説明

運転支援装置

【課題】運転者の運転をより適切に支援することができる運転支援装置を提供すること。
【解決手段】車両の運転を支援する運転支援装置であって、車速センサで検出した現車速、位置算出部で算出した車両と信号機が配置された信号機地点との相対位置情報およびインフラ通信部で取得した信号サイクルとの情報に基づいて、現車速で走行した場合に信号機地点に到達する到着タイミングを検出し、到着タイミングが、信号機が通過可能な表示ではない状態から信号機が通過可能な表示である状態に切り替わるよりも閾値時間前から信号機が通過可能な表示である状態から信号機が通過可能な表示ではない状態に切り替わってから閾値時間経過後までの間にある場合、信号機が配置された信号機地点を前記車両が通過できる速度域を目標車速域として決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両には、運転者による運転を支援する運転支援装置を搭載しているものがある。例えば、特許文献1から特許文献3には、車両の走行状態および信号機の状態に基づいて、交差点を適切に通行できるように走行の支援を行う運転支援装置が記載されている。例えば、特許文献1には、赤信号から青信号への変化後の青信号経過時間、青信号の継続時間、走行位置、及び通行量情報の各々に基づいて走行速度を算出する走行速度算出部を備える車載器が記載されている。また、特許文献2には、車両の前方の交通信号の表示が切り替わるタイミングに応じて車速を制御する車速制御装置が記載されている。また、特許文献3には、特定地点通過時から一定時間毎に交差点を青信号無停止で通過するための推奨走行速度voptを算出してその時点での自車走行速度vと比較し、v>voptなる場合は、推奨走行速度voptでの走行を、またv≦voptなる場合は、現状走行速度vでの走行を、各々次の推奨走行速度算出までの間行う交差点無停止走行制御方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−220332号公報
【特許文献2】特開2010−247703号公報
【特許文献3】特開2010−33203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に記載の装置は、推奨走行速度の表示を行うことで、運転者に信号機が設置されている地点を無停止で通過できる走行条件を通知することができる。また、特許文献3に記載の装置は、推奨走行速度で走行するように制御することで、信号機が設置されている地点を無停止で通過しやすくなる。
【0005】
ここで、特許文献1から特許文献3に記載の装置は、各種条件に基づいて、信号機の通過タイミングを算出し、推奨される車速を算出しているが、算出結果に基づいて走行を行っても快適に信号機を通過できない場合がある。
【0006】
本発明の目的は、運転者の運転をより適切に支援することができる運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両の運転を支援する運転支援装置であって、前記車両の走行速度を検出する車速センサと、前記車両の走行方向に配置された信号機の表示が切り替わるサイクルである信号サイクルの情報を取得するインフラ通信部と、前記車両と前記信号機との相対位置情報を算出する位置算出部と、前記車速センサで検出した現車速、前記位置算出部で算出した前記車両と前記信号機が配置された信号機地点との相対位置情報および前記インフラ通信部で取得した信号サイクルとの情報に基づいて、前記現車速で走行した場合に前記信号機地点に到達する到着タイミングを検出し、前記到着タイミングが、前記信号機が通過可能な表示である場合、または、前記信号機が通過可能な表示ではない状態であり、かつ、前記信号機が通過可能な表示ではない状態に切り替わってからの経過時間が閾値時間以内である場合、前記信号機が配置された信号機地点を前記車両が通過できる速度域を目標車速域として決定する目標車速制御部と、前記目標車速制御部で決定した前記目標車速域を表示する目標車速表示部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明は、車両の運転を支援する運転支援装置であって、前記車両の走行速度を検出する車速センサと、前記車両の走行方向に配置された信号機の表示が切り替わるサイクルである信号サイクルの情報を取得するインフラ通信部と、前記車両と前記信号機との相対位置情報を算出する位置算出部と、前記車速センサで検出した現車速、前記位置算出部で算出した前記車両と前記信号機が配置された信号機地点との相対位置情報および前記インフラ通信部で取得した信号サイクルとの情報に基づいて、前記現車速で走行した場合に前記信号機地点に到達する到着タイミングを検出し、前記到着タイミングが、前記信号機が通過可能な表示である場合、または、前記信号機が通過可能な表示ではない状態であり、かつ、前記信号機が通過可能な表示である状態に切り替わるまでの時間が閾値時間以内である場合、前記信号機が配置された信号機地点を前記車両が通過できる速度域を目標車速域として決定する目標車速制御部と、前記目標車速制御部で決定した前記目標車速域を表示する目標車速表示部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記目標車速制御部は、前記到着タイミングが、前記信号機が通過可能な表示ではない状態であり、かつ、前記信号機が通過可能な表示である状態に切り替わるまでの時間が閾値時間以内である時間帯である場合、当該前記信号機が通過可能な表示である状態に切り替わった後に、前記信号機が配置された信号機地点を前記車両が通過できる速度域を目標車速域として決定することが好ましい。
【0010】
また、前記目標車速制御部は、前記到着タイミングが、前記信号機が通過可能な表示である状態から前記信号機が通過可能な表示ではない状態に切り替わってから閾値時間経過前から前記信号機が通過可能な表示ではない状態から前記信号機が通過可能な表示である状態に切り替わるよりも閾値時間後までの間にある場合、当該信号機で停止することを推奨する停止支援を行うことを決定することが好ましい。
【0011】
また、前記目標車速制御部は、前記位置算出部で算出した前記車両と前記信号機が配置された信号機地点との距離が長いほど前記閾値時間を長くし、前記位置算出部で算出した前記車両と前記信号機が配置された信号機地点との距離が短いほど前記閾値時間を短くすることが好ましい。
【0012】
また、前記目標車速制御部は、前記信号機が通過可能な表示ではない状態から前記信号機が通過可能な表示である状態に切り替わって閾値時間経過した後から、前記信号機が通過可能な表示である状態から前記信号機が通過可能な表示ではない状態に切り替わるよりも閾値時間前までの間に前記信号機が配置された信号機地点を前記車両が通過できる速度域を前記目標車速域として算出することが好ましい。
【0013】
また、前記目標車速制御部は、前記信号機が通過可能表示状態である間に前記信号機が配置された信号機地点を前記車両が通過できる速度域を前記目標車速域として算出することが好ましい。
【0014】
本発明は、車両の運転を支援する運転支援装置であって、前記車両の走行速度を検出する車速センサと、前記車両の走行方向に配置された信号機の表示が切り替わるサイクルである信号サイクルの情報を取得するインフラ通信部と、前記車両と前記信号機との相対位置情報を算出する位置算出部と、前記位置算出部で算出した前記車両と前記信号機が配置された信号機地点との相対位置情報および前記インフラ通信部で取得した信号サイクルとの情報に基づいて、前記信号機が通過可能であると判定した場合、前記信号機が通過可能な表示ではない状態から前記信号機が通過可能な表示である状態に切り替わって閾値時間経過した後から、前記信号機が通過可能な表示である状態から前記信号機が通過可能な表示ではない状態に切り替わるよりも閾値時間前までの間に前記信号機が配置された信号機地点を前記車両が通過できる速度域を目標車速域として決定する目標車速制御部と、前記目標車速制御部で決定した前記目標車速域を表示する目標車速表示部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる運転支援装置は、運転者の運転をより適切に支援することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本実施形態の運転支援システムの一例を示す説明図である。
【図2】図2は、実施形態にかかる運転支援装置が搭載された車両の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、表示装置の速度表示領域の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、運転支援装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、運転支援装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、通過判定の判定処理の一例を説明するための説明図である。
【図7】図7は、表示装置の速度表示領域の一例を示す模式図である。
【図8】図8は、表示装置の速度表示領域の一例を示す模式図である。
【図9】図9は、目標車速域の決定処理の一例を説明するための説明図である。
【図10】図10は、表示装置の速度表示領域の一例を示す模式図である。
【図11】図11は、運転支援装置の処理の他の例を示すフローチャートである。
【図12】図12は、表示装置の速度表示領域の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態にかかる運転支援装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0018】
(実施形態)
図1から図8を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、運転支援装置が搭載された車両を有する運転支援システムに関する。まず、図1から図3を用いて、運転支援装置が搭載された車両を有する運転支援システムの構成について説明する。図1は、本実施形態の運転支援システムの一例を示す説明図である。図2は、実施形態にかかる運転支援装置が搭載された車両の概略構成を示すブロック図である。図3は、表示装置の速度表示領域の一例を示す模式図である。
【0019】
図1に示す運転支援システム1は、複数の車両10と、複数の信号機12、12aと、複数のインフラ情報送信装置14と、GPS衛星16と、を有する。運転支援システム1は、複数の車両10のうち、後述する運転支援装置19を搭載する車両10が、他の車両10との関係を検出したり、インフラ情報送信装置14やGPS衛星16から取得したりすることで得た情報に基づいて運転者の運転を支援するシステムである。
【0020】
車両10は、道路を走行可能な車両、例えば自動車、トラック等である。車両10は、信号機12、12aが配置された道路を走行することができる。車両10の構成については後ほど説明する。
【0021】
信号機12、12aは、交差点に配置された灯火装置である。信号機12は、緑色、黄色、赤色の3色の灯火部を備えている。また、信号機12aは、緑色、黄色、赤色の3色の灯火部に加え、矢印を表示する灯火部(矢灯器)を備えている。信号機12、12aは、道路の車両の走行方向のそれぞれに配置されている。信号機12は、緑色、黄色、赤色の3色の灯火部のうち、発光させる灯火部を切り替えることで、当該道路の車両10の走行方向を車両10が通過してよい状態であるか、車両10が通過不可の状態、つまり停止すべき状態であるか、を示している。なお、図1に示す運転支援システム1は、信号機12、12aを交差点に配置した場合を示しているが、信号機12、12aの配置位置は交差点に限定されない。信号機12、12aは、例えば、横断歩道に対して配置してもよい。なお、図1では、信号機12、12aを灯火部の表示が全て見える状態で示しているが、信号機12、12aは、灯火部が進行方向の車両10(当該信号機12、12aを通過する車両)に見える向きで配置されている。
【0022】
インフラ情報送信装置14は、車両10が走行する道路の道路情報や、車両10の走行方向前方の信号機12、12aに関する信号情報等のインフラ情報を送信する。本実施形態のインフラ情報送信装置14は、交差点毎に配置されており、周囲の一定範囲を走行する車両10に対して無線通信でインフラ情報を送信する。ここで、道路情報は、典型的には、車両10が走行する道路の制限速度情報、交差点の停止線位置情報等を含む。信号情報は、典型的には、信号機12、12aの青信号、黄信号、赤信号の点灯サイクルや信号変化タイミング等の信号サイクル情報を含む。なお、インフラ情報送信装置14は、信号機12、12a毎に設けてもよいし、複数の交差点に1つ設けてもよい。
【0023】
GPS衛星16は、GPS(GPS:Global Positioning System、全地球測位システム)による位置検出に必要なGPS信号を出力する衛星である。運転支援システム1は、図1で1つのGPS衛星16のみを示したが、少なくとも3つのGPS衛星16を備えている。GPSにより位置を検出する装置は、少なくとも3つのGPS衛星16から出力されるGPS信号を受信し、受信したGPS信号を比較することで、自機の位置を検出する。
【0024】
次に、図2を用いて、運転支援装置19を搭載している車両10について説明する。なお、図1に示す運転支援システム1は、全ての車両を、運転支援装置19を搭載している車両10としたが、少なくとも1つの車両10が運転支援装置19を搭載していればよい。つまり、運転支援システム1は、運転支援装置19を搭載している車両10の前後に運転支援装置19を搭載していない車両が走行してもよい。
【0025】
車両10は、ECU20と、記憶部22と、アクセルアクチュエータ24と、ブレーキアクチュエータ26と、カーナビゲーション装置28と、スピーカ30と、GPS通信部32と、車載カメラ34と、インフラ通信部38と、車速センサ40と、表示装置42と、を有する。なお、車両10のECU20と、記憶部22と、アクセルアクチュエータ24と、ブレーキアクチュエータ26と、カーナビゲーション装置28と、スピーカ30と、GPS通信部32と、車載カメラ34と、インフラ通信部38と、車速センサ40と、表示装置42と、は、車両10の運転支援装置19ともなる。また、車両10は、上述した各部以外にも車両が一般的に備えている各部、車体、駆動源、ブレーキ装置、操作部(例えばハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダル)等を備えている。
【0026】
ECU20は、電子制御ユニットであり、車両10の各部、アクセルアクチュエータ24、ブレーキアクチュエータ26、カーナビゲーション装置28、スピーカ30、GPS通信部32、車載カメラ34、インフラ通信部38、車速センサ40および表示装置42等を制御する。ECU20は、GPS通信部32、車載カメラ34、インフラ通信部38および車速センサ40で取得した情報や、図示を省略したアクセルペダル、ブレーキペダル等の各種操作部から入力された運転者等の操作に基づいて、各部の動作を制御する。また、ECU20は、目標車速制御部20aを有する。目標車速制御部20aについては、後述する。
【0027】
記憶部22は、メモリ等の記憶装置であり、ECU20での各種処理に必要な条件やデータ、ECU20で実行する各種プログラムが記憶されている。また、記憶部22は、地図情報データベース22aが記憶されている。地図情報データベース22aは、車両の走行に必要な情報(地図、直線路、カーブ、登降坂、高速道路、サグ、トンネルなど)が記憶されている。また、地図情報データベース22aは、地図データファイル、交差点データファイル、ノードデータファイル、道路データファイルを備えている。ECU20は、地図情報データベース22aを参照して、必要な情報を読み出す。
【0028】
アクセルアクチュエータ24は、エンジン、モータ等の車両10の動力源の出力を制御するものである。アクセルアクチュエータ24は、例えば、エンジンへの吸気量、吸気タイミングや発火タイミング、モータの供給する電圧値、周波数等を制御することができる。アクセルアクチュエータ24は、ECU20に電気的に接続され、ECU20により動作が制御される。ECU20は、アクセル制御信号に応じてアクセルアクチュエータ24を作動し、エンジンへの吸気量、吸気タイミングや発火タイミング、モータの供給する電圧値、周波数を調整する。言い換えれば、アクセルアクチュエータ24は、動力源による駆動力を自動制御するための装置であり、ECU20から出力されるアクセル制御信号を受信して各部を駆動させることで駆動条件を制御し所望とする駆動力を発生させる。このようにしてアクセルアクチュエータ24は、車両10に作用する駆動力を制御することで、加速度を調節する。
【0029】
ブレーキアクチュエータ26は、車両10に搭載されたブレーキ装置の駆動を制御するものである。ブレーキアクチュエータ26は、例えば、ブレーキ装置に設けられるホイールシリンダの油圧を制御する。ブレーキアクチュエータ26は、ECU20に電気的に接続され、ECU20により動作が制御される。ECU20は、ブレーキ制御信号に応じてブレーキアクチュエータ26を作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。言い換えれば、ブレーキアクチュエータ26は、ブレーキによる制動力を自動制御するための装置であり、ECU20から出力されるブレーキ制御信号を受信してホイールシリンダに作動油を供給する機構のソレノイドやモータなどを駆動させることでブレーキ油圧を制御し所望とする制動力を発生させる。このようにしてブレーキアクチュエータ26は、車両10に作用する制動力を制御することで、減速度を調節する。
【0030】
カーナビゲーション装置28は、車両10を所定の目的地に誘導する装置である。カーナビゲーション装置28は、ECU20と双方向の通信が可能である。カーナビゲーション装置28は、表示部を備えており、地図情報データベース22aに記憶されている情報や、後述するGPS通信部32で取得した現在位置の情報に基づいて、周辺の地図情報を表示部に表示する。また、カーナビゲーション装置28は、地図情報データベース22aに記憶されている情報と、後述するGPS通信部32で取得した現在位置の情報と、運転者等により入力された目的地の情報とから目的地までの経路を検出し、検出した経路情報を表示部に表示させる。なおカーナビゲーション装置28は、地図情報データベース22aとGPS通信部32とは別に自機に地図情報データベースとGPS通信部とを備え、自機の各部を用いて経路案内や、現在地情報の通知を行うようにしてもよい。
【0031】
スピーカ30は、車両10の車内に音声を出力するものである。スピーカ30は、ECU20から送信される音声信号に対応する音声を車内に出力する。
【0032】
GPS通信部32は、複数のGPS衛星16から出力されるGPS信号をそれぞれ受信するものである。GPS通信部32は、受信したGPS信号をECU20に送る。ECU20は、受信した複数のGPS信号を解析することで、自機の位置情報を検出する。
【0033】
車載カメラ34は、車両10の前方に配置された撮影機器であり、車両10の前方(進行方向前側)の画像を取得するものである。車載カメラ34は、取得した車両10の前方の画像をECU20に送る。ECU20は、車載カメラ34が取得した画像を解析することで、車両10の前方の状態、つまり、前方に他の車両10がいるか、信号機12、12aは近いか、交差点は近いか等の情報を取得することができる。
【0034】
インフラ通信部38は、上述したインフラ情報送信装置14と無線で通信するものである。インフラ通信部38は、インフラ情報送信装置14から送信されたインフラ情報を取得し、取得したインフラ情報をECU20に送信する。インフラ通信部38は、通信可能なインフラ情報送信装置14と常に通信を行い、インフラ情報を取得してもよいし、一定時間間隔でインフラ情報送信装置14と通信を行い、インフラ情報を取得してもよいし、新たなインフラ情報送信装置14と通信可能となった場合に当該インフラ情報送信装置14と通信を行い、インフラ情報を取得してもよい。
【0035】
車速センサ40は、車両10の車速を検出するものである。車速センサ40は、取得した車速の情報をECU20に送信する。
【0036】
表示装置42は、運転者に通知する各種情報を表示する表示装置であり、例えば車両10のダッシュボードに配置されたインストルメントパネルである。表示装置42は、液晶表示装置であってもよいし、各種計器を配置した表示装置であってもよい。表示装置42は、燃料の残量や、駆動源の出力(エンジン回転数)、ドアの開閉状態、シートベルト着用の状態等の情報を表示する。表示装置42は、車速を表示する速度表示領域48を備える。
【0037】
速度表示領域48は、図3に示すように、目盛り表示部50と、針52と、を有する。目盛り表示部50は、円弧形状であり、0km/hから160km/hまでの目盛りを有する。針52は、計測結果の車速を指すものであり、図3では40km/hを指している。速度表示領域48は、アナログメータであり、現在の車速に合わせて、針52が指す目盛り表示部50の位置が変化する。これにより、運転者は、速度表示領域48の針52の位置を確認することで、現在の車速の検出結果を認識することができる。
【0038】
次に、ECU20の目標車速制御部20aで実行する制御について説明する。目標車速制御部20aは、車両10の各部で取得した情報に基づいて、対象の信号機地点を通過できるかを判定し、通過できると判定した場合、当該対象の信号機地点を通過できる速度範囲を目標車速域(目標速度域)として決定し、決定した目標車速域を表示装置42の速度表示領域48に表示させる。具体的には、目標車速制御部20aは、インフラ通信部38で取得した通過対象の交差点や横断歩道に配置された信号機12、12aの点灯サイクルや信号変化タイミング等の信号サイクル情報、車両10と当該信号機12、12aとの距離(正確には、当該信号機12、12aが配置された交差点や横断歩道(通過対象となる領域、信号機地点)までの距離)車速センサ40で検出した現車速の情報等の情報に基づいて、当該信号機12、12aが青信号の間に(つまり信号機が通過可能表示状態の間に)通過することができるか判定する。目標車速制御部20aは、対象の信号機が通過できるとは判定した場合、当該信号機12、12aが青信号の間に(つまり信号機が通過可能表示状態の間に)通過するために必要な走行速度の範囲(目標車速域)を算出する。目標車速制御部20aは、当該信号機12、12aが青信号の間に通過するために必要な走行速度の範囲(この場合基準目標車速域)と現車速(現在の車速)とを比較しその比較結果に基づいて、目標車速域を決定してもよい。目標車速制御部20aは、算出した目標車速域(推奨する走行速度の範囲)を速度表示領域48に表示させる。目標車速制御部20aは、このようにして、車両10が赤信号で停止する回数をより低減することができるように運転者に車速の誘導を行う制御である、グリーンウェーブ支援を行う。なお、信号機が通過可能表示状態であるとは、信号機が対象の経路の通過が可能であることを示す表示を実行している状態であり、青信号の表示に限定されず、矢灯器を表示している状態も含む。また、設定により黄信号を表示している状態も信号機が通過可能表示状態であるとすることができる。
【0039】
以下、図4から図8を用いて、車両10のECU20の目標車速制御部20aで実行する制御についてより詳細に説明する。図4および図5は、運転支援装置の処理の一例を示すフローチャートである。図6は、通過判定の判定処理の一例を説明するための説明図である。図7および図8は、それぞれ表示装置の速度表示領域の一例を示す模式図である。
【0040】
ECU20の目標車速制御部20aは、ステップS12としてグリーンウェーブ支援が可能であるかを判定する。具体的には、目標車速制御部20aは、目標車速域を算出するために必要な情報が取得できている状態で、かつ目標車速域を表示可能な条件を満たしているかを判定する。なお、目標車速域を算出するために必要な情報としては、上述した通過対象の信号機12、12aの点灯サイクルや信号変化タイミング等であるインフラ情報、車両10と当該信号機12、12aとの距離の算出に必要な現在位置の情報や、信号機12、12aの位置情報を含む地図情報である。また、目標車速域を表示可能な条件としては、車両10と信号機12、12aとの距離(対象の交差点等までの距離)が一定距離以上であること、また、車両10の現在の車速が一定速度以上であること等である。目標車速制御部20aは、車両10と信号機12、12aとの距離(対象の交差点等までの距離)が一定距離未満の場合、目標車速域を表示しても運転者がその表示に対応して運転を行うことが困難であるため、グリーンウェーブ支援を行わないと判定する。また、車速制御部20aは、車両10の現在の車速が一定速度未満の場合、走行している道が渋滞していて走行速度が制限される、また何らかの理由で停止しようとしているまたは停止している等である可能性が高く、目標車速域を表示しても運転者がその表示に対応して運転を行うことが困難であるため、グリーンウェーブ支援を行わないと判定する。目標車速制御部20aは、ステップS12で支援可能ではない(No)、つまり支援できないと判定した場合、本処理を終了する。
【0041】
また、目標車速制御部20aは、ステップS12で支援可能である(Yes)と判定した場合、ステップS14として通過停止判定を行う。以下、図5および図6を用いて、通過停止判定の処理について説明する。なお、図5では、説明を簡単にするため、信号機の灯色が青の場合を信号機が通過可能な表示である場合とし、信号機の灯色が赤の場合を信号機が通過可能な表示ではない、つまり信号機の表示が信号機地点を通過できない表示である場合とする。
【0042】
目標車速制御部20aは、図5に示すようにステップS30として、信号サイクルを取得する。つまり、目標車速制御部20aは、判定の対象となる信号機、通常、次に通過する信号機の信号サイクルを取得する。ここで、信号サイクルとは、信号機の赤、青、黄色等の表示が切り替わるタイミングの情報である。目標車速制御部20aは、ステップS30で信号サイクルを取得したら、ステップS32として、現車速で対象の信号機到着時の信号状況Sを予測する。具体的には、車両10と対象の信号機12、12a、正確には信号機が配置された信号機地点となる交差点や横断歩道との距離と現車速に基づいて、信号機に到着する時点を予測し、予測した時点と信号サイクルの情報とに基づいて、予測した時点における信号サイクルの状況を信号状況Sとして予測する。ここで、信号状況Sは、到着時の信号の灯色、表示している灯色の表示時間(表示してからの経過時間)、次の灯色に切り替わるまでの時間(表示している灯色の残時間)を含む。
【0043】
目標車速制御部20aは、ステップS32で到着時の信号状況Sを予測したら、ステップS34として、予測到着時の灯色=赤であるか、つまり信号状況Sが赤信号であるかを判定する。目標車速制御部20aは、ステップS34で灯色が赤ではない(No)と判定した場合、ステップS38に進む。
【0044】
目標車速制御部20aは、ステップS34で灯色が赤である(Yes)と判定した場合、ステップS36として、赤の設定時間−到着後の赤の残時間<T2であるかを判定する。つまり、目標車速制御部20aは、灯色である場合、到着時において、信号機の灯色が赤になってからの経過時間がT2よりも短いかを判定する。目標車速制御部20aは、ステップS36で赤の設定時間−到着後の赤の残時間<T2である(Yes)と判定した場合、ステップS38に進む。
【0045】
目標車速制御部20aは、ステップS34でNo、またはステップS36でYesと判定された場合、つまり、予測到着時の信号機の灯色が青の場合、または、予測到着時の信号機の灯色が赤でかつ信号機の灯色が赤になってからの経過時間がT2よりも短い場合、ステップS38として、予測到着時と比べ、同じ又は1つ前の青信号に対して通過支援を可能と判定する。具体的には、目標車速制御部20aは、予測到着時の信号の灯色が青の場合、予測到着時に表示されている青信号で通過することができると判定する。目標車速制御部20aは、予測到着時の信号の灯色が赤でかつ信号機の灯色が赤になってからの経過時間がT2よりも短い場合、予測到着時に表示されている赤信号の前に表示されている青信号で通過することができると判定する。目標車速制御部20aは、ステップS38で通過支援可能と判定したら、本処理、つまりステップS14の通過停止判定を終了する。
【0046】
また、目標車速制御部20aは、ステップS36で赤の設定時間−到着後の赤の残時間<T2ではない(No)と判定した場合、ステップS40として、予測到着後の赤の残時間<T1であるかを判定する。つまり、目標車速制御部20aは、灯色である場合、到着時において、信号機の灯色が赤から次の灯色(通過可能な灯色、基本的には青)に変わるまでに必要な時間がT1よりも短いかを判定する。目標車速制御部20aは、ステップS40で予測到着後の赤の残時間<T1である(Yes)と判定した場合、ステップS42として、予測到着時と比べ、1つ後の青信号に対して通過支援を可能と判定する。具体的には、目標車速制御部20aは、予測到着時の信号の灯色が赤でかつ信号機の灯色が青に変わるまでの残り時間がT1よりも短い場合、予測到着時に表示されている赤信号の次に表示されている青信号で通過することができると判定する。目標車速制御部20aは、ステップS42で通過支援可能と判定したら、本処理、つまりステップS14の通過停止判定を終了する。
【0047】
目標車速制御部20aは、ステップS40で予測到着後の赤の残時間<T1ではない(No)と判定した場合、ステップS44として停止支援と判定する。目標車速制御部20aは、ステップS44で停止支援と判定したら、本処理、つまりステップS14の通過停止判定を終了する。
【0048】
次に、図6を用いて、図5に示す通過停止判定の処理と、予測到着時の信号機の灯色との関係について説明する。図6に示す信号サイクル70は、予測到着時の信号機の灯色を示している。信号サイクル70は、灯色が青から黄に切り替わり、黄から赤に切り替わり、赤から青に切り替わる。なお、図5に示す処理では、黄信号は、青信号に含まれるものとする。目標車速制御部20aは、図5に示す処理で通過停止判定を行うことで、予測到着時が、領域72または領域76である場合、通過支援を行うと判定し、予測到着時が、領域74である場合、停止支援を行うと判定する。ここで、領域72は、灯色が青、黄である場合と、灯色が赤になってからの時間が時間T2未満の場合とを含む。また、領域76は、灯色が赤で灯色が赤から青に切り替わるまでの残り時間が時間T1より短い場合と、当該灯色が赤から切り替わった青の場合を含む。また、領域74は、灯色が赤で、灯色が赤になってからの時間が時間T2以上であり、灯色が赤から青に切り替わるまでの残り時間が時間T1以上である場合となる。
【0049】
目標車速制御部20aは、図5および図6に示すように、領域72の場合は、通過支援を行うことで、現車速で走行すると信号機地点の到着時には灯色が赤であるが、現車速から加速したら、信号機地点の到着時に灯色が青となる場合、通過支援を行うことができる。また、目標車速制御部20aは、図5および図6に示すように、領域76の場合は、通過支援を行うことで、現車速で走行すると信号機地点の到着時には灯色が赤であるが、現車速から減速したら、信号機地点の到着時に灯色が青となる場合、通過支援を行うことができる。
【0050】
図4に戻り、フローチャートの説明を続ける。目標車速制御部20aは、ステップS14で判定を行ったら、ステップS16で通過支援可能か、つまりステップS14で判定した結果が通過支援であったか否かを判定する。目標車速制御部20aは、ステップS16で通過支援可能である(Yes)と判定した場合、つまりステップS14の判定結果が通過支援であった場合、ステップS18として目標車速域を決定する。つまり、目標車速制御部20aは、ステップS14で決定した青信号が表示されている間に当該信号機地点を通過できる車速の範囲を算出し、算出した車速範囲を目標車速域として算出する。なお、目標車速制御部20aは、算出した車速範囲(基準目標車速域)と現車速と予め設定した条件とに基づいて、速度表示領域48に表示する目標車速域を調整してもよい。例えば、目標車速制御部20aは、目標車速域の上限値(表示上限速度)を現車速+α以下の速度とする。
【0051】
目標車速制御部20aは、ステップS18で目標車速域を決定したら、ステップS20として、通過支援表示を実行する。目標車速制御部20aは、通過支援表示として、決定した目標車速域を速度表示領域48に表示する。例えば、目標車速制御部20aは、図7に示す速度表示領域48aを表示する。速度表示領域48aは、目盛り表示部50の目標車速域と重なる速度範囲に目印60を表示している。ここで、本実施形態では、目標車速域が30km/hから50km/hであるため、速度表示領域48aは、目印60を30km/hから50km/hの速度域に表示する。なお、速度表示領域48aは、目盛り表示部50を液晶表示装置に画像で表示している場合、当該液晶表示装置に表示する画像として目印60の画像を重ねればよい。また、速度表示領域48aは、目盛り表示部50がインク等で記入されている場合、目盛り表示部50の目盛りの表示部分に発光部を配置し、目標車速域の発光部を点灯させることで目印60を表示してもよい。このように、目標車速制御部20aは、決定した目標車速域を目印60として目盛り表示部50に重ねて表示することで、利用者に決定した目標車速域を認識させることができる。目標車速制御部20aは、ステップS20に示す処理を行ったら、ステップS24に進む。
【0052】
目標車速制御部20aは、ステップS16で通過支援が可能ではない(No)と判定した場合、つまり、ステップS14で停止支援であると判定されている場合、ステップS22として停止支援表示を実行する。ここで、停止支援表示とは、目標車速域として0km/h付近の速度域を表示する。例えば、目標車速制御部20aは、図8に示す速度表示領域48bを表示する。速度表示領域48bは、目盛り表示部50の目標車速域と重なる速度範囲に目印62を表示している。ここで、停止支援表示は、目標車速域が0km/h付近の速度域(0km/hを含む速度域、本実施形態では、0km/hから10km/h)であるため、速度表示領域48bは、目印62を0km/h付近の速度域に表示する。このように、目標車速制御部20aは、決定した目標車速域を目印62として目盛り表示部50に重ねて表示することで、利用者に決定した目標車速域を認識させることができる。これにより、ステップS22では利用者に車両10を停止させることを推奨していることを認識させることができる。目標車速制御部20aは、ステップS22に示す処理を行ったら、ステップS24に進む。
【0053】
目標車速制御部20aは、ステップS20の処理またはステップS22の処理を行ったら、ステップS24として表示終了条件が成立しているかを判定する。ここで、表示終了条件とは、予め設定した目標車速域の表示終了の条件であり、例えば、車両と交差点(対象の信号機)との距離が一定以下となった場合、車速が一定の範囲外となった場合、目標車速域を表示してから一定時間が経過した場合等である。目標車速制御部20aは、ステップS24で条件が成立していない(No)と判定した場合、ステップS14に進み、上述した処理を繰り返す。つまり目標車速域を再度算出して目標車速域を再表示させる。目標車速制御部20aは、ステップS24で条件が成立した(Yes)と判定した場合、本処理を終了する。
【0054】
運転支援装置19(およびこれを有する車両10、運転支援システム1)は、このように、図5および図6に示す処理に基づいて通過停止判定を行うことで、現車速で走行すると信号機地点の到着時には灯色が赤であるが、現車速から加速したら、信号機地点の到着時に灯色が青となる場合、通過支援を行うことができる。これにより、所定の加速で信号機を通過できる場合に、好適な通過支援を行うことができ、運転者により好適な目標速度域を表示させることができる。また、運転者にあと少しの加速で通過できたのではないかという印象を与えることを防止することができ、運転者に不信感を与えにくい運転支援を行うことができる。
【0055】
また、運転支援装置19は、図5および図6に示す処理に基づいて通過停止判定を行うことで、現車速で走行すると信号機地点の到着時には灯色が赤であるが、現車速から減速したら、信号機地点の到着時に灯色が青となる場合、通過支援を行うことができる。これにより、所定の減速で信号機を通過できる場合に、好適な通過支援を行うことができ、運転者により好適な目標速度域を表示させることができる。また、運転者にあと少しの減速で通過ではないかという印象を与えることを防止することができ、運転者に不信感を与えにくい運転支援を行うことができる。
【0056】
運転支援装置19は、図5および図6に示す処理に基づいて通過停止判定を行うことで、現車速と信号サイクルと予測到着時とに基づいて通過停止判定を行うことができる。これにより、簡単な処理で通過停止判定を行うことができる。
【0057】
また、運転支援装置19は、上述した通過停止判定の閾値時間、つまり、予測到着時の灯色が赤でも通過支援を行う境界の時間である、時間T1、T2を、位置算出部で算出した車両と信号機が配置された信号機地点との距離に応じて調整、決定することが好ましい。これにより、運転支援装置19は、車両と信号機地点との距離に対応して通過停止判定の基準を変更することができ、より適切な通過停止判定を行うことができる。具体的には、車両と信号機が配置された信号機地点との距離が長いほど閾値時間を長くし、位置算出部で算出した車両と信号機が配置された信号機地点との距離が短いほど閾値時間を短くすることが好ましい。例えば、距離をDとした場合、T1=D×係数、T2=D×係数として、時間T1、T2を決定してもよい。これにより、距離Dが遠いほど時間T1、T2を大きくすることができ、距離Dが遠ければ予測到着時の灯色が赤でも通過判定となる時間帯をより大きくすることができる。これにより、より車速の調整がしやすい状態のときに通過判定が行われやすくすることができ、無停止で信号機を通過しやすくすることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、停止支援として、停止支援の目標車速域を表示したが、これに限定されない。運転支援装置19は、通過支援が可能ではない場合、ステップS22の処理に代えて、目標車速域を表示しないようにしてもよい。
【0059】
ここで、運転支援装置19は、目標車速域を種々の基準で算出することができる。運転支援装置19は、信号機が通過可能な表示ではない(例えば、灯色が赤)状態から前記信号機が通過可能な表示である(例えば、灯色が青)状態に切り替わって閾値時間経過した後から、信号機が通過可能な表示である(例えば、灯色が青)状態から信号機が通過可能な表示ではない(例えば、灯色が赤)状態に切り替わるよりも閾値時間前までの間に信号機が配置された信号機地点を前記車両が通過できる速度域を目標車速域として算出することが好ましい。
【0060】
以下、図9を用いて説明する。図9は、目標車速域の決定処理の一例を説明するための説明図である。図9に示す信号サイクル70は、上述した図6に示す信号サイクル70と同一のものである。運転支援装置19は、予測到着時が領域74以外の場合、通過支援を実行し、目標車速域を算出する。ここで、信号サイクル82は、目標車速域を算出させる際の対象の信号サイクルを示している。信号サイクル82は、信号サイクル70と同様に、灯色が青から黄に切り替わり、黄から赤に切り替わり、赤から青に切り替わる。
【0061】
信号サイクル70と信号サイクル82との対応関係は、以下の通りである。目標車速を現車速とすると、信号サイクル82の位置が信号サイクル70の予測時点と同じ位置になる。また、目標車速を現車速よりも減速する速度とすると直線92、96に示すように、信号サイクル82の位置が信号サイクル70の予測時点よりも遅い位置となる。つまり、目標車速を現車速よりも加速する速度とすると予測到着時よりも遅く信号機に到達することができる。また、目標車速を現車速よりも加速する速度とすると直線94に示すように、信号サイクル82の位置が信号サイクル70の予測時点よりも早い位置となる。つまり、目標車速を現車速よりも加速する速度とすると予測到着時よりも早く信号機に到達することができる。
【0062】
ここで、運転支援装置19は、目標車速域の算出時に、信号サイクル82の領域98または領域99のタイミングで信号機に到達することができる速度の範囲を目標速度域と算出することが好ましい、領域98、99は、灯色が赤で、灯色が青から赤に切り替わるまでの残り時間が時間T3以上であり、灯色が青になってからの時間が時間T4以上である時間領域である。このように、運転支援装置19は、目標車速域を、灯色が青から赤に切り替わるまでの残り時間が時間T3以上となる範囲とすることで、走行時に目標車速以下に減速してしまい信号機に到達するまでに時間が多少かかってしまった場合でも、灯色が赤になる前に信号機を通過することができる。運転支援装置19は、目標車速域を、灯色が青になってからの時間が時間T4以上となる範囲とすることで、信号機に到達する前に一定の余裕がある距離で、信号機の灯色が赤から青に切り替わる。これにより、灯色が赤のままで変わらない状態で信号機に接近することを抑制でき、運転者に対して灯色が切り替わるか、減速するべきかという不安を与えることを抑制することができ、運転者に違和感を与えることを抑制できる。
【0063】
また、運転支援装置19は、上述した目標車速域の算出の閾値時間、つまり、予測到着時の灯色が青のうち、目標車速域の算出の対象としない境界の時間である、時間T3、T4を、位置算出部で算出した車両と信号機が配置された信号機地点との距離に応じて調整、決定することが好ましい。これにより、時間T1、T2の場合と同様に、距離に応じた処理を好適に実行することができる。
【0064】
ここで、運転支援装置19は、例えば、予測到着時の灯色が青の場合、目標車速域の上限速度は、D/(Tv−(青全時間−T4−S残時間))とすればよく、下限速度は、D/(Tv+(S残時間−T3))とすればよい。ここで、Dは、車両から交差点地点までの距離であり、Tvは、現車速で交差点地点到着までに要する時間であり、S残時間は、到着時の灯色が次の灯色に切り替わるまでの時間である。また、青全時間とは、信号サイクルにおいて灯色が青となっている時間である。
【0065】
運転支援装置19は、予測到着時の灯色が黄の場合、目標車速域の上限速度は、D/(Tv−(青全時間−T4+黄全時間−S残時間))とすればよく、下限速度は、D/(Tv−(T3+黄全時間−S残時間))とすればよい。黄全時間とは、信号サイクルにおいて灯色が黄となっている時間である。
【0066】
運転支援装置19は、予測到着時の灯色が赤の場合、目標車速域の上限速度は、D/(Tv−(青全時間−T4+黄全時間+赤全時間−S残時間))とすればよく、下限速度は、D/(Tv−(T3+黄全時間+赤全時間−S残時間))とすればよい。赤全時間とは、信号サイクルにおいて灯色が赤となっている時間である。
【0067】
また、運転支援装置19は、目標速度域を種々の基準で決定することができる。運転支援装置19は、現車速+α、つまり現車速よりも一定速度速い速度を目標車速域の上限速度としてもよい。運転支援装置19は、現車速+αを上限速度とすることで、車速を目標車速域とするために必要な加速が大きくなることを抑制することができる。これにより、車両10および運転支援装置19は、運転者に違和感やストレスを与える恐れのより低い目標車速域を表示させることができる。
【0068】
本実施形態の運転支援装置19は、目標速度域の上限速度を現車速+α、つまり現車速よりも一定速度速い速度としたがこれに限定されない。また、通過支援可能かを判断する基準の速度も以下に説明する目標速度域の上限速度と同様に各種基準を用いることができる。ここで、運転支援装置19は、目標速度域の上限速度を現車速+G×tとしてもよい。ここで、Gは加速度であり、tは時間である。つまり、運転支援装置19は、表示上限速度を現車速+G×t、つまり、t秒間に加速度Gで実現できる速度としてもよい。ここで、t秒は、信号機までの距離と現車速とに基づいて変化する値としてもよい。例えば、信号機までの距離が長い時はtを大きくし、信号機までの距離が短い時はtを小さくしてもよい。
【0069】
また、本実施形態の運転支援装置19は、目標速度域の上限速度を現車速としてもよい。ここで、図10は、表示装置の速度表示領域の一例を示す模式図である。図10に示す速度表示領域48cは、目盛り表示部50の目標車速域と重なる速度範囲に目印64を表示している。ここで、図10に示す速度表示領域48cは、目標速度域の上限速度を現車速としているため、目標車速域の上限が現車速となる。速度表示領域48cは、針52が示しているように現車速が40km/hであるため、目標車速域の上限が40km/hとなる。また、目標車速域が20km/hから40km/hであるため、速度表示領域48cは、目印64を20km/hから40km/hの速度域に表示する。このように、目標車速制御部20aは、目標速度域の上限速度を現車速とすることで、目標車速域を加速が必要のない速度とすることができる。これにより、運転支援装置19は、運転者に加速が必要な目標車速域を推奨しないため、運転者に違和感やストレスを与える恐れのより低い目標車速域を表示させることができる。なお、通過停止判定が上述した時間T1の場合、信号機通過のために加速が必要になる。この場合、運転支援装置19は、目標速度域の上限速度を現車速よりも速い速度とする。
【0070】
また、上記実施形態の運転支援装置19は、いずれも現車速を用いて、目標速度域の上限速度を決定したがこれに限定されない。運転支援装置19は、目標速度域の上限速度として、車両が走行している道路(道)の制限速度を用いてもよい。ここで、制限速度は、例えば現在走行している道路の法定速度であり、インフラ通信部38で取得するインフラ情報や、GPS通信部32で受信したGPS信号で現在位置を検出し地図情報データベース22aに記憶されている現在位置の情報から取得すればよい。運転支援装置19は、制限速度の情報を取得する情報取得部として、インフラ通信部38やGPS通信部32と地図情報データベース22aとの組み合わせを用いることができる。制限速度の情報を取得する情報取得部は、運転支援装置19の他の機能、例えば車載カメラ34を用いてもよい。運転支援装置19は、車載カメラ34で走行中の道路に設置された標識の画像を取得し、当該標識の画像に表示されている法定速度を制限速度として検出してもよい。運転支援装置19は、表示上限速度として、制限速度を用いることで、目標車速域の表示が制限速度を超えることを抑制することができる。これにより、運転支援装置19は、制限速度以下の速度で目標車速域を表示することができるため、実際には走行してはいけない速度が表示されることを抑制でき、運転者に違和感やストレスを与える恐れのより低い目標車速域を表示させることができる。
【0071】
なお、上記実施形態の運転支援装置19は、現車速と制限速度の両方を用いて目標速度域の上限速度を決定することがより好ましい。つまり、運転支援装置19は、いずれも現車速を用いて、目標速度域の上限速度を決定する場合も目標車速域が制限速度を超えないようにすることが好ましい。これにより、運転支援装置19は、上述の両方の効果を得ることができ、運転者に違和感やストレスを与える恐れのより低い目標車速域を表示させることができる。
【0072】
運転支援装置19は、通過支援時に表示する目標車速域と、停止支援時に表示する目標車速域とで、表示する目印の色を異なる色とすることが好ましい。なお、色ではなく模様や、点灯状態等を異なるようにしてもよい。これにより、運転者は、通過支援が表示されているか、停止支援が表示されているかをすぐに把握することができる。
【0073】
次に、図11を用いて、運転支援装置の処理の他の例を説明する。ここで、図11は、運転支援装置の処理の他の例を示すフローチャートである。図11に示す処理は、上述した図4のステップS18とステップS20とに代えて実行する処理である。つまり、図11に示す処理は、図4に示すステップS16でYesと判定した場合に実行され、本処理を終了いしたら、ステップS24に進む。
【0074】
運転支援装置19のECU20の目標車速制御部20aは、ステップS140として、目標車速域を決定する。目標車速制御部20aは、ステップS18で目標車速域を決定したら、ステップS142として、上限値Vmax−下限値Vmin>閾値であるか、つまり、目標車速域の上限値Vmaxと下限値Vminの差が閾値よりも大きいかを判定する。目標車速制御部20aは、ステップS142で、上限値Vmax−下限値Vmin>閾値である(Yes)と判定した場合、ステップS144として、決定した目標車速域を速度表示領域に表示する。目標車速制御部20aは、ステップS144の処理を行ったら、本処理を終了する。
【0075】
また、目標車速制御部20aは、ステップS142で、上限値Vmax−下限値Vmin>閾値はない(No)、つまり上限値Vmax−下限値Vmin≦閾値と判定した場合、ステップS146として、決定した目標車速域を非表示にする、つまり、目標車速域を速度表示領域に表示しない。目標車速制御部20aは、ステップS146の処理を行ったら、本処理を終了する。
【0076】
運転支援装置19は、図11に示すように上限値Vmax−下限値Vmin≦閾値、つまり、決定した目標車速域の上限値と下限値との速度差が閾値よりも狭い場合、目標車速域を表示しないことで、許容される速度範囲が狭く、速度の調整が難しい条件の目標車速域を表示しないようにすることができる。これにより、運転支援装置19は、許容される速度範囲が広く、速度の調整が比較的簡単な条件の目標車速域を選択的に表示することができ、運転者に違和感やストレスを与える恐れのより低い目標車速域を表示させることができる。
【0077】
また、上記実施形態の運転支援装置19は、表示装置42の速度表示領域48に表示する速度表示をアナログメータとしたが、これに限定されない。上記実施形態の運転支援装置19は、表示装置42の速度表示領域48に表示する速度表示をデジタルメータとしてもよい。ここで、図12は、表示装置の速度表示領域の他の例を示す模式図である。速度表示領域102は、数字で速度を表示する表示機構であり、第1領域104と第2領域106とを有する。第1領域104は、現車速を表示する領域である。図12の第1領域104は、「40km/h」が表示されている。第2領域106は、第1領域104の画面上側の領域であり、目標車速域を表示する領域である。図12の第2領域106は、「30km/h〜53km/h」が表示されている。このように、運転支援装置19は、表示装置42の速度表示領域102をデジタルメータで表示しても、上記と同様の効果を得ることができる。ここで、運転支援装置19は、速度表示領域102の第1領域104に表示させる現車速と、第2領域106に表示させる目標車速域と、を異なる色および異なる大きさの少なくとも一方で表示させることが好ましい。これにより、運転支援装置19は、運転者が現車速と目標車速域とを混同する恐れを抑制することができる。
【0078】
運転支援装置19は、図5に示す処理で通過停止判定を行い、図9に示す関係に基づいて目標車速域を算出することが好ましいがこれに限定されない。運転支援装置19は、図5に示す処理で通過停止判定を行い、図9に示す関係に以外の関係に基づいて目標車速域を算出してもよい。例えば、運転支援装置19は、信号機の灯色が青の全ての時間帯、または信号機の灯色が青と黄の全ての時間帯のいずれかで信号機を通過できる車速の範囲を目標車速域としてもよい。この場合でも通過停止判定を好適に実行できるため、上述した効果を得ることができる。
【0079】
また、運転支援装置19は、通過支援判定を図5に示す処理以外の処理で実行し、図9に示す関係に基づいて目標車速域を算出してもよい。例えば、図9に示す関係に基づいて算出した車速の範囲が所定の速度範囲、例えば制限速度以内であるかに基づいて通過支援判定を行うようにしてもよい。この場合でも目標車速域を好適に算出できるため、上述した効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 運転支援システム
10 車両
12、12a 信号機
14 インフラ情報送信装置
16 GPS衛星
19 運転支援装置
20 ECU
20a 目標車速制御部
22 記憶部
24 アクセルアクチュエータ
26 ブレーキアクチュエータ
28 カーナビゲーション装置
30 スピーカ
32 GPS通信部
34 車載カメラ
38 インフラ通信部
40 車速センサ
42 表示装置
48 速度表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転を支援する運転支援装置であって、
前記車両の走行速度を検出する車速センサと、
前記車両の走行方向に配置された信号機の表示が切り替わるサイクルである信号サイクルの情報を取得するインフラ通信部と、
前記車両と前記信号機との相対位置情報を算出する位置算出部と、
前記車速センサで検出した現車速、前記位置算出部で算出した前記車両と前記信号機が配置された信号機地点との相対位置情報および前記インフラ通信部で取得した信号サイクルとの情報に基づいて、前記現車速で走行した場合に前記信号機地点に到達する到着タイミングを検出し、前記到着タイミングが、前記信号機が通過可能な表示である場合、または、前記信号機が通過可能な表示ではない状態であり、かつ、前記信号機が通過可能な表示ではない状態に切り替わってからの経過時間が閾値時間以内である場合、前記信号機が配置された信号機地点を前記車両が通過できる速度域を目標車速域として決定する目標車速制御部と、
前記目標車速制御部で決定した前記目標車速域を表示する目標車速表示部と、を有することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
車両の運転を支援する運転支援装置であって、
前記車両の走行速度を検出する車速センサと、
前記車両の走行方向に配置された信号機の表示が切り替わるサイクルである信号サイクルの情報を取得するインフラ通信部と、
前記車両と前記信号機との相対位置情報を算出する位置算出部と、
前記車速センサで検出した現車速、前記位置算出部で算出した前記車両と前記信号機が配置された信号機地点との相対位置情報および前記インフラ通信部で取得した信号サイクルとの情報に基づいて、前記現車速で走行した場合に前記信号機地点に到達する到着タイミングを検出し、前記到着タイミングが、前記信号機が通過可能な表示である場合、または、前記信号機が通過可能な表示ではない状態であり、かつ、前記信号機が通過可能な表示である状態に切り替わるまでの時間が閾値時間以内である場合、前記信号機が配置された信号機地点を前記車両が通過できる速度域を目標車速域として決定する目標車速制御部と、
前記目標車速制御部で決定した前記目標車速域を表示する目標車速表示部と、を有することを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
前記目標車速制御部は、前記到着タイミングが、前記信号機が通過可能な表示ではない状態であり、かつ、前記信号機が通過可能な表示である状態に切り替わるまでの時間が閾値時間以内である時間帯である場合、当該前記信号機が通過可能な表示である状態に切り替わった後に、前記信号機が配置された信号機地点を前記車両が通過できる速度域を目標車速域として決定することを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記目標車速制御部は、前記到着タイミングが、前記信号機が通過可能な表示である状態から前記信号機が通過可能な表示ではない状態に切り替わってから閾値時間経過前から前記信号機が通過可能な表示ではない状態から前記信号機が通過可能な表示である状態に切り替わるよりも閾値時間後までの間にある場合、当該信号機で停止することを推奨する停止支援を行うことを決定することを特徴とする請求項2または3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記目標車速制御部は、前記位置算出部で算出した前記車両と前記信号機が配置された信号機地点との距離が長いほど前記閾値時間を長くし、前記位置算出部で算出した前記車両と前記信号機が配置された信号機地点との距離が短いほど前記閾値時間を短くすることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記目標車速制御部は、前記信号機が通過可能な表示ではない状態から前記信号機が通過可能な表示である状態に切り替わって閾値時間経過した後から、前記信号機が通過可能な表示である状態から前記信号機が通過可能な表示ではない状態に切り替わるよりも閾値時間前までの間に前記信号機が配置された信号機地点を前記車両が通過できる速度域を前記目標車速域として算出することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記目標車速制御部は、前記信号機が通過可能表示状態である間に前記信号機が配置された信号機地点を前記車両が通過できる速度域を前記目標車速域として算出することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項8】
車両の運転を支援する運転支援装置であって、
前記車両の走行速度を検出する車速センサと、
前記車両の走行方向に配置された信号機の表示が切り替わるサイクルである信号サイクルの情報を取得するインフラ通信部と、
前記車両と前記信号機との相対位置情報を算出する位置算出部と、前記位置算出部で算出した前記車両と前記信号機が配置された信号機地点との相対位置情報および前記インフラ通信部で取得した信号サイクルとの情報に基づいて、前記信号機が通過可能であると判定した場合、前記信号機が通過可能な表示ではない状態から前記信号機が通過可能な表示である状態に切り替わって閾値時間経過した後から、前記信号機が通過可能な表示である状態から前記信号機が通過可能な表示ではない状態に切り替わるよりも閾値時間前までの間に前記信号機が配置された信号機地点を前記車両が通過できる速度域を目標車速域として決定する目標車速制御部と、
前記目標車速制御部で決定した前記目標車速域を表示する目標車速表示部と、を有することを特徴とする運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−97620(P2013−97620A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240589(P2011−240589)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】