遠心式液体クロマトグラフィーの方法及び装置
【解決手段】遠心式液体クロマトグラフィーに関する装置及び方法を記載する。多数のクロマトグラフ・エンクロージャに角速度を同時に与えることが可能である。遠心力により、サンプルを含有する移動相流体を、クロマトグラフ・エンクロージャ内で固定相を通して移動させ、サンプル成分に関するクロマトグラフ分離を行なうことができる。遠心分離を駆動力として用いることによって、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と比べて、かなり小さな固定相粒子を用いることができる。また、同等のクロマトグラフ分離を行なう場合、遠心分離技術を利用することによって、HPLCと比べて、分離効率が非常に高くなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の記載]
本出願は、あらゆる目的で、その全体が本明細書に組み込まれる、発明の名称を「Centrifugal Column Chromatograph System(遠心式カラムクロマトグラフ・システム)」とする、Kerrらにより2009年3月13日に出願された米国仮特許出願番号No.61/210,118に対する35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明の態様は、液体クロマトグラフィーを実行するシステムに関する。具体的には、本態様は、遠心力がかかるカラム内で液体クロマトグラフィーを実行するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
クロマトグラフィーは、化学者のみならず自分の専門領域に化学を応用する人々にも用いられるツールである。クロマトグラフィーは、石油業界、食品業界、製薬業界、医学(たとえば、診断法)やその他さまざまな分野で広く用いられ、かつ、必要不可欠なものである。クロマトグラフィーは分離処理技術の1つである。クロマトグラフ処理により、混合物中の各成分を、互いに物理的に分離することが可能である。物理的に分離した各成分を、たとえば、同定を目的として、分析することができる。また、分離した各成分を集めて、他の目的に利用することも可能である。たとえば、他の化学組成を形成する成分として用いることもできる。
【0004】
クロマトグラフィーにおける2つの重要なファクターは、分離効率とスループットである。クロマトグラフ処理において、分離効率は、混合物の各成分を分離する処理能力に関係し、各成分を互いに区別して、必要に応じて、化学的に同一か否かを判別し、化学的に同一な成分を収集することもできる。クロマトグラフ処理における分離効率が不適切な場合、クロマトグラフ処理の対象である混合物の特定の成分を同定したり収集することができなくなる。一方、スループットは、クロマトグラフ処理にかかる時間、分離された各成分を収集するタイミングや、特定の量の成分を集めるのにかかる時間に関係する。通常、スループットタイムが増大すると、クロマトグラフ処理及び関連するクロマトグラフ・システムにかかるコストが増大する。
【0005】
クロマトグラフ分離を行なうための一般的な方法に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)がある。現在、液体クロマトグラフィーの分野では、HPLCを用いるクロマトグラフ・システムが、分離効率とスループットタイムとに優れている。HPLCは、圧力を駆動力として用いて、分離対象成分の混合物を含有する液体を粒子床内で移動させる。粒子床内を液体が移動することにより、粒子床と液体との間の相互作用により液体内の成分が互いに分離される。
【0006】
分離効率を高めるためには、粒子床内の粒子の粒径を小さくすることが望ましい。しかし、粒子床内で液体が十分に移動しなければ、粒径が小さくなるにつれて、スループットタイムが増大してしまう。HPLCでは、圧力を駆動力として用いているため、分離効率のさらなる向上には限界がある。直径約2マイクロメートルの粒径の粒子を用いて、かつ、十分なスループットタイムをえるためには、HPLCでは、約10,000PSIの圧力が必要となる。高い圧力レベルでは粒子が破壊されやすくなり、また、高い圧力レベルを与えるシステムの構築と維持には非常に大きなコストがかかるため、このレベル以上に圧力を増大させても、限られた効果しか得られない。したがって、HPLCのような制限がなく、分離効率とスループットとを向上させることが可能な液体クロマトグラフィーを実行するための方法及び装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、遠心式液体クロマトグラフィーを提供するシステム、方法及び装置に関する様々な実施形態を詳述する。1つ以上のクロマトグラフ・エンクロージャを保持するローターが備えられる。各クロマトグラフ・エンクロージャは、クロマトグラフ固定相を含有し、クロマトグラフ固定相を通る流路を与えるように構成される。遠心力によって、サンプルを含有する移動相流体を、クロマトグラフ・エンクロージャ内のクロマトグラフ固定相に通して、サンプルの各成分に対するクロマトグラフ分離処理を行なうことができる。サンプルの導入を制御して、サンプルの導入前に、ローター上の流れを定常状態条件に到達させるようにしてもよい。駆動力として遠心力を用いることにより、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と比べて、非常に小さな固定相流体を用いることが可能になる。また、同等のクロマトグラフ分離処理を行なう場合でも、遠心力を用いることにより、HPLCと比べて分離効率をかなり向上させることができる。
【0008】
本発明の一つの態様は、遠心式クロマトグラフ・システムであって、1)クロマトグラフ・エンクロージャと、2)前記クロマトグラフ・エンクロージャを保持し、前記クロマトグラフ・エンクロージャを回転させるローターと、3) 前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結するサンプル導入機構と、を備える。サンプル導入機構は、前記ローターの回転中に前記クロマトグラフ・エンクロージャにサンプル流体を導入するように構成される。さらに、サンプル導入機構は、サンプル導入信号を受信し、前記サンプル導入信号の受信に応じて前記サンプル流体の導入を開始する。特定の実施形態において、前記サンプル導入機構に接続される制御装置を備え、前記サンプル流体の導入を自動的に開始するようにしてもよい。さまざまな実施形態において、サンプル導入機構及び/又は制御装置をローター上に保持するようにしてもよい。
【0009】
本発明の別の態様は、遠心式カラムクロマトグラフ・システムであって、1) 軸の周りを回転するように構成されているローターと、2)前記ローターに保持されている複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャと、3)前記クロマトグラフ用カラム・エンクロージャの少なくとも選択された1つに流体連結するサンプル導入機構と、4)前記ローターに保持され、前記複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャと流体連結し、前記複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャから溶出された流体を収容する溶離液リザーバ―と、を備える。
【0010】
さまざまな実施形態において、各クロマトグラフ用カラム・エンクロージャが、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ用カラム・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成される。前記ローターの回転によって生じる遠心力により、前記流体を前記クロマトグラフ用カラム・エンクロージャの軸方向に前記クロマトグラフ固定相の中で移動させる。サンプル導入機構は、前記ローターの回転時に、前記選択されたクロマトグラフ用カラム・エンクロージャにサンプル流体を導入する。
【0011】
本発明のまた別の態様は、遠心式クロマトグラフ・システムであって、1)軸の周りを回転するように構成されているローターと、2)前記ローターに保持されている少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャと、3)前記ローターに保持され、移動相流体を前記ローター上のサンプルと混合して混合流体を生成する混合チャンバーと、を備える。混合チャンバーは、前記ローターに保持される構成要素の回転を利用して、前記サンプルと前記移動相流体との混合を促進する。また、混合チャンバーは、通常、前記クロマトグラフ・エンクロージャの上流側に配置される。さまざまな実施形態において、遠心式クロマトグラフ・システムは、さらに、前記混合チャンバーに流体連結する移動相流体リザーバーと、前記混合チャンバーに流体連結するサンプル導入機構と、を備え、前記移動相流体リザーバーと前記サンプル導入機構とが、前記ローター上又は前記ローター外のいずれかに配置されるようにしてもよい。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、クロマトグラフ・システムであって、1)対応するクロマトグラフ固定相を含有するクロマトグラフ・エンクロージャであって、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成されるクロマトグラフ・エンクロージャと、2)前記クロマトグラフ・エンクロージャを保持するローターであって、所定の角速度で前記クロマトグラフ・エンクロージャを回転させて、遠心力により流体を前記クロマトグラフ固定相を含む前記クロマトグラフ・エンクロージャ内で移動させるように構成されるローターと、3)流体エンクロージャであって、前記ローターの回転時に静止している第1の部分と、前記ローター上に保持され、前記ローターと共に回転する第2の部分とを備え、前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結する流体エンクロージャと、を備える。
【0013】
一実施形態において、クロマトグラフ・システムが、前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結し、前記クロマトグラフ・エンクロージャへの移動相流体の供給を容易にする流体供給機構を備えるものでもよい。流体供給機構は、前記ローターの回転時に静止している第1の部分と、前記ローター上に保持され、前記ローターと共に回転する第2の部分とを備える。流体供給機構は、前記ローターの回転時に、前記流体供給機構の前記第1の部分から前記第2の部分に流体を移動させるように構成される
【0014】
本発明の別の態様は、遠心式クロマトグラフ・システムであって、1)ローターであって、前記ローターに保持されているクロマトグラフ・エンクロージャを備えるローターと、2)前記ローターに近接するガスベアリングであって、前記ローターの回転時に前記ローターを安定化させるように構成されるガスベアリングと、を備える。システムが、さらに、前記ローターを取り囲む格納構造と、前記格納構造により支持されている複数のローター支持構造と、を備えてもよい。各ローター支持構造はガスベアリングを備え、前記ガスベアリングが協働して、前記ローターが回転している間、前記ローターを安定化させてもよい。
【0015】
本発明のまた別の態様は、クロマトグラフ・システムであって、1)ローター上に保持されている複数のクロマトグラフ・エンクロージャであって、各クロマトグラフ・エンクロージャが、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記クロマトグラフ固定相の中を前記ローターの外周面に向かって前記流体を移動させる、複数のクロマトグラフ・エンクロージャと、2)前記ローターの前記外周面の周りに配置されている複数のリンクであって、各リンクが2つの他のリンクと連結して、前記ローターの前記外周面の周りに連続した鎖の輪を形成し、1つ以上の前記リンクが、i)前記外周面に向かって移動する流体を収容し、並びに、ii)前記外周面から離れて内側に流体の方向を変える、ように構成される流路を備える複数のリンクと、を備える。
【0016】
本発明の別の態様は、遠心式クロマトグラフ・システムであって、1)軸の周りを回転するように構成されているローターと、2)前記ローター上に保持されているクロマトグラフ・エンクロージャであって、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記流体を前記クロマトグラフ固定相の中で移動させる、クロマトグラフ・エンクロージャと、3)前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結し、フローウィンドウを備えるフローセルであって、前記クロマトグラフ・エンクロージャと前記フローセルとを通る流路であって、前記クロマトグラフ・エンクロージャの前記クロマトグラフ固定相内の所定位置から始まり、前記フローウィンドウを通過する流路の内側断面積が実質的に一定である、フローセルと、を備える。
【0017】
本発明のまた別の態様は、遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、1)クロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、2)前記クロマトグラフ用カラムを通る移動相流体の流れを形成させて、遠心力により前記移動相を前記クロマトグラフ用カラム内に通し、3)サンプル流体を前記移動相流体の流れに入れることにより、前記サンプル流体を前記クロマトグラフ用カラム内に導入し、前記ローターが回転する間に前記サンプル流体を導入する。この方法はさらに、前記クロマトグラフ用カラム内が移動相流体の定常流条件に到達したか否かを判定し、前記クロマトグラフ用カラム内が移動相流体の定常流条件に到達したと判定された後に、前記サンプル流体を放出するようにしてもよい。また、この方法はさらに、移動相流体の定常流条件に到達したと判定された後に、前記クロマトグラフ用カラム内にサンプル流体を導入し、前記サンプル流体の遠心式クロマトグラフ分離を容易にするようにしてもよい。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、1)クロマトグラフ固定相を含有するクロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、2)前記ローターが回転する間に、前記移動相流体を前記クロマトグラフ用カラムに供給して、遠心力により前記移動相流体を前記クロマトグラフ固定相に通し、3)前記クロマトグラフ用カラムにサンプル流体を導入するタイミングを決定し、前記サンプル流体の遠心式クロマトグラフ分離を容易にする。
【0019】
本発明の他の態様や利点は、本発明の原理を例示する添付の図面を参照した以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0020】
添付の図面を参照する以下の詳細な説明により、本発明をさらに理解することができるであろう。以下の説明において、同じ参照番号は同じ構造要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】回転要素を含むクロマトグラフ・システムを示すブロック図。
【0022】
【図2】クロマトグラフ・システム用に設定されたローター・アセンブリの実施例を示す側面図。
【0023】
【図3】クロマトグラフ・システム用に設定されたローター・アセンブリの実施例を示す上面図。
【0024】
【図4A】クロマトグラフ・システム用に設定されたマニホールド・アセンブリの上面斜視図。
【0025】
【図4B】クロマトグラフ・システム用に設定されたマニホールド・アセンブリの底面図。
【0026】
【図5A】流路の図示を含むローター・アセンブリの垂直断面図。
【0027】
【図5B】流路の図示を含む皿状アセンブリ、クロマトグラフ用カラム、フローセル、復路セグメントリンク及び復路チャネルの上面斜視断面図。
【0028】
【図5C】復路セグメントリンクの斜視図。
【0029】
【図6】リザーバーの断面図及びローター・アセンブリの側面図。
【0030】
【図7A】ガスベアリング支持アセンブリの側面図。
【0031】
【図7B】ガスベアリング支持アセンブリの側面図。
【0032】
【図7C】ガスベアリング支持アセンブリの斜視図。
【0033】
【図8】格納構造内部に配置され、計器取り付け部を備えるローター・アセンブリ及びガスベアリングアセンブリを示す側面図。
【0034】
【図9A】クロマトグラフ・システム用に設定されたローター・アセンブリの実施例を示す上面図。
【0035】
【図9B】クロマトグラフ・システム用に設定されたローター・アセンブリの実施例を示す側面図。
【0036】
【図9C】カラム端部とフローセルとの間に反応チャンバーが備えられた構成を示すブロック図。
【0037】
【図10A】クロマトグラフ分離を実行するための複数のカラムを備えるバケットアセンブリの正面図及び側面図。
【0038】
【図10B】回転中の複数のバケットを含むローター・アセンブリを示す上面図。
【0039】
【図10C】休止状態の複数のバケットを含むローター・アセンブリを示す上面図。
【0040】
【図10D】回転中の複数のバケットを含むローター・アセンブリを示す上面図。
【0041】
【図11】遠心分離前と遠心分離後のクロマトグラフ処理用に設定されたカラムの正面図。
【0042】
【図12】3種類の成分を分離したクロマトグラムを示す図。
【0043】
【図13】クロマトグラフ分離法を実行するための方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0044】
添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下の説明は、本発明の態様を好適な実施例に何ら限定するものではない。特許請求の範囲に記載される本発明の要旨の範囲内で、さまざまな変形や修正が可能であり、その等価物も本発明の範囲内に含まれる。
【0045】
クロマトグラフィーとは、化学物質の混合物をその成分に物理的に分離する処理を意味する。クロマトグラフ処理では、化学物質の混合物はキャリヤー流れ(気体又は液体)の中に溶解される(又は、混合される)。その混合物を含むキャリヤー流れは粒子の床を通過させられる。キャリヤー流れはある流速で粒子の床を移動する。クロマトグラフィーでは、キャリヤー流れはしばしば「移動相」と呼ばれ、粒子の床は「固定相」と呼ばれる。
【0046】
固定相の粒子は、移動相に溶解した混合物の成分が固定相の粒子と異なる程度に相互作用するように選ばれる。混合物の成分が粒子と相互作用する程度の差が、混合物の各成分が如何に速く固定相を通り抜けるかに影響を与える。従って、混合物の成分は固定相を異なった速度で通過する。混合物の2つの成分が異なる速度で移動相を通過すると、ある距離の固定相を通過する間に、固定相をより速く通過する成分が、移動相をより遅く通過する成分より、ある一定時間により多く移動するので、分離される。
【0047】
液体クロマトグラフィーの目的は、混合物の成分が異なる速度で移動相を通過するように選択された移動相と選択された固定相を含むシステムを供給することにある。混合物の成分が、少なくともある程度、分離するとき、分離した成分の性質を特徴づけるために、そしてある場合には混合物の成分を定量するために、いろいろな型の測定装置が用いられる。更に、必要な場合には、混合物から分離した成分が更なる処理又は分析のために収集される。
【0048】
液体クロマトグラフィーでは、上述のように、移動相が一定の半径を有する球 状粒子の様な粒子を含む固定相を通過する。粒子は孔を持つことができ、他の分子が粒子に結合する。粒子の半径、空孔サイズ、結合する分子は、移動相中に溶解した成分と異なる型の物理的相互作用を有するように選択できる。
【0049】
液体クロマトグラフィーの最も初期の実施例では、移動相が固定相中を通過するための駆動力として重力を用いた。例えば、固定相を形成する比較的均一な粒子サイズ分布の粒子を充填したオープンカラムの上層に移動相が負荷された。移動相が重力の下で移動相中を通過する際に、移動相に添加された混合物の成分は分離される。ある場合には、分離した成分が異なる色を有するために、成分が分離したことは視覚的に観測できる。カラムがガラスのように透明な材質であるとき、異なる色のバンドがカラムを降下するのを観測できる。粒子を充填しこのようにして混合物中の成分を分離するのに用いられるカラムは「クロマトグラフ用カラム」と称される。
【0050】
液体クロマトグラフィーは開発された分野であるため、クロマトグラフ用カラムを用いて混合物中の成分を分離する能力は、固定相の充填粒子のサイズが小さくなることによって、増加することが分かっている。より小さい粒径の粒子を用いると固定相の充填効率が向上し、混合物の成分と固定相の粒子の間に相互作用が起こる体積中の表面積を増加させる。したがって、クロマトグラフ用カラムの固定相に用いるより小さな粒径の球状粒子を作成する方法が開発された。
【0051】
重力によって駆動されるクロマトグラフ用カラムでは、移動相中の粒子サイズは無制限に小さくすることはできない。重力ではもはや移動相と成分の混合物が実用的な時間で固定相を通過できなくなる粒子サイズ限界が存在する。駆動力としての重力を用いることによる限界を克服するために、加圧のような他の駆動力が、移動相をクロマトグラフ用カラムに通すために用いられる。
【0052】
より小さな粒径の粒子を固定相に用いることができるように高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が開発された。これにより、クロマトグラフ用カラムの分離性能が上昇した。HPLCでは、移動相をクロマトグラフ用カラムを通過させる駆動力として高圧が用いられる。HPLCでは、クロマトグラフ用カラムに移動相を通過させるのに必要な圧力は、粒子の直径の平方根に逆比例する。数ミクロンの粒子径を用いるためには、HPLCシステムを、およそ10,000PSIの圧力で操作できるように構成する必要があり、したがって、高性能で高価な装置が必要である。現在では、耐圧性、つまり分離効率を向上させるためにより小さい粒子を用いること、がHPLCの更なる発展を制限する要因となっている。
【0053】
HPLCシステムの耐圧性に関する欠点を改善するために、他の駆動力を利用してクロマトグラフ用カラム内で固定相に移動相を通すことが検討されている。既に述べたように、重力は初期のクロマトグラフ・システムで駆動力として利用されていた。オブジェクトに対する重力の効果はシミュレーション可能であり、回転軸の周りを回転するディスク等のプラットフォーム上にオブジェクトを置くことにより重力の効果を増大させることができる。回転座標系でオブジェクトが移動する際に、オブジェクトは、重力と同様に作用する、回転軸に対して垂直な線に沿った力を受ける。
【0054】
回転座標系でオブジェクトが受ける力は「遠心力」と呼ぶことができる。遠心力はしばしば重力の何倍かで表現される。例えば、相対遠心力(RCF)は回転軸の周りに回転するオブジェクトにかかる加速度の尺度であり、「重力」の単位又はgで表わされる。
RCF=r(2πN)2/g
ここでrは回転半径、つまり回転軸からオブジェクトまでの距離、Nは単位時間当たりの回転数で表わした回転速度、gは重力加速度である。RCFはまた次のように書くことができる、
RCF=1.118x10-5 rcm N2RPM
ここでrはcmで測定した回転半径であり、N2RPMは一分当たりの回転数で表わした回転速度である。
【0055】
以下で示すように、RCFはクルマトグラフ用カラムに充填した固定相に移動相を通過させるための駆動力として用いることができる。RCFを利用するためには、移動相はクルマトグラフ用カラムの固定相を通過するのに対して、クルマトグラフ用カラムは回転している。例えば、クルマトグラフ用カラムは回転ディスク上に設置され、カラムを回転させながらクロマトグラフ操作が行われる。クロマトグラフ・システムでRCFを用いる装置及び方法は次の図に示される。
【0056】
最初に、1つ以上の回転要素を有するクロマトグラフ・システムを図1に示す。次に、クロマトグラフ・システムのいろいろな形態の詳細を図2から図13に示す。特に、クロマトグラフ・システムのための回転部品の具体例を図2から図9Cに示す。回転部品の具体例は、回転中に多くのクロマトグラフ・エンクロージャの流路を支持し供給する。「吊り下げバケット」型は図10Aから図10Dに示す。吊り下げバケット型では、図2から図9Cに示す実施例と比較してより簡便にクロマトグラフ・エンクロージャを回転体から脱着可能である。遠心前後のクロマトグラフ・エンクロージャの実施例を図11に示す。クロマトグラムを図12に示す。最後に、クロマトグラフ分離過程の実施方法を図13に示す。
【0057】
クロマトグラフ・システム
図1は、回転要素132を含むクロマトグラフ・システム100のブロック図である。多くの実施例で、回転要素は「ローター」とも呼ばれる。回転要素132を用いて、RCFをクロマトグラフ・システムの構成要素に印可することができる。クロマトグラフ・システム100等におけるRCFの利用とそれに伴う効果を議論する前に、クロマトグラフ・システム100のいくつかの構成要素について説明する。クロマトグラフ・システムに関する説明やクロマトグラフ・システムに含まれる構成要素の数は、本発明を何らこれらの実施例に限定するものではなく、例示を目的としたものに過ぎない。回転要素を有するクロマトグラフ・システムの実施例は図1に示す以外の他の構成要素を備えるものでもよいし、各構成要素を異なる配置で備えるものでもよい。
【0058】
クロマトグラフ・システム100は溶媒管理部108を備えるものでもよい。溶媒管理部108によって、異なる溶媒がいろいろなクロマトグラフ操作に利用でき、クロマトグラフ・システムの運転ごとに変えることができる。溶媒管理部108は、102等の溶媒リザーバーを備えるものでもよい。溶媒リザーバーは、サンプルがクロマトグラフ操作のために溶解される移動相を供給する元として用いることができる。どのようなタイプのサンプルを分析するのかによって、単一の溶媒又はその組み合わせが用いられる。更に、用いる溶媒を測定毎に変えることもできる。つまり、第1の測定で第1のサンプルをクロマトグラフ分析するために第1の溶媒を用い、第2の測定で第2のサンプルを分析するのに第2の溶媒を用いるようにしてもよい。バルブ等の流量調節機構により、個々の測定の要件に応じて、さまざまな溶媒をさまざまな時間で用いることができる。
【0059】
104等の溶媒供給システムは移動相を形成するために溶媒リザーバーから溶媒を異動させるために利用できる。溶媒リザーバー102から溶媒を異動させる駆動力を供給するために、典型的にはポンプ1台又はある種の複数のポンプを用いることができる。グラジエント形成部106は1つの又は複数の溶媒からなる移動相を生成するために用いることができる。二成分の溶媒混合物が通常は用いられるが、更に複雑な溶媒混合物をここに示す実施例で用いることができる。クロマトグラフの一回の運転中に、移動相が有機溶媒の組み合わせから形成される場合には、各溶媒の濃度を時間の関数として変化させることができる。グラジエント形成部106は移動相の成分の濃度を時間の関数として制御することができる。
【0060】
クロマトグラフ・システム100は、サンプル管理部114を備えるものでもよい。サンプル管理部114により、移動相がクロマトグラフ・システムに導入される前に、サンプルが移動相に導入される。サンプル管理部114は、さまざまなサンプル110を保持し、サンプルをサンプルインジェクター112へ充填する機構を有する。サンプルインジェクターはサンプルを導入する機構の一つの例である。112等のサンプルインジェクターは移動相に特定のサンプルを導入するのに用いることができる。例えば、サンプルインジェクターは導管中を移動する移動相流れにサンプルを注入することができる。
【0061】
クロマトグラフ・システム100は、カラム管理部117を備えるものでもよい。カラム管理部117は、温度のようなクロマトグラフ用カラムに関わる条件を制御するのに用いることができる。クロマトグラフ用カラムの温度は、例えば熱電素子(ペルチエ素子)や熱エネルギーをカラムに加えたりカラムから除いたりする何らかの他の方法により、カラムを加熱又は冷却する装置を用いて、制御することができる。カラムに沿って温度勾配があると、カラムに沿って粘度が変化し、その結果カラムに沿って速度が変化する。典型的には、壁を通しての熱伝導の結果、温度はカラムの中央付近で最も高く、カラムの壁に向けて低下する。カラムの壁を加熱することによって、カラムの中央から壁に向けての温度の変化を軽減し、カラム全体の温度を均一にすることができる。温度は、分析物、移動相及び固定相の間の平衡のような化学平衡に劇的な影響を与えることが知られている。再現性の高いクロマトグラフの結果を得るためには、カラム内部を一定の温度にすることが重要である。
【0062】
カラム管理部117は、各カラムの特性履歴を保持するソフトウェアを備えるものでもよい。その特性には、1)いつ充填されたか、2)充填剤の組成、つまり固定相は何か、3)カラムが何回使用されたか、4)移動相溶媒の組成のようなカラムが用いられたクロマトグラフ操作の種類、等があるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
クロマトグラフ・システム100は、検出管理部120を備えるものでもよい。検出管理部120は、クロマトグラフ用カラム内部でのクロマトグラフ処理で移動相から分離された成分を特徴づけるためのいろいろな装置を制御することができる。例えば、カラムからの溶出液が通過するフローセル・ウィンドウを通して光が通過する際に、光源(紫外から可視の領域、190から700 nm)から放出された光量の変化を検出するために、1つ以上の分光光度検出器が用いられる。混合物から物理的に分離された成分は、まだ移動相に溶解しているが、フローセルの中を通過する。そこで、第1の光源から放出された光がフローセルの第1のウィンドウを通過して、成分と相互作用する。光はフローセルの第2のウィンドウを通してフローセルから外へ出ることができ、そこで集光される。集められた光は、光と分離した成分の間に相互作用があったか否かを判定するために用いることができる。
【0064】
クロマトグラフ・システム100はデータ管理部115を備えるものでもよい。データ管理部115は、1つ以上の検出器から得られたデータを集め、分析し、保存するために設けることができる。データ管理部115はまた、検出器から得られたデータを出力するために設けることができる。例えば、データ管理部115は、クロマトグラムをクルマトグラフシステムのディスプレイに出力するように設定することができる。データ管理部115は、個々のクロマトグラフ測定のさまざまなパラメータに関するデータを異なるクロマトグラフ用カラムから収集した情報を追跡及び保存可能に構成されるものでもよい。
【0065】
クロマトグラフ・システム100は捕集管理部124を備えるものでもよい。捕集管理部124は、カラム116を通過し分離した成分を捕集するためのフラクションコレクター122を備えるものでもよい。対象となる幾つかの成分はカラムを異なる時間に溶出し、捕集管理部124は2つ以上の成分のそれぞれをフラクションコレクターに導くように設定することができる。移動相から溶出する幾つかの成分(溶出物と呼ぶ)は対象とならず、「廃棄物」と考えることもある。例えば、サンプルを導入する前に、溶媒をカラムに通過させることができる。捕集管理部124は、サンプルを導入する前にカラムから溶出した溶媒を、廃液コレクター123等の捕集装置の中に捕集することができる。
【0066】
ここに記述した実施例では、クロマトグラフ・システムは回転要素132のような、1つ以上の回転要素を備えるものでもよい。回転要素はローター管理部140によって制御される。ローター管理部140は、時間に対する回転要素132の回転速度、例えば回転数の増加、定常回転、回転数の減少など制御する。ローター管理部140は、回転要素132が正しく作動しているかを監視し、自動調節など回転要素132の作動に伴う処置を行うことができる。ローター管理部140は、回転要素上の電子的制御バルブのような、回転要素132上で作動する多くの要素への電力供給を監視し制御することもできる。
【0067】
システム管理部103は、初期化モード、動作モード、停止モードのような、クロマトグラフ・システム100のさまざまな操作モードの間、システムの全体の機能を監視し、また制御するように設定することができる。システム管理部103は、流れ管理部101、溶媒管理部108、サンプル管理部114、データ管理部115、カラム管理部、検出管理部120、捕集管理部124、及びローター管理部140と通信し、命令を送るように設定できる。システム管理部103は、他のクロマトグラフ・システムや遠隔コンピュータなど、他の装置やシステムと情報を交換するように設定することもできる。
【0068】
クロマトグラフ・システム100は、1つ以上の流れを管理することができる。流れ管理部101は、システム100中の多くのバルブやポンプを、直接に又は他の装置成分を用いた通信により制御するように設定できる。例えば、流れ管理部101が、溶媒管理部108に特定の溶媒を所定の流速で供給するように命令を送って、溶媒管理部108に関係する1つ以上の論理装置が所定の流速で供給が行われるようにバルブやポンプ等のデバイスを制御するようにしてもよい。あるいは、流速管理部101が、溶媒管理部108に関係するバルブやポンプを直接制御するようにしてもよい。
【0069】
流路管理及び流れ分析
流れ管理部101は、流路の数がシステム毎に変えたり、一つのシステム内でも変えることができるように、複数の流路を確立し保持する。クロマトグラフ・システム100内での流れは、流路の始端部126で始まるものでもよい。具体的には、溶媒リザーバー102から始まるものでもよい。流体を、リザーバーから溶媒供給システム104を介してグラジエント形成部106に移動させることができる。流路中の134の点で、流れは回転要素132に移動される。流れの移動は、回転要素132がある回転速度である回転方向138で回転しているときに起こる。異なる実施例では、回転速度と回転方向は変化させることができる。他の実施例では、流速は変化するが回転要素は静止している。
【0070】
回転要素132の上で、いろいろな場所での流れは回転要素132の中心から外に向かっているか、又は他の場合には回転要素132の中心に向かっている。回転体上の流路に沿って、回転要素の水準によって流れも変化させることができる。例えば、最初の段階では流れがクロマトグラフ用カラムを通して動き、次の段階では、例えばクロマトグラフ用カラムの下にあるリザーバーへの流れになる。
【0071】
所定の実施例において、流れは、回転要素の中心近くから入り、中心から外へ流れて116a、116b及び116c等のクロマトグラフ用カラムに入るものでもよい。例えば、流れは、中心近傍に配置される混合チャンバーのような、中心近傍の共通ソースから始まり、複数の流路に分岐する。例えば、サンプル管理部114を通る際に流れが分岐して、異なるサンプルが異なる流路に導入されるようにしてもよい。この分岐位置の例は単に例示のためにすぎない。所定の実施例において、流れが複数の流れに分かれる分岐点を、溶媒管理部108の内部、すなわち、リザーバー102、溶媒供給システム104の前又は内部、グラジエント形成部106の前又は内部、サンプル管理部114の前又は内側、カラム116の前又は内側、検出管理部120の前又は内側、又は捕集管理部124の前又は内側等、流路のいずれの位置に置いてもよい。更に、流れ管理部101は、クロマトグラフ・システムの測定毎に分岐点を変えられるように構成可能である。
【0072】
流路の分岐の例として、流路は、サンプル管理部114より前で、1つの流路で始まるものでもよい。サンプル管理部114で、流路は、複数の流路130、例えば3つの流路、に分岐される。必要に応じて、各流路に異なるサンプルが注入され、クロマトグラフ用カラム116a、116b及び116cの一つを通るようにしてもよい。
【0073】
別の例では、流れはサンプル管理部114の後で分岐することができる。単流路がサンプル管理部114に入り、サンプルが単流路に注入される。サンプル管理部114の後で、流路を複数に分岐させて、分岐した流れを複数のクロマトグラフ用カラムによって並列処理することも可能である。例えば、サンプルを含有する1つの流路をサンプル管理部114で生成し、3つの流路に分岐してクロマトグラフ用カラム116a、116b及び116cによって処理することも可能である。
【0074】
ある実施例では、クロマトグラフ・システム100の流れ管理部101は、流路の数や分岐の位置を変更したり制御したりできるように設定できる。流れ管理部101は、多くの流路が同時に形成されるような管路を備えるものでもよい。更に、流れ管理部は、異なる位置で開閉でき、特定の位置に形成された流路の数を変更可能なバルブのようなスイッチ機構を備えるものでもよい。
【0075】
例えば、流れ管理部101は3つまでの流路を作成できるサンプル管理部114内の管路を制御できる。流れ管理部は、サンプル管理部の前後に位置する分岐機構を制御できる。ある様式では、流れがサンプル管理部114に達する前に3流路を作成する(各流路は例えば116a、116b及び116cのようなクロマトグラフ用カラム接合される)。3つの流路の各々でサンプル管理部114は異なるサンプルを注入することができ、そのサンプルは分析のためのクロマトグラフ用カラムへと進む。
【0076】
別の態様では、サンプル管理部114の前に流れ管理部が分岐機構をオフにし、その結果1つの流れがサンプル管理部114に入り、1つのサンプルが注入される。サンプルが1つの流路に注入された後、分岐機構が活性化され1つの流れが複数の流路に分岐されて複数のカラムを通過する。例えば、116a、116b及び116cの3つのカラムによって処理可能なように、1つの流路を3つの流路に分岐するようにしてもよい。
【0077】
流れ管理部101が流れスイッチ機構を制御し、異なる組み合わせの流路をクロマトグラフ・システム100の中のいろいろな地点で、例えば、溶媒管理部の中、サンプル管理部114の中、カラム管理部117の中、検出器管理部120の中又は捕集管理部124の中などで、統合したり又は分岐したりするように設定できる。例えば、3流路が可能な場合に、スイッチ機構を制御して、単流路、三流路、又は二流路を異なる時間にクロマトグラフ・システム100の中の異なる場所で生成できるように流れ管理部101を設定できる。更に、流路内の別の場所では、流れを単流路から二流路へ、単流路から三流路へ、又は二流路から三流路へ変えることができる。
【0078】
流路が各々のカラムを通過した後、1つ以上の異なる検出器118を用いて分析される。例えば、フローセルがカラムの終端近くに置かれ、その透過性のウィンドウによって光源がフローセルを通して見えるようにすることができる。フローセルをカラム溶出液(溶媒混合物に加えて初期のサンプル混合物が物理的に分離された成分)が通過する間に、フローセルを出た光が高電子増倍管のような検出器118を用いて捕捉される。別の例では、クロマトグラフ用カラムを通過後、流れの一部が付加的な分析のために質量分析器のような装置へと向かう。
【0079】
ある実施例において、1つの検出器で複数の流路を分析するようにしてもよい。1つの光源と1つの光電子増倍管とにより、クロマトグラフ用カラム116a、116b及び116cのそれぞれに備えられる3つのフローセルのような複数のフローセルを通過する流れを分析することができる。複数の流路で装置を共有することにより、コストを削減できる。装置の共有に関する更なる詳細は図10Aないし図10Dに示す。
【0080】
136のような流路中の別の点で、流れは回転要素132から出る。回転要素132が回転中でも、また回転要素が停止中でも、回転要素からの出口136が機能する。図に示すように、流れは回転要素132を離れた後に、廃液リザーバー又はフラクションコレクターに入ることができる。廃液リザーバー及び/又はフラクションコレクターに入った流れは、流路の終端部128で終わる。
【0081】
流路の分岐の他に、流路の合流も起こる。図1に、複数の流路が1つの流路に合流する流路合流の例を示す。例えば、サンプルを集めない場合、クロマトグラフ用カラムからの全ての流出流路が1つの流路に合流し、共通の廃液リザーバーに向かう。流路の分岐の場合と同様に、クロマトグラフ・システム100には流路切替機構があり、異なる複数の流路を測定毎に異なる位置で合流させるようにしてもよい。流路管理部101は、合流の起こる場所を制御するなど合流に関わる流路制御を行うように設定できる。
【0082】
カラム条件制御部
クロマトグラフ・システム100の一つの側面は、クロマトグラフ用カラム内部に繰り返し条件を確立させられる点にある。つまり、ある特定の流路について、クロマトグラフ用カラムに関わる特定の条件を確立して維持するようにシステム100を設定できる。確立して維持する条件としては、1)カラム内部の流速、2)クロマトグラフ処理で時間とともに変化する溶媒組成、3)カラム温度、4)溶媒温度、そして5)一定の角速度のようなカラムの回転条件などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
ある実施例では、クロマトグラフ用カラムにサンプルを注入する前に、例えば一定の流速のようなクロマトグラフ用カラム内部の初期定常条件を確立するようにクロマトグラフ・システム100を設定することができる。初期定常状態の確立とは、選択されたカラムパラメータの組み合わせの各々がある時間範囲に渡ってある許容範囲内で変化するような状態にすることを言う。クロマトグラフサンプルを注入する前に定常状態に到達させる一つの理由は再現性にある。クロマトグラフ実験は、いろいろな理由で繰り返される可能性があり、実験がその度に同一の条件で実施されることが望ましい。
【0084】
例えば、クロマトグラフ実験はフラクションを捕集するために繰り返される。ある特定の条件では、クロマトグラフ用カラム内のあるサンプル成分は、クロマトグラフ用カラム内部での相互作用に依存して、ある時間カラム内部に留まるカラム内部にサンプル成分が留まる時間の長さは成分によって異なり、カラム条件による(クロマトグラフのカラム条件は、ある成分と別の成分がそれぞれがカラム内部に保持される時間の差が大きくなるように意図的に選択される。ここで時間の差はカラムのクロマトグラフ分離効率を反映する)。ある時間でカラムから溶出する成分を捕集することができる。ある時間にカラムから出て捕集された流れの一部分をフラクションと呼ぶ。サンプル導入の前にクロマトグラフ用カラムに定常状態の条件を確立しておく利点は、サンプルを導入してから一定の時間でフラクションを捕集する繰り返し作業を設定できる点にある。
【0085】
別の実施例では、サンプル中の特定の成分の存在と量を明らかにするために、クロマトグラフ処理を用いることができる。サンプル中の成分の量のような測定に伴う統計的な誤差を明らかにするために、クロマトグラフ操作を何度も繰り返すことができる。目安として、サンプリングによる誤差は1/N1/2に比例する(例えば、10%の誤差のためには100サンプルが必要である)。したがって、特定のサンプル成分について何度もクロマトグラフ操作を繰り返すことにより、その成分の物質量のような測定に伴う誤差を妥当な範囲に抑えることができる。サンプル導入前にクロマトグラフ用カラム内に定常状態を確立しておく利点は、運転毎に起こる過渡的な効果に伴う誤差を最小にする点にある。
【0086】
図1に関連して、特定の流路に関するカラム内に定常流れ状態を確立する際には多くの異なる要素が関わっている。ある実施形態では、この機能は流れ管理部101によって制御できる。定常状態を確立するのに、流れ管理部101がデータを受け取りクロマトグラフ・システム100の多くの要素に指示を与える。
【0087】
一つの例では、定常状態流れを確立するために、システム100が運転の初期化を行い、続いて132のような回転要素が角回転速度プロファイルにしたがって一定の角回転速度まで回転数を増加する。回転数の増加中又は一定速度に達した後、流れ管理部101は回転要素132上の流れを開始する。流れを開始するために、流れ管理部は溶媒供給システムに指示を出す。溶媒供給システムは回転要素132の上又はそれ以外にあり、流路に溶媒を導入し始める。そして、116a、116b及び116cのようなクロマトグラフ用カラムなどシステム100に溶媒を流し始めることができる。
【0088】
ある実施例では、移動相が定常状態速度に到達したか否かを判定するために、流れ管理部101が溶媒管理部108に対して既知の方法で変化する溶媒の第1成分の割合を指示する。その後で、例えば、第1成分の割合は時間の関数として増加したり減少したりする。変化する溶媒成分は、クロマトグラフ用カラムと相互作用せず、検出管理部120の装置の一つで検出可能なものが選択される。第1成分がどのように変化するかという情報、及び検出管理部120から受けた情報を用いて、流れ管理部は移動相速度とその経時変化とを測定する。
【0089】
別の実施例では、質量流量計を、例えばフローセルの後などの流路中に置くことができる。質量流量計を用いて、流速を測定することができる。質量流量計から受信した情報に基づき、流れ管理部101等のシステム構成要素が定常状態移動相の速度に到達しているか否かを判定する。移動相速度及び他のカラム条件が許容範囲内であり、その経時変化が許容範囲内であると判定された場合、カラムはサンプル導入の準備が完了したと判断される。
【0090】
先に記述したように、回転要素132は116a、116b及び116cのような多くのクロマトグラフ用カラムを備えるものでもよい。サンプル注入前に定常状態流れ及び/又はカラム状態に到達しているか否かの判定はカラム毎に行うことができる。少なくともサンプル注入前に判定される流れ/カラム条件には、移動相速度、溶媒組成、流路圧(例えばカラムの前後)、流れの温度(例えばカラムの前後)、カラム温度(例えばカラムの外側)やその組み合わせがあるが、これらに限定されるものではない。前述したように、カラムの定常状態に到達したか否か等、各カラムに関する情報は、カラム管理部117などのような、1つ以上のシステムの構成要素によって保存される。
【0091】
流れ及びカラム条件の測定は、サンプルが導入された後も時間の関数として測定することができる。例えば、サンプルがクロマトグラフ用カラム中を進む間、流速を測定することができる。別の例では、サンプルがクロマトグラフ用カラム中を進む間、カラムに沿って1つ以上の外側におけるカラム温度を記録することができる。
【0092】
ある実施形態では、クロマトグラフ操作中の流れ及び/又はカラム条件が許容範囲内にあるか否かをクロマトグラフ・システム100が判定するように設定できる。クロマトグラフ操作の中にある一定の時間を取り、その間のカラムの状態を観測することができる。サンプルを導入する前に、又は導入後に、例えば定常状態に到達していないなどの許容できない条件が発生しうる。例えば、1つ以上のカラムで、移動相速度又は温度がある時点で又はパラメータの経時変化の中で許容範囲を逸脱する可能性がある。カラムの一つに付随するフローセルの欠陥(例えばウィンドウの一つが汚染されている)、カラムの一つに付随する温度セルの欠陥、カラムの一つに関する圧力センサーの欠陥、又は流路の一つにおける漏れ(漏れがあるか否かを判定するのに圧力センサーが用いられる)、などの多くの要因から、1つ以上のパラメータが許容範囲を超えたと判定される可能性がある。
【0093】
個々の測定中に決定された流れ条件とカラム条件とに基づいて、システム100が、許容可能カラムと許容不可のカラムとを判別するようにしてもよい。所定のカラムを、サンプル導入前に許容不可カラムと判定するようにしてもよい。例えば、あるカラム内が定常状態になっていないと判断される場合、そのカラムを許容不可と判定するようにしてもよい。また、別のカラムを、サンプル導入後に許容不可カラムと判定するようにしてもよい。例えば、サンプルがあるカラムを通過中にカラム圧が許容範囲を超えていることを検知した場合、そのカラムを許容不可と判定するようにしてもよい。
【0094】
ある実施例において、システム100が用いるカラムの一部が許容不可と判定された場合、許容不可と判定されたカラムから収集されたデータを無視し、許容可能と判定されたカラムから収集されたデータのみを用いるようにしてもよい。たとえば、116a等の第1のクロマトグラフ用カラムは、次のいずれかの場合、許容不可と判定される。1)初期の定常状態条件が許容範囲内にない。2)定常状態条件を満たしているが、あるパラメータが許容範囲を逸脱している。3)サンプルがクロマトグラフ用カラムを通過する際に、流れ条件又はカラム条件が許容範囲を逸脱している。一方、116b等の第2のクロマトグラフ用カラムは、定常状態条件が満たされ、サンプル導入前もサンプル導入後も、すなわち、特定の測定に関係するクロマトグラフ処理の間中、すべての値が許容範囲内にある場合、許容可能カラムと判定される。定常状態条件が満たされているか否かを判定する場合と同様、カラムから収集したデータを使用する目的で各カラムが許容可能か許容不可かを判定する場合にも、判定はカラム毎に行うことができる。
【0095】
回転要素上又は回転要素の外側におけるシステムの機能
さまざまな実施例において、クロマトグラフ・システム100の機能は、132等の回転要素上に配置される構成要素により実行されるものでもよいし、あるいは、回転要素の外側に配置される構成要素によって実行されるものでもよい。特定の機能が回転要素上で実行されるか、あるいは、回転要素の外側で実行されるかは、システムに応じて変えることができ、同じクロマトグラフ・システム内で測定毎に変えることもできる。図示したシステムの回転要素と非回転要素は単に例示のためであり、図1に示す例に限定されるものではない。
【0096】
図1では、流路の一部とそれに伴うシステムの一部が回転要素132上に配置され、流路の一部とそれに伴うシステムの一部が回転要素132の外側に配置されている。例えば、溶媒管理部108及び捕集管理部124が、回転要素132の外側に配置され、サンプル管理部114、カラム管理部117及び検出器管理部120が、回転要素132上に配置される。別の実施例において、溶媒管理部108、サンプル管理部114、カラム管理部117、検出器管理部120及び捕集管理部124を含むクロマトグラフ・システム100全体が、132等の回転要素上に配置されるものでもよい。更に、クロマトグラフ・システム100の一部を、重複して、回転要素と非回転要素の両方に設置するようにしてもよい。例えば、クロマトグラフ・システム100が備える溶媒管理部のうち、第1の溶媒リザーバーを回転要素の上に、また、第2の溶媒リザーバーを非回転要素の上に、備えるものでもよい。ある場合には、回転要素132上に配置される第1の溶媒リザーバーを用い、また別の場合には、回転要素132の外側に配置される第2の溶媒リザーバーを用いるようにしてもよい。更に別の実施例において、回転要素132上に配置される第1の溶媒リザーバーと回転要素の外側に配置される第2の溶媒リザーバーの両方を用いるようにしてもよい。
【0097】
別の例では、検出管理部120は、回転要素132上に、例えば質量分析器のような第1の装置を、また、回転要素132外に、光源と光電子増倍管のような第2の装置を、備えるものでもよい。更に、光源と光電子増倍管とが回転要素132外に配置されている場合でも、この装置を使用するのに必要なフローセルは回転要素132の上に保持可能である。ある実施例では、回転要素132上に配置される第1の装置だけが用いられる。別の実施例では、回転要素から離れて配置される第2の装置だけが用いられる。更に他の実施例では、第1の装置と第2の装置のように、回転要素上及び回転要素外に配置される装置を組み合わせて用いることもできる。
【0098】
静止−回転インターフェース
上に記載した通り、クロマトグラフ・システムは、132等の回転要素を1つ以上備えるものでもよい。クロマトグラフ・システムの運転中のいろいろな時間に、132のような1つ以上の回転要素は停止したり回転したりできる。回転要素が回転しているとき(回転時)、静止要素と回転要素の間で何らかの量の移動を可能とするインターフェースを供給することが望ましい。このような量の例としては、流体(例えば気体や液体)、電力及びデータが挙げられる。1つの回転要素が複数の静止−回転インターフェースを介して静止要素と連結される。例えば、1つの回転要素が複数の流体インターフェースを介して多くの異なる静止要素と連結される。
【0099】
特定の実施例では、例えば静止要素から回転要素へ又は回転要素から静止要素へというように、一方向に量を異動させるようにインターフェースをデザインすることができる。例えば、第1のインターフェースは流体を静止要素から回転要素へ送液するように、第2のインターフェースは流体を回転要素から静止要素へ送液するように設定することができる。他の実施例では、インターフェースを双方向性に設定し、流体が静止要素から回転要素へ、そして回転要素から静止要素へ、同時に又は異なる時間に、異動させるように設定できる。
【0100】
例えば、流体を静止要素から回転要素へ移動させ、同時に回転要素から流体を受け取って静止要素へ移動させるように、1つの流体インターフェースを設定することができる。この例では、静止要素と回転要素との間で、別の管路を用いて、流れを移動させることができる。別の実施例では、最初は、1つの管路が静止要素から回転要素へ流体を移動させ、第二段階では、その管路が流体を回転要素から受けて静止要素へ移動させる。
【0101】
操作モード
図1のシステム100のように、ここに示すクロマトグラフ・システムは多くの異なるモードで運転するように設定できる。異なる操作モードの間、クロマトグラフ・システムは異なる機能を発揮することができる。異なる操作モードの例としては、初期化、操作、スピンアップ処理、スピンダウン処理、クロマトグラフ処理と各測定間のデータ収集、及び誤作動が挙げられる。
【0102】
初期化の間に、クロマトグラフ・システムは多くのシステム要素の状態を自己診断することができる。自己診断される状態の例としては、装置の状態、流体貯蔵器の高さの状態、ガス圧の状態、ポンプの状態、バルブの状態、モーターの状態、バランスのチェック、装置で電量状態、及び装置間の情報通信の状態などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの自己診断は、他のシステム要素、例えば、流れ管理部101、溶媒管理部108、サンプル管理部114、データ管理部115、カラム管理部117、検出管理部120、捕集管理部124、及びローター管理部140、に関係するものでよい。自己診断がなされた後、クロマトグラフ・システムが操作モードに入れるか否か、1つ以上のクロマトグラフ・システム成分に修正が必要か否か、が判定される。 クロマトグラフ・システムは、修正が必要か否かを表示することもできるし、あるいは、クロマトグラフ・システムが、動作状態であることを表示することもできる。
【0103】
クロマトグラフ・システムが作動状態に入った後は、個々の測定に合わせて設定を行なうようにしてもよい。ある実施例では、クロマトグラフ・システムはシステム管理部103を介するなどして、使用者に運転のための1つ以上の調整パラメータを特定させる。個々の測定のためのパラメータが指定されると、クロマトグラフ・システムは選択されたパラメータを用いて運転を実行する。例えば、クロマトグラスシステムが、要素132等の1つ以上の回転要素を、休止状態から所定の目標角速度まで所定の角速度プロファイルに従ってスピンアップ処理するものでもよい。ここで「スピンアップ処理」には、システムのバランスチェック及び調節等の回転管理機能や、システムへの最初の流体導入及び漏れ検出等の流れ管理機能が含まれる。
【0104】
スピンアップ処理の後、システムは、定常流れ状態等の状態に達し、クロマトグラフ操作を開始できるか否かを判断する。クロマトグラフ操作の準備ができると、サンプル導入やデータ収集などの機能が開始可能となる。システムは、運転が完了したと判断されるまで、クロマトグラフの進行を記録する。運転が完了すると、クロマトグラフ・システムはスピンダウン処理を開始する。
【0105】
スピンダウン処理の間、回転要素132は、ある角回転プロファイルにしたがって、特定の角速度から停止状態まで減速する。減速に先だって又はその間、流れ管理部101は回転要素132内での流れを止めるなどの流れ機能を変えることができる。スピンダウン処理の後、回転は休止状態であるのに対して、回転要素上の溶媒貯蔵器からの排出や回転要素上で捕集されたフラクション除去は機能する。運転の間に、洗浄のために回転要素のカラムから流体を流し出すなどの機能は働く。カラムの流出には、システムから流体を追い出すために、回転要素132をスピンアップ処理することやスピンダウン処理することが含まれる。
【0106】
どの操作モードでも誤作動の起こる可能性がある。誤作動が検出されると、誤作動の種類によって固有の誤作動モードに入る。例えば、スピンアップ処理の途中で漏れが検出されたり、回転要素が回転中に突然バランスが変化したりすると、スピンダウン誤作動モードが稼働する。スピンダウン誤作動モードでは、通常の操作で減速するよりも速く回転要素を減速させることができる。
【0107】
回転要素
図2ないし図8は、クロマトグラフ・システムで用いられる回転要素の一つの実施例の詳細を示す。回転要素の他の実施例は図9Aないし図9Cに示す。特に、図2及び図3には、多くのクロマトグラフ用カラムを含む回転アセンブリを示す。図4A、図4B及び図6を参照して、回転アセンブリのさまざまな要素を議論する。図5Aないし図5Cでは、回転要素を通る流路の議論を含めて、回転アセンブリの更なる詳細を示す。図7Aないし図7C及び図8では、回転アセンブリがクロマトグラフ・システムの一部として利用できるような多くの要素が議論されている。図9A、図9B及び図9Cに、サンプル注入、カラムコンディショニング、発電、ローター外通信、フラクション捕集及び反応チャンバーなどを含むローター・アセンブリの実施例を示す。図10Aないし図10Dに、吊り下げバケット型を含む遠心式液体クロマトグラフィーの別の実施例を示す。
【0108】
図2及び図3は、図1に示すようなクロマトグラフ・システムで用いられる回転アセンブリの一つの実施例の側面図及び平面図を示す。回転アセンブリは回転要素の一つの実施形態である。図1に示すように、回転要素の上又は外の要素はクロマトグラフ・システムによって異なる。したがって、図2ないし図9Cに示す実施例は、ただの例示にすぎない。
【0109】
回転アセンブリ200は、皿状アセンブリ202、アダプタープレート・アセンブリ214、及び皿状アセンブリ202の中心に位置する混合チャンバー228を含む液体導入アセンブリを含む。マニホールド・アセンブリ204はディスク部206とカラム部分208を含む。液体導入アセンブリは多くの留め具で皿状アセンブリ202に固定することができる。 皿状アセンブリ202は、マニホールド・アセンブリのディスク部206に留め具で固定される。マニホールド・アセンブリのカラム部分208の底部は、アダプター板を介して、アダプタープレート・アセンブリ214に固定できる(アダプタープレート・アセンブリ214とアダプタープレートの詳細については図6を参照)。
【0110】
リザーバー210はアダプタープレート・アセンブリ214に取り付けられる。アダプタープレート・アセンブリはテーパシャフト212のような、シャフトへのインターフェースを含む。シャフトは、角回転速度を回転アセンブリに伝えるモーター(図には示されていない)へ取り付ける機構を備えている。回転アセンブリの角回転速度は、モーターに送られる操作コマンドに基づいて、時間の関数として変化させることができる。ある実施形態では、モーターがソーバルモデルRC5であり、回転数が300から22,000回転/分であり、遠心力が55,000Gである。マニホールド・アセンブリ204及びアダプタープレート・アセンブリ214及びその取り付けの更なる詳細は図5A及び図6に示す。一般に、ローターを駆動し角速度をローターに伝えるのに適切な機構ならば何でも用いることができる。例えば、圧縮空気のような圧縮ガスを用いるシステムをローターの駆動に用いることができる。
【0111】
図3に示すように、皿状アセンブリは230のような多くのカラムを含む。クロマトグラフ用カラムは、クロマトグラフ処理を実施するために用いられる物質を充填するために、内部に空洞を有する。操作中に、内部の空洞は流路のための管路を供給する(例えば図5A参照)。クロマトグラフ物質が充填されているとき、例えば230のようなカラム内で一部の流路に沿ってクロマトグラフ分離が起こる。
【0112】
図3に示す実施例では、皿状アセンブリ202の回りに24本のカラムが配置される。図示するように、一部の実施例において、230のようなカラムは共通の長さ、共通の外径、及び共通の内径を有するものでもよい。カラムは、例えば金属や合金のような共通の物質から作ることができる。更に、カラムは、皿状アセンブリ202の外周の周りに、カラム間が等間隔となるように配置される。他の実施例では、回転アセンブリに用いられる管路に軟質プラスチック等の可撓性の材料が用いられる。
【0113】
他の実施例では、皿状アセンブリ上のカラムの数を変えることができ、24より多く又は少なくすることができる。更に、一つの皿状アセンブリ上で、カラムの長さ、カラムの外形そしてカラムの内径をカラム毎に変えることができる。更に、カラムに充填するクロマトグラフ用物質の組成をカラム毎に変えることができる。また、カラム間の空間は同一である必要はなく、カラム間の空間はカラム毎に変えることができる。更に、カラムを形成している物質もカラム毎に変えることができる(例えば、最初のカラムをセラミックス製とし、第2のカラムを合金製としてもよい)。
【0114】
他の実施例では、回転アセンブリは多くの皿状アセンブリを備えるものでもよい。皿状アセンブリを、一つの上に別のものをというように、積層して配置することができる。ある実施例では、伝道及び/又は機構が皿状アセンブリに付いており、皿状アセンブリを回転シャフトと接続したり切り離したりして、互いにことなる速度で回転させたりすることができる。皿状アセンブリによって、カラムの数を変えることができる。更に、長さ、外形、内径、材質、充填剤のようなカラムパラメータは皿状アセンブリ毎に変えることができる。
【0115】
図3に示した実施例では、232のようなフローセルが各カラムの末端に設置されている。フローセル232はウィンドウ部と内部空洞を有する。その内部空洞はクロマトグラフ処理をカラムなどから溶出する流体の流路となる。フローセル・ウィンドウを光が通過する。
【0116】
ある実施例では、各カラムの末端に位置するフローセルは、フローセルの上端と下端にウィンドウがあり同じ大きさの内部を有するなど、類似のデザインで共通にすることができる。別の実施例では、カラムに付随するフローセルをカラム毎に変えることができる。例えば、皿状アセンブリ上の第1のカラムに関連するフローセルでは、側面にウィンドウが設けられているのに対して、第2のカラムに関連するフローセルでは、上端と下端とにウィンドウが設けられていてもよい。更に、カラム直径のようなカラムパラメータがカラム毎に異なる場合には、管路内部のサイズなどのフローセルパラメータを変えることもできる。
【0117】
他の実施例では、フローセルは必ずしも各カラムに付随していなくてもよい。例えば、第1のカラムにはフローセルが付随しているが、第2のフローセルにはフローセルではなく質量分析器が付随している。別の実施例では、フローセルと質量分析器がカラムに付随している。つまり、一般的に、クルマトグラフ用カラムに付随する装置は1つ皿状アセンブリ上でカラム毎に異なっていてもよいし、皿状アセンブリ毎に異なっていてもよい。クロマトグラフ処理を行うカラムに用いられる装置の更なる詳細は、以下の「装置」の項に記述する。
【0118】
図2及び図3に示すように、230のようなカラムはカラム留め具216によって所定の位置に固定される。カラム留め具216は236のような複数の留め具によって皿状アセンブリに取り付けられる。ある実施例では、予備ロードナット234のような、保持機構を用いて各カラムを設置する。予備ロードナット234はカラム留め具216を通して見ることができる。予備ロードナットは皿状アセンブリに固定できる。
【0119】
回転中に、カラムは数百から数千Gのような大きな遠心力を受ける。図3に示すように、皿状アセンブリ202の外側端部にあるカラムの末端にフローセルが位置する場合には、そのカラムが受ける遠心力は、例えば232のようなフローセルに伝達される。あまりに大きな力がフローセルに伝達されると、例えばフローセル・ウィンドウ242の形状など、フローセルの形状が歪む。ウィンドウの歪みなどのフローセルの変形はフローセルの光学的特性を劣化させ、その結果フローセルを用いる測定値を劣化させる。予備ロードナットのようなロードサポート機構により、回転中にカラムによって232のようなフローセルにかかる負荷を軽減する。各カラムに付随する予備ロードナットは皿状アセンブリ202に機械的に固定され、カラムにかかる負荷の一部をフローセル以外の皿状アセンブリ又は他の支持体に逃がす。
【0120】
混合チャンバー228を含む液体導入アセンブリは回転アセンブリ200の中心238aに位置する。一つの実施例では、回転アセンブリ200が回転中に、静止している液体貯蔵庫から液体が混合チャンバー228に入る。例えば、1つ以上の管路が混合チャンバー228まで挿入され、混合チャンバー228は回転するのに対して、管路は固定されたままになる。操作中に、流体は管路を出て混合チャンバー228に入り、回転アセンブリ200に連続的に制御した流れを提供する。
【0121】
ローター・アセンブリ200との間にインターフェースを提供する、管路を含むアセンブリが管路を支持する。ローター・アセンブリ200はガスベアリングのための座240を含む。ローター・アセンブリが回転する間、ガスベアリングは座240上で休止状態にある。静止した液体リザーバー及び管路の支持体を含むガスベアリング支持アセンブリの更なる詳細を図7Aないし図7Cに示す。
【0122】
流体は混合チャンバー228へ入り、皿状アセンブリ202の中心238aからその末端238bへの流路に沿って流れる。ある実施例では、カラムは放射状の線(つまり、皿状アセンブリ202の中心をとおる直線)に沿って配置され、流体は放射状の線の一つに沿って流れる。別の実施例では、1つ以上のカラムが皿状アセンブリの中心を通らない非放射状の直線に沿って配置される。それでも、非放射状の直線に沿った遠心力成分が非放射状に配置されたカラムを通る流れを駆動できる。
【0123】
ある実施例では、1つ以上のリザーバーからの流体成分は混合チャンバー228に入り、混合される。混合チャンバー中での混合ピンの回転により混合が起こる。混合された液体成分は、各カラムに伴うポートのような多くのポートを通して混合チャンバー228を出る。したがって、ある実施例では、2つ以上のカラムが共通のリザーバーから流体を受け取ることができる。混合チャンバー228の更なる詳細を図5Aに示す。
【0124】
流体混合物は各カラムを通り、皿状アセンブリ202の末端238b近くのフローセルに入る。フローセルを通過した後、流体は皿状アセンブリ202の末端238bを超えて復路セグメントリンク220に入る。復路セグメントリンク220は、皿状アセンブリ202に沿ったフローセルを出た流体に道筋をつけるフローチャネルを含む。220のような復路セグメントリンクはカラムの次にある復路チャネルに接続される。ひとたび流れが復路チャネルに入れば、末端238bから離れて中心238に向かう。
【0125】
この実施例では、流体は皿状アセンブリ202の中心に位置するカラム先端から入り、皿状アセンブリ202の外側に位置するカラム末端から流出する。カラムは、 流れがカラムの先端から末端に進む間に、流体混合物中で成分がクロマトグラフ分離されるような充填剤を含む。カラム中の流体が皿状アセンブリ202の末端に向けて動くほどカラム中の流体の遠心力は増加する。このような配向性のために、クロマトグラフ処理が進むと、遠心力が増えてカラムの長さ方向に沿って圧力が増加する。このようなカラムに沿った圧力勾配は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などのクロマトグラフ・システムと異なる。HPLCでは、圧力がクロマトグラフ用カラムの先端から末端まで流体を駆動する。したがって、カラムの先端から末端までに圧力が増加ではなくむしろ減少する。
【0126】
ある実施例では、ローター・アセンブリの最大の操作圧はおよそ100PSIに達する。例えば、ローターの中心からローターの終端まで圧力が増加するとき、最大の圧力は100PSI以上である。別の実施例では、極大操作圧は50PSI以上である。100PSI以下のような極大圧力レベルは、より小さい粒子径を用いるHPLCの1000PSIと言った圧力に比べてはるかに小さい。
【0127】
ある実施例では、220のような復路セグメントリンクは241のようなコネクタを介して互いに接続される。各復路セグメントリンクの内面は皿状アセンブリ202の外表面に適合する。例えば、皿状アセンブリ202の外表面が湾曲している場合、復路セグメントリンクは皿状アセンブリ202の外表面の湾曲に適合する。復路セグメントリンクは、222のようなファスナーを介して皿状アセンブリに固定される。復路セグメントリンクの更なる詳細を図5Aないし図5Cに示す
【0128】
皿状アセンブリ202で復路セグメントリンクを通り復路のフローチャネルへ入った後、流れはマニホールド・アセンブリ204のディスク部206において、円周方向に配列されたチャネルに移動する。円周方向に配列されたチャネルは、225のようなマニホールドブロックに流体を排出することができる。各マニホールドブロックは、アジャスタブルチューブ226に連結されており、チューブは、固定ナット224によってマニホールド・アセンブリのカラム部分に連結される。流れはマニホールド・アセンブリのカラム部分を通り、最終的にリザーバー210に入る。流体は、リザーバードレインチューブ218a及び218bを介して、リザーバー210から定期的に排出される。ローター・アセンブリ200の内部を通る流路などの詳細を図5A及び図5Bに示す。
【0129】
図4A及び図4Bはマニホールド・アセンブリ204の上面図と底面図である。マニホールド・アセンブリのディスク部には円周方向に配列されたドレインチャネル248がある。外側のチャネル242a及び内側のチャネル242bが、ドレインチャネル248を囲む。外側のチャネル242a及び内側のチャネル242bは、円形ガスケット(図示しない)を支持する。マニホールド・アセンブリの上部が皿状アセンブリ202の底部と接続されるとき、円形ガスケットが皿状アセンブリ202の底部を押し、ローター・アセンブリ202の運転中にドレインチャネル248から流体が漏れるのを防ぐ。
【0130】
ドレインチャネル248は、246のような多くのドレイン穴を備える。図4Aには6つのドレイン穴が示されている。ドレイン穴はそれぞれ225のようなマニホールドブロックに接続される。マニホールドのディスク部206には254のようなファスナーのために251のような多くの穴があり、これによって225のようなマニホールドブロックがディスク部に固定される。
【0131】
アジャスタブルチューブが各マニホールドブロック225に接続される。マニホールド・アセンブリのカラム部分208の穴252にカラム208を通してアジャスタブルチューブの末端250を挿入することができ、カラム208の中央の空洞部分に連結される。225等のアジャスタブルチューブの250のような末端はマニホールドカラム208の中央ドレインカラム244の中に見られる。
【0132】
マニホールド・アセンブリ204は、その底環部256中の例えば258のような固定穴を介して、アダプタープレート(図6)を含むアダプタープレート・アセンブリ214に接続される。マニホールド・アセンブリ204をアダプタープレート・アセンブリ214に固定するためのマウント穴を通してファスナーが通される。ドレインカラム244の底部口245はアダプタープレート・アセンブリ214のドレインチャネルと接続され、その結果、流体はドレインカラム244から出てアダプタープレートを通りリザーバー210に入る。
【0133】
リザーバー210は、図2に示すように、218aや218bのような多数のドレインチューブを備える。先に述べたように、リザーバー210はドレインチューブを介して定期的に排出される。ある実施例では、ドレインチューブは255のような穴を通して、マニホールド・アセンブリ204のディスク部206の底部を通り抜ける。皿状アセンブリは穴を有し(図には示してない)ドレインチューブが通り抜けられるようになっている。
【0134】
図1に示したように、ここで述べる実施例では、流れは分岐し再び合流する。例えば、ローター・アセンブリ200の中で、1つの流路が混合チャンバー228からスタートし、24の流路に分岐する(図2及び図3参照)。図4A及び図4Bに示すように、24の流路は1つのドレインチャネル248に合流する。1つのドレインチャネル248は225のようなマニホールドブロックを通して6つに分岐し、共通のドレインカラム244へと合流する。
【0135】
図4Bで、マニホールド・アセンブリの皿部206の直径は皿状アセンブリ202の直径より小さい。ディスク部206の直径が小さいことで、232aや232bのようなフローセルの底部のウィンドウが配置できる。したがって、たとえ光源がフローセルの上部に近くても、光源から発しフローセルを通過し、底部ウィンドウを経由して放出された光を集めることができる。ローター・アセンブリが回転中に光源を供給しフローセルから出てきた光を集めるための装置台を図8に示す。
【0136】
図4Bで、皿状アセンブリ202は部分的に透明にしてある。その結果、各フローセルに付随する復路チャネルチューブの一部が見える。例えば、232aや232bのようなフローセルに連結される復路フローチャネル252aや252bは見えている。222のようなファスナーも見えている。222のようなファスナーは復路セグメントリンクを皿状アセンブリ202と接合している。
【0137】
ある実施例では、皿状アセンブリ202の一部に穴を開けることによって、復路フローチャネルを形成する。既に述べたように、252aや252bのような復路フローチャネルにより、流体は、フローセルから出て、復路セグメントリンクに入り、マニホールド・アセンブリ204のディスク部において円周方向に配列された排水チャネル248に向かって、皿状アセンブリ202の端部から離れる方向に移動する。
【0138】
復路フローチャネルは、各フローセルの(下方ではなく)横に配置され、その結果フローセルの底部ウィンドウへの接近が可能となる。異なる装置を組み込む別の実施例では、復路フローチャネルは異なる経路を取る。復路フローチャネルの更なる詳細を図5Bに示す。
【0139】
図5Aは流路を示したローター・アセンブリ200の側断面図である。1つ以上の溶媒を流路に流すことのできる溶媒リザーバー285から流路が始まる。ある実施例では、多くの溶媒が同時に流路に供給され、そこで溶媒組成の分率が時間と共に変化させることができる。この実施例では、溶媒リザーバーはローター・アセンブリ200の上にない。既に述べたように、他の実施例では、1つ以上の溶媒リザーバーをローター・アセンブリ200の上に置くことができる。例えば、溶媒リザーバーを皿状アセンブリ202の230aや230bのようなカラムに接続することができる。1つ以上の溶媒がポンプ(図示しない)によって供給される。回転アセンブリ上の溶媒リザーバーの実施例は図10Aないし図10Dに詳しく示す。
【0140】
図5Aに戻り、既に図2及び図3で述べたように、ガスベアリング支持アセンブリは1つ以上の流路を含む(ガスベアリング支持アセンブリ400の詳細は図7Aないし図7C及び図8を参照)1つ以上の流路は260のような流路の一部でも良い。ガスベアリング支持アセンブリ400の流路は、例えば混合チャンバー228へ溶媒を供給するのに用いられる。ある実施例では、ガスベアリング支持アセンブリ400の流路はクロマトグラフ処理で用いるサンプルを混合チャンバー228へ供給するのにも用いられる。その際、サンプルは混合チャンバー228中で1つ以上の溶媒と混合される。
【0141】
混合チャンバー228では、275のような多くの混合ピンが混合チャンバーに入ってくる1つ以上の流体を混合する。混合ピンは、ローターオアセンブリ200の角速度に従って回転する。典型的な角速度で、混合ピンは流体から空気を除去できる。このように、1つの流体が混合チャンバーに供給され流体の混合物が形成されない場合でも、混合チャンバー228には、流体が230aのようなカラムに入る前に空気を除去可能である、という利点がある。
【0142】
混合チャンバー228は、276等の多数の穴を有し、流体をこれらの穴を介して混合チャンバーのから排出させることができる。一実施例において、各穴は、1つのクロマトグラフ固定相を含有する含むクロマトグラフ用カラムと流体連結する。他の実施例において、混合チャンバー228中の276等の1つの穴が、複数のクロマトグラフ用カラムに流体連結するものでもよい。例えば、チューブインチューブ型の場合、中空シリンダー内部に多数のチューブを設け、各チューブが別々のクロマトグラフ固定相を含有するようにしてもよい。各チューブの入口は、中空シリンダーの上端近傍に設けられ、混合チャンバーの穴の1つと流体連結する。操作中に、流体は混合チャンバーを出て、穴を経由して、各チューブに入る。チューブの断面は円形でもよいし、非円形でもよい。
【0143】
別の実施例では、バルブが穴のそばに設定されている。バルブは、流体が穴に入る速度を制御できる。例えば、バルブは各穴の開口サイズを制御するのに用いることができる。ある場合には、バルブを閉じて流体が穴から出ないようにすることができる。例えば、ある穴の下流で漏れが検出された場合、その穴のバルブを動かして、それ以上の流体が穴を経由して出ないようにすることができる。
【0144】
230aや230b等の多くのカラムが、混合チャンバーから皿状アセンブリ202の末端まで広がる。ある実施例では、ローター・アセンブリ200が回転する際にそのバランスを取るために、カラムが対称的な対として配置される。例えば、カラム230aと230bが似たような質量を有する対称的な一対のカラムとなる。しかしながら、既に述べたように、カラム対の質量特性はカラム対毎に異なってもよい。
【0145】
特定の実施例において、カラムは、ローター・アセンブリ200の中心を通る回転軸265に垂直な線に沿って伸長するものでもよい。他の実施例において、カラムは、回転軸に垂直でない線(例えば、球面座標系で用いられる2つの角度のように、各カラムが回転軸に対する2つの角度を定義できる)に沿って伸長するものでもよい。例えば、各カラムを、中心軸265から皿状アセンブリ202の端部まで下向きに又は上向きに傾斜させてもよい。皿状アセンブリ202の上方又は下方に伸長するカラムを支持するために、皿状アセンブリ202を厚くするようにしてもよいし、あるいは、皿状アセンブリ202が付加支持構造を備えるようにしてもよい。
【0146】
他の例として、ローターの端部に向かって伸長する1つのカラム230aの代わりに、皿状アセンブリ202がこの位置に2本のカラムを備え、一方を下向きに傾斜させ、もう一方を上向きに傾斜させて、混合チャンバーに接続し、皿状アセンブリの端部につなげるようにしてもよい。さらに別の例では、皿状アセンブリ202が3本のカラムを備え、カラム230aを皿状アセンブリを横切り真っ直ぐに、第2のカラムをカラム230aの上方で上向きに傾斜させ、第3のカラムをカラム230aの下方で下向きに傾斜させてもよい。各カラムは、混合チャンバー228に接続されるものでもよいし、別々の流体リザーバーに接続されるものでもよい。
【0147】
更に別の実施例では、混合チャンバー228と皿状アセンブリ202の間の流路で流体が流れる内部は一定である。例えば、カラム230a及びフローセル232の内部はおよそ一定である。ある例では、例えばフローセル232又はカラム230aのような流路の内部は一定であるが、内表面の周囲の形状は流路に沿って変えることができる。例えば、流路の内部の形状をある面積の正方形から同じ面積の円形に変えることができる。このとき、二つの間で形状が変化する際、面積は一定である。
【0148】
別の実施例では、混合チャンバーと皿状アセンブリ202の間の流路の内部は混合チャンバーと皿状アセンブリ202の末端の間で変化できる。例えば、流路の他の部分と比較して内部が狭くなるような流路抵抗を、カラム230aの末端又はフローセル232の後ろに置き、流速を減少させることができる。
【0149】
操作中に、ローター・アセンブリ200の回転により流体が混合チャンバー228の側壁266を這い上がることがある。ある実施例では、側壁の一部が回転アセンブリの回転軸に対して平行であるのに対して、他の部分は回転軸に対して角度をつけることができる。混合チャンバーの形状を変えることも可能である。例えば、混合チャンバー228の下部を曲線にしてボウル型にできる。
【0150】
回転アセンブリが回転中に混合チャンバー228に流体が加えられると、ある厚さの液体の頭部268が混合チャンバー228の側壁の上に形成される。体の頭部の境界は、混合チャンバーの上部、底部、側壁及び混合チャンバー228内部にある程度広がった(例えば、流体頭部厚み)自由境界となる。自由境界は、回転アセンブリの回転軸に平行な円柱状の壁に近似できる。
【0151】
図3に示すように、混合チャンバーの上部は部分的に覆われているが穴を有する。ある実施例では、穴は円形であるが、他の形状でも良い。上に述べたように、1つ以上の流路が穴を貫通しており、流体を混合チャンバー228内部に供給できる。図7Aないし図7Cに詳しく記すように、混合チャンバーの上部はガスベアリングによって覆われていてもよい。
【0152】
ガスベアリングにより混合チャンバーを密閉して、混合チャンバー228に含まれる流体及びその蒸気の放出を防ぐ。混合チャンバー228を含むローター・アセンブリ200が回転する間、ガスベアリングは静止状態に保たれる。したがって、作動時に、回転する構成要素の一部と回転しない構成要素の一部により、混合チャンバー228を密閉するエンクロージャが形成される。別の実施例では、異なる速度で回転する二つの構成要素の間を密閉するエンクロージャが形成される。例えば、混合チャンバーの上部に配置されるガスベアリングは、静止状態に保たれる構成要素に関係するものでもよいし、ローター・アセンブリと異なる速度で回転する構成要素に関係するものでもよい。
【0153】
また、固定及び非回転構成要素又は異なる速度で回転する構成要素を備える流体エンクロージャは、混合チャンバーに限定されるものではない。例えば、混合チャンバーから混合ピンを取り外して、流体リザーバーとして用いられる流体エンクロージャを形成することも可能である。同様のエンクロージャを用いて、ローター・アセンブリから流体を排出させることも可能である。この例では、ローター・アセンブリ200の底部を、ガスベアリング上に載置するようにしてもよい。ガスベアリングは定常状態で、ローター・アセンブリ200に覆われるチャンバーを備えるようにしてもよい。ローター・アセンブリ200と共に回転する流路を、ローター・アセンブリ200からチャンバー内に伸長させて、ローター・アセンブリ200が回転中に、チャンバー内に流体を供給するようにしてもよい。流体をこのチャンバーから取り出すことも可能である。
【0154】
更なる詳細を、図5A、図5B、図5C、図7A、図7B及び図7Cに示す。混合チャンバー228からリザーバー210等の所定の位置までローター・アセンブリ上に形成された流路に沿って、あるいは、ローター・アセンブリ200の外に流れを形成するインターフェースを介して、流体の流れが閉じ込められる。ローター・アセンブリを通る経路に沿ったさまざまなエンクロージャ内に流体を閉じ込める1つの利点は、安全性にある。ここに記載する装置で利用する多くの流体は危険な場合がある。例えば、ある流体は可燃性であり、別の流体は例えば発がん性を有する等のように健康を害する可能性がある。流体やその蒸気がローター・アセンブリ200から容易に放出される開放型インターフェースと比べて、流路に沿ってローター・アセンブリ200内部に流体を閉じ込めることにより、より安全に操作できる(ローターで用いる流体が安全な場合には、少なくとも部分的に密閉されていない空間を通して流体が動く開放インターフェースのように、流体を完全に閉じ込めないインターフェースを含むようにローター・アセンブリを設計できる)。
【0155】
図5Aに戻り、混合チャンバー中の流体の頭部の厚みを調節できるように、ローター・アセンブリ200を設定できる。例えば、ローター・アセンブリ200の流路の配置を変えることによって流体の頭部の厚みを調節することができ、流体の頭部は混合チャンバー上部の穴の内部周辺に入るまで延長しない。流体の頭部268の厚みを調節する方法として、第一に、混合チャンバー228を通りアジャスタブルチューブ226の出口250に連結される流路について記述する。第二に、流路の二つの部分の流体にかかる力が均衡するような平衡条件を記述する。最後に、流体の頭部の厚みを含む平衡条件に影響を与えるローター・アセンブリ200の設定調整を議論する。平衡条件では、混合チャンバー中の流体の頭部の厚みは特定の値になる。平衡条件を変えることで、混合チャンバー228中の流体の頭部の厚みを変えることができる。
【0156】
ローター・アセンブリ200中で、ローター・アセンブリの中心軸265から一定の半径264の場所に直線262を引く。流路はローター・アセンブリの中心軸265のそばに示す。直線262は、混合チャンバー228中のローター・アセンブリ200を通る流路と、アジャスタブルチューブ226の出口250近くで交差する。出口250はアジャスタブルチューブからマニホールド・アセンブリ204の中央ドレインカラム244へ流体を抜くことができる。
【0157】
ローター・アセンブリ200にモーター(図に含まず)から力が伝わると、ローター・アセンブリはその中心軸265の回りにある角速度で回転する。先に述べたように、回転中心軸265からの距離が増加するに連れて、またローター・アセンブリの角速度が増加するほど、遠心力が増加する。この遠心力が流体を、ローター・アセンブリ200を通して移動させる。
【0158】
議論のために、ローター・アセンブリ200を通る流路に2つのセグメントを定義する。第1の流路セグメントは、混合チャンバー228の中の流体頭部268の自由界面上の流体の壁で始まり、復路リンク内の末端まで外向きに動く(半径が増加する)。第2の流路セグメントは出口250から始まり流路セグメントリンク220内の末端まで外向きに動く(半径が増加する)。第1の流路セグメント及び第2の流路セグメントは流路セグメントリンク220で合流する。
【0159】
一実施例において、2つの流路セグメント内の流れを初期化するのに、ローターを休止状態から一定の角速度までスピンアップ処理するようにしてもよい。スピンアップ処理の間(目標角速度まで達する前に)、あるいは、ローター・アセンブリ200が目標角速度に達した後に、流体導入を開始する。ある実施例では、ローター・アセンブリ内に前の測定時の残留流体が残ることもある。残留流体が、第1の流路セグメント及び第2の流路セグメントの全部又は一部に含有されていてもよい。したがって、第1の流路セグメント及び第2の流路セグメントの一部に残留流体が含有されている状態で、別の部分を初期化処理で乾燥させるようにしてもよい。
【0160】
スピンアップ処理中に、混合チャンバー228中で流体の導入を開始できる。必ずしも全てのローター・アセンブリ200が混合チャンバー228を含まなければならないわけではない。実施例において、ローター・アセンブリ200が、228等の共通導入部を用いる代わりに、カラム毎に別々の導入部のように複数の流体導入部を備えるようにしてもよい。したがって、この例は単なる例示にすぎない。
【0161】
典型的には、230aや230bのようなカラム中で行うクロマトグラフ分離過程で、流体はカラムの一端から別の端まで通過する。図5に示す実施例では、流体は混合チャンバー228に最も近いカラムの頭から導入され、尾の280まで通る。カラム270の頭まで流すために、多くの流路が設定できる。例えば、図5Aに示す流路では、流れは混合チャンバー中のローターの中心付近で始まり、カラムの頭までの道を連続的に中心から移動する。別の実施例では、カラムの頭部の半径より大きい半径位置から流れが始まり、カラムの入口に達するまでローターの中心に向けて移動し、カラムの入口に入る。
【0162】
別の実施例では、230aや230bのようなクロマトグラフ用カラムは復路セグメント上に設置できる。最初に、ローター・アセンブリ200の中心265から流れが動く。ローターの中心から所定の径方向の距離のところで、ローターの中心に向きを変え、復路セグメントに入る。流れがローターの中心の方向に動くところに、つまり復路セグメントに、クロマトグラフ用カラムが設置される。例えば、流れがカラム230aの終端からカラムの頭部270に向けて動くような流路に設定できる。この例では、フローセルや質量分析器のような装置は、カラム230aの頭部270に設置される。
【0163】
別の実施例では、クロマトグラフ用カラムは直線状である必要はない。カラムは、ローター中心からローター端部に向けて何らかの形で曲がっていてもよい。一般的に、ローター・アセンブリ200内の経路に続く流路は、クロマトグラフ操作を行うのに用いられる。そのクロマトグラフ流路は直線でもよいし、曲がっていてもよい。クロマトグラフ流路において、ローター・アセンブリの中心に向けて流れるものでも、あるいは、ローター・アセンブリの中心から離れるように流れるものでもよい。流れが流入するクロマトグラフ流路の始点に達する前に、流路に沿って径方向の距離が増大、減少、一定又はこれらの組み合わせ等、ローター・アセンブリの中心からの径方向の距離が異なる流路に沿って流れる。更に、流れがクロマトグラフ流路に流入する部分の径方向の距離よりも長い距離又は短い距離流れが径方向に移動するものでもよい。最終的にクロマトグラフ流路の末端に達して排出後、流路に沿って径方向の距離が増大、減少、一定又はこれらの組み合わせ等、ローター・アセンブリの中心からの径方向の距離が異なる流路に沿って流れるものでもよい。
【0164】
ローター・アセンブリ200をいろいろなモードで操作する間、逆フローも設定できる。例えば、ローター・アセンブリ200の端部から中心265に向かう復路セグメント上の流れが、出口でバルブの作用によって遮断されると、バルブの位置である距離だけ径方向に離れた位置では、皿状アセンブリ202の端部に向かう逆向きの流れが始まり、フローセル232とカラム230aを経由して皿状アセンブリ202の中心265に向かう。したがって、ある実施例では、流れがある時点ではある方向で別の時点では反対方向になるように流路を設定できる。
【0165】
図5Aに戻り、流れの初期化の間に、混合チャンバー228に導入された流体は混合チャンバーを出て、230aや230bのようなカラムに入る。各カラムには、カラム230bで言えば272や274のように、2つの着脱可能なキャップがついている。ある実施例では、2つの着脱可能なキャップにはネジが切られ、各カラムの末端に固定されている。各キャップに流路を形成するようにしてもよい。ある実施例では、着脱可能なキャップの流路はカラムと同じ断面積を有する。
【0166】
最初の着脱可能なキャップ272は、混合チャンバー228を含む液体導入アセンブリにカラムを接続するためのインターフェースとなる。ある実施例では、第1の着脱可能なキャップは、ある種のガスケットを設置するための、例えば座部や溝を含む。そのガスケットは、混合チャンバーアセンブリと第1の着脱可能なキャップの間を密封するのに用いられる。同様に、274のような第2の着脱可能なキャップは、各カラムと232のようなフローセルの間のインターフェースとなる。第2の着脱可能なキャップは、例えばガスケットのような1つ以上の封印のための座部や溝に加えて、フローセル232に挿入される突起物のようなフローセルとの間のインターフェースを有する。
【0167】
スピンアップ処理中に混合チャンバーへ最初に流体が導入されれば、流体がカラム230等に入る前に、ローター・アセンブリの角速度は閾値を超えていなければならない。角速度が閾値を超えていれば、混合チャンバー228中の流体はカラム230aに入り、カラムの頭270から尾280に向けて進み、カラム230aの中に流路278を形成する。角速度の閾値は、クロマトグラフ用カラム230に用いる充填剤のサイズなどの、クロマトグラフ用パッキング材の性質に依存する。典型的には、より小さな直径の充填粒子は、より大きな直径の充填粒子と比較して、流れを動かすのにより大きなRCFを必要とする。RCFは角速度の平方根に比例するので、より大きなRCFをローター・アセンブリの角速度を増加することによって生み出すことができる。
【0168】
カラム230a中に流路278が生成した後、流体はカラムを出てフローセル232への流路286を形成する。フローセル232は、282のような光学ウィンドウと光学ウィンドウへのアクセスを可能とする穴を含む。 次に、流れはフローセル232を出て、復路セグメントリンク220中の流路288を形成する。流れが復路セグメントリンク220中を進む時、混合チャンバー228から復路セグメントリンク220への第1の流路セグメントは流体で満たされ、その流れは第2の流路セグメントに入り始める。流れは復路セグメントリンク220から回転アセンブリ200の中心へ向かい、その結果アジャスタブルチューブ226の出口250に達する。
【0169】
第2の流路セグメントでは、流れは皿状アセンブリ202の端部から中心軸265に向かい、復路セグメントリンク220を出て復路チャネル中に流路290を形成する(復路セグメントリンク220及び復路チャネル中の流路の詳細は図5B及び図5Cに示す)。流れは、復路フローチャネルを出て、ドレインチャネル248を充たし、ドレインチャネル内に流路292を形成する。図4Aに示すように、流路292は、異なるカラムに伴う多くの復路フローチャネルの流れを受ける。2つのガスケットは、流体がドレインチャネル248から漏れるのを防ぐために用いる。275aや275b等のガスケットの断面図を図5Aに示す。
【0170】
他の実施例では、第2の流路セグメントは第1の流路セグメントからの流体だけを受け入れる。例えば、第2の流路セグメントは、カラム230a及びフローセル232を通る流れからの流体だけを受け入れ、他のカラムからの流体を受け入れない。この実施例で、別の復路(図示しない)を用いるようにしてもよい。例えば、1つのマニホールドブロック225と1つのアジャスタブルチューブ226とを、230a等の各カラムからの1つの復路チャネルに接続させて、ドレインチャネル248を省略するような構成でもよい。前に述べたように、ドレインチャネルで複数のカラムからの流れを合流させることにより、ローター・アセンブリ200内で使用される流路の量を減らすことができる。流路の量を減らすことにより、製造コストを削減できる。
【0171】
流路がドレインチャネル248に入った後、225等のマニホールドブロックの一つへの1つ以上の穴を通して出て、マニホールドブロック225の中に流路294を形成する。マニホールドブロック225はアジャスタブルチューブ226に連結される。流れはマニホールドブロック225を出てアジャスタブルチューブ226内に流路295を形成する。アジャスタブルチューブ226内の流路は出口250で終わる。
【0172】
流体頭部の厚さが出口250の径方向の同じ距離264に達するまで、流体が混合チャンバー228に導入される。この時点で、それ以上の流体が混合チャンバー内に導入されなければ、ベルヌーイの非圧縮方程式を満たすように、流体頭部の厚み268は出口250とおよそ同じ位置で平衡に達する。粘性及びその他、例えばローター・アセンブリが中心軸265に対して歳差運動を行うなど、の非線形効果により、出口250の径方向の位置及び流体頭部の厚さは、正確には同一でないがおよそ同じ距離にある。もし、それ以上の流体が混合チャンバー228に導入されると、流体頭部の厚さは出口250より小さい径方向の位置に達する。流体頭部の厚さ268が平衡位置より大きい場合、ローター・アセンブリ200中の流れは平衡状態へ戻ろうとする。その結果、流れは混合チャンバー228から外へ出る方向に、ローター・アセンブリ200を通過するように動く。過剰の流体は、出口250から外にこぼれる。
【0173】
ある時点で混合チャンバー中への流体の導入が止まると、流体頭部の厚さ268が出口250と径方向におよそ同じ位置になるまで、流体は出口250からこぼれ、ドレインカラムに入る。流体が混合チャンバードレインカラム244に連続的に導入される場合、流れはアジャスタブルチューブを経てドレインカラム244に入り、ドレインカラムに流路296を形成する。流れは、ドレインカラム244を出て、マニホールド・アセンブリ204の底を通り、結果的に210aのようなリザーバーの内部に達する。流れがマニホールド・アセンブリ204を出てからの詳細を図6に示す。
【0174】
流体頭部及び出口250に関連する流体界面の径方向の位置は変わり得る。図5Aの実施例では、回転中に、遠心力によって遠心力に逆らって流れが形成し、混合チャンバーの底から混合チャンバーの上部へ、250のような各出口を横切ってアジャスタブルチューブの底部からアジャスタブルチューブの上部へ流れる。表面張力と重力の結果、混合チャンバーの上部から底部への流体頭部の界面又は出口250を横切る流体の界面は湾曲し、回転中心軸265からの径方向の距離は流体界面の場所によって変化する。ローター・アセンブリの角回転速度が増えるほど、液体界面に沿った径方向の変化は減少する、つまり、界面は垂直方向により一直線になる。
【0175】
ある実施例では、流体頭部の厚さ268の径方向の位置が出口とほぼ同一であるような平衡状態に達したとき(つまり、流体頭部の厚さ268がおよそ262の線と同じ)、ローター・アセンブリ200は回転数を一定の角速度まで増加する(先に述べたように、ローター・アセンブリの角回転速度が時間と共に増加している間に、混合チャンバーに流体を導入することもできる)。ローター・アセンブリ200の回転数が所定の目標角速度に達した後、流体が混合チャンバー228に加えられ、流体は、出口250に達してアジャスタブルチューブ226から流出し始めるまで、ローター・アセンブリ200を通って流れる。流体が混合チャンバー228に添加される速度を調節することにより、230aや230b等のカラム中での流速を含むローター・アセンブリ200中の流速を制御することができる。
【0176】
図1を参照して上述したように、230aや230b等のカラム中が定常流速に到達したと判断された後、ローター・アセンブリ200の所定位置にサンプルが導入される。例えば、混合チャンバー228にサンプルが添加される。この混合チャンバーから、サンプルは各カラムに導入される。図9Aに詳細を示す別の実施例では、サンプルは230aや230b等のカラムの頭部付近に注入される。カラムがクロマトグラフ用充てん剤を含む場合、サンプルはクロマトグラフ分離され、各カラムの末端にあるフローセル232を用いる測定で分析される。
【0177】
流体頭部の平衡厚さ268は回転軸からの出口250までの距離264を変えることで、調節できる。例えば、運転中に流体頭部が混合チャンバー228の座240の穴の中に入りこまないように、流体頭部の平衡厚さに調整される。既に書いたように、混合チャンバーの座240の穴は1つ以上の流路の入口となり、混合チャンバー228へ流体を供給できる。
【0178】
一般的に、いろいろな実施形態では、ローター・アセンブリ200は以下のものを含む、1)第1の流路セグメントでは、流れはある流路に沿い、中心から径方向の距離は流路の最後では初期の距離より大きい。2)第1の流路セグメントに接続された第2の流路セグメントでは、中心から径方向の距離は流路の最後では初期の距離より小さい。第2の流路セグメントの最終的な径方向の距離に出口が設置され、流体は第2の流路セグメントを出る。第2の流路セグメントで出口のある場所の回転軸265からの距離は、第1の流路セグメントの平衡位置を決定する。流体はある速度で第1の流路セグメントに導入される。流体が第1の流路セグメントに導入される速度は、第1の流路セグメント及び第2の流路セグメントを通過する流速の制御に利用される。以下で述べるように、流体導入速度及び関連する流速はローター・アセンブリ200の角回転速度の変化に対しては比較的影響を受けない。
【0179】
図5に戻り、他の実施例では、各アジャスタブルチューブ226の出口250の半径264を調節可能である。各アジャスタブルチューブの250のような出口を、ローター・アセンブリ200の中心軸265から同じ又は異なった距離に設置できる。226のようなアジャスタブルチューブには、マニホールド・アセンブリ204と合うような溝、及びマニホールドブロック225と合うような溝がある。アジャスタブルチューブは、いろいろな深さでマニホールドブロック225にねじ込まれ、出口250の径方向の距離が変わる。固定ナット224でアジャスタブルチューブ226を固定し、ローター・アセンブリ200の回転中に出口250の径方向の位置を一定にする。
【0180】
ある実施例では、出口250の径方向の距離を動的に変化させる仕組みがローター・アセンブリ200にある。例えば、226等のアジャスタブルチューブ末端に、弾性的に伸長可能な可撓性の終端パーツを取り付ける。運転中に、可撓性の終端パーツに力がかかり、そのパーツに接続する出口250の径方向の距離を変える。例えば、可撓性の終端パーツに力が加えられない場合には、出口250はドレインカラム244の壁近くにとどまるが、力が加えられると、出口250はドレインカラム244の中心方向に延びる。
【0181】
第1流路セグメントを備えるローター・アセンブリ200を第2流路セグメントに連結されるローター端部に合わせて設定する利点は、一旦平衡条件が確立すると、例えば混合チャンバー228を介して第1流路セグメントに導入する速度を変えることによって、流速を制御できる点にある。理想的な条件に近づくと、カラム中である一定の流速を得るために必要な第1流路セグメントへの流体の導入速度は、広い角速度操業条件で角速度に対して本質的に独立になる。
【0182】
更に、ローター・アセンブリ200内で特定の流速を得るために必要な混合チャンバー228中の流速は、ローターの端部から戻ってくる他の流れの設定と比較して角速度にあまり依存しない。例えば、流れは、250ではなく、復路セグメントリンク220のようなローター端部から流出する。ある実施例では、210のような流体回収リングでローター端部を囲み、例えば復路セグメントリンクから出る流体を回収するようにしてもよい(この例では、復路セグメントリンクは流れをローター・アセンブリの中心265に向けることはない)。図5Aに示すように流れが迂回して回転軸265に戻るような構成と比較して、この構成では、ローター端部における流出速度とカラムを通過する速度とが、角速度の変化に対してはるかに大きな影響を受ける。典型的には、この種の構成に対して、ローター・アセンブリの角速度が増加するとRCFも増加するので、流出速度も増加する。
【0183】
図5B及び図5Cには、ローター端部近傍での流れの更なる詳細が示されている。特に図5Bは、皿状アセンブリ202、クロマトグラフ処理に持いられる充填剤を含むカラム230(固定相物質とも呼ばれる)、フローセル232、復路セグメントリンク220、及び298aや298b等の復路チャネルの横断面を上から透視した図であり、流路を示してある。カラム230は、皿状アセンブリ202上に載置されるものでもよい。皿状アセンブリ202は、カラムが収容される溝を備えるものでもよい。
【0184】
上述したように、着脱可能なキャップ274をカラム300の末端に組み合わせることができる。ある実施例では、着脱可能なキャップ274には突起があり、フローセル232の開口部に合うように設定されている。ガスケット274aが突起を囲み、着脱可能なキャップ274とフローセルの間の密閉を維持する。皿状アセンブリ202には凹所があり、その中にフローセル232が設置される。
【0185】
フローセル232には開口部があり、復路セグメントリンク220に向けて流体が流れる(図5Cの252a及び252bを参照)。流路は復路セグメントリンク220を出て、復路チャネル298a及び298bに入る。復路セグメントリンク220と皿状アセンブリ202の間にガスケット220aが取り付けられる。ガスケット220aは、復路セグメントリンク220とフローセル232の間、及び復路セグメントリンク220と復路チャネルの間での液漏れを防ぐ。
【0186】
皿状アセンブリ202には、ファスナー222aの受け部がある。 ファスナーは、復路セグメントリンク220中の穴に挿入される。ファスナーを締め付けることにより、復路セグメントリンク220と皿状アセンブリ202の間のガスケット220aにかかる力を強めることができる。ガスケット220aにかかる力により、密閉性が高まり、漏れを防ぐことができる。復路フローチャネルには、皿状アセンブリ202の外側端部を通って皿状アセンブリ202に入る部分298aと、皿状アセンブリ202を通して下へ潜る部分298bがある(298aと298bは互いに角度を持っている)。298bの部分はドレインチャネル248に連結されている。
【0187】
図5Cには、復路セグメントリンク220の実施例を示す。復路セグメントリンク220には、300や306のような穴があり、これによって1つ以上の復路セグメントリンクと組み合わせることができる。300や306のような穴にピンを通すことによって、一つの復路セグメントリンクを他の復路セグメントリンクと組み合わせる。全ての復路セグメントリンクが互いに組み合わされると、ローター端部の周りに連続した鎖の輪ができる。
【0188】
復路セグメントリンク220には穴304がある。図5Bに示すように、ファスナーをこの穴に差し込むことによって、復路セグメントリンクと皿状アセンブリ202を組み合わせる。ある実施例では、復路セグメントリンク220には302aや302bのような2つの凹所がある。この凹所によって、皿状アセンブリ202上のフローセルと復路フローチャネルの間の流れができる。ある実施例では、各路セグメントリンク220に2つの異なるクロマトグラフ用カラムからの流れを統合している。
【0189】
各復路セグメントリンク220の内表面は曲線状でもよい。復路セグメントリンクが連結されると、その内表面が円を形成し、皿状アセンブリ202の端部の周囲を囲む円よりわずかに大きくなるように、表面を曲線状にする。表面の曲線308によって、穴304を通して取り付けられたファスナーから生ずる力がうまく分散する。表面308にかかる分散した力が、復路セグメントリンク220と皿状アセンブリ202の外側端との間の密閉性を向上させる。
【0190】
図6には、ローター・アセンブリ200の側面図を示し、リザーバーについては断面図を、アダプタープレート・アセンブリ214については部分的に透視図とする。アダプタープレート・アセンブリ214はアダプタープレート318を含む。320のようなファスナーを介して、マニホールド・アセンブリ204はアダプタープレート318と組み合わされる。モーター(図に含まない)に接続されたテーパシャフト212は、ファスナー316を介して、アダプタープレート・アセンブリ214のディスク部分214aと組み合わされる。テーパシャフト212、アダプタープレート・アセンブリ214の底部に挿入され、ファスナーによって固定する。
【0191】
リザーバー210は、アダプタープレート・アセンブリ214のディスク部分214aなどに組み合わされる。アダプタープレート318には、1つ以上の流路がある。それにより、マニホールド・アセンブリ204の中のドレインカラム244からアダプタープレートへの流路ができる。マニホールド・アセンブリ204の流体界面がアダプタープレート318上の液体界面との間の密閉を保つために、1つ以上のガスケット(図に含まず)が使用される。
【0192】
流体は、マニホールド・アセンブリ204からアダプタープレート318に入り、1つ以上の流路を通り、1つ以上の穴310を介してアダプタープレートから排出される。ある実施例では、流れはローター・アセンブリの中心から入り、リザーバー210に向けて径方向に流れる。その後、リザーバー210a等の内部に流れ込む。
【0193】
リザーバー210とアダプタープレート318の間の流体界面を密閉することができる。ある実施例では、アダプタープレート318の外側にチャネルがあり、ガスケット314a及び314bで密閉する。この方法の利点は、アダプタープレート318を210のような単独のリザーバー・ドラムの内側に挿入できる点である。リザーバー・ドラム210には、その内側表面から伸長する円形の突起322又は多くのアームが備えられている。アダプタープレート318はこの突起又はアームの上に設置される。アダプタープレート・アセンブリのディスク部分214aは、円形の突起又はアームを介して挿入される。円形の突起又はアームには、リザーバー・ドラムをアダプタープレート318に取り付ける場所がある。
【0194】
ある実施例では、リザーバー・ドラムは、半分にして2つ、あるいは、4分の1にして4つのように、複数に分かれている。アダプタープレート318にリザーバー・ドラム210の穴に挿入される流路があるか、あるいは、リザーバー・ドラム210がアダプタープレートに挿入できる流路を有する。リザーバー・ドラム210は多くの部品で組み立てられる。このような形態はアダプタープレートの端部の密閉されたチャネルの代わりとなる。
【0195】
異なるローター・アセンブリでは異なるマニホールド・アセンブリと異なるリザーバーのデザインを採用できる。例えば、排水リザーバー・ドラム210の内側直径とマニホールド・アセンブリ204の外側直径は大きくできる。テーパシャフト212に接続されたアダプタープレート・アセンブリの一部を再利用可能な形態で、異なる形態のマニホールド・アセンブリ204には異なるアダプタープレート318及びリザーバー・ドラムを用いることができる。
【0196】
図5A、図5B、図5C及び図6に示すローター・アセンブリは多くのモジュール部品からなる。モジュールの構成は例として挙げただけであり、限定するものではない。モジュール構成にする利点は、組み立て、解体、構成の融通性及び低コストである。モジュール構成にする欠点は、モジュールの部品が増えると流体インターフェースが増え、密閉の必要性が増えて、結果的に液漏れの可能性が増える点である。
【0197】
ある実施例において、漏れる可能性のある場所をなくすために、2つの別々の部品に関係する機能を果たすようにいくつかの部品を一体形成するようにしてもよい。例えば、ある実施例において、排水リザーバーとマニホールド・アセンブリとを一体成形してアダプタープレート318を通る流路を省略するようにしてもよい。別の実施例において、混合チャンバーのエンクロージャを皿状アセンブリ202とは別の構成要素として形成するようにしてもよい。更に別の実施例において、混合チャンバーのエンクロージャを皿状アセンブリ202と一体成形された構成要素としてもよい。また、マニホールドブロック225とアジャスタブルチューブ226とを1本の柔軟な管路として形成することもできる。
【0198】
別の実施例では、皿状アセンブリ202上に多くの溝があり、その上にカラムを設置できる。したがって、例えば充填や洗浄のためにカラムを外したり、再度据え付けたりできる。他の実施例において、カラムは、皿状アセンブリ202と一体成形されるものでもよい。例えば、皿状アセンブリを形成しているディスクに多くの穴を開けて、カラムとして使うことができる。別の例では、金属を流路の上に注ぎ、後で取り除くことにより、202のような皿状アセンブリの内部に流路を作ることができる。
【0199】
別の実施例では、第1プレートの上に多くの開放チャネルを形成し、その後にチャネルを覆うようにしてもよい。例えば、第2プレートを接着させてチャネルを覆うようにしてもよい。チャネルを覆った後も、各チャネルは入口と出口とを備える。例えば、第1「ワッシャ」型ディスク上に、径方向に並ぶ多くのチャネルを形成するようにしてもよい。各チャネルは、ワッシャの内側半径から外側半径にむけて形成される。その後、第1ワッシャと同じ寸法で平らな表面を有する第2ワッシャ等の第2の構造体を第1のワッシャに接着して、閉鎖チャネルを形成するようにしてもよい。ある実施例では、2つの別のプレートに、例えば半円柱状の開放チャネルを形成する。2つのプレートを合わせると、円形の断面を有する閉鎖チャネルが形成される。
【0200】
図7Aないし図7Cに、ガスベアリング支持アセンブリ400の側面図及び投影図を示す。ガスベアリング支持アセンブリ400はローター・アセンブリを回転させるドラム型の回転機構(図8参照)の上に設置できる。蓋414はドラムの蓋として機能する。蓋は、防弾ガラスのような固くて透明な素材で作成される。防弾ガラスにしておけば、何らかの機械的なトラブルでローター・アセンブリから飛ばされてくる部品から保護しつつ、ローター・アセンブリを見ながら操作することができる。他の実施例では、非透過性の素材で蓋を形成可能である。
【0201】
ローター・アセンブリ200の回転中に、座240の上にガスベアリング418を設置する。ガスベアリング418から座240にかかる重量によって、回転中のローター・アセンブリ200を安定化できる。例えば、ガスベアリング支持アセンブリ400の重量が、ローター・アセンブリが回転する間に起こる歳差運動を軽減する。
【0202】
ガスベアリング支持アセンブリ400は多くの流路を含む。流路416は空洞のシャフト412を取り抜け、ガスベアリング418の中心426にある穴を通る。先に述べたように、ガスベアリング418が座240の上にあるとき、流路は、例えば、混合チャンバー228のような、座240の下のチャンバーまで伸長するものでもよい。更に、ガスベアリング418の底部が混合チャンバーの蓋の一部として働き、混合チャンバー内への流体の閉じ込めを助けるものでもよい。
【0203】
ある実施例では、ガスベアリング支持アセンブリを貫通して三つの流路がある。その三つの流路を用いて、例えば2つの異なる溶媒とサンプル流体のように、いろいろな流体を混合チャンバーに供給できる。異なる溶媒の濃度を時間をかけて変化させ、容易にグラジエントをかけることができる。他の実施例では、それより多い又は少ない流路がシャフト412を通り、混合チャンバーへ通る。ある場合には、ガスベアリング支持アセンブリが流路を全く含まず、ローター・アセンブリを安定させるためだけに用いられる。別の場合には、1つ以上の流路が非活性で使用されない。
【0204】
シャフト412には1つ以上の流体インターフェースがあり、溶媒リザーバー285及び/又はサンプルインジェクター402からの1つ以上の流路がシャフトの中心部分を通る流路につながるようになっている。例えば、シャフト412は、溶媒リザーバー285やサンプルインジェクター402からのフレキシブルチューブによる流路に連結されるインターフェースでキャップ406と連結される。溶媒リザーバーやサンプルインジェクター402に付随した1つ以上のポンプが流体をシャフトの中に動かす。
【0205】
ある実施例では、1つ以上のポンプが、ピストン駆動ポンプのような容積型ポンプである。別の実施例では、1つ以上のポンプが、浮力ポンプのような容積型ポンプである。圧縮空気駆動の二重隔膜ポンプは浮力ポンプの一例である。この種のポンプは圧縮ポンプの上で動き、稼働部分が最も少ない。他の実施例では、ガス増幅ポンプを用いる。
【0206】
ガスベアリング418は多孔質である。ガスベアリング中のポアをガスは通り抜けることができる。ガスベアリング418が座240の上にありローター・アセンブリが回転しているとき、ガスベアリング418を通して圧縮されたガスはガスベアリング418と回転座240の間に薄い層を形成する。ガスの薄い層はガスベアリング418と回転座240の間の摩擦を最小限にする。時として、ガスベアリングと回転座240は接触する。この接触により、結果的にガスベアリング418がなくなる。
【0207】
ガスベアリングは、例えば加圧アルゴン容器のようなガス源404との間のインターフェースを含む。操作中に、加圧アルゴンはガスベアリング418を通り抜ける。アルゴンの利点は、大気中で三番目に多い気体であり不活性な点である。しかしながら、他のガスでも良く、アルゴンはただの例示に過ぎない。
【0208】
ガスベアリング支持アセンブリ400は、シャフト412とガスベアガスベアリング支持アセンブリは図7Aでは上げた状態、図7Bでは下げた状態で示されている。ある実施例では、ガスベアリング支持アセンブリはレバー408によって昇降される。レバー408は回転シャフト410に連結され、シャフト410の回転420がシャフト412とガスベアリング420とを昇降する。回転シャフト410はサポートブロック424によって支えられる。サポートブロック424は、428等の1つ以上のファスナーによって蓋414と組み合わされる。
【0209】
図8は、ローター・アセンブリ200、格納構造中のガスベアリング支持アセンブリ400、及び444や442等の装置固定具の側面図を示す。ガスベアリング支持アセンブリ400は所定の位置に取り付けられており、ローター・アセンブリ200の座240にガスベアリング418が位置する。ガスベアリングの蓋は格納構造440の出っ張りの上にある。
【0210】
ある実施例では、格納構造440はドラム型で、金属でできている。格納構造440には穴があり、ローター・アセンブリ200の下にあるモーターにテーパシャフト212が連結される。モーターにより、ローター・アセンブリ200に角速度を伝えることができる。
【0211】
1つ以上の穴が、格納構造あるいは蓋414に設けられている。その穴は、気体をチャンバー450から排出する通路となる。ある実施例では、チャンバー450は密閉され、チャンバー内ではある程度の真空状態が達成される。密閉を改善するために、蓋414と格納構造440の間にガスケットが置かれる。更に、蓋414と格納構造をよりしっかりと組み合わせるためにファスナーが用いられる。蓋414か格納構造440の中の1つ以上の穴が真空ポンプと接続される。真空ポンプが働くと、チャンバー450の中にある程度の真空状態が達成される。真空ポンプは、可燃性ガスのような危険な気体がチャンバー450で偶然発生するのを防ぐ安全上の目的にも用いられる。
【0212】
442や444等の1つ以上の装置固定金具が格納構造に備えられる。ある実施例では、442や444等の各装置固定金具は光源及び集光装置を含む。光源と集光装置とは、先に述べたようにローター・アセンブリ200上のフローセル・ウィンドウと一直線上に配置されるものでもよい。光源及び集光装置をローター・アセンブリ200の端部近傍にあるフローセル・ウィンドウと一直線上に配置するために、装置固定金具をローター・アセンブリ200の上方又は下方まで伸長させるようにしてもよい。
【0213】
ある実施例では、2本の光ファイバーケーブルが装置固定金具に取り付けられる。第1の光ファイバーケーブルは1つ以上の波長で光子を放出する光源と連結される。第2の光ファイバーケーブルは光電子増倍管に連結される。第2の光ファイバーケーブルは、フローセルを通過した第1の光ファイバーケーブルから出た光子を受け取る。集光された光子は、光電子増倍管に渡される。光電子増倍管及び光源は、格納構造440の外側に位置する。
【0214】
光電子増倍管からのシグナルにより、流路を通る流体の成分を分析することができる。各装置に結合された光源は、異なる波長の光を放出する。例えば、可視光、紫外光、赤外光等があるが、これらに限定されるものではない。さまざまな実施例において、発光及び集光能力のある装置を用いなくてもよいし、あるいは、1つ又は2つ以上のこのような装置を用いるようにしてもよい。
【0215】
他の実施例では、442や444のような装置固定具が、ガスベアリングを備えるものでもよい。ガスベアリングは、回転中にローター・アセンブリを安定化させて、ローター・アセンブリが442や444等の装置固定具と衝突するのを防ぐ。フレキシブルチューブのような流路をガスベアリングに気体を供給するために装置固定具と結合させることができる。流路は、ガスベアリングと一緒に用いるガス源に接続される。
【0216】
442や444等の装置固定具には、一部が回転できるような回転ジョイントが含まれる。回転ジョイントを用いることにより、装置固定具の一部、例えばその上部を回転させる、たとえば、上向きに回転させることができるため、ローター・アセンブリを格納構造440内に配置することもできるし、格納構造440外に配置することも可能である。
【0217】
一実施例において、格納構造の側面とローター・アセンブリの端部との間に十分な隙間がある場合には、例えば光ファイバーケーブルを含む部分等、装置固定具の一部を格納式アーム上に配置可能である。格納式アームを格納することにより、ローター・アセンブリを格納構造の中に設置したり、取り出したりできる。格納式アームを伸ばすと、格納式アームに取り付けられた装置固定具の上の光ファーバーケーブルや他の装置をローター・アセンブリの上方及び/又は下方に配置させることができる。
【0218】
ローター・アセンブリが回転する際、多くのローター部分が装置固定具を超えて繰り返し回転する。測定が行われている場所におけるローターの位置等、現時点でのローターの位置を追跡し続けるために、インデックス作成システムを備えるようにしてもよい。このインデックス作成システムにより、ローター・アセンブリ上で測定が行われている場所を一意に特定できる。作成したインデックスを、装置固定具に設置した装置を用いる測定に関連付けるようにしてもよい。
【0219】
一例として、ローター・アセンブリ200に、ローターの位置を特定できるマーキング等の識別子を備えるようにしてもよい。例えば、ローター・アセンブリ200の皿状アセンブリに目視可能なマーキングを設置して、各カラムが配置された位置等、位置を一意に特定させるようにしてもよい。マーキングは、例えば、番号及び/又は文字やバーコード等の記号でもよい。別の例では、識別子を格納したRFIDタグを、ローター・アセンブリ200端部周辺のさまざまな位置に、例えば各カラムを設置した位置に、配置させるようにしてもよい。
【0220】
検出器を装置固定具に配置させて、識別子が装置固定具を通過する際にそれを検出するようにしてもよい。例えば、カメラを用いて、記号やバーコード等の識別子を検出するようにしてもよい。別の例として、レーザーと検出器とを用いて、バーコード等の識別子を読み取るようにしてもよい。また別の例として、RFIDタグリーダーを用いて、皿状アセンブリ上に設置されたRFIDタグから識別子を受信するようにしてもよい。
【0221】
作動時には、多くの測定が可能である。個々のクロマトグラフ用カラムに関して測定を行なうこともできる。実施される測定の量は、ローター・アセンブリの角速度と測定がおこなわれる時間の長さに基づいて決まる。検出された識別子をインデックスとして用いて、一組の測定を、個々のカラム及び関連するフローセル等、ローター・アセンブリの所定の特徴部にマッピングするようにしてもよい。インデックス付きの測定を利用して、個々のクロマトグラフ用カラムに関する測定の時変プロファイルを作成することができる。
【0222】
図9Aは、クロマトグラフ・システムに用いられるローター・アセンブリの実施例の上面図である。ローター・アセンブリの部品は先に図3に示した。発電リング333をローター・アセンブリと組み合わせることができる。発電リング333には、1つ以上のワイヤーコイル及び変圧サーキットのような発電部品が含まれる。
【0223】
発電機として用いる場合、発電リング333は、図8に示す装置固定具上に載置されたマグネット等のマグネットを通過する。コイルがマグネットを通過する際に、1つ以上のコイルに電流が誘導される。発生した電気をローター・アセンブリ上の装置へ供給できる。別の実施例では、発電リング333が多数のバッテリーを備え、ローター・アセンブリの周囲にバランスよく均等に配置するようにしてもよい。バッテリーは、ローター・アセンブリ上に配置された発電機によって充電可能なものでもよいし、そうでなくてもよい。
【0224】
別の実施例では、電力をローター・アセンブリ200に供給するために、ブラシインターフェースを用いる。例えば、図8に示す格納構造440の端部近傍に導電性の細いテープを設置する。1つ以上の導電性ブラシ又は他の接触機構を備える1つ以上のアームがローター・アセンブリ200から延伸され、導電性ブラシが固定された導電性テープに接して、電力をローター・アセンブリ200に供給する。導電性ブラシは絶縁されているので、装置全体には電力が供給されない。別の実施例では、テーパシャフト212のようなローター・アセンブリ200の一部が絶縁された導電性テープを含む。固定の導電性テープは、封入構造440の中に位置し、ローター・アセンブリ上の絶縁された導電性テープと接する。回転中に金属ブラシとローター・アセンブリとの間で電気が伝わり、ローター・アセンブリ上のいろいろな装置を駆動する。
【0225】
ローター・アセンブリ200上のいろいろな装置で使えるように、変圧回路によってローター外からの電気やローター上で発生した電力を調整できる。例えば334等の1つ以上の導線によって、発電リング333からリードを取り、いろいろな装置に電力を供給する。調整された電気は、ローター上のバッテリーを充電するとともに、電気駆動バルブ、通信装置、ローター上の装置、ローター上のセンサー及び加熱素子等の環境調整装置を動かす。
【0226】
図9Aで、導線334は、加熱素子329及び331と、サンプル導入機構325と、に連結されている。329及び331等の加熱素子リングは、1つの加熱コイルを備えるものでもよいし、あるいは、発電リング333から電気が供給される複数の発熱体を備えるものでもよい。加熱素子リングのいずれか片方又は両方に制御装置を設けるようにしてもよい。この場合、1つの制御装置で両方のリングを制御するようにしてもよいし、各リングを別々の制御装置で制御するようにしてもよい。1つ以上の制御装置により、各加熱素子リングの熱出力を制御するようにしてもよい。一実施例において、いずれか片方又は両方の加熱素子リングが、各カラムに対して1つ以上の加熱素子を備え、各カラムの加熱素子を独立に制御するようにしてもよい。カラムに沿って温度センサーを設置し、温度センサーから受信したデータに基づいて、例えば、目標温度に制御するようにしてもよい。
【0227】
一実施例において、サンプル導入機構325をローターの上に設置するようにしてもよい。例えば、サンプル導入機構325が、電子的に作動するバルブ等の流体インターフェースを含み、サンプル導入機構のサンプルリザーバーと各カラムを連結させて、サンプルリザーバー内に貯蔵されたサンプルをカラムに注入するようしてもよい。サンプル導入機構325が、ボード上に1つ以上のポンプ形式の注入装置を備え、サンプルリザーバーに貯蔵された流体を各カラムに注入するようにしてもよい。たとえば、注入装置はシリンジポンプでもよい。
【0228】
さらに、サンプル導入機構には327等の、1つ以上の補充ポートがあり、それぞれサンプルリザーバーに連結される。補充ポートでサンプルリザーバーに補給をすることができる。ある実施例では、単独のリザーバーから複数のカラムにサンプルを供給できる。例えば、327等の単独の補充ポートが単独のサンプルリザーバーに連結され、そこから2つ以上のカラムに供給される。更に、各サンプルリザーバー中のサンプルはリザーバー毎に変えることができる。したがって、操作中に、多くの異なるサンプルがローター上で同時にクロマトグラフ処理される。他の実施例では、複数のサンプルリザーバーが用いられる場合、別個に制御されたインジェクターを使える。インジェクターは別個に制御され、異なるサンプルが互いに異なる時間に導入される。サンプル導入機構325が、サンプル導入機構上に配置されたサンプル注入装置や制御可能なバルブ等のデバイスを制御する制御装置を備えるようにしてもよい。
【0229】
ローターが、プロセッサ、メモリー、バッテリー及び/又は通信インターフェース等の内蔵電気回路337を備えるものでもよい。一実施例において、電気回路337は、ワイヤレスの通信インターフェースを備え、ローターとシステムマネージメント装置(図1に示す)との間の通信を可能にする。電気回路337が通信バスを備え、電気回路337から多くの装置へデータを伝えるようにしてもよい。例えば、電気回路337が遠隔装置から命令を受け、ローター・アセンブリ上の特定の装置、例えば、発電リング333、加熱素子リング329又は331、サンプル導入機構325、又は、加減弁等に命令を伝えるものでもよい。
【0230】
ボード上でデータを発生する多くの装置が、339等のワイヤー状の通信リンクを介して、通信バス341に連結される。他の実施例では、ワイヤレス通信リンクが用いられ、ローター上の多くの装置間の通信に用いられる。ワイヤレスリンクにする利点は、ローター・アセンブリを通るワイヤー経路を最少にできる点である。例えば、多くの装置がワイヤレスの送信機/受信機になっており、電気回路337と通信できる。
【0231】
装置により生成されるデータは、ワイヤレス及び/又は有線通信により電気回路337に送られる。電気回路337はそのデータを保存する及び/又は遠隔装置に送る。ローターは、多くのセンサーを備えるものでもよい。例えば、温度センサー、流速センサー、水位センサー(例えば、リザーバー210や混合チャンバー228は水位センサーを有する)、圧力センサー及びその組み合わせ、などがあるが、これらに限定されるものではない。センサーからのデータは電気回路337を介して遠隔装置に伝えられる。他の実施例では、ある装置が電気回路337に接続されていない独自の通信インターフェースを有する。例えば、サンプル導入装置325は、電気回路337のような中間の装置を経由することなく遠隔装置と直接通信するように設定される。
【0232】
別の例として、ローターが測定データを発生する装置をボード上に有する場合がある。ボード上の装置は電気回路337と通信して遠隔装置にデータを送る。ある実施例では、データは発生した時点で、リアルタイムに送られる。別の実施例では、1つそれ以上の装置がメモリーを備え、データを保存したり後で遠隔装置に送ったりする。メモリーはバックアップデータともなるので、例えば送受信機の誤動作などによりリアルタイムのデータが失われても、メモリーから補うことができる。
【0233】
図9Bは、フラクション捕集機構350を含むクロマトグラフ・システムで使用するように構成された実施例におけるローター・アセンブリの側面図を示す。一般に、フラクション捕集機構はクロマトグラフから溶出した溶離液を受け取る。したがって、フラクション捕集機構は溶離液のリザーバーと考えられる。このフラクション捕集機構の位置は単なる例示である。ローターの構成が異なれば、カラムと流路も異なり、フラクション捕集機構の位置も変わる。
【0234】
ある実施例では、バルブ352のような流体インターフェースによりフラクション捕集機構を、皿状アセンブリ202上の復路フローチャネル内に位置する流路に連結することができる。図5A及び図5Bに示すように、復路フローチャネルは復路セグメントリンク220を介して、232のようなフローセルの出口に連結される。バルブ352はいろいろなタイミングで開閉され、フローセル232から排出された流体をフラクション捕集機構350に送ったり、あるいは、フラクション捕集機構350を迂回させたりする。ローター・アセンブリが回転中に、バルブ352が開閉するようにしてもよい。
【0235】
ある実施例では、ローター外にある装置から、バルブ352を開閉する命令を受ける。フローセルでなされた測定のような情報に基づいて、遠隔装置がバルブをいつ開閉するかを判断し、バルブを開閉する命令を送る。別の実施例では、ローター・アセンブリ上の制御装置がこの判断を行い、バルブ352に開閉の命令を送る。
【0236】
フラクション捕集機構350は、集めたフラクションを貯めるための1つ以上のチャンバーを有するものでもよい。例えば、フラクション捕集機構350には四つのバルブ354を有する四つのチャンバーがあり、個々に流体を流すように制御できる。356等のチャンバーには通路用の穴があり、捕集したフラクションを取り出せる。例えばある実施例では、運転が終了してローター・アセンブリが休止状態のときに、穴からフラクションを回収できる。
【0237】
フラクション捕集機構350には1つ以上のカラムを取り付ける。1つのフラクション捕集機構で、単独のクロマトグラフ用カラムからフラクションを取ることもできるし、複数のカラムから取ることもできる。ローター・アセンブリ上のフラクション機構の数は、ローター上のカラムの総数だけでなく各フラクション捕集機構の間のマッピングとそれぞれのカラムの数によって変わる。更に、フラクション捕集機構を用いた場合、必ずしもローター上の全てのカラムと関連付ける必要はない。このように、ローター・アセンブリ上の多くのフラクション捕集機構はローター・アセンブリの形態によって変化する。
【0238】
更に他の実施例では、350のような体積可変の溶離液捕集装置をフローセルなどの検出器の後に置くことができる。体積可変の溶離液捕集装置をワイヤレスで遠隔制御できる電気モーターがあり、筒状のチャンバーなどの内側でリードスクリューを回転させる。そのリードスクリューの上に、ピストン状の密閉洗浄機を取り付ける。リードスクリューが回転すると、ピストン状の密閉洗浄機がチャンバーの外側に向けて移動し、液体をピストン状の密閉洗浄機の移動速度によって変わる速度で液体を流す。
【0239】
体積可変の溶離液捕集装置は、前に記述したように、210のようなリザーバーに組み込める。別の実施例では、体積可変の溶離液捕集装置として逆向きのシリンジポンプのような装置を用いることができる。ある場合には、フラクションのために各カラムの末端に複数のチャンバーを有する体積可変の溶離液捕集装置を置くことが必要である。このような場合には、カラムと体積可変の溶離液捕集装置の間にマルチポートバルブを加えるようにしてもよい。
【0240】
図9Cは、230のようなカラムの末端とフローセルのような検出に関わる装置との間に位置する反応チャンバーを含むブロック図である。ある場合には、クロマトグラフ分離の後、カラム230を出た分析物に化学反応を行う。その反応の結果、分析物が特定の検出器でより簡単に同定できるようになる。例えば、分析物が非蛍光性ならば、例えばLIF(以下の装置の項を参照)などの蛍光検出器で検出できない。化学反応により、分析物を検出し易い性質を持ち、特定の検出器で検出できる物質に変換できる。
【0241】
ある実施例では、800等のフローダイバーターにより、流れをカラムから切り替えて、232のように直接検出器に流すか、フローセルの前に例えば802等の反応チャンバーに流す。反応チャンバー802には、804や806のような1つ以上の異なる試薬を単独で加えることができるアクセスポートがある。アクセスポートは、808や810等のバルブで制御される。ここに示す例では、カラムのすべてあるいは一部が802のような反応チャンバーに含まれる。更に、802等の反応チャンバーは、1つ以上の異なるカラムから分析物を受け入れる。
【0242】
反応チャンバーが超音波発振機を備えるようにしてもよい。ある実施例では、超音波振動はピエゾ電子素子を用いて発生できる。超音波振動によって、分析物の反応速度を増加し化学反応を完結させることができる。ある実施例では、800等のフローダイバーターを用いずに、カラム230とフローセルの間に反応チャンバー802を設置できる。この実施例では、必要に応じて試薬を反応チャンバーに加えたり、あるいは試薬を加えることなく通過させたりできる。更に他の例では、直列に反応チャンバーを配置し、多段の反応を行う。
【0243】
他の例では、別のエネルギー源を用いて、反応に影響を与え、反応チャンバー802中での反応速度を上げるようにしてもよい。たとえば、マイクロ波発生機で反応チャンバーにマイクロ波を照射するようにしてもよい。別の例では、温度調節機構を用いて、必要に応じて反応チャンバーを加熱したり冷却したりするようにしてもよい。
【0244】
図10Aないし図10Dに、吊り下げバケット型の遠心式液体クロマトグラフィーを行う別のシステムを示す。図10Aにはバケットアセンブリの正面図及び側面図を示す。クロマトグラフ分離を行うための複数のカラムを含む。バケットアセンブリは着脱可能である。運転する際は、図10Bないし図10Dに示すように、バケットアセンブリ500をローター・アセンブリと組み合わせて、回転させる。回転によりバケットアセンブリに遠心力がかかる。バケットアセンブリはローターサポート506によってローター・アセンブリと組み合わされる。回転中に、遠心力によって多くのクロマトグラフ用カラムの中の流体が流れ、クロマトグラフ分離が行われる。
【0245】
バケットアセンブリ500には溶媒リザーバーがあり、溶媒やサンプル混合物を予め入れておく。溶媒リザーバー502はウェル・プレート504を介して多くのクロマトグラフ用カラムと組み合わされる。回転中に、溶媒とサンプルは遠心によってウェル・プレート504の開口部を通る。ある実施例では、ウェル・プレートは、96個の開口部を有し、96個のカラムに組み合わされる。
【0246】
別の実施例では、各バケットアセンブリが、一緒に回転するローター・アセンブリの中央リザーバーと組み合わされている。中央リザーバーはローター・アセンブリの回転軸近傍に配置される(図10C参照)。中央リザーバーは、各ローター・アセンブリに供給される溶離勾配のための溶媒組成やサンプルといった流体混合物を制御する。ある実施例では、フレキシブルホースのようなフレキシブルな流体インターフェースが中央リザーバーから各バケット上の溶媒リザーバー502へ取り付けられ、中央リザーバーからの流体は溶媒リザーバー502へ供給される。以下に示されるように、バケットアセンブリの位置はスピン増の間に垂直位置から水平位置へ変化する。フレキシブル流体インターフェースは、回転増の間にバケットアセンブリの位置変化を受容するために用いられる。
【0247】
バッテリーと送受信機とを含むパック510はバケットアセンブリ500に連結可能である。バッテリーを用いて、流速制御装置514に電力を供給できる。一実施例において、流速制御装置514は、電動式止水栓でもよい。電動式止水栓は各カラムと接続可能である。止水栓を閉じると、液体はカラム508を通り抜けることができない。止水栓が部分的に開かれると、液体はカラム508を通り抜けることができる。液体がカラム内を降下し始めるとカラムから置換された空気が、516等のベントを通って放出される。
【0248】
止水栓の位置を利用して、各カラム内の流速に影響を与えるようにしてもよい。止水栓が完全に開いている場合には、流速はカラムを通して増加する。一実施例において、止水栓のような流速制御装置514は、遠隔制御可能である。遠隔装置が命令を送り、送受信機を介して特定の止水栓に要求を送る。流速制御装置514に関連するデータ、例えば現在の状態が、送受信機を介して遠隔装置に送られる。
【0249】
特定の実施例では、サンプルリザーバーが溶媒リザーバー502の上に位置し、その結果サンプルは、最初は溶媒と離れて保存される。バルブのような機構を用いて、サンプルを溶媒リザーバーの中に導入することができる。運転中、溶媒は最初にカラムの中を進み、カラム中に流れを形成する。その後、サンプルが502のような溶媒リザーバーに導入され、溶媒とサンプルの混合物がカラム508を下流へと進む。溶媒リザーバー502は、超音波ミキサのような混合機構を有し、サンプル導入後に溶媒とサンプルを混合する。
【0250】
多くのフローセル512がカラム508の末端付近に設置できる。フローセルは、カラム508を出た流れについて光学的な測定を行うのに用いられる。実行可能な光学的な測定の詳細は図10Bないし図10Dに示す。フローセルを出た後、廃液が溶媒貯蔵所518に集められる。
【0251】
図10Bは、ローター・アセンブリ525の上平面図であり、500のようなバケットを複数含む。この図は、ローター・アセンブリ525及びバケットが回転中のものである。ローター・アセンブリ525は軸501の回りに回転する。ローター・アセンブリ525には、500のようなバケットを取り付けるための520のような固定具がある。図10Bの実施例では、ローター・アセンブリ525には、必要に応じて、500のようなバケット4つを取り付けるための4つの固定具がある。ローター・アセンブリ525は、金属ドラムのような容器534に囲まれる。
【0252】
停止状態では、500等のバケットは重力ベクトルにより鉛直方向に一直線上に配列される(図10C参照)。ローター・アセンブリ525の運転中は、その回転速度が増大するため、バケット500は図10Bに示すように水平位置まで回転して持ち上がる。水平位置で、バケット上の送受信機は、容器534の底部に位置する送受信機位置524を通り越す。送受信機位置524を介して、各バケットから発信されたデータが遠隔装置に送られるか、あるいは、遠隔装置から各バケットにデータ又は命令が送られる。例えば、各バケット上に配置された流速制御装置に命令が送られる。
【0253】
別の実施例では、多くの500のようなバケットを図2ないし図8に示すような皿状アセンブリに取り付け、バケットが常に水平位置にあるようにする。皿状アセンブリを用いるとき、バケットは溶媒とサンプルを供給するために例えば混合チャンバー228のような流体リザーバーに接続され、更に別の流路に接続されてバケットからの廃液が210のようなリザーバーに入るようにする。更に、バケットは流路に組み込まれるので、流体の導入速度で決まる流速は角速度に実質的に依存しない。つまり、流れは、皿状アセンブリの中心から末端にそして再び中心に向かって戻る。
【0254】
2つの計器アセンブリを示す。各計器アセンブリには、530のような容器534に付いた固定具、固定具に組み合わされた収納可能なアーム528、526のような1つ以上の検出要素で収納可能なアーム528に取り付けられたものが含まれる。アーム528が伸長した位置にあるのに対して、アーム532は収納位置にある。アーム528が伸長したとき、検出器526は光学的フローセルの線522上にあり、フローセルを用いた測定ができる。アーム532が収納状態のとき、計器アセンブリに関連する装置は用いられない。
【0255】
ある実施例では、複数の計器アセンブリが利用できる。しかしながら、全ての計器アセンブリとその装置がクロマトグラフ・システムの全ての運転に利用されるわけではない。計器アセンブリが利用されない時、図10Bに示すように、収納することができる。
【0256】
図10Cは、複数のバケットを含むローター・アセンブリが休止状態にあるときの上平面図である。図10Dは、複数のバケットを含むローター・アセンブリが回転状態にあるときの上平面図である。ローター・アセンブリには中心リザーバー570がある。中心リザーバーは、各バスケットに対して流体の組成を制御できる。中心リザーバー570からの流体は、フレキシブル流体インターフェース572を介してバケットに供給される。フレキシブル流体インターフェース572には、着脱コネクタ574があり、バケット上の受け部に接続される。
【0257】
ある実施例では、中央リザーバー570が、異なる移動相流体を貯蔵するための複数のチャンバーを備えるものでもよい。更に、リザーバーが、グラジエント形成部と混合チャンバーとを備えるようにしてもよい。グラジエント形成部は、異なる流体を用いて移動相流体の組成を制御する。さらに、中央リザーバーが、サンプルを導入するためのサンプル導入機構と1つ以上のサンプルリザーバーとを備えるものでもよい。サンプルは、混合チャンバー中で移動相流体と混合されるものでもよい。混合チャンバーは、572等のフレキシブル流体インターフェースを介して各バケットと流体連結されるものでもよい。
【0258】
ある実施例では、動力船のようなフレキシブル動力インターフェース(図示しない)をフレキシブル流体インターフェースと組み合わせることができる。フレキシブル動力インターフェースをバケット上の受け部に取り付け、たとえばバケット上の制御バルブのような装置に電力を供給する。フレキシブル動力インターフェースは、ローター・アセンブリの中央部に組み合わされる。図9Bで示したように、回転中に、ブラシインターフェースが、回転要素以外に位置する動力源から電力を回転要素に供給するのに用いられる。
【0259】
回転中にローター・アセンブリの中心部分に電力を供給するためにブラシインターフェースが用いられる。したがって、ローター・アセンブリの中心部分と各バケットの間のフレキシブル動力インターフェースを介するローター外の動力源からもバケットは電力を受け取る。ローター外の動力源は、中央リザーバー572に関連する装置を動かすのにも用いられる。別に実施例では、発電機や蓄電池のようなローター上の動力源が、バケット上の中央リザーバー572及び装置を動かす。
【0260】
図10C及び図10Dに示す実施例では、7つの異なる種類の検出器のために7つの固定具550、552、554、556、558、560及び562が存在する。運転中に、検出器のすべてあるいは一部を用いることができる。図10Dのある実施例では、検出器のすべてが利用可能である。したがって、検出器に関わる全てのアームが図10Dでは使用状態として示されている。この場合、ローター・アセンブリの回転毎に、7つの異なる測定が各フローセルで行われ、引き続く回転毎に繰り返される。
【0261】
ある実施例において、検出器550は、可視及び紫外吸収検出器でもよい。また、検出器552は、蛍光検出器でもよい。検出器554、556、558、560及び562はレーザー誘起蛍光検出器(LIF)である。各LIF検出器で、異なる波長のレーザーが用いられる。例えば、吸収検出器、蛍光検出器、及びLIFなどの装置の詳細は、次の節で述べる。
【0262】
装置
カラムの一つを回転する間に行われるように、サンプルがクロマトグラフ分離された後、カラムから溶出した溶離液を同定するために1つ以上の検出器が用いられる。クロマトグラフィーでは、カラムでの保持時間が既知の化合物の保持時間と一致することは、必ずしも溶出物の同定に十分な情報とはならない。したがって、付加的な検出器が必要となる。
【0263】
クロマトグラフィーでは、ある物質が特定のクロマトグラフパラメータのもとで示す保持時間や特定の検出器に対する応答特性が、物質を化学的に同定する基礎となる。全ての物質が各検出器に対して異なるように応答するので、多くの検出器を用いるほど、物質の化学的な同定はより確かになる。1つ以上の参照物質に対する保持時間に加えてこれらパラメータが二つ組み合わせれば、確実に化学的同定ができる。
【0264】
検出器とは、溶出する物質を検出すると応答を出力し、クロマトグラム上にピーク信号を与えるようなシステムのことである。典型的には、検出器は固定相の直後に設置され、化合物がカラムから溶出するとき、それを検出する。例えば、上に述べたが、フローセルが多くの光学的検出に用いられる。したがって、フローセルは典型的にカラムの直後に位置する。
【0265】
検出器により生成される情報は、時間変動値として、たとえば、カラムから異なるサンプル成分が溶出する際に経時変化するピークや谷を有する曲線として、表示できる。検出器に関連する大まかな及び詳細な調整によって、ピークの幅や高さは調整される。また、検出器に付随する感度パラメータがしばしば制御される。
【0266】
先に述べたように、ある実施例では、検出器及びこれに付随する要素は、たとえばローター・アセンブリなどの回転要素の上に位置する。更に、検出器に付随するシグナルもまたローター・アセンブリ上で処理される。例えば、フローセル、付随する検出器及びシグナル処理を行うためのプロセッサは、図2−9Cに示されるローター・アセンブリあるいは図10A-Dに示されるバケットアセンブリ上に位置する。他の実施例では、検出器の一部がローター・アセンブリ上に置かれ、残りの一部が図2−10Dに示されるフローセルや検出器のように、ローター外で固定されている。更に別の実施例では、検出器は完全にローター外に位置する。例えば、捕集された分画はある種の機構によって回転要素外に、更なる分析のために運ばれる。
【0267】
ここに示す実施例で利用可能な多くのタイプの検出器がある。ここに示す実施例で利用可能な検出器には以下のものがある:屈折率(RI)、紫外(UV)、可視(VIS)、蛍光、放射能、電気化学、近赤外、質量分析(MS)、核磁気共鳴(NMR)、光散乱(LS)及びその組み合わせ。これらの検出器について以下に示す。
【0268】
液体クロマトグラフィーには2つのタイプの検出器がある。第1のタイプは、検出器の変換機が溶出物と直接接触する必要がある。これには、いろいろなタイプの電気化学検出器や質量分析機がある。第2のタイプは、検出器の物理的要素が必ずしも溶出物と直接接触する必要がない。これには、核磁気共鳴検出器だけでなく、一部又は複数の場所での電磁スペクトルを計測する装置がある。
【0269】
屈折率(RI)検出器は、分析物が光を曲げたり反射したりする能力の尺度として用いられる。各分子あるいは化合物のこのような性質は、屈折率と呼ばれる。ある種の屈折率検出器、特に示差屈折検出器では、光が2つのモジュールからなるフローセルを通って光検出器へと進む。フローセルの一方のチャネルはカラムを通過する移動相を、他方のチャネルは移動相だけを通す。カラムから溶出するサンプルによって光が曲がるとき、2つのチャネルの間の差を読み取ることによって、検出がなされる。他のタイプのRI検出器では、分析物がフローセルを通過する際に光が屈折を受ける程度を、別のフローセルを参照することなく直接検出する。
【0270】
紫外(UV)及び可視(Vis)検出器は、サンプルが光を吸収する能力を測定するのに用いられる。この測定は、1つ又はいくつかの波長でなされる。典型的なUV検出器の感度はおよそ10-8又は10-9 gm/mlである。 UV検出器には通常、光源と集光要素が必要である。通常、光源には、広い波長範囲のランプ、発光線ランプ、発光ダイオード、あるいはレーザーが用いられる。先に述べたように、光源から放出された光は、フローセルを通過するが、あるいはいくつかの焦点あるいはフィルター要素を用いてフローセルの透過性ウィンドウに集光される。
【0271】
例として、254nmのような短波長での吸収を測定する。波長可変測定によって、異なる波長で測定できる。同時には一波長であるが広い範囲の波長に及ぶ。例えば、固定した検出器の下でフローセルが回転するような実施例では、光源の第一の波長がローター・アセンブリの最初の一周で、第二の波長が第二周で、そして第三週では再び第一の波長が利用される。この種の測定では、多くの2あるいはそれ以上の波長について繰り返しが可能である。別の実施例では、波長に対するスペクトルを同時に測定するのに、ダイオードアレイが用いられる。更に別の実施例では、集光要素を伴うあるいは伴わない幾つかの異なる光源を回転要素に対して固定した位置に取り付け、フローセルに焦点を合わせて、回転要素の回転毎に、回転要素上の1つの共通フローセルを用いて異なる波長で測定する。
【0272】
走査型UV/Vis検出器を用いて、サンプルの可視紫外(UV−Vis)全体のスペクトルを測定、検出できる。この装置は、サンプル化合物の同定と分析に非常に有効である。この種の検出器では、フローセルを通過する物質の光に対する応答を測定し記録する。広い波長範囲を検出するために、検出器は二つの内の一つの方法で進める。第1の方法では、走査型モノクロメータにより全波長範囲をスキャンする。標準的な走査型モノクロメータでは、広い波長範囲の光を放出するタングステンあるいは重水素ランプが用いられる。光はグレーティングあるいはプリズムからスリットを通りサンプルセルに向かう。サンプルは光電子増倍管によって検出される。波長はグレーティングあるいはプリズムを回転することによって調節されるが、一度には一か所が走査される。各データポイントのデータは引き続き異なる時刻で得られる。
【0273】
第2の方法では、全てのUV−Vis領域を同時に測定する。一つの手法では、注目する波長領域を検出できるような位置に複数の光電子増倍管を設置して用いる。別の方法では、線状フォトダイオード・アレイ(LPDA)分光光度計を用い、190−1100nmの領域を同時に測定する。単色光は不要で、ミリ秒でデータを取得する。この検出法で、速度論的な中間体を分析することもできるし、スペクトログラフィーを用いて重なるピークを分離及び分析することもできる。
【0274】
蛍光検出器は、化合物がある(励起)波長で光を吸収し、僅かに長波長で発光する能力を測定する。各化合物は特徴的な蛍光を有する可能性がある。励起光はフローセルを通って光検出器に届き、一方モノクロメータが発光波長を計測する。典型的な蛍光検出器の感度はおよそ10-9から10-11 gm/mlである。
【0275】
レーザー誘起蛍光(LIF)は化学種の検出に利用可能な分光学的手法である。先に述べたように、ここで述べる実施例では、1つ以上のLIF検出器を用いる。対象となる化学種はレーザーの単色光で励起される。波長は、化学種が最も大きな吸収断面積を有するよう選択される。励起された化学種は、通常はナノ秒からマイクロ秒の範囲で一定の時間後、脱励起し励起波長より長い波長の光を放出する。放出された光、蛍光は何らかの検出器で測定できる。
【0276】
ある実施例では、発光及び/又は励起スペクトルが測定される。発光スペクトルを測定するには、レーザー波長を固定し、発生する蛍光スペクトルを測定する。励起スペクトルを測定するには、発光波長を固定して、レーザーの波長を変化させ、蛍光を測定する。
【0277】
蛍光はあらゆる方向に発生するので(つまり、蛍光シグナルは当方性なので)、2あるいは次元イメージを得ることができるのが蛍光検出器の一つの利点である。更に、蛍光シグナルはS/N比が高いので感度が高い。励起波長を他の物質と重ならないように目的の化学種に固有の波長に合わせることによって、多くの化学種を区別することも可能である。
【0278】
放射化学検出は、トリチウム3Hあるいは炭素−14(14C)のような放射能でラベル化した物質を利用する方法である。ベータ粒子のイオン化に伴う蛍光を検出する。応用の一つは、代謝物質の研究である。検出には均一型と不均一型の二種類がある。均一検出器では、シンチレーション流体がカラム溶離液と混合され蛍光が発生する。不均一検出器では、ベータ粒子放出による蛍光と硅酸リチウムが検出セルと相互作用する。この種の検出器の典型的な検出限界は 10-9から10-10gm/mlである。
【0279】
電気化学検出器は、酸化又は還元反応を行う化合物を測定するのに用いる。通常、移動するサンプルがある電位差の間の電極を通る際に、電子を受け取るか失うのを測定することによって測定する。ある実施例では、先に述べたローター・アセンブリ又はバケットアセンブリのような 配置の中の1つ以上のカラムの末端近くに電極が設置される。この種の検出器の典型的な検出感度は10-12から10-13gm/mlである。
【0280】
質量分析(MS)検出器では、サンプル化合物あるいは分子はイオン化される。その後、質量分析器を通り、そのイオン電流が検出される。いろいろなイオン化法がある。第一の方法、しばしば電子衝撃(EI)と呼ばれる方法では、高電場で作成される電流あるいはビームによりカラムから溶出したサンプルがイオン化される。第二の方法、しばしば化学イオン化と呼ばれる方法では、カラムから溶出し化合物から電子を動かすのにイオン化したガスが用いられる。第三の方法、しばしば高速電子衝撃と呼ばれる方法では、カラムからの溶出部室をイオン化するのに高速のキセノン原子が用いられる。この種の検出器の検出限界は 10-8から10-10gm/mlである。ある実施例では、要素の回転中に回転要素上でこの方法が実行される。
【0281】
核磁気共鳴検出器では、奇数の質量を有するある種の核、たとえばHや13C、がランダムに軸の回りを回る。しかしながら、強い磁場に置かれると、スピンは磁場に対して平行か反平行に配列し、平行配向の方がエネルギー的に僅かに安定となる。核が電磁波の照射を受けるとそれを吸収して平行から高いエネルギー状態に変わり、共鳴する。HあるいはCは、分子中での位置や隣接する分子あるいは元素に依存して異なるスペクトルを示す。なぜならば、分子の中の全ての核は電子雲に覆われており、それは取り巻く磁場によって変化し共鳴周波数が異なるからである。
【0282】
光散乱(LS)検出器では、光源が平行ビームを放出し、それが溶液中の粒子に衝突する際に、ある光が反射、吸収、透過あるいは散乱する。比濁法では、粒子を含む溶液によって散乱された光を測定するが、ある角度で散乱された光の一部を検出する。検出はバックグラウンドのない状態で行うので、感度はバックグラウンドの光に依存する。
【0283】
濁度測定は、溶液中の粒子により透過する光の減少を測定する方法であるが、粒子を含む溶液を通過する光の減少としての光散乱を測定する。したがって、残存する光の量を測る。この方法の感度は用いる装置の感度に依存するが、簡単な分光光度計から高級な専用の分析計まである。したがって、透過光のシグナルの減少は光度計の正確さや用いる装置によって制限を受ける。
【0284】
近赤外検出計は、例えば700から1100nmのような波長範囲で化合物を走査することで機能する。各分子の中の化学結合の伸縮及び変角振動を特定の波長で検出できる。この検出器では、一つのスペクトルから複数の分析ができる。
【0285】
クロマトグラフ分離
上に述べたように、クロマトグラフィーは化学物質の混合物の個々の成分を物理的に分離する過程である。クロマトグラフ処理では、化学物質の混合物はキャリヤー流れ(気体か液体)に溶解される。混合物を含むキャリヤー流れは、粒子床を通過させられる。キャリヤー流れは、粒子床をある速度で移動する。クロマトグラフィーでは、キャリヤー流れは「移動相」、粒子床は「固定相」と呼ばれる。
【0286】
先に述べた実施例では、シリンダー状のカラムなどの固定相を含むクロマトグラフ・エンクロージャについて記述した。クロマトグラフ・エンクロージャはクロマトグラフ用固定相を含む。少なくとも一つの流路がクロマトグラフ・エンクロージャを通り抜けており、流体がクロマトグラフ・エンクロージャに入り、クロマトグラフ固定相を通過し、クロマトグラフ・エンクロージャを出る。
【0287】
ある実施例では、クロマトグラフ・エンクロージャの中に多くの別々の流路備えられ、これら別々の流路間は流体連結されていない。別々のクロマトグラフ固定相が各流路に含まれる。別々の流路は、並列的なクロマトグラフ処理を可能にし、各流路で共通のサンプル流体又は別々のサンプル流体が並列に処理される。
【0288】
流路は、内部の空洞を含む構造によって確保される。その内部の空洞を含む構造内に、流体とクロマトグラフ固定相が含まれる。G一般的に、流体はその内部の空洞を含む構造を軸方向に駆動される。例えば、細いパイプ状にして、その中を軸方向に流体が通過する。長さ、内断面、及びその面積などが、クロマトグラフ・エンクロージャ中の各流路に関連する空洞部分の構造として定義される。ある実施例では、内断面は流路の長さに沿って一定である。他の実施例では、内断面は流路の長さに沿って変化する。他の実施例では、内断面は円形である。一般には、内断面はどのような形状であってもよい。
【0289】
ある場合には、構造体の外断面が空洞部分の内断面と類似していて良い。例えば、内断面及び外断面が異なる直径の円であり、シリンダーを形成している。例えば、直角のブロックに穴をあけて円形の空洞チューブにできる。ある例では、クロマトグラフ・エンクロージャをローターと一体化してもよいし、あるいは、ローターとは別体のケースと一体化してもよい。
【0290】
各クロマトグラフ・エンクロージャには、入口と出口がある。入口は、流体が1つ以上の流路に入れるようにする。出口は、流体が1つ以上の流路から出られるようにする。クロマトグラフ処理の移動相のような流体は、入口から入り、クロマトグラフ固定相を通り、出口から出て、クロマトグラフ・エンクロージャに流体の流路を確立する。
【0291】
クロマトグラフ・エンクロージャには、クロマトグラフ・エンクロージャに遠心力を供給するローターによって運用される。例えば、先に述べたように、ある角回転速度で回転するように調節されたローター・アセンブリの上で、クロマトグラフ・エンクロージャが運用される。遠心力によって流体はクロマトグラフ・エンクロージャを通過するように仕向けられる。流体はサンプルを含む。サンプルを含む流体が、クロマトグラフ・エンクロージャに含まれる固定相を通過するとき、サンプルのクロマトグラフ分離が起こる。
【0292】
例として、図11に、遠心前後におけるクロマトグラフ処理について、クロマトグラフ・エンクロージャの正面図を示す。シリンダー状のプラスチックシリンジ600のようなカラムが、遠沈管604のような容器に保持されている。シリンダー状のプラスチックシリンジ600には、上部開口部615及び下部開口部616がある。この例では、上部開口部615が下部開口部616より大きいので、カラムの断面積は長さ方向に変化する。先に述べたように、他の例では、カラムの断面積は長さ方向に一定である。
【0293】
クロマトグラフ処理を設定するために、遠心をするに先だって、多くの要素がプラスチックシリンジ600に加えられる。ガラスウール616のような多穴性の詰め物がシリンジ600の底付近に加えられる。多穴性の詰め物によって、610のような固定相がカラムから出ることなく、流体をカラムから出すことができる。
【0294】
ある実施例では、固定相はクロマトグラフ用吸着材610である。用いる固定相の種類は、設定されるクロマトグラフ処理の種類によって変化する。サンプルは、用いられる溶媒の種類や固定相物質の種類によって、固定相物質といろいろな程度に相互作用する。クロマトグラフ処理の種類や用いる固定相や溶媒の特徴を、図11の記述に即して、以下に示す。
【0295】
液体に溶解させたサンプル608は固定相の上に置かれる。固定相粒子の大きさは、サンプルが重力だけでは固定相に侵入しないように選択される。砂606のような多孔性分離媒体がサンプル608の上に置かれる。セパレータが、溶媒リザーバー602のような溶媒からサンプルを分離する。溶媒はクロマトグラフ処理の移動相として働く。それはサンプルとセパレータ606の上に置かれる。
【0296】
次に、クロマトグラフ処理構成が、先に記したローター・アセンブリの一つに角速度を与えるような装置と組み合わされる。遠心力のもとで、溶媒リザーバー602中の溶媒とサンプル608は、610のような固定相へ駆動され、カラムを下流へと流れる。サンプル608と溶媒リザーバー602中の溶媒は、遠心中に固定相を通り抜ける。ある時間後に、サンプル608は固定相610をある距離だけ移動する。したがって、固定相は、サンプル610の上方及び下方に示される。移動相の一部は固定相610を完全に通過し、溶離液618として出て、カラム出口616を遠心分離チューブ604の底に集まる。
【0297】
この実施例は、単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではない。図11の実施例では、カラム内で定常流れが形成される前に、サンプルが固定相中を動き始める。したがって、定常流れが形成される前にクロマトグラフ分離が始まる。先に説明した実施例では、サンプル導入前に、定常流れが形成されるものでもよい。
【0298】
図11の実施例では、異なる溶媒の混合物である溶媒組成が溶媒リザーバー602に適用される。前に述べた例では、遠心中に、溶媒リザーバー602は補給されず溶媒の組成は変化しない。別の例では、遠心中に溶媒リザーバー602は補給され溶媒の組成は変化する、つまり勾配溶離が行われる。
【0299】
移動相の組成と固定相の組成に依存して、異なるタイプのクロマトグラフ処理が実行される。ここに示す実施例は、クロマトグラフ・エンクロージャの固定相を移動相が通過するいかなるタイプのクロマトグラフ処理にも適用可能である。ここに記す方法と装置を用いるクロマトグラフ処理の例としては、分配クロマトグラフィー、吸着(液固)クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル浸透やゲルろ過クロマトグラフィーのようなサイズ排除クロマトグラフィーなどがあるが、その限りではない。分配クロマトグラフィーには、通常の分配クロマトグラフィーに加えて化学結合型及び吸着相型の逆相分クロマトグラフィーを一般的に含む。
【0300】
吸着クロマトグラフィーでは、液体又は気体の移動相が使用され、固定相の表面に吸着する。移動相と固定相の間の平衡の差が異なる溶質を分離する。分配クロマトグラフィーでは、固定相表面に薄い被膜ができる。薄い皮膜は固定相粒子の表面に共有結合で固定される(化学結合型)、あるいは固定相表面に吸着(非結合型)する。イオン交換(IEX)クロマトグラフィーでは、移動相液体中で反対の電荷を帯びた溶質イオンが静電引力によって樹脂(又は粒子状の固定相)に引き付けられ、分析物の電荷が大きいほど、固定相表面と強く相互作用し、クロマトグラフ・システムを通過するのに長い時間を要する。IEXクロマトグラフィーは、生成したタンパク質の三次構造及び四次構造を決定するのにも有効である。なぜなら、水溶液だけを用いる条件で分離が行われるからである。
【0301】
サイズ排除クロマトグラフィーでは、固定相と溶質との間の引力は使わない。代わりに、液体又は気体が多孔性のゲルを通過し、ゲルの大きさによって分子が分離される。孔は通常小さく大きな溶質分子を排除するが、小さい分子はゲルに入り込み、より大きな体積を流れることになる。その結果、大きな分子は小さな分子と比較して速い速度でカラムを通過する。
【0302】
アフィニティークロマトグラフィーでは、ある種の溶質分子が固定相に固定化された別の分子と特異的に相互作用することを利用する。例えば、あるタンパク質に対して固有な抗体を固定化する。タンパク質の混合物がこの分子の横を通り過ぎる時、特異的なタンパク質は抗体と反応し、固定相に結合する。このたんぱく質は、イオン強度はpHを変えることによって、後で取り出す。
【0303】
より詳しくは、逆相分配クロマトグラフィー(RPC)は、非極性の固定相を用いる全てのクロマトグラフ手法を含む。順分配クロマトグラフィー(NPC)と異なるのは、親水性の表面を有する非修飾のシリカ又はアルミナ上で、極性の高い化合物に対してより強い親和性を示す点である。RPCでは、固定相表面に共有結合でアルキル鎖を導入することにより、NPCの場合の溶出順を反転させる。RPCでは、教区性の化合物が先に溶出し、非極性の化合物が保持される−それで「逆相」と呼ばれる。
【0304】
RPCでは、不活性で非極性の物質であれば、充填粒子の表面を十分に覆うことができるので、利用される。一つの例は、オクタデシル基が結合したシリカ297(USP分類L1)で市販されている。別の例としては、C8結合型シリカカラム(L7−166市販で入手可能)である。他には、シアノ基結合型カラム(L10−73が市販)及びフェニル基結合型カラム(L11−72が市販)がある。C18、C8及びフェニル型は逆相充填剤に供されるが、シアノ型は分析対象や移動相条件によって逆相モードで使用される。この時点で、すべてのC18カラムが必ずしも同じ保持特性を示すわけではないことに注意すべきである。シリカの表面を機能化する際に、第二段で残存するシラノール基を押さえる(エンド−キャッピング)のに異なるアルキル鎖長の有機シランを用いてモノメリック又はポリメリック反応を行う。全体の保持機構は同じであるが、固定相ごとに微妙に表面化学がことなるので、選択性に違いが現れる。
【0305】
RPCでは、水(又は水性緩衝液)と有意溶媒との混合物が、逆相カラムから分析対象物を溶出するのに用いられる。溶媒は水と混ざるものであり、アセトニトリル、メタノール、又はテトラヒドロフラン(THF)のような一般的な溶媒である。この他には、エタノールや2−プロパノール(イソプロピルアルコール)などが用いられる。溶離はイソクラチック(分離中に水−溶媒の組成が変化しない)あるいはグラジエント(分離中に水−溶媒の組成が変化する)で行われる。T移動相のpHは分析対象物の保持に重要な影響を及ぼし、ある種の対象物の選択性を変える。電荷を帯びた対象物もイオン対生成(イオン相互作用と呼ばれる)を用いることで、逆相カラムで分離できる。この方法は、逆相イオン対生成クロマトグラフィーとして知られる。
【0306】
結果例とHPLCとの比較
クロマトグラフ分離過程の効率はしばしば「クロマトグラフ効率」と呼ばれる。クロマトグラフ効率理論は比較すべき多くのクロマトグラフ処理の効率を相対的に示す指標を示す。ここに示す方法と装置を用いれば、クロマトグラフ処理は、他の方法と装置を用いて実施される類似のクロマトグラフ処理と比較してより効果的なクロマトグラフ処理を設定できる。したがって、以下のパラグラフでは、圧力に関する必要性と粒子サイズの制限を含む遠心液体クロマトグラフィーに対する方法と装置を、液体クロマトグラフィーで通常用いる形態であるHPLCと比較する。更に、クロマトグラフ分離理論を簡単に記述する、具体的には、1)ここに記載した装置と方法を用いるクロマトグラフ分離の効率の尺度と、2)HPLCのような他のタイプのクロマトグラフ装置で得られる性能尺度との比較と、を記述する。
【0307】
HPLCで通常用いられる量として背圧がある。背圧とは、特定のサイズの粒子を固定相とするカラム中に流体を通すのに必要な圧力を決定するために、背圧の計算値を用いる。HPLCで必要な圧力は次のように算出される。
ΔP=(ηFL)/(K0πr2dP2)
ここで ≡Pはカラム頭部での圧力であり長さ方向に降下する、ηは粘度、Fは流速、Lはカラムの長さ、K0は固有透過度、rはカラムの半径そしてdPは粒子直径である。流速、流体の粘度、カラム長を増加させたり、粒子径を減少させたりすると、より高い耐圧性が必要になる。例えば、HPLCで2マイクロメータ以下のような細かい粒子は高い耐圧性を必要とする。例えば、HPLCで2マイクロメータの粒子を用いる場合には10,000PSI以上の圧力が必要である。
【0308】
遠心液体クロマトグラフィーを用いる本実施例では、背圧の必要性と圧力の重要性はHPLCと異なる。例えば、上に示した他のパラメータと同様にある粒子径サイズでは、ここに示すクロマトグラフ・システムを運転する圧力はHPLCシステムに必要な圧力と比べてはるかに小さい。また、遠心液体クロマトグラフィーを用いる系は圧力に関してHPLCシステムと挙動が異なる。例えば、ここに示す実施例では、圧力はカラムの頭から長さ方向に沿って増加するが、HPLCでは逆に減少する。
【0309】
特定の理論に縛られることなく、カラムは多くの層からなり、流体は層から層へとカラムを下る。分離効率理論では、先に述べたように、これらの層それぞれを「段」と呼ぶ。例えばHPLCのように圧力を駆動力とする場合、各層を横切って流体を流すには僅かな圧力が必要である。したがって、必要な圧力はカラム中の層又は段に依存し、全体として必要な圧力は、流体を各層を横切って流すための圧力の総和となる。分離効率は、通常層の数が増加するに連れて増加する。したがって、HPLCでは、層の数が増加するにしたがって増加する分離効率はより高い圧力を必要とする。
【0310】
遠心液体クロマトグラフィーでは、流体は遠心力によって各層を横切るので圧力損失はない。遠心力は互いに独立に各層に働くので、HPLCの場合のように層を横切るために圧力損失がない。したがって、遠心液体クロマトグラフィーでは、圧力に関する必要性がHPLCに比べてはるかに少ない。この特徴は従来技術では十分に評価されてこなかったと出願人は考える。
【0311】
更に、ここで記す実施例では、HPLCで可能なものよりはるかに細かい粒子を使える。例えば、およそ15オングストロームの粒子でも利用可能である。もし更に小さい粒子が製造されれば、それも使用可能と考えられる。
【0312】
クロマトグラフィーでは、分離効率を評価するために段モデルが用いられる。段モデルでは、クロマトグラフ用カラムに多くの層を考える。これを「理論段」と呼ぶ。サンプルが固定相と移動相の間で平衡化するが、これが各「段」で起こると考える。分析対象物は平衡化した移動相によって、一つの段から次の段へと下る。
【0313】
「段」という用語はカラムの中で機能する処理に対するアナロジーとして用いる。実際にカラム中に段があるわけではない。カラム効率、つまりクロマトグラフ分離を行う能力、はカラム中の理論段の数N、あるいは一理論段に匹敵する高さ、理論段高として数値化される。長さLのカラムについては、理論段高は次のように定義される、
HETP=L/N.
2つの異なるカラム中で起こるクロマトグラフ処理を比較すると、Nの値が大きいあるいはHETPの値が小さいカラムはクロマトグラフ効率が高いことを示す。
【0314】
カラム中で起こる液体クロマトグラフィーに対して分離効率が定義されてきた。国際純正応用化学連合は分離効率を次のように定義した:
N=16(VR/wb)2 =16(tr/w) 2
ここでNは理論段数、VRはサンプル注入から当該のサンプル成分のピーク極大出現までの間にカラムに流入する移動相の体積、wbは分析対象物がカラムから出始めた時刻から完全に出終わるまでの時間の総体積、tは保持時間(秒)、そしてwはピークの幅(秒)である。
【0315】
ここに記載した実施例のクロマトグラフ・システムを用いて、実験的な測定をおこなった。3つの化学種の分離のために、直径(dp)5ミクロンの粒子を詰めた長さ2.3cm、空隙体積0.110mlのカラムを用いた。化学種1はFD&C RedNo.3(エリスロシン)である。化学種2はFD&C YellowNo.5(タトラジン)である。化学種3はFD&C GreenNo.3(ファーストグリーンFCF、E143)である。移動相は、70%水、30%イソプロピルアルコール(IPA)及び0.010モル/リットルのリン酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)である。この実験で理論段高を求めた。これらの実験は表1に示す数値を示した。
【0316】
【表1】
【0317】
各化学種に対するVR及びwbの値を理論段の式に関連して示す。 k’は各化学種の保持因子、αは2つの化学種の保持体積の比、Rは2つの化学種の間の分離度、Nは理論段数、N/Lは理論段数をカラム長(0.023m)で割ったものである。例えば、化学種1と2の分離度は次のように算出する。一般的には、R(A,B)=2[VR-B-VR-A]/[wb-B+ wb-A]。1と2については、R(1,2)=[VR-2-VR-1]/[wb-2+ wb-1]。α(A,B)=k’A/k’Bは2つの化学種の保持係数の比である。例えば、α(1,2)=k’1/k’2である。
【0318】
表1に示した3つの化学種のクロマトグラムを図12に示す。理論段などの表に示した量は、各ピークの体積など、クロマトグラムで得られたデータから算出した。小さいスケールでは線のように見えるが、ピークには幅があり体積を計算するのに用いる。
【0319】
各化学種に対する理論段と化学種間の分離度は極めて高い。例えば、2つの化学種の間の分離度が1.5以上であるということは完全分離と考えられる。理論段数と分離度はHPLCで得られる理論段数と分離度よりはるかに高い。
【0320】
HPLCとここで述べた方法及び装置の違いを数値化するために、同等の分離をHPLCと遠心液体クロマトグラフィーで行った。固定相としては、いずれも直径5ミクロンの粒子を用いた。HPLCで用いたカラムの長さは150mmである。遠心液体クロマトグラフィーで用いたカラムの長さは36mmである。どちらでの方法でも、類似の移動相とサンプルを用いた。実験の測定値を表2に示す。
【0321】
【表2】
【0322】
HPLCと遠心液体クロマトグラフィーの大きな違いが予想外である。遠心液体クロマトグラフィーの分離効率はHPLCより数ケタ良い。遠心液体クロマトグラフィーが高い分離効率を示す多くの説明が可能である。なぜ典型的な結果が得られたのかに関わる個々の理論を離れて、いくつかの気付いた点を以下に示す。
【0323】
流体をクロマトグラフ・エンクロージャに通すのに遠心力を用いた場合は、HPLCのように圧力を用いた場合に比べて、濃度勾配の結果として起こる拡散がはるかに少ない。拡散が少ないと分離効率が上昇し、その結果HPLCとは対照的にここで記述した実施例では、理論段数が大きくなる。遠心に関連する沈殿係数は濃度に依存する。このために、遠心によって拡散が減少した。
【0324】
応用
クロマトグラフィーは、実験化学者及びそれぞれの学問に化学を応用するものにとって基礎的な道具である。クロマトグラフィーは石油産業、食品産業、製薬業、医学(例えば診察)、及びその他の産業で広く用いられ不可欠である。ここに記した実施例をクロマトグラフ処理に応用する分野をより詳しく見ると、
医学及び生物医学の研究
薬品の品質管理
ルーチンの臨床分析
薬品のスクリーニング
宇宙関連の研究と開発
地球化学の研究と開発
薬学の研究と開発
犯罪科学
食品及び化粧品関連の化学的測定
石油産業における工程管理
環境モニタリング及び汚染制御
生物学的システムでの化学及び代謝に関する研究
ここに記した装置を用いて可能な分析の二三の特別な例としては、人血漿のタンパク質、ヌクレオチド及びその誘導体、アミノ酸及びその誘導体、尿の代謝物の分析、治療薬物のモニタリング、薬物乱用のモニタリング、及び小麦や他の種のタンパク質の分析などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0325】
クロマトグラフ処理の二つの主な目的は、その大きさと目的によって、分析と調製とに区別される。調製クロマトグラフィーは2、3の試料を大量に精製・回収するために用いられる。分析クロマトグラフィーは、多種の少量のサンプルについて、その組成と純度を決めるために利用される。いろいろな調製及び分析に用いられるサンプルの大きさ、カラムの長さ、及びカラムの内径(I.D.)の例を次に示す。
【0326】
【表3】
【0327】
ここに示す実施例は、調製にも分析にも用いることができる。工業プロセスのような大きなサンプルの場合、それに応じて装置と方法をスケールアップできる。カラムの長さや内径のようなカラムのサイズは、上に示すように目的に応じて変えることができ、いろいろな実施例では、それぞれ10ないし400cm及び0.1ないし2000mmに及ぶ。カラム長さと内径は、粒子による要求を満たすようにいろいろ選べる。例えば内径が0.01mm以下のキャピラリーも使える。したがって、上に述べた範囲は限界を示すものではなく、例示の目的にすぎない。上に述べたローター・アセンブリのような回転要素も、特別な応用のために特別な大きさのカラムを収容できるようにスケールアップあるいはダウンできる。
【0328】
方法
図13は、クロマトグラフ分離処理を実行する方法700を示すフローチャートである。ステップ702で、複数の構成要素、すなわち、1)固定相を含有するクロマトグラフ・エンクロージャと、2)移動相流体源と、3)サンプル源と、を準備する。ステップ704で、クロマトグラフ・エンクロージャを、ローター・アセンブリ等の回転要素に結合させる。
【0329】
ステップ706で、回転要素を休止状態から回転させて、クロマトグラフ・エンクロージャに角速度を与える。回転中、遠心力により移動相流体源から供給された移動相流体が、固定相を通って移動する。移動相流体源は、クロマトグラフ・エンクロージャと一体化した構成要素でもよいし、クロマトグラフ・エンクロージャと別に配置されるものでもよい。
【0330】
ステップ708で、クロマトグラフ・エンクロージャの回転中に固定相を通る移動相流体の流れが形成されたか否かを判定する。具体的に言えば、クロマトグラフ・エンクロージャを通る定常流が形成されたか否かを判定するようにしてもよい。一実施例において、クロマトグラフ・エンクロージャの端部近傍に配置されるフローセルを用いた測定を利用して、流れが形成されたか否かを判定するようにしてもよい。
【0331】
一般に、検出器を用いて、カラム内が定常条件に到達したか否かを判定することができる。利用可能な検出器の例は上述したが、たとえば、「装置」の節で説明した検出器を用いることができる。検出器からの信号、たとえば、カラムから出る移動相流体により生成された信号、を所定の期間にわたって測定する。図12に示すクロマトグラムは、検出器から得られる信号の一例である。信号にノイズが含まれる場合もある。対象となる期間にわたって変動が所定量未満の信号の平均値として、定常性を定義するようにしてもよい。1つのカラムに複数の検出器を関連付けて、複数の検出器からの信号を用いて、定常条件に到達したか否かを判定するようにしてもよい。
【0332】
測定可能な他のファクターは、ローター・アセンブリの角速度である。一部の実施例において、特定の測定の際に、ローター・アセンブリを休止状態から目標角速度までスピンアップ処理するようにしてもよいし、あるいは、1回目の測定時にはローター・アセンブリを第1の角速度にし、その次の測定時には角速度を増加又は減少させて新しい目標値にするようにしてもよい。検出器を用いて、ローター・アセンブリの平均角速度が、所定の期間にわたって、所定の範囲内であるか否かを判定するようにしてもよい。たとえば、ローター・アセンブリに接続されたモーターが回転速度を報知するようにしてもよい。一部の実施例において、平均角速度が対象期間にわたって所定の範囲内であることが判定されるまで、サンプル注入を開始しないようにしてもよい。また、一部の実施例において、カラムを通る流れに関する1つ以上の検出器からの信号と角速度に関係する信号との両方が所定期間にわたって所定範囲内である場合にのみ、サンプル注入を開始するようにしてもよい。
【0333】
一例として、クロマトグラフ・システムの一連の測定では、最初に、カラム内に移動相流体を導入する。移動相流体組成が、検出器から出力される第1の信号を生成するものでもよい。この信号が所定の範囲内で経時変化する場合、たとえば、信号値のレベル変化が比較的少ない場合、サンプルを注入して、勾配溶離を実行させるようにしてもよい。所定の被分析物をカラムから流出させるために、勾配溶離が必要となる場合がある。勾配溶離により、検出器から出力される信号が変化する。溶離に起因する信号の変化は、特定の傾きを持つ線形プロファイル等の認識可能なプロファイルとして検知できる。また、カラムからの被分析物の流出によっても、信号の変化が生じる。被分析物による信号の変化は、ピークや谷といった認識可能なプロファイルとして検知できる。被分析物により生じた信号変化のプロファイルは、勾配溶離により生じた信号変化のプロファイルと異なり、個々の信号変化への影響を見分けることも可能である。
【0334】
勾配溶離が完了後、移動相流体は、勾配溶離前の最初の組成に戻る。これに応じて、検出器からの信号が、所定期間後に、最初の値、すなわち、勾配溶離が開始される前の値に戻る。一部の実施例において、10ないし20カラム容積の流体をカラムに流すようにしてもよい。信号が最初の値に戻り、かつ、その値が所定の期間にわたって所定の範囲内である場合には、カラムに次のサンプルを注入することができる。
【0335】
ステップ710で、クロマトグラフ・エンクロージャの回転中に、サンプル源からサンプル流体を導入して、固定相内にサンプル流体を通す。サンプル流体が固定相を通って移動することにより、サンプル流体から1つ以上のサンプル成分をクロマトグラフ分離することができる。ステップ712で、クロマトグラフ・エンクロージャの回転中に、固定相を通過した後、サンプル流体の分離された成分を検出する。たとえば、分離された成分をクロマトグラフ・エンクロージャ端部近傍のフローセルに通し、フローセルを用いた測定により、分離された成分の存在を検出するようにしてもよい。このような測定の結果を、クロマトグラフ・システムに接続された出力装置に、クロマトグラムとして表示するようにしてもよい。
【0336】
本発明には幾多の利点がある。さまざまな態様、実施形態又は実施例は、以下に説明する1つ以上の利点を有する。1つの利点として、遠心分離を利用してクロマトグラフ用カラムに流体を通すことにより、HPLC等の他の種類のクロマトグラフ手法よりも小さな固定相粒子を利用可能なことが挙げられる。小さな粒子を用いることにより、HPLC等の他の種類のクロマトグラフ手法と比べて、クロマトグラフ分離効率を向上させることができる。別の利点として、本明細書に記載するローター・アセンブリが多数のクロマトグラフ処理を同時に実行可能なことが挙げられる。多数のクロマトグラフ処理の「並行処理」により、スループットタイムが短くなり、HPLC等の他のクロマトグラフ処理の場合に時間がかかりすぎ、コストがかかりすぎるような分析を行なうことができる。本発明の多くの特徴や効果は、本明細書から明らかであり、本発明のこのような特徴や効果は、すべて、特許請求の範囲に記載される本発明の要旨の範囲内に含まれるものである。さらに、当業者には自明のように、さまざまな変形及び変更が可能であり、図示及び記載した具体的な構成や操作に本発明は何ら限定されるものではない。したがって、適当な変形や変更、及びその等価物は、すべて、本発明の要旨の範囲内に含まれる。
【技術分野】
【0001】
[関連出願の記載]
本出願は、あらゆる目的で、その全体が本明細書に組み込まれる、発明の名称を「Centrifugal Column Chromatograph System(遠心式カラムクロマトグラフ・システム)」とする、Kerrらにより2009年3月13日に出願された米国仮特許出願番号No.61/210,118に対する35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明の態様は、液体クロマトグラフィーを実行するシステムに関する。具体的には、本態様は、遠心力がかかるカラム内で液体クロマトグラフィーを実行するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
クロマトグラフィーは、化学者のみならず自分の専門領域に化学を応用する人々にも用いられるツールである。クロマトグラフィーは、石油業界、食品業界、製薬業界、医学(たとえば、診断法)やその他さまざまな分野で広く用いられ、かつ、必要不可欠なものである。クロマトグラフィーは分離処理技術の1つである。クロマトグラフ処理により、混合物中の各成分を、互いに物理的に分離することが可能である。物理的に分離した各成分を、たとえば、同定を目的として、分析することができる。また、分離した各成分を集めて、他の目的に利用することも可能である。たとえば、他の化学組成を形成する成分として用いることもできる。
【0004】
クロマトグラフィーにおける2つの重要なファクターは、分離効率とスループットである。クロマトグラフ処理において、分離効率は、混合物の各成分を分離する処理能力に関係し、各成分を互いに区別して、必要に応じて、化学的に同一か否かを判別し、化学的に同一な成分を収集することもできる。クロマトグラフ処理における分離効率が不適切な場合、クロマトグラフ処理の対象である混合物の特定の成分を同定したり収集することができなくなる。一方、スループットは、クロマトグラフ処理にかかる時間、分離された各成分を収集するタイミングや、特定の量の成分を集めるのにかかる時間に関係する。通常、スループットタイムが増大すると、クロマトグラフ処理及び関連するクロマトグラフ・システムにかかるコストが増大する。
【0005】
クロマトグラフ分離を行なうための一般的な方法に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)がある。現在、液体クロマトグラフィーの分野では、HPLCを用いるクロマトグラフ・システムが、分離効率とスループットタイムとに優れている。HPLCは、圧力を駆動力として用いて、分離対象成分の混合物を含有する液体を粒子床内で移動させる。粒子床内を液体が移動することにより、粒子床と液体との間の相互作用により液体内の成分が互いに分離される。
【0006】
分離効率を高めるためには、粒子床内の粒子の粒径を小さくすることが望ましい。しかし、粒子床内で液体が十分に移動しなければ、粒径が小さくなるにつれて、スループットタイムが増大してしまう。HPLCでは、圧力を駆動力として用いているため、分離効率のさらなる向上には限界がある。直径約2マイクロメートルの粒径の粒子を用いて、かつ、十分なスループットタイムをえるためには、HPLCでは、約10,000PSIの圧力が必要となる。高い圧力レベルでは粒子が破壊されやすくなり、また、高い圧力レベルを与えるシステムの構築と維持には非常に大きなコストがかかるため、このレベル以上に圧力を増大させても、限られた効果しか得られない。したがって、HPLCのような制限がなく、分離効率とスループットとを向上させることが可能な液体クロマトグラフィーを実行するための方法及び装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、遠心式液体クロマトグラフィーを提供するシステム、方法及び装置に関する様々な実施形態を詳述する。1つ以上のクロマトグラフ・エンクロージャを保持するローターが備えられる。各クロマトグラフ・エンクロージャは、クロマトグラフ固定相を含有し、クロマトグラフ固定相を通る流路を与えるように構成される。遠心力によって、サンプルを含有する移動相流体を、クロマトグラフ・エンクロージャ内のクロマトグラフ固定相に通して、サンプルの各成分に対するクロマトグラフ分離処理を行なうことができる。サンプルの導入を制御して、サンプルの導入前に、ローター上の流れを定常状態条件に到達させるようにしてもよい。駆動力として遠心力を用いることにより、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と比べて、非常に小さな固定相流体を用いることが可能になる。また、同等のクロマトグラフ分離処理を行なう場合でも、遠心力を用いることにより、HPLCと比べて分離効率をかなり向上させることができる。
【0008】
本発明の一つの態様は、遠心式クロマトグラフ・システムであって、1)クロマトグラフ・エンクロージャと、2)前記クロマトグラフ・エンクロージャを保持し、前記クロマトグラフ・エンクロージャを回転させるローターと、3) 前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結するサンプル導入機構と、を備える。サンプル導入機構は、前記ローターの回転中に前記クロマトグラフ・エンクロージャにサンプル流体を導入するように構成される。さらに、サンプル導入機構は、サンプル導入信号を受信し、前記サンプル導入信号の受信に応じて前記サンプル流体の導入を開始する。特定の実施形態において、前記サンプル導入機構に接続される制御装置を備え、前記サンプル流体の導入を自動的に開始するようにしてもよい。さまざまな実施形態において、サンプル導入機構及び/又は制御装置をローター上に保持するようにしてもよい。
【0009】
本発明の別の態様は、遠心式カラムクロマトグラフ・システムであって、1) 軸の周りを回転するように構成されているローターと、2)前記ローターに保持されている複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャと、3)前記クロマトグラフ用カラム・エンクロージャの少なくとも選択された1つに流体連結するサンプル導入機構と、4)前記ローターに保持され、前記複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャと流体連結し、前記複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャから溶出された流体を収容する溶離液リザーバ―と、を備える。
【0010】
さまざまな実施形態において、各クロマトグラフ用カラム・エンクロージャが、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ用カラム・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成される。前記ローターの回転によって生じる遠心力により、前記流体を前記クロマトグラフ用カラム・エンクロージャの軸方向に前記クロマトグラフ固定相の中で移動させる。サンプル導入機構は、前記ローターの回転時に、前記選択されたクロマトグラフ用カラム・エンクロージャにサンプル流体を導入する。
【0011】
本発明のまた別の態様は、遠心式クロマトグラフ・システムであって、1)軸の周りを回転するように構成されているローターと、2)前記ローターに保持されている少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャと、3)前記ローターに保持され、移動相流体を前記ローター上のサンプルと混合して混合流体を生成する混合チャンバーと、を備える。混合チャンバーは、前記ローターに保持される構成要素の回転を利用して、前記サンプルと前記移動相流体との混合を促進する。また、混合チャンバーは、通常、前記クロマトグラフ・エンクロージャの上流側に配置される。さまざまな実施形態において、遠心式クロマトグラフ・システムは、さらに、前記混合チャンバーに流体連結する移動相流体リザーバーと、前記混合チャンバーに流体連結するサンプル導入機構と、を備え、前記移動相流体リザーバーと前記サンプル導入機構とが、前記ローター上又は前記ローター外のいずれかに配置されるようにしてもよい。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、クロマトグラフ・システムであって、1)対応するクロマトグラフ固定相を含有するクロマトグラフ・エンクロージャであって、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成されるクロマトグラフ・エンクロージャと、2)前記クロマトグラフ・エンクロージャを保持するローターであって、所定の角速度で前記クロマトグラフ・エンクロージャを回転させて、遠心力により流体を前記クロマトグラフ固定相を含む前記クロマトグラフ・エンクロージャ内で移動させるように構成されるローターと、3)流体エンクロージャであって、前記ローターの回転時に静止している第1の部分と、前記ローター上に保持され、前記ローターと共に回転する第2の部分とを備え、前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結する流体エンクロージャと、を備える。
【0013】
一実施形態において、クロマトグラフ・システムが、前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結し、前記クロマトグラフ・エンクロージャへの移動相流体の供給を容易にする流体供給機構を備えるものでもよい。流体供給機構は、前記ローターの回転時に静止している第1の部分と、前記ローター上に保持され、前記ローターと共に回転する第2の部分とを備える。流体供給機構は、前記ローターの回転時に、前記流体供給機構の前記第1の部分から前記第2の部分に流体を移動させるように構成される
【0014】
本発明の別の態様は、遠心式クロマトグラフ・システムであって、1)ローターであって、前記ローターに保持されているクロマトグラフ・エンクロージャを備えるローターと、2)前記ローターに近接するガスベアリングであって、前記ローターの回転時に前記ローターを安定化させるように構成されるガスベアリングと、を備える。システムが、さらに、前記ローターを取り囲む格納構造と、前記格納構造により支持されている複数のローター支持構造と、を備えてもよい。各ローター支持構造はガスベアリングを備え、前記ガスベアリングが協働して、前記ローターが回転している間、前記ローターを安定化させてもよい。
【0015】
本発明のまた別の態様は、クロマトグラフ・システムであって、1)ローター上に保持されている複数のクロマトグラフ・エンクロージャであって、各クロマトグラフ・エンクロージャが、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記クロマトグラフ固定相の中を前記ローターの外周面に向かって前記流体を移動させる、複数のクロマトグラフ・エンクロージャと、2)前記ローターの前記外周面の周りに配置されている複数のリンクであって、各リンクが2つの他のリンクと連結して、前記ローターの前記外周面の周りに連続した鎖の輪を形成し、1つ以上の前記リンクが、i)前記外周面に向かって移動する流体を収容し、並びに、ii)前記外周面から離れて内側に流体の方向を変える、ように構成される流路を備える複数のリンクと、を備える。
【0016】
本発明の別の態様は、遠心式クロマトグラフ・システムであって、1)軸の周りを回転するように構成されているローターと、2)前記ローター上に保持されているクロマトグラフ・エンクロージャであって、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記流体を前記クロマトグラフ固定相の中で移動させる、クロマトグラフ・エンクロージャと、3)前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結し、フローウィンドウを備えるフローセルであって、前記クロマトグラフ・エンクロージャと前記フローセルとを通る流路であって、前記クロマトグラフ・エンクロージャの前記クロマトグラフ固定相内の所定位置から始まり、前記フローウィンドウを通過する流路の内側断面積が実質的に一定である、フローセルと、を備える。
【0017】
本発明のまた別の態様は、遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、1)クロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、2)前記クロマトグラフ用カラムを通る移動相流体の流れを形成させて、遠心力により前記移動相を前記クロマトグラフ用カラム内に通し、3)サンプル流体を前記移動相流体の流れに入れることにより、前記サンプル流体を前記クロマトグラフ用カラム内に導入し、前記ローターが回転する間に前記サンプル流体を導入する。この方法はさらに、前記クロマトグラフ用カラム内が移動相流体の定常流条件に到達したか否かを判定し、前記クロマトグラフ用カラム内が移動相流体の定常流条件に到達したと判定された後に、前記サンプル流体を放出するようにしてもよい。また、この方法はさらに、移動相流体の定常流条件に到達したと判定された後に、前記クロマトグラフ用カラム内にサンプル流体を導入し、前記サンプル流体の遠心式クロマトグラフ分離を容易にするようにしてもよい。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、1)クロマトグラフ固定相を含有するクロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、2)前記ローターが回転する間に、前記移動相流体を前記クロマトグラフ用カラムに供給して、遠心力により前記移動相流体を前記クロマトグラフ固定相に通し、3)前記クロマトグラフ用カラムにサンプル流体を導入するタイミングを決定し、前記サンプル流体の遠心式クロマトグラフ分離を容易にする。
【0019】
本発明の他の態様や利点は、本発明の原理を例示する添付の図面を参照した以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0020】
添付の図面を参照する以下の詳細な説明により、本発明をさらに理解することができるであろう。以下の説明において、同じ参照番号は同じ構造要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】回転要素を含むクロマトグラフ・システムを示すブロック図。
【0022】
【図2】クロマトグラフ・システム用に設定されたローター・アセンブリの実施例を示す側面図。
【0023】
【図3】クロマトグラフ・システム用に設定されたローター・アセンブリの実施例を示す上面図。
【0024】
【図4A】クロマトグラフ・システム用に設定されたマニホールド・アセンブリの上面斜視図。
【0025】
【図4B】クロマトグラフ・システム用に設定されたマニホールド・アセンブリの底面図。
【0026】
【図5A】流路の図示を含むローター・アセンブリの垂直断面図。
【0027】
【図5B】流路の図示を含む皿状アセンブリ、クロマトグラフ用カラム、フローセル、復路セグメントリンク及び復路チャネルの上面斜視断面図。
【0028】
【図5C】復路セグメントリンクの斜視図。
【0029】
【図6】リザーバーの断面図及びローター・アセンブリの側面図。
【0030】
【図7A】ガスベアリング支持アセンブリの側面図。
【0031】
【図7B】ガスベアリング支持アセンブリの側面図。
【0032】
【図7C】ガスベアリング支持アセンブリの斜視図。
【0033】
【図8】格納構造内部に配置され、計器取り付け部を備えるローター・アセンブリ及びガスベアリングアセンブリを示す側面図。
【0034】
【図9A】クロマトグラフ・システム用に設定されたローター・アセンブリの実施例を示す上面図。
【0035】
【図9B】クロマトグラフ・システム用に設定されたローター・アセンブリの実施例を示す側面図。
【0036】
【図9C】カラム端部とフローセルとの間に反応チャンバーが備えられた構成を示すブロック図。
【0037】
【図10A】クロマトグラフ分離を実行するための複数のカラムを備えるバケットアセンブリの正面図及び側面図。
【0038】
【図10B】回転中の複数のバケットを含むローター・アセンブリを示す上面図。
【0039】
【図10C】休止状態の複数のバケットを含むローター・アセンブリを示す上面図。
【0040】
【図10D】回転中の複数のバケットを含むローター・アセンブリを示す上面図。
【0041】
【図11】遠心分離前と遠心分離後のクロマトグラフ処理用に設定されたカラムの正面図。
【0042】
【図12】3種類の成分を分離したクロマトグラムを示す図。
【0043】
【図13】クロマトグラフ分離法を実行するための方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0044】
添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下の説明は、本発明の態様を好適な実施例に何ら限定するものではない。特許請求の範囲に記載される本発明の要旨の範囲内で、さまざまな変形や修正が可能であり、その等価物も本発明の範囲内に含まれる。
【0045】
クロマトグラフィーとは、化学物質の混合物をその成分に物理的に分離する処理を意味する。クロマトグラフ処理では、化学物質の混合物はキャリヤー流れ(気体又は液体)の中に溶解される(又は、混合される)。その混合物を含むキャリヤー流れは粒子の床を通過させられる。キャリヤー流れはある流速で粒子の床を移動する。クロマトグラフィーでは、キャリヤー流れはしばしば「移動相」と呼ばれ、粒子の床は「固定相」と呼ばれる。
【0046】
固定相の粒子は、移動相に溶解した混合物の成分が固定相の粒子と異なる程度に相互作用するように選ばれる。混合物の成分が粒子と相互作用する程度の差が、混合物の各成分が如何に速く固定相を通り抜けるかに影響を与える。従って、混合物の成分は固定相を異なった速度で通過する。混合物の2つの成分が異なる速度で移動相を通過すると、ある距離の固定相を通過する間に、固定相をより速く通過する成分が、移動相をより遅く通過する成分より、ある一定時間により多く移動するので、分離される。
【0047】
液体クロマトグラフィーの目的は、混合物の成分が異なる速度で移動相を通過するように選択された移動相と選択された固定相を含むシステムを供給することにある。混合物の成分が、少なくともある程度、分離するとき、分離した成分の性質を特徴づけるために、そしてある場合には混合物の成分を定量するために、いろいろな型の測定装置が用いられる。更に、必要な場合には、混合物から分離した成分が更なる処理又は分析のために収集される。
【0048】
液体クロマトグラフィーでは、上述のように、移動相が一定の半径を有する球 状粒子の様な粒子を含む固定相を通過する。粒子は孔を持つことができ、他の分子が粒子に結合する。粒子の半径、空孔サイズ、結合する分子は、移動相中に溶解した成分と異なる型の物理的相互作用を有するように選択できる。
【0049】
液体クロマトグラフィーの最も初期の実施例では、移動相が固定相中を通過するための駆動力として重力を用いた。例えば、固定相を形成する比較的均一な粒子サイズ分布の粒子を充填したオープンカラムの上層に移動相が負荷された。移動相が重力の下で移動相中を通過する際に、移動相に添加された混合物の成分は分離される。ある場合には、分離した成分が異なる色を有するために、成分が分離したことは視覚的に観測できる。カラムがガラスのように透明な材質であるとき、異なる色のバンドがカラムを降下するのを観測できる。粒子を充填しこのようにして混合物中の成分を分離するのに用いられるカラムは「クロマトグラフ用カラム」と称される。
【0050】
液体クロマトグラフィーは開発された分野であるため、クロマトグラフ用カラムを用いて混合物中の成分を分離する能力は、固定相の充填粒子のサイズが小さくなることによって、増加することが分かっている。より小さい粒径の粒子を用いると固定相の充填効率が向上し、混合物の成分と固定相の粒子の間に相互作用が起こる体積中の表面積を増加させる。したがって、クロマトグラフ用カラムの固定相に用いるより小さな粒径の球状粒子を作成する方法が開発された。
【0051】
重力によって駆動されるクロマトグラフ用カラムでは、移動相中の粒子サイズは無制限に小さくすることはできない。重力ではもはや移動相と成分の混合物が実用的な時間で固定相を通過できなくなる粒子サイズ限界が存在する。駆動力としての重力を用いることによる限界を克服するために、加圧のような他の駆動力が、移動相をクロマトグラフ用カラムに通すために用いられる。
【0052】
より小さな粒径の粒子を固定相に用いることができるように高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が開発された。これにより、クロマトグラフ用カラムの分離性能が上昇した。HPLCでは、移動相をクロマトグラフ用カラムを通過させる駆動力として高圧が用いられる。HPLCでは、クロマトグラフ用カラムに移動相を通過させるのに必要な圧力は、粒子の直径の平方根に逆比例する。数ミクロンの粒子径を用いるためには、HPLCシステムを、およそ10,000PSIの圧力で操作できるように構成する必要があり、したがって、高性能で高価な装置が必要である。現在では、耐圧性、つまり分離効率を向上させるためにより小さい粒子を用いること、がHPLCの更なる発展を制限する要因となっている。
【0053】
HPLCシステムの耐圧性に関する欠点を改善するために、他の駆動力を利用してクロマトグラフ用カラム内で固定相に移動相を通すことが検討されている。既に述べたように、重力は初期のクロマトグラフ・システムで駆動力として利用されていた。オブジェクトに対する重力の効果はシミュレーション可能であり、回転軸の周りを回転するディスク等のプラットフォーム上にオブジェクトを置くことにより重力の効果を増大させることができる。回転座標系でオブジェクトが移動する際に、オブジェクトは、重力と同様に作用する、回転軸に対して垂直な線に沿った力を受ける。
【0054】
回転座標系でオブジェクトが受ける力は「遠心力」と呼ぶことができる。遠心力はしばしば重力の何倍かで表現される。例えば、相対遠心力(RCF)は回転軸の周りに回転するオブジェクトにかかる加速度の尺度であり、「重力」の単位又はgで表わされる。
RCF=r(2πN)2/g
ここでrは回転半径、つまり回転軸からオブジェクトまでの距離、Nは単位時間当たりの回転数で表わした回転速度、gは重力加速度である。RCFはまた次のように書くことができる、
RCF=1.118x10-5 rcm N2RPM
ここでrはcmで測定した回転半径であり、N2RPMは一分当たりの回転数で表わした回転速度である。
【0055】
以下で示すように、RCFはクルマトグラフ用カラムに充填した固定相に移動相を通過させるための駆動力として用いることができる。RCFを利用するためには、移動相はクルマトグラフ用カラムの固定相を通過するのに対して、クルマトグラフ用カラムは回転している。例えば、クルマトグラフ用カラムは回転ディスク上に設置され、カラムを回転させながらクロマトグラフ操作が行われる。クロマトグラフ・システムでRCFを用いる装置及び方法は次の図に示される。
【0056】
最初に、1つ以上の回転要素を有するクロマトグラフ・システムを図1に示す。次に、クロマトグラフ・システムのいろいろな形態の詳細を図2から図13に示す。特に、クロマトグラフ・システムのための回転部品の具体例を図2から図9Cに示す。回転部品の具体例は、回転中に多くのクロマトグラフ・エンクロージャの流路を支持し供給する。「吊り下げバケット」型は図10Aから図10Dに示す。吊り下げバケット型では、図2から図9Cに示す実施例と比較してより簡便にクロマトグラフ・エンクロージャを回転体から脱着可能である。遠心前後のクロマトグラフ・エンクロージャの実施例を図11に示す。クロマトグラムを図12に示す。最後に、クロマトグラフ分離過程の実施方法を図13に示す。
【0057】
クロマトグラフ・システム
図1は、回転要素132を含むクロマトグラフ・システム100のブロック図である。多くの実施例で、回転要素は「ローター」とも呼ばれる。回転要素132を用いて、RCFをクロマトグラフ・システムの構成要素に印可することができる。クロマトグラフ・システム100等におけるRCFの利用とそれに伴う効果を議論する前に、クロマトグラフ・システム100のいくつかの構成要素について説明する。クロマトグラフ・システムに関する説明やクロマトグラフ・システムに含まれる構成要素の数は、本発明を何らこれらの実施例に限定するものではなく、例示を目的としたものに過ぎない。回転要素を有するクロマトグラフ・システムの実施例は図1に示す以外の他の構成要素を備えるものでもよいし、各構成要素を異なる配置で備えるものでもよい。
【0058】
クロマトグラフ・システム100は溶媒管理部108を備えるものでもよい。溶媒管理部108によって、異なる溶媒がいろいろなクロマトグラフ操作に利用でき、クロマトグラフ・システムの運転ごとに変えることができる。溶媒管理部108は、102等の溶媒リザーバーを備えるものでもよい。溶媒リザーバーは、サンプルがクロマトグラフ操作のために溶解される移動相を供給する元として用いることができる。どのようなタイプのサンプルを分析するのかによって、単一の溶媒又はその組み合わせが用いられる。更に、用いる溶媒を測定毎に変えることもできる。つまり、第1の測定で第1のサンプルをクロマトグラフ分析するために第1の溶媒を用い、第2の測定で第2のサンプルを分析するのに第2の溶媒を用いるようにしてもよい。バルブ等の流量調節機構により、個々の測定の要件に応じて、さまざまな溶媒をさまざまな時間で用いることができる。
【0059】
104等の溶媒供給システムは移動相を形成するために溶媒リザーバーから溶媒を異動させるために利用できる。溶媒リザーバー102から溶媒を異動させる駆動力を供給するために、典型的にはポンプ1台又はある種の複数のポンプを用いることができる。グラジエント形成部106は1つの又は複数の溶媒からなる移動相を生成するために用いることができる。二成分の溶媒混合物が通常は用いられるが、更に複雑な溶媒混合物をここに示す実施例で用いることができる。クロマトグラフの一回の運転中に、移動相が有機溶媒の組み合わせから形成される場合には、各溶媒の濃度を時間の関数として変化させることができる。グラジエント形成部106は移動相の成分の濃度を時間の関数として制御することができる。
【0060】
クロマトグラフ・システム100は、サンプル管理部114を備えるものでもよい。サンプル管理部114により、移動相がクロマトグラフ・システムに導入される前に、サンプルが移動相に導入される。サンプル管理部114は、さまざまなサンプル110を保持し、サンプルをサンプルインジェクター112へ充填する機構を有する。サンプルインジェクターはサンプルを導入する機構の一つの例である。112等のサンプルインジェクターは移動相に特定のサンプルを導入するのに用いることができる。例えば、サンプルインジェクターは導管中を移動する移動相流れにサンプルを注入することができる。
【0061】
クロマトグラフ・システム100は、カラム管理部117を備えるものでもよい。カラム管理部117は、温度のようなクロマトグラフ用カラムに関わる条件を制御するのに用いることができる。クロマトグラフ用カラムの温度は、例えば熱電素子(ペルチエ素子)や熱エネルギーをカラムに加えたりカラムから除いたりする何らかの他の方法により、カラムを加熱又は冷却する装置を用いて、制御することができる。カラムに沿って温度勾配があると、カラムに沿って粘度が変化し、その結果カラムに沿って速度が変化する。典型的には、壁を通しての熱伝導の結果、温度はカラムの中央付近で最も高く、カラムの壁に向けて低下する。カラムの壁を加熱することによって、カラムの中央から壁に向けての温度の変化を軽減し、カラム全体の温度を均一にすることができる。温度は、分析物、移動相及び固定相の間の平衡のような化学平衡に劇的な影響を与えることが知られている。再現性の高いクロマトグラフの結果を得るためには、カラム内部を一定の温度にすることが重要である。
【0062】
カラム管理部117は、各カラムの特性履歴を保持するソフトウェアを備えるものでもよい。その特性には、1)いつ充填されたか、2)充填剤の組成、つまり固定相は何か、3)カラムが何回使用されたか、4)移動相溶媒の組成のようなカラムが用いられたクロマトグラフ操作の種類、等があるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
クロマトグラフ・システム100は、検出管理部120を備えるものでもよい。検出管理部120は、クロマトグラフ用カラム内部でのクロマトグラフ処理で移動相から分離された成分を特徴づけるためのいろいろな装置を制御することができる。例えば、カラムからの溶出液が通過するフローセル・ウィンドウを通して光が通過する際に、光源(紫外から可視の領域、190から700 nm)から放出された光量の変化を検出するために、1つ以上の分光光度検出器が用いられる。混合物から物理的に分離された成分は、まだ移動相に溶解しているが、フローセルの中を通過する。そこで、第1の光源から放出された光がフローセルの第1のウィンドウを通過して、成分と相互作用する。光はフローセルの第2のウィンドウを通してフローセルから外へ出ることができ、そこで集光される。集められた光は、光と分離した成分の間に相互作用があったか否かを判定するために用いることができる。
【0064】
クロマトグラフ・システム100はデータ管理部115を備えるものでもよい。データ管理部115は、1つ以上の検出器から得られたデータを集め、分析し、保存するために設けることができる。データ管理部115はまた、検出器から得られたデータを出力するために設けることができる。例えば、データ管理部115は、クロマトグラムをクルマトグラフシステムのディスプレイに出力するように設定することができる。データ管理部115は、個々のクロマトグラフ測定のさまざまなパラメータに関するデータを異なるクロマトグラフ用カラムから収集した情報を追跡及び保存可能に構成されるものでもよい。
【0065】
クロマトグラフ・システム100は捕集管理部124を備えるものでもよい。捕集管理部124は、カラム116を通過し分離した成分を捕集するためのフラクションコレクター122を備えるものでもよい。対象となる幾つかの成分はカラムを異なる時間に溶出し、捕集管理部124は2つ以上の成分のそれぞれをフラクションコレクターに導くように設定することができる。移動相から溶出する幾つかの成分(溶出物と呼ぶ)は対象とならず、「廃棄物」と考えることもある。例えば、サンプルを導入する前に、溶媒をカラムに通過させることができる。捕集管理部124は、サンプルを導入する前にカラムから溶出した溶媒を、廃液コレクター123等の捕集装置の中に捕集することができる。
【0066】
ここに記述した実施例では、クロマトグラフ・システムは回転要素132のような、1つ以上の回転要素を備えるものでもよい。回転要素はローター管理部140によって制御される。ローター管理部140は、時間に対する回転要素132の回転速度、例えば回転数の増加、定常回転、回転数の減少など制御する。ローター管理部140は、回転要素132が正しく作動しているかを監視し、自動調節など回転要素132の作動に伴う処置を行うことができる。ローター管理部140は、回転要素上の電子的制御バルブのような、回転要素132上で作動する多くの要素への電力供給を監視し制御することもできる。
【0067】
システム管理部103は、初期化モード、動作モード、停止モードのような、クロマトグラフ・システム100のさまざまな操作モードの間、システムの全体の機能を監視し、また制御するように設定することができる。システム管理部103は、流れ管理部101、溶媒管理部108、サンプル管理部114、データ管理部115、カラム管理部、検出管理部120、捕集管理部124、及びローター管理部140と通信し、命令を送るように設定できる。システム管理部103は、他のクロマトグラフ・システムや遠隔コンピュータなど、他の装置やシステムと情報を交換するように設定することもできる。
【0068】
クロマトグラフ・システム100は、1つ以上の流れを管理することができる。流れ管理部101は、システム100中の多くのバルブやポンプを、直接に又は他の装置成分を用いた通信により制御するように設定できる。例えば、流れ管理部101が、溶媒管理部108に特定の溶媒を所定の流速で供給するように命令を送って、溶媒管理部108に関係する1つ以上の論理装置が所定の流速で供給が行われるようにバルブやポンプ等のデバイスを制御するようにしてもよい。あるいは、流速管理部101が、溶媒管理部108に関係するバルブやポンプを直接制御するようにしてもよい。
【0069】
流路管理及び流れ分析
流れ管理部101は、流路の数がシステム毎に変えたり、一つのシステム内でも変えることができるように、複数の流路を確立し保持する。クロマトグラフ・システム100内での流れは、流路の始端部126で始まるものでもよい。具体的には、溶媒リザーバー102から始まるものでもよい。流体を、リザーバーから溶媒供給システム104を介してグラジエント形成部106に移動させることができる。流路中の134の点で、流れは回転要素132に移動される。流れの移動は、回転要素132がある回転速度である回転方向138で回転しているときに起こる。異なる実施例では、回転速度と回転方向は変化させることができる。他の実施例では、流速は変化するが回転要素は静止している。
【0070】
回転要素132の上で、いろいろな場所での流れは回転要素132の中心から外に向かっているか、又は他の場合には回転要素132の中心に向かっている。回転体上の流路に沿って、回転要素の水準によって流れも変化させることができる。例えば、最初の段階では流れがクロマトグラフ用カラムを通して動き、次の段階では、例えばクロマトグラフ用カラムの下にあるリザーバーへの流れになる。
【0071】
所定の実施例において、流れは、回転要素の中心近くから入り、中心から外へ流れて116a、116b及び116c等のクロマトグラフ用カラムに入るものでもよい。例えば、流れは、中心近傍に配置される混合チャンバーのような、中心近傍の共通ソースから始まり、複数の流路に分岐する。例えば、サンプル管理部114を通る際に流れが分岐して、異なるサンプルが異なる流路に導入されるようにしてもよい。この分岐位置の例は単に例示のためにすぎない。所定の実施例において、流れが複数の流れに分かれる分岐点を、溶媒管理部108の内部、すなわち、リザーバー102、溶媒供給システム104の前又は内部、グラジエント形成部106の前又は内部、サンプル管理部114の前又は内側、カラム116の前又は内側、検出管理部120の前又は内側、又は捕集管理部124の前又は内側等、流路のいずれの位置に置いてもよい。更に、流れ管理部101は、クロマトグラフ・システムの測定毎に分岐点を変えられるように構成可能である。
【0072】
流路の分岐の例として、流路は、サンプル管理部114より前で、1つの流路で始まるものでもよい。サンプル管理部114で、流路は、複数の流路130、例えば3つの流路、に分岐される。必要に応じて、各流路に異なるサンプルが注入され、クロマトグラフ用カラム116a、116b及び116cの一つを通るようにしてもよい。
【0073】
別の例では、流れはサンプル管理部114の後で分岐することができる。単流路がサンプル管理部114に入り、サンプルが単流路に注入される。サンプル管理部114の後で、流路を複数に分岐させて、分岐した流れを複数のクロマトグラフ用カラムによって並列処理することも可能である。例えば、サンプルを含有する1つの流路をサンプル管理部114で生成し、3つの流路に分岐してクロマトグラフ用カラム116a、116b及び116cによって処理することも可能である。
【0074】
ある実施例では、クロマトグラフ・システム100の流れ管理部101は、流路の数や分岐の位置を変更したり制御したりできるように設定できる。流れ管理部101は、多くの流路が同時に形成されるような管路を備えるものでもよい。更に、流れ管理部は、異なる位置で開閉でき、特定の位置に形成された流路の数を変更可能なバルブのようなスイッチ機構を備えるものでもよい。
【0075】
例えば、流れ管理部101は3つまでの流路を作成できるサンプル管理部114内の管路を制御できる。流れ管理部は、サンプル管理部の前後に位置する分岐機構を制御できる。ある様式では、流れがサンプル管理部114に達する前に3流路を作成する(各流路は例えば116a、116b及び116cのようなクロマトグラフ用カラム接合される)。3つの流路の各々でサンプル管理部114は異なるサンプルを注入することができ、そのサンプルは分析のためのクロマトグラフ用カラムへと進む。
【0076】
別の態様では、サンプル管理部114の前に流れ管理部が分岐機構をオフにし、その結果1つの流れがサンプル管理部114に入り、1つのサンプルが注入される。サンプルが1つの流路に注入された後、分岐機構が活性化され1つの流れが複数の流路に分岐されて複数のカラムを通過する。例えば、116a、116b及び116cの3つのカラムによって処理可能なように、1つの流路を3つの流路に分岐するようにしてもよい。
【0077】
流れ管理部101が流れスイッチ機構を制御し、異なる組み合わせの流路をクロマトグラフ・システム100の中のいろいろな地点で、例えば、溶媒管理部の中、サンプル管理部114の中、カラム管理部117の中、検出器管理部120の中又は捕集管理部124の中などで、統合したり又は分岐したりするように設定できる。例えば、3流路が可能な場合に、スイッチ機構を制御して、単流路、三流路、又は二流路を異なる時間にクロマトグラフ・システム100の中の異なる場所で生成できるように流れ管理部101を設定できる。更に、流路内の別の場所では、流れを単流路から二流路へ、単流路から三流路へ、又は二流路から三流路へ変えることができる。
【0078】
流路が各々のカラムを通過した後、1つ以上の異なる検出器118を用いて分析される。例えば、フローセルがカラムの終端近くに置かれ、その透過性のウィンドウによって光源がフローセルを通して見えるようにすることができる。フローセルをカラム溶出液(溶媒混合物に加えて初期のサンプル混合物が物理的に分離された成分)が通過する間に、フローセルを出た光が高電子増倍管のような検出器118を用いて捕捉される。別の例では、クロマトグラフ用カラムを通過後、流れの一部が付加的な分析のために質量分析器のような装置へと向かう。
【0079】
ある実施例において、1つの検出器で複数の流路を分析するようにしてもよい。1つの光源と1つの光電子増倍管とにより、クロマトグラフ用カラム116a、116b及び116cのそれぞれに備えられる3つのフローセルのような複数のフローセルを通過する流れを分析することができる。複数の流路で装置を共有することにより、コストを削減できる。装置の共有に関する更なる詳細は図10Aないし図10Dに示す。
【0080】
136のような流路中の別の点で、流れは回転要素132から出る。回転要素132が回転中でも、また回転要素が停止中でも、回転要素からの出口136が機能する。図に示すように、流れは回転要素132を離れた後に、廃液リザーバー又はフラクションコレクターに入ることができる。廃液リザーバー及び/又はフラクションコレクターに入った流れは、流路の終端部128で終わる。
【0081】
流路の分岐の他に、流路の合流も起こる。図1に、複数の流路が1つの流路に合流する流路合流の例を示す。例えば、サンプルを集めない場合、クロマトグラフ用カラムからの全ての流出流路が1つの流路に合流し、共通の廃液リザーバーに向かう。流路の分岐の場合と同様に、クロマトグラフ・システム100には流路切替機構があり、異なる複数の流路を測定毎に異なる位置で合流させるようにしてもよい。流路管理部101は、合流の起こる場所を制御するなど合流に関わる流路制御を行うように設定できる。
【0082】
カラム条件制御部
クロマトグラフ・システム100の一つの側面は、クロマトグラフ用カラム内部に繰り返し条件を確立させられる点にある。つまり、ある特定の流路について、クロマトグラフ用カラムに関わる特定の条件を確立して維持するようにシステム100を設定できる。確立して維持する条件としては、1)カラム内部の流速、2)クロマトグラフ処理で時間とともに変化する溶媒組成、3)カラム温度、4)溶媒温度、そして5)一定の角速度のようなカラムの回転条件などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
ある実施例では、クロマトグラフ用カラムにサンプルを注入する前に、例えば一定の流速のようなクロマトグラフ用カラム内部の初期定常条件を確立するようにクロマトグラフ・システム100を設定することができる。初期定常状態の確立とは、選択されたカラムパラメータの組み合わせの各々がある時間範囲に渡ってある許容範囲内で変化するような状態にすることを言う。クロマトグラフサンプルを注入する前に定常状態に到達させる一つの理由は再現性にある。クロマトグラフ実験は、いろいろな理由で繰り返される可能性があり、実験がその度に同一の条件で実施されることが望ましい。
【0084】
例えば、クロマトグラフ実験はフラクションを捕集するために繰り返される。ある特定の条件では、クロマトグラフ用カラム内のあるサンプル成分は、クロマトグラフ用カラム内部での相互作用に依存して、ある時間カラム内部に留まるカラム内部にサンプル成分が留まる時間の長さは成分によって異なり、カラム条件による(クロマトグラフのカラム条件は、ある成分と別の成分がそれぞれがカラム内部に保持される時間の差が大きくなるように意図的に選択される。ここで時間の差はカラムのクロマトグラフ分離効率を反映する)。ある時間でカラムから溶出する成分を捕集することができる。ある時間にカラムから出て捕集された流れの一部分をフラクションと呼ぶ。サンプル導入の前にクロマトグラフ用カラムに定常状態の条件を確立しておく利点は、サンプルを導入してから一定の時間でフラクションを捕集する繰り返し作業を設定できる点にある。
【0085】
別の実施例では、サンプル中の特定の成分の存在と量を明らかにするために、クロマトグラフ処理を用いることができる。サンプル中の成分の量のような測定に伴う統計的な誤差を明らかにするために、クロマトグラフ操作を何度も繰り返すことができる。目安として、サンプリングによる誤差は1/N1/2に比例する(例えば、10%の誤差のためには100サンプルが必要である)。したがって、特定のサンプル成分について何度もクロマトグラフ操作を繰り返すことにより、その成分の物質量のような測定に伴う誤差を妥当な範囲に抑えることができる。サンプル導入前にクロマトグラフ用カラム内に定常状態を確立しておく利点は、運転毎に起こる過渡的な効果に伴う誤差を最小にする点にある。
【0086】
図1に関連して、特定の流路に関するカラム内に定常流れ状態を確立する際には多くの異なる要素が関わっている。ある実施形態では、この機能は流れ管理部101によって制御できる。定常状態を確立するのに、流れ管理部101がデータを受け取りクロマトグラフ・システム100の多くの要素に指示を与える。
【0087】
一つの例では、定常状態流れを確立するために、システム100が運転の初期化を行い、続いて132のような回転要素が角回転速度プロファイルにしたがって一定の角回転速度まで回転数を増加する。回転数の増加中又は一定速度に達した後、流れ管理部101は回転要素132上の流れを開始する。流れを開始するために、流れ管理部は溶媒供給システムに指示を出す。溶媒供給システムは回転要素132の上又はそれ以外にあり、流路に溶媒を導入し始める。そして、116a、116b及び116cのようなクロマトグラフ用カラムなどシステム100に溶媒を流し始めることができる。
【0088】
ある実施例では、移動相が定常状態速度に到達したか否かを判定するために、流れ管理部101が溶媒管理部108に対して既知の方法で変化する溶媒の第1成分の割合を指示する。その後で、例えば、第1成分の割合は時間の関数として増加したり減少したりする。変化する溶媒成分は、クロマトグラフ用カラムと相互作用せず、検出管理部120の装置の一つで検出可能なものが選択される。第1成分がどのように変化するかという情報、及び検出管理部120から受けた情報を用いて、流れ管理部は移動相速度とその経時変化とを測定する。
【0089】
別の実施例では、質量流量計を、例えばフローセルの後などの流路中に置くことができる。質量流量計を用いて、流速を測定することができる。質量流量計から受信した情報に基づき、流れ管理部101等のシステム構成要素が定常状態移動相の速度に到達しているか否かを判定する。移動相速度及び他のカラム条件が許容範囲内であり、その経時変化が許容範囲内であると判定された場合、カラムはサンプル導入の準備が完了したと判断される。
【0090】
先に記述したように、回転要素132は116a、116b及び116cのような多くのクロマトグラフ用カラムを備えるものでもよい。サンプル注入前に定常状態流れ及び/又はカラム状態に到達しているか否かの判定はカラム毎に行うことができる。少なくともサンプル注入前に判定される流れ/カラム条件には、移動相速度、溶媒組成、流路圧(例えばカラムの前後)、流れの温度(例えばカラムの前後)、カラム温度(例えばカラムの外側)やその組み合わせがあるが、これらに限定されるものではない。前述したように、カラムの定常状態に到達したか否か等、各カラムに関する情報は、カラム管理部117などのような、1つ以上のシステムの構成要素によって保存される。
【0091】
流れ及びカラム条件の測定は、サンプルが導入された後も時間の関数として測定することができる。例えば、サンプルがクロマトグラフ用カラム中を進む間、流速を測定することができる。別の例では、サンプルがクロマトグラフ用カラム中を進む間、カラムに沿って1つ以上の外側におけるカラム温度を記録することができる。
【0092】
ある実施形態では、クロマトグラフ操作中の流れ及び/又はカラム条件が許容範囲内にあるか否かをクロマトグラフ・システム100が判定するように設定できる。クロマトグラフ操作の中にある一定の時間を取り、その間のカラムの状態を観測することができる。サンプルを導入する前に、又は導入後に、例えば定常状態に到達していないなどの許容できない条件が発生しうる。例えば、1つ以上のカラムで、移動相速度又は温度がある時点で又はパラメータの経時変化の中で許容範囲を逸脱する可能性がある。カラムの一つに付随するフローセルの欠陥(例えばウィンドウの一つが汚染されている)、カラムの一つに付随する温度セルの欠陥、カラムの一つに関する圧力センサーの欠陥、又は流路の一つにおける漏れ(漏れがあるか否かを判定するのに圧力センサーが用いられる)、などの多くの要因から、1つ以上のパラメータが許容範囲を超えたと判定される可能性がある。
【0093】
個々の測定中に決定された流れ条件とカラム条件とに基づいて、システム100が、許容可能カラムと許容不可のカラムとを判別するようにしてもよい。所定のカラムを、サンプル導入前に許容不可カラムと判定するようにしてもよい。例えば、あるカラム内が定常状態になっていないと判断される場合、そのカラムを許容不可と判定するようにしてもよい。また、別のカラムを、サンプル導入後に許容不可カラムと判定するようにしてもよい。例えば、サンプルがあるカラムを通過中にカラム圧が許容範囲を超えていることを検知した場合、そのカラムを許容不可と判定するようにしてもよい。
【0094】
ある実施例において、システム100が用いるカラムの一部が許容不可と判定された場合、許容不可と判定されたカラムから収集されたデータを無視し、許容可能と判定されたカラムから収集されたデータのみを用いるようにしてもよい。たとえば、116a等の第1のクロマトグラフ用カラムは、次のいずれかの場合、許容不可と判定される。1)初期の定常状態条件が許容範囲内にない。2)定常状態条件を満たしているが、あるパラメータが許容範囲を逸脱している。3)サンプルがクロマトグラフ用カラムを通過する際に、流れ条件又はカラム条件が許容範囲を逸脱している。一方、116b等の第2のクロマトグラフ用カラムは、定常状態条件が満たされ、サンプル導入前もサンプル導入後も、すなわち、特定の測定に関係するクロマトグラフ処理の間中、すべての値が許容範囲内にある場合、許容可能カラムと判定される。定常状態条件が満たされているか否かを判定する場合と同様、カラムから収集したデータを使用する目的で各カラムが許容可能か許容不可かを判定する場合にも、判定はカラム毎に行うことができる。
【0095】
回転要素上又は回転要素の外側におけるシステムの機能
さまざまな実施例において、クロマトグラフ・システム100の機能は、132等の回転要素上に配置される構成要素により実行されるものでもよいし、あるいは、回転要素の外側に配置される構成要素によって実行されるものでもよい。特定の機能が回転要素上で実行されるか、あるいは、回転要素の外側で実行されるかは、システムに応じて変えることができ、同じクロマトグラフ・システム内で測定毎に変えることもできる。図示したシステムの回転要素と非回転要素は単に例示のためであり、図1に示す例に限定されるものではない。
【0096】
図1では、流路の一部とそれに伴うシステムの一部が回転要素132上に配置され、流路の一部とそれに伴うシステムの一部が回転要素132の外側に配置されている。例えば、溶媒管理部108及び捕集管理部124が、回転要素132の外側に配置され、サンプル管理部114、カラム管理部117及び検出器管理部120が、回転要素132上に配置される。別の実施例において、溶媒管理部108、サンプル管理部114、カラム管理部117、検出器管理部120及び捕集管理部124を含むクロマトグラフ・システム100全体が、132等の回転要素上に配置されるものでもよい。更に、クロマトグラフ・システム100の一部を、重複して、回転要素と非回転要素の両方に設置するようにしてもよい。例えば、クロマトグラフ・システム100が備える溶媒管理部のうち、第1の溶媒リザーバーを回転要素の上に、また、第2の溶媒リザーバーを非回転要素の上に、備えるものでもよい。ある場合には、回転要素132上に配置される第1の溶媒リザーバーを用い、また別の場合には、回転要素132の外側に配置される第2の溶媒リザーバーを用いるようにしてもよい。更に別の実施例において、回転要素132上に配置される第1の溶媒リザーバーと回転要素の外側に配置される第2の溶媒リザーバーの両方を用いるようにしてもよい。
【0097】
別の例では、検出管理部120は、回転要素132上に、例えば質量分析器のような第1の装置を、また、回転要素132外に、光源と光電子増倍管のような第2の装置を、備えるものでもよい。更に、光源と光電子増倍管とが回転要素132外に配置されている場合でも、この装置を使用するのに必要なフローセルは回転要素132の上に保持可能である。ある実施例では、回転要素132上に配置される第1の装置だけが用いられる。別の実施例では、回転要素から離れて配置される第2の装置だけが用いられる。更に他の実施例では、第1の装置と第2の装置のように、回転要素上及び回転要素外に配置される装置を組み合わせて用いることもできる。
【0098】
静止−回転インターフェース
上に記載した通り、クロマトグラフ・システムは、132等の回転要素を1つ以上備えるものでもよい。クロマトグラフ・システムの運転中のいろいろな時間に、132のような1つ以上の回転要素は停止したり回転したりできる。回転要素が回転しているとき(回転時)、静止要素と回転要素の間で何らかの量の移動を可能とするインターフェースを供給することが望ましい。このような量の例としては、流体(例えば気体や液体)、電力及びデータが挙げられる。1つの回転要素が複数の静止−回転インターフェースを介して静止要素と連結される。例えば、1つの回転要素が複数の流体インターフェースを介して多くの異なる静止要素と連結される。
【0099】
特定の実施例では、例えば静止要素から回転要素へ又は回転要素から静止要素へというように、一方向に量を異動させるようにインターフェースをデザインすることができる。例えば、第1のインターフェースは流体を静止要素から回転要素へ送液するように、第2のインターフェースは流体を回転要素から静止要素へ送液するように設定することができる。他の実施例では、インターフェースを双方向性に設定し、流体が静止要素から回転要素へ、そして回転要素から静止要素へ、同時に又は異なる時間に、異動させるように設定できる。
【0100】
例えば、流体を静止要素から回転要素へ移動させ、同時に回転要素から流体を受け取って静止要素へ移動させるように、1つの流体インターフェースを設定することができる。この例では、静止要素と回転要素との間で、別の管路を用いて、流れを移動させることができる。別の実施例では、最初は、1つの管路が静止要素から回転要素へ流体を移動させ、第二段階では、その管路が流体を回転要素から受けて静止要素へ移動させる。
【0101】
操作モード
図1のシステム100のように、ここに示すクロマトグラフ・システムは多くの異なるモードで運転するように設定できる。異なる操作モードの間、クロマトグラフ・システムは異なる機能を発揮することができる。異なる操作モードの例としては、初期化、操作、スピンアップ処理、スピンダウン処理、クロマトグラフ処理と各測定間のデータ収集、及び誤作動が挙げられる。
【0102】
初期化の間に、クロマトグラフ・システムは多くのシステム要素の状態を自己診断することができる。自己診断される状態の例としては、装置の状態、流体貯蔵器の高さの状態、ガス圧の状態、ポンプの状態、バルブの状態、モーターの状態、バランスのチェック、装置で電量状態、及び装置間の情報通信の状態などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの自己診断は、他のシステム要素、例えば、流れ管理部101、溶媒管理部108、サンプル管理部114、データ管理部115、カラム管理部117、検出管理部120、捕集管理部124、及びローター管理部140、に関係するものでよい。自己診断がなされた後、クロマトグラフ・システムが操作モードに入れるか否か、1つ以上のクロマトグラフ・システム成分に修正が必要か否か、が判定される。 クロマトグラフ・システムは、修正が必要か否かを表示することもできるし、あるいは、クロマトグラフ・システムが、動作状態であることを表示することもできる。
【0103】
クロマトグラフ・システムが作動状態に入った後は、個々の測定に合わせて設定を行なうようにしてもよい。ある実施例では、クロマトグラフ・システムはシステム管理部103を介するなどして、使用者に運転のための1つ以上の調整パラメータを特定させる。個々の測定のためのパラメータが指定されると、クロマトグラフ・システムは選択されたパラメータを用いて運転を実行する。例えば、クロマトグラスシステムが、要素132等の1つ以上の回転要素を、休止状態から所定の目標角速度まで所定の角速度プロファイルに従ってスピンアップ処理するものでもよい。ここで「スピンアップ処理」には、システムのバランスチェック及び調節等の回転管理機能や、システムへの最初の流体導入及び漏れ検出等の流れ管理機能が含まれる。
【0104】
スピンアップ処理の後、システムは、定常流れ状態等の状態に達し、クロマトグラフ操作を開始できるか否かを判断する。クロマトグラフ操作の準備ができると、サンプル導入やデータ収集などの機能が開始可能となる。システムは、運転が完了したと判断されるまで、クロマトグラフの進行を記録する。運転が完了すると、クロマトグラフ・システムはスピンダウン処理を開始する。
【0105】
スピンダウン処理の間、回転要素132は、ある角回転プロファイルにしたがって、特定の角速度から停止状態まで減速する。減速に先だって又はその間、流れ管理部101は回転要素132内での流れを止めるなどの流れ機能を変えることができる。スピンダウン処理の後、回転は休止状態であるのに対して、回転要素上の溶媒貯蔵器からの排出や回転要素上で捕集されたフラクション除去は機能する。運転の間に、洗浄のために回転要素のカラムから流体を流し出すなどの機能は働く。カラムの流出には、システムから流体を追い出すために、回転要素132をスピンアップ処理することやスピンダウン処理することが含まれる。
【0106】
どの操作モードでも誤作動の起こる可能性がある。誤作動が検出されると、誤作動の種類によって固有の誤作動モードに入る。例えば、スピンアップ処理の途中で漏れが検出されたり、回転要素が回転中に突然バランスが変化したりすると、スピンダウン誤作動モードが稼働する。スピンダウン誤作動モードでは、通常の操作で減速するよりも速く回転要素を減速させることができる。
【0107】
回転要素
図2ないし図8は、クロマトグラフ・システムで用いられる回転要素の一つの実施例の詳細を示す。回転要素の他の実施例は図9Aないし図9Cに示す。特に、図2及び図3には、多くのクロマトグラフ用カラムを含む回転アセンブリを示す。図4A、図4B及び図6を参照して、回転アセンブリのさまざまな要素を議論する。図5Aないし図5Cでは、回転要素を通る流路の議論を含めて、回転アセンブリの更なる詳細を示す。図7Aないし図7C及び図8では、回転アセンブリがクロマトグラフ・システムの一部として利用できるような多くの要素が議論されている。図9A、図9B及び図9Cに、サンプル注入、カラムコンディショニング、発電、ローター外通信、フラクション捕集及び反応チャンバーなどを含むローター・アセンブリの実施例を示す。図10Aないし図10Dに、吊り下げバケット型を含む遠心式液体クロマトグラフィーの別の実施例を示す。
【0108】
図2及び図3は、図1に示すようなクロマトグラフ・システムで用いられる回転アセンブリの一つの実施例の側面図及び平面図を示す。回転アセンブリは回転要素の一つの実施形態である。図1に示すように、回転要素の上又は外の要素はクロマトグラフ・システムによって異なる。したがって、図2ないし図9Cに示す実施例は、ただの例示にすぎない。
【0109】
回転アセンブリ200は、皿状アセンブリ202、アダプタープレート・アセンブリ214、及び皿状アセンブリ202の中心に位置する混合チャンバー228を含む液体導入アセンブリを含む。マニホールド・アセンブリ204はディスク部206とカラム部分208を含む。液体導入アセンブリは多くの留め具で皿状アセンブリ202に固定することができる。 皿状アセンブリ202は、マニホールド・アセンブリのディスク部206に留め具で固定される。マニホールド・アセンブリのカラム部分208の底部は、アダプター板を介して、アダプタープレート・アセンブリ214に固定できる(アダプタープレート・アセンブリ214とアダプタープレートの詳細については図6を参照)。
【0110】
リザーバー210はアダプタープレート・アセンブリ214に取り付けられる。アダプタープレート・アセンブリはテーパシャフト212のような、シャフトへのインターフェースを含む。シャフトは、角回転速度を回転アセンブリに伝えるモーター(図には示されていない)へ取り付ける機構を備えている。回転アセンブリの角回転速度は、モーターに送られる操作コマンドに基づいて、時間の関数として変化させることができる。ある実施形態では、モーターがソーバルモデルRC5であり、回転数が300から22,000回転/分であり、遠心力が55,000Gである。マニホールド・アセンブリ204及びアダプタープレート・アセンブリ214及びその取り付けの更なる詳細は図5A及び図6に示す。一般に、ローターを駆動し角速度をローターに伝えるのに適切な機構ならば何でも用いることができる。例えば、圧縮空気のような圧縮ガスを用いるシステムをローターの駆動に用いることができる。
【0111】
図3に示すように、皿状アセンブリは230のような多くのカラムを含む。クロマトグラフ用カラムは、クロマトグラフ処理を実施するために用いられる物質を充填するために、内部に空洞を有する。操作中に、内部の空洞は流路のための管路を供給する(例えば図5A参照)。クロマトグラフ物質が充填されているとき、例えば230のようなカラム内で一部の流路に沿ってクロマトグラフ分離が起こる。
【0112】
図3に示す実施例では、皿状アセンブリ202の回りに24本のカラムが配置される。図示するように、一部の実施例において、230のようなカラムは共通の長さ、共通の外径、及び共通の内径を有するものでもよい。カラムは、例えば金属や合金のような共通の物質から作ることができる。更に、カラムは、皿状アセンブリ202の外周の周りに、カラム間が等間隔となるように配置される。他の実施例では、回転アセンブリに用いられる管路に軟質プラスチック等の可撓性の材料が用いられる。
【0113】
他の実施例では、皿状アセンブリ上のカラムの数を変えることができ、24より多く又は少なくすることができる。更に、一つの皿状アセンブリ上で、カラムの長さ、カラムの外形そしてカラムの内径をカラム毎に変えることができる。更に、カラムに充填するクロマトグラフ用物質の組成をカラム毎に変えることができる。また、カラム間の空間は同一である必要はなく、カラム間の空間はカラム毎に変えることができる。更に、カラムを形成している物質もカラム毎に変えることができる(例えば、最初のカラムをセラミックス製とし、第2のカラムを合金製としてもよい)。
【0114】
他の実施例では、回転アセンブリは多くの皿状アセンブリを備えるものでもよい。皿状アセンブリを、一つの上に別のものをというように、積層して配置することができる。ある実施例では、伝道及び/又は機構が皿状アセンブリに付いており、皿状アセンブリを回転シャフトと接続したり切り離したりして、互いにことなる速度で回転させたりすることができる。皿状アセンブリによって、カラムの数を変えることができる。更に、長さ、外形、内径、材質、充填剤のようなカラムパラメータは皿状アセンブリ毎に変えることができる。
【0115】
図3に示した実施例では、232のようなフローセルが各カラムの末端に設置されている。フローセル232はウィンドウ部と内部空洞を有する。その内部空洞はクロマトグラフ処理をカラムなどから溶出する流体の流路となる。フローセル・ウィンドウを光が通過する。
【0116】
ある実施例では、各カラムの末端に位置するフローセルは、フローセルの上端と下端にウィンドウがあり同じ大きさの内部を有するなど、類似のデザインで共通にすることができる。別の実施例では、カラムに付随するフローセルをカラム毎に変えることができる。例えば、皿状アセンブリ上の第1のカラムに関連するフローセルでは、側面にウィンドウが設けられているのに対して、第2のカラムに関連するフローセルでは、上端と下端とにウィンドウが設けられていてもよい。更に、カラム直径のようなカラムパラメータがカラム毎に異なる場合には、管路内部のサイズなどのフローセルパラメータを変えることもできる。
【0117】
他の実施例では、フローセルは必ずしも各カラムに付随していなくてもよい。例えば、第1のカラムにはフローセルが付随しているが、第2のフローセルにはフローセルではなく質量分析器が付随している。別の実施例では、フローセルと質量分析器がカラムに付随している。つまり、一般的に、クルマトグラフ用カラムに付随する装置は1つ皿状アセンブリ上でカラム毎に異なっていてもよいし、皿状アセンブリ毎に異なっていてもよい。クロマトグラフ処理を行うカラムに用いられる装置の更なる詳細は、以下の「装置」の項に記述する。
【0118】
図2及び図3に示すように、230のようなカラムはカラム留め具216によって所定の位置に固定される。カラム留め具216は236のような複数の留め具によって皿状アセンブリに取り付けられる。ある実施例では、予備ロードナット234のような、保持機構を用いて各カラムを設置する。予備ロードナット234はカラム留め具216を通して見ることができる。予備ロードナットは皿状アセンブリに固定できる。
【0119】
回転中に、カラムは数百から数千Gのような大きな遠心力を受ける。図3に示すように、皿状アセンブリ202の外側端部にあるカラムの末端にフローセルが位置する場合には、そのカラムが受ける遠心力は、例えば232のようなフローセルに伝達される。あまりに大きな力がフローセルに伝達されると、例えばフローセル・ウィンドウ242の形状など、フローセルの形状が歪む。ウィンドウの歪みなどのフローセルの変形はフローセルの光学的特性を劣化させ、その結果フローセルを用いる測定値を劣化させる。予備ロードナットのようなロードサポート機構により、回転中にカラムによって232のようなフローセルにかかる負荷を軽減する。各カラムに付随する予備ロードナットは皿状アセンブリ202に機械的に固定され、カラムにかかる負荷の一部をフローセル以外の皿状アセンブリ又は他の支持体に逃がす。
【0120】
混合チャンバー228を含む液体導入アセンブリは回転アセンブリ200の中心238aに位置する。一つの実施例では、回転アセンブリ200が回転中に、静止している液体貯蔵庫から液体が混合チャンバー228に入る。例えば、1つ以上の管路が混合チャンバー228まで挿入され、混合チャンバー228は回転するのに対して、管路は固定されたままになる。操作中に、流体は管路を出て混合チャンバー228に入り、回転アセンブリ200に連続的に制御した流れを提供する。
【0121】
ローター・アセンブリ200との間にインターフェースを提供する、管路を含むアセンブリが管路を支持する。ローター・アセンブリ200はガスベアリングのための座240を含む。ローター・アセンブリが回転する間、ガスベアリングは座240上で休止状態にある。静止した液体リザーバー及び管路の支持体を含むガスベアリング支持アセンブリの更なる詳細を図7Aないし図7Cに示す。
【0122】
流体は混合チャンバー228へ入り、皿状アセンブリ202の中心238aからその末端238bへの流路に沿って流れる。ある実施例では、カラムは放射状の線(つまり、皿状アセンブリ202の中心をとおる直線)に沿って配置され、流体は放射状の線の一つに沿って流れる。別の実施例では、1つ以上のカラムが皿状アセンブリの中心を通らない非放射状の直線に沿って配置される。それでも、非放射状の直線に沿った遠心力成分が非放射状に配置されたカラムを通る流れを駆動できる。
【0123】
ある実施例では、1つ以上のリザーバーからの流体成分は混合チャンバー228に入り、混合される。混合チャンバー中での混合ピンの回転により混合が起こる。混合された液体成分は、各カラムに伴うポートのような多くのポートを通して混合チャンバー228を出る。したがって、ある実施例では、2つ以上のカラムが共通のリザーバーから流体を受け取ることができる。混合チャンバー228の更なる詳細を図5Aに示す。
【0124】
流体混合物は各カラムを通り、皿状アセンブリ202の末端238b近くのフローセルに入る。フローセルを通過した後、流体は皿状アセンブリ202の末端238bを超えて復路セグメントリンク220に入る。復路セグメントリンク220は、皿状アセンブリ202に沿ったフローセルを出た流体に道筋をつけるフローチャネルを含む。220のような復路セグメントリンクはカラムの次にある復路チャネルに接続される。ひとたび流れが復路チャネルに入れば、末端238bから離れて中心238に向かう。
【0125】
この実施例では、流体は皿状アセンブリ202の中心に位置するカラム先端から入り、皿状アセンブリ202の外側に位置するカラム末端から流出する。カラムは、 流れがカラムの先端から末端に進む間に、流体混合物中で成分がクロマトグラフ分離されるような充填剤を含む。カラム中の流体が皿状アセンブリ202の末端に向けて動くほどカラム中の流体の遠心力は増加する。このような配向性のために、クロマトグラフ処理が進むと、遠心力が増えてカラムの長さ方向に沿って圧力が増加する。このようなカラムに沿った圧力勾配は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などのクロマトグラフ・システムと異なる。HPLCでは、圧力がクロマトグラフ用カラムの先端から末端まで流体を駆動する。したがって、カラムの先端から末端までに圧力が増加ではなくむしろ減少する。
【0126】
ある実施例では、ローター・アセンブリの最大の操作圧はおよそ100PSIに達する。例えば、ローターの中心からローターの終端まで圧力が増加するとき、最大の圧力は100PSI以上である。別の実施例では、極大操作圧は50PSI以上である。100PSI以下のような極大圧力レベルは、より小さい粒子径を用いるHPLCの1000PSIと言った圧力に比べてはるかに小さい。
【0127】
ある実施例では、220のような復路セグメントリンクは241のようなコネクタを介して互いに接続される。各復路セグメントリンクの内面は皿状アセンブリ202の外表面に適合する。例えば、皿状アセンブリ202の外表面が湾曲している場合、復路セグメントリンクは皿状アセンブリ202の外表面の湾曲に適合する。復路セグメントリンクは、222のようなファスナーを介して皿状アセンブリに固定される。復路セグメントリンクの更なる詳細を図5Aないし図5Cに示す
【0128】
皿状アセンブリ202で復路セグメントリンクを通り復路のフローチャネルへ入った後、流れはマニホールド・アセンブリ204のディスク部206において、円周方向に配列されたチャネルに移動する。円周方向に配列されたチャネルは、225のようなマニホールドブロックに流体を排出することができる。各マニホールドブロックは、アジャスタブルチューブ226に連結されており、チューブは、固定ナット224によってマニホールド・アセンブリのカラム部分に連結される。流れはマニホールド・アセンブリのカラム部分を通り、最終的にリザーバー210に入る。流体は、リザーバードレインチューブ218a及び218bを介して、リザーバー210から定期的に排出される。ローター・アセンブリ200の内部を通る流路などの詳細を図5A及び図5Bに示す。
【0129】
図4A及び図4Bはマニホールド・アセンブリ204の上面図と底面図である。マニホールド・アセンブリのディスク部には円周方向に配列されたドレインチャネル248がある。外側のチャネル242a及び内側のチャネル242bが、ドレインチャネル248を囲む。外側のチャネル242a及び内側のチャネル242bは、円形ガスケット(図示しない)を支持する。マニホールド・アセンブリの上部が皿状アセンブリ202の底部と接続されるとき、円形ガスケットが皿状アセンブリ202の底部を押し、ローター・アセンブリ202の運転中にドレインチャネル248から流体が漏れるのを防ぐ。
【0130】
ドレインチャネル248は、246のような多くのドレイン穴を備える。図4Aには6つのドレイン穴が示されている。ドレイン穴はそれぞれ225のようなマニホールドブロックに接続される。マニホールドのディスク部206には254のようなファスナーのために251のような多くの穴があり、これによって225のようなマニホールドブロックがディスク部に固定される。
【0131】
アジャスタブルチューブが各マニホールドブロック225に接続される。マニホールド・アセンブリのカラム部分208の穴252にカラム208を通してアジャスタブルチューブの末端250を挿入することができ、カラム208の中央の空洞部分に連結される。225等のアジャスタブルチューブの250のような末端はマニホールドカラム208の中央ドレインカラム244の中に見られる。
【0132】
マニホールド・アセンブリ204は、その底環部256中の例えば258のような固定穴を介して、アダプタープレート(図6)を含むアダプタープレート・アセンブリ214に接続される。マニホールド・アセンブリ204をアダプタープレート・アセンブリ214に固定するためのマウント穴を通してファスナーが通される。ドレインカラム244の底部口245はアダプタープレート・アセンブリ214のドレインチャネルと接続され、その結果、流体はドレインカラム244から出てアダプタープレートを通りリザーバー210に入る。
【0133】
リザーバー210は、図2に示すように、218aや218bのような多数のドレインチューブを備える。先に述べたように、リザーバー210はドレインチューブを介して定期的に排出される。ある実施例では、ドレインチューブは255のような穴を通して、マニホールド・アセンブリ204のディスク部206の底部を通り抜ける。皿状アセンブリは穴を有し(図には示してない)ドレインチューブが通り抜けられるようになっている。
【0134】
図1に示したように、ここで述べる実施例では、流れは分岐し再び合流する。例えば、ローター・アセンブリ200の中で、1つの流路が混合チャンバー228からスタートし、24の流路に分岐する(図2及び図3参照)。図4A及び図4Bに示すように、24の流路は1つのドレインチャネル248に合流する。1つのドレインチャネル248は225のようなマニホールドブロックを通して6つに分岐し、共通のドレインカラム244へと合流する。
【0135】
図4Bで、マニホールド・アセンブリの皿部206の直径は皿状アセンブリ202の直径より小さい。ディスク部206の直径が小さいことで、232aや232bのようなフローセルの底部のウィンドウが配置できる。したがって、たとえ光源がフローセルの上部に近くても、光源から発しフローセルを通過し、底部ウィンドウを経由して放出された光を集めることができる。ローター・アセンブリが回転中に光源を供給しフローセルから出てきた光を集めるための装置台を図8に示す。
【0136】
図4Bで、皿状アセンブリ202は部分的に透明にしてある。その結果、各フローセルに付随する復路チャネルチューブの一部が見える。例えば、232aや232bのようなフローセルに連結される復路フローチャネル252aや252bは見えている。222のようなファスナーも見えている。222のようなファスナーは復路セグメントリンクを皿状アセンブリ202と接合している。
【0137】
ある実施例では、皿状アセンブリ202の一部に穴を開けることによって、復路フローチャネルを形成する。既に述べたように、252aや252bのような復路フローチャネルにより、流体は、フローセルから出て、復路セグメントリンクに入り、マニホールド・アセンブリ204のディスク部において円周方向に配列された排水チャネル248に向かって、皿状アセンブリ202の端部から離れる方向に移動する。
【0138】
復路フローチャネルは、各フローセルの(下方ではなく)横に配置され、その結果フローセルの底部ウィンドウへの接近が可能となる。異なる装置を組み込む別の実施例では、復路フローチャネルは異なる経路を取る。復路フローチャネルの更なる詳細を図5Bに示す。
【0139】
図5Aは流路を示したローター・アセンブリ200の側断面図である。1つ以上の溶媒を流路に流すことのできる溶媒リザーバー285から流路が始まる。ある実施例では、多くの溶媒が同時に流路に供給され、そこで溶媒組成の分率が時間と共に変化させることができる。この実施例では、溶媒リザーバーはローター・アセンブリ200の上にない。既に述べたように、他の実施例では、1つ以上の溶媒リザーバーをローター・アセンブリ200の上に置くことができる。例えば、溶媒リザーバーを皿状アセンブリ202の230aや230bのようなカラムに接続することができる。1つ以上の溶媒がポンプ(図示しない)によって供給される。回転アセンブリ上の溶媒リザーバーの実施例は図10Aないし図10Dに詳しく示す。
【0140】
図5Aに戻り、既に図2及び図3で述べたように、ガスベアリング支持アセンブリは1つ以上の流路を含む(ガスベアリング支持アセンブリ400の詳細は図7Aないし図7C及び図8を参照)1つ以上の流路は260のような流路の一部でも良い。ガスベアリング支持アセンブリ400の流路は、例えば混合チャンバー228へ溶媒を供給するのに用いられる。ある実施例では、ガスベアリング支持アセンブリ400の流路はクロマトグラフ処理で用いるサンプルを混合チャンバー228へ供給するのにも用いられる。その際、サンプルは混合チャンバー228中で1つ以上の溶媒と混合される。
【0141】
混合チャンバー228では、275のような多くの混合ピンが混合チャンバーに入ってくる1つ以上の流体を混合する。混合ピンは、ローターオアセンブリ200の角速度に従って回転する。典型的な角速度で、混合ピンは流体から空気を除去できる。このように、1つの流体が混合チャンバーに供給され流体の混合物が形成されない場合でも、混合チャンバー228には、流体が230aのようなカラムに入る前に空気を除去可能である、という利点がある。
【0142】
混合チャンバー228は、276等の多数の穴を有し、流体をこれらの穴を介して混合チャンバーのから排出させることができる。一実施例において、各穴は、1つのクロマトグラフ固定相を含有する含むクロマトグラフ用カラムと流体連結する。他の実施例において、混合チャンバー228中の276等の1つの穴が、複数のクロマトグラフ用カラムに流体連結するものでもよい。例えば、チューブインチューブ型の場合、中空シリンダー内部に多数のチューブを設け、各チューブが別々のクロマトグラフ固定相を含有するようにしてもよい。各チューブの入口は、中空シリンダーの上端近傍に設けられ、混合チャンバーの穴の1つと流体連結する。操作中に、流体は混合チャンバーを出て、穴を経由して、各チューブに入る。チューブの断面は円形でもよいし、非円形でもよい。
【0143】
別の実施例では、バルブが穴のそばに設定されている。バルブは、流体が穴に入る速度を制御できる。例えば、バルブは各穴の開口サイズを制御するのに用いることができる。ある場合には、バルブを閉じて流体が穴から出ないようにすることができる。例えば、ある穴の下流で漏れが検出された場合、その穴のバルブを動かして、それ以上の流体が穴を経由して出ないようにすることができる。
【0144】
230aや230b等の多くのカラムが、混合チャンバーから皿状アセンブリ202の末端まで広がる。ある実施例では、ローター・アセンブリ200が回転する際にそのバランスを取るために、カラムが対称的な対として配置される。例えば、カラム230aと230bが似たような質量を有する対称的な一対のカラムとなる。しかしながら、既に述べたように、カラム対の質量特性はカラム対毎に異なってもよい。
【0145】
特定の実施例において、カラムは、ローター・アセンブリ200の中心を通る回転軸265に垂直な線に沿って伸長するものでもよい。他の実施例において、カラムは、回転軸に垂直でない線(例えば、球面座標系で用いられる2つの角度のように、各カラムが回転軸に対する2つの角度を定義できる)に沿って伸長するものでもよい。例えば、各カラムを、中心軸265から皿状アセンブリ202の端部まで下向きに又は上向きに傾斜させてもよい。皿状アセンブリ202の上方又は下方に伸長するカラムを支持するために、皿状アセンブリ202を厚くするようにしてもよいし、あるいは、皿状アセンブリ202が付加支持構造を備えるようにしてもよい。
【0146】
他の例として、ローターの端部に向かって伸長する1つのカラム230aの代わりに、皿状アセンブリ202がこの位置に2本のカラムを備え、一方を下向きに傾斜させ、もう一方を上向きに傾斜させて、混合チャンバーに接続し、皿状アセンブリの端部につなげるようにしてもよい。さらに別の例では、皿状アセンブリ202が3本のカラムを備え、カラム230aを皿状アセンブリを横切り真っ直ぐに、第2のカラムをカラム230aの上方で上向きに傾斜させ、第3のカラムをカラム230aの下方で下向きに傾斜させてもよい。各カラムは、混合チャンバー228に接続されるものでもよいし、別々の流体リザーバーに接続されるものでもよい。
【0147】
更に別の実施例では、混合チャンバー228と皿状アセンブリ202の間の流路で流体が流れる内部は一定である。例えば、カラム230a及びフローセル232の内部はおよそ一定である。ある例では、例えばフローセル232又はカラム230aのような流路の内部は一定であるが、内表面の周囲の形状は流路に沿って変えることができる。例えば、流路の内部の形状をある面積の正方形から同じ面積の円形に変えることができる。このとき、二つの間で形状が変化する際、面積は一定である。
【0148】
別の実施例では、混合チャンバーと皿状アセンブリ202の間の流路の内部は混合チャンバーと皿状アセンブリ202の末端の間で変化できる。例えば、流路の他の部分と比較して内部が狭くなるような流路抵抗を、カラム230aの末端又はフローセル232の後ろに置き、流速を減少させることができる。
【0149】
操作中に、ローター・アセンブリ200の回転により流体が混合チャンバー228の側壁266を這い上がることがある。ある実施例では、側壁の一部が回転アセンブリの回転軸に対して平行であるのに対して、他の部分は回転軸に対して角度をつけることができる。混合チャンバーの形状を変えることも可能である。例えば、混合チャンバー228の下部を曲線にしてボウル型にできる。
【0150】
回転アセンブリが回転中に混合チャンバー228に流体が加えられると、ある厚さの液体の頭部268が混合チャンバー228の側壁の上に形成される。体の頭部の境界は、混合チャンバーの上部、底部、側壁及び混合チャンバー228内部にある程度広がった(例えば、流体頭部厚み)自由境界となる。自由境界は、回転アセンブリの回転軸に平行な円柱状の壁に近似できる。
【0151】
図3に示すように、混合チャンバーの上部は部分的に覆われているが穴を有する。ある実施例では、穴は円形であるが、他の形状でも良い。上に述べたように、1つ以上の流路が穴を貫通しており、流体を混合チャンバー228内部に供給できる。図7Aないし図7Cに詳しく記すように、混合チャンバーの上部はガスベアリングによって覆われていてもよい。
【0152】
ガスベアリングにより混合チャンバーを密閉して、混合チャンバー228に含まれる流体及びその蒸気の放出を防ぐ。混合チャンバー228を含むローター・アセンブリ200が回転する間、ガスベアリングは静止状態に保たれる。したがって、作動時に、回転する構成要素の一部と回転しない構成要素の一部により、混合チャンバー228を密閉するエンクロージャが形成される。別の実施例では、異なる速度で回転する二つの構成要素の間を密閉するエンクロージャが形成される。例えば、混合チャンバーの上部に配置されるガスベアリングは、静止状態に保たれる構成要素に関係するものでもよいし、ローター・アセンブリと異なる速度で回転する構成要素に関係するものでもよい。
【0153】
また、固定及び非回転構成要素又は異なる速度で回転する構成要素を備える流体エンクロージャは、混合チャンバーに限定されるものではない。例えば、混合チャンバーから混合ピンを取り外して、流体リザーバーとして用いられる流体エンクロージャを形成することも可能である。同様のエンクロージャを用いて、ローター・アセンブリから流体を排出させることも可能である。この例では、ローター・アセンブリ200の底部を、ガスベアリング上に載置するようにしてもよい。ガスベアリングは定常状態で、ローター・アセンブリ200に覆われるチャンバーを備えるようにしてもよい。ローター・アセンブリ200と共に回転する流路を、ローター・アセンブリ200からチャンバー内に伸長させて、ローター・アセンブリ200が回転中に、チャンバー内に流体を供給するようにしてもよい。流体をこのチャンバーから取り出すことも可能である。
【0154】
更なる詳細を、図5A、図5B、図5C、図7A、図7B及び図7Cに示す。混合チャンバー228からリザーバー210等の所定の位置までローター・アセンブリ上に形成された流路に沿って、あるいは、ローター・アセンブリ200の外に流れを形成するインターフェースを介して、流体の流れが閉じ込められる。ローター・アセンブリを通る経路に沿ったさまざまなエンクロージャ内に流体を閉じ込める1つの利点は、安全性にある。ここに記載する装置で利用する多くの流体は危険な場合がある。例えば、ある流体は可燃性であり、別の流体は例えば発がん性を有する等のように健康を害する可能性がある。流体やその蒸気がローター・アセンブリ200から容易に放出される開放型インターフェースと比べて、流路に沿ってローター・アセンブリ200内部に流体を閉じ込めることにより、より安全に操作できる(ローターで用いる流体が安全な場合には、少なくとも部分的に密閉されていない空間を通して流体が動く開放インターフェースのように、流体を完全に閉じ込めないインターフェースを含むようにローター・アセンブリを設計できる)。
【0155】
図5Aに戻り、混合チャンバー中の流体の頭部の厚みを調節できるように、ローター・アセンブリ200を設定できる。例えば、ローター・アセンブリ200の流路の配置を変えることによって流体の頭部の厚みを調節することができ、流体の頭部は混合チャンバー上部の穴の内部周辺に入るまで延長しない。流体の頭部268の厚みを調節する方法として、第一に、混合チャンバー228を通りアジャスタブルチューブ226の出口250に連結される流路について記述する。第二に、流路の二つの部分の流体にかかる力が均衡するような平衡条件を記述する。最後に、流体の頭部の厚みを含む平衡条件に影響を与えるローター・アセンブリ200の設定調整を議論する。平衡条件では、混合チャンバー中の流体の頭部の厚みは特定の値になる。平衡条件を変えることで、混合チャンバー228中の流体の頭部の厚みを変えることができる。
【0156】
ローター・アセンブリ200中で、ローター・アセンブリの中心軸265から一定の半径264の場所に直線262を引く。流路はローター・アセンブリの中心軸265のそばに示す。直線262は、混合チャンバー228中のローター・アセンブリ200を通る流路と、アジャスタブルチューブ226の出口250近くで交差する。出口250はアジャスタブルチューブからマニホールド・アセンブリ204の中央ドレインカラム244へ流体を抜くことができる。
【0157】
ローター・アセンブリ200にモーター(図に含まず)から力が伝わると、ローター・アセンブリはその中心軸265の回りにある角速度で回転する。先に述べたように、回転中心軸265からの距離が増加するに連れて、またローター・アセンブリの角速度が増加するほど、遠心力が増加する。この遠心力が流体を、ローター・アセンブリ200を通して移動させる。
【0158】
議論のために、ローター・アセンブリ200を通る流路に2つのセグメントを定義する。第1の流路セグメントは、混合チャンバー228の中の流体頭部268の自由界面上の流体の壁で始まり、復路リンク内の末端まで外向きに動く(半径が増加する)。第2の流路セグメントは出口250から始まり流路セグメントリンク220内の末端まで外向きに動く(半径が増加する)。第1の流路セグメント及び第2の流路セグメントは流路セグメントリンク220で合流する。
【0159】
一実施例において、2つの流路セグメント内の流れを初期化するのに、ローターを休止状態から一定の角速度までスピンアップ処理するようにしてもよい。スピンアップ処理の間(目標角速度まで達する前に)、あるいは、ローター・アセンブリ200が目標角速度に達した後に、流体導入を開始する。ある実施例では、ローター・アセンブリ内に前の測定時の残留流体が残ることもある。残留流体が、第1の流路セグメント及び第2の流路セグメントの全部又は一部に含有されていてもよい。したがって、第1の流路セグメント及び第2の流路セグメントの一部に残留流体が含有されている状態で、別の部分を初期化処理で乾燥させるようにしてもよい。
【0160】
スピンアップ処理中に、混合チャンバー228中で流体の導入を開始できる。必ずしも全てのローター・アセンブリ200が混合チャンバー228を含まなければならないわけではない。実施例において、ローター・アセンブリ200が、228等の共通導入部を用いる代わりに、カラム毎に別々の導入部のように複数の流体導入部を備えるようにしてもよい。したがって、この例は単なる例示にすぎない。
【0161】
典型的には、230aや230bのようなカラム中で行うクロマトグラフ分離過程で、流体はカラムの一端から別の端まで通過する。図5に示す実施例では、流体は混合チャンバー228に最も近いカラムの頭から導入され、尾の280まで通る。カラム270の頭まで流すために、多くの流路が設定できる。例えば、図5Aに示す流路では、流れは混合チャンバー中のローターの中心付近で始まり、カラムの頭までの道を連続的に中心から移動する。別の実施例では、カラムの頭部の半径より大きい半径位置から流れが始まり、カラムの入口に達するまでローターの中心に向けて移動し、カラムの入口に入る。
【0162】
別の実施例では、230aや230bのようなクロマトグラフ用カラムは復路セグメント上に設置できる。最初に、ローター・アセンブリ200の中心265から流れが動く。ローターの中心から所定の径方向の距離のところで、ローターの中心に向きを変え、復路セグメントに入る。流れがローターの中心の方向に動くところに、つまり復路セグメントに、クロマトグラフ用カラムが設置される。例えば、流れがカラム230aの終端からカラムの頭部270に向けて動くような流路に設定できる。この例では、フローセルや質量分析器のような装置は、カラム230aの頭部270に設置される。
【0163】
別の実施例では、クロマトグラフ用カラムは直線状である必要はない。カラムは、ローター中心からローター端部に向けて何らかの形で曲がっていてもよい。一般的に、ローター・アセンブリ200内の経路に続く流路は、クロマトグラフ操作を行うのに用いられる。そのクロマトグラフ流路は直線でもよいし、曲がっていてもよい。クロマトグラフ流路において、ローター・アセンブリの中心に向けて流れるものでも、あるいは、ローター・アセンブリの中心から離れるように流れるものでもよい。流れが流入するクロマトグラフ流路の始点に達する前に、流路に沿って径方向の距離が増大、減少、一定又はこれらの組み合わせ等、ローター・アセンブリの中心からの径方向の距離が異なる流路に沿って流れる。更に、流れがクロマトグラフ流路に流入する部分の径方向の距離よりも長い距離又は短い距離流れが径方向に移動するものでもよい。最終的にクロマトグラフ流路の末端に達して排出後、流路に沿って径方向の距離が増大、減少、一定又はこれらの組み合わせ等、ローター・アセンブリの中心からの径方向の距離が異なる流路に沿って流れるものでもよい。
【0164】
ローター・アセンブリ200をいろいろなモードで操作する間、逆フローも設定できる。例えば、ローター・アセンブリ200の端部から中心265に向かう復路セグメント上の流れが、出口でバルブの作用によって遮断されると、バルブの位置である距離だけ径方向に離れた位置では、皿状アセンブリ202の端部に向かう逆向きの流れが始まり、フローセル232とカラム230aを経由して皿状アセンブリ202の中心265に向かう。したがって、ある実施例では、流れがある時点ではある方向で別の時点では反対方向になるように流路を設定できる。
【0165】
図5Aに戻り、流れの初期化の間に、混合チャンバー228に導入された流体は混合チャンバーを出て、230aや230bのようなカラムに入る。各カラムには、カラム230bで言えば272や274のように、2つの着脱可能なキャップがついている。ある実施例では、2つの着脱可能なキャップにはネジが切られ、各カラムの末端に固定されている。各キャップに流路を形成するようにしてもよい。ある実施例では、着脱可能なキャップの流路はカラムと同じ断面積を有する。
【0166】
最初の着脱可能なキャップ272は、混合チャンバー228を含む液体導入アセンブリにカラムを接続するためのインターフェースとなる。ある実施例では、第1の着脱可能なキャップは、ある種のガスケットを設置するための、例えば座部や溝を含む。そのガスケットは、混合チャンバーアセンブリと第1の着脱可能なキャップの間を密封するのに用いられる。同様に、274のような第2の着脱可能なキャップは、各カラムと232のようなフローセルの間のインターフェースとなる。第2の着脱可能なキャップは、例えばガスケットのような1つ以上の封印のための座部や溝に加えて、フローセル232に挿入される突起物のようなフローセルとの間のインターフェースを有する。
【0167】
スピンアップ処理中に混合チャンバーへ最初に流体が導入されれば、流体がカラム230等に入る前に、ローター・アセンブリの角速度は閾値を超えていなければならない。角速度が閾値を超えていれば、混合チャンバー228中の流体はカラム230aに入り、カラムの頭270から尾280に向けて進み、カラム230aの中に流路278を形成する。角速度の閾値は、クロマトグラフ用カラム230に用いる充填剤のサイズなどの、クロマトグラフ用パッキング材の性質に依存する。典型的には、より小さな直径の充填粒子は、より大きな直径の充填粒子と比較して、流れを動かすのにより大きなRCFを必要とする。RCFは角速度の平方根に比例するので、より大きなRCFをローター・アセンブリの角速度を増加することによって生み出すことができる。
【0168】
カラム230a中に流路278が生成した後、流体はカラムを出てフローセル232への流路286を形成する。フローセル232は、282のような光学ウィンドウと光学ウィンドウへのアクセスを可能とする穴を含む。 次に、流れはフローセル232を出て、復路セグメントリンク220中の流路288を形成する。流れが復路セグメントリンク220中を進む時、混合チャンバー228から復路セグメントリンク220への第1の流路セグメントは流体で満たされ、その流れは第2の流路セグメントに入り始める。流れは復路セグメントリンク220から回転アセンブリ200の中心へ向かい、その結果アジャスタブルチューブ226の出口250に達する。
【0169】
第2の流路セグメントでは、流れは皿状アセンブリ202の端部から中心軸265に向かい、復路セグメントリンク220を出て復路チャネル中に流路290を形成する(復路セグメントリンク220及び復路チャネル中の流路の詳細は図5B及び図5Cに示す)。流れは、復路フローチャネルを出て、ドレインチャネル248を充たし、ドレインチャネル内に流路292を形成する。図4Aに示すように、流路292は、異なるカラムに伴う多くの復路フローチャネルの流れを受ける。2つのガスケットは、流体がドレインチャネル248から漏れるのを防ぐために用いる。275aや275b等のガスケットの断面図を図5Aに示す。
【0170】
他の実施例では、第2の流路セグメントは第1の流路セグメントからの流体だけを受け入れる。例えば、第2の流路セグメントは、カラム230a及びフローセル232を通る流れからの流体だけを受け入れ、他のカラムからの流体を受け入れない。この実施例で、別の復路(図示しない)を用いるようにしてもよい。例えば、1つのマニホールドブロック225と1つのアジャスタブルチューブ226とを、230a等の各カラムからの1つの復路チャネルに接続させて、ドレインチャネル248を省略するような構成でもよい。前に述べたように、ドレインチャネルで複数のカラムからの流れを合流させることにより、ローター・アセンブリ200内で使用される流路の量を減らすことができる。流路の量を減らすことにより、製造コストを削減できる。
【0171】
流路がドレインチャネル248に入った後、225等のマニホールドブロックの一つへの1つ以上の穴を通して出て、マニホールドブロック225の中に流路294を形成する。マニホールドブロック225はアジャスタブルチューブ226に連結される。流れはマニホールドブロック225を出てアジャスタブルチューブ226内に流路295を形成する。アジャスタブルチューブ226内の流路は出口250で終わる。
【0172】
流体頭部の厚さが出口250の径方向の同じ距離264に達するまで、流体が混合チャンバー228に導入される。この時点で、それ以上の流体が混合チャンバー内に導入されなければ、ベルヌーイの非圧縮方程式を満たすように、流体頭部の厚み268は出口250とおよそ同じ位置で平衡に達する。粘性及びその他、例えばローター・アセンブリが中心軸265に対して歳差運動を行うなど、の非線形効果により、出口250の径方向の位置及び流体頭部の厚さは、正確には同一でないがおよそ同じ距離にある。もし、それ以上の流体が混合チャンバー228に導入されると、流体頭部の厚さは出口250より小さい径方向の位置に達する。流体頭部の厚さ268が平衡位置より大きい場合、ローター・アセンブリ200中の流れは平衡状態へ戻ろうとする。その結果、流れは混合チャンバー228から外へ出る方向に、ローター・アセンブリ200を通過するように動く。過剰の流体は、出口250から外にこぼれる。
【0173】
ある時点で混合チャンバー中への流体の導入が止まると、流体頭部の厚さ268が出口250と径方向におよそ同じ位置になるまで、流体は出口250からこぼれ、ドレインカラムに入る。流体が混合チャンバードレインカラム244に連続的に導入される場合、流れはアジャスタブルチューブを経てドレインカラム244に入り、ドレインカラムに流路296を形成する。流れは、ドレインカラム244を出て、マニホールド・アセンブリ204の底を通り、結果的に210aのようなリザーバーの内部に達する。流れがマニホールド・アセンブリ204を出てからの詳細を図6に示す。
【0174】
流体頭部及び出口250に関連する流体界面の径方向の位置は変わり得る。図5Aの実施例では、回転中に、遠心力によって遠心力に逆らって流れが形成し、混合チャンバーの底から混合チャンバーの上部へ、250のような各出口を横切ってアジャスタブルチューブの底部からアジャスタブルチューブの上部へ流れる。表面張力と重力の結果、混合チャンバーの上部から底部への流体頭部の界面又は出口250を横切る流体の界面は湾曲し、回転中心軸265からの径方向の距離は流体界面の場所によって変化する。ローター・アセンブリの角回転速度が増えるほど、液体界面に沿った径方向の変化は減少する、つまり、界面は垂直方向により一直線になる。
【0175】
ある実施例では、流体頭部の厚さ268の径方向の位置が出口とほぼ同一であるような平衡状態に達したとき(つまり、流体頭部の厚さ268がおよそ262の線と同じ)、ローター・アセンブリ200は回転数を一定の角速度まで増加する(先に述べたように、ローター・アセンブリの角回転速度が時間と共に増加している間に、混合チャンバーに流体を導入することもできる)。ローター・アセンブリ200の回転数が所定の目標角速度に達した後、流体が混合チャンバー228に加えられ、流体は、出口250に達してアジャスタブルチューブ226から流出し始めるまで、ローター・アセンブリ200を通って流れる。流体が混合チャンバー228に添加される速度を調節することにより、230aや230b等のカラム中での流速を含むローター・アセンブリ200中の流速を制御することができる。
【0176】
図1を参照して上述したように、230aや230b等のカラム中が定常流速に到達したと判断された後、ローター・アセンブリ200の所定位置にサンプルが導入される。例えば、混合チャンバー228にサンプルが添加される。この混合チャンバーから、サンプルは各カラムに導入される。図9Aに詳細を示す別の実施例では、サンプルは230aや230b等のカラムの頭部付近に注入される。カラムがクロマトグラフ用充てん剤を含む場合、サンプルはクロマトグラフ分離され、各カラムの末端にあるフローセル232を用いる測定で分析される。
【0177】
流体頭部の平衡厚さ268は回転軸からの出口250までの距離264を変えることで、調節できる。例えば、運転中に流体頭部が混合チャンバー228の座240の穴の中に入りこまないように、流体頭部の平衡厚さに調整される。既に書いたように、混合チャンバーの座240の穴は1つ以上の流路の入口となり、混合チャンバー228へ流体を供給できる。
【0178】
一般的に、いろいろな実施形態では、ローター・アセンブリ200は以下のものを含む、1)第1の流路セグメントでは、流れはある流路に沿い、中心から径方向の距離は流路の最後では初期の距離より大きい。2)第1の流路セグメントに接続された第2の流路セグメントでは、中心から径方向の距離は流路の最後では初期の距離より小さい。第2の流路セグメントの最終的な径方向の距離に出口が設置され、流体は第2の流路セグメントを出る。第2の流路セグメントで出口のある場所の回転軸265からの距離は、第1の流路セグメントの平衡位置を決定する。流体はある速度で第1の流路セグメントに導入される。流体が第1の流路セグメントに導入される速度は、第1の流路セグメント及び第2の流路セグメントを通過する流速の制御に利用される。以下で述べるように、流体導入速度及び関連する流速はローター・アセンブリ200の角回転速度の変化に対しては比較的影響を受けない。
【0179】
図5に戻り、他の実施例では、各アジャスタブルチューブ226の出口250の半径264を調節可能である。各アジャスタブルチューブの250のような出口を、ローター・アセンブリ200の中心軸265から同じ又は異なった距離に設置できる。226のようなアジャスタブルチューブには、マニホールド・アセンブリ204と合うような溝、及びマニホールドブロック225と合うような溝がある。アジャスタブルチューブは、いろいろな深さでマニホールドブロック225にねじ込まれ、出口250の径方向の距離が変わる。固定ナット224でアジャスタブルチューブ226を固定し、ローター・アセンブリ200の回転中に出口250の径方向の位置を一定にする。
【0180】
ある実施例では、出口250の径方向の距離を動的に変化させる仕組みがローター・アセンブリ200にある。例えば、226等のアジャスタブルチューブ末端に、弾性的に伸長可能な可撓性の終端パーツを取り付ける。運転中に、可撓性の終端パーツに力がかかり、そのパーツに接続する出口250の径方向の距離を変える。例えば、可撓性の終端パーツに力が加えられない場合には、出口250はドレインカラム244の壁近くにとどまるが、力が加えられると、出口250はドレインカラム244の中心方向に延びる。
【0181】
第1流路セグメントを備えるローター・アセンブリ200を第2流路セグメントに連結されるローター端部に合わせて設定する利点は、一旦平衡条件が確立すると、例えば混合チャンバー228を介して第1流路セグメントに導入する速度を変えることによって、流速を制御できる点にある。理想的な条件に近づくと、カラム中である一定の流速を得るために必要な第1流路セグメントへの流体の導入速度は、広い角速度操業条件で角速度に対して本質的に独立になる。
【0182】
更に、ローター・アセンブリ200内で特定の流速を得るために必要な混合チャンバー228中の流速は、ローターの端部から戻ってくる他の流れの設定と比較して角速度にあまり依存しない。例えば、流れは、250ではなく、復路セグメントリンク220のようなローター端部から流出する。ある実施例では、210のような流体回収リングでローター端部を囲み、例えば復路セグメントリンクから出る流体を回収するようにしてもよい(この例では、復路セグメントリンクは流れをローター・アセンブリの中心265に向けることはない)。図5Aに示すように流れが迂回して回転軸265に戻るような構成と比較して、この構成では、ローター端部における流出速度とカラムを通過する速度とが、角速度の変化に対してはるかに大きな影響を受ける。典型的には、この種の構成に対して、ローター・アセンブリの角速度が増加するとRCFも増加するので、流出速度も増加する。
【0183】
図5B及び図5Cには、ローター端部近傍での流れの更なる詳細が示されている。特に図5Bは、皿状アセンブリ202、クロマトグラフ処理に持いられる充填剤を含むカラム230(固定相物質とも呼ばれる)、フローセル232、復路セグメントリンク220、及び298aや298b等の復路チャネルの横断面を上から透視した図であり、流路を示してある。カラム230は、皿状アセンブリ202上に載置されるものでもよい。皿状アセンブリ202は、カラムが収容される溝を備えるものでもよい。
【0184】
上述したように、着脱可能なキャップ274をカラム300の末端に組み合わせることができる。ある実施例では、着脱可能なキャップ274には突起があり、フローセル232の開口部に合うように設定されている。ガスケット274aが突起を囲み、着脱可能なキャップ274とフローセルの間の密閉を維持する。皿状アセンブリ202には凹所があり、その中にフローセル232が設置される。
【0185】
フローセル232には開口部があり、復路セグメントリンク220に向けて流体が流れる(図5Cの252a及び252bを参照)。流路は復路セグメントリンク220を出て、復路チャネル298a及び298bに入る。復路セグメントリンク220と皿状アセンブリ202の間にガスケット220aが取り付けられる。ガスケット220aは、復路セグメントリンク220とフローセル232の間、及び復路セグメントリンク220と復路チャネルの間での液漏れを防ぐ。
【0186】
皿状アセンブリ202には、ファスナー222aの受け部がある。 ファスナーは、復路セグメントリンク220中の穴に挿入される。ファスナーを締め付けることにより、復路セグメントリンク220と皿状アセンブリ202の間のガスケット220aにかかる力を強めることができる。ガスケット220aにかかる力により、密閉性が高まり、漏れを防ぐことができる。復路フローチャネルには、皿状アセンブリ202の外側端部を通って皿状アセンブリ202に入る部分298aと、皿状アセンブリ202を通して下へ潜る部分298bがある(298aと298bは互いに角度を持っている)。298bの部分はドレインチャネル248に連結されている。
【0187】
図5Cには、復路セグメントリンク220の実施例を示す。復路セグメントリンク220には、300や306のような穴があり、これによって1つ以上の復路セグメントリンクと組み合わせることができる。300や306のような穴にピンを通すことによって、一つの復路セグメントリンクを他の復路セグメントリンクと組み合わせる。全ての復路セグメントリンクが互いに組み合わされると、ローター端部の周りに連続した鎖の輪ができる。
【0188】
復路セグメントリンク220には穴304がある。図5Bに示すように、ファスナーをこの穴に差し込むことによって、復路セグメントリンクと皿状アセンブリ202を組み合わせる。ある実施例では、復路セグメントリンク220には302aや302bのような2つの凹所がある。この凹所によって、皿状アセンブリ202上のフローセルと復路フローチャネルの間の流れができる。ある実施例では、各路セグメントリンク220に2つの異なるクロマトグラフ用カラムからの流れを統合している。
【0189】
各復路セグメントリンク220の内表面は曲線状でもよい。復路セグメントリンクが連結されると、その内表面が円を形成し、皿状アセンブリ202の端部の周囲を囲む円よりわずかに大きくなるように、表面を曲線状にする。表面の曲線308によって、穴304を通して取り付けられたファスナーから生ずる力がうまく分散する。表面308にかかる分散した力が、復路セグメントリンク220と皿状アセンブリ202の外側端との間の密閉性を向上させる。
【0190】
図6には、ローター・アセンブリ200の側面図を示し、リザーバーについては断面図を、アダプタープレート・アセンブリ214については部分的に透視図とする。アダプタープレート・アセンブリ214はアダプタープレート318を含む。320のようなファスナーを介して、マニホールド・アセンブリ204はアダプタープレート318と組み合わされる。モーター(図に含まない)に接続されたテーパシャフト212は、ファスナー316を介して、アダプタープレート・アセンブリ214のディスク部分214aと組み合わされる。テーパシャフト212、アダプタープレート・アセンブリ214の底部に挿入され、ファスナーによって固定する。
【0191】
リザーバー210は、アダプタープレート・アセンブリ214のディスク部分214aなどに組み合わされる。アダプタープレート318には、1つ以上の流路がある。それにより、マニホールド・アセンブリ204の中のドレインカラム244からアダプタープレートへの流路ができる。マニホールド・アセンブリ204の流体界面がアダプタープレート318上の液体界面との間の密閉を保つために、1つ以上のガスケット(図に含まず)が使用される。
【0192】
流体は、マニホールド・アセンブリ204からアダプタープレート318に入り、1つ以上の流路を通り、1つ以上の穴310を介してアダプタープレートから排出される。ある実施例では、流れはローター・アセンブリの中心から入り、リザーバー210に向けて径方向に流れる。その後、リザーバー210a等の内部に流れ込む。
【0193】
リザーバー210とアダプタープレート318の間の流体界面を密閉することができる。ある実施例では、アダプタープレート318の外側にチャネルがあり、ガスケット314a及び314bで密閉する。この方法の利点は、アダプタープレート318を210のような単独のリザーバー・ドラムの内側に挿入できる点である。リザーバー・ドラム210には、その内側表面から伸長する円形の突起322又は多くのアームが備えられている。アダプタープレート318はこの突起又はアームの上に設置される。アダプタープレート・アセンブリのディスク部分214aは、円形の突起又はアームを介して挿入される。円形の突起又はアームには、リザーバー・ドラムをアダプタープレート318に取り付ける場所がある。
【0194】
ある実施例では、リザーバー・ドラムは、半分にして2つ、あるいは、4分の1にして4つのように、複数に分かれている。アダプタープレート318にリザーバー・ドラム210の穴に挿入される流路があるか、あるいは、リザーバー・ドラム210がアダプタープレートに挿入できる流路を有する。リザーバー・ドラム210は多くの部品で組み立てられる。このような形態はアダプタープレートの端部の密閉されたチャネルの代わりとなる。
【0195】
異なるローター・アセンブリでは異なるマニホールド・アセンブリと異なるリザーバーのデザインを採用できる。例えば、排水リザーバー・ドラム210の内側直径とマニホールド・アセンブリ204の外側直径は大きくできる。テーパシャフト212に接続されたアダプタープレート・アセンブリの一部を再利用可能な形態で、異なる形態のマニホールド・アセンブリ204には異なるアダプタープレート318及びリザーバー・ドラムを用いることができる。
【0196】
図5A、図5B、図5C及び図6に示すローター・アセンブリは多くのモジュール部品からなる。モジュールの構成は例として挙げただけであり、限定するものではない。モジュール構成にする利点は、組み立て、解体、構成の融通性及び低コストである。モジュール構成にする欠点は、モジュールの部品が増えると流体インターフェースが増え、密閉の必要性が増えて、結果的に液漏れの可能性が増える点である。
【0197】
ある実施例において、漏れる可能性のある場所をなくすために、2つの別々の部品に関係する機能を果たすようにいくつかの部品を一体形成するようにしてもよい。例えば、ある実施例において、排水リザーバーとマニホールド・アセンブリとを一体成形してアダプタープレート318を通る流路を省略するようにしてもよい。別の実施例において、混合チャンバーのエンクロージャを皿状アセンブリ202とは別の構成要素として形成するようにしてもよい。更に別の実施例において、混合チャンバーのエンクロージャを皿状アセンブリ202と一体成形された構成要素としてもよい。また、マニホールドブロック225とアジャスタブルチューブ226とを1本の柔軟な管路として形成することもできる。
【0198】
別の実施例では、皿状アセンブリ202上に多くの溝があり、その上にカラムを設置できる。したがって、例えば充填や洗浄のためにカラムを外したり、再度据え付けたりできる。他の実施例において、カラムは、皿状アセンブリ202と一体成形されるものでもよい。例えば、皿状アセンブリを形成しているディスクに多くの穴を開けて、カラムとして使うことができる。別の例では、金属を流路の上に注ぎ、後で取り除くことにより、202のような皿状アセンブリの内部に流路を作ることができる。
【0199】
別の実施例では、第1プレートの上に多くの開放チャネルを形成し、その後にチャネルを覆うようにしてもよい。例えば、第2プレートを接着させてチャネルを覆うようにしてもよい。チャネルを覆った後も、各チャネルは入口と出口とを備える。例えば、第1「ワッシャ」型ディスク上に、径方向に並ぶ多くのチャネルを形成するようにしてもよい。各チャネルは、ワッシャの内側半径から外側半径にむけて形成される。その後、第1ワッシャと同じ寸法で平らな表面を有する第2ワッシャ等の第2の構造体を第1のワッシャに接着して、閉鎖チャネルを形成するようにしてもよい。ある実施例では、2つの別のプレートに、例えば半円柱状の開放チャネルを形成する。2つのプレートを合わせると、円形の断面を有する閉鎖チャネルが形成される。
【0200】
図7Aないし図7Cに、ガスベアリング支持アセンブリ400の側面図及び投影図を示す。ガスベアリング支持アセンブリ400はローター・アセンブリを回転させるドラム型の回転機構(図8参照)の上に設置できる。蓋414はドラムの蓋として機能する。蓋は、防弾ガラスのような固くて透明な素材で作成される。防弾ガラスにしておけば、何らかの機械的なトラブルでローター・アセンブリから飛ばされてくる部品から保護しつつ、ローター・アセンブリを見ながら操作することができる。他の実施例では、非透過性の素材で蓋を形成可能である。
【0201】
ローター・アセンブリ200の回転中に、座240の上にガスベアリング418を設置する。ガスベアリング418から座240にかかる重量によって、回転中のローター・アセンブリ200を安定化できる。例えば、ガスベアリング支持アセンブリ400の重量が、ローター・アセンブリが回転する間に起こる歳差運動を軽減する。
【0202】
ガスベアリング支持アセンブリ400は多くの流路を含む。流路416は空洞のシャフト412を取り抜け、ガスベアリング418の中心426にある穴を通る。先に述べたように、ガスベアリング418が座240の上にあるとき、流路は、例えば、混合チャンバー228のような、座240の下のチャンバーまで伸長するものでもよい。更に、ガスベアリング418の底部が混合チャンバーの蓋の一部として働き、混合チャンバー内への流体の閉じ込めを助けるものでもよい。
【0203】
ある実施例では、ガスベアリング支持アセンブリを貫通して三つの流路がある。その三つの流路を用いて、例えば2つの異なる溶媒とサンプル流体のように、いろいろな流体を混合チャンバーに供給できる。異なる溶媒の濃度を時間をかけて変化させ、容易にグラジエントをかけることができる。他の実施例では、それより多い又は少ない流路がシャフト412を通り、混合チャンバーへ通る。ある場合には、ガスベアリング支持アセンブリが流路を全く含まず、ローター・アセンブリを安定させるためだけに用いられる。別の場合には、1つ以上の流路が非活性で使用されない。
【0204】
シャフト412には1つ以上の流体インターフェースがあり、溶媒リザーバー285及び/又はサンプルインジェクター402からの1つ以上の流路がシャフトの中心部分を通る流路につながるようになっている。例えば、シャフト412は、溶媒リザーバー285やサンプルインジェクター402からのフレキシブルチューブによる流路に連結されるインターフェースでキャップ406と連結される。溶媒リザーバーやサンプルインジェクター402に付随した1つ以上のポンプが流体をシャフトの中に動かす。
【0205】
ある実施例では、1つ以上のポンプが、ピストン駆動ポンプのような容積型ポンプである。別の実施例では、1つ以上のポンプが、浮力ポンプのような容積型ポンプである。圧縮空気駆動の二重隔膜ポンプは浮力ポンプの一例である。この種のポンプは圧縮ポンプの上で動き、稼働部分が最も少ない。他の実施例では、ガス増幅ポンプを用いる。
【0206】
ガスベアリング418は多孔質である。ガスベアリング中のポアをガスは通り抜けることができる。ガスベアリング418が座240の上にありローター・アセンブリが回転しているとき、ガスベアリング418を通して圧縮されたガスはガスベアリング418と回転座240の間に薄い層を形成する。ガスの薄い層はガスベアリング418と回転座240の間の摩擦を最小限にする。時として、ガスベアリングと回転座240は接触する。この接触により、結果的にガスベアリング418がなくなる。
【0207】
ガスベアリングは、例えば加圧アルゴン容器のようなガス源404との間のインターフェースを含む。操作中に、加圧アルゴンはガスベアリング418を通り抜ける。アルゴンの利点は、大気中で三番目に多い気体であり不活性な点である。しかしながら、他のガスでも良く、アルゴンはただの例示に過ぎない。
【0208】
ガスベアリング支持アセンブリ400は、シャフト412とガスベアガスベアリング支持アセンブリは図7Aでは上げた状態、図7Bでは下げた状態で示されている。ある実施例では、ガスベアリング支持アセンブリはレバー408によって昇降される。レバー408は回転シャフト410に連結され、シャフト410の回転420がシャフト412とガスベアリング420とを昇降する。回転シャフト410はサポートブロック424によって支えられる。サポートブロック424は、428等の1つ以上のファスナーによって蓋414と組み合わされる。
【0209】
図8は、ローター・アセンブリ200、格納構造中のガスベアリング支持アセンブリ400、及び444や442等の装置固定具の側面図を示す。ガスベアリング支持アセンブリ400は所定の位置に取り付けられており、ローター・アセンブリ200の座240にガスベアリング418が位置する。ガスベアリングの蓋は格納構造440の出っ張りの上にある。
【0210】
ある実施例では、格納構造440はドラム型で、金属でできている。格納構造440には穴があり、ローター・アセンブリ200の下にあるモーターにテーパシャフト212が連結される。モーターにより、ローター・アセンブリ200に角速度を伝えることができる。
【0211】
1つ以上の穴が、格納構造あるいは蓋414に設けられている。その穴は、気体をチャンバー450から排出する通路となる。ある実施例では、チャンバー450は密閉され、チャンバー内ではある程度の真空状態が達成される。密閉を改善するために、蓋414と格納構造440の間にガスケットが置かれる。更に、蓋414と格納構造をよりしっかりと組み合わせるためにファスナーが用いられる。蓋414か格納構造440の中の1つ以上の穴が真空ポンプと接続される。真空ポンプが働くと、チャンバー450の中にある程度の真空状態が達成される。真空ポンプは、可燃性ガスのような危険な気体がチャンバー450で偶然発生するのを防ぐ安全上の目的にも用いられる。
【0212】
442や444等の1つ以上の装置固定金具が格納構造に備えられる。ある実施例では、442や444等の各装置固定金具は光源及び集光装置を含む。光源と集光装置とは、先に述べたようにローター・アセンブリ200上のフローセル・ウィンドウと一直線上に配置されるものでもよい。光源及び集光装置をローター・アセンブリ200の端部近傍にあるフローセル・ウィンドウと一直線上に配置するために、装置固定金具をローター・アセンブリ200の上方又は下方まで伸長させるようにしてもよい。
【0213】
ある実施例では、2本の光ファイバーケーブルが装置固定金具に取り付けられる。第1の光ファイバーケーブルは1つ以上の波長で光子を放出する光源と連結される。第2の光ファイバーケーブルは光電子増倍管に連結される。第2の光ファイバーケーブルは、フローセルを通過した第1の光ファイバーケーブルから出た光子を受け取る。集光された光子は、光電子増倍管に渡される。光電子増倍管及び光源は、格納構造440の外側に位置する。
【0214】
光電子増倍管からのシグナルにより、流路を通る流体の成分を分析することができる。各装置に結合された光源は、異なる波長の光を放出する。例えば、可視光、紫外光、赤外光等があるが、これらに限定されるものではない。さまざまな実施例において、発光及び集光能力のある装置を用いなくてもよいし、あるいは、1つ又は2つ以上のこのような装置を用いるようにしてもよい。
【0215】
他の実施例では、442や444のような装置固定具が、ガスベアリングを備えるものでもよい。ガスベアリングは、回転中にローター・アセンブリを安定化させて、ローター・アセンブリが442や444等の装置固定具と衝突するのを防ぐ。フレキシブルチューブのような流路をガスベアリングに気体を供給するために装置固定具と結合させることができる。流路は、ガスベアリングと一緒に用いるガス源に接続される。
【0216】
442や444等の装置固定具には、一部が回転できるような回転ジョイントが含まれる。回転ジョイントを用いることにより、装置固定具の一部、例えばその上部を回転させる、たとえば、上向きに回転させることができるため、ローター・アセンブリを格納構造440内に配置することもできるし、格納構造440外に配置することも可能である。
【0217】
一実施例において、格納構造の側面とローター・アセンブリの端部との間に十分な隙間がある場合には、例えば光ファイバーケーブルを含む部分等、装置固定具の一部を格納式アーム上に配置可能である。格納式アームを格納することにより、ローター・アセンブリを格納構造の中に設置したり、取り出したりできる。格納式アームを伸ばすと、格納式アームに取り付けられた装置固定具の上の光ファーバーケーブルや他の装置をローター・アセンブリの上方及び/又は下方に配置させることができる。
【0218】
ローター・アセンブリが回転する際、多くのローター部分が装置固定具を超えて繰り返し回転する。測定が行われている場所におけるローターの位置等、現時点でのローターの位置を追跡し続けるために、インデックス作成システムを備えるようにしてもよい。このインデックス作成システムにより、ローター・アセンブリ上で測定が行われている場所を一意に特定できる。作成したインデックスを、装置固定具に設置した装置を用いる測定に関連付けるようにしてもよい。
【0219】
一例として、ローター・アセンブリ200に、ローターの位置を特定できるマーキング等の識別子を備えるようにしてもよい。例えば、ローター・アセンブリ200の皿状アセンブリに目視可能なマーキングを設置して、各カラムが配置された位置等、位置を一意に特定させるようにしてもよい。マーキングは、例えば、番号及び/又は文字やバーコード等の記号でもよい。別の例では、識別子を格納したRFIDタグを、ローター・アセンブリ200端部周辺のさまざまな位置に、例えば各カラムを設置した位置に、配置させるようにしてもよい。
【0220】
検出器を装置固定具に配置させて、識別子が装置固定具を通過する際にそれを検出するようにしてもよい。例えば、カメラを用いて、記号やバーコード等の識別子を検出するようにしてもよい。別の例として、レーザーと検出器とを用いて、バーコード等の識別子を読み取るようにしてもよい。また別の例として、RFIDタグリーダーを用いて、皿状アセンブリ上に設置されたRFIDタグから識別子を受信するようにしてもよい。
【0221】
作動時には、多くの測定が可能である。個々のクロマトグラフ用カラムに関して測定を行なうこともできる。実施される測定の量は、ローター・アセンブリの角速度と測定がおこなわれる時間の長さに基づいて決まる。検出された識別子をインデックスとして用いて、一組の測定を、個々のカラム及び関連するフローセル等、ローター・アセンブリの所定の特徴部にマッピングするようにしてもよい。インデックス付きの測定を利用して、個々のクロマトグラフ用カラムに関する測定の時変プロファイルを作成することができる。
【0222】
図9Aは、クロマトグラフ・システムに用いられるローター・アセンブリの実施例の上面図である。ローター・アセンブリの部品は先に図3に示した。発電リング333をローター・アセンブリと組み合わせることができる。発電リング333には、1つ以上のワイヤーコイル及び変圧サーキットのような発電部品が含まれる。
【0223】
発電機として用いる場合、発電リング333は、図8に示す装置固定具上に載置されたマグネット等のマグネットを通過する。コイルがマグネットを通過する際に、1つ以上のコイルに電流が誘導される。発生した電気をローター・アセンブリ上の装置へ供給できる。別の実施例では、発電リング333が多数のバッテリーを備え、ローター・アセンブリの周囲にバランスよく均等に配置するようにしてもよい。バッテリーは、ローター・アセンブリ上に配置された発電機によって充電可能なものでもよいし、そうでなくてもよい。
【0224】
別の実施例では、電力をローター・アセンブリ200に供給するために、ブラシインターフェースを用いる。例えば、図8に示す格納構造440の端部近傍に導電性の細いテープを設置する。1つ以上の導電性ブラシ又は他の接触機構を備える1つ以上のアームがローター・アセンブリ200から延伸され、導電性ブラシが固定された導電性テープに接して、電力をローター・アセンブリ200に供給する。導電性ブラシは絶縁されているので、装置全体には電力が供給されない。別の実施例では、テーパシャフト212のようなローター・アセンブリ200の一部が絶縁された導電性テープを含む。固定の導電性テープは、封入構造440の中に位置し、ローター・アセンブリ上の絶縁された導電性テープと接する。回転中に金属ブラシとローター・アセンブリとの間で電気が伝わり、ローター・アセンブリ上のいろいろな装置を駆動する。
【0225】
ローター・アセンブリ200上のいろいろな装置で使えるように、変圧回路によってローター外からの電気やローター上で発生した電力を調整できる。例えば334等の1つ以上の導線によって、発電リング333からリードを取り、いろいろな装置に電力を供給する。調整された電気は、ローター上のバッテリーを充電するとともに、電気駆動バルブ、通信装置、ローター上の装置、ローター上のセンサー及び加熱素子等の環境調整装置を動かす。
【0226】
図9Aで、導線334は、加熱素子329及び331と、サンプル導入機構325と、に連結されている。329及び331等の加熱素子リングは、1つの加熱コイルを備えるものでもよいし、あるいは、発電リング333から電気が供給される複数の発熱体を備えるものでもよい。加熱素子リングのいずれか片方又は両方に制御装置を設けるようにしてもよい。この場合、1つの制御装置で両方のリングを制御するようにしてもよいし、各リングを別々の制御装置で制御するようにしてもよい。1つ以上の制御装置により、各加熱素子リングの熱出力を制御するようにしてもよい。一実施例において、いずれか片方又は両方の加熱素子リングが、各カラムに対して1つ以上の加熱素子を備え、各カラムの加熱素子を独立に制御するようにしてもよい。カラムに沿って温度センサーを設置し、温度センサーから受信したデータに基づいて、例えば、目標温度に制御するようにしてもよい。
【0227】
一実施例において、サンプル導入機構325をローターの上に設置するようにしてもよい。例えば、サンプル導入機構325が、電子的に作動するバルブ等の流体インターフェースを含み、サンプル導入機構のサンプルリザーバーと各カラムを連結させて、サンプルリザーバー内に貯蔵されたサンプルをカラムに注入するようしてもよい。サンプル導入機構325が、ボード上に1つ以上のポンプ形式の注入装置を備え、サンプルリザーバーに貯蔵された流体を各カラムに注入するようにしてもよい。たとえば、注入装置はシリンジポンプでもよい。
【0228】
さらに、サンプル導入機構には327等の、1つ以上の補充ポートがあり、それぞれサンプルリザーバーに連結される。補充ポートでサンプルリザーバーに補給をすることができる。ある実施例では、単独のリザーバーから複数のカラムにサンプルを供給できる。例えば、327等の単独の補充ポートが単独のサンプルリザーバーに連結され、そこから2つ以上のカラムに供給される。更に、各サンプルリザーバー中のサンプルはリザーバー毎に変えることができる。したがって、操作中に、多くの異なるサンプルがローター上で同時にクロマトグラフ処理される。他の実施例では、複数のサンプルリザーバーが用いられる場合、別個に制御されたインジェクターを使える。インジェクターは別個に制御され、異なるサンプルが互いに異なる時間に導入される。サンプル導入機構325が、サンプル導入機構上に配置されたサンプル注入装置や制御可能なバルブ等のデバイスを制御する制御装置を備えるようにしてもよい。
【0229】
ローターが、プロセッサ、メモリー、バッテリー及び/又は通信インターフェース等の内蔵電気回路337を備えるものでもよい。一実施例において、電気回路337は、ワイヤレスの通信インターフェースを備え、ローターとシステムマネージメント装置(図1に示す)との間の通信を可能にする。電気回路337が通信バスを備え、電気回路337から多くの装置へデータを伝えるようにしてもよい。例えば、電気回路337が遠隔装置から命令を受け、ローター・アセンブリ上の特定の装置、例えば、発電リング333、加熱素子リング329又は331、サンプル導入機構325、又は、加減弁等に命令を伝えるものでもよい。
【0230】
ボード上でデータを発生する多くの装置が、339等のワイヤー状の通信リンクを介して、通信バス341に連結される。他の実施例では、ワイヤレス通信リンクが用いられ、ローター上の多くの装置間の通信に用いられる。ワイヤレスリンクにする利点は、ローター・アセンブリを通るワイヤー経路を最少にできる点である。例えば、多くの装置がワイヤレスの送信機/受信機になっており、電気回路337と通信できる。
【0231】
装置により生成されるデータは、ワイヤレス及び/又は有線通信により電気回路337に送られる。電気回路337はそのデータを保存する及び/又は遠隔装置に送る。ローターは、多くのセンサーを備えるものでもよい。例えば、温度センサー、流速センサー、水位センサー(例えば、リザーバー210や混合チャンバー228は水位センサーを有する)、圧力センサー及びその組み合わせ、などがあるが、これらに限定されるものではない。センサーからのデータは電気回路337を介して遠隔装置に伝えられる。他の実施例では、ある装置が電気回路337に接続されていない独自の通信インターフェースを有する。例えば、サンプル導入装置325は、電気回路337のような中間の装置を経由することなく遠隔装置と直接通信するように設定される。
【0232】
別の例として、ローターが測定データを発生する装置をボード上に有する場合がある。ボード上の装置は電気回路337と通信して遠隔装置にデータを送る。ある実施例では、データは発生した時点で、リアルタイムに送られる。別の実施例では、1つそれ以上の装置がメモリーを備え、データを保存したり後で遠隔装置に送ったりする。メモリーはバックアップデータともなるので、例えば送受信機の誤動作などによりリアルタイムのデータが失われても、メモリーから補うことができる。
【0233】
図9Bは、フラクション捕集機構350を含むクロマトグラフ・システムで使用するように構成された実施例におけるローター・アセンブリの側面図を示す。一般に、フラクション捕集機構はクロマトグラフから溶出した溶離液を受け取る。したがって、フラクション捕集機構は溶離液のリザーバーと考えられる。このフラクション捕集機構の位置は単なる例示である。ローターの構成が異なれば、カラムと流路も異なり、フラクション捕集機構の位置も変わる。
【0234】
ある実施例では、バルブ352のような流体インターフェースによりフラクション捕集機構を、皿状アセンブリ202上の復路フローチャネル内に位置する流路に連結することができる。図5A及び図5Bに示すように、復路フローチャネルは復路セグメントリンク220を介して、232のようなフローセルの出口に連結される。バルブ352はいろいろなタイミングで開閉され、フローセル232から排出された流体をフラクション捕集機構350に送ったり、あるいは、フラクション捕集機構350を迂回させたりする。ローター・アセンブリが回転中に、バルブ352が開閉するようにしてもよい。
【0235】
ある実施例では、ローター外にある装置から、バルブ352を開閉する命令を受ける。フローセルでなされた測定のような情報に基づいて、遠隔装置がバルブをいつ開閉するかを判断し、バルブを開閉する命令を送る。別の実施例では、ローター・アセンブリ上の制御装置がこの判断を行い、バルブ352に開閉の命令を送る。
【0236】
フラクション捕集機構350は、集めたフラクションを貯めるための1つ以上のチャンバーを有するものでもよい。例えば、フラクション捕集機構350には四つのバルブ354を有する四つのチャンバーがあり、個々に流体を流すように制御できる。356等のチャンバーには通路用の穴があり、捕集したフラクションを取り出せる。例えばある実施例では、運転が終了してローター・アセンブリが休止状態のときに、穴からフラクションを回収できる。
【0237】
フラクション捕集機構350には1つ以上のカラムを取り付ける。1つのフラクション捕集機構で、単独のクロマトグラフ用カラムからフラクションを取ることもできるし、複数のカラムから取ることもできる。ローター・アセンブリ上のフラクション機構の数は、ローター上のカラムの総数だけでなく各フラクション捕集機構の間のマッピングとそれぞれのカラムの数によって変わる。更に、フラクション捕集機構を用いた場合、必ずしもローター上の全てのカラムと関連付ける必要はない。このように、ローター・アセンブリ上の多くのフラクション捕集機構はローター・アセンブリの形態によって変化する。
【0238】
更に他の実施例では、350のような体積可変の溶離液捕集装置をフローセルなどの検出器の後に置くことができる。体積可変の溶離液捕集装置をワイヤレスで遠隔制御できる電気モーターがあり、筒状のチャンバーなどの内側でリードスクリューを回転させる。そのリードスクリューの上に、ピストン状の密閉洗浄機を取り付ける。リードスクリューが回転すると、ピストン状の密閉洗浄機がチャンバーの外側に向けて移動し、液体をピストン状の密閉洗浄機の移動速度によって変わる速度で液体を流す。
【0239】
体積可変の溶離液捕集装置は、前に記述したように、210のようなリザーバーに組み込める。別の実施例では、体積可変の溶離液捕集装置として逆向きのシリンジポンプのような装置を用いることができる。ある場合には、フラクションのために各カラムの末端に複数のチャンバーを有する体積可変の溶離液捕集装置を置くことが必要である。このような場合には、カラムと体積可変の溶離液捕集装置の間にマルチポートバルブを加えるようにしてもよい。
【0240】
図9Cは、230のようなカラムの末端とフローセルのような検出に関わる装置との間に位置する反応チャンバーを含むブロック図である。ある場合には、クロマトグラフ分離の後、カラム230を出た分析物に化学反応を行う。その反応の結果、分析物が特定の検出器でより簡単に同定できるようになる。例えば、分析物が非蛍光性ならば、例えばLIF(以下の装置の項を参照)などの蛍光検出器で検出できない。化学反応により、分析物を検出し易い性質を持ち、特定の検出器で検出できる物質に変換できる。
【0241】
ある実施例では、800等のフローダイバーターにより、流れをカラムから切り替えて、232のように直接検出器に流すか、フローセルの前に例えば802等の反応チャンバーに流す。反応チャンバー802には、804や806のような1つ以上の異なる試薬を単独で加えることができるアクセスポートがある。アクセスポートは、808や810等のバルブで制御される。ここに示す例では、カラムのすべてあるいは一部が802のような反応チャンバーに含まれる。更に、802等の反応チャンバーは、1つ以上の異なるカラムから分析物を受け入れる。
【0242】
反応チャンバーが超音波発振機を備えるようにしてもよい。ある実施例では、超音波振動はピエゾ電子素子を用いて発生できる。超音波振動によって、分析物の反応速度を増加し化学反応を完結させることができる。ある実施例では、800等のフローダイバーターを用いずに、カラム230とフローセルの間に反応チャンバー802を設置できる。この実施例では、必要に応じて試薬を反応チャンバーに加えたり、あるいは試薬を加えることなく通過させたりできる。更に他の例では、直列に反応チャンバーを配置し、多段の反応を行う。
【0243】
他の例では、別のエネルギー源を用いて、反応に影響を与え、反応チャンバー802中での反応速度を上げるようにしてもよい。たとえば、マイクロ波発生機で反応チャンバーにマイクロ波を照射するようにしてもよい。別の例では、温度調節機構を用いて、必要に応じて反応チャンバーを加熱したり冷却したりするようにしてもよい。
【0244】
図10Aないし図10Dに、吊り下げバケット型の遠心式液体クロマトグラフィーを行う別のシステムを示す。図10Aにはバケットアセンブリの正面図及び側面図を示す。クロマトグラフ分離を行うための複数のカラムを含む。バケットアセンブリは着脱可能である。運転する際は、図10Bないし図10Dに示すように、バケットアセンブリ500をローター・アセンブリと組み合わせて、回転させる。回転によりバケットアセンブリに遠心力がかかる。バケットアセンブリはローターサポート506によってローター・アセンブリと組み合わされる。回転中に、遠心力によって多くのクロマトグラフ用カラムの中の流体が流れ、クロマトグラフ分離が行われる。
【0245】
バケットアセンブリ500には溶媒リザーバーがあり、溶媒やサンプル混合物を予め入れておく。溶媒リザーバー502はウェル・プレート504を介して多くのクロマトグラフ用カラムと組み合わされる。回転中に、溶媒とサンプルは遠心によってウェル・プレート504の開口部を通る。ある実施例では、ウェル・プレートは、96個の開口部を有し、96個のカラムに組み合わされる。
【0246】
別の実施例では、各バケットアセンブリが、一緒に回転するローター・アセンブリの中央リザーバーと組み合わされている。中央リザーバーはローター・アセンブリの回転軸近傍に配置される(図10C参照)。中央リザーバーは、各ローター・アセンブリに供給される溶離勾配のための溶媒組成やサンプルといった流体混合物を制御する。ある実施例では、フレキシブルホースのようなフレキシブルな流体インターフェースが中央リザーバーから各バケット上の溶媒リザーバー502へ取り付けられ、中央リザーバーからの流体は溶媒リザーバー502へ供給される。以下に示されるように、バケットアセンブリの位置はスピン増の間に垂直位置から水平位置へ変化する。フレキシブル流体インターフェースは、回転増の間にバケットアセンブリの位置変化を受容するために用いられる。
【0247】
バッテリーと送受信機とを含むパック510はバケットアセンブリ500に連結可能である。バッテリーを用いて、流速制御装置514に電力を供給できる。一実施例において、流速制御装置514は、電動式止水栓でもよい。電動式止水栓は各カラムと接続可能である。止水栓を閉じると、液体はカラム508を通り抜けることができない。止水栓が部分的に開かれると、液体はカラム508を通り抜けることができる。液体がカラム内を降下し始めるとカラムから置換された空気が、516等のベントを通って放出される。
【0248】
止水栓の位置を利用して、各カラム内の流速に影響を与えるようにしてもよい。止水栓が完全に開いている場合には、流速はカラムを通して増加する。一実施例において、止水栓のような流速制御装置514は、遠隔制御可能である。遠隔装置が命令を送り、送受信機を介して特定の止水栓に要求を送る。流速制御装置514に関連するデータ、例えば現在の状態が、送受信機を介して遠隔装置に送られる。
【0249】
特定の実施例では、サンプルリザーバーが溶媒リザーバー502の上に位置し、その結果サンプルは、最初は溶媒と離れて保存される。バルブのような機構を用いて、サンプルを溶媒リザーバーの中に導入することができる。運転中、溶媒は最初にカラムの中を進み、カラム中に流れを形成する。その後、サンプルが502のような溶媒リザーバーに導入され、溶媒とサンプルの混合物がカラム508を下流へと進む。溶媒リザーバー502は、超音波ミキサのような混合機構を有し、サンプル導入後に溶媒とサンプルを混合する。
【0250】
多くのフローセル512がカラム508の末端付近に設置できる。フローセルは、カラム508を出た流れについて光学的な測定を行うのに用いられる。実行可能な光学的な測定の詳細は図10Bないし図10Dに示す。フローセルを出た後、廃液が溶媒貯蔵所518に集められる。
【0251】
図10Bは、ローター・アセンブリ525の上平面図であり、500のようなバケットを複数含む。この図は、ローター・アセンブリ525及びバケットが回転中のものである。ローター・アセンブリ525は軸501の回りに回転する。ローター・アセンブリ525には、500のようなバケットを取り付けるための520のような固定具がある。図10Bの実施例では、ローター・アセンブリ525には、必要に応じて、500のようなバケット4つを取り付けるための4つの固定具がある。ローター・アセンブリ525は、金属ドラムのような容器534に囲まれる。
【0252】
停止状態では、500等のバケットは重力ベクトルにより鉛直方向に一直線上に配列される(図10C参照)。ローター・アセンブリ525の運転中は、その回転速度が増大するため、バケット500は図10Bに示すように水平位置まで回転して持ち上がる。水平位置で、バケット上の送受信機は、容器534の底部に位置する送受信機位置524を通り越す。送受信機位置524を介して、各バケットから発信されたデータが遠隔装置に送られるか、あるいは、遠隔装置から各バケットにデータ又は命令が送られる。例えば、各バケット上に配置された流速制御装置に命令が送られる。
【0253】
別の実施例では、多くの500のようなバケットを図2ないし図8に示すような皿状アセンブリに取り付け、バケットが常に水平位置にあるようにする。皿状アセンブリを用いるとき、バケットは溶媒とサンプルを供給するために例えば混合チャンバー228のような流体リザーバーに接続され、更に別の流路に接続されてバケットからの廃液が210のようなリザーバーに入るようにする。更に、バケットは流路に組み込まれるので、流体の導入速度で決まる流速は角速度に実質的に依存しない。つまり、流れは、皿状アセンブリの中心から末端にそして再び中心に向かって戻る。
【0254】
2つの計器アセンブリを示す。各計器アセンブリには、530のような容器534に付いた固定具、固定具に組み合わされた収納可能なアーム528、526のような1つ以上の検出要素で収納可能なアーム528に取り付けられたものが含まれる。アーム528が伸長した位置にあるのに対して、アーム532は収納位置にある。アーム528が伸長したとき、検出器526は光学的フローセルの線522上にあり、フローセルを用いた測定ができる。アーム532が収納状態のとき、計器アセンブリに関連する装置は用いられない。
【0255】
ある実施例では、複数の計器アセンブリが利用できる。しかしながら、全ての計器アセンブリとその装置がクロマトグラフ・システムの全ての運転に利用されるわけではない。計器アセンブリが利用されない時、図10Bに示すように、収納することができる。
【0256】
図10Cは、複数のバケットを含むローター・アセンブリが休止状態にあるときの上平面図である。図10Dは、複数のバケットを含むローター・アセンブリが回転状態にあるときの上平面図である。ローター・アセンブリには中心リザーバー570がある。中心リザーバーは、各バスケットに対して流体の組成を制御できる。中心リザーバー570からの流体は、フレキシブル流体インターフェース572を介してバケットに供給される。フレキシブル流体インターフェース572には、着脱コネクタ574があり、バケット上の受け部に接続される。
【0257】
ある実施例では、中央リザーバー570が、異なる移動相流体を貯蔵するための複数のチャンバーを備えるものでもよい。更に、リザーバーが、グラジエント形成部と混合チャンバーとを備えるようにしてもよい。グラジエント形成部は、異なる流体を用いて移動相流体の組成を制御する。さらに、中央リザーバーが、サンプルを導入するためのサンプル導入機構と1つ以上のサンプルリザーバーとを備えるものでもよい。サンプルは、混合チャンバー中で移動相流体と混合されるものでもよい。混合チャンバーは、572等のフレキシブル流体インターフェースを介して各バケットと流体連結されるものでもよい。
【0258】
ある実施例では、動力船のようなフレキシブル動力インターフェース(図示しない)をフレキシブル流体インターフェースと組み合わせることができる。フレキシブル動力インターフェースをバケット上の受け部に取り付け、たとえばバケット上の制御バルブのような装置に電力を供給する。フレキシブル動力インターフェースは、ローター・アセンブリの中央部に組み合わされる。図9Bで示したように、回転中に、ブラシインターフェースが、回転要素以外に位置する動力源から電力を回転要素に供給するのに用いられる。
【0259】
回転中にローター・アセンブリの中心部分に電力を供給するためにブラシインターフェースが用いられる。したがって、ローター・アセンブリの中心部分と各バケットの間のフレキシブル動力インターフェースを介するローター外の動力源からもバケットは電力を受け取る。ローター外の動力源は、中央リザーバー572に関連する装置を動かすのにも用いられる。別に実施例では、発電機や蓄電池のようなローター上の動力源が、バケット上の中央リザーバー572及び装置を動かす。
【0260】
図10C及び図10Dに示す実施例では、7つの異なる種類の検出器のために7つの固定具550、552、554、556、558、560及び562が存在する。運転中に、検出器のすべてあるいは一部を用いることができる。図10Dのある実施例では、検出器のすべてが利用可能である。したがって、検出器に関わる全てのアームが図10Dでは使用状態として示されている。この場合、ローター・アセンブリの回転毎に、7つの異なる測定が各フローセルで行われ、引き続く回転毎に繰り返される。
【0261】
ある実施例において、検出器550は、可視及び紫外吸収検出器でもよい。また、検出器552は、蛍光検出器でもよい。検出器554、556、558、560及び562はレーザー誘起蛍光検出器(LIF)である。各LIF検出器で、異なる波長のレーザーが用いられる。例えば、吸収検出器、蛍光検出器、及びLIFなどの装置の詳細は、次の節で述べる。
【0262】
装置
カラムの一つを回転する間に行われるように、サンプルがクロマトグラフ分離された後、カラムから溶出した溶離液を同定するために1つ以上の検出器が用いられる。クロマトグラフィーでは、カラムでの保持時間が既知の化合物の保持時間と一致することは、必ずしも溶出物の同定に十分な情報とはならない。したがって、付加的な検出器が必要となる。
【0263】
クロマトグラフィーでは、ある物質が特定のクロマトグラフパラメータのもとで示す保持時間や特定の検出器に対する応答特性が、物質を化学的に同定する基礎となる。全ての物質が各検出器に対して異なるように応答するので、多くの検出器を用いるほど、物質の化学的な同定はより確かになる。1つ以上の参照物質に対する保持時間に加えてこれらパラメータが二つ組み合わせれば、確実に化学的同定ができる。
【0264】
検出器とは、溶出する物質を検出すると応答を出力し、クロマトグラム上にピーク信号を与えるようなシステムのことである。典型的には、検出器は固定相の直後に設置され、化合物がカラムから溶出するとき、それを検出する。例えば、上に述べたが、フローセルが多くの光学的検出に用いられる。したがって、フローセルは典型的にカラムの直後に位置する。
【0265】
検出器により生成される情報は、時間変動値として、たとえば、カラムから異なるサンプル成分が溶出する際に経時変化するピークや谷を有する曲線として、表示できる。検出器に関連する大まかな及び詳細な調整によって、ピークの幅や高さは調整される。また、検出器に付随する感度パラメータがしばしば制御される。
【0266】
先に述べたように、ある実施例では、検出器及びこれに付随する要素は、たとえばローター・アセンブリなどの回転要素の上に位置する。更に、検出器に付随するシグナルもまたローター・アセンブリ上で処理される。例えば、フローセル、付随する検出器及びシグナル処理を行うためのプロセッサは、図2−9Cに示されるローター・アセンブリあるいは図10A-Dに示されるバケットアセンブリ上に位置する。他の実施例では、検出器の一部がローター・アセンブリ上に置かれ、残りの一部が図2−10Dに示されるフローセルや検出器のように、ローター外で固定されている。更に別の実施例では、検出器は完全にローター外に位置する。例えば、捕集された分画はある種の機構によって回転要素外に、更なる分析のために運ばれる。
【0267】
ここに示す実施例で利用可能な多くのタイプの検出器がある。ここに示す実施例で利用可能な検出器には以下のものがある:屈折率(RI)、紫外(UV)、可視(VIS)、蛍光、放射能、電気化学、近赤外、質量分析(MS)、核磁気共鳴(NMR)、光散乱(LS)及びその組み合わせ。これらの検出器について以下に示す。
【0268】
液体クロマトグラフィーには2つのタイプの検出器がある。第1のタイプは、検出器の変換機が溶出物と直接接触する必要がある。これには、いろいろなタイプの電気化学検出器や質量分析機がある。第2のタイプは、検出器の物理的要素が必ずしも溶出物と直接接触する必要がない。これには、核磁気共鳴検出器だけでなく、一部又は複数の場所での電磁スペクトルを計測する装置がある。
【0269】
屈折率(RI)検出器は、分析物が光を曲げたり反射したりする能力の尺度として用いられる。各分子あるいは化合物のこのような性質は、屈折率と呼ばれる。ある種の屈折率検出器、特に示差屈折検出器では、光が2つのモジュールからなるフローセルを通って光検出器へと進む。フローセルの一方のチャネルはカラムを通過する移動相を、他方のチャネルは移動相だけを通す。カラムから溶出するサンプルによって光が曲がるとき、2つのチャネルの間の差を読み取ることによって、検出がなされる。他のタイプのRI検出器では、分析物がフローセルを通過する際に光が屈折を受ける程度を、別のフローセルを参照することなく直接検出する。
【0270】
紫外(UV)及び可視(Vis)検出器は、サンプルが光を吸収する能力を測定するのに用いられる。この測定は、1つ又はいくつかの波長でなされる。典型的なUV検出器の感度はおよそ10-8又は10-9 gm/mlである。 UV検出器には通常、光源と集光要素が必要である。通常、光源には、広い波長範囲のランプ、発光線ランプ、発光ダイオード、あるいはレーザーが用いられる。先に述べたように、光源から放出された光は、フローセルを通過するが、あるいはいくつかの焦点あるいはフィルター要素を用いてフローセルの透過性ウィンドウに集光される。
【0271】
例として、254nmのような短波長での吸収を測定する。波長可変測定によって、異なる波長で測定できる。同時には一波長であるが広い範囲の波長に及ぶ。例えば、固定した検出器の下でフローセルが回転するような実施例では、光源の第一の波長がローター・アセンブリの最初の一周で、第二の波長が第二周で、そして第三週では再び第一の波長が利用される。この種の測定では、多くの2あるいはそれ以上の波長について繰り返しが可能である。別の実施例では、波長に対するスペクトルを同時に測定するのに、ダイオードアレイが用いられる。更に別の実施例では、集光要素を伴うあるいは伴わない幾つかの異なる光源を回転要素に対して固定した位置に取り付け、フローセルに焦点を合わせて、回転要素の回転毎に、回転要素上の1つの共通フローセルを用いて異なる波長で測定する。
【0272】
走査型UV/Vis検出器を用いて、サンプルの可視紫外(UV−Vis)全体のスペクトルを測定、検出できる。この装置は、サンプル化合物の同定と分析に非常に有効である。この種の検出器では、フローセルを通過する物質の光に対する応答を測定し記録する。広い波長範囲を検出するために、検出器は二つの内の一つの方法で進める。第1の方法では、走査型モノクロメータにより全波長範囲をスキャンする。標準的な走査型モノクロメータでは、広い波長範囲の光を放出するタングステンあるいは重水素ランプが用いられる。光はグレーティングあるいはプリズムからスリットを通りサンプルセルに向かう。サンプルは光電子増倍管によって検出される。波長はグレーティングあるいはプリズムを回転することによって調節されるが、一度には一か所が走査される。各データポイントのデータは引き続き異なる時刻で得られる。
【0273】
第2の方法では、全てのUV−Vis領域を同時に測定する。一つの手法では、注目する波長領域を検出できるような位置に複数の光電子増倍管を設置して用いる。別の方法では、線状フォトダイオード・アレイ(LPDA)分光光度計を用い、190−1100nmの領域を同時に測定する。単色光は不要で、ミリ秒でデータを取得する。この検出法で、速度論的な中間体を分析することもできるし、スペクトログラフィーを用いて重なるピークを分離及び分析することもできる。
【0274】
蛍光検出器は、化合物がある(励起)波長で光を吸収し、僅かに長波長で発光する能力を測定する。各化合物は特徴的な蛍光を有する可能性がある。励起光はフローセルを通って光検出器に届き、一方モノクロメータが発光波長を計測する。典型的な蛍光検出器の感度はおよそ10-9から10-11 gm/mlである。
【0275】
レーザー誘起蛍光(LIF)は化学種の検出に利用可能な分光学的手法である。先に述べたように、ここで述べる実施例では、1つ以上のLIF検出器を用いる。対象となる化学種はレーザーの単色光で励起される。波長は、化学種が最も大きな吸収断面積を有するよう選択される。励起された化学種は、通常はナノ秒からマイクロ秒の範囲で一定の時間後、脱励起し励起波長より長い波長の光を放出する。放出された光、蛍光は何らかの検出器で測定できる。
【0276】
ある実施例では、発光及び/又は励起スペクトルが測定される。発光スペクトルを測定するには、レーザー波長を固定し、発生する蛍光スペクトルを測定する。励起スペクトルを測定するには、発光波長を固定して、レーザーの波長を変化させ、蛍光を測定する。
【0277】
蛍光はあらゆる方向に発生するので(つまり、蛍光シグナルは当方性なので)、2あるいは次元イメージを得ることができるのが蛍光検出器の一つの利点である。更に、蛍光シグナルはS/N比が高いので感度が高い。励起波長を他の物質と重ならないように目的の化学種に固有の波長に合わせることによって、多くの化学種を区別することも可能である。
【0278】
放射化学検出は、トリチウム3Hあるいは炭素−14(14C)のような放射能でラベル化した物質を利用する方法である。ベータ粒子のイオン化に伴う蛍光を検出する。応用の一つは、代謝物質の研究である。検出には均一型と不均一型の二種類がある。均一検出器では、シンチレーション流体がカラム溶離液と混合され蛍光が発生する。不均一検出器では、ベータ粒子放出による蛍光と硅酸リチウムが検出セルと相互作用する。この種の検出器の典型的な検出限界は 10-9から10-10gm/mlである。
【0279】
電気化学検出器は、酸化又は還元反応を行う化合物を測定するのに用いる。通常、移動するサンプルがある電位差の間の電極を通る際に、電子を受け取るか失うのを測定することによって測定する。ある実施例では、先に述べたローター・アセンブリ又はバケットアセンブリのような 配置の中の1つ以上のカラムの末端近くに電極が設置される。この種の検出器の典型的な検出感度は10-12から10-13gm/mlである。
【0280】
質量分析(MS)検出器では、サンプル化合物あるいは分子はイオン化される。その後、質量分析器を通り、そのイオン電流が検出される。いろいろなイオン化法がある。第一の方法、しばしば電子衝撃(EI)と呼ばれる方法では、高電場で作成される電流あるいはビームによりカラムから溶出したサンプルがイオン化される。第二の方法、しばしば化学イオン化と呼ばれる方法では、カラムから溶出し化合物から電子を動かすのにイオン化したガスが用いられる。第三の方法、しばしば高速電子衝撃と呼ばれる方法では、カラムからの溶出部室をイオン化するのに高速のキセノン原子が用いられる。この種の検出器の検出限界は 10-8から10-10gm/mlである。ある実施例では、要素の回転中に回転要素上でこの方法が実行される。
【0281】
核磁気共鳴検出器では、奇数の質量を有するある種の核、たとえばHや13C、がランダムに軸の回りを回る。しかしながら、強い磁場に置かれると、スピンは磁場に対して平行か反平行に配列し、平行配向の方がエネルギー的に僅かに安定となる。核が電磁波の照射を受けるとそれを吸収して平行から高いエネルギー状態に変わり、共鳴する。HあるいはCは、分子中での位置や隣接する分子あるいは元素に依存して異なるスペクトルを示す。なぜならば、分子の中の全ての核は電子雲に覆われており、それは取り巻く磁場によって変化し共鳴周波数が異なるからである。
【0282】
光散乱(LS)検出器では、光源が平行ビームを放出し、それが溶液中の粒子に衝突する際に、ある光が反射、吸収、透過あるいは散乱する。比濁法では、粒子を含む溶液によって散乱された光を測定するが、ある角度で散乱された光の一部を検出する。検出はバックグラウンドのない状態で行うので、感度はバックグラウンドの光に依存する。
【0283】
濁度測定は、溶液中の粒子により透過する光の減少を測定する方法であるが、粒子を含む溶液を通過する光の減少としての光散乱を測定する。したがって、残存する光の量を測る。この方法の感度は用いる装置の感度に依存するが、簡単な分光光度計から高級な専用の分析計まである。したがって、透過光のシグナルの減少は光度計の正確さや用いる装置によって制限を受ける。
【0284】
近赤外検出計は、例えば700から1100nmのような波長範囲で化合物を走査することで機能する。各分子の中の化学結合の伸縮及び変角振動を特定の波長で検出できる。この検出器では、一つのスペクトルから複数の分析ができる。
【0285】
クロマトグラフ分離
上に述べたように、クロマトグラフィーは化学物質の混合物の個々の成分を物理的に分離する過程である。クロマトグラフ処理では、化学物質の混合物はキャリヤー流れ(気体か液体)に溶解される。混合物を含むキャリヤー流れは、粒子床を通過させられる。キャリヤー流れは、粒子床をある速度で移動する。クロマトグラフィーでは、キャリヤー流れは「移動相」、粒子床は「固定相」と呼ばれる。
【0286】
先に述べた実施例では、シリンダー状のカラムなどの固定相を含むクロマトグラフ・エンクロージャについて記述した。クロマトグラフ・エンクロージャはクロマトグラフ用固定相を含む。少なくとも一つの流路がクロマトグラフ・エンクロージャを通り抜けており、流体がクロマトグラフ・エンクロージャに入り、クロマトグラフ固定相を通過し、クロマトグラフ・エンクロージャを出る。
【0287】
ある実施例では、クロマトグラフ・エンクロージャの中に多くの別々の流路備えられ、これら別々の流路間は流体連結されていない。別々のクロマトグラフ固定相が各流路に含まれる。別々の流路は、並列的なクロマトグラフ処理を可能にし、各流路で共通のサンプル流体又は別々のサンプル流体が並列に処理される。
【0288】
流路は、内部の空洞を含む構造によって確保される。その内部の空洞を含む構造内に、流体とクロマトグラフ固定相が含まれる。G一般的に、流体はその内部の空洞を含む構造を軸方向に駆動される。例えば、細いパイプ状にして、その中を軸方向に流体が通過する。長さ、内断面、及びその面積などが、クロマトグラフ・エンクロージャ中の各流路に関連する空洞部分の構造として定義される。ある実施例では、内断面は流路の長さに沿って一定である。他の実施例では、内断面は流路の長さに沿って変化する。他の実施例では、内断面は円形である。一般には、内断面はどのような形状であってもよい。
【0289】
ある場合には、構造体の外断面が空洞部分の内断面と類似していて良い。例えば、内断面及び外断面が異なる直径の円であり、シリンダーを形成している。例えば、直角のブロックに穴をあけて円形の空洞チューブにできる。ある例では、クロマトグラフ・エンクロージャをローターと一体化してもよいし、あるいは、ローターとは別体のケースと一体化してもよい。
【0290】
各クロマトグラフ・エンクロージャには、入口と出口がある。入口は、流体が1つ以上の流路に入れるようにする。出口は、流体が1つ以上の流路から出られるようにする。クロマトグラフ処理の移動相のような流体は、入口から入り、クロマトグラフ固定相を通り、出口から出て、クロマトグラフ・エンクロージャに流体の流路を確立する。
【0291】
クロマトグラフ・エンクロージャには、クロマトグラフ・エンクロージャに遠心力を供給するローターによって運用される。例えば、先に述べたように、ある角回転速度で回転するように調節されたローター・アセンブリの上で、クロマトグラフ・エンクロージャが運用される。遠心力によって流体はクロマトグラフ・エンクロージャを通過するように仕向けられる。流体はサンプルを含む。サンプルを含む流体が、クロマトグラフ・エンクロージャに含まれる固定相を通過するとき、サンプルのクロマトグラフ分離が起こる。
【0292】
例として、図11に、遠心前後におけるクロマトグラフ処理について、クロマトグラフ・エンクロージャの正面図を示す。シリンダー状のプラスチックシリンジ600のようなカラムが、遠沈管604のような容器に保持されている。シリンダー状のプラスチックシリンジ600には、上部開口部615及び下部開口部616がある。この例では、上部開口部615が下部開口部616より大きいので、カラムの断面積は長さ方向に変化する。先に述べたように、他の例では、カラムの断面積は長さ方向に一定である。
【0293】
クロマトグラフ処理を設定するために、遠心をするに先だって、多くの要素がプラスチックシリンジ600に加えられる。ガラスウール616のような多穴性の詰め物がシリンジ600の底付近に加えられる。多穴性の詰め物によって、610のような固定相がカラムから出ることなく、流体をカラムから出すことができる。
【0294】
ある実施例では、固定相はクロマトグラフ用吸着材610である。用いる固定相の種類は、設定されるクロマトグラフ処理の種類によって変化する。サンプルは、用いられる溶媒の種類や固定相物質の種類によって、固定相物質といろいろな程度に相互作用する。クロマトグラフ処理の種類や用いる固定相や溶媒の特徴を、図11の記述に即して、以下に示す。
【0295】
液体に溶解させたサンプル608は固定相の上に置かれる。固定相粒子の大きさは、サンプルが重力だけでは固定相に侵入しないように選択される。砂606のような多孔性分離媒体がサンプル608の上に置かれる。セパレータが、溶媒リザーバー602のような溶媒からサンプルを分離する。溶媒はクロマトグラフ処理の移動相として働く。それはサンプルとセパレータ606の上に置かれる。
【0296】
次に、クロマトグラフ処理構成が、先に記したローター・アセンブリの一つに角速度を与えるような装置と組み合わされる。遠心力のもとで、溶媒リザーバー602中の溶媒とサンプル608は、610のような固定相へ駆動され、カラムを下流へと流れる。サンプル608と溶媒リザーバー602中の溶媒は、遠心中に固定相を通り抜ける。ある時間後に、サンプル608は固定相610をある距離だけ移動する。したがって、固定相は、サンプル610の上方及び下方に示される。移動相の一部は固定相610を完全に通過し、溶離液618として出て、カラム出口616を遠心分離チューブ604の底に集まる。
【0297】
この実施例は、単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではない。図11の実施例では、カラム内で定常流れが形成される前に、サンプルが固定相中を動き始める。したがって、定常流れが形成される前にクロマトグラフ分離が始まる。先に説明した実施例では、サンプル導入前に、定常流れが形成されるものでもよい。
【0298】
図11の実施例では、異なる溶媒の混合物である溶媒組成が溶媒リザーバー602に適用される。前に述べた例では、遠心中に、溶媒リザーバー602は補給されず溶媒の組成は変化しない。別の例では、遠心中に溶媒リザーバー602は補給され溶媒の組成は変化する、つまり勾配溶離が行われる。
【0299】
移動相の組成と固定相の組成に依存して、異なるタイプのクロマトグラフ処理が実行される。ここに示す実施例は、クロマトグラフ・エンクロージャの固定相を移動相が通過するいかなるタイプのクロマトグラフ処理にも適用可能である。ここに記す方法と装置を用いるクロマトグラフ処理の例としては、分配クロマトグラフィー、吸着(液固)クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル浸透やゲルろ過クロマトグラフィーのようなサイズ排除クロマトグラフィーなどがあるが、その限りではない。分配クロマトグラフィーには、通常の分配クロマトグラフィーに加えて化学結合型及び吸着相型の逆相分クロマトグラフィーを一般的に含む。
【0300】
吸着クロマトグラフィーでは、液体又は気体の移動相が使用され、固定相の表面に吸着する。移動相と固定相の間の平衡の差が異なる溶質を分離する。分配クロマトグラフィーでは、固定相表面に薄い被膜ができる。薄い皮膜は固定相粒子の表面に共有結合で固定される(化学結合型)、あるいは固定相表面に吸着(非結合型)する。イオン交換(IEX)クロマトグラフィーでは、移動相液体中で反対の電荷を帯びた溶質イオンが静電引力によって樹脂(又は粒子状の固定相)に引き付けられ、分析物の電荷が大きいほど、固定相表面と強く相互作用し、クロマトグラフ・システムを通過するのに長い時間を要する。IEXクロマトグラフィーは、生成したタンパク質の三次構造及び四次構造を決定するのにも有効である。なぜなら、水溶液だけを用いる条件で分離が行われるからである。
【0301】
サイズ排除クロマトグラフィーでは、固定相と溶質との間の引力は使わない。代わりに、液体又は気体が多孔性のゲルを通過し、ゲルの大きさによって分子が分離される。孔は通常小さく大きな溶質分子を排除するが、小さい分子はゲルに入り込み、より大きな体積を流れることになる。その結果、大きな分子は小さな分子と比較して速い速度でカラムを通過する。
【0302】
アフィニティークロマトグラフィーでは、ある種の溶質分子が固定相に固定化された別の分子と特異的に相互作用することを利用する。例えば、あるタンパク質に対して固有な抗体を固定化する。タンパク質の混合物がこの分子の横を通り過ぎる時、特異的なタンパク質は抗体と反応し、固定相に結合する。このたんぱく質は、イオン強度はpHを変えることによって、後で取り出す。
【0303】
より詳しくは、逆相分配クロマトグラフィー(RPC)は、非極性の固定相を用いる全てのクロマトグラフ手法を含む。順分配クロマトグラフィー(NPC)と異なるのは、親水性の表面を有する非修飾のシリカ又はアルミナ上で、極性の高い化合物に対してより強い親和性を示す点である。RPCでは、固定相表面に共有結合でアルキル鎖を導入することにより、NPCの場合の溶出順を反転させる。RPCでは、教区性の化合物が先に溶出し、非極性の化合物が保持される−それで「逆相」と呼ばれる。
【0304】
RPCでは、不活性で非極性の物質であれば、充填粒子の表面を十分に覆うことができるので、利用される。一つの例は、オクタデシル基が結合したシリカ297(USP分類L1)で市販されている。別の例としては、C8結合型シリカカラム(L7−166市販で入手可能)である。他には、シアノ基結合型カラム(L10−73が市販)及びフェニル基結合型カラム(L11−72が市販)がある。C18、C8及びフェニル型は逆相充填剤に供されるが、シアノ型は分析対象や移動相条件によって逆相モードで使用される。この時点で、すべてのC18カラムが必ずしも同じ保持特性を示すわけではないことに注意すべきである。シリカの表面を機能化する際に、第二段で残存するシラノール基を押さえる(エンド−キャッピング)のに異なるアルキル鎖長の有機シランを用いてモノメリック又はポリメリック反応を行う。全体の保持機構は同じであるが、固定相ごとに微妙に表面化学がことなるので、選択性に違いが現れる。
【0305】
RPCでは、水(又は水性緩衝液)と有意溶媒との混合物が、逆相カラムから分析対象物を溶出するのに用いられる。溶媒は水と混ざるものであり、アセトニトリル、メタノール、又はテトラヒドロフラン(THF)のような一般的な溶媒である。この他には、エタノールや2−プロパノール(イソプロピルアルコール)などが用いられる。溶離はイソクラチック(分離中に水−溶媒の組成が変化しない)あるいはグラジエント(分離中に水−溶媒の組成が変化する)で行われる。T移動相のpHは分析対象物の保持に重要な影響を及ぼし、ある種の対象物の選択性を変える。電荷を帯びた対象物もイオン対生成(イオン相互作用と呼ばれる)を用いることで、逆相カラムで分離できる。この方法は、逆相イオン対生成クロマトグラフィーとして知られる。
【0306】
結果例とHPLCとの比較
クロマトグラフ分離過程の効率はしばしば「クロマトグラフ効率」と呼ばれる。クロマトグラフ効率理論は比較すべき多くのクロマトグラフ処理の効率を相対的に示す指標を示す。ここに示す方法と装置を用いれば、クロマトグラフ処理は、他の方法と装置を用いて実施される類似のクロマトグラフ処理と比較してより効果的なクロマトグラフ処理を設定できる。したがって、以下のパラグラフでは、圧力に関する必要性と粒子サイズの制限を含む遠心液体クロマトグラフィーに対する方法と装置を、液体クロマトグラフィーで通常用いる形態であるHPLCと比較する。更に、クロマトグラフ分離理論を簡単に記述する、具体的には、1)ここに記載した装置と方法を用いるクロマトグラフ分離の効率の尺度と、2)HPLCのような他のタイプのクロマトグラフ装置で得られる性能尺度との比較と、を記述する。
【0307】
HPLCで通常用いられる量として背圧がある。背圧とは、特定のサイズの粒子を固定相とするカラム中に流体を通すのに必要な圧力を決定するために、背圧の計算値を用いる。HPLCで必要な圧力は次のように算出される。
ΔP=(ηFL)/(K0πr2dP2)
ここで ≡Pはカラム頭部での圧力であり長さ方向に降下する、ηは粘度、Fは流速、Lはカラムの長さ、K0は固有透過度、rはカラムの半径そしてdPは粒子直径である。流速、流体の粘度、カラム長を増加させたり、粒子径を減少させたりすると、より高い耐圧性が必要になる。例えば、HPLCで2マイクロメータ以下のような細かい粒子は高い耐圧性を必要とする。例えば、HPLCで2マイクロメータの粒子を用いる場合には10,000PSI以上の圧力が必要である。
【0308】
遠心液体クロマトグラフィーを用いる本実施例では、背圧の必要性と圧力の重要性はHPLCと異なる。例えば、上に示した他のパラメータと同様にある粒子径サイズでは、ここに示すクロマトグラフ・システムを運転する圧力はHPLCシステムに必要な圧力と比べてはるかに小さい。また、遠心液体クロマトグラフィーを用いる系は圧力に関してHPLCシステムと挙動が異なる。例えば、ここに示す実施例では、圧力はカラムの頭から長さ方向に沿って増加するが、HPLCでは逆に減少する。
【0309】
特定の理論に縛られることなく、カラムは多くの層からなり、流体は層から層へとカラムを下る。分離効率理論では、先に述べたように、これらの層それぞれを「段」と呼ぶ。例えばHPLCのように圧力を駆動力とする場合、各層を横切って流体を流すには僅かな圧力が必要である。したがって、必要な圧力はカラム中の層又は段に依存し、全体として必要な圧力は、流体を各層を横切って流すための圧力の総和となる。分離効率は、通常層の数が増加するに連れて増加する。したがって、HPLCでは、層の数が増加するにしたがって増加する分離効率はより高い圧力を必要とする。
【0310】
遠心液体クロマトグラフィーでは、流体は遠心力によって各層を横切るので圧力損失はない。遠心力は互いに独立に各層に働くので、HPLCの場合のように層を横切るために圧力損失がない。したがって、遠心液体クロマトグラフィーでは、圧力に関する必要性がHPLCに比べてはるかに少ない。この特徴は従来技術では十分に評価されてこなかったと出願人は考える。
【0311】
更に、ここで記す実施例では、HPLCで可能なものよりはるかに細かい粒子を使える。例えば、およそ15オングストロームの粒子でも利用可能である。もし更に小さい粒子が製造されれば、それも使用可能と考えられる。
【0312】
クロマトグラフィーでは、分離効率を評価するために段モデルが用いられる。段モデルでは、クロマトグラフ用カラムに多くの層を考える。これを「理論段」と呼ぶ。サンプルが固定相と移動相の間で平衡化するが、これが各「段」で起こると考える。分析対象物は平衡化した移動相によって、一つの段から次の段へと下る。
【0313】
「段」という用語はカラムの中で機能する処理に対するアナロジーとして用いる。実際にカラム中に段があるわけではない。カラム効率、つまりクロマトグラフ分離を行う能力、はカラム中の理論段の数N、あるいは一理論段に匹敵する高さ、理論段高として数値化される。長さLのカラムについては、理論段高は次のように定義される、
HETP=L/N.
2つの異なるカラム中で起こるクロマトグラフ処理を比較すると、Nの値が大きいあるいはHETPの値が小さいカラムはクロマトグラフ効率が高いことを示す。
【0314】
カラム中で起こる液体クロマトグラフィーに対して分離効率が定義されてきた。国際純正応用化学連合は分離効率を次のように定義した:
N=16(VR/wb)2 =16(tr/w) 2
ここでNは理論段数、VRはサンプル注入から当該のサンプル成分のピーク極大出現までの間にカラムに流入する移動相の体積、wbは分析対象物がカラムから出始めた時刻から完全に出終わるまでの時間の総体積、tは保持時間(秒)、そしてwはピークの幅(秒)である。
【0315】
ここに記載した実施例のクロマトグラフ・システムを用いて、実験的な測定をおこなった。3つの化学種の分離のために、直径(dp)5ミクロンの粒子を詰めた長さ2.3cm、空隙体積0.110mlのカラムを用いた。化学種1はFD&C RedNo.3(エリスロシン)である。化学種2はFD&C YellowNo.5(タトラジン)である。化学種3はFD&C GreenNo.3(ファーストグリーンFCF、E143)である。移動相は、70%水、30%イソプロピルアルコール(IPA)及び0.010モル/リットルのリン酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)である。この実験で理論段高を求めた。これらの実験は表1に示す数値を示した。
【0316】
【表1】
【0317】
各化学種に対するVR及びwbの値を理論段の式に関連して示す。 k’は各化学種の保持因子、αは2つの化学種の保持体積の比、Rは2つの化学種の間の分離度、Nは理論段数、N/Lは理論段数をカラム長(0.023m)で割ったものである。例えば、化学種1と2の分離度は次のように算出する。一般的には、R(A,B)=2[VR-B-VR-A]/[wb-B+ wb-A]。1と2については、R(1,2)=[VR-2-VR-1]/[wb-2+ wb-1]。α(A,B)=k’A/k’Bは2つの化学種の保持係数の比である。例えば、α(1,2)=k’1/k’2である。
【0318】
表1に示した3つの化学種のクロマトグラムを図12に示す。理論段などの表に示した量は、各ピークの体積など、クロマトグラムで得られたデータから算出した。小さいスケールでは線のように見えるが、ピークには幅があり体積を計算するのに用いる。
【0319】
各化学種に対する理論段と化学種間の分離度は極めて高い。例えば、2つの化学種の間の分離度が1.5以上であるということは完全分離と考えられる。理論段数と分離度はHPLCで得られる理論段数と分離度よりはるかに高い。
【0320】
HPLCとここで述べた方法及び装置の違いを数値化するために、同等の分離をHPLCと遠心液体クロマトグラフィーで行った。固定相としては、いずれも直径5ミクロンの粒子を用いた。HPLCで用いたカラムの長さは150mmである。遠心液体クロマトグラフィーで用いたカラムの長さは36mmである。どちらでの方法でも、類似の移動相とサンプルを用いた。実験の測定値を表2に示す。
【0321】
【表2】
【0322】
HPLCと遠心液体クロマトグラフィーの大きな違いが予想外である。遠心液体クロマトグラフィーの分離効率はHPLCより数ケタ良い。遠心液体クロマトグラフィーが高い分離効率を示す多くの説明が可能である。なぜ典型的な結果が得られたのかに関わる個々の理論を離れて、いくつかの気付いた点を以下に示す。
【0323】
流体をクロマトグラフ・エンクロージャに通すのに遠心力を用いた場合は、HPLCのように圧力を用いた場合に比べて、濃度勾配の結果として起こる拡散がはるかに少ない。拡散が少ないと分離効率が上昇し、その結果HPLCとは対照的にここで記述した実施例では、理論段数が大きくなる。遠心に関連する沈殿係数は濃度に依存する。このために、遠心によって拡散が減少した。
【0324】
応用
クロマトグラフィーは、実験化学者及びそれぞれの学問に化学を応用するものにとって基礎的な道具である。クロマトグラフィーは石油産業、食品産業、製薬業、医学(例えば診察)、及びその他の産業で広く用いられ不可欠である。ここに記した実施例をクロマトグラフ処理に応用する分野をより詳しく見ると、
医学及び生物医学の研究
薬品の品質管理
ルーチンの臨床分析
薬品のスクリーニング
宇宙関連の研究と開発
地球化学の研究と開発
薬学の研究と開発
犯罪科学
食品及び化粧品関連の化学的測定
石油産業における工程管理
環境モニタリング及び汚染制御
生物学的システムでの化学及び代謝に関する研究
ここに記した装置を用いて可能な分析の二三の特別な例としては、人血漿のタンパク質、ヌクレオチド及びその誘導体、アミノ酸及びその誘導体、尿の代謝物の分析、治療薬物のモニタリング、薬物乱用のモニタリング、及び小麦や他の種のタンパク質の分析などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0325】
クロマトグラフ処理の二つの主な目的は、その大きさと目的によって、分析と調製とに区別される。調製クロマトグラフィーは2、3の試料を大量に精製・回収するために用いられる。分析クロマトグラフィーは、多種の少量のサンプルについて、その組成と純度を決めるために利用される。いろいろな調製及び分析に用いられるサンプルの大きさ、カラムの長さ、及びカラムの内径(I.D.)の例を次に示す。
【0326】
【表3】
【0327】
ここに示す実施例は、調製にも分析にも用いることができる。工業プロセスのような大きなサンプルの場合、それに応じて装置と方法をスケールアップできる。カラムの長さや内径のようなカラムのサイズは、上に示すように目的に応じて変えることができ、いろいろな実施例では、それぞれ10ないし400cm及び0.1ないし2000mmに及ぶ。カラム長さと内径は、粒子による要求を満たすようにいろいろ選べる。例えば内径が0.01mm以下のキャピラリーも使える。したがって、上に述べた範囲は限界を示すものではなく、例示の目的にすぎない。上に述べたローター・アセンブリのような回転要素も、特別な応用のために特別な大きさのカラムを収容できるようにスケールアップあるいはダウンできる。
【0328】
方法
図13は、クロマトグラフ分離処理を実行する方法700を示すフローチャートである。ステップ702で、複数の構成要素、すなわち、1)固定相を含有するクロマトグラフ・エンクロージャと、2)移動相流体源と、3)サンプル源と、を準備する。ステップ704で、クロマトグラフ・エンクロージャを、ローター・アセンブリ等の回転要素に結合させる。
【0329】
ステップ706で、回転要素を休止状態から回転させて、クロマトグラフ・エンクロージャに角速度を与える。回転中、遠心力により移動相流体源から供給された移動相流体が、固定相を通って移動する。移動相流体源は、クロマトグラフ・エンクロージャと一体化した構成要素でもよいし、クロマトグラフ・エンクロージャと別に配置されるものでもよい。
【0330】
ステップ708で、クロマトグラフ・エンクロージャの回転中に固定相を通る移動相流体の流れが形成されたか否かを判定する。具体的に言えば、クロマトグラフ・エンクロージャを通る定常流が形成されたか否かを判定するようにしてもよい。一実施例において、クロマトグラフ・エンクロージャの端部近傍に配置されるフローセルを用いた測定を利用して、流れが形成されたか否かを判定するようにしてもよい。
【0331】
一般に、検出器を用いて、カラム内が定常条件に到達したか否かを判定することができる。利用可能な検出器の例は上述したが、たとえば、「装置」の節で説明した検出器を用いることができる。検出器からの信号、たとえば、カラムから出る移動相流体により生成された信号、を所定の期間にわたって測定する。図12に示すクロマトグラムは、検出器から得られる信号の一例である。信号にノイズが含まれる場合もある。対象となる期間にわたって変動が所定量未満の信号の平均値として、定常性を定義するようにしてもよい。1つのカラムに複数の検出器を関連付けて、複数の検出器からの信号を用いて、定常条件に到達したか否かを判定するようにしてもよい。
【0332】
測定可能な他のファクターは、ローター・アセンブリの角速度である。一部の実施例において、特定の測定の際に、ローター・アセンブリを休止状態から目標角速度までスピンアップ処理するようにしてもよいし、あるいは、1回目の測定時にはローター・アセンブリを第1の角速度にし、その次の測定時には角速度を増加又は減少させて新しい目標値にするようにしてもよい。検出器を用いて、ローター・アセンブリの平均角速度が、所定の期間にわたって、所定の範囲内であるか否かを判定するようにしてもよい。たとえば、ローター・アセンブリに接続されたモーターが回転速度を報知するようにしてもよい。一部の実施例において、平均角速度が対象期間にわたって所定の範囲内であることが判定されるまで、サンプル注入を開始しないようにしてもよい。また、一部の実施例において、カラムを通る流れに関する1つ以上の検出器からの信号と角速度に関係する信号との両方が所定期間にわたって所定範囲内である場合にのみ、サンプル注入を開始するようにしてもよい。
【0333】
一例として、クロマトグラフ・システムの一連の測定では、最初に、カラム内に移動相流体を導入する。移動相流体組成が、検出器から出力される第1の信号を生成するものでもよい。この信号が所定の範囲内で経時変化する場合、たとえば、信号値のレベル変化が比較的少ない場合、サンプルを注入して、勾配溶離を実行させるようにしてもよい。所定の被分析物をカラムから流出させるために、勾配溶離が必要となる場合がある。勾配溶離により、検出器から出力される信号が変化する。溶離に起因する信号の変化は、特定の傾きを持つ線形プロファイル等の認識可能なプロファイルとして検知できる。また、カラムからの被分析物の流出によっても、信号の変化が生じる。被分析物による信号の変化は、ピークや谷といった認識可能なプロファイルとして検知できる。被分析物により生じた信号変化のプロファイルは、勾配溶離により生じた信号変化のプロファイルと異なり、個々の信号変化への影響を見分けることも可能である。
【0334】
勾配溶離が完了後、移動相流体は、勾配溶離前の最初の組成に戻る。これに応じて、検出器からの信号が、所定期間後に、最初の値、すなわち、勾配溶離が開始される前の値に戻る。一部の実施例において、10ないし20カラム容積の流体をカラムに流すようにしてもよい。信号が最初の値に戻り、かつ、その値が所定の期間にわたって所定の範囲内である場合には、カラムに次のサンプルを注入することができる。
【0335】
ステップ710で、クロマトグラフ・エンクロージャの回転中に、サンプル源からサンプル流体を導入して、固定相内にサンプル流体を通す。サンプル流体が固定相を通って移動することにより、サンプル流体から1つ以上のサンプル成分をクロマトグラフ分離することができる。ステップ712で、クロマトグラフ・エンクロージャの回転中に、固定相を通過した後、サンプル流体の分離された成分を検出する。たとえば、分離された成分をクロマトグラフ・エンクロージャ端部近傍のフローセルに通し、フローセルを用いた測定により、分離された成分の存在を検出するようにしてもよい。このような測定の結果を、クロマトグラフ・システムに接続された出力装置に、クロマトグラムとして表示するようにしてもよい。
【0336】
本発明には幾多の利点がある。さまざまな態様、実施形態又は実施例は、以下に説明する1つ以上の利点を有する。1つの利点として、遠心分離を利用してクロマトグラフ用カラムに流体を通すことにより、HPLC等の他の種類のクロマトグラフ手法よりも小さな固定相粒子を利用可能なことが挙げられる。小さな粒子を用いることにより、HPLC等の他の種類のクロマトグラフ手法と比べて、クロマトグラフ分離効率を向上させることができる。別の利点として、本明細書に記載するローター・アセンブリが多数のクロマトグラフ処理を同時に実行可能なことが挙げられる。多数のクロマトグラフ処理の「並行処理」により、スループットタイムが短くなり、HPLC等の他のクロマトグラフ処理の場合に時間がかかりすぎ、コストがかかりすぎるような分析を行なうことができる。本発明の多くの特徴や効果は、本明細書から明らかであり、本発明のこのような特徴や効果は、すべて、特許請求の範囲に記載される本発明の要旨の範囲内に含まれるものである。さらに、当業者には自明のように、さまざまな変形及び変更が可能であり、図示及び記載した具体的な構成や操作に本発明は何ら限定されるものではない。したがって、適当な変形や変更、及びその等価物は、すべて、本発明の要旨の範囲内に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心式カラムクロマトグラフ・システムであって、
軸の周りを回転するように構成されているローターと、
前記ローターに保持されている複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャであって、各クロマトグラフ用カラム・エンクロージャは対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ用カラム・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記クロマトグラフ用カラム・エンクロージャの軸方向に前記クロマトグラフ固定相の中を前記流体を移動させる、複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャと、
前記複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャのうちの少なくとも選択された1つに流体連結するサンプル導入機構であって、前記ローターが回転している間に、前記選択されたクロマトグラフ用カラム・エンクロージャにサンプル流体を導入するサンプル導入機構と、
前記ローターに保持され、前記複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャに流体連結する溶離液リザーバーであって、前記複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャから溶出される流体を収容する溶離液リザーバーと、を備える遠心式カラムクロマトグラフ・システム。
【請求項2】
遠心式クロマトグラフ・システムであって、
軸の周りを回転するように構成されているローターと、
前記ローターに保持されている複数のクロマトグラフ・エンクロージャであって、各クロマトグラフ・エンクロージャは、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記クロマトグラフ固定相の中を前記流体を移動させる、複数のクロマトグラフ・エンクロージャと、
前記ローターに保持され、前記複数のクロマトグラフ・エンクロージャに流体連結する溶離液リザーバーであって、前記複数のクロマトグラフ・エンクロージャから溶出される流体を収容する溶離液リザーバーと、を備える遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項3】
遠心式クロマトグラフ・システムであって、
軸の周りを回転するように構成されているローターと、
前記ローターに保持されている少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャと、
前記ローターに保持され、移動相流体を前記ローター上のサンプルと混合して混合流体を生成する混合チャンバーであって、前記ローターに保持される構成要素の回転を利用して前記サンプルと前記移動相流体との混合を促進し、前記クロマトグラフ・エンクロージャの上流側に配置される混合チャンバーと、を備える遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項4】
請求項3に記載の遠心式クロマトグラフ・システムはさらに、
前記混合チャンバーに流体連結する移動相流体リザーバーと、
前記混合チャンバーに流体連結するサンプル導入機構と、を備え、
前記移動相流体リザーバーと前記サンプル導入機構とが、前記ローター上又は前記ローター外のいずれかに配置されている、遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項5】
遠心式クロマトグラフ・システムであって、
クロマトグラフ・エンクロージャと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャを保持し、前記クロマトグラフ・エンクロージャを回転させるローターと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結するサンプル導入機構であって、前記ローターが回転している間に前記クロマトグラフ・エンクロージャにサンプル流体を導入するように構成され、サンプル導入信号を受信し、前記サンプル導入信号の受信に応じて前記サンプル流体の導入を開始するサンプル導入機構と、を備える遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項6】
クロマトグラフ・システムであって、
クロマトグラフ・エンクロージャと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャを保持し、前記クロマトグラフ・エンクロージャを回転させるローターと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結するサンプル導入機構であって、前記ローターが回転している間に前記クロマトグラフ・エンクロージャにサンプル流体を導入するサンプル導入機構と、
前記サンプル導入機構に接続され、前記サンプル流体の導入を自動的に開始する制御装置と、を備えるクロマトグラフ・システム。
【請求項7】
請求項6に記載の遠心式クロマトグラフ・システムであって、
前記制御装置は、前記遠心式クロマトグラフ・システムに関連する検知状態に少なくとも部分的に基づいて、前記サンプル流体の導入を開始する、遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項8】
クロマトグラフ・システムであって、
対応するクロマトグラフ固定相を含有するクロマトグラフ・エンクロージャであって、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成されているクロマトグラフ・エンクロージャと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャを保持するローターであって、所定の角速度で前記クロマトグラフ・エンクロージャを回転させて、遠心力により流体を前記クロマトグラフ固定相を含む前記クロマトグラフ・エンクロージャ内で移動させるように構成されているローターと、
流体エンクロージャであって、前記ローター回転時に静止している第1の部分と、前記ローター上に保持され、前記ローターと共に回転する第2の部分とを有し、前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結する流体エンクロージャと、を備えるクロマトグラフ・システム。
【請求項9】
請求項8に記載の遠心式クロマトグラフ・システムであって、
前記流体エンクロージャは、前記ローター上の前記クロマトグラフ・エンクロージャに供給するための移動相流体を保持するように構成されている移動相流体リザーバーである、遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項10】
請求項8に記載の遠心式クロマトグラフ・システムであって、
前記流体エンクロージャは、前記ローター上の前記クロマトグラフ・エンクロージャ内を通った溶離液を収容するように構成されている溶離液リザーバーである、遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項11】
遠心式クロマトグラフ・システムであって、
少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャを保持するローターであって、前記クロマトグラフ・エンクロージャを回転させて、遠心力により前記液体を少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャ内で移動させるように構成されているローターと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結し、前記クロマトグラフ・エンクロージャへの移動相流体の供給を容易にする流体供給機構であって、前記ローター回転時に静止している第1の部分と、前記ローター上に保持され、前記ローターと共に回転する第2の部分とを備え、前記ローター回転時に、前記流体供給機構の前記第1の部分から前記第2の部分に流体を移動させるように構成されている流体供給機構と、を備える遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項12】
遠心式クロマトグラフ・システムであって、
軸の周りを回転するように構成されているローターと、
前記ローター上に保持されていうクロマトグラフ・エンクロージャであって、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記流体を前記クロマトグラフ固定相の中で移動させる、クロマトグラフ・エンクロージャと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結し、フローウィンドウを備えるフローセルとを備え、前記クロマトグラフ・エンクロージャと前記フローセルとを通る流路であって、前記クロマトグラフ・エンクロージャの前記クロマトグラフ固定相内の所定位置から始まり前記フローウィンドウを通過する流路の内側断面積が実質的に一定である、遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項13】
クロマトグラフ・システムに用いるのに適したフローセルであって、
フローセル入口と、フローセル出口と、前記フローセル入口と前記フローセル出口との間に伸長する流路と、
前記流路に沿って形成され、前記フローセルを通る物質の光学的検知を可能にするウィンドウと、を備え、
前記入口の断面寸法と前記ウィンドウの断面寸法とが異なり、
前記入口の断面積、前記ウィンドウの断面積、及び前記入口と前記ウィンドウとの間の領域の断面積が、前記流路に沿って実質的に一定である、フローセル。
【請求項14】
請求項13に記載のフローセルであって、
前記流路の断面積が、前記フローセル入口から前記フローセル出口までの前記フローセル全体にわたって実質的に一定である、フローセル。
【請求項15】
クロマトグラフ・システムであって、
クロマトグラフ固定相を含有するクロマトグラフ用カラムと、
請求項13に記載のフローセルと、を備え、
前記フローセルが前記クロマトグラフ用カラムの下流側に配置され、
前記クロマトグラフ用カラムの断面寸法及び断面積とが、フローセル入口の断面寸法及び断面積と実質的に同じである、クロマトグラフ・システム。
【請求項16】
請求項15に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ用カラムがローター上に保持され、前記ローターは、遠心力を与えて、前記固定相を介して移動相を移動させる、クロマトグラフ・システム。
【請求項17】
遠心式カラムクロマトグラフ・システムであって、
軸の周りを回転するように構成されているローターと、
前記ローター上に保持されている複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャであって、各クロマトグラフ用カラム・エンクロージャが、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ用カラム・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記流体を前記クロマトグラフ固定相の中で移動させる、複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャと、
少なくとも移動相流体を収容するカバー付き容器を備えるリザーバーであって、回転軸に近接して配置され、前記ローター上に保持され、前記複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャの各々に流体連結するリザーバーと、を備える遠心式カラムクロマトグラフ・システム。
【請求項18】
クロマトグラフ・システムであって、
軸の周りを回転するように構成されているローターと、
前記ローターに保持されているクロマトグラフ・エンクロージャであって、前記軸から第1の距離に位置する第1端と、前記軸から前記第1の距離より大きな第2の距離に位置する第2端と、を備えるクロマトグラフ・エンクロージャと、
前記ローター上に保持されている前記第2端に近接して配置されるクロマトグラフ・エンクロージャに流体連結するフローセルと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャと前記ローターとに接続されている耐荷重機構であって、回転時に前記クロマトグラフ・エンクロージャによって前記フローセル内に伝達される機械的負荷を減少させ、前記機械的負荷を減少させることにより前記フローセル内のフローセル・ウィンドウの変形を防ぐように構成されている耐荷重機構と、を備えるクロマトグラフ・システム。
【請求項19】
クロマトグラフ・システムであって、
軸の周りを回転するように構成されているローターと、
前記ローターに保持されているクロマトグラフ・エンクロージャと、
前記ローターを取り囲む格納構造と、
前記格納構造により支持されている複数のローター支持構造とを備え、各ローター支持構造はガスベアリングを備え、前記ガスベアリングは協働して、前記ローターの回転時に前記ローターを安定化させる、クロマトグラフ・システム。
【請求項20】
請求項19に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローター支持構造の少なくとも一部は計器取り付け部として機能し、各計器取り付け部は前記クロマトグラフ・エンクロージャから排出されて、前記クロマトグラフ・エンクロージャの下流側に配置されているフローセルを通過する流体の特性を検出するのに適した対応する計器を支持するように構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項21】
遠心式クロマトグラフ・システムであって、
ローターであって、前記ローターに保持されているクロマトグラフ・エンクロージャを備えるローターと、
前記ローターに近接するガスベアリングであって、前記ローターの回転時に前記ローターを安定化させるように構成されているガスベアリングと、を備える遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項22】
請求項21に記載の遠心式クロマトグラフ・システムであって、
前記ガスベアリングは、前記ローターと共に回転しない、遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項23】
請求項21に記載の遠心式クロマトグラフ・システムはさらに、
前記ガスベアリングに流体連結するガスリザーバーであって、前記ガスベアリングから放出されるガスを供給するガスリザーバーを備える、遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項24】
クロマトグラフ・システムであって、
ローター上に保持されている複数のクロマトグラフ・エンクロージャであって、各クロマトグラフ・エンクロージャは、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記流体を前記クロマトグラフ固定相の中を前記ローターの外周面に向かって移動させる、複数のクロマトグラフ・エンクロージャと、
前記ローターの前記外周面の周りに配置されている複数のリンクであって、各リンクが2つの他のリンクと連結して、前記ローターの前記外周面の周りに連続した鎖の輪を形成し、1つ以上の前記リンクは、1)前記外周面に向かって移動する流体を収容し、及び、2)前記外周面から離れて内側に流体の方向を変える、ように構成されている流路を備える複数のリンクと、を備えるクロマトグラフ・システム。
【請求項25】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローターは複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャを保持する、クロマトグラフ・システム。
【請求項26】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
各クロマトグラフ・エンクロージャは、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記流体を前記クロマトグラフ固定相の中で移動させる、クロマトグラフ・システム。
【請求項27】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターに角速度を与えるローター駆動システムを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項28】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ・エンクロージャは前記ローターと一体に形成される、クロマトグラフ・システム。
【請求項29】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
各クロマトグラフ・エンクロージャは、前記クロマトグラフ固定相を含有する少なくとも1つの中空内側部分を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項30】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結する少なくとも1つの移動相流体リザーバーを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項31】
請求項30に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記少なくとも1つの移動相流体流体リザーバーは前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項32】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結する少なくとも1つのサンプル導入機構であって、前記ローターの回転時に、前記クロマトグラフ・エンクロージャにサンプル流体を導入するように構成されている少なくとも1つのサンプル導入機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項33】
請求項32に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記サンプル導入機構は、前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項34】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記クロマトグラフ・エンクロージャ内へのサンプル流体の導入を自動的に開始するように構成されている制御装置を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項35】
請求項34に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記制御装置は、前記ローターに保持される流体の状態を検出して、前記ローターにより保持される流体の検出された状態に少なくとも部分的に基づいて、前記ローターの回転中のいずれの時点でサンプル流体を導入するべきかを決定する、クロマトグラフ・システム。
【請求項36】
請求項35に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記制御装置は前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項37】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結する少なくとも1つの溶離液リザーバーであって、前記1つ以上のクロマトグラフ・エンクロージャから溶出される流体を収容する少なくとも1つの溶離液リザーバーを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項38】
請求項37に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記溶離液リザーバーは前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項39】
請求項37又は38のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記溶離液リザーバーは2つ以上のチャンバーを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項40】
請求項37、38又は39のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記溶離液リザーバーの容量は可変である、クロマトグラフ・システム。
【請求項41】
請求項37、38、39又は40のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記溶離液リザーバーに接続される容量制御機構であって、前記溶離液リザーバーの容量を制御する容量制御機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項42】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記溶離液リザーバー内の液面を検出するセンサーを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項43】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャから排出される流体の物理的特性を測定する少なくとも1つの検出機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項44】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
複数の検出機構を備え、各検出機構は前記クロマトグラフ・エンクロージャから排出される流体の物理的特性を測定し、
前記検出機構の少なくとも1つは前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項45】
請求項44に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記検出機構の少なくとも1つは、レーザー誘起蛍光(LIF:Laser-Induced Fluorescence)検出器、屈折率検出器、紫外(UV:Ultra-Violet)吸光度検出器、可視光(Vis:visible)吸光度検出器、走査UV-Vis検出器、放射化学検出器、電気化学検出器、質量分析検出器、核磁気共鳴検出器及び光散乱検出器からなる群から選択される、クロマトグラフ・システム。
【請求項46】
請求項44又は45のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記検出機構の少なくとも1つは、前記クロマトグラフ・エンクロージャから排出される前記流体の物理的特性に関係する信号を生成し、
前記クロマトグラフ・システムはさらに、前記流体の物理的特性に関係する情報を出力するディスプレイ機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項47】
請求項44、45又は46のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記検出機構に関係するデータを処理するように設計又は構成されているプロセッサを備え、
前記プロセッサは前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項48】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローター上に保持され、少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャから排出された流体を収容するように構成され、フローウィンドウを有するフローセルを備え、
前記クロマトグラフ・エンクロージャと前記フローセルとを通る流路であって、前記クロマトグラフ・エンクロージャの前記クロマトグラフ固定相内の所定位置から始まり前記フローウィンドウを通過する流路の内側断面積が実質的に一定である、クロマトグラフ・システム。
【請求項49】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターを取り囲む格納構造と、
前記格納構造に接続される複数の計器取り付け部であって、前記ローターと一緒に回転しない複数の計器取り付け部と、を備えるクロマトグラフ・システム。
【請求項50】
請求項49に記載のクロマトグラフ・システムであって、
各前記計器取り付け部は、格納式アームにより前記格納容器に取り付けられる、クロマトグラフ・システム。
【請求項51】
請求項49又は50のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
各前記計器取り付け部はさらに、ガスベアリングを備え、前記ガスベアリングは、前記計器取り付け部に近接して前記ローターの回転時に前記ローターを安定化させる、クロマトグラフ・システム。
【請求項52】
請求項49、50又は51のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターに保持され、少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャの少なくとも一部分を通過した流体を収容するように構成され、フローウィンドウを有するフローセルを備え、
各前記計器取り付け部はさらに、光源と光検出機構とを備え、前記光源と前記光検出機構とが、前記ローター上の反対側に配置されて、前記光源が前記光検出機構に向けて光を伝達するように構成され、
前記ローターの回転時に、前記光源と前記光検出機構との間を定期的に前記フローセルが通過することにより、前記光検出機構が前記フローセルを通過する流体の特性を検出する、クロマトグラフ・システム。
【請求項53】
請求項52に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記光検出機構は、光電子増倍管、フォトダイオード、フォトダイオード・アレイ、CCD(電荷結合素子)の1つである、クロマトグラフ・システム。
【請求項54】
請求項52又は53のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローターは、さまざまなクロマトグラフ用カラム・エンクロージャを保持し、各クロマトグラフ用カラム・エンクロージャは、対応するフローセルを有し、前記各クロマトグラフ用カラムに対応する前記フローセルが前記ローターの回転軸から実質的に同じ径方向の距離に配置されていることにより、前記光検出機構が前記ローラーの回転毎に一回前記各フローセルを通過する流体の特性を検出する、クロマトグラフ・システム。
【請求項55】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記クロマトグラフ・エンクロージャと1つ以上の試薬リザーバーとに流体連結する反応チャンバーであって、前記クロマトグラフ・エンクロージャから排出された流体を収容し、1つ以上の試薬と前記流体を反応させる反応チャンバーを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項56】
請求項55に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記反応チャンバーは前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項57】
請求項55又は56のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記反応チャンバーに接続される超音波振動発生装置であって、前記反応チャンバー内の化学反応を促進させる超音波振動発生装置を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項58】
請求項55、56又は57のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記反応チャンバーに接続されるエネルギー源を備え、
前記エネルギー源からエネルギーを前記反応チャンバーに加えることにより、前記反応チャンバー内の化学反応を促進させる、クロマトグラフ・システム。
【請求項59】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターに接続される電源であって、前記ローター上に保持される1つ以上の装置に電力を供給する電源を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項60】
請求項59に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記電源はバッテリーを含む、クロマトグラフ・システム。
【請求項61】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
発電機を備え、
前記発電機は、前記ローター上に保持されている前記発電機の第1部分と、前記ローター外に配置されている前記発電機の第2部分とを備え、前記第1部分と前記第2部分との間の相互作用により、前記ローター上で利用可能な電流が発生する、クロマトグラフ・システム。
【請求項62】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
電気的インターフェースを備え、
前記電気的インターフェースは、前記ローター上に保持されている前記電気的インターフェースの第1部分と、前記ローター外に配置されている前記電気的インターフェースの第2部分とを備え、前記ローターの回転時に、前記第1部分と前記第2部分とが接触して、前記第1部分と前記第2部分との間で電力が伝達される、クロマトグラフ・システム。
【請求項63】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローター上に保持されている通信インターフェースであって、前記ローター上に保持されている第1の装置と前記ローター外に配置されている第2の装置との間で通信を確立する通信インターフェースを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項64】
請求項63に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記通信インターフェースはワイヤレス通信インターフェースである、クロマトグラフ・システム。
【請求項65】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ固定相は、逆相クロマトグラフ処理に対応可能な非極性物質から構成され、
前記移動相流体は、逆相クロマトグラフ処理に対応可能である、クロマトグラフ・システム。
【請求項66】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ・エンクロージャは、その長さに沿って、流体が流れる単一の管路を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項67】
請求項1ないし65のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ・エンクロージャは、その長さに沿って、流体が流れる複数の管路を備え、前記複数の管路の各々は前記クロマトグラフ・エンクロージャを通る別々の流路を提供する、クロマトグラフ・システム。
【請求項68】
請求項66又は67のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
各管路の内面積は、前記長さに沿って一定である、クロマトグラフ・システム。
【請求項69】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ・エンクロージャは、長さ及び内径を有する円筒形カラムを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項70】
請求項69に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記カラムは、長さが10から400cmの範囲であり、内径が0.02から2000mmの範囲である、クロマトグラフ・システム。
【請求項71】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローター上に保持される流路内の前記流体の最大作動圧力は、100PSI未満である、クロマトグラフ・システム。
【請求項72】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ固定相の粒径は、約1ミクロン未満である、クロマトグラフ・システム。
【請求項73】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ固定相の粒径は、約10オングストロームから1ミクロンの範囲である、クロマトグラフ・システム。
【請求項74】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであってはさらに、
前記ローター上に保持されている流路からの流体の漏出を検出するセンサーを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項75】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
少なくとも移動相流体を収容するカバー付き容器を備えるリザーバーであって、回転軸に近接して配置され、前記ローター上に保持され、複数のクロマトグラフ・エンクロージャの各々に流体連結するリザーバーを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項76】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
複数のクロマトグラフ・エンクロージャの2つ以上で、同じクロマトグラフ固定相物質が用いられる、クロマトグラフ・システム。
【請求項77】
請求項1ないし75のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
複数のクロマトグラフ・エンクロージャの2つ以上で、異なるクロマトグラフ固定相物質が用いられる、クロマトグラフ・システム。
【請求項78】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
複数のクロマトグラフ・エンクロージャの2つ以上が共有リザーバーに流体連結し、前記共有リザーバーから移動相流体を受け取る、クロマトグラフ・システム。
【請求項79】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
複数のクロマトグラフ・エンクロージャの2つ以上が共有サンプル導入機構に流体連結し、前記共有サンプル導入機構が、前記2つ以上のクロマトグラフ・エンクロージャの各々に共通のサンプル流体を導入するように構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項80】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1)複数のクロマトグラフ・エンクロージャと、2)混合チャンバーと、を備え、
前記クロマトグラフ・エンクロージャの各々は前記混合チャンバーに流体連結し、前記混合チャンバーは前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項81】
請求項80に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記混合チャンバーは、1つ以上の移動相リザーバーに流体連結し、前記クロマトグラフ・エンクロージャの各々は、前記混合チャンバー内で移動相流体が混合された後に、前記1つ以上の移動相リザーバーに貯蔵されている前記移動相流体を受け取る、クロマトグラフ・システム。
【請求項82】
請求項80又は81のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記混合チャンバーは、前記混合チャンバー内に入る流体を混合する複数の混合ピンを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項83】
請求項80ないし82のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記混合チャンバーは、サンプル導入機構から受け取ったサンプル流体と移動相流体とを混合するように構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項84】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローターは、前記ローターの回転中心軸に実質的に垂直に伸長するディスク部を備え、複数のクロマトグラフ・エンクロージャは前記ディスク部上に保持され、各前記クロマトグラフ・エンクロージャ内で流体が前記回転中心軸から離れるように移動する、クロマトグラフ・システム。
【請求項85】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャと前記ローターとの間に設けられる連結機構であって、前記ローターに対する前記1つ以上のクロマトグラフ・エンクロージャの配置を、前記1つ以上のクロマトグラフ・エンクロージャと前記ローターとが休止状態である第1の位置から前記1つ以上のクロマトグラフ・エンクロージャと前記ローターとが回転している第2の位置に変更する連結機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項86】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローターの回転中に前記ローター上に保持されている1つ以上の流路内の流体が加圧され、前記1つ以上の流路からの前記流体の漏出を防ぐために前記1つ以上の流路を密閉する、クロマトグラフ・システム。
【請求項87】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1)前記ローターから離れた固定第1部分と、2)前記ローター上に保持される第2部分と、を有する流体エンクロージャを備え、
前記第2部分の回転時、前記流体エンクロージャは、前記ローター外から移動相流体又はサンプル流体を受け取り、前記受け取った流体を前記クロマトグラフ・エンクロージャに供給するように構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項88】
請求項87に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記流体エンクロージャの前記固定第1部分に接続される流体管路であって、前記流体エンクロージャに前記流体を供給するように構成されている流体管路を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項89】
請求項87に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記流体エンクロージャの前記固定第1部分に接続される複数の流体管路であって、それぞれが、前記流体エンクロージャに流体を供給するように構成されている複数の流体管路を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項90】
請求項87ないし89のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記流体エンクロージャの前記第2部分は、前記第2部分の回転時に前記流体エンクロージャ内部で流体を混合するように構成されている1つ以上の構造を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項91】
請求項87ないし90のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記流体エンクロージャの前記第1部分はさらに、ガスベアリングを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項92】
請求項91に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記流体エンクロージャの前記第2部分はさらに、前記第2部分の回転時に前記ガスベアリングが載置される表面を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項93】
請求項87ないし92のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローターの回転中に、前記流体エンクロージャの前記第1部分を通って、前記流体エンクロージャの前記第2部分に、前記ローターを安定化させる力が伝達される、クロマトグラフ・システム。
【請求項94】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1)前記ローター上に保持される第1部分と、2)前記ローターから離れた固定第2部分とを有する流出流体エンクロージャを備え、
前記第1部分の回転時、前記流出流体エンクロージャは、前記ローターから流体を受け取り、前記受け取った流体を前記ローター外に供給するように構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項95】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
サンプル流体を放出するように構成されているサンプル導入機構と、
前記サンプル導入機構に接続されている制御装置と、を備え、
前記制御装置は、1)検出機構から信号を受信し、2)前記信号の変化が所定期間にわたって所定の範囲内であることを判定し、3)前記信号が前記所定期間にわたって前記所定の範囲内である場合に、前記サンプル流体を放出する命令を前記サンプル導入機構に対して出すように設計又は構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項96】
請求項95に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記検出機構から受信した前記信号は、前記クロマトグラフ・エンクロージャを通過した前記流体の特性に関連する、クロマトグラフ・システム。
【請求項97】
請求項96に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターの角速度に関連する信号を生成するように構成されている第2の検出機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項98】
請求項97に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記制御装置はさらに、1)前記第2の検出機構から前記角速度に関連する信号を受信し、3)前記検出機構から受信した前記信号と前記第1の検出機構から受信した前記信号がいずれも前記所定期間にわたって前記所定の範囲内である場合に、前記サンプル流体を放出する命令を前記サンプル導入機構に対して出すように設計又は構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項99】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
サンプル流体を放出するように構成されているサンプル導入機構と、
前記サンプル導入機構に接続される制御装置と、を備え、
前記制御装置は、1)前記クロマトグラフ・エンクロージャ内が定常条件に到達したか否かを判定し、2)定常条件に到達したか否かの前記判定に少なくとも部分的に基づいて、前記サンプル流体を放出する命令を前記サンプル導入機構に対して出すように設計又は構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項100】
請求項99に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記制御装置に通信可能に接続される第1の検出機構であって、経時変化する前記クロマトグラフ・システムの動作特性に関連する信号を生成する第1の検出機構を備え、
前記制御装置による定常条件に到達したか否かの前記判定を、前記第1の検出機構から受信した信号に少なくとも部分的に基づいて行なう、クロマトグラフ・システム。
【請求項101】
請求項100に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記動作特性は、前記クロマトグラフ・エンクロージャを通過した前記流体の物理的特性に関連する、クロマトグラフ・システム。
【請求項102】
請求項100に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記動作特性は、前記ローターの角速度に関連する、クロマトグラフ・システム。
【請求項103】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローター上に、加圧された流体を含有する閉鎖流路であって、1)前記流路の入口から前記流体を流入させ、前記軸から離れる方向に前記流体を移動させる第1部分と、2)前記第1部分と流体連結し、前記軸に向かう方向に前記流体を移動させ、前記流路の出口から流出させる第2部分であって、前記出口が前記軸から第1の径方向距離に位置し、前記ローターの回転中に前記軸からの距離が前記第1の径方向距離よりも小さな第2の径方向距離に前記第1部分内の液面が位置する場合に、前記流体が連続的に前記出口から排出される、第2部分と、3)前記流路の前記入口と前記出口との間に配置されている前記クロマトグラフ・エンクロージャと、を有する閉鎖流路を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項104】
請求項103に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記流路は複数の部分を備え、
前記複数の部分の各々は、別々の入口から前記流体を流入させ、前記軸から離れる方向に前記流体を移動させ、
前記第2部分は、前記複数の部分の各々と流体連結する、クロマトグラフ・システム。
【請求項105】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記クロマトグラフ・エンクロージャと流体連結するフローセルを備え、
前記フローセルと前記クロマトグラフ・エンクロージャとの間を接続する流路であって、前記クロマトグラフ・エンクロージャのクロマトグラフ固定相内の所定の位置から始まり、前記クロマトグラフ・エンクロージャを通って前記フローセル内に入り、前記フローセルのフローウィンドウを通過し、前記フローセル内の所定の位置で終了する流路の内面積が一定である、クロマトグラフ・システム。
【請求項106】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記クロマトグラフ・エンクロージャと前記ローターとに接続される耐荷重機構であって、回転時に前記クロマトグラフ・エンクロージャによってフローセル内に伝達される機械的負荷を減少させ、前記機械的負荷を減少させることにより、前記クロマトグラフ・エンクロージャから前記フローセルに伝達される負荷による前記フローセル内のフローセル・ウィンドウの変形を防ぐように構成されている耐荷重機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項107】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローター上に保持される流体管路の一部が可撓性を有する、クロマトグラフ・システム。
【請求項108】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
複数のクロマトグラフ・エンクロージャと、前記複数のクロマトグラフ・エンクロージャと流体連結するリザーバーとは、共通の筺体を共有する、クロマトグラフ・システム。
【請求項109】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローターは、複数の流路に分岐される流路を備え、前記複数の流路の各々は、別々のクロマトグラフ・エンクロージャに流体を供給する、クロマトグラフ・システム。
【請求項110】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローターは、前記クロマトグラフ・エンクロージャの下流側で1つの流路に合流する複数の流路を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項111】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャの方向が、前記回転軸に対して固定されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項112】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャが、径方向に、かつ、前記回転軸に対して垂直に伸長する、クロマトグラフ・システム。
【請求項113】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローター上で前記流体を制御する1つ以上のバルブと、
前記1つ以上のバルブの状態を変化させる1つ以上の電子的に制御可能な作動機構と、を備えるクロマトグラフ・システム。
【請求項114】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記クロマトグラフ・システム内で1つの位置から他の位置に流体を移動させる1つ以上のポンプを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項115】
請求項114に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記1つ以上のポンプは前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項116】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターの角速度を制御する回転管理システムを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項117】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターが回転している間、1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャを識別するインデックス作成システムを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項118】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
2種類以上の異なる流体を含有する移動相流体を提供するグラジエント形成部であって、1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャに供給される前記2種類以上の異なる流体の各々の割合を時間と共に変化させるように構成されているグラジエント形成部を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項119】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャ、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内の流体又はその組み合わせの、少なくとも温度を制御するように構成されている少なくとも1つの環境制御機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項120】
請求項119に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記環境制御機構は前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項121】
請求項119又は120のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記環境制御機構は、温度を目標レベルに維持するように構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項122】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターを取り囲む密封エンクロージャを備え、
前記ローターが回転している間、大気圧未満の圧力を前記密封エンクロージャ内で維持する、クロマトグラフ・システム。
【請求項123】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターに負荷を伝達して、前記ローターが回転している際に前記ローターの回転を安定化させるように構成されているガスベアリングを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項124】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローター上に保持される少なくとも1つ又は複数のバルブを制御する流量管理システムを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項125】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1つ以上の検出機構に接続されるデータ管理システムであって、1)前記1つ以上の検出機構からデータを受信し、2)クロマトグラムを生成し、3)前記1つ以上の検出機構から受信した前記データと前記クロマトグラムを保存するように構成されているデータ管理システムを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項126】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ・エンクロージャは、1)前記流体が前記クロマトグラフ・エンクロージャに入る入口と、2)前記流体が前記クロマトグラフ・エンクロージャから排出される出口と、を備え、
前記入口における流体圧力は、前記出口における流体圧力未満である、クロマトグラフ・システム。
【請求項127】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターと一体に形成されているクロマトグラフ・エンクロージャと流体連結する流路を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項128】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャの温度を制御するように構成されている温度制御機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項129】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
クロマトグラフ処理に対応可能な移動相流体を備え、
前記クロマトグラフ処理は、逆相分配、吸着、陰イオン交換、陽イオン交換、サイズ排除、ゲルろ過、アフィニティー相互作用又はこれらの組み合わせの1つ又は複数を含む、クロマトグラフ・システム。
【請求項130】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
クロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、
前記クロマトグラフ用カラムを通る移動相流体の流れを形成させて、遠心力により前記移動相を前記クロマトグラフ用カラム内に通し、
サンプル流体を前記移動相流体の流れに入れることにより、前記サンプル流体を前記クロマトグラフ用カラム内に導入し、前記ローターの回転時に前記サンプル流体を導入する、方法。
【請求項131】
請求項130に記載の遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法はさらに、
前記サンプル流体の放出を開始させる、方法。
【請求項132】
請求項130又は131のいずれかに記載の方法はさらに、
前記クロマトグラフ用カラム内が移動相流体の定常流条件に到達したか否かを判定し、
前記クロマトグラフ用カラム内が移動相流体の定常流条件に到達したと判定された後に、前記サンプル流体を放出する、方法。
【請求項133】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
クロマトグラフ固定相を含有するクロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、
前記ローターの回転中に、定常移動相流体リザーバーから移動相流体を前記クロマトグラフ用カラムに供給し、
遠心力により、前記固定相を含有する前記クロマトグラフ用カラム内に前記移動相を通す、方法。
【請求項134】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
クロマトグラフ固定相を含有するクロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、
前記ローターの回転中に、定常サンプル流体リザーバーからサンプル流体を前記クロマトグラフ用カラムに供給し、
遠心力により、前記クロマトグラフ固定相を含有する前記クロマトグラフ用カラム内に前記サンプル流体を通す、方法。
【請求項135】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
各々がクロマトグラフ固定相を含有する複数のクロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、
前記クロマトグラフ用カラム内に移動相流体を通し、
前記複数のクロマトグラフ用カラムを通過した流体を、前記ローターにより保持される共通リザーバー内に捕集する、方法。
【請求項136】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
各々がクロマトグラフ固定相を含有する複数のクロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、
前記ローターの回転中に、前記ローターにより保持される混合チャンバー内でサンプルと移動相流体とを混合して、混合サンプルを形成し、
前記混合サンプルの異なる部分を前記混合チャンバーから前記複数のクロマトグラフ用カラムの各々に通すことにより、前記複数のクロマトグラフ用カラムが同様のサンプルを並行して処理する、方法。
【請求項137】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
1)各々クロマトグラフ固定相を含有する複数のクロマトグラフ用カラムと、2)密閉流体リザーバーと、を保持するローターを回転させ、
前記密閉流体リザーバーから前記複数のクロマトグラフ用カラムの各々に流体を供給する、方法。
【請求項138】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
1)各々クロマトグラフ固定相を含有する複数のクロマトグラフ用カラムと、2)フラクション・リザーバーと、を保持するローターを回転させ、
前記クロマトグラフ・カラム内に移動相流体を通し、
少なくとも1つの前記クロマトグラフ用カラムを通過した流体のフラクションを前記フラクション・リザーバーに捕集する、方法。
【請求項139】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
複数の非回転検出器を準備し、
1)各々クロマトグラフ固定相を含有する複数のクロマトグラフ用カラムと、2)複数のフローセルであって、前記フローセルの各々が各カラムの端部に近接して配置されていることにより、前記クロマトグラフ用カラムの1つから排出される流体を受け取る複数のフローセルと、を保持するローターを回転させ、
前記複数の非回転検出器の各々に関して、前記ローターの回転毎に一回、前記複数のフローセルの各々における前記流体の物理的特性を検出する、方法。
【請求項140】
請求項139に記載の遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法はさらに、
前記非回転検出器の一部だけを作動させる、方法。
【請求項141】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
各々クロマトグラフ固定相を含有する複数のクロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、
連続的に前記ローターを回転させる間に、少なくとも2つの異なるサンプルを少なくとも1つの前記クロマトグラフ用カラムに通し、前記サンプルの各々が異なる時間に導入される、方法。
【請求項142】
請求項141に記載の遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
第1のサンプルの導入と第2のサンプルの導入との間に、10から20カラム容量の流体を前記1つのクロマトグラフ用カラムに通す、方法。
【請求項143】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
各々クロマトグラフ固定相を含有する複数のクロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、
前記ローターを1つ以上のガスベアリングで安定化させる、方法。
【請求項144】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記移動相流体の組成を時間と共に変化させることにより、前記クロマトグラフ用カラム内に勾配溶離を生じさせる、方法。
【請求項145】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記クロマトグラフ用カラムから排出される流体の物理的特性の経時変化に基づいて、定常条件に到達したか否かを判定する、方法。
【請求項146】
請求項145に記載の方法であって、
前記クロマトグラフ用カラムの出口に近接するフローセルを用いて、前記物理的特性を測定する、方法。
【請求項147】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記ローターの角速度の経時変化に基づいて、定常条件に到達したか否かを判定する、方法。
【請求項148】
前記いずれかの請求項に記載の方法であって、
サンプル流体を貯蔵するためのサンプル・リザーバーが前記ローター上に保持されている、方法。
【請求項149】
前記いずれかの請求項に記載の方法であって、
移動相流体を貯蔵するための移動相流体リザーバーが前記ローター上に保持されている、方法。
【請求項150】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記ローター上に保持される密閉式混合チャンバー内で移動相流体サンプル流体とを混合する、方法。
【請求項151】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記ローターの回転中に、定常移動相リザーバーから前記ローターに移動相流体を供給する、方法。
【請求項152】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記ローターの回転中に、定常サンプル流体リザーバーから前記ローターにサンプル流体を供給する、方法。
【請求項153】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記ローターの回転中に、前記クロマトグラフ・エンクロージャから溶出された流体を格納構造に貯蔵する、方法。
【請求項154】
請求項153に記載の方法であって、
前記格納構造は前記ローター上に保持されている、方法。
【請求項155】
請求項153又は154のいずれかに記載の方法であって、
前記クロマトグラフ用カラムから溶出された前記流体は、前記サンプル流体から分離されたフラクションを含む、方法。
【請求項156】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
1つ以上の検出機構からデータを受信し、
2)クロマトグラムを生成し、
3)前記1つ以上の検出機構から受信した前記データと前記クロマトグラムとを保存する、方法。
【請求項157】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記ローター上に保持される1つ以上のバルブの作動状態を変化させて、前記ローター上の流路の変化に影響を与える、方法。
【請求項158】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
サンプル導入機構に命令を送信し、前記命令の受信に応じて、前記サンプル導入機構がクロマトグラフ用カラムに移動するサンプル流体を放出する、方法。
【請求項159】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記クロマトグラフ・エンクロージャの1つの温度を制御する、方法。
【請求項1】
遠心式カラムクロマトグラフ・システムであって、
軸の周りを回転するように構成されているローターと、
前記ローターに保持されている複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャであって、各クロマトグラフ用カラム・エンクロージャは対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ用カラム・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記クロマトグラフ用カラム・エンクロージャの軸方向に前記クロマトグラフ固定相の中を前記流体を移動させる、複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャと、
前記複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャのうちの少なくとも選択された1つに流体連結するサンプル導入機構であって、前記ローターが回転している間に、前記選択されたクロマトグラフ用カラム・エンクロージャにサンプル流体を導入するサンプル導入機構と、
前記ローターに保持され、前記複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャに流体連結する溶離液リザーバーであって、前記複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャから溶出される流体を収容する溶離液リザーバーと、を備える遠心式カラムクロマトグラフ・システム。
【請求項2】
遠心式クロマトグラフ・システムであって、
軸の周りを回転するように構成されているローターと、
前記ローターに保持されている複数のクロマトグラフ・エンクロージャであって、各クロマトグラフ・エンクロージャは、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記クロマトグラフ固定相の中を前記流体を移動させる、複数のクロマトグラフ・エンクロージャと、
前記ローターに保持され、前記複数のクロマトグラフ・エンクロージャに流体連結する溶離液リザーバーであって、前記複数のクロマトグラフ・エンクロージャから溶出される流体を収容する溶離液リザーバーと、を備える遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項3】
遠心式クロマトグラフ・システムであって、
軸の周りを回転するように構成されているローターと、
前記ローターに保持されている少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャと、
前記ローターに保持され、移動相流体を前記ローター上のサンプルと混合して混合流体を生成する混合チャンバーであって、前記ローターに保持される構成要素の回転を利用して前記サンプルと前記移動相流体との混合を促進し、前記クロマトグラフ・エンクロージャの上流側に配置される混合チャンバーと、を備える遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項4】
請求項3に記載の遠心式クロマトグラフ・システムはさらに、
前記混合チャンバーに流体連結する移動相流体リザーバーと、
前記混合チャンバーに流体連結するサンプル導入機構と、を備え、
前記移動相流体リザーバーと前記サンプル導入機構とが、前記ローター上又は前記ローター外のいずれかに配置されている、遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項5】
遠心式クロマトグラフ・システムであって、
クロマトグラフ・エンクロージャと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャを保持し、前記クロマトグラフ・エンクロージャを回転させるローターと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結するサンプル導入機構であって、前記ローターが回転している間に前記クロマトグラフ・エンクロージャにサンプル流体を導入するように構成され、サンプル導入信号を受信し、前記サンプル導入信号の受信に応じて前記サンプル流体の導入を開始するサンプル導入機構と、を備える遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項6】
クロマトグラフ・システムであって、
クロマトグラフ・エンクロージャと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャを保持し、前記クロマトグラフ・エンクロージャを回転させるローターと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結するサンプル導入機構であって、前記ローターが回転している間に前記クロマトグラフ・エンクロージャにサンプル流体を導入するサンプル導入機構と、
前記サンプル導入機構に接続され、前記サンプル流体の導入を自動的に開始する制御装置と、を備えるクロマトグラフ・システム。
【請求項7】
請求項6に記載の遠心式クロマトグラフ・システムであって、
前記制御装置は、前記遠心式クロマトグラフ・システムに関連する検知状態に少なくとも部分的に基づいて、前記サンプル流体の導入を開始する、遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項8】
クロマトグラフ・システムであって、
対応するクロマトグラフ固定相を含有するクロマトグラフ・エンクロージャであって、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成されているクロマトグラフ・エンクロージャと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャを保持するローターであって、所定の角速度で前記クロマトグラフ・エンクロージャを回転させて、遠心力により流体を前記クロマトグラフ固定相を含む前記クロマトグラフ・エンクロージャ内で移動させるように構成されているローターと、
流体エンクロージャであって、前記ローター回転時に静止している第1の部分と、前記ローター上に保持され、前記ローターと共に回転する第2の部分とを有し、前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結する流体エンクロージャと、を備えるクロマトグラフ・システム。
【請求項9】
請求項8に記載の遠心式クロマトグラフ・システムであって、
前記流体エンクロージャは、前記ローター上の前記クロマトグラフ・エンクロージャに供給するための移動相流体を保持するように構成されている移動相流体リザーバーである、遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項10】
請求項8に記載の遠心式クロマトグラフ・システムであって、
前記流体エンクロージャは、前記ローター上の前記クロマトグラフ・エンクロージャ内を通った溶離液を収容するように構成されている溶離液リザーバーである、遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項11】
遠心式クロマトグラフ・システムであって、
少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャを保持するローターであって、前記クロマトグラフ・エンクロージャを回転させて、遠心力により前記液体を少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャ内で移動させるように構成されているローターと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結し、前記クロマトグラフ・エンクロージャへの移動相流体の供給を容易にする流体供給機構であって、前記ローター回転時に静止している第1の部分と、前記ローター上に保持され、前記ローターと共に回転する第2の部分とを備え、前記ローター回転時に、前記流体供給機構の前記第1の部分から前記第2の部分に流体を移動させるように構成されている流体供給機構と、を備える遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項12】
遠心式クロマトグラフ・システムであって、
軸の周りを回転するように構成されているローターと、
前記ローター上に保持されていうクロマトグラフ・エンクロージャであって、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記流体を前記クロマトグラフ固定相の中で移動させる、クロマトグラフ・エンクロージャと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結し、フローウィンドウを備えるフローセルとを備え、前記クロマトグラフ・エンクロージャと前記フローセルとを通る流路であって、前記クロマトグラフ・エンクロージャの前記クロマトグラフ固定相内の所定位置から始まり前記フローウィンドウを通過する流路の内側断面積が実質的に一定である、遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項13】
クロマトグラフ・システムに用いるのに適したフローセルであって、
フローセル入口と、フローセル出口と、前記フローセル入口と前記フローセル出口との間に伸長する流路と、
前記流路に沿って形成され、前記フローセルを通る物質の光学的検知を可能にするウィンドウと、を備え、
前記入口の断面寸法と前記ウィンドウの断面寸法とが異なり、
前記入口の断面積、前記ウィンドウの断面積、及び前記入口と前記ウィンドウとの間の領域の断面積が、前記流路に沿って実質的に一定である、フローセル。
【請求項14】
請求項13に記載のフローセルであって、
前記流路の断面積が、前記フローセル入口から前記フローセル出口までの前記フローセル全体にわたって実質的に一定である、フローセル。
【請求項15】
クロマトグラフ・システムであって、
クロマトグラフ固定相を含有するクロマトグラフ用カラムと、
請求項13に記載のフローセルと、を備え、
前記フローセルが前記クロマトグラフ用カラムの下流側に配置され、
前記クロマトグラフ用カラムの断面寸法及び断面積とが、フローセル入口の断面寸法及び断面積と実質的に同じである、クロマトグラフ・システム。
【請求項16】
請求項15に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ用カラムがローター上に保持され、前記ローターは、遠心力を与えて、前記固定相を介して移動相を移動させる、クロマトグラフ・システム。
【請求項17】
遠心式カラムクロマトグラフ・システムであって、
軸の周りを回転するように構成されているローターと、
前記ローター上に保持されている複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャであって、各クロマトグラフ用カラム・エンクロージャが、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ用カラム・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記流体を前記クロマトグラフ固定相の中で移動させる、複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャと、
少なくとも移動相流体を収容するカバー付き容器を備えるリザーバーであって、回転軸に近接して配置され、前記ローター上に保持され、前記複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャの各々に流体連結するリザーバーと、を備える遠心式カラムクロマトグラフ・システム。
【請求項18】
クロマトグラフ・システムであって、
軸の周りを回転するように構成されているローターと、
前記ローターに保持されているクロマトグラフ・エンクロージャであって、前記軸から第1の距離に位置する第1端と、前記軸から前記第1の距離より大きな第2の距離に位置する第2端と、を備えるクロマトグラフ・エンクロージャと、
前記ローター上に保持されている前記第2端に近接して配置されるクロマトグラフ・エンクロージャに流体連結するフローセルと、
前記クロマトグラフ・エンクロージャと前記ローターとに接続されている耐荷重機構であって、回転時に前記クロマトグラフ・エンクロージャによって前記フローセル内に伝達される機械的負荷を減少させ、前記機械的負荷を減少させることにより前記フローセル内のフローセル・ウィンドウの変形を防ぐように構成されている耐荷重機構と、を備えるクロマトグラフ・システム。
【請求項19】
クロマトグラフ・システムであって、
軸の周りを回転するように構成されているローターと、
前記ローターに保持されているクロマトグラフ・エンクロージャと、
前記ローターを取り囲む格納構造と、
前記格納構造により支持されている複数のローター支持構造とを備え、各ローター支持構造はガスベアリングを備え、前記ガスベアリングは協働して、前記ローターの回転時に前記ローターを安定化させる、クロマトグラフ・システム。
【請求項20】
請求項19に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローター支持構造の少なくとも一部は計器取り付け部として機能し、各計器取り付け部は前記クロマトグラフ・エンクロージャから排出されて、前記クロマトグラフ・エンクロージャの下流側に配置されているフローセルを通過する流体の特性を検出するのに適した対応する計器を支持するように構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項21】
遠心式クロマトグラフ・システムであって、
ローターであって、前記ローターに保持されているクロマトグラフ・エンクロージャを備えるローターと、
前記ローターに近接するガスベアリングであって、前記ローターの回転時に前記ローターを安定化させるように構成されているガスベアリングと、を備える遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項22】
請求項21に記載の遠心式クロマトグラフ・システムであって、
前記ガスベアリングは、前記ローターと共に回転しない、遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項23】
請求項21に記載の遠心式クロマトグラフ・システムはさらに、
前記ガスベアリングに流体連結するガスリザーバーであって、前記ガスベアリングから放出されるガスを供給するガスリザーバーを備える、遠心式クロマトグラフ・システム。
【請求項24】
クロマトグラフ・システムであって、
ローター上に保持されている複数のクロマトグラフ・エンクロージャであって、各クロマトグラフ・エンクロージャは、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記流体を前記クロマトグラフ固定相の中を前記ローターの外周面に向かって移動させる、複数のクロマトグラフ・エンクロージャと、
前記ローターの前記外周面の周りに配置されている複数のリンクであって、各リンクが2つの他のリンクと連結して、前記ローターの前記外周面の周りに連続した鎖の輪を形成し、1つ以上の前記リンクは、1)前記外周面に向かって移動する流体を収容し、及び、2)前記外周面から離れて内側に流体の方向を変える、ように構成されている流路を備える複数のリンクと、を備えるクロマトグラフ・システム。
【請求項25】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローターは複数のクロマトグラフ用カラム・エンクロージャを保持する、クロマトグラフ・システム。
【請求項26】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
各クロマトグラフ・エンクロージャは、対応するクロマトグラフ固定相を含有し、かつ、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内に含有される前記クロマトグラフ固定相を通る流体の移動を容易にするように構成され、前記ローターの回転によって生じる遠心力により前記流体を前記クロマトグラフ固定相の中で移動させる、クロマトグラフ・システム。
【請求項27】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターに角速度を与えるローター駆動システムを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項28】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ・エンクロージャは前記ローターと一体に形成される、クロマトグラフ・システム。
【請求項29】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
各クロマトグラフ・エンクロージャは、前記クロマトグラフ固定相を含有する少なくとも1つの中空内側部分を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項30】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結する少なくとも1つの移動相流体リザーバーを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項31】
請求項30に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記少なくとも1つの移動相流体流体リザーバーは前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項32】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結する少なくとも1つのサンプル導入機構であって、前記ローターの回転時に、前記クロマトグラフ・エンクロージャにサンプル流体を導入するように構成されている少なくとも1つのサンプル導入機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項33】
請求項32に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記サンプル導入機構は、前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項34】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記クロマトグラフ・エンクロージャ内へのサンプル流体の導入を自動的に開始するように構成されている制御装置を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項35】
請求項34に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記制御装置は、前記ローターに保持される流体の状態を検出して、前記ローターにより保持される流体の検出された状態に少なくとも部分的に基づいて、前記ローターの回転中のいずれの時点でサンプル流体を導入するべきかを決定する、クロマトグラフ・システム。
【請求項36】
請求項35に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記制御装置は前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項37】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャに流体連結する少なくとも1つの溶離液リザーバーであって、前記1つ以上のクロマトグラフ・エンクロージャから溶出される流体を収容する少なくとも1つの溶離液リザーバーを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項38】
請求項37に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記溶離液リザーバーは前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項39】
請求項37又は38のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記溶離液リザーバーは2つ以上のチャンバーを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項40】
請求項37、38又は39のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記溶離液リザーバーの容量は可変である、クロマトグラフ・システム。
【請求項41】
請求項37、38、39又は40のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記溶離液リザーバーに接続される容量制御機構であって、前記溶離液リザーバーの容量を制御する容量制御機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項42】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記溶離液リザーバー内の液面を検出するセンサーを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項43】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャから排出される流体の物理的特性を測定する少なくとも1つの検出機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項44】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
複数の検出機構を備え、各検出機構は前記クロマトグラフ・エンクロージャから排出される流体の物理的特性を測定し、
前記検出機構の少なくとも1つは前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項45】
請求項44に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記検出機構の少なくとも1つは、レーザー誘起蛍光(LIF:Laser-Induced Fluorescence)検出器、屈折率検出器、紫外(UV:Ultra-Violet)吸光度検出器、可視光(Vis:visible)吸光度検出器、走査UV-Vis検出器、放射化学検出器、電気化学検出器、質量分析検出器、核磁気共鳴検出器及び光散乱検出器からなる群から選択される、クロマトグラフ・システム。
【請求項46】
請求項44又は45のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記検出機構の少なくとも1つは、前記クロマトグラフ・エンクロージャから排出される前記流体の物理的特性に関係する信号を生成し、
前記クロマトグラフ・システムはさらに、前記流体の物理的特性に関係する情報を出力するディスプレイ機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項47】
請求項44、45又は46のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記検出機構に関係するデータを処理するように設計又は構成されているプロセッサを備え、
前記プロセッサは前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項48】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローター上に保持され、少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャから排出された流体を収容するように構成され、フローウィンドウを有するフローセルを備え、
前記クロマトグラフ・エンクロージャと前記フローセルとを通る流路であって、前記クロマトグラフ・エンクロージャの前記クロマトグラフ固定相内の所定位置から始まり前記フローウィンドウを通過する流路の内側断面積が実質的に一定である、クロマトグラフ・システム。
【請求項49】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターを取り囲む格納構造と、
前記格納構造に接続される複数の計器取り付け部であって、前記ローターと一緒に回転しない複数の計器取り付け部と、を備えるクロマトグラフ・システム。
【請求項50】
請求項49に記載のクロマトグラフ・システムであって、
各前記計器取り付け部は、格納式アームにより前記格納容器に取り付けられる、クロマトグラフ・システム。
【請求項51】
請求項49又は50のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
各前記計器取り付け部はさらに、ガスベアリングを備え、前記ガスベアリングは、前記計器取り付け部に近接して前記ローターの回転時に前記ローターを安定化させる、クロマトグラフ・システム。
【請求項52】
請求項49、50又は51のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターに保持され、少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャの少なくとも一部分を通過した流体を収容するように構成され、フローウィンドウを有するフローセルを備え、
各前記計器取り付け部はさらに、光源と光検出機構とを備え、前記光源と前記光検出機構とが、前記ローター上の反対側に配置されて、前記光源が前記光検出機構に向けて光を伝達するように構成され、
前記ローターの回転時に、前記光源と前記光検出機構との間を定期的に前記フローセルが通過することにより、前記光検出機構が前記フローセルを通過する流体の特性を検出する、クロマトグラフ・システム。
【請求項53】
請求項52に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記光検出機構は、光電子増倍管、フォトダイオード、フォトダイオード・アレイ、CCD(電荷結合素子)の1つである、クロマトグラフ・システム。
【請求項54】
請求項52又は53のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローターは、さまざまなクロマトグラフ用カラム・エンクロージャを保持し、各クロマトグラフ用カラム・エンクロージャは、対応するフローセルを有し、前記各クロマトグラフ用カラムに対応する前記フローセルが前記ローターの回転軸から実質的に同じ径方向の距離に配置されていることにより、前記光検出機構が前記ローラーの回転毎に一回前記各フローセルを通過する流体の特性を検出する、クロマトグラフ・システム。
【請求項55】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記クロマトグラフ・エンクロージャと1つ以上の試薬リザーバーとに流体連結する反応チャンバーであって、前記クロマトグラフ・エンクロージャから排出された流体を収容し、1つ以上の試薬と前記流体を反応させる反応チャンバーを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項56】
請求項55に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記反応チャンバーは前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項57】
請求項55又は56のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記反応チャンバーに接続される超音波振動発生装置であって、前記反応チャンバー内の化学反応を促進させる超音波振動発生装置を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項58】
請求項55、56又は57のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記反応チャンバーに接続されるエネルギー源を備え、
前記エネルギー源からエネルギーを前記反応チャンバーに加えることにより、前記反応チャンバー内の化学反応を促進させる、クロマトグラフ・システム。
【請求項59】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターに接続される電源であって、前記ローター上に保持される1つ以上の装置に電力を供給する電源を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項60】
請求項59に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記電源はバッテリーを含む、クロマトグラフ・システム。
【請求項61】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
発電機を備え、
前記発電機は、前記ローター上に保持されている前記発電機の第1部分と、前記ローター外に配置されている前記発電機の第2部分とを備え、前記第1部分と前記第2部分との間の相互作用により、前記ローター上で利用可能な電流が発生する、クロマトグラフ・システム。
【請求項62】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
電気的インターフェースを備え、
前記電気的インターフェースは、前記ローター上に保持されている前記電気的インターフェースの第1部分と、前記ローター外に配置されている前記電気的インターフェースの第2部分とを備え、前記ローターの回転時に、前記第1部分と前記第2部分とが接触して、前記第1部分と前記第2部分との間で電力が伝達される、クロマトグラフ・システム。
【請求項63】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローター上に保持されている通信インターフェースであって、前記ローター上に保持されている第1の装置と前記ローター外に配置されている第2の装置との間で通信を確立する通信インターフェースを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項64】
請求項63に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記通信インターフェースはワイヤレス通信インターフェースである、クロマトグラフ・システム。
【請求項65】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ固定相は、逆相クロマトグラフ処理に対応可能な非極性物質から構成され、
前記移動相流体は、逆相クロマトグラフ処理に対応可能である、クロマトグラフ・システム。
【請求項66】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ・エンクロージャは、その長さに沿って、流体が流れる単一の管路を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項67】
請求項1ないし65のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ・エンクロージャは、その長さに沿って、流体が流れる複数の管路を備え、前記複数の管路の各々は前記クロマトグラフ・エンクロージャを通る別々の流路を提供する、クロマトグラフ・システム。
【請求項68】
請求項66又は67のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
各管路の内面積は、前記長さに沿って一定である、クロマトグラフ・システム。
【請求項69】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ・エンクロージャは、長さ及び内径を有する円筒形カラムを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項70】
請求項69に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記カラムは、長さが10から400cmの範囲であり、内径が0.02から2000mmの範囲である、クロマトグラフ・システム。
【請求項71】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローター上に保持される流路内の前記流体の最大作動圧力は、100PSI未満である、クロマトグラフ・システム。
【請求項72】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ固定相の粒径は、約1ミクロン未満である、クロマトグラフ・システム。
【請求項73】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ固定相の粒径は、約10オングストロームから1ミクロンの範囲である、クロマトグラフ・システム。
【請求項74】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであってはさらに、
前記ローター上に保持されている流路からの流体の漏出を検出するセンサーを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項75】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
少なくとも移動相流体を収容するカバー付き容器を備えるリザーバーであって、回転軸に近接して配置され、前記ローター上に保持され、複数のクロマトグラフ・エンクロージャの各々に流体連結するリザーバーを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項76】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
複数のクロマトグラフ・エンクロージャの2つ以上で、同じクロマトグラフ固定相物質が用いられる、クロマトグラフ・システム。
【請求項77】
請求項1ないし75のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
複数のクロマトグラフ・エンクロージャの2つ以上で、異なるクロマトグラフ固定相物質が用いられる、クロマトグラフ・システム。
【請求項78】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
複数のクロマトグラフ・エンクロージャの2つ以上が共有リザーバーに流体連結し、前記共有リザーバーから移動相流体を受け取る、クロマトグラフ・システム。
【請求項79】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
複数のクロマトグラフ・エンクロージャの2つ以上が共有サンプル導入機構に流体連結し、前記共有サンプル導入機構が、前記2つ以上のクロマトグラフ・エンクロージャの各々に共通のサンプル流体を導入するように構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項80】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1)複数のクロマトグラフ・エンクロージャと、2)混合チャンバーと、を備え、
前記クロマトグラフ・エンクロージャの各々は前記混合チャンバーに流体連結し、前記混合チャンバーは前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項81】
請求項80に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記混合チャンバーは、1つ以上の移動相リザーバーに流体連結し、前記クロマトグラフ・エンクロージャの各々は、前記混合チャンバー内で移動相流体が混合された後に、前記1つ以上の移動相リザーバーに貯蔵されている前記移動相流体を受け取る、クロマトグラフ・システム。
【請求項82】
請求項80又は81のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記混合チャンバーは、前記混合チャンバー内に入る流体を混合する複数の混合ピンを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項83】
請求項80ないし82のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記混合チャンバーは、サンプル導入機構から受け取ったサンプル流体と移動相流体とを混合するように構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項84】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローターは、前記ローターの回転中心軸に実質的に垂直に伸長するディスク部を備え、複数のクロマトグラフ・エンクロージャは前記ディスク部上に保持され、各前記クロマトグラフ・エンクロージャ内で流体が前記回転中心軸から離れるように移動する、クロマトグラフ・システム。
【請求項85】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャと前記ローターとの間に設けられる連結機構であって、前記ローターに対する前記1つ以上のクロマトグラフ・エンクロージャの配置を、前記1つ以上のクロマトグラフ・エンクロージャと前記ローターとが休止状態である第1の位置から前記1つ以上のクロマトグラフ・エンクロージャと前記ローターとが回転している第2の位置に変更する連結機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項86】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローターの回転中に前記ローター上に保持されている1つ以上の流路内の流体が加圧され、前記1つ以上の流路からの前記流体の漏出を防ぐために前記1つ以上の流路を密閉する、クロマトグラフ・システム。
【請求項87】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1)前記ローターから離れた固定第1部分と、2)前記ローター上に保持される第2部分と、を有する流体エンクロージャを備え、
前記第2部分の回転時、前記流体エンクロージャは、前記ローター外から移動相流体又はサンプル流体を受け取り、前記受け取った流体を前記クロマトグラフ・エンクロージャに供給するように構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項88】
請求項87に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記流体エンクロージャの前記固定第1部分に接続される流体管路であって、前記流体エンクロージャに前記流体を供給するように構成されている流体管路を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項89】
請求項87に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記流体エンクロージャの前記固定第1部分に接続される複数の流体管路であって、それぞれが、前記流体エンクロージャに流体を供給するように構成されている複数の流体管路を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項90】
請求項87ないし89のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記流体エンクロージャの前記第2部分は、前記第2部分の回転時に前記流体エンクロージャ内部で流体を混合するように構成されている1つ以上の構造を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項91】
請求項87ないし90のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記流体エンクロージャの前記第1部分はさらに、ガスベアリングを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項92】
請求項91に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記流体エンクロージャの前記第2部分はさらに、前記第2部分の回転時に前記ガスベアリングが載置される表面を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項93】
請求項87ないし92のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローターの回転中に、前記流体エンクロージャの前記第1部分を通って、前記流体エンクロージャの前記第2部分に、前記ローターを安定化させる力が伝達される、クロマトグラフ・システム。
【請求項94】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1)前記ローター上に保持される第1部分と、2)前記ローターから離れた固定第2部分とを有する流出流体エンクロージャを備え、
前記第1部分の回転時、前記流出流体エンクロージャは、前記ローターから流体を受け取り、前記受け取った流体を前記ローター外に供給するように構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項95】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
サンプル流体を放出するように構成されているサンプル導入機構と、
前記サンプル導入機構に接続されている制御装置と、を備え、
前記制御装置は、1)検出機構から信号を受信し、2)前記信号の変化が所定期間にわたって所定の範囲内であることを判定し、3)前記信号が前記所定期間にわたって前記所定の範囲内である場合に、前記サンプル流体を放出する命令を前記サンプル導入機構に対して出すように設計又は構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項96】
請求項95に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記検出機構から受信した前記信号は、前記クロマトグラフ・エンクロージャを通過した前記流体の特性に関連する、クロマトグラフ・システム。
【請求項97】
請求項96に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターの角速度に関連する信号を生成するように構成されている第2の検出機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項98】
請求項97に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記制御装置はさらに、1)前記第2の検出機構から前記角速度に関連する信号を受信し、3)前記検出機構から受信した前記信号と前記第1の検出機構から受信した前記信号がいずれも前記所定期間にわたって前記所定の範囲内である場合に、前記サンプル流体を放出する命令を前記サンプル導入機構に対して出すように設計又は構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項99】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
サンプル流体を放出するように構成されているサンプル導入機構と、
前記サンプル導入機構に接続される制御装置と、を備え、
前記制御装置は、1)前記クロマトグラフ・エンクロージャ内が定常条件に到達したか否かを判定し、2)定常条件に到達したか否かの前記判定に少なくとも部分的に基づいて、前記サンプル流体を放出する命令を前記サンプル導入機構に対して出すように設計又は構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項100】
請求項99に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記制御装置に通信可能に接続される第1の検出機構であって、経時変化する前記クロマトグラフ・システムの動作特性に関連する信号を生成する第1の検出機構を備え、
前記制御装置による定常条件に到達したか否かの前記判定を、前記第1の検出機構から受信した信号に少なくとも部分的に基づいて行なう、クロマトグラフ・システム。
【請求項101】
請求項100に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記動作特性は、前記クロマトグラフ・エンクロージャを通過した前記流体の物理的特性に関連する、クロマトグラフ・システム。
【請求項102】
請求項100に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記動作特性は、前記ローターの角速度に関連する、クロマトグラフ・システム。
【請求項103】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローター上に、加圧された流体を含有する閉鎖流路であって、1)前記流路の入口から前記流体を流入させ、前記軸から離れる方向に前記流体を移動させる第1部分と、2)前記第1部分と流体連結し、前記軸に向かう方向に前記流体を移動させ、前記流路の出口から流出させる第2部分であって、前記出口が前記軸から第1の径方向距離に位置し、前記ローターの回転中に前記軸からの距離が前記第1の径方向距離よりも小さな第2の径方向距離に前記第1部分内の液面が位置する場合に、前記流体が連続的に前記出口から排出される、第2部分と、3)前記流路の前記入口と前記出口との間に配置されている前記クロマトグラフ・エンクロージャと、を有する閉鎖流路を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項104】
請求項103に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記流路は複数の部分を備え、
前記複数の部分の各々は、別々の入口から前記流体を流入させ、前記軸から離れる方向に前記流体を移動させ、
前記第2部分は、前記複数の部分の各々と流体連結する、クロマトグラフ・システム。
【請求項105】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記クロマトグラフ・エンクロージャと流体連結するフローセルを備え、
前記フローセルと前記クロマトグラフ・エンクロージャとの間を接続する流路であって、前記クロマトグラフ・エンクロージャのクロマトグラフ固定相内の所定の位置から始まり、前記クロマトグラフ・エンクロージャを通って前記フローセル内に入り、前記フローセルのフローウィンドウを通過し、前記フローセル内の所定の位置で終了する流路の内面積が一定である、クロマトグラフ・システム。
【請求項106】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記クロマトグラフ・エンクロージャと前記ローターとに接続される耐荷重機構であって、回転時に前記クロマトグラフ・エンクロージャによってフローセル内に伝達される機械的負荷を減少させ、前記機械的負荷を減少させることにより、前記クロマトグラフ・エンクロージャから前記フローセルに伝達される負荷による前記フローセル内のフローセル・ウィンドウの変形を防ぐように構成されている耐荷重機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項107】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローター上に保持される流体管路の一部が可撓性を有する、クロマトグラフ・システム。
【請求項108】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
複数のクロマトグラフ・エンクロージャと、前記複数のクロマトグラフ・エンクロージャと流体連結するリザーバーとは、共通の筺体を共有する、クロマトグラフ・システム。
【請求項109】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローターは、複数の流路に分岐される流路を備え、前記複数の流路の各々は、別々のクロマトグラフ・エンクロージャに流体を供給する、クロマトグラフ・システム。
【請求項110】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記ローターは、前記クロマトグラフ・エンクロージャの下流側で1つの流路に合流する複数の流路を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項111】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャの方向が、前記回転軸に対して固定されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項112】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャが、径方向に、かつ、前記回転軸に対して垂直に伸長する、クロマトグラフ・システム。
【請求項113】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローター上で前記流体を制御する1つ以上のバルブと、
前記1つ以上のバルブの状態を変化させる1つ以上の電子的に制御可能な作動機構と、を備えるクロマトグラフ・システム。
【請求項114】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記クロマトグラフ・システム内で1つの位置から他の位置に流体を移動させる1つ以上のポンプを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項115】
請求項114に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記1つ以上のポンプは前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項116】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターの角速度を制御する回転管理システムを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項117】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターが回転している間、1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャを識別するインデックス作成システムを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項118】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
2種類以上の異なる流体を含有する移動相流体を提供するグラジエント形成部であって、1つ以上の前記クロマトグラフ・エンクロージャに供給される前記2種類以上の異なる流体の各々の割合を時間と共に変化させるように構成されているグラジエント形成部を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項119】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャ、前記クロマトグラフ・エンクロージャ内の流体又はその組み合わせの、少なくとも温度を制御するように構成されている少なくとも1つの環境制御機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項120】
請求項119に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記環境制御機構は前記ローター上に保持されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項121】
請求項119又は120のいずれかに記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記環境制御機構は、温度を目標レベルに維持するように構成されている、クロマトグラフ・システム。
【請求項122】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターを取り囲む密封エンクロージャを備え、
前記ローターが回転している間、大気圧未満の圧力を前記密封エンクロージャ内で維持する、クロマトグラフ・システム。
【請求項123】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターに負荷を伝達して、前記ローターが回転している際に前記ローターの回転を安定化させるように構成されているガスベアリングを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項124】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローター上に保持される少なくとも1つ又は複数のバルブを制御する流量管理システムを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項125】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
1つ以上の検出機構に接続されるデータ管理システムであって、1)前記1つ以上の検出機構からデータを受信し、2)クロマトグラムを生成し、3)前記1つ以上の検出機構から受信した前記データと前記クロマトグラムを保存するように構成されているデータ管理システムを備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項126】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムであって、
前記クロマトグラフ・エンクロージャは、1)前記流体が前記クロマトグラフ・エンクロージャに入る入口と、2)前記流体が前記クロマトグラフ・エンクロージャから排出される出口と、を備え、
前記入口における流体圧力は、前記出口における流体圧力未満である、クロマトグラフ・システム。
【請求項127】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
前記ローターと一体に形成されているクロマトグラフ・エンクロージャと流体連結する流路を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項128】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
少なくとも1つのクロマトグラフ・エンクロージャの温度を制御するように構成されている温度制御機構を備える、クロマトグラフ・システム。
【請求項129】
前記いずれかの請求項に記載のクロマトグラフ・システムはさらに、
クロマトグラフ処理に対応可能な移動相流体を備え、
前記クロマトグラフ処理は、逆相分配、吸着、陰イオン交換、陽イオン交換、サイズ排除、ゲルろ過、アフィニティー相互作用又はこれらの組み合わせの1つ又は複数を含む、クロマトグラフ・システム。
【請求項130】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
クロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、
前記クロマトグラフ用カラムを通る移動相流体の流れを形成させて、遠心力により前記移動相を前記クロマトグラフ用カラム内に通し、
サンプル流体を前記移動相流体の流れに入れることにより、前記サンプル流体を前記クロマトグラフ用カラム内に導入し、前記ローターの回転時に前記サンプル流体を導入する、方法。
【請求項131】
請求項130に記載の遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法はさらに、
前記サンプル流体の放出を開始させる、方法。
【請求項132】
請求項130又は131のいずれかに記載の方法はさらに、
前記クロマトグラフ用カラム内が移動相流体の定常流条件に到達したか否かを判定し、
前記クロマトグラフ用カラム内が移動相流体の定常流条件に到達したと判定された後に、前記サンプル流体を放出する、方法。
【請求項133】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
クロマトグラフ固定相を含有するクロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、
前記ローターの回転中に、定常移動相流体リザーバーから移動相流体を前記クロマトグラフ用カラムに供給し、
遠心力により、前記固定相を含有する前記クロマトグラフ用カラム内に前記移動相を通す、方法。
【請求項134】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
クロマトグラフ固定相を含有するクロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、
前記ローターの回転中に、定常サンプル流体リザーバーからサンプル流体を前記クロマトグラフ用カラムに供給し、
遠心力により、前記クロマトグラフ固定相を含有する前記クロマトグラフ用カラム内に前記サンプル流体を通す、方法。
【請求項135】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
各々がクロマトグラフ固定相を含有する複数のクロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、
前記クロマトグラフ用カラム内に移動相流体を通し、
前記複数のクロマトグラフ用カラムを通過した流体を、前記ローターにより保持される共通リザーバー内に捕集する、方法。
【請求項136】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
各々がクロマトグラフ固定相を含有する複数のクロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、
前記ローターの回転中に、前記ローターにより保持される混合チャンバー内でサンプルと移動相流体とを混合して、混合サンプルを形成し、
前記混合サンプルの異なる部分を前記混合チャンバーから前記複数のクロマトグラフ用カラムの各々に通すことにより、前記複数のクロマトグラフ用カラムが同様のサンプルを並行して処理する、方法。
【請求項137】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
1)各々クロマトグラフ固定相を含有する複数のクロマトグラフ用カラムと、2)密閉流体リザーバーと、を保持するローターを回転させ、
前記密閉流体リザーバーから前記複数のクロマトグラフ用カラムの各々に流体を供給する、方法。
【請求項138】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
1)各々クロマトグラフ固定相を含有する複数のクロマトグラフ用カラムと、2)フラクション・リザーバーと、を保持するローターを回転させ、
前記クロマトグラフ・カラム内に移動相流体を通し、
少なくとも1つの前記クロマトグラフ用カラムを通過した流体のフラクションを前記フラクション・リザーバーに捕集する、方法。
【請求項139】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
複数の非回転検出器を準備し、
1)各々クロマトグラフ固定相を含有する複数のクロマトグラフ用カラムと、2)複数のフローセルであって、前記フローセルの各々が各カラムの端部に近接して配置されていることにより、前記クロマトグラフ用カラムの1つから排出される流体を受け取る複数のフローセルと、を保持するローターを回転させ、
前記複数の非回転検出器の各々に関して、前記ローターの回転毎に一回、前記複数のフローセルの各々における前記流体の物理的特性を検出する、方法。
【請求項140】
請求項139に記載の遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法はさらに、
前記非回転検出器の一部だけを作動させる、方法。
【請求項141】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
各々クロマトグラフ固定相を含有する複数のクロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、
連続的に前記ローターを回転させる間に、少なくとも2つの異なるサンプルを少なくとも1つの前記クロマトグラフ用カラムに通し、前記サンプルの各々が異なる時間に導入される、方法。
【請求項142】
請求項141に記載の遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
第1のサンプルの導入と第2のサンプルの導入との間に、10から20カラム容量の流体を前記1つのクロマトグラフ用カラムに通す、方法。
【請求項143】
遠心式クロマトグラフ・システムを操作する方法であって、
各々クロマトグラフ固定相を含有する複数のクロマトグラフ用カラムを保持するローターを回転させ、
前記ローターを1つ以上のガスベアリングで安定化させる、方法。
【請求項144】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記移動相流体の組成を時間と共に変化させることにより、前記クロマトグラフ用カラム内に勾配溶離を生じさせる、方法。
【請求項145】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記クロマトグラフ用カラムから排出される流体の物理的特性の経時変化に基づいて、定常条件に到達したか否かを判定する、方法。
【請求項146】
請求項145に記載の方法であって、
前記クロマトグラフ用カラムの出口に近接するフローセルを用いて、前記物理的特性を測定する、方法。
【請求項147】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記ローターの角速度の経時変化に基づいて、定常条件に到達したか否かを判定する、方法。
【請求項148】
前記いずれかの請求項に記載の方法であって、
サンプル流体を貯蔵するためのサンプル・リザーバーが前記ローター上に保持されている、方法。
【請求項149】
前記いずれかの請求項に記載の方法であって、
移動相流体を貯蔵するための移動相流体リザーバーが前記ローター上に保持されている、方法。
【請求項150】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記ローター上に保持される密閉式混合チャンバー内で移動相流体サンプル流体とを混合する、方法。
【請求項151】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記ローターの回転中に、定常移動相リザーバーから前記ローターに移動相流体を供給する、方法。
【請求項152】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記ローターの回転中に、定常サンプル流体リザーバーから前記ローターにサンプル流体を供給する、方法。
【請求項153】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記ローターの回転中に、前記クロマトグラフ・エンクロージャから溶出された流体を格納構造に貯蔵する、方法。
【請求項154】
請求項153に記載の方法であって、
前記格納構造は前記ローター上に保持されている、方法。
【請求項155】
請求項153又は154のいずれかに記載の方法であって、
前記クロマトグラフ用カラムから溶出された前記流体は、前記サンプル流体から分離されたフラクションを含む、方法。
【請求項156】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
1つ以上の検出機構からデータを受信し、
2)クロマトグラムを生成し、
3)前記1つ以上の検出機構から受信した前記データと前記クロマトグラムとを保存する、方法。
【請求項157】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記ローター上に保持される1つ以上のバルブの作動状態を変化させて、前記ローター上の流路の変化に影響を与える、方法。
【請求項158】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
サンプル導入機構に命令を送信し、前記命令の受信に応じて、前記サンプル導入機構がクロマトグラフ用カラムに移動するサンプル流体を放出する、方法。
【請求項159】
前記いずれかの請求項に記載の方法はさらに、
前記クロマトグラフ・エンクロージャの1つの温度を制御する、方法。
【図1】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図12】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図12】
【公表番号】特表2012−520467(P2012−520467A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554238(P2011−554238)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/027179
【国際公開番号】WO2010/105185
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(511222032)テラセプ・リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】TERRASEP,LLC
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/027179
【国際公開番号】WO2010/105185
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(511222032)テラセプ・リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】TERRASEP,LLC
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