説明

運転支援装置及び方法

【課題】 矢灯器付き信号機での運転者の混乱を回避することができる運転支援装置及び方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、矢灯器付き信号機での運転者の混乱を回避することができる運転支援装置及び方法を提供することを目的とする。運転支援装置1は、道路に設置されたインフラ装置からのインフラ情報を受信するインフラ情報受信機2と、自車両が走行している道路情報を含む各種情報を取得するナビゲーション3と、自車両の状態を監視する自車状態監視センサ4と、ECU6とを備えている。ECU6は、自車両が信号機を通過可能であるか否かを判定する信号通過可否判定部7と、この信号通過可否判定部7により自車両が信号機を通過不可であると判定されたときに、自車両の信号待ち時間を決定して表示部5に表示させる信号待ち時間通知制御部8とを有している。信号通過可否判定部7は、純粋な赤信号の点灯時間だけでなく、赤信号及び矢灯器の点灯時間及びそれに続く黄信号の点灯時間も通過不可であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号機に関する情報を利用して運転支援を行う運転支援装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の運転支援装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、車載用ナビゲーションにおいて、予め決定された誘導ルートに含まれる経由地点に交通信号機が存在する場合に、信号機データに基づいて交通信号機の属性情報(種類や特徴等)を案内するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−232573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、交通信号機が矢灯器付き信号機である場合に、例えばインフラ情報より矢灯器の点灯状態情報を取得して運転支援を実施すると、運転者が焦ったり違和感を感じたりと、逆に混乱してしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、矢灯器付き信号機での運転者の混乱を回避することができる運転支援装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の運転支援装置は、少なくとも交通信号機に関する信号機情報を含むインフラ情報を受信するインフラ情報受信手段と、信号機情報に基づいて交通信号機の通過の可否を判定する通過可否判定手段と、通過可否判定手段の判定結果に基づいて運転支援内容を通知する支援内容通知手段とを備え、通過可否判定手段は、交通信号機が矢灯器を有している場合には、矢灯器の点灯時間及び当該矢灯器の点灯に続く黄信号の点灯時間を通過不可と判定することを特徴とするものである。
【0007】
矢灯器付き信号機の信号サイクルの一例として、青信号点灯→黄信号点灯→赤信号一時点灯→赤信号及び矢灯器点灯→黄信号点灯→赤信号点灯→青信号点灯というものがある。この場合、黄信号が点灯しているときは、信号機を通過可であるとみなして運転支援を行わないこととすると、運転支援の実施及び不実施が目まぐるしく切り換わることになるため、運転者が混乱しやすくなる。また、矢灯器が点灯しているときは、信号機を通過可であるとみなして運転支援を行わないこととすると、点灯中の矢灯器が示す方向に行かない車両にとっては赤信号と同等であるため、その車両の運転者が混乱しやすくなる。そこで本発明では、矢灯器の点灯時間及び当該矢灯器の点灯に続く黄信号の点灯時間を通過不可と判定することにより、運転支援の実施及び不実施が目まぐるしく切り換わることを防止できると共に、点灯中の矢灯器が示す方向に行かない車両に対して適切な運転支援を実施することができる。これにより、運転者の焦りや違和感が軽減されるため、運転者の混乱を回避することができる。
【0008】
支援内容通知手段は、通過可否判定手段により交通信号機を通過不可と判定された場合、直進方向を示す矢灯器が点灯しているときは、運転支援内容の通知を行わないようにする。
【0009】
矢灯器付き信号機が設置された交差点では、直進方向に進む車両が多いとされる。従って、直進方向を示す矢灯器が点灯しているときは、運転支援を行わないようにすることで、多くの運転者の混乱を十分回避することができる。
【0010】
なお、交通信号機が設置されている交差点における車両の走行方向の統計情報を取得する統計情報取得手段を更に備え、支援内容決定手段は、通過可否判定手段により交通信号機を通過不可と判定された場合でも、車両の走行方向の統計情報に基づいて、点灯している矢灯器が示す方向に走行する確率が所定値以上であると判断されるときは、運転支援を行わないようにしてもよい。
【0011】
例えば矢灯器付き信号機が設置された交差点を通過する方向に幅の広い道路や車線数の多い道路がある場合には、たとえ直進方向でなくても、統計的に多くのドライバーがその方向に進むと考えられる。従って、交通信号機が設置されている交差点における車両の走行方向の統計情報を取得し、その統計情報に基づいて、点灯している矢灯器が示す方向に走行する確率が所定値以上であると判断されるときは、運転支援を行わないようにすることで、多くの運転者の混乱を十分回避することができる。
【0012】
さらに、好ましくは、自車両の走行方向を検出する走行方向検出手段を更に備え、支援内容通知手段は、通過可否判定手段により交通信号機を通過不可と判定された場合でも、点灯している矢灯器が示す方向が走行方向検出手段により検出された自車両の走行方向と一致するときは、運転支援内容の通知を行わないようにする。
【0013】
例えば矢灯器付き信号機に自車両のナビゲーションの経路案内方向と一致する方向を示す矢灯器がある場合には、自車両はその矢灯器が示す方向に走行する可能性が高い。従って、自車両の走行方向を検出し、点灯している矢灯器が示す方向が自車両の走行方向と一致するときは、運転支援を行わないようにすることで、自車両の運転者の混乱を十分回避することができる。
【0014】
このとき、支援内容通知手段は、運転支援として運転者に対する警告を行わないようにすることが好ましい。
【0015】
この場合には、点灯している矢灯器が示す方向に進もうとする車両の運転者に対して不要な警告が行われることがないので、運転者が煩わしさを感じなくて済む。
【0016】
また、好ましくは、通過可否判定手段は、青信号の点灯が終了した後に最初に赤信号が点灯した時点から次の青信号の点灯直前の赤信号の点灯が終了する時点までを、通過不可時間と設定する。
【0017】
この場合には、矢灯器付き信号機に関して実際の運転者の運転感覚に合った通過不可時間を設定することができる。
【0018】
このとき、好ましくは、支援内容通知手段は、自車両が通過不可時間の範囲内で停止するときは、自車両が停止した時点から、通過不可時間が終了するまでの待ち時間を通知し、自車両が通過不可時間の範囲外で停止するときは、通過不可時間の開始時点から、通過不可時間が終了するまでの待ち時間を通知する。
【0019】
この場合には、矢灯器付き信号機が設置された交差点で車両が停止したときに、車両の運転者は正確な信号待ち時間を知ることができる。
【0020】
本発明の運転支援方法は、少なくとも交通信号機に関する信号機情報を含むインフラ情報を受信するインフラ情報受信ステップと、信号機情報に基づいて交通信号機の通過の可否を判定する通過可否判定ステップと、通過可否判定ステップにおける判定結果に基づいて運転支援内容を通知する支援内容通知ステップとを含み、通過可否判定ステップにおいては、交通信号機が矢灯器を有している場合には、矢灯器の点灯時間及び当該矢灯器の点灯に続く黄信号の点灯時間を通過不可と判定し、支援内容受信ステップにおいては、通過可否判定ステップにおいて交通信号機を通過不可と判定された場合、直進方向を示す矢灯器が点灯しているときは、運転支援内容の通知を行わないようにすることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の運転支援方法では、矢灯器の点灯時間及び当該矢灯器の点灯に続く黄信号の点灯時間を通過不可と判定することにより、上述したように運転者の焦りや違和感が軽減されるため、運転者の混乱を回避することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、矢灯器付き信号機が設置された交差点において、運転者の焦りや違和感を軽減し、運転者の混乱を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係わる運転支援装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した信号通過可否判定部により実行される信号通過可否判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】矢灯器付き信号機の一例を示す正面図である。
【図4】矢灯器付き信号機の信号サイクルの一例を示す図である。
【図5】図1に示した信号待ち時間通知制御部により実行される信号待ち時間通知制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】図1に示した信号通過可否判定部で得られた通過不可時間と同信号待ち時間通知制御部で得られた信号待ち時間との関係を示す図である。
【図7】本発明に係わる運転支援装置の他の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示した警告制御部により実行される警告制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】道路幅及び道路車線数が方向によって異なる交差点の一例を矢灯器付き信号機と共に示す図である。
【図10】矢灯器付き信号機において矢灯器が点灯するときに常時点灯状態となる方向を有する矢灯器の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1…運転支援装置、2…インフラ情報受信機(信号機情報取得手段、統計情報取得手段)、3…ナビゲーション(支援内容決定手段、統計情報取得手段、走行方向検出手段)、4…自車状態監視センサ(支援内容決定手段、走行方向検出手段)、6…ECU、7…信号通過可否判定部(信号機情報取得手段、通過可否判定手段)、8…信号待ち時間通知制御部(支援内容決定手段)、11…矢灯器付き信号機(交通信号機)、13…矢灯器、20…運転支援装置、22…ECU、23…警告制御部(支援内容決定手段)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係わる運転支援装置及び方法の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明に係わる運転支援装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。同図において、本実施形態の運転支援装置1は、交通信号機に関する信号機情報を利用して信号機での待ち時間(信号待ち時間)をドライバーに通知するシステムに適用されるものであり、車両に搭載されている。
【0027】
運転支援装置1は、インフラ情報受信機2と、ナビゲーション3と、自車状態監視センサ4と、表示部5と、ECU(Electronic Control Unit)6とを備えている。
【0028】
インフラ情報受信機2は、道路に設置されたインフラ装置(例えば光ビーコン)から送信されるインフラ情報を受信する機器である。インフラ情報としては、例えば交通信号機における信号機形態や信号サイクル等の信号機情報、道路の車線構成、道路幅や道路曲率等の道路情報が含まれている。
【0029】
ナビゲーション3は、GPS(全地球測位システム)を利用して自車両の現在位置を検出したり、内蔵メモリに記憶された道路地図情報から、自車両が走行している道路情報(上記と同様)を含む各種情報を取得する機器である。
【0030】
自車状態監視センサ4は、自車両の状態を監視するセンサである。具体的には、自車状態監視センサ4としては、自車両の車速を検出する車速センサ、ブレーキのON状態を検出するブレーキセンサ、ウィンカースイッチの操作状態を検出するウィンカーセンサ、ステアリングの操舵角を検出する操舵角センサ等がある。
【0031】
表示部5は、交通信号機での自車両の信号待ち時間情報を含む各種情報を表示する。表示部5は、メータ表示パネル等にあっても良いし、ナビゲーション3と一体化されていても良い。
【0032】
ECU6は、CPU、ROMやRAM等のメモリ、入出力回路等により構成されている。ECU6は、信号通過可否判定部7と、信号待ち時間通知制御部8とを有している。信号通過可否判定部7は、自車両が信号機を通過可能であるか否かを判定する。信号待ち時間通知制御部8は、信号通過可否判定部7により自車両が信号機を通過不可であると判定されたときに、自車両の信号待ち時間を決定して表示部5に表示させる。
【0033】
図2は、信号通過可否判定部7により実行される信号通過可否判定処理の手順を示すフローチャートである。同図において、まず変数iを0に初期設定し、変数jを1に初期設定し、変数kを1に初期設定する(手順S51)。
【0034】
続いて、インフラ情報受信機2により受信した信号機情報を取得する(手順S52)。信号機情報には、図3に示すような交通信号機の形態(矢灯器の有無及び数)や、図4に示すような信号サイクル(灯色順及び表示秒数)等が含まれている。
【0035】
図3に示す交通信号機11は、信号機本体(丸灯器)12と矢灯器13(ここでは2つ)とを有する矢灯器付き信号機である。図4に示す信号サイクルは、青信号点灯→黄信号点灯→赤信号一時(短時間)点灯→赤信号及び矢灯器点灯→黄信号点灯→赤信号一時(短時間)点灯→赤信号及び矢灯器点灯→黄信号点灯→赤信号点灯→青信号点灯…という構成となっている。なお、赤信号点灯は、赤信号の点灯時間が閾値(例えば4秒)以上の状態であり、赤信号一時(短時間)点灯は、赤信号の点灯時間が閾値未満の状態である。
【0036】
続いて、手順S52で取得された信号サイクルに含まれる赤信号(一時的に点灯する赤信号ではない通常の赤信号:以下、通常赤信号という)の数Nを抽出する(手順S53)。図4に示す信号サイクルでは、通常赤信号の数Nは2つである。
【0037】
続いて、通常赤信号が存在する(N>0)かどうかを判断し(手順S54)、通常赤信号が存在するときは、(N−i)番目の通常赤信号の前j番目の信号灯が青信号であるかどうかを判断する(手順S55)。(N−i)番目の通常赤信号の前j番目の信号灯が青信号でないときは、変数jをインクリメント、つまり変数jを1だけ加算し(手順S56)、手順S55に戻る。要は、通常赤信号の手前の信号灯が青信号になるまで、信号サイクルを後ろから順に辿っていく。図4に示す信号サイクルでは、1つ目の通常赤信号の手前8番目の信号灯が青信号となる。
【0038】
手順S55において(N−i)番目の通常赤信号の前j番目の信号灯が青信号であると判断されたときは、(N−i)番目の通常赤信号の前(j−k)番目の丸灯器の灯色が赤であるかどうかを判断する(手順S57)。(N−i)番目の通常赤信号の前(j−k)番目の丸灯器の灯色が赤でないときは、変数kをインクリメントし(手順S58)、手順S57に戻る。図4に示す信号サイクルでは、1つ目の通常赤信号の手前6番目(青信号の後ろ2番目)の一時点灯する赤信号が対象となる。
【0039】
手順S57において(N−i)番目の通常赤信号の前(j−k)番目の丸灯器の灯色が赤であると判断されたときは、下記式を用いて時間RN−1を算出する(手順S59)。この時間RN−1は、青信号の後に最初に赤信号になった時点から(N−i)番目の通常赤信号が終了するまでの時間である(図4参照)。
【0040】
【数1】

【0041】
続いて、変数iをインクリメントした(手順S60)後、変数iが通常赤信号の数Nと等しいかどうかを判断し(手順S61)、変数iが通常赤信号の数Nと等しくないときは、手順S55に戻る。
【0042】
変数iが通常赤信号の数Nと等しいときは、手順S59において算出された時間R1〜RNを通過不可時間とする(手順S62)。時間R1は、1つ目の通常赤信号に付随する通過不可時間であり、時間R2は、2つ目の通常赤信号に付随する通過不可時間である。
【0043】
一方、上記手順S54において通常赤信号が存在しないと判断されたときは、通過可能と判定する(手順S63)。
【0044】
図5は、信号待ち時間通知制御部8により実行される信号待ち時間通知制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0045】
同図において、まず自車状態監視センサ4(具体的には車速センサやブレーキセンサ)の検出値やナビゲーション3の情報に基づいて、先に取得した信号機情報に該当する交通信号機において自車両が信号通過可否判定部7で設定された通過不可時間内に停止したかどうかを判断する(手順S71)。
【0046】
自車両が通過不可時間内に停止したときは、図6(a)に示すように、自車両が停止した時点から、通過不可時間が終了する(青信号が点灯する)までの残り時間を表示部5に順次表示させる(手順S72)。これにより、自車両が停止してからの正確な信号待ち時間を自車両のドライバーに対して通知することができる。
【0047】
一方、自車両が通過不可時間内に停止しなかったときは、上記と同様にして自車両が信号通過可否判定部7で設定された通過不可時間が開始される前に停止したかどうかを判断する(手順S73)。
【0048】
自車両が通過不可時間が開始される前に停止したときは、図6(b)に示すように、通過不可時間になった時点から、通過不可時間が終了する(青信号が点灯する)までの残り時間を表示部5に順次表示させる(手順S74)。これにより、例えば信号機が青信号であるが、前方車両が停止しているために信号機を通過できないような場合でも、信号機が赤信号になった時点からの正確な信号待ち時間を自車両のドライバーに対して通知することができる。
【0049】
以上において、インフラ情報受信機2とECU6の信号通過可否判定部7における手順S52とは、交通信号機に関する信号機情報を取得する信号機情報取得手段を構成する。信号通過可否判定部7における手順S51,S53〜S63は、信号機情報に基づいて交通信号機の通過の可否を判定する通過可否判定手段を構成する。ナビゲーション3及び自車状態監視センサ4とECU6の信号待ち時間通知制御部8とは、通過可否判定手段の判定結果に基づいて運転支援内容を決定する支援内容決定手段を構成する。
【0050】
ところで、そのような信号待ち時間をドライバーに通知するシステムにおいて、赤信号が点灯している(赤信号及び矢灯器の点灯も含む)ときのみ、信号待ち時間(赤信号の残り時間)を通知する場合には、赤信号及び矢灯器の点灯状態に続く黄信号の点灯時には信号待ち時間が通知されないため、通知される時間が目まぐるしく変化し、ドライバーが混乱しやすくなる。また、赤信号及び矢灯器の点灯時には、その状態の残り時間が通知されるため、点灯中の矢灯器が示す方向に進もうとするドライバーにとっては通過できる時間がそのまま通知されることになり、ドライバーの焦り等を引き起こすことがある。
【0051】
また、赤信号及び矢灯器が点灯しているときに信号待ち時間を通知しない場合には、点灯中の矢灯器が示す方向に進まないドライバーにとっては赤信号と同等であるにもかかわらず、信号待ち時間が何故通知されないのか分からず、そのドライバーは違和感を感じて混乱しやすくなる。
【0052】
これに対し本実施形態では、純粋な赤信号の点灯時間だけでなく、赤信号及び矢印灯器の点灯時間及びそれに続く黄信号の点灯時間も通過不可であると判定し、その判定結果に基づいて青信号が点灯するまでの残り時間を信号待ち時間として通知するようにしたので、通知される信号待ち時間が目まぐるしく変化することが無い。また、点灯中の矢印灯器が示す方向に進もうとするドライバーの焦り等が抑制される。さらに、点灯中の矢印灯器が示す方向に進まないドライバーにとっては、信号待ち時間が通知されるため違和感を感じることが少ない。以上により、車両が矢灯器付き信号機を通過する際のドライバーの混乱を回避することができる。
【0053】
図7は、本発明に係わる運転支援装置の他の実施形態の構成を示すブロック図である。図中、上述した実施形態と同一または同等の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
同図において、本実施形態の運転支援装置20は、交通信号機に関する情報を利用して信号機を赤信号で進入しないようにドライバーに対して警告を行うシステムに適用されるものであり、車両に搭載されている。
【0055】
運転支援装置20は、上述した実施形態における表示部5及びECU6に代えて、警報器21及びECU22を備えている。ECU22は、上記の信号通過可否判定部7と、この信号通過可否判定部7の判定結果を用いて警報器21を制御する警告制御部23とを有している。
【0056】
図8は、警告制御部23により実行される警告制御処理の手順を示すフローチャートである。同図において、まずインフラ情報受信機2で受信した信号機情報に基づいて、信号通過可否判定部7で通過不可と判定された時間内に自車両が交通信号機を通過する可能性があるかどうかを判断する(手順S81)。信号通過可否判定部7で通過不可と判定された時間内に自車両が交通信号機を通過する可能性がないと判断されたときは、警報器21から警報音を発生させないようにする(手順S82)。
【0057】
一方、信号通過可否判定部7で通過不可と判定された時間内に自車両が交通信号機を通過する可能性があると判断されたときは、インフラ情報受信機2で受信した信号機情報に基づいて、矢灯器付き信号機において直進方向を示す矢灯器が点灯しているかどうかを判断する(手順S83)。
【0058】
直進方向を示す矢灯器が点灯していると判断されたときは、その直進方向を示す矢灯器の点灯時間は通過可であるとみなし、警報音を発生させないように警報器21を制御する(手順S82)。このとき、矢灯器付き信号機が複数の矢灯器を有している場合に限り、直進方向を示す矢灯器が点灯しているときに警報音を発生させないようにしても良い。また、信号機通過後の道路の車線数及び道路幅を考慮し、直進方向と他の方向とで車線数が同じで道路幅も大差無い場合に限り、直進方向を示す矢灯器が点灯しているときに警報音を発生させないようにしても良い。
【0059】
車両は交差点を直進方向に進むことが多いと考えられるが、直進方向を示す矢灯器の点灯時に警報音を発生させないようにすることで、直進方向に進もうとする多くの車両のドライバーに対して不要な警告を発生させなくて済む。
【0060】
手順S83において直進方向を示す矢灯器が点灯していないと判断されたときは、インフラ情報受信機2で受信した信号機情報を含むインフラ情報に基づいて、統計的に矢灯器付き信号機を通過する確率が予め設定された所定値よりも高い方向を示す矢灯器が点灯しているかどうかを判断する(手順S84)。
【0061】
矢灯器付き信号機を通過する確率が所定値よりも高い方向としては、信号機通過後において道路幅が最も広い道路の方向や車線数が最も多い道路の方向がある。例えば、図9に示す交差点においては斜め左方向が該当する。また、矢灯器付き信号機を通過する確率が所定値よりも高い方向としては、複数の矢灯器の少なくとも1つが点灯するときに常時点灯状態となる矢灯器が示す方向もある。例えば、図10に示す矢灯器付き信号機においては直進方向を示す矢灯器が該当する。さらに、矢灯器付き信号機を通過する確率が所定値よりも高い方向としては、青信号の点灯時間が無い矢灯器付き信号機において点灯時間が最も長い矢灯器が示す方向や、優先方向等が挙げられる。なお、道路幅及び車線数等は、ナビゲーション3の情報から取得しても良い。
【0062】
矢灯器付き信号機を通過する確率が所定値よりも高い方向を示す矢灯器が点灯していると判断されたときは、その方向を示す矢灯器の点灯時間は通過可であるとみなし、警報音を発生させないように警報器21を制御する(手順S82)。
【0063】
このように統計的に矢灯器付き信号機を通過する確率が高く、多くのドライバーが進む傾向にある方向を示す矢灯器の点灯時に警報音を発生させないようにすることで、その方向を進もうとする多くのドライバーに対して不要な警告を発生させなくて済む。
【0064】
手順S84において矢灯器付き信号機を通過する確率が所定値よりも高い方向を示す矢灯器が点灯していないと判断されたときは、インフラ情報受信機2で受信した信号機情報とナビゲーション3の情報や自車状態監視センサ4の検出値とに基づいて、矢灯器付き信号機において自車両の走行方向と一致する方向を示す矢灯器が点灯しているかどうかを判断する(手順S85)。
【0065】
自車両の走行方向としては、例えばナビゲーション3の経路案内方向、ナビゲーション3において過去の走行履歴で通過する回数の多い方向や自宅へ戻るルート方向、専用車線を有する道路を走行している場合における専用車線方向等がある。また、自車状態監視センサ4(具体的には、ウィンカーセンサや操舵角センサ)によりドライバーが右左折行動をとったことが検出されたときには、その方向が自車両の走行方向となる。このとき、ある距離や時間までに右左折行動が見られない場合には、直進方向を自車両の走行方向としても良い。
【0066】
自車両の走行方向と一致する方向を示す矢灯器が点灯していると判断されたときは、その方向を示す矢灯器の点灯時間は通過可であるとみなし、警報音を発生させないように警報器21を制御する(手順S82)。
【0067】
このように自車両が明らかに走行する方向と一致する方向を示す矢灯器の点灯時には警報音を発生させないようにすることで、その方向を進もうとする自車両のドライバーに対して不要な警告を発生させなくて済む。
【0068】
手順S85において自車両の走行方向と一致する方向を示す矢灯器が点灯していないと判断されたときは、警報音を発生させるように警報器21を制御する(手順S86)。つまり、信号通過可否判定部7で通過不可と判定された時間内に自車両が交通信号機を通過する可能性がある場合において、直進方向を示す矢灯器、統計的に矢灯器付き信号機を通過する確率が所定値よりも高い方向を示す矢灯器、自車両の走行方向と一致する方向を示す矢灯器の何れもが点灯していないときに、警報音を発生させるようにする。
【0069】
以上において、ECU22の警告制御部23は、通過可否判定手段の判定結果に基づいて運転支援内容を決定する支援内容決定手段を構成する。インフラ情報受信機2及びナビゲーション3は、交通信号機が設置されている交差点における車両の走行方向の統計情報を取得する統計情報取得手段を構成する。ナビゲーション3及び自車状態監視センサ4は、自車両の走行方向を検出する走行方向検出手段を構成する。
【0070】
以上のように本実施形態においては、純粋な赤信号の点灯時間だけでなく、赤信号及び矢灯器の点灯時間及びそれに続く黄信号の点灯時間も通過不可であると判定し、その判定結果に基づいて赤信号で交差点に進入する可能性のある車両のドライバーに対して警告するようにしたので、ドライバーが感じる違和感を軽減することができる。
【0071】
このとき、信号通過可否判定部7により通過不可であると判定されたとしても、直進方向を示す矢灯器が点灯している場合、統計的に信号機を通過する確率が所定値よりも高い方向を示す矢灯器が点灯している場合、自車両の走行方向と一致する方向を示す矢灯器が点灯している場合には、ドライバーに対する警告を行わないようにするので、ドライバーの違和感がより軽減され、ドライバーの運転感覚に合致した運転支援を行うことができる。
【0072】
以上により、車両が矢灯器付き信号機を通過する際のドライバーの混乱を回避することができる。
【0073】
なお、ドライバーに対する警告手段としては、特に上記の警報音には限られず、警告表示等であっても良い。
【0074】
以上、本発明に係る運転支援装置の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態は、運転支援装置を車両に搭載したものであるが、運転支援装置は、例えば路側のインフラ装置に設けられていても良い。この場合には、例えば路車間通信を用いて信号待ち時間を通知したり、警告を行うようにする。
【0075】
また、本発明の運転支援装置及び方法は、上述した信号待ち時間を通知するシステムや信号機を赤信号で進入しないように警告を行うシステム以外の運転支援システムにも適用可能であることは言うまでも無い。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、矢灯器付き信号機での運転者の混乱を回避することができる運転支援装置及び方法を提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも交通信号機に関する信号機情報を含むインフラ情報を受信するインフラ情報受信手段と、
前記信号機情報に基づいて前記交通信号機の通過の可否を判定する通過可否判定手段と、
前記通過可否判定手段の判定結果に基づいて運転支援内容を通知する支援内容通知手段とを備え、
前記通過可否判定手段は、前記交通信号機が矢灯器を有している場合には、前記矢灯器の点灯時間及び当該矢灯器の点灯に続く黄信号の点灯時間を通過不可と判定し、
前記支援内容通知手段は、前記通過可否判定手段により前記交通信号機を通過不可と判定された場合、直進方向を示す矢灯器が点灯しているときは、運転支援内容の通知を行わないようにすることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
自車両の走行方向を検出する走行方向検出手段を更に備え、
前記支援内容通知手段は、前記通過可否判定手段により前記交通信号機を通過不可と判定された場合でも、点灯している矢灯器が示す方向が前記走行方向検出手段により検出された前記自車両の走行方向と一致するときは、運転支援内容の通知を行わないようにすることを特徴とする請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記支援内容通知手段は、前記運転支援として運転者に対する警告を行わないようにすることを特徴とする請求項1又は2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記通過可否判定手段は、青信号の点灯が終了した後に最初に赤信号が点灯した時点から次の青信号の点灯直前の赤信号の点灯が終了する時点までを、通過不可時間と設定することを特徴とする請求項1記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記支援内容通知手段は、自車両が前記通過不可時間の範囲内で停止するときは、前記自車両が停止した時点から、前記通過不可時間が終了するまでの待ち時間を通知し、自車両が前記通過不可時間の範囲外で停止するときは、前記通過不可時間の開始時点から、前記通過不可時間が終了するまでの待ち時間を通知することを特徴とする請求項4記載の運転支援装置。
【請求項6】
少なくとも交通信号機に関する信号機情報を含むインフラ情報を受信するインフラ情報受信ステップと、
前記信号機情報に基づいて前記交通信号機の通過の可否を判定する通過可否判定ステップと、
前記通過可否判定ステップにおける判定結果に基づいて運転支援内容を通知する支援内容通知ステップとを含み、
前記通過可否判定ステップにおいては、前記交通信号機が矢灯器を有している場合には、前記矢灯器の点灯時間及び当該矢灯器の点灯に続く黄信号の点灯時間を通過不可と判定し、
支援内容通知ステップにおいては、前記通過可否判定ステップにおいて前記交通信号機を通過不可と判定された場合、直進方向を示す矢灯器が点灯しているときは、運転支援内容の通知を行わないようにすることを特徴とする運転支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−41624(P2013−41624A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−247580(P2012−247580)
【出願日】平成24年11月9日(2012.11.9)
【分割の表示】特願2010−532732(P2010−532732)の分割
【原出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】