説明

過熱検出器を備えた分電盤

【課題】 電路上に設けられた多数のネジ接続部の過熱状態を単一の検出器で検出できるとともに、主幹ブレーカが遮断動作したときに、検出器に電流が流れないようにし、負荷側回路の安全を確保する。
【解決手段】 分電盤ケースの内側に、主幹ブレーカ5と過熱検出器7を設ける。過熱検出器7のケース73に検出線74を配線し、検出線74上にセンサ回路75とセンサスイッチ76を設ける。センサ回路75の出力線77を統合入力回路78を介して平均値回路79に接続する。判定回路80で平均値を閾値と比較し、主幹ブレーカ5を含む各種盤内機器のネジ接続部の過熱状態を判定する。主幹ブレーカ5と過熱検出器7との間に作動機構91を設け、主幹ブレーカ5が電路を遮断したときに、電磁コイル93でセンサスイッチ76を開き、センサ回路75を開路状態とし、過熱検出器7を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ接続部の過熱状態を検出する検出器を備えた分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、分電盤内に装備されるブレーカや端子台等の機器は、端子部にネジを使用しているため、ネジの緩みで電源座と圧着端子との接触状態が不安定になると、アーク放電が発生し、過熱状態となりやすい。そこで、従来、端子部の過熱状態を検出するためのセンサ回路をブレーカに内蔵した技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、図6に示すようなセンサ回路101の両端を端子ネジ102と電源座103とに接続し、これらの端子部品の電位差に基づいて、電源座103と圧着端子104との接触不良を検出するブレーカが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−245836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ブレーカの端子部は、一次側と二次側にそれぞれ複数設けられており、また、分電盤には、主幹ブレーカや分岐ブレーカの他に、端子台、リミッター、銅バーなど、ネジを用いた多数の電気接続部が存在する。このため、図6に示すようなセンサ回路101を多数のネジ接続部に設けた場合、検出用リード線の本数が増え、分電盤内が煩雑になるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、多数のネジ接続部の過熱状態を単一の検出器で検出できるとともに、主幹ブレーカが遮断動作したときに、検出器に電流が流れないようにし、負荷側回路の安全を確保できる分電盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は次のような分電盤を提供する。
(1)分電盤ケースの内側に、電路を遮断する主幹ブレーカと、電路上のネジ接続部の過熱状態を検出する過熱検出器とを備え、過熱検出器に、分電盤の入力線および分岐用銅バーに接続されるセンサ回路と、センサ回路を開閉するセンサスイッチとを設け、主幹ブレーカと過熱検出器との間に、主幹ブレーカが電路を遮断したときに、センサスイッチを開き、センサ回路を開路状態とする作動機構を備えたことを特徴とする分電盤。
【0008】
(2)作動機構が、主幹ブレーカの主接点に連動する補助スイッチと、過熱検出器のセンサスイッチを駆動するアクチュエータと、アクチュエータを補助スイッチに電気的に連結するリンク回路とを含むことを特徴とする分電盤。
【0009】
(3)作動機構が、主幹ブレーカの主接点を開くブレーカ側手動ハンドルと、過熱検出器のセンサスイッチを開く検出器側手動ハンドルと、検出器側手動ハンドルをブレーカ側手動ハンドルに機械的に連結するリンク部材とを含むことを特徴とする分電盤。
【0010】
(4)過熱検出器がネジ接続部の過熱状態を検出したときに点灯する警報ランプを備えたことを特徴とする分電盤。
【0011】
(5)過熱検出器がネジ接続部の過熱状態を検出したときに主幹ブレーカを遮断動作させる遮断回路を備えたことを特徴とする分電盤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の分電盤によれば、分電盤ケースの内側で過熱検出器のセンサ回路を分電盤の入力線および分岐用銅バーに接続したので、主幹ブレーカのみならず、これに接続された端子台、リミッター、銅バー等の多数のネジ接続部の過熱状態を単一の検出器で検出できる。また、主幹ブレーカが電路を遮断したときには、作動機構がセンサ回路を開路状態とするので、過熱検出器に電流が流れないようにして、負荷側回路の安全を確保できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1を示す分電盤の正面図である。
【図2】主幹ブレーカと過熱検出器の構成を示す回路図である。
【図3】主幹ブレーカと過熱検出器の動作を示す回路図である。
【図4】本発明の実施例2を示す分電盤の回路図である。
【図5】本発明の実施例3を示す分電盤の正面図である。
【図6】従来のブレーカ用センサ回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1、図5に示す分電盤1は、それぞれ、分電盤ケース2の内側に端子台3、リミッター4、主幹ブレーカ5、過熱検出器7、分岐ブレーカ8を装備している。ただし、本発明は、各図に示す分電盤1に限定されず、異なる種類のブレーカを追加したり、端子台3とリミッター4の一方または両方を省いて実施することもできる。
【実施例1】
【0015】
図1に示す実施例1の分電盤1では、外部から引き込んだ3本の入力線11が端子台3の第1入力端子31に接続されている。第1入力端子31は同じ端子金具上の第1出力端子32に接続され、第1出力端子32が電路の一部を構成するリード線21によってリミッター4の一次側端子41に接続されている。端子台3の第1入力端子31および第1出力端子32は、それぞれ端子ネジ35,36を備えたネジ接続部である。
【0016】
リミッター4の一次側端子41は内部配線(図示略)を介して二次側端子42に接続されている。これらの端子41,42も、端子ネジ43,44を備えたネジ接続部である。リミッター4の二次側端子42は電路の一部を構成するリード線22で端子台3の第2入力端子33に接続され、第2入力端子33が同じ端子金具上の第2出力端子34に接続されている。第2入力端子33は、端子ネジ37を備えたネジ接続部である。
【0017】
端子台3の第2出力端子34は主幹ブレーカ5の一次側端子51に接続され、一次側端子51が電路の一部を構成する電線56(図2参照)を介して二次側端子52に接続されている。一次、二次側端子51,52は、それぞれ端子ネジ53,54を備えたネジ接続部である。そして、主幹ブレーカ5の二次側端子52が中継用銅バー13と分岐用銅バー14を介して過熱検出器7の二次側端子72に接続されている。
【0018】
中継用銅バー13はネジ15で分岐用銅バー14に接続され、分岐用銅バー14が分電盤ケース3の長手方向に延びている。過熱検出器7は、分岐ブレーカ8と同じ側面形状のケーシング73、詳しくは、奥行きおよび高さ寸法が分岐ブレーカ8と同じで、幅寸法が分岐ブレーカ8よりも大きい(例えば2倍)ケーシング73を備え、分岐ブレーカ8と一列に並ぶように分岐用銅バー14の指定位置に装着されている。
【0019】
過熱検出器7の二次側端子72は、ネジ締めが不要なプラグイン端子であり、分岐用銅バー14に着脱自在に接続されている。そして、過熱検出器7の一次側端子71は、分電盤1の入力線11に接続される端子であり、リード線23で端子台3の第1入力端子31に接続されている。
【0020】
図2および図3は、端子台3を省略し、主幹ブレーカ5と過熱検出器7の内部回路を示している。主幹ブレーカ5のブレーカケース55には3本の電線56(電圧線L1,L2、中性線N)が配線され、電線56上に電路を開閉する主接点57と、電路に流れる過電流に感応するバイメタル58(電圧線L1,L2のみ)とが配設されている。
【0021】
過熱検出器7の検出器ケース73には3本の検出線74が配線され、それぞれに一次側端子(入力線接続端子)71と二次側端子(分岐用銅バー接続端子)72との電位差を検出するセンサ回路75と、センサ回路75を開閉するセンサスイッチ76とが設けられている。センサ回路75としては、特定の構成に限定されないが、例えばフォトカプラ105(図6参照)を用いた入出力絶縁型の回路を使用できる。
【0022】
センサ回路75の出力線77は、統合入力回路78を介して平均値回路79に接続されている。平均値回路79はセンサ回路75の出力から平均値を求め、判定回路80が平均値を閾値と比較し、電路上に設けられた多数のネジ接続部(図1に示す端子31,32,33,34,41,42,51,52、銅バー接続部15)の過熱状態を判定する。
【0023】
判定回路80が過熱状態を判定したときには、その判定結果が自己保持回路81で所定時間保持され、この時間中に出力回路82が過熱状態を知らせるための警報ランプ70を点灯させるとともに、電磁コイル84を励磁する。電磁コイル84はリンク85を介してセンサスイッチ76を開き、センサ回路75における電流の通過を遮断する。
【0024】
一方、主幹ブレーカ5が電路を遮断したときに、過熱検出器7に電流が流れないように、主幹ブレーカ5と過熱検出器7との間には、センサスイッチ76を開く作動機構91が設けられている。作動機構91は、主幹ブレーカ5の主接点57に連動する補助スイッチ92と、センサスイッチ76を駆動するアクチュエータとしての第2電磁コイル93と、第2電磁コイル93を補助スイッチ92に電気的に連結するリンク回路94とから構成されている。
【0025】
補助スイッチ92は開閉リンク95で主接点57に連結され、第2電磁コイル93が第2リンク96でセンサスイッチ76とリンク回路94上のリンクスイッチ97とに連結されている。リンク回路94は、一端が第2電磁コイル93とリンクスイッチ97を介して主幹ブレーカ5の中性線Nに接続され、他端が主幹ブレーカ5の一方の電源線L1またはL2に接続されている。なお、接続点は過熱検出器7側または主幹ブレーカ5側のどちらでもよい。
【0026】
上記構成の分電盤1において、電路が正常な状態にあるときには、図2に示すように、過熱検出器7の第1電磁コイル84が消磁し、センサスイッチ76が閉じ、センサ回路75が閉路状態にあり、主幹ブレーカ5の主接点57が閉じている。このとき、作動機構91では、リンクスイッチ97がリンク回路94を閉じる位置にあるが、補助スイッチ92がリンク回路94を開いているため、第2電磁コイル93が消磁し、センサスイッチ76が閉成位置に保持されている。
【0027】
この状態で、端子台3、リミッター4、主幹ブレーカ5、銅バー13,14を含む電路上のどこかでネジ接続部に接触不良が発生すると、センサ回路75の出力に基づいて、判定回路80がネジ接続部の過熱状態を判定し、出力回路82が警報ランプ70を点灯させ、第1電磁コイル84を励磁する。そして、図3に示すように、第1電磁コイル84の励磁により第1リンク85を介してセンサスイッチ76が開き、センサ回路75が開路状態となる。したがって、電源電流が過熱検出器7を通って負荷側回路に流入するおそれがない。
【0028】
一方、主幹ブレーカ5が、電路の過負荷、漏電、短絡または手動ハンドル操作に応答して電路を遮断したとき、つまり、ネジ接続部の過熱以外の電路異常で動作したときには、主接点57の閉位置から開位置への動きに連動して作動機構91の補助スイッチ92が閉じる。リンクスイッチ97は閉成位置にあるため、リンク回路94に電流が流れ、第2電磁コイル93が励磁し、第2リンク96がセンサスイッチ76を開く。これにより、センサ回路75が開き、過熱検出器7が電流を通過させない遮断状態となる。
【0029】
過熱検出器7の遮断状態では、第2リンク96がセンサスイッチ76と共にリンクスイッチ97を開放するため、リンク回路94が開路状態となり、第2電磁コイル93が消磁し、第2リンク96がロックされる。このため、主幹ブレーカ5が電路を遮断している期間中に、過熱検出器7を復旧させようとしても、その手動ハンドル89(図1参照)をONすることができない。したがって、主幹ブレーカ5の遮断中に、電源電流が過熱検出器7を通って負荷側回路に流れる危険を未然に防止することができる。
【実施例2】
【0030】
図4に示す実施例2の分電盤1は、過熱検出器7がネジ接続部の過熱状態を検出したときに、主幹ブレーカ5を遮断動作させるための遮断回路(擬似漏電回路)61を備えている。すなわち、判定回路80が過熱状態を判定したときに、出力回路82が電磁コイル84を励磁し、電磁コイル84がリンク85を介して検出線74上の第1スイッチ76を開くとともに、遮断回路61上の遮断スイッチ62を閉じるようになっている。
【0031】
遮断回路61は、主幹ブレーカ5の2本の電線56(L1,N)に接続され、遮断スイッチ62が閉じたときに、抵抗63で定まる値の擬似漏電電流を主幹ブレーカ5に流し、そのトリップコイル(図示略)を動作させ、主接点57を開いて電路を遮断する。なお、電路復旧時には、リセットボタン64を押して遮断スイッチ62を開く。
【0032】
したがって、実施例2の分電盤1によれば、ネジ接続部が過熱状態となったときに、遮断回路61により主幹ブレーカ5を遮断動作させ、主幹ブレーカ5がネジ接続部の過熱以外の電路異常で動作したときには、リンク回路94によってセンサ回路75を開放し、より高度の安全を確保できるという利点がある。
【実施例3】
【0033】
図5に示すように、実施例3の分電盤1は、作動機構98の構成において実施例1と相違する。実施例3の作動機構98は、主幹ブレーカ5の主接点57(図2参照)を開くブレーカ側手動ハンドル59と、過熱検出器7のセンサスイッチ76(図3参照)を開く検出器側手動ハンドル89と、検出器側手動ハンドル89をブレーカ側手動ハンドル59に機械的に連結するリンク部材99とから構成されている。
【0034】
主幹ブレーカ5が過熱以外の電路異常で動作したときには、ブレーカ側手動ハンドル59がリンク部材99を介して検出器側手動ハンドル89をOFFする。これにより、センサスイッチ76が開き、センサ回路75が開路状態となり、過熱検出器7が遮断される。復旧時には、ブレーカ側手動ハンドル59をONし、リンク部材99を介して検出器側手動ハンドル89をONする。二つのハンドル59,89を機械的に連結しているので、主幹ブレーカ5のOFF状態で過熱検出器7のみをONすることはできない。
【0035】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、盤内機器として一次送り回路用ブレーカや時間帯別電灯契約機器用ブレーカ等を追加したり、ネジ接続部の過熱状態を検出したときに、実施例1の警報ランプ70を点灯させると同時に、実施例2の遮断回路(擬似漏電回路)61で主幹ブレーカ5を遮断動作させたりするなど、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の構成や配線順序を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 分電盤
2 分電盤ケース
3 端子台
4 リミッター
5 主幹ブレーカ
7 過熱検出器
8 分岐ブレーカ
11 入力線
13 中継用銅バー
14 分岐用銅バー
61 遮断回路
70 警報ランプ
75 センサ回路
80 判定回路
89 検出器側手動ハンドル
98 作動機構
92 補助スイッチ
93 電磁コイル
94 リンク回路
98 作動機構
99 リンク部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分電盤ケースの内側に、電路を遮断する主幹ブレーカと、電路上のネジ接続部の過熱状態を検出する過熱検出器とを備え、過熱検出器に、分電盤の入力線および分岐用銅バーに接続されるセンサ回路と、センサ回路を開閉するセンサスイッチとを設け、主幹ブレーカと過熱検出器との間に、主幹ブレーカが電路を遮断したときに、センサスイッチを開き、センサ回路を開路状態とする作動機構を備えたことを特徴とする分電盤。
【請求項2】
前記作動機構が、主幹ブレーカの主接点に連動する補助スイッチと、過熱検出器のセンサスイッチを駆動するアクチュエータと、アクチュエータを補助スイッチに電気的に連結するリンク回路とを含む請求項1記載の分電盤。
【請求項3】
前記作動機構が、主幹ブレーカの主接点を開くブレーカ側手動ハンドルと、過熱検出器のセンサスイッチを開く検出器側手動ハンドルと、検出器側手動ハンドルをブレーカ側手動ハンドルに機械的に連結するリンク部材とを含む請求項1記載の分電盤。
【請求項4】
前記過熱検出器がネジ接続部の過熱状態を検出したときに点灯する警報ランプを備えた請求項1記載の分電盤。
【請求項5】
前記過熱検出器がネジ接続部の過熱状態を検出したときに主幹ブレーカを遮断動作させる遮断回路を備えた請求項1記載の分電盤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−34288(P2013−34288A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168317(P2011−168317)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)