】
運賃精算装置100が設置されたバス内の乗客が、A8の位置で記憶媒体150に積み増し処理をしようとすると、指示取得部104は、積み増し処理の指示を取得する(S100)。位置取得部106は、指示取得部104が取得した積み増し処理の指示に応じて、A8における位置情報を取得する(S102)。バスがA8に到着する時点で、位置記憶部108にはA1からA7までの位置情報が記憶されている。そこで、情報更新部110は、位置記憶部108が記憶している最新の位置情報であるA7の位置情報を取得し(S104)、位置取得部106が取得したA8に対応する位置情報との差分aを算出する(S106)。
【0039】
続いて、情報更新部110は、経路記憶部102が記憶している複数の位置情報からA7の位置情報、A7に隣接するA6の位置情報及びA8の位置情報を検出する。情報更新部110は、A6の位置情報とA7の位置情報との差分b、及び、A8の位置情報とA7の位置情報との差分cを算出する(S108)。情報更新部110は、差分aと差分b及び差分aと差分cを比較し、差分aが差分cと等しいことを認識する。
【0040】
情報更新部110は、差分aと差分cとが等しいと判断すると(S110)、積み増し処理を実行して記憶媒体150が記憶する残存価値情報を更新する(S112)。情報更新部110は、差分aと差分cとが完全に一致しないとしても、予め定められた許容差の範囲内であれば、差分aと差分cとが等しいと判断してよい。
【0041】
これに対して、運賃精算装置100が設置されたバスがA7に停車している間に運賃精算装置100が盗難され、位置Xにおいて積み増し処理が行われようとしている場合には、運賃精算装置100は、以下の手順により積み増し処理を禁止することができる。指示取得部104が位置Xで積み増し処理の指示を受けると(S100)、位置取得部106は、位置Xにおける位置情報を取得する(S102)。情報更新部110は、位置記憶部108が記憶している最新の位置情報であるA7の位置情報を取得する。情報更新部110は、位置取得部106が取得した位置Xに対応する位置情報とA7の位置情報との差分dを算出する(S106)。
【0042】
続いて、情報更新部110は、上記の差分b及び差分cを算出した後に(S108)、差分dと差分b及び差分dと差分cを比較し(S110)、差分dが差分b及び差分cのいずれとも等しくないことを認識する。情報更新部110は、差分dと差分b及び差分dと差分cの差が予め定められた許容差よりも大きい場合に、記憶媒体150が記憶する残存価値情報の更新を禁止する(S114)。
【0043】
[情報更新部110の他の構成例]
位置取得部106は、予め定められた第1距離ごとに位置情報を取得し、情報更新部110は、指示取得位置と最新位置との間の距離が第1距離より大きな第2距離以上である場合には、残存価値情報の更新を禁止してもよい。具体的には、位置取得部106は、10mごとにGPSによる位置情報を取得する。情報更新部110は、指示取得部104から積み増し処理の指示を受けた位置と位置記憶部108が記憶している最新位置との間の距離が10mより大きい場合に、当該積み増し処理の指示が不正にされたと判断して、記憶媒体150の残存価値情報の更新を禁止する。
【0044】
より具体的には、情報更新部110は、位置取得部106から取得した位置Xにおける緯度・経度情報(例えば、緯度35度41.3667分、経度139度41.5000分)と、位置記憶部108から取得したA7における緯度・経度情報(例えば、緯度35度41.3000分、経度139度41.5833分)との差として、緯度差0.0667分及び経度差0.0833分を算出する。
【0045】
緯度及び経度の1秒(0.0167分)の長さは約31mである。したがって、緯度差が0.0667分であり経度差が0.0833分である場合には、情報更新部110は、位置記憶部108が記憶している最新の位置情報に対応する位置と残存価値情報を更新する指示を受けた位置とが、緯度方向に約124m、経度方向に約155mだけ離れていることを算出する。例えば、位置取得部106が30mごとに位置情報を取得しており、A7とA8との間が緯度方向にのみ30m離れているとすれば、情報更新部110は、位置XとA7との間の距離が大き過ぎると判断して残存価値情報の更新を禁止する。
【0046】
情報更新部110は、指示取得部104が指示を取得した指示取得位置と位置記憶部108が記憶している最新の位置情報に対応する位置とを結ぶ経路のベクトルが、経路記憶部102が記憶している運行経路に含まれない場合に、残存価値情報の更新を禁止してもよい。すなわち、情報更新部110は、位置取得部106が取得した複数の位置における位置情報の差分の大きさと経路記憶部102が記憶している運行経路上の複数の位置における位置情報の差分の大きさを比較することにより判断する代わりに、ベクトルを比較することにより判断してもよい。ここで、位置Aと位置Bとを結ぶ経路のベクトルとは、位置A又は位置Bを起点とした経路の大きさと向きを持つ量である。
【0047】
具体的には、情報更新部110は、指示取得部104が指示を取得した指示取得位置と位置記憶部108が記憶している最新の位置情報に対応する位置とを結ぶ経路のベクトルが、経路記憶部102が記憶している運行経路に含まれている場合に、残存価値情報の更新を許可してもよい。
【0048】
より具体的には、情報更新部110は、指示取得部104が指示を取得した指示取得位置と位置記憶部108が記憶している最新の位置情報に対応する位置とを結ぶ経路の緯度差及び経度差の比を算出する。情報更新部110は、算出した比が、経路記憶部102が記憶している運行経路上の、指示取得部104が指示を取得した指示取得位置に最も近い位置と、当該位置に隣接する位置との間の緯度差及び経度差の比に対して予め定められた範囲内であれば、残存価値情報の更新を許可してよい。当該構成によれば、バスの乗客が積み増しをする位置が、経路記憶部102が記憶している位置情報に対応する位置と完全に一致しない場合においても、運賃精算装置100は積み増し処理を行うことができる。
【0049】
情報更新部110は、指示取得部104が指示を取得した指示取得位置と、位置記憶部108が記憶している複数の位置情報に対応する位置のそれぞれとを結ぶ経路の大きさ又はベクトルに基づいて、記憶媒体150の残存価値情報を更新するか否かを判断してもよい。一例として、情報更新部110は、図2における位置A8において積み増し処理が行われる場合に、位置取得部106がA8において取得した位置情報と、位置記憶部108が記憶している最新から1番目の位置情報、最新から2番目の位置情報及び最新から3番目の位置情報のそれぞれとの差分(差分a1、差分a2及び差分a3)を算出する。
【0050】
続いて、情報更新部110は、経路記憶部102が記憶しているA8の位置情報と、A7、A6及びA5の位置情報のそれぞれとの差分(差分b1、差分b2及び差分b3)を算出する。情報更新部110は、差分a1と差分b1、差分a2と差分b2、及び、差分a3と差分b3のそれぞれを比較する。情報更新部110は、比較した複数の差分のうち予め定められた数より多くの差分が一致している場合に、記憶媒体150の残存価値情報の更新をしてよい。情報更新部110が複数の差分に基づいて判断することにより、位置取得部106が正しい位置情報を取得できない場合であっても、運賃精算装置100は、高い精度で積み増し処理をすべきか否かを判断することができる。
【0051】
情報更新部110は、経路記憶部102が記憶している運行経路上の位置情報のうち、位置記憶部108が記憶している最新の位置情報が取得された運行系統のみに対応する位置情報に基づいて、残存価値情報を更新するか否かを判断してもよい。例えば、図2に示すB8において運賃精算装置100が盗難され、位置Yにおいて積み増し処理の指示がされたとする。
【0052】
B8とYとを結ぶ経路のベクトルは、系統AにおけるA11とA12とを結ぶ経路のベクトルと類似する。このように複数の系統が近接している場合においても、情報更新部110が、B8が含まれる系統B内に含まれる経路のみに基づいて残存価値情報の更新の可否を判断すれば、情報更新部110は、B8とYとを結ぶ経路のベクトルに類似するベクトルが系統Bには含まれないと認識し、積み増し処理を禁止することができる。
【0053】
以上のとおり、本実施形態によれば、運賃精算装置100は運行経路上の複数の位置の位置情報を予め記憶しておくことにより、高い精度で不正使用を防止することができる。特に、本実施形態によれば、運賃精算装置100は、複数の位置の間の大きさ及び向きなどの関係を利用して、運賃精算装置100が車両上にあるか否かを判断することができる。
【0054】
運賃精算装置100が複数の位置の間の大きさ及び向きなどの関係を利用することにより、位置取得部106が取得した位置情報に誤差が生じている場合であっても、誤差の影響を抑制することができる。すなわち、A7とA8との間、及び、A7とXとの間のように、複数の位置間の距離が十分に小さい場合には、それぞれの場所で測定した位置情報には同等の誤差が含まれると考えられる。情報更新部110がそれぞれの位置情報の差分を算出することで誤差が打ち消されるので、位置情報の誤差の影響を抑制することができる。
【0055】
<第2の実施形態>
[時間情報をさらに利用する実施形態]
図4は、経路記憶部102が位置情報を記憶している複数の運行系統の概念の他の例を示す。同図において、不正に引き去り処理又は積み増し処理が行われようとしている位置Xは、系統Aの運行経路上にある。具体的には、位置Xは、系統AのA9及びA10の間の位置にある。このように、位置XとA7とを結ぶ経路が系統Aの運行経路上に含まれる場合においても、情報更新部110は不正な引き去り処理又は積み増し処理を防ぐことが好ましい。
【0056】
そこで、運賃精算装置100は、位置情報に加えて時間情報を利用することにより、さらに不正の抑止力を高めてもよい。すなわち、位置取得部106は、予め定められた第1の時間以内の間隔で位置情報を取得する。例えば、時速36kmで走行する車両に搭載された運賃精算装置100の位置取得部106が30mごとに位置情報を取得する場合、車両が渋滞に巻き込まれたとしても、位置取得部106は、10分以内の間隔で位置情報を取得できると考えられる。
【0057】
位置記憶部108は、位置情報を取得した位置取得時刻を当該位置情報に対応づけて記憶する。情報更新部110は、指示取得部104が指示を取得した時刻と位置記憶部108が記憶している位置取得時刻との差が第1の時間よりも大きい第2の時間以上である場合に、残存価値情報を更新しない。情報更新部110は、第1の時間を10分とした場合に、指示取得部104が引き去り処理又は積み増し処理の指示を取得した時刻と位置記憶部108が記憶している最新の位置情報を取得した時刻との差が、例えば15分以上ある場合には、指示取得部104が受けた引き去り処理又は積み増し処理の指示は不正にされたと判断してよい。
【0058】
例えば、図4のA7で運賃精算装置100が盗難され、指示取得部104が、位置Xにおいて積み増し処理の指示を受けたとする。位置記憶部108がA7において位置情報を記憶した時刻が午後1時0分0秒であるにもかかわらず、指示取得部104が位置Xにおいて積み増し処理の指示を取得した時刻が午後2時0分0秒である場合には、情報更新部110は、指示取得部104が受けた引き去り処理又は積み増し処理の指示は不正にされたと判断し、残存価値情報の更新を禁止する。このように、情報更新部110が位置情報及び時間情報に基づいて残存価値情報の更新の可否を判断することにより、運行経路上で行われる不正も防ぐことができる。
【0059】
当該構成によれば、不正が行われる位置が、経路記憶部102が記憶している運行経路上の位置と一致している場合であっても、不正を検出することができる。例えば、図4に示す位置Yのように、不正が行われる場所が系統BのB5と一致している場合であっても、位置記憶部108に記憶されているA7の位置情報が取得された時刻と、指示取得部104が引き去り処理又は積み増し処理の指示を受けた時刻との間の時間差が予め定められた時間よりも大きい場合に、情報更新部110は残存価値情報の更新を禁止することができる。
【0060】
運賃精算装置100は、指示取得部104が積み増し処理の指示を受けた時刻が車両の運行時間帯に一致していない場合に、積み増し処理を禁止してもよい。具体的には、経路記憶部102は、運行位置情報に対応づけて車両の運行時刻を記憶する。情報更新部110は、指示取得部104が指示を取得した時刻と、指示取得位置に対応する運行時刻との差が予め定められた時間よりも大きい場合に、残存価値情報を更新しない。当該構成により、運賃精算装置100は、不正に引き去り処理又は積み増し処理が行われる可能性をさらに低減することができる。
【0061】
<第3の実施形態>
[複数の位置情報取得手段を有する実施形態]
図5は、本発明の他の実施形態に係る運賃精算装置200の構成を示す。図5における運賃精算装置200は、図1に示した運賃精算装置100に対して位置算出部112をさらに備える。位置算出部112は、車両の車輪の回転に応じて生成される車速信号に基づいて車両の位置を算出する。例えば、位置算出部112は、位置取得部106が位置情報を取得するタイミングごとに、直前に位置情報を取得したタイミング以降に入力された車速信号を計数することで、位置取得部106が位置情報を取得した位置の間の距離を算出する。位置算出部112は、加速度センサを用いて車両の移動方向をさらに算出してもよい。
【0062】
位置取得部106は、運賃精算装置100との間で無線通信する衛星から受信した緯度・経度情報、及び、位置算出部112が算出する車両の位置に対応する算出位置情報を位置情報として取得する。具体的には、位置取得部106は、GPSから緯度・経度情報を受信するとともに、位置算出部112から車速信号に基づいて算出された位置情報を取得する。位置記憶部108は、緯度・経度情報及び算出位置情報を記憶する。
【0063】
情報更新部110は、緯度・経度情報及び算出位置情報の少なくとも一つに基づいて残存価値情報を更新する。例えば、情報更新部110は、GPSから正常に緯度・経度情報を受信できた場合には、緯度・経度情報のみを使用する。情報更新部110は、GPSから緯度・経度情報を正常に受信できない場合には、位置算出部112が算出した算出位置情報を使用してよい。情報更新部110は、GPSから受信した緯度・経度情報の精度が予め定められた値よりも低い場合に算出位置情報を使用してもよい。
【0064】
運賃精算装置200が車両から取り外されて不正に使用される場合には、位置算出部112は車速信号に基づいて位置情報を算出することができない。そこで、情報更新部110は、指示を取得したときに緯度・経度情報を取得することができず、かつ、位置記憶部108が記憶する算出位置情報が、指示取得部104が指示を取得した時刻に対して予め定められた時間以内に算出されていない場合に残存価値情報を更新しないことで、不正を防止することができる。
【0065】
例えば、図2の位置XにおいてGPSによる位置情報を受信できない場合、情報更新部110は、GPSによる位置情報に基づいて、残存価値情報の更新の可否を判断することができない。しかし、位置記憶部108が記憶している最新の算出位置情報が、指示取得部104が指示を取得した時刻に対して、位置算出部112が位置を算出する間隔の2倍の時間より前に算出されている場合は、運賃精算装置200は、車両から取り外されて位置Xに到達した可能性がある。例えば、最新の算出位置情報が、指示取得部104が指示を取得した時刻の1時間前に取得されている場合には、運賃精算装置200が車両から取り外されて位置Xに到達した可能性が高いので、情報更新部110は残存価値情報の更新を禁止する。
【0066】
以上のとおり、情報更新部110が緯度・経度情報及び算出位置情報の少なくとも一つに基づいて残存価値情報を更新することにより、電波受信状態が悪くGPSによる位置情報を正しく受信できない場合であっても、運賃精算装置200は不正に引き去り処理又は積み増し処理がされることを防止できる。
【0067】
<第4の実施形態>
[営業所内での積み増し処理等を可能にする実施形態]
図6は、本発明の他の実施形態に係る運賃精算装置300の構成を示す。図6における運賃精算装置300は、図1に示した運賃精算装置100に対して許可受信部114をさらに備える。許可受信部114は、情報更新部110による残存価値情報の更新を許可することを示す許可信号を受信する。一例として、許可受信部114は、無線LANを介して当該許可信号を受信する。情報更新部110は、指示を取得した時刻に対して予め定められた時間範囲内において許可信号を受信した場合には、残存価値情報の更新を許可する。
【0068】
例えば、運転手が運賃精算装置300を車両から取り外して、営業所において引き去り処理又は積み増し処理をする場合がある。このような場合に、情報更新部110が残存価値情報の更新を禁止すると不便である。そこで、営業所内のサーバーから無線LANによって残存価値情報の更新を許可する信号を定期的に送信しておくことで、運賃精算装置300は営業所内で残存価値情報の更新ができる。具体的には、運賃精算装置300が当該許可信号を受信すると、許可信号を受信したタイミングに対して許可信号の送信間隔に応じた時間範囲内であれば、営業所において位置取得部106が取得する位置情報及び時間情報によらず、情報更新部110は残存価値情報を更新する。以上の構成により、運賃精算装置300は、不正な引き去り処理又は積み増し処理を防止しつつ、営業所における正規の引き去り処理又は積み増し処理を行うことができる。
【0069】
<第5の実施形態>
[運行系統が決まっていない車両に適用できる実施形態]
図7は、本発明の他の実施形態に係る運賃精算装置400の構成を示す。図7における運賃精算装置400は、経路記憶部102を備えていない点で図1に示した運賃精算装置100と異なる。位置取得部106は、予め定められた距離以内又は予め定められた時間以内の間隔で車両の位置に対応する位置情報を取得する。位置記憶部108は、位置取得部106が位置情報を取得した順序に対応づけて位置情報を記憶する。
【0070】
指示取得部104は、乗客が所持する記憶媒体150に記憶された、運賃の支払可能額に対応する残存価値情報を更新する指示を取得する。情報更新部110は、指示取得部104が指示を取得したときの運賃精算装置100の位置と位置記憶部108が記憶している最新の位置情報に対応する位置との間の距離が所定の距離よりも小さい場合に、残存価値情報を更新する。
【0071】
運賃精算装置400は、予め定められた運行経路上の位置情報を利用することなく、残存価値情報の更新の可否を判断することができる。したがって、タクシーのように予め定められた運行経路が存在しない場合であっても、運賃精算装置400が盗難された後に、盗難された場所から離れた位置において不正に引き去り処理又は積み増し処理がされることを防止できる。
【0072】
位置取得部106は、位置情報を取得した時刻を取得してもよい。位置記憶部108は、位置情報に対応づけて、当該位置情報を取得した時刻を記憶してもよい。情報更新部110は、指示取得部104が指示を取得したときの時刻と、位置記憶部108が記憶している最新の位置情報に対応する時刻との差が予め定められた時間よりも大きい場合に、残存価値情報の更新を禁止してもよい。当該構成によれば、運賃精算装置400が、盗難された場所の近くで不正に使用される場合であっても、引き去り処理又は積み増し処理がされることを防止できる。
【0073】
運賃精算装置400は、図5に示した位置算出部112、及び、図6に示した許可受信部114の少なくとも1つをさらに備えてもよい。運賃精算装置400が位置算出部112又は許可受信部114を備えることにより、運賃精算装置400においても、運賃精算装置200及び運賃精算装置300において生じた作用・効果が生じる。
【0074】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0075】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した方法における各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲及び明細書中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0076】
100・・・運賃精算装置、102・・・経路記憶部、104・・・指示取得部、106・・・位置取得部、108・・・位置記憶部、110・・・情報更新部、112・・・経路記憶部、114・・・許可受信部、150・・・記憶媒体、200・・・運賃精算装置、300・・・運賃精算装置、400・・・運賃精算装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に乗車した乗客の運賃を精算する運賃精算装置であって、
車両の運行経路上の運行位置に対応する運行位置情報を記憶する経路記憶部と、
前記乗客が所持する記憶媒体に記憶された、運賃の支払可能額に対応する残存価値情報を更新する指示を取得する指示取得部と、
前記運賃精算装置の位置に対応する位置情報を取得する位置取得部と、
前記位置取得部が前記位置情報を取得した順序に対応づけて前記位置情報を記憶する位置記憶部と、
前記指示取得部が前記指示を取得した指示取得位置と前記位置記憶部が記憶している前記位置情報に対応する位置とを結ぶ経路と、前記運行位置情報が示す前記運行経路との類似度が所定の条件を満たしたときに、前記残存価値情報を更新する情報更新部と
を備える運賃精算装置。
【請求項2】
前記情報更新部は、前記指示取得部が前記指示を取得した指示取得位置と前記位置記憶部が記憶している最新の前記位置情報に対応する位置とを結ぶ経路のベクトルが前記運行経路に含まれない場合には、前記残存価値情報を更新しない請求項1に記載の運賃精算装置。
【請求項3】
前記位置取得部は、予め定められた第1距離ごとに前記位置情報を取得し、
前記情報更新部は、前記指示取得位置と前記最新位置との間の距離が前記第1距離より大きな第2距離以上である場合に、前記残存価値情報を更新しない請求項1又は2に記載の運賃精算装置。
【請求項4】
前記位置取得部は、予め定められた第1の時間以内の間隔で前記位置情報を取得し、
前記位置記憶部は、前記位置情報を取得した位置取得時刻を前記位置情報に対応づけて記憶し、
前記情報更新部は、前記指示を取得した時刻と前記位置記憶部が記憶している前記位置取得時刻との差が前記第1の時間よりも大きい第2の時間以上である場合に、前記残存価値情報を更新しない請求項1から3のいずれか一項に記載の運賃精算装置。
【請求項5】
前記車両の車輪の回転に応じて生成される車速信号に基づいて前記車両の位置を算出する位置算出部をさらに備え、
前記位置取得部は、前記運賃精算装置との間で無線通信する衛星から受信したデータに基づいて算出される緯度・経度情報、及び、前記位置算出部が算出する前記車両の位置に対応する算出位置情報を前記位置情報として取得し、
前記位置記憶部は、前記緯度・経度情報及び前記算出位置情報を記憶し、
前記情報更新部は、前記緯度・経度情報及び前記算出位置情報の少なくとも一つに基づいて、前記残存価値情報を更新する請求項1から4のいずれか一項に記載の運賃精算装置。
【請求項6】
前記情報更新部は、前記指示を取得したときに前記緯度・経度情報を取得することができず、かつ、前記位置記憶部が記憶する前記算出位置情報が前記指示を取得した時刻に対して予め定められた時間以内に算出されていない場合には、前記残存価値情報を更新しない請求項5に記載の運賃精算装置。
【請求項7】
前記経路記憶部は、前記運行位置情報に対応づけて前記車両の運行時刻を記憶し、
前記情報更新部は、前記指示を取得した時刻と前記指示取得位置に対応する前記運行時刻との差が予め定められた時間よりも大きい場合には、前記残存価値情報を更新しない請求項3から6のいずれか一項に記載の運賃精算装置。
【請求項8】
前記情報更新部による前記残存価値情報の更新を許可することを示す許可信号を受信する許可受信部をさらに備え、
前記情報更新部は、前記指示を取得した時刻に対して予め定められた時間範囲内において前記許可信号を受信した場合には、前記残存価値情報の更新を許可する請求項1から7のいずれか一項に記載の運賃精算装置。
【請求項9】
車両の運賃を精算する運賃精算装置であって、
予め定められた距離以内又は予め定められた時間以内の間隔で前記車両の位置に対応する位置情報を取得する位置取得部と、
前記位置取得部が前記位置情報を取得した順序に対応づけて前記位置情報を記憶する位置記憶部と、
乗客が所持する記憶媒体に記憶された、運賃の支払可能額に対応する残存価値情報を更新する指示を取得する指示取得部と、
前記指示取得部が前記指示を取得したときの前記運賃精算装置の位置と前記位置記憶部が記憶している最新の前記位置情報に対応する位置との間の距離が所定の距離よりも小さい場合に、前記残存価値情報を更新する情報更新部と
を備える運賃精算装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−114406(P2013−114406A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259365(P2011−259365)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】