説明

運転支援装置

【課題】2車両間で相互に協調した運転支援情報を出力する。
【解決手段】自車両Aで重要な警告度が解析された場合に、警告判断部33が送受信部37を介してその自車両解析警告度を含めた警告発信情報をその接触対象となる他車両に対して送信する。また逆に、送受信部37が近隣車両から当該自車両Aに対して送信された警告発信情報を受信した場合には、警告判断部33がその受信した警告発信情報に含まれる警告度と、自車両Aが解析した自車両解析警告度とを比較し、より接触可能性の高い方の警告度に対応した警告指示をディスプレイ12に表示させるよう判断する。これにより、自車両Aと特定の近隣車両との間で同じ程度に協調させた警告度をそれぞれほぼ同時に報知させることができ、相互に接触を回避させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車々間通信を利用して運転支援に関する情報を車両間で交換する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの車両の走行の安全性を向上すべく、情報通信を利用した高度道路交通システムの開発・整備が進められている。その一形態として、大規模なインフラを必要としない車々間通信による車々間協調システムが提案されている。この車々間通信は、車両どうしの間で車両情報を直接交換するための通信であり、主に無線通信が想定されている。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1には、車々間通信を利用して受信した他車両の現在位置と自車両の現在位置とに基づいて当該2車両間の相対的な位置関係を演算し、この位置関係と双方のドライバの運転技量等の情報に基づいて衝突判定を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−164315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような衝突判定は、当該2車両でそれぞれ同時に同じ判定がなされ、相互に衝突を回避できるようにすることが理想である。しかしながら、そのような衝突判定の解析には、各車両が搭載する車々間通信装置の機種の間におけるアルゴリズムの差やセンサの検出精度差などによる個別差が生じる場合がある。このため、一方の車両で衝突可能性が発生したと判定しても他方の車両ではまだ判定に至ってない状態が長く続く場合があり、一方の車両の回避行動だけでは十分に安全を確保できない恐れがある。そのため、2車両間で相互に協調した運転支援情報を出力できる技術が要望されていた。
【0006】
本発明が解決しようとする課題には、上記した問題が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、移動体に搭載されて運転者への運転支援を行う運転支援装置であって、当該運転支援装置が搭載される第1の移動体の走行状態に関する第1の状態情報を検出する検出手段と、前記第1の移動体とは異なる移動体である第2の移動体が検出して送信した、当該第2の移動体の走行状態に関する第2の状態情報を受信する第2の状態情報受信手段と、前記第2の移動体が解析して送信した、当該第2の移動体と前記第1の移動体との間の接触可能性に関する第2の警告度情報を受信する第2の警告度情報受信手段と、前記第1の状態情報と前記第2の状態情報とに基づいて、当該第1の移動体と前記第2の移動体との間の接触可能性に関する第1の警告度情報を解析する解析手段と、前記第2の警告度情報と前記第1の警告度情報とに基づいて前記第1の移動体の運転支援に関する前記運転支援情報を決定する決定手段と、前記決定手段が決定した前記運転支援情報を出力する出力手段と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】運転支援システムのハードウェア構成例を示すブロック図の一例である。
【図2】車両発信情報に含まれる情報の内容を表す図の一例である。
【図3】自車両が片側2車線の道路を走行している場合を想定する図の一例である。
【図4】図3の走行環境にある自車両が受信した車両発信情報と、自車両の車両情報とを記録し管理する車両情報管理テーブルの一例である。
【図5】車両情報管理テーブルの作成後に、接触可能性を解析してから運転者が接触を回避するよう操作するまでの流れを示す図の一例である。
【図6】自車両解析警告度と受信した警告発信情報の警告度の組み合わせから決まるドライバーに報知する警告度の内容の組み合わせを示す図である。
【図7】警告発信情報に含まれる情報の内容を表す図の一例である。
【図8】自車両の運転手に対して、後方追突に対する自車両判断の要注意の警告報知を行うディスプレイの表示の一例を示している。
【図9】自車両の運転手に対して、後方追突に対する自車両判断の要警告の警告報知を行うディスプレイの表示の一例を示している。
【図10】他車両の運転手に対して、前方追突に対する他車両判断の要警告の警告報知を行うディスプレイの表示の一例を示している。
【図11】自車両で要注意以上の警告度を解析した際に発信する場合の運転支援ユニットのCPUが実行する制御内容を表すフローチャートである。
【図12】自車両で要警告の警告度を解析した際にだけ発信する場合の運転支援ユニットのCPUが実行する制御内容を表すフローチャートである。
【図13】運転手の回避操作に基づく回避操作情報を送受信する場合の流れを示す図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る運転支援装置を備えた本実施形態の運転支援システム100のハードウェア構成例を示すブロック図の一例である。この運連支援システム100は、第1の移動体に相当する車両(以下において、自車両Aという)に搭載されるシステムである。この図1において、運転支援システム100は、運転支援ユニット11、ディスプレイ12、無線通信アンテナ13、車速センサ14、ブレーキスイッチ15、ウィンカースイッチ16、車載カメラ17、及びGPS18を有している。
【0011】
車両識別ユニット11は、CPU21、記憶装置22、グラフィックコントローラ23、及び無線通信制御部24を有している。
【0012】
CPU21は、所定のプログラムの動作によって各種の演算を行うとともに、他の各部との間で情報の交換や各種の制御指示を出力することで、ナビゲーション装置全体を制御する機能を有する。
【0013】
記憶装置22は、ROM22a、RAM22b、及び記憶媒体22cを有する。ROM22aは、各種の処理プログラムやその他必要な情報が予め書き込まれた情報記憶媒体である。RAM22bは、上記各種のプログラムを実行する上で必要な情報の書き込み及び読み出しが行われる情報記憶媒体である。記憶媒体22cは、例えばフラッシュメモリ、ハードディスクなどの不揮発性の情報記憶媒体である。
【0014】
グラフィックコントローラ23は、CPU21の制御によってビデオRAM(図示せず)及び上記GPS18などから画像データを取得し、この画像データに基づく画像信号を上記ディスプレイ12に表示させる機能を有する。
【0015】
無線通信制御部24は、後述の無線通信アンテナ13を介した無線通信による車々間通信で、他車両との情報の送受信を制御する機能を有する。
【0016】
ディスプレイ12は出力手段に相当し、例えばLCDパネルなどで構成されて、車両識別ユニット11のグラフィックコントローラ23から入力された画像信号に基づいて各種の情報画像を表示する機能を有する。
【0017】
無線通信アンテナ13は、自車両Aの室外に取り付けられ、無線通信制御部24から入力された情報信号の発信と、他車両から受信した情報信号の無線通信制御部24への出力を行う機能を有する。
【0018】
車速センサ14は検出手段に相当し、自車両Aの走行速度を検出する機能を有する。CPU21は、この車速センサ14の検出信号に基づき、その時点で自車両Aがどのくらいの走行速度で走行しているかを認識できる。
【0019】
ブレーキスイッチ15は検出手段に相当し、自車両Aのブレーキが所定量以上踏み込まれて作動状態に入っているか否か、つまり自車両Aが制動操作による減速中の状態であるか否かを検出する機能を有する。
【0020】
ウィンカースイッチ16は検出手段に相当し、自車両Aの右方向又は左方向いずれか一方のウィンカー操作の有無を検出する機能を有する。
【0021】
各車載カメラ17は検出手段に相当し、例えばCCD撮像素子などを利用して、上述した自車両Aからのそれぞれの撮像方向の風景画像を撮像し、対応する画像信号を車両識別ユニットのCPU21へ出力する機能を有する。
【0022】
GPS18は検出手段に相当し、自車両Aの現在地の測位を行い、緯度及び経度で表記した現在位置情報を取得するとともに、予め記憶している地図情報に基づいて所定の経路探索や経路誘導を行う機能を有する。
【0023】
本実施形態の運転支援システム100は、上記無線通信アンテナ13の通信可能範囲内に存在する他車両に対して、自車両Aの識別情報や走行状態に関する情報などを含めた車両発信情報を発信する。図2は、この車両発信情報に含まれる情報の内容を表す図の一例である。この図2に示す本実施形態の例では、車両発信情報は第1の状態情報に相当し、自車両IDと、自車両測位情報と、車両状態情報とを備えている。なお、この車両発信情報は、本実施形態の運転支援システム100を備える自車両Aにおいて、第1の走行情報の一つに相当する。
【0024】
自車両IDは移動体識別情報に相当し、当該車両発信情報を発信する自車両Aの個体を一意に識別可能な情報であり、本実施形態の例では登録ナンバーを用いている。
【0025】
自車両測位情報は第1の状態情報に相当し、上記GPS18によって検出された自車両Aの現在位置情報であり、この例では緯度と経度で表記された座標情報である。
【0026】
車両状態情報は第1の状態情報に相当し、自車両Aの現在の走行状態に関する情報であり、この例では、上記車速センサ14が検出した車両速度と、上記ブレーキスイッチ15が検出したブレーキ動作の有無と、上記ウィンカースイッチ16が検出したウィンカー動作の有無とが含まれている。
【0027】
本実施形態の運転支援システム100は、以上の内容の車両発信情報を、無線通信可能範囲内に存在する全ての車両に向けてブロードキャストで発信する。なお、上記車両状態情報の変化をリアルタイムで伝達できるよう、所定の短い時間間隔で発信し続ける。
【0028】
そして、本実施形態では、対象となる全ての車両が上述したものと同じ運転支援システム100を搭載しており、定常時の段階では、それぞれが対応する自車両IDを含んだ車両発信情報を一斉にブロードキャストで発信していることを前提とする。そのような車々間通信の環境において、自車両Aが搭載する運転支援システム100は、上述した自車両Aの車両発信情報を発信するとともに、無線通信アンテナ13の無線通信可能範囲内に存在する全ての車両の車両発信情報(他移動体走行情報及び第2の状態情報に相当)を受信する。そして、受信した他車両の自車両測位情報及び車両状態情報と、自車両Aの自車両測位情報及び車両状態情報とに基づいて特定の他車両との接触可能性を解析し、その解析結果に基づく警告度に応じて運転者への警告報知の要否とその内容を判断する。
【0029】
ここで、例えば図3に示すような片側2車線の道路に、自車両Aが走行している場合を想定する。上述した車々間通信では、無線通信可能範囲31が数十m〜数百mにも及ぶため、並列車線を走行する並行車両はもちろん、対向車線を走行する対向車も含めて多数の他車両から車両発信情報を受信する。上述した自車両Aの周囲における接触可能性を解析するには、受信した多数の車両発信情報のうちから自車両Aの前方、後方、及び側方などの近隣に位置する車両B,C,Dから発信された車両発信情報を特定する必要がある。そのために、受信した多数の車両発信情報のうちから、それぞれに含まれる自車両測位情報と自車両Aの自車両測位情報とを比較して、自車両Aから前方、後方、及び右斜め前方の相対位置に位置する近隣車両B,C,Dの車両発信情報を特定する。
【0030】
図4は、上記図3の走行環境にある自車両Aが受信した他車両の車両発信情報と、当該自車両Aの車両情報とを記録し管理する車両情報管理テーブルの一例を示している。この図4において、車両情報管理テーブルは、受信順序を示すNo.と、自車両IDと、自車両測位情報と、相対位置と、相対距離と、接触可能性の種別と、車両状態情報と、自車両解析警告度の項目を有している。
【0031】
自車両IDの項目は、各車両発信情報に含まれる自車両IDを記録しており、この例では上述したように登録ナンバーで表記されている。自車両測位情報の項目は、No.に対応する車両発信情報に含まれる自車両測位情報を記録しており、この例では上述したように緯度と経度で表記されている。相対位置の項目は、自車両Aの自車両測位情報と、各車両発信情報に含まれる自車両測位情報との比較に基づいて、対応する車両発信情報が自車両Aのどの相対位置にある他車両から発信されたものであるかを示す(後に詳述する)。相対距離の項目は、自車両Aの自車両測位情報と、各車両発信情報に含まれる自車両測位情報から算出したそれらの間の相対的な距離を示す。接触可能性の種別の項目は、上記相対位置に対応して自車両Aとどのような態様で接触する可能性があるかの種別を示す(後に詳述する)。車両状態情報の項目は、各車両発信情報に含まれる車両状態情報を記録しており、この例では上述したように車両速度、ブレーキ作動有無、ウィンカー作動有無が記録される。自車両解析警告度の項目は、自車両Aと近隣車両B,C,Dとの接触可能性を解析した結果から、運転者にどの程度の重要度で警告をすべきかの指標を示す(後に詳述する)。
【0032】
なお、上記の相対位置の判定については、GPS18で検出した自車両Aの現在の進行方位や走行中の車線の方位を考慮し、受信した各車両発信情報の自車両測位情報が示す現在位置が自車両Aの現在位置から見てどの方向に位置しているかを判定すればよい。図示する例では、自車両Aに接触する可能性のある近隣車両B,C,Dの車両発信情報だけを特定して網掛け表示で示している。
【0033】
また、接触可能性の種別については、基本的には上記相対位置に対応して一意的に設定できる内容であるが、相対位置によっては複数の種別で設定される場合もある。例えば、右斜め前方に位置する他車両に対しては、側方接触の可能性以外にも、急な車線変更であったり、カーブ車線上において当該他車両と自車両Aのいずれかがオーバーステアリング又はアンダーステアリングすることで前方追突する可能性もある。
【0034】
次に、それら近隣車両B,C,Dの車両発信情報に含まれる車両状態情報と、自車両Aの車両状態情報とに基づいて、自車両Aとそれら近隣車両B,C,Dとの接触可能性を解析し、運転者にどの程度の重要度で警告をすべきかの指標となる自車両解析警告度を判定する。この例では上記図4に示すように、自車両Aと近隣車両B,C,Dとの間のそれぞれの接触可能性の種別ごとに、重要度の低い順から安全、要注意、要警告の3段階で判定する。なお、この自車両解析警告度が、第1の警告度情報に相当する。
【0035】
図5は、上記図4の車両情報管理テーブルを作成した後に、本実施形態の運転支援システム100を備えた自車両Aにおいて、接触可能性を解析してから運転者が接触を回避するよう操作するまでの流れを示す図の一例である。なお、図中の警告度解析部32、警告判断部33、及び送受信部37は、運転支援ユニット11が備えるCPU21が実行する処理のソフトウェアブロックである。
【0036】
この図5において、まず最初に基本的な流れについて説明する。まず、上記車速センサ14、ブレーキスイッチ15、ウィンカースイッチ16、車載カメラ17、及びGPS18などからなるセンサ31が、自車両Aの走行状態に関する各状態パラメータを検出する。次に警告度解析部32が、それら検出された状態パラメータに基づいて、各近隣車両B,C,Dの各接触可能性の種別ごとに現在どの程度重要な警告度に相当するかを解析する。次に警告判断部33が、その解析結果である自車両解析警告度に基づいて、最終的にどの警告度に対応した警告指示をディスプレイ12に表示させるか判断する。ディスプレイ12は、警告判断部33が判断した警告指示に対応する警告表示を表示し、運転者35に対して警告報知する。この警告報知を見た運転者35は、当該警告報知が報知する接触可能性の種別とその警告度に応じて、自車両Aの周囲に注意を払ったり、その接触を回避すべく自車両Aのステアリング、ブレーキ、及びウィンカーなどの運転操作部36を操作する。
【0037】
ここで、上記警告度解析部32における警告度の解析の手法については、多様な手法を用いることが想定される。例えば、自車両Aと後方車両Cとの間の後方追突の種別に対応する警告度の解析だけでも、単に車間距離の長短だけで警告度を判定する手法もあれば、車間距離の長短に加えて両車両間の相対速度を考慮する手法も考えられる。また、各解析式に用いる係数と閾値の設定や、センサ31における検出精度にも幅がある。
【0038】
このように、警告度の解析手法におけるアルゴリズムや解析精度には多様性があり、その解析結果としての警告度についてもその内容の切り替わるタイミングや精度に大きな差が生じる場合がある。つまり、全ての車両が搭載する運転支援システムがいずれも基本構成までが同じであっても、メーカーやモデルによって採用する解析手法やセンサ31の違いによって同時刻に判定される警告度が異なる場合がある。
【0039】
各車両の運転支援システムでそれぞれ独自に接触可能性に対する警告度の解析と報知を行うことで、最低限の安全性を確保することは可能である。しかし2車両間での接触を理想的に回避するには、それぞれ独自の判断による警告報知ではなく当該2車両でそれぞれ同時に同じ判断に基づく警告報知がなされ、相互に接触を回避できるようにすることが望ましい。
【0040】
そこで本実施形態の運転支援システム100では、なんらかの接触可能性があると判断され、その判断に対応する警告度が生成された場合には、図示するように、警告判断部32が送受信部37を介してその自車両解析警告度を含めた警告発信情報をその接触対象となる他車両に対して送信する。たとえば、図4の例では重要度の低い順から安全、要注意、要警告の3段階で判定するが、要注意または要警告の判定を行ったときにその自車両解析警告度を含めた警告発信情報をその接触対象となる他車両に対して送信する。あるいは、要注意を超えて要警告となるほど重要な警告度が判定された場合にのみ、その自車両解析警告度を含めた警告発信情報をその接触対象となる他車両に対して送信することでもよい。また逆に、送受信部37が近隣車両から当該自車両Aに対して送信された警告発信情報(第2の走行情報及び第2の警告度情報に相当)を受信した場合には、警告判断部33がその受信した警告発信情報に含まれる警告度と、自車両Aが解析した自車両解析警告度とに基づいて、どの程度の警告度に対応した警告指示をディスプレイ12に表示させるか最終的に判断する。
【0041】
このとき本実施形態の例では、警告判断部33が、受信した警告発信情報の警告度と、自車両解析警告度とを比較し、より接触可能性の高い方の警告度に対応した警告指示をディスプレイ12に表示させるよう判断する。つまり、接触可能性のある2車両間でそれぞれ独自に接触可能性の警告度を解析し判断するが、それらのうちより接触可能性の高い判断の方を優先的に採用するというルールに基づいて警告報知を行う。これにより、自車両Aと特定の近隣車両との間で同じ程度に協調させた警告度をそれぞれほぼ同時に報知させることができ、相互に接触を回避させることができる。たとえば図4の例の要注意または要警告の判定を行ったときにその自車両解析警告度を含めた警告発信情報をその接触対象となる他車両に対して送信するとした場合、図6のようなテーブルに基づいて採用する判断を決定する。また、要注意を超えて要警告となるほど重要な警告度が判定された場合にのみ、その自車両解析警告度を含めた警告発信情報をその接触対象となる他車両に対して送信するとした場合の採用する判断の決定方法については、図12に示し、説明は後述する。なお、この場合に送受信部37が他車両との間で行う警告発信情報の送受信は、上記車両発信情報の場合のブロードキャスト発信とは異なり、接触可能性のある特定の1台の近隣車両との間で個別に送受信する。
【0042】
図7は、警告発信情報に含まれる情報の内容を表す図の一例である。この図7に示す本実施形態の例では、警告発信情報は、受信先車両IDと、送信元車両IDと、警告指示情報とを備えている。
【0043】
受信先車両IDは、当該警告発信情報の送り先となる他車両の車両識別情報である。つまり上記図4の車両情報管理テーブルにおいて要警告の警告度に解析された接触可能性のある車両発信情報の自車両ID(登録ナンバーなど)である。
【0044】
送信元車両IDは、当該警告発信情報の送信元となる自車両Aの車両識別情報である。つまり自車両Aの自車両ID(登録ナンバーなど)である。
【0045】
警告指示情報は、上記受信先車両IDの他車両と自車両Aとの間における接触可能性の警告度を示す情報である。図示する例では、上記図4の車両情報管理テーブルにおいて、当該警告発信情報の送り先となる他車両の車両発信情報に対応づけて記録された接触可能性の種別と警告度(要警告)の内容を含んでいる。
【0046】
なお、当該警告発信情報と上記車両発信情報は、それぞれのヘッダなどに両情報を区別できる識別情報を含んでいることで、どの車両も各情報を受信した際に異なる態様で処理できる。そして本実施形態の運転支援システム100は、上記の内容の警告発信情報を、無線通信可能範囲内に存在する全ての他車両に向けて発信する。この警告発信情報を受信した他車両では、それに含まれる受信先車両IDが当該他車両の車両IDと一致するものだけ採用し、一致しないものは破棄する。つまり、車両発信情報の場合のブロードキャスト発信とは異なり、警告発信情報の場合は特定の1台の他車両にだけ個別に送信できる。
【0047】
このようにして警告発信情報を受信した車両の運転支援システムでは、警告判断部33がその受信した警告発信情報に含まれる警告指示情報の警告度(要警告)と、当該自車両Aで解析した自車両解析警告度とを比較し、より接触可能性の高い方の警告度に対応した警告指示をディスプレイ12に表示させるよう判断する。なお、この警告指示の内容が、運転支援情報に相当する。
【0048】
例えば、上記図3に示すように、自車両Aの後方に位置する他車両Cが、自車両Aに接近したとする。この場合には他車両Cの接近に伴って、自車両Aのディスプレイ12の表示が、例えば図8に示すような要注意の自車両解析警告度に対応した警告報知から、例えば図9に示すような要警告の自車両解析警告度に対応した警告報知に切り替わる。このように自車両Aで要警告の警告報知に切り替わった際には、同時に車両Aから他車両Cに要警告の警告度を判定したことを通知(送信)する。このとき後方の他車両Cのディスプレイにおいて何ら警告報知していない場合もしくは特に図示しない要注意に対応した警告報知の最中であっても、他車両Cは、より接触可能性の高い方の警告度判定を受信することによって、他車両Cにおいても例えば図10に示すような要警告に対応した警告報知に切り替えられる。
【0049】
図示する例では、それぞれの警告報知の表示において、その警告の判断が自車両Aによるものか他車両によるものかを明示しており、運転者はこのような判断元についての情報を参照することでもまた回避操作を行う上での根拠の一助にできる。なお、警告報知の混乱を避けるために、このような判断元の情報を表示せず、自車両判断と他車両判断の区別ができないようにしてもよい。
【0050】
図11は、以上説明した動作態様を実現するために、運転支援ユニット11のCPU21が実行する制御内容を表すフローチャートの一例である。なお、このフローは、当該運転支援システム100に電源が入っている間に、例えば適宜の時間間隔で呼び出されて実行を開始する。
【0051】
図11において、まずステップS5において、上記GPS18により自車両Aの現在地の測位を行って現在位置情報を取得し、これを自車両測位情報として検出する。
【0052】
ステップS10へ移り、上記の車速センサ14、ブレーキスイッチ15、及びウィンカースイッチ16から、それぞれ車両速度、ブレーキ作動有無、及びウィンカー作動有無を検出し、これらをまとめて自車両Aの車両状態情報として検出する。
【0053】
ステップS15へ移り、上記記憶媒体22cなどに記憶していた当該自車両Aの登録ナンバーを自車両IDとして取得する。
【0054】
ステップS20へ移り、上記ステップS5、S10、S15で検出した自車両測位情報、車両状態情報、及び自車両IDを併せて自車両Aの車両発信情報とし、これを無線通信アンテナ13から発信する。なお、このステップS20の手順が、第1の状態情報送信手段及び上記図5の送受信部37に相当する。
【0055】
ステップS25へ移り、今度は逆に無線通信アンテナ13を介してその無線通信可能範囲31内に存在する他車両から発信された全ての車両発信情報を受信する。なお、このステップS25の手順は、第2の状態情報受信手段及び上記図5の送受信部37に相当する。
【0056】
ステップS30へ移り、上記ステップS20で発信した自車両Aの車両発信情報と、上記ステップS25で受信した全ての他車両の車両発信情報に基づいて、上記図4に示した車両情報管理テーブルを作成する。
【0057】
ステップS35へ移り、自車両Aと各他車両のそれぞれの測位情報の比較により、自車両Aの近隣に位置する近隣車両とその相対位置に対応する接触可能性の種別を特定し、車両情報管理テーブルに記録する。
【0058】
ステップS40へ移り、上記ステップS35で特定された近隣車両と自車両Aとの間の接触可能性の種別ごとに、その接触可能性がどの程度の警告度に相当するかを自車両Aと近隣車両のそれぞれの車両状態情報等に基づいて解析する。その解析結果は、自車両解析警告度として車両情報管理テーブルに記憶する。なお、このステップS40の手順は、解析手段、及び上記図5における警告度解析部32に相当する。
【0059】
ステップS45へ移り、上記ステップS40で解析した自車両解析警告度のうち、実際にディスプレイ12で警告報知を表示する必要のあるものがあるか否かを判定する。具体的には、上記ステップS35で特定した接触可能性の種別のうちのいずれかにおいて、自車両A自身で解析した自車両解析警告度が要注意以上の警告度に該当するものが一つでもあるか否かを判定する。警告報知が必要な警告度の接触可能性の種別が一つもない場合、判定は満たされず、ステップS50へ移る。なお、このステップS45の手順が、決定手段及び上記図5における警告判断部33に相当する。
【0060】
ステップS50では、無線通信アンテナ13を介してその無線通信可能範囲31内に存在する他車両から発信された全ての警告発信情報を受信する。なお、このステップS50の手順は、第2の警告度情報受信手段及び上記図5の送受信部37に相当する。
【0061】
ステップS55へ移り、上記ステップS50で受信した警告発信情報に含まれている受信先車両IDが、自車両Aの自車両IDと一致しているか否かを照合する。つまり、受信した警告発信情報が自車両A宛てに送信されたものであるかを照合する。なお、このステップS55の手順は、第2の警告度情報受信手段及び上記図5の送受信部37に相当する。
【0062】
ステップS60へ移り、上記ステップS55の照合において、受信先車両IDが自車両Aの自車両IDと一致している警告発信情報があったか否かを判定する。受信先車両IDが自車両Aの自車両IDと一致している警告発信情報がなかった場合、判定は満たされず、ステップS5へ戻って同様の手順を繰り返す。なお、このステップS60の手順が、第2の警告度情報受信手段及び上記図5の送受信部37に相当する。
【0063】
一方、上記ステップS45の判定において、警告報知が必要な警告度の接触可能性の種別が一つでもあった場合、判定が満たされ、ステップS65へ移る。
【0064】
ステップS65では、車両情報管理テーブルにおいて、自車両解析警告度が要警告となっている近隣車両の車両IDを受信先車両IDとして取得する。
【0065】
ステップS70へ移り、上記ステップS65で取得した受信先車両IDと併せて、自車両Aの車両IDを送信元車両IDとし、また要注意もしくは要警告となっている自車両解析警告度とそれに対応する接触可能性の種別を含めて警告指示情報として、警告発信情報を生成する。そしてこの警告発信情報を、無線通信アンテナ13を介して無線通信可能範囲内に存在する全ての他車両に送信する。なお、このステップS70の手順が、第1の警告度情報送信手段及び上記図5の送受信部37に相当する。
【0066】
ステップS75では、上記ステップS45で警告報知が必要と判定された自車両解析警告度の内容が要警告であるか否かを判定する。警告報知が要注意であった場合、判定は満たされず、上記ステップS50へ移る。これは、本例では警告報知における要注意は最上位(もっとも危険な(もっとも接触可能性の高い)状況を示す)レベルではないので、他車両からの警告報知を取得し他車両がより上位(もっと危険な状況を示す)レベルの警告報知を行っていないかを確認する必要があるからである。なお、このステップS75の手順が、決定手段及び上記図5における警告判断部33に相当する。
【0067】
一方、警告報知が要警告であった場合、判定が満たされ、ステップS80へ移る。これは、本例では警告報知における要警告は最上位(もっとも危険な状況を示す)レベルであるので、自車両が最上位である要警告の警告報知を行った場合は他車両からの警告報知を取得するまでもなく自車両解析警告度に基づく内容の警告指示を自車両判断のものとしてディスプレイ12に表示してよいからである。
【0068】
ステップS80へ移り、自車両解析警告度に基づく内容の警告指示を自車両判断のものとしてディスプレイ12に表示する。そして、上記ステップS5に戻って同様の手順を繰り返す。
【0069】
また一方、上記ステップS60の判定において、受信先車両IDが自車両Aの自車両IDと一致している警告発信情報が一つでもあった場合、判定が満たされ、ステップS85へ移る。
【0070】
ステップS85では、上記ステップS60で車両IDが照合一致すると判定された警告発信情報に含まれている警告指示情報の警告度と、その警告発信情報に含まれている送信元車両IDに対応して自車両A自身で解析した自車両解析警告度とを、同じ接触可能性の種別で比較する。
【0071】
ステップS90へ移り、上記ステップS85の比較において、受信した警告発信情報に含まれている警告度の方が、自車両A自身で解析した自車両解析警告度よりも重要度が高いか否かを判定する。自車両A自身で解析した警告度の方が受信した警告度より高い場合、判定は満たされず、上記ステップS80へ移り、自車両解析警告度に基づく内容の警告指示を自車両判断のものとしてディスプレイ12に表示する。そして、上記ステップS5に戻って同様の手順を繰り返す。なお、このステップS90の手順が、決定手段及び上記図5における警告判断部33に相当する。
【0072】
一方、受信した警告度の方が自車両A自身で解析した警告度より高い場合、判定が満たされ、ステップS95へ移る。
【0073】
ステップS95では、受信した警告発信情報の警告度に基づく内容の警告指示を他車両判断のものとしてディスプレイ12に表示する。そして、上記ステップS5に戻って同様の手順を繰り返す。
【0074】
以上説明したように、上記運転支援システム100においては、車両(移動体に相当)に搭載されて運転者への運転支援を行う運転支援システム100(運転支援装置に相当)であって、当該運転支援システム100が搭載される自車両A(第1の移動体に相当)の走行状態に関する車両発信情報(第1の状態情報に相当)を検出する車速センサ14、ブレーキスイッチ15、ウィンカースイッチ16、車載カメラ17、及びGPS18(検出手段に相当)と、前記自車両Aとは異なる移動体である他車両(第2の移動体に相当)が検出して送信した、当該他車両の走行状態に関する車両発信情報(第2の状態情報に相当)を受信するステップS25の手順(第2の状態情報受信手段に相当)と、前記他車両が解析して送信した、当該他車両と前記自車両Aとの間の接触可能性に関する警告発信情報(第2の警告度情報に相当)を受信するステップS50、S55、S60の手順(第2の警告度情報受信手段に相当)と、前記自車両Aの車両発信情報と前記他車両の車両発信情報とに基づいて、当該自車両Aと前記他車両との間の接触可能性に関する自車両解析警告度(第1の警告度情報に相当)を解析するステップS40の手順又は警告度解析部32(解析手段に相当)と、ステップS50、S55、S60の手順で他車両から受信した警告発信情報とステップS40又は警告度解析部32で自車両Aにおいて解析した自車両解析警告度とに基づいて自車両Aの運転支援に関する警告指示(運転支援情報に相当)を決定するステップS45、S75、S90の手順又は警告判断部33(決定手段に相当)と、前記警告判断部33が決定した前記警告指示を出力するディスプレイ12(出力手段に相当)と、を有する。
【0075】
このようにすると、自車両Aが搭載する運転支援システム100は、車両発信情報及び警告発信情報を送受信して交換し合う当該自車両Aと他車両との間の走行に関する関係性を客観的に解析することができ、それに対応したこの例の運転支援情報である警告指示を決定することができる。またこれは、自車両Aと車両発信情報及び警告発信情報を送受信して交換し合っている他車両においても同様の運転支援情報を決定できる。これは、必要要件ではないが、特に自車両Aと他車両がおなじ決定基準を持っていればより確実にそうなる。また、自車両Aと他車両が異なった決定基準を持っていたとしても、それぞれの決定基準(警告度レベル)をマッチングさせるテーブルを持つことで、あるいはそれぞれの決定基準(警告度レベル)を示す言葉のもつ一般的な意味の比較から、自車の決定基準に読み替えることが出来る。このようにして、2車両間がそれぞれ独自の解析による運転支援情報ではなく、双方が同じ状況判断に基づくことで相互に協調した警告指示等の運転支援情報を出力でき、2車両間における多様な走行関係の異常に対して理想的に協調した回避動作が可能となる。
【0076】
さらに、自車両Aが搭載する運転支援システム100は、自車両Aで検出した車両発信情報と受信した他車両の車両発信情報のそれぞれに含まれる車両測位情報と車両状態情報に基づいて、独自の解析手法で当該2車両間の接触可能性の自車両解析警告度を解析し、それを含んだ警告発信情報を生成する。そして、その自車両解析警告度と、他車両が解析して自車両Aが受信した警告発信情報に含まれる警告度とに基づいて警告指示の内容を決定するため、相互に協調した警告指示の内容とすることができる。
【0077】
また本実施形態では、警告発信情報が単に警告度の内容に関する情報を伝えるだけであり、警告判断部33がそれに基づく警告指示の内容をディスプレイ12に表示して運転者に対し警告報知するだけであったが、本発明はこれに限られない。例えば、警告発信情報が単に警告度の内容に関する情報に加えて、その警告度の内容を運転者に報知するのに適した具体的な報知内容あるいは報知表現の情報を含んでもよい。報知内容あるいは報知表現の情報とは、運転者に報知する文章あるいは画像、音声ファイルなどである。その場合には、その警告発信情報の警告度を採用した場合には、警告判断部33が警告発信情報に含まれる運転者への報知用の文章あるいは画像、音声ファイルなどをそのまま表示あるいは再生することでもよい。
【0078】
上述した構成に加えてさらに、当該自車両Aの走行状態に関する車両発信情報を他車両へ送信するステップS20の手順(第1の状態情報送信手段に相当)と、自車両解析警告度を含む警告発信情報を他車両へ送信するステップS70(第1の警告度情報送信手段に相当)と、を有する。
【0079】
このようにすると、自車両Aが搭載する運転支援システム100は、自車両Aで検出した車両発信情報と、自車両Aで独自の解析手法により解析した自車両解析警告度を含んだ警告発信情報とを他車両に送信する。これにより、他車両においても、当該他車両で解析した警告度と、自車両Aで解析して他車両が受信した警告発信情報に含まれる警告度とに基づいて警告指示の内容を決定できるため、他車両においても自車両とおなじ(レベルの)警告度に基づくことができ、他車両における警告指示の内容も相互に協調したものにできる。
【0080】
なお、他車両から自車両に対し要注意の警告度を含めた警告発信情報を受信した場合に、自車両がその警告発信情報を基に要注意よりも高い警告度(本例では要警告)を判断した場合にはその他車両に対し自車両で判断した警告度を含めた警告発信情報を送信してもよい。あるいは、他車両から自車両に対し要注意の警告度を含めた警告発信情報を受信した時点で、自車両がその車両に対しより高い警告度(本例では要警告)を判断していたがその判断を含めた警告発信情報を未送信であった場合にはその他車両に対し自車両で判断した警告度を含めた警告発信情報を送信してもよい。
【0081】
また、自車両Aから他車両に向けて警告発信情報を送信するタイミングについては、自車両解析警告度が解析されてからすぐに送信する以外にも、例えば解析後に所定時間が経過してもなお対象の他車両に回避動作が見られない場合に初めて警告発信情報を送信するようにしてもよい。所定時間については、例えば1秒などの決まった時間であったり、または状況に応じて変化させてもよい。このようにすることで、車両間の判断タイミングがわずかに遅れているだけである場合には、他車両判断での警告指示の頻度を大きく低減できる。
【0082】
また、上記実施形態では、要注意または要警告の判定を行ったときにその自車両解析警告度を含めた警告発信情報をその接触対象となる他車両に対して送信していたが、本発明はこれに限られない。例えば、要注意を超えて要警告の警告度が判定された場合にだけ警告発信情報を他車両に送信するようにしてもよい。この場合には、上記図11に対応する図12に示すようなフローが実行される。上記図11のフローと図12のフローとが相違する点は、ステップS45の手順の代わりにステップS45Aの手順を実行し、ステップS75の手順を省略している点である。この図12のフローを実行することにより、警告発信情報(要警告のみ)を受信した車両はその時点で自車両解析警告度が安全、要注意であっても、強制的に要警告まで警告度が引き上げられる。つまり、2車両間のいずれかが最も重大な要警告の警告度を判定した際に初めて警告指示を協調し、相互に接触を回避させることができる。
【0083】
また、接触対象の他車両と個別に送受信する情報は、警告発信情報に限られない。例えば、上記図5に対応する図13に示すように、自車両Aが解析した自車両解析警告度に対応する警告指示の内容でディスプレイ12に警告報知を表示し、それを見て対応した運転手の回避操作の内容を運転操作部36で検出する。つまりこの検出された回避操作情報は、運転手の技量や判断も加味された判断情報である。自車両Aがこの回避操作情報を含んだ回避発信情報を警告発信情報に代えてあるいは加えて発信し、これを受信した他車両の警告判断部33が回避操作情報も考慮して最終的な警告指示の内容を判断してもよい。
【0084】
上述した構成に加えてさらに、警告判断部33は、他車両が解析した警告度と自車両Aが解析した自車両解析警告度とを比較し、いずれか一方を警告指示の内容として決定する。
【0085】
このようにすると、2つの警告度のいずれか一方を選択的に決定するだけでよいので、迅速な警告指示の決定が可能となる。
【0086】
上述した構成に加えてさらに、警告判断部33は、他車両が解析した警告度と自車両Aが解析した自車両解析警告度のうちより接触可能性の高い方を警告指示の内容として決定する。
【0087】
このようにすると、自車両Aと他車両との間で確実に同じ警告度を選択でき、最も安全な方の警告指示の内容を決定できる。つまり、自車両Aと他車両が、それぞれ最も安全かつ最も協調された警告指示で、相互に接触を回避させることができる。
【0088】
なお、警告判断部33は、他車両が解析した警告度と自車両Aが解析した自車両解析警告度のうち安全以外の状態を示すものであって且つ、どちらか先に受信あるいは生成された方を警告指示の内容として決定してもよい。このように、安全以外の警告度(要注意、要警告)の自車両解析警告度又は警告発信情報を解析又は受信した車両がその警告度をそのまま警告指示とすることで、迅速な警告指示を報知できる。
【0089】
なお、本実施形態では警告度が3段階で評価されていたが、安全と要警告の2段階だけの場合もありうる。この場合には、安全の状態から外れた場合にすぐ要警告の警告度を示す警告発信情報が送信される。このようにすると、警告発信情報を受信した側の車両では、警告度の比較を行うまでもなく先に判断された要警告の警告度を優先して採用する。車両事故は一瞬で発生するものであるため、いずれの車両の判断であっても安全支援機能が下した判断であるから、より早い判断に従ってできるだけ速やかに回避操作を行えるようにした方が車両事故を防ぐことができる。
【0090】
上述した構成に加えてさらに、自車両Aと他車両がそれぞれ送信する車両発信情報と警告発信情報には、それぞれ送信する車両の個体を識別可能な車両ID(移動体識別情報に相当)を含んでおり、ステップS50、S55、S60、S70の手順は、車両IDで特定した他車両と送受信する。
【0091】
このようにすると、当該自車両Aと接触する可能性のない車両からの警告発信情報を無視することができ、迅速に必要な警告指示の内容を決定できる。
【0092】
なお、送受信相手の他車両の特定は上記車両IDに限られず、例えば各車両が備えるGPSに高い検出精度を期待できる場合には、当該他車両が発信する車両発信情報に含まれる自車両測位情報(移動体測位情報に相当)を用いてもよい。この場合には、上記図2に示した車両発信情報において自車両IDが不要となり、上記図7に示した警告発信情報において受信先車両IDの代わりに送受信相手の測位情報を、送信元車両IDの代わりに自車両Aの測位情報を用いればよい。そして上記ステップS50、S55、S60の照合判定や、ステップS65、S70の送信において、車両IDの代わりに移動誤差分を考慮した各測位情報を用いればよい。このようにすると、その時点で自車両Aとの相対位置関係だけで1台の他車両を特定できるため、一元管理された車両IDを用いる必要がない。
【0093】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0094】
(1)警告発信情報を受信した車両側で再検討する場合
上記実施形態では、自車両Aで解析した自車両解析警告度と、他車両から受信した警告発信情報に含まれる警告度とを比較して、単純に接触可能性の高い方を選択して自車両Aにおける警告指示の内容を決定していたが、本発明はこれに限られない。例えば、自車両解析警告度と受信した警告度とをそれぞれもっと具体的な解析根拠まで比較して、より信頼性の高い方の警告度を選択するようにしてもよい。この場合には、警告発信情報に、当該警告度を解析した際に用いた解析手法のアルゴリズムを表す解析式や、係数、閾値などの各種設定パラメータを解析情報として添付して送受信してもよい。
【0095】
例えば、自車両Aと接触対象の他車両のそれぞれの警告度の解析手法(解析式)が同じであり、その解析手法に用いる車間距離や相対速度などの状態パラメータの数や種類に差がなく、係数や閾値などの設定パラメータの差だけで先に一方の警告度が高くなっていたような場合には、その結果による警告度の変化の時間差を問題とせずにそのまま当該車両で解析した警告度を採用してもよい。
【0096】
また例えば、自車両Aと接触対象の他車両のそれぞれの警告度の解析手法(解析式)が大きく異なるものであり、より多くの状態パラメータを用いて解析している解析手法の方がより信頼性の高い警告度を解析するであろうとの予測の元に警告度を採用してもよい。もしくは信頼性の高い方の解析手法を用いて警告度を再解析してもよい。
【0097】
以上説明したように、上記運転支援システム100においては、自車両Aと他車両がそれぞれ発進する警告発信情報にはそれぞれを解析した根拠となる解析情報が含まれており、各警告度のそれぞれの解析情報の比較に基づいて警告指示の内容を決定する。
【0098】
このようにすると、自車両Aでは判断に加えてない判断材料も併せて他車両が判断していた場合には、他車両の判断の方がより適切である可能性があるものとして採用し、より確実に接触を回避するべくより警告度が高いとする判断の方を優先して警告できる。
【0099】
なお、上記の解析情報に、CPUの性能や各センサの検出精度も含めてそれらも信頼性の比較材料としてもよい。また、上記図13に示した場合のように運転者の判断も反映した回避操作情報を送受する場合には、その根拠情報として当該運転者の運転年数、事故件数、又は具体的な技量評価値などの情報を含めて信頼性の比較材料としてもよい。また、警告発信情報を受信した自車両Aが最終的に選択、決定した警告度や警告指示の内容を、上記警告発信情報を送信した他車両へ返信してもよい。これにより、警告発信情報を送信した側の他車両でも、自車両Aの警告状況を確認できる。
【0100】
また、上記図4の車両情報管理テーブルとはまた別に、同一の他車両からその時点までに受信した全ての車両発信情報、つまり同一の自車両IDを含む車両発信情報をまとめて時系列的に並べて管理する車両別車両情報管理テーブルを作成してもよい(特に図示せず)。この車両別車両情報管理テーブルは、少なくとも各近隣車両を含めた他車両にそれぞれ対応して作成すればよい。このような車両別車両情報管理テーブルを作成することで、対応する他車両の加減速、走行方位、及び転舵方向を自車両Aで検出できる。
【0101】
また、上記実施形態及び変形例では、警告度の内容として「安全」以外に「要注意」と「要警告」の2段階の警告の指標を設けていたが、本発明はこれに限られない。例えば警告度の内容を「安全」、「状態変化あり」、「要注意」、及び「要警告」といったように、警告の指標を3段階以上設けてもよい。この場合には、どの段階で警告発信情報を送信するかを予め設定しておく必要がある。
【0102】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0103】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0104】
11 運転支援ユニット
12 ディスプレイ(出力手段に相当)
13 無線通信アンテナ
14 車速センサ(検出手段に相当)
15 ブレーキスイッチ(検出手段に相当)
16 ウィンカースイッチ(検出手段に相当)
17 車載カメラ(検出手段に相当)
18 GPS(検出手段に相当)
21 CPU
22 記憶装置
23 グラフィックコントローラ
24 無線通信制御部
31 センサ
32 警告度解析部(解析手段に相当)
33 警告度判定部(決定手段に相当)
35 運転者
36 運転操作部
37 送受信部
100 車両識別システム(運転支援装置に相当)
A 自車両(第1の移動体に相当)
B,C,D 近隣車両(第2の移動体に相当)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されて運転者への運転支援を行う運転支援装置であって、
当該運転支援装置が搭載される第1の移動体の走行状態に関する第1の状態情報を検出する検出手段と、
前記第1の移動体とは異なる移動体である第2の移動体が検出して送信した、当該第2の移動体の走行状態に関する第2の状態情報を受信する第2の状態情報受信手段と、
前記第2の移動体が解析して送信した、当該第2の移動体と前記第1の移動体との間の接触可能性に関する第2の警告度情報を受信する第2の警告度情報受信手段と、
前記第1の状態情報と前記第2の状態情報とに基づいて、当該第1の移動体と前記第2の移動体との間の接触可能性に関する第1の警告度情報を解析する解析手段と、
前記第2の警告度情報と前記第1の警告度情報とに基づいて前記第1の移動体の運転支援に関する前記運転支援情報を決定する決定手段と、
前記決定手段が決定した前記運転支援情報を出力する出力手段と、
を有することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
さらに前記運転支援装置は、
前記第1の状態情報を前記第2の移動体へ送信する第1の状態情報送信手段と、
前記第1の警告度情報を前記第2の移動体へ送信する第1の警告度情報送信手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記第2の警告度情報と前記第1の警告度情報とを比較し、いずれか一方を前記運転支援情報として決定することを特徴とする請求項1又は2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記第2の警告度情報と前記第1の警告度情報のうちより接触可能性の高い方を前記運転支援情報として決定することを特徴とする請求項3記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記第2の警告度情報と前記第1の警告度情報のうち、安全以外の状態を示すものであって且つ、どちらか先に受信あるいは生成された方を前記運転支援情報として決定することを特徴とする請求項3記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記第2の警告度情報と前記第1の警告度情報にはそれぞれを解析した根拠となる解析情報が含まれており、
前記決定手段は、前記第2の警告度情報と前記第1の警告度情報のそれぞれの解析情報の比較に基づいて前記運転支援情報を決定することを特徴とする請求項3記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記第1の状態情報と前記第2の状態情報にはそれぞれ送信する移動体の個体を識別可能な移動体識別情報が含まれており、
前記第1の警告度情報送信手段と前記第2の警告度情報受信手段は、前記移動体識別情報で特定した第2の移動体と送受信することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記第1の状態情報と前記第2の状態情報にはそれぞれを送信する移動体の現在位置を示す移動体測位情報が含まれており、
前記第1の警告度情報送信手段と前記第2の警告度情報受信手段は、前記移動体測位情報で特定した第2の移動体と送受信することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−97571(P2013−97571A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239716(P2011−239716)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】