説明

道路維持車

【課題】使用されていないときに、災害地などに出向いて、非常用電源を供給することができる道路維持車を提供する。
【解決手段】本発明は、道路維持に必要な機能を有する道路維持部と、車両の走行に用いられる走行用エンジン4と、走行用エンジン4から取り出された動力を利用して発電する非常時用発電機11とを備える道路維持車である。走行用エンジン4は、ミッション5に付属するパワーテイクオフ6を含み、非常時用発電機11は、パワーテイクオフ6から得られる回転動力によって発電する。道路維持車は、パワーテイクオフ6からの回転動力を伝達するためのユニバーサルジョイント7と、ユニバーサルジョイント7に設けられたプーリ9,12及びVベルト10とを備える。プーリ9,12及びVベルト10から伝達する回転動力によって、非常用発電機11は、発電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊な用途に用いられる道路維持車両に関し、より特定的には、電気エネルギーを災害発生地などで供給するための道路維持車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、凍結防止剤散布のための道路維持作業車(凍結防止剤散布車という)は、走行用のエンジンのミッションに付いている動力取出し口であるPTO(POWER TAKE−OFF)に油圧ポンプを取付け、ポンプより吐出される圧油により、凍結防止剤を散布するためのアクチュエータ作動用油圧モータを駆動している。したがって、従来の凍結防止剤散布車は、固定的動力伝達システムであるため、定められた道路維持作業しかできない車になっていた。そのため、その業務が終了する冬季以外は、ただ駐車空間を確保して管理しているだけの車両になっていた。その他、使用目的が限定されている道路維持作業車としては、スノープラウ車や、移動式道路標識車、アスファルトフィニッシャー、表面処理車など、種々の車両が存在する。ここでは、道路維持車とは、道路工事や道路の維持管理などに使用される車両のことを広く言うものとする。このような道路維持車は、使用用途が限定されており、降雪時期又は限定された使用時に活用されても降雪時期もしくは道路工事が終われば次の使用時期になるまで休車することになる。従って、稼働率が悪く維持管理費が嵩むといった問題点がある。
【0003】
上記のような状況の下、多目的に利用される道路維持車が、特許文献1,2,及び3に開示されている。特許文献1は、スノープラウ車であって、冬季以外は、散水車として稼働できる道路維持車を開示している。特許文献2は、凍結防止剤散布車であって、冬季以外は、散水車や給水車として稼働できる移動式道路維持車を開示している。特許文献3は、スノープラウ車や凍結防止剤散布車、移動式道路標識車であって、本来の目的に使用されない場合、汚泥回収車や集塵車として稼働できる道路維持車を開示している。このように、特許文献1〜3に記載の道路維持車は、本来の使用目的以外の目的にも使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−287178
【特許文献2】特開2009−287180
【特許文献3】特開2010−127015
【特許文献4】特開2004−153950
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、災害が発生した場合、災害発生地域では、電力配線が寸断され、寸断された配線が普及されるまでの電力供給が問題となる場合がある。従来、定置型発電専用機を現地までトラック等で輸送して設置することによって、災害発生地域での電力供給を可能としていたが、機動性に欠いた対応になっていた。特許文献4のように、発電装置を備えた自走式車両も存在するが、災害時に電力を供給するための車両ではない。
【0006】
災害対応のために、予め据え置き式のエンジン発電機を配備しておくことも可能であるが、災害は、いつ何時どこで発生するか分からないため、稼働率は極めて悪く維持管理負担が嵩むだけであり、このような発電機を配備しておくことは、現実的ではない。
【0007】
そこで、本発明は、使用されていないときに、災害地などに出向いて、非常用電源を供給することができる道路維持車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。本発明は、道路維持に必要な機能を有する道路維持部と、車両の走行に用いられる走行用エンジンと、走行用エンジンから取り出された動力を利用して発電する非常時用発電機とを備える道路維持車である。
【0009】
好ましくは、非常時用発電機によって得られた電力を整流するための整流器をさらに備えるとよい。
【0010】
好ましくは、走行用エンジンは、ミッションに付属するパワーテイクオフを含み、非常時用発電機は、パワーテイクオフから得られる回転動力によって発電するとよい。
【0011】
好ましくは、さらに、パワーテイクオフからの回転動力を伝達するための第1の伝達手段と、第1の伝達手段を伝達する回転動力を非常時用発電機に伝達するための第2の伝達手段とを備えるとよい。
【0012】
好ましくは、第1の伝達手段を伝達した回転動力によって駆動する油圧ポンプをさらに備え、第2の伝達手段は、第1の伝達手段に設けられたプーリ及びVベルトであるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、道路維持車の走行用エンジンから取り出された動力を利用して、発電することができる。したがって、災害地などに出向いて、道路維持車を非常用電源の供給源として活用することができる。道路維持車は、使用用途が限られているので、使われていない間は、自由に、災害地などに出向くことができる。したがって、道路維持車の有効活用につながる。道路維持車は、一般的に、高馬力を有するので、災害地などにも、到達しやすい。このような道路維持車を非常用電源の供給源として活用すれば、非常用に、据え置き式の発電機等を設置しておく必要がなく、災害時に備えるためのコスト負担が軽減する。
【0014】
非常用発電機に整流器を設ければ、家庭用や工場用に適した電力を供給することができる。
【0015】
パワーテイクオフ(PTO)から、非常用発電機に供給する回転動力を取り出すことによって、簡易な構造で、発電することができ、実用化に適することとなる。たとえば、第1及び第2の伝達手段という機構を利用することで、実用化がより可能となる。さらに、第2の伝達手段をプーリ及びVベルトによって構成すれば、回転動力の伝達が容易となる。また、第2の伝達手段をプーリ及びVベルトとすることによって、パワーテイクオフの端部に、油圧ポンプを設置することが可能となり、油圧ポンプから得られる動力を、他の目的に利用することができる。
【0016】
非常用発電機は、場合によっては、道路維持車の各種駆動部を駆動させるための電力として活用することもできる。たとえば、凍結防止剤散布車の回転円盤を回転させるために、当該電力を利用したり、移動式標識車の標識灯を点灯させるために当該電力を利用したりすることもできる。
【0017】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、従来の凍結防止剤散布車1の一例を示す図である。
【図2】図2は、従来の動力機構の拡大図である。
【図3】図3は、従来のスノープラウ車2の一例を示す図である。
【図4】図4は、従来の移動式道路標識車3の一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明の動力機構の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、従来の凍結防止剤散布車1の一例を示す図である。凍結防止剤散布車1は、エンジン4と、ミッション5と、PTO6と、ユニバーサルジョイント7と、油圧ポンプ8と、走行伝達用ユニバーサルジョイント13と、水ポンプ14と、コンベアモータ15と、散布円盤16とを備える。図2は、従来の動力機構の拡大図である。走行伝達用ユニバーサルジョイント13は、エンジン4からの動力を後輪に伝達する。PTO6は、エンジン4から回転動力を取り出し、ユニバーサルジョイント7を介して、油圧ポンプ8に当該動力を供給する。水ポンプ14、コンベアモータ15、および散布円盤16は、道路維持に必要な機能を有しており、ここでは道路維持部と呼ぶことにする。水ポンプ14、コンベアモータ15、および散布円盤16は、油圧ポンプ8から得られる油圧によって作動してもよいし、後述する非常時用発電機11によって得られる電力によって作動してもよい。
【0020】
図3は、従来のスノープラウ車2の一例を示す図である。図3において、図1と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。プラウ17などの道路維持部は、図示しない油圧シリンダから得られる油圧によって作動する。図4は、従来の移動式道路標識車3の一例を示す図である。標識灯18は、オルタネーターから得られる電力によって作動する。ただし、これらの道路維持部の作動方法は、一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0021】
図5は、本発明の動力機構の拡大図である。図5に示すように、本発明では、PTO6と油圧ポンプ8とを連結するユニバーサルジョイント7にプーリ9を設ける。非常時用発電機11には、プーリ12が連結されている。プーリ9とプーリ12とは、Vベルト10によって、略垂直に連結されている。ユニバーサルジョイント7は、PTOから取り出された動力を油圧ポンプ8に伝達するための第1の伝達手段となる。ただし、第1の伝達手段の構造は、ユニバーサルジョイント7に限られるものではない。プーリ9及び12並びにVベルト10は、第1の伝達手段を伝達する回転動力を非常時用発電機11に伝達するための第2の伝達手段となる。ただし、第2の伝達手段は、プーリ9及び12並びにVベルト10に限られるものではない。上記のような構造によって、PTO6から取り出された回転動力が非常時用発電機11に伝達され、電力が発電される。図5に示された動力機構が、凍結防止剤散布車1や、スノープラウ車2、移動式道路標識車3に設けられることによって、非常時に、発電することができる道路維持車を提供することができる。
【0022】
非常時用発電機11によって発電された電気を、整流して、家庭用及び/又は工場用などに利用できるようにする整流器を道路維持車にさらに備えるとよい。
【0023】
なお、その他、図示しないが、道路維持車として、道路舗装を行うための道路維持部を有するアスファルトフィニッシャーや道路表面を洗浄等する道路維持部を有する表面処理車などが存在するが、このような道路維持車についても、図5と同様に、エンジン4からPTO6によって、回転動力を取り出し、非常時用発電機11を発電するようにしてもよい。
【0024】
なお、散布円盤16のように回転動力のアクチュエータが有れば、非常時用発電機11からの電気で駆動させることができ、合わせて、非常用発電機11を一般使用配線の代用電源とする車両に利用することが可能となる。
【0025】
このように、本発明の実施形態によれば、道路維持部と走行用エンジンとを備える道路維持車において、当該走行用エンジンから取り出された動力を利用して発電する非常用発電機11を設けることによって、災害時などに、非常電源として活用可能な道路維持車が提供されることとなる。
【0026】
特に、道路維持車の走行用エンジン4は、高馬力のエンジンであることが多く、このような走行用エンジンを用いて、非常用発電機11に発電をさせれば、高電力を出力することができ、災害時などに、非常用電源として、有効に活用することが期待できる。道路維持車は、冬期以外や工事時以外は、使用されていないので、災害時に、被災地に出向いて、電力を供給することができ、有効活用可能となる。道路維持車は、自走が可能であるから、据え置き型の発電機のように、場所を選ばずに、必要な時に必要な場所に移動させることができ、非常用電源としては、極めて、有効に働くと考えられる。
【0027】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、道路維持車として、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 凍結防止剤散布車
2 スノープラウ車
3 移動式道路標識車
4 エンジン
5 ミッション
6 PTO
7 ユニバーサルジョイント
8 油圧ポンプ
9 プーリ
10 Vベルト
11 非常用発電機
12 プーリ
13 走行伝達用ユニバーサルジョイント
14 水ポンプ
15 コンベアモータ
16 散布円盤
17 プラウ
18 標識灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路維持に必要な機能を有する道路維持部と、
車両の走行に用いられる走行用エンジンと、
前記走行用エンジンから取り出された動力を利用して発電する非常時用発電機とを備える道路維持車。
【請求項2】
前記非常時用発電機によって得られた電力を整流するための整流器をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の道路維持車。
【請求項3】
前記走行用エンジンは、ミッションに付属するパワーテイクオフを含み、
前記非常時用発電機は、前記パワーテイクオフから得られる回転動力によって発電することを特徴とする、請求項1又は2に記載の道路維持車。
【請求項4】
さらに、
前記パワーテイクオフからの回転動力を伝達するための第1の伝達手段と、
前記第1の伝達手段を伝達する回転動力を前記非常時用発電機に伝達するための第2の伝達手段とを備えることを特徴とする、請求項3に記載の道路維持車。
【請求項5】
前記第1の伝達手段を伝達した回転動力によって駆動する油圧ポンプをさらに備え、
前記第2の伝達手段は、前記第1の伝達手段に設けられたプーリ及びVベルトであることを特徴とする、請求項4に記載の道路維持車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87585(P2013−87585A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231881(P2011−231881)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000235163)範多機械株式会社 (26)
【Fターム(参考)】