説明

運転支援車載装置及び路車間通信システム

【課題】周辺車両の状況に応じた適切な態様で信号情報に基づく運転支援を行うための技術を提供する。
【解決手段】車載装置1は、交通信号機2から受信した信号情報と、位置特定部10や車速センサ32により走行状況情報と、レーダ・カメラ31や無線通信部15により取得した周辺車両情報とに基づき、周辺車両が支障とならない状況下で運転支援を実施するための、交差点への到達の可否や進路変更の要否に関する状況判断を行う。そして、自車両が現在地から当該交差点へ至るための運転を対象とする運転支援について、その状況判断結果に対応した運転支援内容を決定し、その決定した運転支援内容に従って所定の運転支援を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号機に付随する路側通信装置と、道路を走行する車両との路車間通信により情報を送受信する路車間通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路を走行中の車両が、進行方向前方にある交差点に設置された交通信号機から信号の切替タイミングを示す信号情報を路車間通信により受信し、その受信した信号情報に基づいて、車両が交差点をスムーズに通過できるようにするための様々な運転支援を行う技術が発明されている。
【0003】
この種の運転支援として、例えば、車両の進行方向前方にある交差点に設置された交通信号機が現在停止信号(黄又は赤信号)を現示している状況において、減速をすることで交差点に到達する前に停止信号の現示期間をやり過ごし、次の進行信号(青信号)で交差点を無停止で通過できるようにするものがある(例えば、特許文献1参照)。具体的には、路車間通信により交通信号機側から信号の切替タイミングや交差点の位置情報等を示す信号情報を受信し、その信号情報に基づいて適切な減速走行の方法を演算して運転者に指示する、あるいは、最適な減速走行の方法に沿って速度を自動調整することで、交差点を停車せずに通過できるように運転者を支援する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−128399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように信号情報に基づく速度制御によって交差点を無停止で通行しようとするとき、自車両周辺に存在する他車両の存在によって適切な運転支援を行うことが難しくなる場合がある。
【0006】
例えば、交差点との間に自車両の進路前方を先行する他車両(以下、先行車両)が存在する場合、この先行車両が自車両よりも早く交差点に到達し、停止信号に従って停止する可能性が高い。そのため、運転支援に基づく減速走行によって交差点を無停止で通行しようとしても、この先行車両が支障となって適切な減速走行の方法に沿って通過できなくなるという問題がある。また、自車両のすぐ後方に後続車両が存在する場合、自車両が運転支援に基づく減速走行をすることで、自車両が後続車両の走行の支障となるおそれがある。
【0007】
このような問題は、上記した交差点を無停止で通行するための運転支援に限らず、信号情報に基づいて行う速度案内や速度制御を伴う様々な運転支援全般に当てはまる。そして、信号情報に基づいて速度案内や速度制御を行う運転支援において、周辺車両の状況を考慮して運転支援を行うものは従来技術にはなかった。
【0008】
本発明は上記問題を解決するためになされており、周辺車両の状況に応じた適切な態様で信号情報に基づく運転支援を行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の運転支援車載装置は、信号情報取得手段により取得した信号情報と、走行状況情報取得手段により取得した走行状況情報と、周辺車両情報取得手により取得した周辺車両情報とに基づく所定の状況判断を行い、自車両が現在地から当該交差点へ至るための運転を対象とする所定の運転支援について、その状況判断結果に対応した運転支援内容を決定し(状況判断手段)、その決定した運転支援内容に従って所定の運転支援を実行する(運転支援制御手段)ことを特徴とする。なお、ここでいう周辺車両情報とは、例えば、自車両周辺に存在する他車両の存否、速度、位置、進行方向等の情報が挙げられる。
【0010】
このように構成された本発明によれば、信号情報、自車両の走行状況、及び周辺車両情報に基づく状況判断により、周辺車両の状況に応じた適切な態様で信号情報に基づく運転支援を行うことができる。なお、ここでいう状況判断とは、例えば、運転支援を実施する上で周辺車両が支障とならない状況を判断するものが挙げられる。具体的には、交差点へ至るための運転を対象とする運転支援の支障となる周辺車両の存在を検知し、その支障を回避して運転支援を実施可能であるか否かを判断することで、その判断結果に基づいて、他車両による支障を回避可能な運転支援を実施することができる。
【0011】
交差点へ至るための運転を対象とする運転支援の具体例として、交差点の手前で適切な速度調整を行うことで、交差点に到達する前に停止信号の現示期間をやり過ごし、次の進行信号で交差点を無停止で通過できるようにするものがある。このような運転支援を行う際、自車両と交差点との間に、自車両が走行している車両通行帯の進路前方を走行する先行車両が存在すると、自車両より先に交差点に到達した先行車両が停止信号に従って停止したがために、それに伴って自車両も停止を余儀なくされる可能性がある。そのため、自車両が今の車両通行帯をそのまま走行していては、運転支援による速度調整を実施したところで、先に停止した先行車両が支障となって交差点を無停止で通過できない場合がある。
【0012】
そこで、上記のような運転支援を採用する場合は、請求項2に記載のように構成するとよい。すなわち、この運転支援車載装置は、自車両が走行している道路に設けられた車両通行帯に関する車両通行帯情報を取得する車両通行帯情報取得手段を更に備える。ここでいう車両通行帯情報は、例えば、交差点手前の道路における車両通行帯の数や、車両通行帯の増減による形状変化、通行区分等を示す情報である。また、周辺車両情報取得手段は、自車両の前方で当該交差点の手前を走行している他車両に関する情報を含む周辺車両情報を取得する。
【0013】
状況判断手段は、信号情報、走行状況情報、周辺車両情報、及び、車両通行帯情報に基づいて、自車両が走行している車両通行帯の進路前方を走行する先行車両が存在すると判断した場合、自車両が現在走行中の車両通行帯とは別の進路変更先の車両通行帯があり、かつ、その進路変更先の車両通行帯において前方を走行する前方車両が存在しない状況下で、自車両が停止信号によって当該交差点手前で停止させられずに走行状態のまま進行信号の現示期間内に当該交差点に到達するための速度調整が可能か否かを判断し、その判断の結果、進路変更先の車両通行帯があり、かつ速度調整可能である場合において、その速度調整のため推奨速度及び進路変更を運転支援内容として決定する。
【0014】
運転支援制御手段は、状況判断手段により決定した推奨速度及び進路変更に従って、当該進路変更先の車両通行帯への進路変更を案内する情報を運転者に対して報知すると共に、推奨速度に沿った速度調整を支援する所定動作を行う。
【0015】
このような構成によれば、交差点を無停止で通過するための運転支援の支障となる先行車両が存在する場合でも、運転支援の可能な別の車両通行帯への進路変更できる状況であれば、その車両通行帯への進路変更を案内することができる。そして、この案内に基づいて進路変更が行われば、先行車両による支障が回避され、自車両の進路前方に他車両が存在しない状態で速度案内や速度調整といった運転支援を遂行できる。
【0016】
あるいは、交差点へ至るための運転を対象とする運転支援の具体例として、上記の他にも、停止信号の現示中に交差点に到達すると予想される場合に、交差点の手前で適切な速度調整を行うことで、交差点手前で停止するまでの走行を円滑にするものがある。このような運転支援は、例えば、交差点手前で停止するまでの走行時において無駄なアクセル操作を低減したり、電気自動車等における回生制動を積極的に利用したりして省エネルギーを実現するものや、交差点手前で停止するまでの速度変化を適切な範囲内に抑えることで乗り心地を向上するものがある。
【0017】
このような運転支援を行う場合、自車両と交差点との間に、自車両が走行している車両通行帯の進路前方を走行する先行車両が存在する場合、この先行車両が自車両よりも早く減速を開始したがために、それに伴って自車両も不本意な減速することを余儀なくされる場合がある。そのため、自車両が今の車両通行帯をそのまま走行していては、運転支援による速度調整を実施したところで、先に減速した先行車両が支障となって運転支援で提供される最適な走行方法に従って運転できない場合がある。
【0018】
そこで、上記のような運転支援を採用する場合は、請求項3に記載のように構成するとよい。すなわち、この運転支援車載装置は、自車両が走行している道路に設けられた車両通行帯に関する車両通行帯情報を取得する車両通行帯情報取得手段を更に備える。ここでいう車両通行帯情報は、例えば、交差点手前の道路における車両通行帯の数や、車両通行帯の増減による形状変化、通行区分等を示す情報である。また、周辺車両情報取得手段は、自車両の前方で当該交差点の手前を走行している他車両に関する情報を含む周辺車両情報を取得する。
【0019】
状況判断手段は、信号情報、走行状況情報、周辺車両情報、及び、車両通行帯情報に基づいて、自車両が走行している車両通行帯の進路前方を走行する先行車両が存在すると判断した場合、自車両が現在走行中の車両通行帯とは別の進路変更先の車両通行帯があり、かつ、その進路変更先の車両通行帯において前方を走行する前方車両が存在しない状況下で、停止信号の現示期間内に当該交差点の停止位置に到達するための速度調整が可能か否かを判断し、その判断の結果、進路変更先の車両通行帯があり、かつ速度調整可能である場合において、その速度調整のための推奨速度及び進路変更を運転支援内容として決定する。
【0020】
運転支援制御手段は、状況判断手段により決定した推奨速度及び進路変更に従って、当該車両通行帯への進路変更を案内する情報を運転者に対して報知すると共に、推奨速度に沿った速度調整を支援する所定動作を行う。
【0021】
このような構成によれば、適切な減速方法により交差点で停止できるようにするための運転支援の支障となる先行車両が存在する場合でも、運転支援の可能な別の車両通行帯への進路変更できる状況であれば、その車両通行帯への進路変更を案内することができる。そして、この案内に基づいて進路変更が行われれば、先行車両により支障が回避され、自車両の進路前方に他車両が存在しない状態で速度案内や速度調整といった運転支援を遂行できる。
【0022】
さらに、交差点付近では、車両通行帯に対して進行方向別の通行区分が指定されている場合があり、交差点を通過する車両は自己の進行方向に対応した通行区分が指定された車両通行帯を走行することになっている。そこで、交差点における自車両及び他車両の進行方向と車両通行帯の通行区分とを運転支援実施のための状況判断に利用することで、自車両や他車両が交差点を通行する際に走行する車両通行帯を的確に予測することができ、運転支援の実施の可否をより適切に判断できるようになる。
【0023】
具体的には、請求項4に記載のように構成するとよい。すなわち、自車両の当該交差点での進行方向を特定するする進行方向特定手段を更に備える。また、車両通行帯情報取得手段は、車両通行帯に対して当該交差点での進行方向別に指定されている通行区分に関する情報を含む車両通行帯情報を取得する。ここでいう車両通行帯情報とは、例えば、交差点手前の車両通行帯における直進や右左折の可否、あるいは特定の進行方向専用の車両通行帯(例えば、右折専用通行帯や左折専用通行帯)といった、通行区分の指定内容を示すものである。このような車両通行帯情報は、車載ナビゲーション装置で用いられる地図データを利用してもよいし、無線通信等により外部装置から取得してもよい。周辺車両情報取得手段は、自車両の前方で当該交差点の手前を走行している他車両の当該交差点での進行方向に関する情報を取得する。
【0024】
状況判断手段は、さらに、自車両及び他車両の当該交差点での進行方向と、車両通行帯の当該交差点での進行方向別の通行区分とに基づき、先行車両が存在する場合、自車両の当該交差点での進行方向に対応する通行区分の指定された別の車両通行帯であって、先行車両の当該交差点での進行方向に対応する通行区分の指定された車両通行帯とは異なる進路変更先の車両通行帯があり、かつ、その進路変更先の車両通行帯において前方を走行する前方車両が存在しない状況下で速度調整が可能か否かを判断し、その判断の結果、進路変更先の車両通行帯があり、かつ速度調整可能である場合において、その速度調整のための推奨速度及び進路変更を運転支援内容として決定する。
【0025】
例えば、先行車両が交差点で右折をする予定であれば、その先行車両は交差点に到達するまでに右端の車両通行帯に進路変更すると推定できる。この場合、自車両が交差点を直進又は左折する予定であれば、右端の車両通行帯を避けて左側の車両通行帯に進路変更すれば、先行車両を回避できる。このように、先行車両がいる状況であっても、自車両の進行方向に対応する別の車両通行帯で、かつ、先行車両の進行方向に対応する車両通行帯とは異なる車両通行帯に進路変更をすれば、自車両が進路変更した後に先程の先行車両が再び自車両と同じ車両通行帯に進路変更してくるといった不都合を回避できる。このような構成によれば、交差点における車両通行帯の通行区分と自車両及び他車両の進行方向とを加味することで、より的確な状況判断を行うことができ、周辺車両状況に応じた適切な運転支援を実現できる。
【0026】
あるいは、自車両の進路前方に先行車両が存在する場合であっても、その先行車両の交差点での進行方向に対応する別の車両通行帯があれば、その先行車両は交差点に到達するまでに自車両の走行する車両通行帯から別の車両通行帯へ進路変更すると推定できる。このとき、自車両が現在走行中の車両通行帯が交差点での進行方向に対応していれば、自車両が進路変更しなくても、前方に他車両がいない状況下で交差点へ到達可能になる。
【0027】
そこで、上記のような状況を考慮して、請求項5に記載のように構成するとよい。すなわち、状況判断手段は、自車両の当該交差点での進行方向に対応する通行区分の指定された車両通行帯を走行しているときに先行車両が存在する場合、当該先行車両の当該交差点での進行方向に対応する通行区分の指定された別の車両通行帯の有無に応じて進路変更の要否を判断すると共に速度調整の可否を判断する。そして、その判断の結果、進路変更が不要で、かつ速度調整可能と判断した場合、速度調整のための推奨速度のみを運転支援内容として決定する。運転支援制御手段は、状況判断手段により決定した推奨速度に従って、推奨速度に沿った速度調整を支援する所定動作を行う。
【0028】
このように、先行車両の進行方向に基づく動向の予測から自車両の進路変更の要否を判断することで、先行車両がいても進路変更をしないままで運転支援を実行可能な状況を的確に把握することができ、不必要な進路変更を案内することを回避できる。
【0029】
ところで、交差点へ至るための運転を対象とする運転支援として何らかの速度案内や速度調整を行う場合、自車両の後方にいる他車両にも配慮し、運転支援を行うことで自車両と後方車両とが互いに支障とならないようにすることが望ましい。例えば、自車両の進路後方を走行する後続車両が存在するときには、運転支援に基づく減速することで後続車両の不意の接近を誘発するおそれがある。また、先行車両を回避する意図で進路変更する場合には、進路変更先の車両通行帯の後方を走行する後方車両の支障とならないように配慮する必要がある。
【0030】
そこで、上記のような状況を考慮して、請求項6に記載のように構成するとよい。すなわち、周辺車両情報取得手段は、自車両の後方を走行している後方車両に関する情報を含む周辺車両情報を取得する。そして、状況判断手段は、周辺車両情報に基づいて運転支援の実施の支障となる後方車両の存否を判断し、その判断の結果、運転支援の実施の支障となる後方車両が存在すると判断した場合、運転支援の不実施を決定する。
【0031】
このように、自車両の後方にいる他車両に関する周辺車両情報に基づいて運転支援の実施の可否を判断することで、運転支援によって自車両と後方車両とが互いに支障となるような状況を回避できる。
【0032】
つぎに、請求項7に記載の路車間通信システムは、請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の運転支援車載装置と、交差点に設置された特定の交通信号機の信号現示の予定に関する情報を少なくとも含む信号情報を車両に対して送信する信号情報送信手段を備える路側通信装置とを備えるものである。このように構成された路車間通信システムによれば、本発明の運転支援車載装置を搭載した車両と、路側通信装置等の交通インフラとの間の路車間通信に基づいて、上述の効果と同様の効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態の路車間通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】車載装置のメイン処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】通過可否判断処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】状況別の運転支援の内容を示すリストである。
【図5】運転支援による通過可能例1,2を示す説明図である。
【図6】運転支援による通過可能例3,4を示す説明図である。
【図7】運転支援による通過可能例5,6を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
[路車間通信システムの構成の説明]
まず、図1に基づいて実施形態の路車間通信システムの構成を説明する。路車間通信システムは、道路を走行する車両に搭載される車載装置1(特許請求の範囲の運転支援車載装置に相当)と、交差点に設置された交通信号機2(特許請求の範囲の路側通信装置に相当)とからなる。
【0035】
車載装置1は、位置特定部10、外部機器接続部11、表示部12、音声出力部13、光ビーコン通信部14、無線通信部15、及び制御部16等を備えている。
このうち、位置特定部10は、車速センサ32や、図示しない加速度センサ、GPS受信機等による検出信号に基づいて車両の現在地や進行方向を特定し、その特定したデータを制御部16に入力するためのものである。外部機器接続部11は、車両に搭載されているレーダ・カメラ31、車速センサ32、作動制御部33、ナビゲーション装置34等、他のECU(Electronic Control Unit)等の各種機器との間で通信を行うためのインタフェースであり、各機器から送信されてくるデータを制御部16に入力する。レーダ・カメラ31は、レーダ・カメラ31は、自車両周辺に存在する他車両を検知するためのレーダや、自車両の前方及び後方の路上風景を撮像するためのカメラを備えた装置である。車速センサ32は、自車両の速度を検出するための装置である。作動制御部33は自車両の各部(アクセル、ブレーキ、方向指示器等の被制御部)の作動制御を行うための装置である。ナビゲーション装置34は、道路地図データに基づいて現在地から目的地までの推奨経路を探索し、その探索した推奨経路に従って走行案内をする周知のカーナビゲーションシステムである。
【0036】
表示部12は、画像を表示する液晶パネル等の表示面を備えた表示装置であり、制御部16からの制御に基づいて各種の運転支援画像を表示する。画像を表示する表示面は、車両の運転席から視認可能な場所に配置される。音声出力部13は、音声を出力するスピーカ等を備えた音声出力装置であり、制御部16からの制御に基づいて運転支援に関する各種の音声メッセージを出力する。
【0037】
光ビーコン通信部14は、道路近傍に設置された光ビーコンとの間で近赤外線通信技術を利用した双方向通信を行うための通信装置である。この光ビーコン通信部14は、光ビーコンから提供される各種の交通情報を受信し、その受信データを制御部16に入力する。
【0038】
無線通信部15は、信号交差点に設置された交通信号機2との間で双方向の無線通信(路車間通信)を行ったり、通信装置を搭載する周辺車両との間で無線通信(車車間通信)を行うための通信装置である。この路車間通信に用いる通信様式としては、例えばETC(登録商標)システム等で用いられる狭域通信(DSRC)や、VICS(登録商標)等で用いられる電波ビーコン等の技術を用いることが考えられる。あるいは、日本国において、2011年(予定)のアナログテレビ放送の終了後に利用区分が再編される予定の700MHz帯の電波を利用することも考えられる。この700MHz帯の電波は、DSRCで用いられる5.8GHz帯の電波と比較して波長が長いため、回折を起こし易い。そのため、建築物が密集する都市部において、建物の影からでも良好に通信が行うことができる。
【0039】
制御部16は、CPU,ROM,RAM等からなる周知のコンピュータ装置で構成されており、車載装置1の各部を統括制御する。この制御部16は、ROM等に記憶されたプログラムに従って路車間通信や運転支援に関する処理を実行する。なお、本実施形態では、路車間通信により取得した信号情報や、自車両の走行状況、各種センサ類を使って把握した周辺車両状況に基づき、前方の交差点を無停止で通過できるようにするための速度調整支援や進路変更案内といった運転支援を実施する。この運転支援を実施するための処理についての詳細な説明は後述する。
【0040】
一方、交通信号機2は、無線通信部21、信号制御部22、光ビーコン23及び信号表示部24を備える。
このうち、無線通信部21は、道路を走行する車両に搭載された車載装置1との間で双方向の無線通信(路車間通信)を行うための通信装置である。この路車間通信に用いる通信様式は、上述の車載装置1のものと同様である。
【0041】
また、光ビーコン23は、指向性の高い近赤外線を利用した双方向通信機能と車両感知機能とを併せ持つ装置であり、交通信号機2が設置された交差点に接続する道路の交差点手前側に設置される近赤外線の投受光器と制御装置からなる。この光ビーコン23は、当該交差点に向かって走行する車両を感知したり、信号制御部22から供給される情報を車両に送信すると共に、車両の感知情報や双方向通信により車両から受信した情報を信号制御部22へ出力する。
【0042】
信号制御部22は、CPU,ROM,RAM等からなる周知のコンピュータ装置で構成されており、交通信号機2の各部を統括制御し、信号交差点を通行する車両に対して信号を表示するための信号灯器である信号表示部24が備える青、黄、赤の各信号灯の点灯及び消灯を制御する。
【0043】
さらに、信号制御部22は、自己が制御する信号の現示の予定に関する情報や、交差点の位置情報等を含む信号情報を、無線通信部21を使って一定間隔(例えば100msごと)で車両に対して送信する。信号の現示予定に関する情報は、現在の信号の現示状況や、今後の信号灯色の表示順序、各信号灯色の現示期間(開始時刻、終了時刻等)を示す情報である。
【0044】
また、信号制御部22は、光ビーコン23を使って、光ビーコン23の投受光器の設置位置から交差点までの走行距離を示す距離情報を、光ビーコン23で感知した車両に対して送信する。
【0045】
[車載装置1のメイン処理の説明]
つぎに、車載装置1の制御部16が実行するメイン処理の手順について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。この処理は、自車両の進路前方に本実施形態の交通信号機2による信号情報の送信が実施された交差点がある場合に実行される処理である。
【0046】
車載装置1の制御部16は、まず、無線通信部15を使って進路前方の交差点に設置された交通信号機2から信号情報を受信する(S101)。この信号情報には、当該交通信号機2における信号の現示予定に関する情報や、当該前方交差点の位置情報等が含まれる。
【0047】
つぎに、S101で受信した信号機情報や、自車両の走行状況を示す走行状況情報、当該前方交差点での自車両の進行方向、自車両と同じ道路を走行している自車両近辺の周辺車両に関する周辺車両情報等に基づいて、運転支援の実施下による当該前方交差点の通過可否の判断と運転支援内容の決定を行う通過可否判断処理を実行する(S102)。
【0048】
なお、自車両の走行状況情報は、位置特定部10や車速センサ32、光ビーコン通信部14等を使って取得した自車両の速度、現在地、交差点までの残り距離等を示す情報である。また、周辺車両情報は、レーダ・カメラ31や、無線通信部15を使った車車間通信や路車間通信により取得した周辺車両の位置、速度、交差点までの残り距離、当該前方交差点での進行方向等を示す情報である。
【0049】
本実施形態では、前方交差点において現在停止信号(黄や赤信号)が現示されている状況を対象に、自車両が適切な速度に減速することで当該前方交差点に到達する前に停止信号の現示期間をやり過ごし、次の進行信号(青信号や矢印信号)で交差点を無停止で通過できるようにするための運転支援を想定している。その運転支援内容としては、当該交差点を無停止で通過できるようにするための推奨速度の算出や、その推奨速度に基づく減速調整の支援、減速調整の支障となる先行車両を回避するための進路変更案内がある。そして、S102の通過可否判断処理では、減速調整によって交差点を無停止で通過することの実現可否が判断されると共に、通過可能である場合の推奨速度、進路変更の要否及びその進路変更先が決定される。なお、この通過可否判断処理の詳細な手順については後述する。
【0050】
つぎに、S103では、S102の処理結果に基づき、減速調整のみによって当該前方交差点を無停止で通過できるか否かを判定する。ここで、減速調整のみによって当該前方交差点を無停止で通過できると判定した場合(S103:YES)、S104の処理へ進み、通過できないと判定した場合(S103:NO)、S108の処理へ進む。
【0051】
減速調整のみによって当該前方交差点を無停止で通過できると判断した場合に進むS104では、S102で算出した推奨速度に基づいて減速指示を実施する。この減速指示は、運転者に対して減速を指示又は案内する旨のメッセージを、表示部12による画像表示や音声出力部13による音声案内によって報知することで行う。なお、減速指示をすると共に、作動制御部33を使ってアクセルやブレーキの作動を制御し、自動的に速度を調整するようにしてもよい。
【0052】
つづいて、自車両の速度がS102で算出した推奨速度に到達したか否かを判定する(S105)。推奨速度に到達した場合(S105:YES)、S106の処理へ進み、推奨速度に到達していない場合(S105:NO)、減速指示を継続したままS105の処理を繰り返す。
【0053】
推奨速度に到達した場合に進むS106では、速度適正通知を実施する。この速度適正通知は、適正速度になったことを示すメッセージや、現在の適正速度を維持するように指示又は案内する旨のメッセージを、表示部12による画像表示や音声出力部13による音声案内によって報知することで行う。
【0054】
つづいて、自車両の現在地情報に基づいて当該前方交差点を通過したか否かを判定する(S107)。前方交差点を通過した場合(S107:YES)、S115の処理へ進み、前方交差点を未だ通過していない場合(S107:NO)、S107の処理を繰り返す。前方交差点を通過した場合に進むS115では、実施中の運転支援を終了し、本処理を終了する。
【0055】
一方、S103において、減速調整のみによって当該前方交差点を無停止で通過できない判断した場合に進むS108では、S102の処理結果に基づき、進路変更及び減速調整によって当該前方交差点を無停止で通過できるか否かを判定する。ここで、進路変更及び減速調整によって当該前方交差点を無停止で通過できると判定した場合(S108:YES)、S109の処理へ進み、通過できないと判定した場合(S108:NO)、本処理を終了する。
【0056】
進路変更及び減速調整によって前方交差点を無停止で通過できると判定した場合に進むS109では、S102で決定した進路変更先の車両通行帯及び推奨速度に基づき、進路変更案内及び減速指示を実施する。進路変更案内は、進路変更先の車両通行帯を示すメッセージを、表示部12による画像表示や音声出力部13による音声案内によって報知することで行う。また、減速指示は、運転者に対して減速を指示又は案内する旨のメッセージを、表示部12による画像表示や音声出力部13による音声案内によって報知することで行う。
【0057】
つづいて、自車両が走行している車両通行帯の検出結果に基づいて、進路変更案内に沿った進路変更が完了したか否かを判定する(S110)。進路変更が完了した場合(S110:YES)、S111の処理へ進み、進路変更が未だ完了していない場合(S110:NO)、進路変更案内及び減速指示を継続したままS110の処理を繰り返す。
【0058】
進路変更が完了した場合に進むS111では、進路変更案内を終了する一方、減速指示を継続する。そして、自車両の速度がS102で算出した推奨速度に到達したか否かを判定する(S112)。推奨速度に到達した場合(S112:YES)、S113の処理へ進み、推奨速度に到達していない場合(S112:NO)、減速指示を継続したままS112の処理を繰り返す。
【0059】
推奨速度に到達した場合に進むS113では、速度適正通知を実施する。この速度適正通知は、適正速度になったことを示すメッセージや、現在の適正速度を維持するように指示又は案内する旨のメッセージを、表示部12による画像表示や音声出力部13による音声案内によって報知することで行う。
【0060】
つづいて、自車両の現在地情報に基づいて当該前方交差点を通過したか否かを判定する(S114)。前方交差点を通過した場合(S114:YES)、S115の処理へ進み、前方交差点を未だ通過していない場合(S114:NO)、S114の処理を繰り返す。前方交差点を通過した場合に進むS115では、実施中の運転支援を終了し、本処理を終了する。
【0061】
[通過可否判断処理の説明]
つぎに、上述のメイン処理のS102で実行される通過可否判断処理の手順について、図3のフローチャート及び図4〜7の説明図を参照しながら説明する。
【0062】
車載装置1の制御部16は、まず、自車両が現在走行している車両通行帯の進路前方に、前方交差点の停止信号によって停止すると予測される先行車両が存在するか否かを判定する(S201)。なお、自車両や周辺車両が現在走行している車両通行帯は、道路形状、各車両の現在地の検出結果、自車両の挙動履歴、レーダ・カメラ31による前方環境(例えば道路標示)の検出結果等に基づいて判別する。道路形状については、ナビゲーション装置34が備える地図データから、当該前方交差点手前の道路に設けられた車両通行帯の数や配置形態、通行区分に関する情報を取得したものを利用する。また、先行車両が前方交差点の停止信号によって停止するか否かについては、信号情報に基づく信号現示の現状及び予定と、先行車両の速度及び前方交差点までの距離に基づき、先行車両が前方交差点に到達する時期を予測して判断する。先行車両の速度及び前方交差点までの距離は、レーダ・カメラ31や、無線通信部15を使った車車間通信あるいは路車間通信により取得する。
【0063】
S201では、自車両の進路前方に前方交差点の停止信号によって停止すると予測される先行車両が存在しないと判定した場合(S201:NO)、S202の処理へ進み、先行車両が存在すると判定した場合(S201:YES)、S207の処理へ進む。
【0064】
自車両の進路前方に停止信号によって停止すると予測される先行車両が存在しない場合に進むS202では、減速調整の実施によって、前方交差点で進行信号が現示されている期間内に当該前方交差点に到達できるか否かの状況判断を行う。
【0065】
具体的には、直近の進行信号の現示期間(開始時刻及び終了時刻)、現在地から前方交差点までの距離、自車両の現在の速度、減速時に許容される最大の速度変化率(減速度)、及び、減速の終了後に行う定速走行時に許容される最低速度の諸条件に基づき、最大速度変化率及び最低速度の制約を満たす減速方法によって前方交差点までの所要時間を調整することで、進行信号の現示期間内に前方交差点に到達可能にすることができるか否かを判断する。それと共に、減速調整により進行信号の現示期間内に到達可能である場合には、その到達可能な推奨速度を算出する。なお、前方交差点において全ての進行方向を対象とする進行信号よりも先に右折、左折、直進等の個別の進行方向専用の矢印信号のみが現示される場合、自車両の進行方向に対応する矢印信号が現示される期間を対象に、到達の可否を判断する。
【0066】
なお、S202の状況判断で用いられる、減速時の最大速度変化率や減速後の最低速度は、走行時の安全性や快適性を考慮してメーカ等により予め設定された値を用いるようにしてもよいし、ユーザの運転嗜好に応じてユーザが任意に設定できるようにしてもよい。
【0067】
つづいて、S203では、S202での状況判断の結果において、進行信号の現示期間内に前方交差点に到達できると判断した否かに応じて処理を分岐する。進行信号の現示期間内に前方交差点に到達できると判断した場合(S203:YES)、S204の処理へ進む。S204では、さらに、自車両が現在走行している車両通行帯の後方に減速調整の支障となる後続車両が存在するか否かを判定する。減速調整の支障となる後続車両が存在しない場合(S204:NO)、「減速調整により通過可能」との判断結果を確定し(S205)、本処理を終了する。
【0068】
一方、S203で進行信号の現示期間内に前方交差点に到達できないと判定した場合(S203:NO)、あるいは、S204で減速調整の支障となる後続車両が存在すると判定した場合(S204:YES)、「通過不可」との判断結果を確定し(S206)、本処理を終了する。
【0069】
一方、S201で自車両の進路前方に停止信号によって停止すると予測される先行車両が存在すると判定した場合に進むS207では、進路変更と減速調整との併用によって、前方交差点で進行信号が現示されている期間内に当該前方交差点に到達できるか否かの状況判断を行う。
【0070】
ここでの状況判断に用いる諸条件として、車両以外に関するものでは、直近の進行信号の現示期間(開始時刻及び終了時刻)、前方交差点までの道路形状や車両通行帯の数等がある。また、自車両に関するものとしては、自車両の現在地から前方交差点までの距離、現在の速度、前方交差点での進行方向、減速時に許容される最大の速度変化率(減速度)、減速の終了後に行う定速走行時に許容される最低速度等がある。また、周辺車両に関するものとしては、先行車両の位置、先行車両の現在地から交差点までの距離、速度、交差点での進行方向、自車両とは別の車両通行帯を走行する、先行車両以外の前方車両の位置等がある。
【0071】
自車両の前方交差点での進行方向については、ナビゲーション装置34により探索された推奨経路の設定や、方向指示器の作動状況、走行履歴の蓄積による学習結果等を用いて判断する。また、先行車両の進行方向については、無線通信部15を使った車車間通信により先行者両側で意図している進行方向を取得してもよいし、カメラで撮像した先行車両の方向指示器の作動状況や、先行車両のいる車両通行帯、道路形状とから総合的に判断してもよい。あるいは、何れの方法にも依らない場合は、道路形状と先行車両のいる車両通行帯とから推定してもよい。
【0072】
上記諸条件に基づいて、自車両の進路前方の先行車両を回避して、更に他の前方車両も存在しない状況下で走行するための進路変更の要否を判断すると共に、最大速度変化率及び最低速度の制約を満たす減速方法によって前方交差点までの所要時間を調整することで、進行信号の現示期間内に前方交差点に到達可能にすることができるか否かを判断する。ここでは、先行車両の前方交差点での進行方向や、道路形状に基づき、先行車両が前方交差点の手前で行う進路変更の有無を推定し、その推定結果も考慮して自車両の進路変更の要否を判断する。
【0073】
この状況判断と共に、減速調整により進行信号の現示期間内に到達可能である場合には、その到達可能な推奨速度を算出する。また、進路変更が必要な場合には、その進路変更方法を決定する。なお、前方交差点において全ての進行方向を対象とする進行信号よりも先に右折、左折、直進等の個別の進行方向専用の矢印信号のみが現示される場合、自車両の進行方向に対応する矢印信号が現示される期間を対象に、到達の可否を判断する。
【0074】
さらに、本実施形態では、S207で行う進路変更の要否に関する状況判断と、その状況判断結果に基づいて決定される運転支援の内容とを、図4に示すリストに記載の状況No.1〜16の各ケースで規定する。ここで図4に示すリストに基づいて、状況No.1〜16の各ケースの内容を説明する。
【0075】
(状況No.1)
自車両の前方交差点での進行方向は直進であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向も直進であることが要件である。道路形状は、自車両のいる車両通行帯に隣接する直進可能な車両通行帯が存在することが要件である。この隣接する車両通行帯には、他の前方車両は存在しないことが要件である。これら要件に該当する場合、自車両が隣接する車両通行帯に進路変更することで、自車両の進路前方の先行車両を回避して、更に他の前方車両も存在しない状況下で前方交差点に到達できる。よって、このケースでは、当該隣接通行帯への進路変更案内と減速指示とを運転支援内容の候補に選択する。
【0076】
状況No.1のケースは、図5(a),(b)に示す通過可能例1,2に該当する。すなわち、図5(a)の通過可能例1に示すとおり、自車両が2つある車両通行帯のうち進行方向左側を走行している場合、自車両に直進可能な右側の車両通行帯へ進路変更させることで、交差点手前で停止する先行車両を回避して前方交差点に到達できる。また、図5(b)の通過可能例1に示すとおり、自車両が2つある車両通行帯のうち進行方向右側を走行している場合、自車両に直進可能な左側の車両通行帯へ進路変更させることで、交差点手前で停止する先行車両を回避して前方交差点に到達できる。
【0077】
(状況No.2)
自車両の前方交差点での進行方向は直進であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向は右折であることが要件である。道路形状は、自車両のいる車両通行帯の右側に隣接する車両通行帯が存在することが要件である。自車両の進路上には、この先行車両の他に前方車両は存在しないことが要件である。これらの要件に該当する場合、先行車両が前方交差点を右折するために右側の車両通行帯に進路変更すると予測される。そのため、自車両に進路変更をさせなくても先行車両を回避して前方交差点に到達できる。よって、このケースでは、進路変更は不要であると判断して、減速指示のみを運転支援内容の候補に選択する。
【0078】
状況No.2のケースは、図6(a)に示す通過可能例3に該当する。すなわち、この通過可能例3に示すとおり、自車両が2つある車両通行帯のうち進行方向左側を走行している場合、やがて先行車両が右折のために右側の車両通行帯へ進路変更していくと予測されるので、自車両はこの車両通行帯をそのまま走行し続ければよい。
【0079】
(状況No.3)
自車両の前方交差点での進行方向は直進であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向は右折であることが要件である。道路形状は、自車両のいる車両通行帯の左側に隣接する直進可能な車両通行帯が存在することが要件である。この左隣の車両通行帯には、他の前方車両は存在しないことが要件である。これらの要件に該当する場合、先行車両は前方交差点を右折するために現在の車両通行帯を走行し続けると予測される。そのため、自車両に左隣の車両通行帯に進路変更させることで、自車両の進路前方の先行車両を回避して、更に他の前方車両も存在しない状況下で前方交差点に到達できる。よって、このケースでは、左隣の車両通行帯への進路変更案内と減速指示とを運転支援内容の候補に選択する。
【0080】
状況No.3のケースは、図5(b)に示す通過可能例2に該当する。すなわち、この通過可能例2に示すとおり、自車両が2つある車両通行帯のうち進行方向右側を走行しているとき、進路前方の先行車両は右折のために右側の車両通行帯を走行し続けるので、自車両に直進可能な左側の車両通行帯へ進路変更させればよい。
【0081】
(状況No.4)
自車両の前方交差点での進行方向は直進であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向は左折であることが要件である。道路形状は、自車両のいる車両通行帯の左側に隣接する車両通行帯が存在することが要件である。自車両の進路上には、この先行車両の他に前方車両は存在しないことが要件である。これらの要件に該当する場合、先行車両が前方交差点を左折するために左側の車両通行帯に進路変更すると予測される。そのため、自車両に進路変更をさせなくても先行車両を回避して前方交差点に到達できる。よって、このケースでは、進路変更は不要であると判断して、減速指示のみを運転支援内容の候補に選択する。
【0082】
状況No.4のケースは、図6(b)に示す通過可能例4に該当する。すなわち、この通過可能例4に示すとおり、自車両が2つある車両通行帯のうち進行方向右側を走行している場合、やがて先行車両が左折のために左側の車両通行帯へ進路変更していくと予測されるので、自車両はこの車両通行帯をそのまま走行し続ければよい。
【0083】
(状況No.5)
自車両の前方交差点での進行方向は直進であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向は左折であることが要件である。道路形状は、自車両のいる車両通行帯の右側に隣接する車両通行帯が存在することが要件である。この右隣の車両通行帯には、他の前方車両は存在しないことが要件である。これらの要件に該当する場合、先行車両は前方交差点を左折するために現在の車両通行帯を走行し続けると予測される。そのため、自車両に右隣の車両通行帯に進路変更させることで、自車両の進路前方の先行車両を回避して、更に他の前方車両も存在しない状況下で前方交差点に到達できる。よって、このケースでは、右隣の車両通行帯への進路変更案内と減速指示とを運転支援内容の候補に選択する。
【0084】
状況No.5のケースは、図5(a)に示す通過可能例1に該当する。すなわち、この通過可能例1に示すとおり、自車両が2つある車両通行帯のうち進行方向左側を走行しているとき、進路前方の先行車両は左折のために左側の車両通行帯を走行し続けるので、自車両に直進可能な右側の車両通行帯へ進路変更させればよい。
【0085】
(状況No.6)
自車両の前方交差点での進行方向は右折であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向は直進であることが要件である。道路形状は、自車両のいる車両通行帯の右側に隣接する車両通行帯が存在することが要件である。この右隣の車両通行帯には、他の前方車両は存在しないことが要件である。これらの要件に該当する場合、自車両は交差点を右折するために右側の車両通行帯に進路変更する必要がある。そこで、自車両に右隣の車両通行帯に進路変更させることで、自車両の進路前方の先行車両を回避して、更に他の前方車両も存在しない状況下で前方交差点に到達できる。よって、このケースでは、右隣の車両通行帯への進路変更案内と減速指示とを運転支援内容の候補に選択する。
【0086】
状況No.5のケースは、図5(a)に示す通過可能例1に該当する。すなわち、この通過可能例1に示すとおり、自車両が2つある車両通行帯のうち進行方向左側を走行しているとき、自車両が右折のために右側の車両通行帯に進路変更することで、交差点手前で停止する先行車両を回避して前方交差点に到達できる。
【0087】
(状況No.7)
自車両の前方交差点での進行方向は右折であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向は直進であることが要件である。道路形状は、交差点手前に右折専用の車両通行帯が増設されていることが要件である。この右折専用通行帯には、他の前方車両は存在しないことが要件である。これらの要件に該当する場合、自車両は右折のために道路形状に沿って右折専用通行帯に進入し、先行車両は直進のために道路形状に沿って左側の車両通行帯に進入する。このため、自車両は進路前方の先行車両や他の前方車両も存在しない状況下で前方交差点に到達できる。このケースでは、自車両の右折専用通行帯への進入は必然であるため、進路変更を案内する必要ななく、減速指示のみを運転支援内容の候補に選択する。なお、本ケースでは、自車両の進路前方に先行車両が複数連続して存在する場合、右折専用通行帯が最後部の先行車両よりも手前側(自車両側)にあることを要件とする。
【0088】
状況No.7のケースは、図7(a)に示す通過可能例5に該当する。すなわち、この通過可能例5に示すとおり、自車両は右折専用通行帯の出現によって増幅する道路形状に沿って右折専用通行帯に進入することで、交差点手前で停止する先行車両を回避して前方交差点に到達できる。
【0089】
(状況No.8)
自車両の前方交差点での進行方向は右折であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向は左折であることが要件である。道路形状は、自車両のいる車両通行帯の右側に隣接する車両通行帯が存在することが要件である。この右隣の車両通行帯には、他の前方車両は存在しないことが要件である。これらの要件に該当する場合、自車両は交差点を右折するために右側の車両通行帯に進路変更する必要がある。一方、先行車両は前方交差点を左折するために現在の車両通行帯を走行し続けると予測される。そこで、自車両に右隣の車両通行帯に進路変更させることで、自車両の進路前方の先行車両を回避して、更に他の前方車両も存在しない状況下で前方交差点に到達できる。よって、このケースでは、右隣の車両通行帯への進路変更案内と減速指示とを運転支援内容の候補に選択する。
【0090】
状況No.5のケースは、図5(a)に示す通過可能例1に該当する。すなわち、この通過可能例1に示すとおり、自車両が2つある車両通行帯のうち進行方向左側を走行しているとき、自車両が右折のために右側の車両通行帯に進路変更することで、交差点手前で停止する先行車両を回避して前方交差点に到達できる。
【0091】
(状況No.9)
自車両の前方交差点での進行方向は右折であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向は左折であることが要件である。道路形状は、自車両のいる車両通行帯の左側に隣接する車両通行帯が存在することが要件である。自車両の進路上には、この先行車両の他に前方車両は存在しないことが要件である。これらの要件に該当する場合、自車両は交差点を右折するために右側の車両通行帯を走行し続ければよい。一方、先行車両は前方交差点を左折するために左側の車両通行帯に進路変更すると予測される。そのため、自車両に進路変更をさせなくても先行車両を回避して前方交差点に到達できる。よって、このケースでは、進路変更は不要であると判断して、減速指示のみを運転支援内容の候補に選択する。
【0092】
状況No.9のケースは、図6(b)に示す通過可能例4に該当する。すなわち、この通過可能例4に示すとおり、自車両が2つある車両通行帯のうち、右折のために進行方向右側を走行している場合、やがて先行車両が左折のために左側の車両通行帯へ進路変更していくと予測されるので、自車両はこの車両通行帯をそのまま走行し続ければよい。
【0093】
(状況No.10)
自車両の前方交差点での進行方向は右折であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向は左折であることが要件である。道路形状は、交差点手前に右折専用の車両通行帯が増設されている状況であることが要件である。この右折専用通行帯には、他の前方車両は存在しないことが要件である。これらの要件に該当する場合、自車両は右折のために道路形状に沿って右折専用通行帯に進入し、先行車両は左折のために道路形状に沿って左側の車両通行帯に進入する。このため、自車両は進路前方の先行車両や他の前方車両も存在しない状況下で前方交差点に到達できる。このケースでは、自車両の右折専用通行帯への進入は必然であるため、進路変更を案内する必要ななく、減速指示のみを運転支援内容の候補に選択する。なお、本ケースでは、自車両の進路前方に先行車両が複数連続して存在する場合、右折専用通行帯が最後部の先行車両よりも手前側(自車両側)にあることを要件とする。
【0094】
状況No.10のケースは、図7(a)に示す通過可能例5に該当する。すなわち、この通過可能例5に示すとおり、自車両は右折専用通行帯の出現によって増幅する道路形状に沿って右折専用通行帯に進入することで、交差点手前で停止する先行車両を回避して前方交差点に到達できる。
【0095】
(状況No.11)
自車両の前方交差点での進行方向は左折であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向は直進であることが要件である。道路形状は、自車両のいる車両通行帯の左側に隣接する直進可能な車両通行帯が存在することが要件である。この左隣の車両通行帯には、他の前方車両は存在しないことが要件である。これらの要件に該当する場合、自車両は交差点を左折するために左側の車両通行帯に進路変更する必要がある。そこで、自車両に左隣の車両通行帯に進路変更させることで、自車両の進路前方の先行車両を回避して、更に他の前方車両も存在しない状況下で前方交差点に到達できる。よって、このケースでは、左隣の車両通行帯への進路変更案内と減速指示とを運転支援内容の候補に選択する。
【0096】
状況No.11のケースは、図5(b)に示す通過可能例2に該当する。すなわち、この通過可能例2に示すとおり、自車両が2つある車両通行帯のうち進行方向右側を走行しているとき、自車両が左折のために左側の車両通行帯に進路変更することで、交差点手前で停止する先行車両を回避して前方交差点に到達できる。
【0097】
(状況No.12)
自車両の前方交差点での進行方向は左折であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向は直進であることが要件である。道路形状は、交差点手前に左折専用の車両通行帯が増設されていることが要件である。この左折専用通行帯には、他の前方車両は存在しないことが要件である。これらの要件に該当する場合、自車両は左折のために道路形状に沿って左折専用通行帯に進入し、先行車両は直進のために道路形状に沿って右側の車両通行帯に進入する。このため、自車両は進路前方の先行車両や他の前方車両も存在しない状況下で前方交差点に到達できる。このケースでは、自車両の左折専用通行帯への進入は必然であるため、進路変更を案内する必要ななく、減速指示のみを運転支援内容の候補に選択する。なお、本ケースでは、自車両の進路前方に先行車両が複数連続して存在する場合、左折専用通行帯が最後部の先行車両よりも手前側(自車両側)にあることを要件とする。
【0098】
状況No.12のケースは、図7(b)に示す通過可能例6に該当する。すなわち、この通過可能例6に示すとおり、自車両は左折専用通行帯の出現によって増幅する道路形状に沿って左折専用通行帯に進入することで、交差点手前で停止する先行車両を回避して前方交差点に到達できる。
【0099】
(状況No.13)
自車両の前方交差点での進行方向は左折であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向は右折であることが要件である。道路形状は、自車両のいる車両通行帯の右側に隣接する車両通行帯が存在することが要件である。自車両の進路上には、この先行車両の他に前方車両は存在しないことが要件である。これらの要件に該当する場合、自車両は交差点を左折するために左側の車両通行帯を走行し続ければよい。一方、先行車両は前方交差点を右折するために右側の車両通行帯に進路変更すると予測される。そのため、自車両に進路変更をさせなくても先行車両を回避して前方交差点に到達できる。よって、このケースでは、進路変更は不要であると判断して、減速指示のみを運転支援内容の候補に選択する。
【0100】
状況No.13のケースは、図6(a)に示す通過可能例3に該当する。すなわち、この通過可能例3に示すとおり、自車両が2つある車両通行帯のうち左折のために進行方向左側を走行している場合、やがて先行車両が右折のために右側の車両通行帯へ進路変更していくと予測されるので、自車両はこの車両通行帯をそのまま走行し続ければよい。
【0101】
(状況No.14)
自車両の前方交差点での進行方向は左折であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向は右折であることが要件である。道路形状は、自車両のいる車両通行帯の左側に隣接する直進可能な車両通行帯が存在することが要件である。この左隣の車両通行帯には、他の前方車両は存在しないことが要件である。これらの要件に該当する場合、自車両は交差点を左折するために左側の車両通行帯に進路変更する必要がある。一方、先行車両は前方交差点を右折するために右側の車両通行帯を走行し続けると予測される。そのため、自車両に左隣の車両通行帯に進路変更させることで、自車両の進路前方の先行車両を回避して、更に他の前方車両も存在しない状況下で前方交差点に到達できる。よって、このケースでは、左隣の車両通行帯への進路変更案内と減速指示とを運転支援内容の候補に選択する。
【0102】
状況No.14のケースは、図5(b)に示す通過可能例2に該当する。すなわち、この通過可能例2に示すとおり、自車両が2つある車両通行帯のうち進行方向右側を走行しているとき、自車両が左折のために左側の車両通行帯に進路変更することで、交差点手前で停止する先行車両を回避して前方交差点に到達できる。
【0103】
(状況No.15)
自車両の前方交差点での進行方向は左折であることが要件である。先行車両の前方交差点での進行方向は右折であることが要件である。道路形状は、交差点手前に左折専用の車両通行帯が増設されていることが要件である。この左折専用通行帯には、他の前方車両は存在しないことが要件である。これらの要件に該当する場合、自車両は左折のために道路形状に沿って左折専用通行帯に進入し、先行車両は右折のために道路形状に沿って右側の車両通行帯に進入する。このため、自車両は進路前方の先行車両や他の前方車両も存在しない状況下で前方交差点に到達できる。このケースでは、自車両の左折専用通行帯への進入は必然であるため、進路変更を案内する必要ななく、減速指示のみを運転支援内容の候補に選択する。なお、本ケースでは、自車両の進路前方に先行車両が複数連続して存在する場合、左折専用通行帯が最後部の先行車両よりも手前側(自車両側)にあることを要件とする。
【0104】
状況No.15のケースは、図7(b)に示す通過可能例6に該当する。すなわち、この通過可能例6に示すとおり、自車両は増幅する道路形状に沿って左折専用通行帯に進入することで、交差点手前で停止する先行車両を回避して前方交差点に到達できる。
【0105】
なお、上記の状況No.1〜15においては、自車両が走行している車両通行帯の進路前方に複数の先行車両が存在する場合、全ての先行車両に対して上記の要件が該当することが要件となる。
【0106】
(状況No.16)
自車両の進行方向、先行車両の進行方向、道路形状、及び、先行車両以外の前方車両状況の各要件が、上記の状況No.1〜15の何れの組合せにも該当しない場合、進路変更案内及び減速指示の何れの運転支援も実行不可能であると判断する。
【0107】
図3のフローチャートの説明に戻る。S208では、S207での状況判断の結果において、進行信号の現示期間内に前方交差点に到達できると判断した否かに応じて処理を分岐する。進行信号の現示期間内に前方交差点に到達できると判断した場合(S208:YES)、S209の処理へ進む。つづくS209では、S207での状況判断の結果において、自車両の進路変更が必要であると判断したか否かに応じて処理を分岐する。自車両の進路変更が必要であると判断した場合(S209:YES)、S210の処理へ進み、進路変更が不要であると判断した場合(S209:NO)、S204の処理へ移行する。
【0108】
自車両の進路変更が必要である場合に進むS210では、S207で決定した進路変更先の車両通行帯の後方に、自車両の進路変更又は減速調整の支障となる後続車両が存在するか否かを判定する。進路変更及び減速調整の何れの支障となる後続車両も存在しない場合(S210:NO)、「進路変更及び減速調整により通過可能」との判断結果を確定し(S211)、本処理を終了する。
【0109】
一方、S208で進行信号の現示期間内に前方交差点に到達できないと判定した場合(S208:NO)、あるいは、S210で進路変更又は減速調整の支障となる後続車両が存在すると判定した場合(S210:YES)、「通過不可」との判断結果を確定し(S212)、本処理を終了する。
【0110】
[変形例]
(1)上記実施形態の通過可否判断処理では、自車両の進路前方に先行車両がいるときに進路変更の可否を判断する際、自車両が走行している車両通行帯と隣接する車両通行帯のみを判断の対象とした。しかし、これに限らず、例えば、車両通行帯が3つ以上ある道路においては、隣接する車両通行帯より更に離れた車両通行帯も進路変更の候補として判断するように構成してもよい。
【0111】
具体的には、まず、自車両が走行している車両通行帯と隣接する車両通行帯について進路変更の可否を判断し、そこに前方車両が存在した場合等、隣接する車両通行帯での運転支援ができない状況であった場合には、更にその隣の車両通行帯について、前方車両の有無等に基づいて進路変更の可否を判断するようにすればよい。また、自車両が走行している車両通行帯と隣接する車両通行帯より更に離れた車両通行帯への進路変更を案内する場合、一端、隣接する車両通行帯への進路変更を案内した後、更に次の隣接する車両通行帯への進路変更を案内するといった具合に、段階的に進路変更を案内すればよい。
【0112】
(2)上記実施形態では、前方交差点において現在停止信号が現示されている状況を対象に、自車両が適切な速度に減速することで当該前方交差点に到達する前に停止信号の現示期間をやり過ごし、次の進行信号で交差点を無停止で通過できるようにするための運転支援を実行する事例について説明した。しかし、これに限らず、別の内容の運転支援を実行する場合においても、本発明を適用可能である。その一例として、自車両が前方交差点に到達する時期において停止信号で停止することが余儀なくされる場合、無駄なアクセル操作を低減したり、電気自動車等における回生制動を積極的に利用したりして省エネルギーを実現する方法や、停止するまでの速度変化率を適切な範囲内に抑えて乗り心地を向上する方法等、適切な減速方法で交差点手前の所定位置に停止できるようにするための運転支援を採用することが考えられる。
【0113】
このような運転支援を行う場合、支援された走行方法で交差点で停止するのに支障となる先行車両が存在する場合、この先行車両を回避すると共に他の前方車両のいない進路変更先を特定し、速度調整支援と併せて進路変更案内を行うことができる。具体的な制御方法については、図2,3のフローチャートに示す手順で適用される諸条件を、交差点で停止するための運転支援に対応した内容に変更したものを採用できる。
【0114】
[効果]
上記実施形態の路車間通信システムによれば、次の効果を奏する。
(1)前方交差点へ至るための運転を対象とする運転支援の支障となる周辺車両の存在を検知し、その支障を回避して運転支援を実施可能であるか否かを判断することで、その判断結果に基づいて、他車両による支障を回避可能な運転支援を実施することができる。
【0115】
(2)具体的には、自車両と前方交差点との間に、自車両が走行している車両通行帯の進路前方を走行する先行車両が存在する場合、運転支援の可能な別の車両通行帯への進路変更できる状況であれば、その車両通行帯への進路変更を案内することができる。そして、この案内に基づいて進路変更が行われば、先行車両による支障が回避され、自車両の進路前方に他車両が存在しない状態で速度案内や速度調整といった運転支援を遂行できる。
【0116】
(3)前方交差点における車両通行帯の通行区分と、自車両及び他車両の進行方向とを状況判断に加味することで、運転支援に係る進路変更の要否や可否をより的確に判断することができ、周辺車両状況に応じた適切な運転支援を実現できる。
【0117】
(4)自車両の進路変更又は減速調整の支障となる後続車両の存否に応じて運転支援の実施の可否を判断することで、運転支援によって自車両と後方車両とが互いに支障となるような状況を回避できる。
【0118】
[実施形態の構成と特許請求の範囲に記載の構成との対応]
上記実施形態の路車間通信システムの各部構成と、特許請求の範囲に記載の構成との対応は次のとおりである。車載装置1の無線通信部15及び制御部16が、特許請求の範囲における信号情報取得手段に相当する。また、位置特定部10、外部機器接続部11、光ビーコン通信部14及び制御部16が、走行状況情報取得手段に相当する。外部機器接続部11、無線通信部15及び制御部16が、周辺車両状況取得手段に相当する。また、制御部16が、状況判断手段、運転支援制御手段及び進行方向特定手段に相当する。また、外部機器接続部11及び制御部16が、車両通行帯情報取得手段に相当する。
【0119】
一方、交通信号機2の無線通信部21及び信号制御部22が、特許請求の範囲における信号情報送信手段に相当する。
【符号の説明】
【0120】
1…車載装置、10…位置特定部、11…外部機器接続部、12…表示部、13…音声出力部、14…光ビーコン通信部、15…無線通信部、16…制御部、2…交通信号機、21…無線通信部、22…信号制御部、23…光ビーコン、24…信号表示部、31…レーダ・カメラ、32…車速センサ、33…作動制御部、34…ナビゲーション装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進行方向前方の交差点に設置された交通信号機の信号現示の予定に関する情報を少なくとも含む信号情報を取得する信号情報取得手段と、
自車両の走行状況に関する走行状況情報を取得する走行状況情報取得手段と、
自車両周辺に存在する他車両に関する周辺車両情報を取得する周辺車両情報取得手段と、
前記信号情報取得手段により取得した信号情報と、前記走行状況情報取得手段により取得した走行状況情報と、前記周辺車両情報取得手により取得した周辺車両情報とに基づく所定の状況判断を行い、自車両が現在地から当該交差点へ至るための運転を対象とする所定の運転支援について、その状況判断結果に対応した運転支援内容を決定する状況判断手段と、
前記状況判断手段によって決定した運転支援内容に従って前記所定の運転支援を実行する運転支援制御手段とを備えること
を特徴とする運転支援車載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援車載装置において、
前記所定の運転支援は、自車両が、停止信号によって当該交差点手前で停止させられないで走行状態のまま進行信号の現示期間内に当該交差点に到達できるように、自車両の速度調整を支援するものであって、
さらに、自車両が走行している道路に設けられた車両通行帯に関する車両通行帯情報を取得する車両通行帯情報取得手段を備え、
前記周辺車両情報取得手段は、自車両の前方で当該交差点の手前を走行している他車両に関する情報を含む前記周辺車両情報を取得し、
前記状況判断手段は、前記信号情報、前記走行状況情報、前記周辺車両情報、及び、前記車両通行帯情報に基づいて、自車両が走行している車両通行帯の進路前方を走行する先行車両が存在すると判断した場合、自車両が現在走行中の車両通行帯とは異なる進路変更先の車両通行帯があり、かつ、その進路変更先の車両通行帯において前方を走行する前方車両が存在しない状況下で、自車両が停止信号によって当該交差点手前で停止させられずに走行状態のまま進行信号の現示期間内に当該交差点に到達するための速度調整が可能か否かを判断し、その判断の結果、進路変更先の車両通行帯があり、かつ速度調整可能である場合において、その速度調整のため推奨速度及び進路変更を前記運転支援内容として決定し、
前記運転支援制御手段は、前記状況判断手段により決定した推奨速度及び進路変更に従って、当該進路変更先の車両通行帯への進路変更を案内する情報を運転者に対して報知すると共に、前記推奨速度に沿った速度調整を支援する所定動作を行うこと
を特徴とする運転支援車載装置。
【請求項3】
請求項1に記載の運転支援車載装置において、
前記所定の運転支援は、当該交差点で停止信号を現示している期間内において自車両が適切な減速方法で当該交差点の停止位置で停止できるように、自車両の速度調整を支援するものであって、
さらに、自車両が走行している道路に設けられた車両通行帯に関する車両通行帯情報を取得する車両通行帯情報取得手段を備え、
前記周辺車両情報取得手段は、自車両の前方で当該交差点の手前を走行している他車両に関する情報を含む前記周辺車両情報を取得し、
前記状況判断手段は、前記信号情報、前記走行状況情報、前記周辺車両情報、及び、前記車両通行帯情報に基づいて、自車両が走行している車両通行帯の進路前方を走行する先行車両が存在すると判断した場合、自車両が現在走行中の車両通行帯とは別の進路変更先の車両通行帯があり、かつ、その進路変更先の車両通行帯において前方を走行する前方車両が存在しない状況下で、停止信号の現示期間内に当該交差点の停止位置に到達するための速度調整が可能か否かを判断し、その判断の結果、進路変更先の車両通行帯があり、かつ速度調整可能である場合において、その速度調整のための推奨速度及び進路変更を前記運転支援内容として決定し、
前記運転支援制御手段は、前記状況判断手段により決定した推奨速度及び進路変更に従って、当該進路変更先の車両通行帯への進路変更を案内する情報を運転者に対して報知すると共に、前記推奨速度に沿った速度調整を支援する所定動作を行うこと
を特徴とする運転支援車載装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の運転支援車載装置において、
さらに、自車両の当該交差点での進行方向を特定するする進行方向特定手段を備え、
前記車両通行帯情報取得手段は、前記車両通行帯に対して当該交差点での進行方向別に指定されている通行区分に関する情報を含む前記車両通行帯情報を取得し、
前記周辺車両情報取得手段は、自車両の前方で当該交差点の手前を走行している他車両の当該交差点での進行方向に関する情報を取得し、
前記状況判断手段は、さらに、自車両及び前記他車両の当該交差点での進行方向と、前記車両通行帯の当該交差点での進行方向別の通行区分とに基づき、前記先行車両が存在する場合、自車両の当該交差点での進行方向に対応する通行区分の指定された別の車両通行帯であって、前記先行車両の当該交差点での進行方向に対応する通行区分の指定された車両通行帯とは異なる進路変更先の車両通行帯があり、かつ、その進路変更先の車両通行帯において前方を走行する前方車両が存在しない状況下で前記速度調整が可能か否かを判断し、その判断の結果、進路変更先の車両通行帯があり、かつ速度調整可能である場合において、その速度調整のための推奨速度及び進路変更を前記運転支援内容として決定すること
を特徴とする運転支援車載装置。
【請求項5】
請求項4に記載の運転支援車載装置において、
前記状況判断手段は、自車両の当該交差点での進行方向に対応する通行区分の指定された車両通行帯を走行しているときに前記先行車両が存在する場合、当該先行車両の当該交差点での進行方向に対応する通行区分の指定された別の車両通行帯の有無に応じて進路変更の要否を判断すると共に前記速度調整の可否を判断し、その判断の結果、進路変更が不要で、かつ速度調整可能と判断した場合、前記速度調整のための前記推奨速度のみを前記運転支援内容として決定し、
前記運転支援制御手段は、前記状況判断手段により決定した推奨速度に従って、前記推奨速度に沿った速度調整を支援する所定動作を行うこと
を特徴とする運転支援車載装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の運転支援車載装置において、
前記周辺車両情報取得手段は、自車両の後方を走行している後方車両に関する情報を含む前記周辺車両情報を取得し、
前記状況判断手段は、前記周辺車両情報に基づいて前記運転支援の実施の支障となる後方車両の存否を判断し、その判断の結果、前記運転支援の実施の支障となる後方車両が存在すると判断した場合、前記運転支援の不実施を決定すること
を特徴とする運転支援車載装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の運転支援車載装置と、
交差点に設置された特定の交通信号機の信号現示の予定に関する情報を少なくとも含む信号情報を車両に対して送信する信号情報送信手段を備える路側通信装置と
を備えることを特徴とする路車間通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−22565(P2012−22565A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160726(P2010−160726)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】