説明

運転者支援装置、および運転者支援システム

【課題】車両の挙動に影響を与え得る支援を行う支援機能を有する運転者支援装置において、支援機能を作動させることによる交通流の乱れを軽減することができる技術を提供する。
【解決手段】車載装置においては、支援機能のうちの少なくとも1つの支援機能の作動を許可する禁止するかの情報を含む許可情報(支援リスト)を、自車両の外部から取得し(S220)、自車両が実施しようとする支援機能の作動が許可情報で許可されているか禁止されているかを判定し(S240)。支援機能の作動が許可情報で許可されていれば、支援機能の作動を許可し、支援機能の作動が許可情報で禁止されていれば、支援機能について作動を禁止する(S250)。許可情報は、本実施形態の車載装置と同様の機能を有する他の車両においても利用可能とされている。この車載装置では、許可情報によって支援機能の作動を許可するか禁止するかを設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の運転操作を支援する運転者支援装置、および運転者支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の運転者支援装置(システム)として、信号機の灯色の情報を利用して、自車両が青信号で交差点を通過できるように案内を行う支援機能を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−299666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記運転者支援装置では、支援機能を作動させるか否かは各車両が判断するよう設定されているものと考えられる。ここで、上記の支援機能を作動させた車両は、例えば、次の信号機を青信号で通過するために走行速度を低めに設定したりする場合がある。
【0005】
また、例えば、省エネに関する支援機能を作動させた場合には、自車両を緩やかに加減速させる場合がある。これらのような支援機能を作動させると、結果として渋滞を発生させる等、交通流を乱す虞がある。
【0006】
そこでこのような問題点を鑑み、車両の挙動に影響を与え得る支援を行う支援機能を有する運転者支援装置および運転者支援システムにおいて、支援機能を作動させることによる交通流の乱れを軽減することができる技術を提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために成された運転者支援装置において、許可情報取得手段は、支援機能のうちの少なくとも1つの支援機能の作動を許可する禁止するかの情報を含む許可情報を、自車両の外部から取得し、許可判定手段は、自車両が実施しようとする支援機能の作動が許可情報で許可されているか禁止されているかを判定する。そして、作動制御手段は、支援機能の作動が許可情報で許可されていれば、支援機能の作動を許可し、支援機能の作動が許可情報で禁止されていれば、支援機能について作動を禁止する。ただし、許可情報は、許可情報取得手段、許可判定手段、および作動制御手段を有する他の車両においても利用可能とされている。
【0008】
このような運転者支援装置によれば、許可情報によって支援機能の作動を許可するか禁止するかを設定することができる。そして、許可情報を複数の車両で共有することで、支援機能が一部の車両のみで作動されることを防止することができる。したがって、支援機能が作動することにより交通流の乱れが発生しにくくすることができる。
【0009】
さらに、上記運転者支援装置においては、運転者支援装置が有する支援機能の一覧を含む機能情報を、外部から取得した機能情報に含まれる支援機能の作動を許可するか否かについての情報を許可情報として生成する外部装置に対して送信する機能情報送信手段、を備え、許可情報取得手段は、外部装置によって生成された許可情報を取得する。
【0010】
このような運転者支援装置によれば、自身(運転者支援装置)が有する支援機能に対応する必要な許可情報のみを取得することができる。
【0011】
ところで、上記運転者支援装置においては、支援機能として、信号機の灯色に関する信号機情報を利用して自車両が交差点を停車せずに通過できるような出力をする無停車通過機能を備えていてもよい(請求項2)。
【0012】
このような運転者支援装置によれば、許可情報によって無停車通過機能の作動を許可するか禁止するかを設定できる。そして、渋滞発生が予想される際に無停車通過機能の作動を禁止する許可情報が取得されるようにすれば、無停車停止機能が作動することによる交通流の乱れを防止することができるので、渋滞発生を抑制することができる。
【0013】
また、上記運転者支援装置においては、許可情報を適用する条件を表す適用条件を、自車両の外部から取得する適用条件取得手段と、自車両の車両状態または自車両の周囲環境を表す車両パラメータが適用条件に合致するか否かを判定する適用判定手段と、を備え、作動制御手段は、車両パラメータが適用条件に合致し、かつ支援機能の作動が許可情報で許可されている場合に、支援機能について作動を許可し、車両パラメータが前記適用条件に合致し、かつ支援機能の作動が許可情報で許可されていない場合に、支援機能について作動を禁止するようにしてもよい(請求項3)。
【0014】
なお、車両パラメータが適用条件に合致しない場合には、支援機能の作動を許可してもよいし、禁止してもよい。
【0015】
このような運転者支援装置によれば、車両パラメータが適用条件に合致する際に、許可情報に基づいて支援機能の作動を許可するか禁止するかを設定することができる。
【0016】
さらに、上記運転者支援装置において、適用条件取得手段は、領域または時間帯を指定した指定情報を許可情報として取得し、適用判定手段は、自車両が走行する領域が指定情報により指定された領域内であるか否か、または現在時刻が指定情報により指定された時間帯内であるか否かを判定するようにしてもよい(請求項4)。
【0017】
このような運転者支援装置によれば、領域または時間帯を指定して無停車通過機能の作動を許可するか禁止するかを設定することができる。
【0018】
次に、上記目的を達成するために成された運転者支援システムは、自車両の挙動に影響を与え得る支援を行う1または複数の支援機能を有する運転者支援装置と、これらの運転者支援装置との間で通信可能な管理装置と、を備え、管理装置は、所定領域内に存在する車両における運転者支援装置に、各運転者支援装置が有する支援機能のうちの少なくとも1つの支援機能の作動を許可するか禁止するかの情報を含む許可情報を送信する許可情報送信手段と、外部から取得した機能情報に含まれる支援機能の作動を許可するか否かについての情報を前記許可情報として生成する許可情報生成手段と、を備え、各運転者支援装置は、前述の許可情報取得手段と、許可判定手段と、作動制御手段と、機能情報送信手段と、を備えるようにしてもよい。
【0019】
また、上記運転者支援システムにおいて管理装置は、外部指令に応じて許可情報を更新する許可情報更新手段、を備えていてもよい。
【0020】
このような運転者支援システムによれば、管理装置が保持する許可情報を外部指令に応じて更新することができる。よって、運転者支援装置に対して許可情報を更新しながら提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】運転者支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】リストデータ取得処理を示すフローチャート(a)、および運転支援判断処理を示すフローチャート(b)である。
【図3】リストデータの一例を示す説明図(a)、およびエリア情報を示す鳥瞰図(b)である。
【図4】リストデータ要求処理を示すフローチャートである。
【図5】送信用データおよびリストデータの詳細を示す説明図である。
【図6】支援リスト生成処理を示すフローチャートである。
【図7】各車両から受信した支援リストに含まれる運転支援の項目と、支援許可リストに含まれる運転支援の項目との関係を示す説明図(a)、およびリストデータ受信処理を示すフローチャート(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
【0023】
[第1実施形態]
[第1実施形態の構成]
まず、図1に基づいて本実施形態の運転者支援システム100の構成を説明する。運転者支援システム100は、道路を走行する複数の車両にそれぞれ搭載される車載装置1(運転者支援装置)と、道路交差点に設置される交通信号機毎に付随して設けられる路側機6(外部装置)とを備えている。
【0024】
各車両の車載装置1は、他の車両の車載装置1と車車間通信を実施可能に構成されているとともに、路側機6との間で路車間通信を実施可能に構成されている。なお、各車両の車載装置1は全て同様の構成とされているため、図1においては、ある1つの車載装置1についてのみを詳細に図示している。
【0025】
車載装置1は、図1に示すように、位置特定部10、外部機器接続部11、表示部12、音声出力部13、データベース14、無線通信部15、および車側制御部16等を備えている。
【0026】
このうち、位置特定部10は、車速センサ32や、光ビーコン受信機34、図示しないGPS受信機、ジャイロスコープ等による検出信号に基づいて車両の現在地や進行方向を特定し、その特定したデータを車側制御部16に入力する。なお、光ビーコン受信機34は、交差点手前に配置された光ビーコン送信機から、交差点までの距離の情報、現在地(ビーコン送信機の位置)の情報、交通情報等を受信する。
【0027】
また、外部機器接続部11は、車両に搭載されているレーダ31、車速センサ32、光ビーコン受信機34、作動処理部33等の他のECU(Electronic Control Unit)等、各種機器との間で通信を行うためのインタフェースであり、各機器から送信されてくる車両情報のデータを車側制御部16に入力する。
【0028】
表示部12は、画像を表示する液晶パネル等の表示面を備えた表示装置であり、車側制御部16からの制御に基づいて各種の運転支援画像を表示する。画像を表示する表示面は、車両の運転席から視認可能な場所に配置される。
【0029】
音声出力部13は、音声を出力するスピーカ等を備えた音声出力装置であり、車側制御部16からの制御に基づいて運転支援のための各種の案内音声を出力する。
【0030】
データベース14は、路傍の各所に設置された路側機6から受信したエリアデータを記憶するための記憶装置であり、フラッシュメモリやハードディスクドライブ等の書き換え可能な不揮発性の記憶装置が用いられる。
【0031】
なお、ここでいうエリアデータとは、交通信号機が設置された複数の交差点を包含する所定のエリア単位でまとめられた各交通信号機における信号機情報を含む。また、信号機情報としては、各交通信号機(以下、単に「信号機」ともいう。)についての現在および将来の灯色、各灯色の継続時間の情報(つまり、信号灯色に関するスケジュールの情報)と、信号機が配置された位置の情報とが含まれている。データベース14に記憶されているエリアデータは、そのエリアデータに該当の信号機を通過する際に実行する運転支援制御に用いられる。
【0032】
無線通信部15は、他車両の無線通信部や、路傍に設置された路側機6との間で双方向の無線通信(車車間通信および路車間通信)を行うための通信装置である。この路車間通信に用いる通信様式としては、例えばETC(登録商標)システム等で用いられる狭域通信(DSRC)や、VICS(登録商標)等で用いられる電波ビーコンおよび光ビーコンの技術を用いることが考えられる。あるいは、2011年(予定)のアナログテレビ放送の終了後に利用区分が再編される予定の700MHz帯の電波を利用することも考えられる。この700MHz帯の電波は、DSRCで用いられる5.8GHz帯の電波と比較して波長が長いため、回折を起こし易い。そのため、建築物が密集する都市部において、建物の影からでも良好に通信が行うことができる。
【0033】
なお、無線通信部15は、位置特定部10によって生成された自車両の位置情報を車側制御部16からの指令(例えば、定期的に車側制御部16から送信指令が成される。)に応じて外部送信する。
【0034】
車側制御部16は、CPU,ROM,RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとして構成されており、車載装置1の各部を統括制御する。この車側制御部16は、ROM等に記憶されたプログラムに従って、路車間通信によるエリアデータの取得・更新に関する処理や、各種の運転支援(支援機能)に関する処理を実行する。
【0035】
ここで、運転支援としては、例えば、信号機情報が含まれるエリアデータを受けて、次に通過する交通信号機に関する情報提供や、交差点を円滑に通行するための走行制御等を行う。詳細には、例えば、下記のような処理が挙げられる。
【0036】
[1]自車両が交差点を停車することなく通過できるようにこの交差点に配置された信号機の灯色を青に変更するよう要求する現示灯色変更要求を路側機6に送信する処理、
[2]信号機における右折用の青矢印の表示時間を延長するよう要求する右矢延長要求を路側機6に送信する処理、
[3]信号機の灯色が赤または青の時間を短縮するよう要求する赤(青)信号時間短縮要求を路側機6に送信する処理、
[4]信号機の灯色が赤または青の時間を延長するよう要求する赤(青)信号時間延長要求を路側機6に送信する処理、
[5]信号機の灯色に関する信号機情報を利用して自車両が交差点を停車せずに通過できるような速度を運転者に報知する交差点無停止走行処理(無停車通過機能)、
[6]交差点におけるアイドリングストップを実施する処理(アイドルストップ)、
[7]車間距離が極端に狭くならないように車間距離を制御するなどの安全運転支援処理。
【0037】
ところで、本実施形態において、データベース14にて保持されるエリアデータには、各運転支援の内容に対して作動を許可するか否かが対応付けられた支援リスト(図3(a)、図5参照)が含まれている。そして、車側制御部16は、上記のような支援を実施することができるか否かをこの支援リストを参照することによって判断する。つまり、車側制御部16が所定の運転支援を実施しようとしたときに、支援リストにて作動が許可されていない場合には、車側制御部16はこの運転支援を実施しないことを意味する。
【0038】
次に、路側機6は、無線通信部20、路側通信部21、データベース22、および路側制御部23を備えている。
【0039】
このうち、無線通信部20は、道路を走行する車両に搭載された車載装置1との間で無線通信(路車間通信)を行うための通信装置である。この路車間通信に用いる通信様式としては、上述の車載装置1と同様のものを用いる。
【0040】
路側通信部21は、ネットワーク5を介して、同じ所定エリア内の他所の交差点に設置された交通信号機に付随する他の路側機6や交通信号機を制御したり、交通情報を提供する外部機関である交通管制センタ7との間で情報通信したりするための通信装置である。
なお、路側通信部21による交通管制センタ7との間での情報通信は、無線によるものであってもよいし有線によるものであってもよい。
【0041】
路側機6のデータベース22は、複数の交通信号機に関する各々の信号機情報や、上記の支援リストとこの支援リストが有効な領域を示すエリア情報とを含むリストデータをまとめたエリアデータを記憶するための記憶装置である。データベース22には、例えばフラッシュメモリやハードディスクドライブ等の書き換え可能な不揮発性の記憶装置が用いられる。
【0042】
なお、リストデータには、エリア情報に換えて(或いはエリア情報の加えて)、支援リストを適用する時間帯、天候、車両速度等の適用条件が含まれていてもよい。この場合、後述するS240の処理にて、自車両の車両状態または自車両の周囲環境を表す車両パラメータが適用条件に合致するか否かを判定することになる。
【0043】
路側制御部23は、CPU,ROM,RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとして構成されており、路側機6の各部を統括制御する。特に、路側制御部23は、定期的に、エリア内信号機情報データベース22からエリアデータを読み出し、無線通信部20を介して車載装置1にエリアデータを無線配信する。
【0044】
[第1実施形態の処理]
上記のような運転者支援システム100において実施される処理について説明する。特に、路側機6が支援リストを含むリストデータ(エリアデータ)を車載装置1に送信し、車載装置1がこのリストデータを受けて、実施可能な運転支援を設定する処理について、図2以下の図面を用いて説明する。
【0045】
図2(a)は路側機6の路側制御部23が実行するリストデータ取得処理を示すフローチャート、図2(b)は車載装置1の車側制御部16が実行する運転支援判断処理を示すフローチャートである。
【0046】
リストデータ取得処理は、路側機6の電源が投入されると開始され、その後繰り返し実施される処理である。この処理では、図2(a)に示すように、まず、路側機6のデータベース22において、適用可能な(外部送信可能な)リストデータが存在するか否かを判定する(S110)。
【0047】
適用可能なリストデータが存在しなければ(S110:NO)、直ちにリストデータ取得処理を終了する。また、適用可能なリストデータが存在すれば(S110:YES)、リストデータをデータベース22から取得し(S120)、取得したリストデータを無線通信部20による通信可能領域内に送信する(S130)。
【0048】
ここで、S130の処理にて送信されるリストデータについて図3を用いて説明する。図3(a)はリストデータの一例を示す説明図、図3(b)はエリア情報を示す鳥瞰図である。
【0049】
リストデータには、図3(a)に示すように、路側機IDとエリア情報と支援リストとが含まれている。路側機IDは、リストデータを送信する路側機を特定するための識別子である。
【0050】
また、エリア情報は、例えば、緯度の上限・下限、経度の上限・下限のように、支援リストを有効とする領域を特定するための情報である。本実施形態のように領域を特定すると、図3(b)の破線に示すように、長方形の領域が特定される。
【0051】
なお、エリア情報は、路側機6の通信範囲(図3(b)では実線の円で表示)よりも狭く設定されており、車両がエリア情報で特定される領域に進入すると直ちに、支援を開始または禁止できるように設定されている。また、図3(b)に示す例では、第1の路側機(路1)による通信範囲と第2の路側機(路2)による通信範囲とが重複しているが、各路側機から送信されるエリア情報にて特定される領域は、重複しないよう設定されている。
【0052】
支援リストは、上記[1]〜[7]に示す運転支援のそれぞれについて、作動を許可するか否かの情報がそれぞれ対応付けられたデータとして構成されている。図3(a)に示す例では、作動を許可する運転支援を「○」で示し、作動を禁止する運転支援を「×」で示している。
【0053】
続いて、以前の処理においてリストデータを送信してからの時間を測定するタイマ処理を行い(S140)、この時間が所定の待ち時間(例えば100ms程度)を満了したか否かを判定する(S150)。待ち時間が満了していなければ(S150:NO)、S140の処理に戻る。また、待ち時間が満了していれば(S150:YES)、S110の処理に戻る。
【0054】
次に、運転支援判断処理について説明する。運転支援判断処理は、例えば、車両の電源が投入されると開始され、その後繰り返し実施される。運転支援判断処理では、図2(b)に示すように、まず、位置特定部10から自車両の位置情報を取得する(S210)。
【0055】
そして、リストデータを路側機6から取得する(S220:許可情報取得手段、適用条件取得手段)。なお車載装置1は、積極的に路側機6にリストデータの要求を行うようにしてもよいが、本実施形態においては路側機6が定期的に送信するリストデータを受動的に取得する。このリストデータは、路側機6の通信範囲内に存在する他の車両(車載装置)も取得することができる。
【0056】
続いて、リストデータに含まれる支援リストの更新を行う(S230)。つまり、データベース14において、リストデータを記録する。この際、同じ路側機IDを有するリストデータを上書きする。
【0057】
そして、自車両の現在地がエリア情報で特定される領域内であるか否かを判定し、この領域内の場合、支援リストに基づいて適用可能な(実施することができる)運転支援があるか否かを判定する(S240:適用判定手段)。適用可能な運転支援がなければ(S240:NO)、運転支援判断処理を終了する。
【0058】
また、適用可能な運転支援があれば(S240:YES)、周辺車両の情報、自車両の情報、路側機6から提供されるエリアデータ(特に信号機情報)等の情報を用いて、許可された運転支援のうち、実施する運転支援を設定する(S250:許可判定手段)。なお、許可された運転支援のうちの何れの運転支援を実施するかについては、運転者が運転支援の作動を許可しているか等、種種の条件に応じて自車両において設定される。
【0059】
そして、実施すると決定された支援内容を外部機器接続部11を介して作動処理部33等に送信し(S260:作動制御手段)、運転支援判断処理を終了する。なお、作動処理部33は、加速制御や制動制御等を行うことによって車両の挙動を制御するよう設定されている。
【0060】
[第1実施形態による効果]
以上のように詳述した車載装置1において、車側制御部16は、支援機能のうちの少なくとも1つの支援機能の作動を許可する禁止するかの情報を含む許可情報(本実施形態では支援リスト)を、自車両の外部から取得し、自車両が実施しようとする支援機能の作動が許可情報で許可されているか禁止されているかを判定する。そして、車側制御部16は、支援機能の作動が許可情報で許可されていれば、支援機能の作動を許可し、支援機能の作動が許可情報で禁止されていれば、支援機能について作動を禁止する。ただし、許可情報は、本実施形態の車載装置1と同様の機能を有する他の車両においても利用可能とされている。
【0061】
このような車載装置1によれば、許可情報によって支援機能の作動を許可するか禁止するかを設定することができる。そして、許可情報を複数の車両で共有することで、支援機能が一部の車両のみで作動されることを防止することができる。したがって、支援機能が作動することによる交通流の乱れを軽減することができる。
【0062】
また車載装置1においては、支援機能として、信号機の灯色に関する信号機情報を利用して自車両が交差点を停車せずに通過できるような出力をする無停車通過機能を備えている。
【0063】
このような車載装置1によれば、許可情報によって無停車通過機能の作動を許可するか禁止するかを設定できる。そして、渋滞発生が予想される際に無停車通過機能の作動を禁止する許可情報が取得されるようにすれば、渋滞発生を抑制することができる。
【0064】
さらに、車載装置1において車側制御部16は、許可情報を適用する条件を表す適用条件(本実施形態ではエリア情報)を、自車両の外部から取得し、自車両の車両状態または自車両の周囲環境を表す車両パラメータが適用条件に合致するか否かを判定する。そして、車側制御部16は、車両パラメータが適用条件に合致し、かつ支援機能の作動が許可情報で許可されている場合に、支援機能について作動を許可し、車両パラメータが前記適用条件に合致し、かつ支援機能の作動が許可情報で許可されていない場合に、支援機能について作動を禁止する。ただし、車両パラメータが適用条件に合致しない場合には、支援機能の作動を禁止する。
【0065】
このような運転者支援装置によれば、車両パラメータが適用条件に合致する際に、許可情報に基づいて支援機能の作動を許可するか禁止するかを設定することができる。
【0066】
また、車載装置1において、車側制御部16は、領域または時間帯を指定した指定情報を許可情報として取得し、自車両が走行する領域が指定情報により指定された領域内であるか否か、または現在時刻が指定情報により指定された時間帯内であるか否かを判定する。
【0067】
このような車載装置1によれば、領域または時間帯を指定して無停車通過機能の作動を許可するか禁止するかを設定することができる。
【0068】
[第2実施形態]
次に、別形態の運転者支援システム200について説明する。本実施形態(第2実施形態)では、第1実施形態の運転者支援システム100と異なる箇所のみを詳述し、第1実施形態の運転者支援システム100と同様の箇所については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
第1実施形態の運転者支援システム100では、路側機6が定期的にリストデータを送信したのに対して、第2実施形態の運転者支援システム200では、車載装置1が路側機6に必要な支援リストを含むリストデータを要求し、路側機6はこの要求に応じたリストデータを生成し、このリストデータを車載装置1に送信するようにしている。
【0070】
これらの処理について図4以下の図面を用いて説明する。図4は車載装置1の車側制御部16が実行するリストデータ要求処理を示すフローチャートである。リストデータ要求処理は、例えば、車両の電源が投入されると開始され、前述の運転支援判断処理とは並行して実施される処理である。
【0071】
このリストデータ要求処理では、図4に示すように、まず、自車両のデータベース14にて保持された提供可能な支援リストを取得する(S310)。ここで、提供可能な支援リストとは、車両が有する運転支援の種別によって異なる。例えば、自車両(車両A)が、運転支援として、現示灯色変更要求、右矢延長要求、赤信号時間延長要求、青信号時間延長要求、交差点無停止走行処理、交差点アイドルストップ、安全運転支援を有する場合、図5(a)に示すように、これらの運転支援について、作動を許可するか否かが設定されていない支援リスト(作動を許可するか否かを示す欄が空欄(「−」)となっているリスト)を取得する。
【0072】
なお、自車両(車両B)が、運転支援として、現示灯色変更要求、右矢延長要求、交差点無停止走行処理、安全運転支援のみを有する場合、或いは、自車両(車両C)が現示灯色変更要求、右矢延長要求、赤信号時間短縮要求、赤信号時間延長要求、安全運転支援のみを有する場合には、自車両が有する運転支援の項目のみが反映された支援リストを取得する(図5(c)、図5(e)参照)。
【0073】
続いて、自車両の位置情報を取得し(S320)、支援リストを含む送信用リストを送信する(S330:機能情報送信手段)。ここで、送信用リストとは、図5(a)、図5(c)、図5(e)に示すように、支援リストに自車両を特定するための識別子(車両ID)を付したものを示す。なお、送信用リストには、自車両の位置情報や進行方向の情報等の自車両情報が含まれていてもよい。
【0074】
次いで、S140,S150の処理と同様に、前回リストを送信してからの時間を測定するタイマ処理を行い(S340)、この時間が所定の待ち時間を満了したか否かを判定する(S350)。待ち時間が満了していなければ(S350:NO)、S340の処理に戻る。また、待ち時間が満了していれば(S350:YES)、S310の処理に戻る。
【0075】
次に、リストデータ要求処理に対応して路側機6が実施する支援リスト生成処理について図6のフローチャートを用いて説明する。支援リスト生成処理は、第1実施形態において説明した支援リスト取得処理に換えて実施される処理である。
【0076】
支援リスト生成処理は、無線通信部20が車載装置1から送信用リストを受けると開始され、図6に示すように、データベース22から支援許可リストを取得する(S410)。ここで、支援許可リストとは、作動を許可する1または複数の運転支援の種別が特定されたリストを示す。
【0077】
なお、各車両から受信した支援リストに含まれる運転支援の項目と、支援許可リストに含まれる運転支援の項目とには、例えば、図7(a)に示すような関係がある。即ち、図7(a)に示す例では、各車両から受信した支援リストに含まれる運転支援の項目の一部が支援許可リストの項目に含まれている。ただし、各車両から受信した支援リストに含まれる運転支援の項目の少なくとも一部が支援許可リストの項目に含まれている必要はなく、この場合でも、本実施形態では適切に処理することができる。
【0078】
続いて、変数nを1に設定する(S420)。ここで、変数nは、車載装置1から受信した送信用リストに含まれる支援リストにおいて、運転支援の項目の記載順序を示す。つまり、nが1であれば、1番目の項目として記載された運転支援の内容を示す。
【0079】
次いで、車載装置1から受信した送信用リストのn番目の項目が路側機6のデータベース22に格納された支援許可リストに含まれているか否かを判定する(S430)。n番目の項目が支援許可リストに含まれていれば(S430:YES)、この項目の適用可否フラグを適用許可(○)に設定し(S440)、変数nをインクリメントする(S460)。
【0080】
また、n番目の項目が支援許可リストに含まれていなければ(S440:NO)、この項目の適用可否フラグを適用不許可(×)に設定し(S450)、変数nをインクリメントする(S460)。そして、送信用リストの全項目数Nとインクリメント後の変数nとを比較する(S470)。
【0081】
変数nが全項目数N以下であれば(S470:NO)、S430の処理に戻る。また、変数nが全項目数Nよりも大きければ(S470:YES)、送信情報を生成する(S480)。ここで、送信情報とは、適用許可、適用不許可を設定した支援リストを含むリストデータ(エリアデータ)を示す。
【0082】
リストデータとしては、例えば、図5(b)、図5(d)、図5(f)に示すように、送信元の路側機ID、車両ID、エリア情報、支援リストを含んでいる。なお、リストデータに含まれる支援リストは、車両から送信された送信用リストに含まれる支援リストに対して、作動を許可するか否かの情報のみを付加したものとされている。つまり、車両からの要求(送信された運転支援の項目)に回答するのみとしており、車両からの支援リストに含まれない運転支援の項目については回答しない。
【0083】
続いて、生成したリストデータを送信用リストの送信元の車載装置1に送信する(S490:許可情報送信手段)。なお、車載装置1では、リストデータに含まれる車両IDによって送信先が自身の車載装置1であるか否かを特定し、自身の車両IDが含まれたリストデータのみを取得する。
【0084】
この処理が終了すると、支援リスト生成処理を終了する。
【0085】
[第2実施形態による効果]
車載装置1において車側制御部16は、自車両が有する支援機能の一覧を含む機能情報を、外部から取得した機能情報に含まれる支援機能の作動を許可するか否かについての情報を許可情報として生成する路側機6に対して送信し、路側機6によって生成された許可情報を取得する。
【0086】
このような車載装置1によれば、自身(車載装置1)が有する支援機能に対応する必要な許可情報のみを取得することができる。
【0087】
[その他の実施形態]
本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0088】
例えば、上記実施形態において、領域を指定する情報であるエリア情報を取得し、自車両がエリア情報で特定される領域内に存在するか否かを判定したが、時間帯を指定する情報を取得し、現在時刻がこの時間帯の範囲内か否かを判定するようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態において路側機6は、最新のリストデータ(支援許可リスト)を外部から取得し、更新するようにしてもよい。つまり、図7(b)に示す処理を実施すればよい。図7(b)は、路側機6の路側制御部23が実行するリストデータ受信処理(許可情報更新手段)を示すフローチャートである。
【0090】
リストデータ受信処理は、支援リスト生成処理とは並行して実施される処理であって、例えば、路側機6の電源が投入されると開始され、その後、所定周期(例えば10分毎など)で繰り返し実施される。この支援リスト生成処理では、まず、最新のリストデータを交通管制センタ7等から取得する(S510)。なお路側機6は、積極的に交通管制センタ7等にリストデータの要求を行うようにしてもよいし、受動的にリストデータを取得してもよい。
【0091】
そして、支援リストに追加する運転支援の項目(アイテム)があるか否かを判定する(S520)。ここでは、既に路側機6が所持しているリストデータと新たに取得したリストデータとを比較し、新たに取得したリストデータのみに含まれる項目を追加する項目とする。
【0092】
追加する項目があれば(S520:YES)、支援リストに対象となる項目を追加し(S530)、S540の処理に移行する。また、追加する項目がなければ(S520:NO)、直ちにS540の処理に移行する。
【0093】
続いて、支援リストから削除する運転支援の項目があるか否かを判定する(S540)。ここでは、既に路側機6が所持しているリストデータと新たに取得したリストデータとを比較し、既に路側機6が所持しているリストデータのみに含まれる項目を削除する項目とする。
【0094】
削除する項目があれば(S540:YES)、支援リストから対象となる項目を削除し(S550)、リストデータ受信処理を終了する。また、削除する項目がなければ(S540:NO)、直ちにリストデータ受信処理を終了する。
【0095】
このような運転者支援システム100によれば、路側機6が保持する許可情報を外部指令に応じて更新することができる。よって、車載装置1に対して許可情報を更新しながら提供することができる。
【0096】
また、上記第2実施形態においては、路側機6は支援許可リストに含まれる項目以外の作動を禁止するよう構成したが、路側機6が支援禁止リストを保持し、この支援禁止リストに含まれる項目のみの作動を禁止するようにしてもよい。また、上記各実施形態では、エリア情報で特定される領域外に車両がいる場合(適用条件を満たさない場合)における運転支援の実施について言及していないが、例えば、上記領域外に車両がいる場合には、運転支援の作動に制限を加えるようにしてもよいし、制限を加えないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…車載装置、5…ネットワーク、6…路側機、7…交通管制センタ、10…位置特定部、11…外部機器接続部、12…表示部、13…音声出力部、14…データベース、15…無線通信部、16…車側制御部、20…無線通信部、21…路側通信部、22…データベース、23…路側制御部、31…レーダ、32…車速センサ、33…作動処理部、34…光ビーコン受信機、100,200…運転者支援システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、自車両の挙動に影響を与え得る支援を行う1または複数の支援機能を有する運転者支援装置であって、
前記支援機能のうちの少なくとも1つの支援機能の作動を許可するか禁止するかの情報を含む許可情報を、自車両の外部から取得する許可情報取得手段と、
自車両が実施しようとする支援機能の作動が前記許可情報で許可されているか禁止されているかを判定する許可判定手段と、
前記支援機能の作動が前記許可情報で許可されていれば、前記支援機能の作動を許可し、前記支援機能の作動が前記許可情報で禁止されていれば、前記支援機能について作動を禁止する作動制御手段と、
を備え、
前記許可情報は、前記許可情報取得手段、前記許可判定手段、および前記作動制御手段を有する他の車両においても利用可能であり、
さらに、当該運転者支援装置は、
当該運転者支援装置が有する支援機能の一覧を含む機能情報を、外部から取得した機能情報に含まれる支援機能の作動を許可するか否かについての情報を前記許可情報として生成する外部装置に対して送信する機能情報送信手段、を備え、
前記許可情報取得手段は、前記外部装置によって生成された許可情報を取得すること、
を特徴とする運転者支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転者支援装置において、
当該運転者支援装置は、前記支援機能として、信号機の灯色に関する信号機情報を利用して自車両が交差点を停車せずに通過できるような出力をする無停車通過機能を備えたこと
を特徴とする運転者支援装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の運転者支援装置において、
前記許可情報を適用する条件を表す適用条件を、自車両の外部から取得する適用条件取得手段と、
自車両の車両状態または自車両の周囲環境を表す車両パラメータが前記適用条件に合致するか否かを判定する適用判定手段と、
を備え、
前記作動制御手段は、前記車両パラメータが前記適用条件に合致し、かつ前記支援機能の作動が前記許可情報で許可されている場合に、前記支援機能について作動を許可し、前記車両パラメータが前記適用条件に合致し、かつ前記支援機能の作動が前記許可情報で許可されていない場合に、前記支援機能について作動を禁止すること
を特徴とする運転者支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の運転者支援装置において、
前記適用条件取得手段は、領域または時間帯を指定した指定情報を前記適用条件として取得し、
前記適用判定手段は、自車両が走行する領域が前記指定情報により指定された領域内であるか否か、または現在時刻が前記指定情報により指定された時間帯内であるか否かを判定すること
を特徴とする運転者支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−101701(P2013−101701A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−35737(P2013−35737)
【出願日】平成25年2月26日(2013.2.26)
【分割の表示】特願2010−183220(P2010−183220)の分割
【原出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】