説明

遠心液―液分配クロマトグラフ装置及びリサイクル方法

【課題】
本発明の目的は、従来のHPLCやCPCによっては十分に分離されなかった試料を精度良く分離させ、且つ高い回収率を得ることを目的とする。
【解決手段】
CPC装置に、分配セル積層ローターを通過させた移動相を循環させる機構を設け、移動相を繰返し分配セル積層ローターに通過させることにより、優れた分解能を発揮させ、且つ高い回収率を発揮させる。また、循環流路には、流路長を切換える側路を備えて、リサイクル運転時のピークの接近を防ぎつつ、試料の拡散も抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心液−液分配クロマトグラフィー(以下、CPCとも表記する。)に用いられる遠心液−液分配クロマトグラフ装置(以下、CPC装置とも表記する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
CPCは、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCとも表記する。)と比較して、一般に多量の試料を分離することができ、しかも貴重な試料を収率良く回収することができるため、有機物の単離精製や分析化学の分野において用いられている。
【0003】
CPCは、二層系における各成分の分配係数の差を利用して分離する。このうち、一方の液層を固定相として直列に連結した多数の分配セルに予め充填しておき、他方の液層は移動相として各分配セル内を移動させる。1000〜2000個の分配セルは直列に接続されて分配セル積層ローターが構成される。分配セル積層ローターは高速回転されるため、充填された固定相は遠心力によって分配セル内に保持される。試料は分配セル積層ローターの外部に設置される試料導入装置から最初の分配セルに導入される。試料は移動相によって、固定相と分配を繰返しながら、順次分配セル内を最後のセル方向に移動する。移動相は送液ポンプ等により分配セル積層ローター内の各分配セルに送液される。移動相は、分配セル内において試料が保持される固定相の中を、細かな液滴となって流れる。この際、分配係数の小さい成分は、分配係数の大きい成分よりも固定相に保持される割合が小さいので、分配係数の小さい成分は早く溶出する。その後も各成分は移動相へ順次溶出する。試料中の各成分は、成分毎に分配係数が異なるため、溶出速度に差が生じ、各成分が分離される。
【0004】
図10は、従来のCPCを示す説明図である。
【0005】
図10中、402は移動相貯槽であり、内部の移動相401は、配管403を経由して送液ポンプ407により吸引される。移動相401は、送液ポンプ407によって試料導入装置409に送られる。試料導入装置409から導入される試料は、移動相401と共に配管413を経由して分配セル積層ローター415に送られる。分配セル積層ローター415に組込まれている各分配セルには、予め固定相が充填されている。移動相401と試料とは分配セル内に導入され、試料は固定相に保持される。その後も移動相401は供給され続ける。分配セル内では、試料中の各成分は、移動相と固定相との分配係数の差に起因して各成分が異なる速度で各分配セルから溶出される。各成分が分配される移動相401は分配セル積層ローターを出た後、配管417を経て検出器419に送られる。検出器によって検出される各成分を含む移動相401は配管425を経て回収液427が回収槽426に回収される。この回収液は廃液とされる、または、不図示のフラクションコレクター等により保持時間毎に溶出成分が収集される。
【0006】
しかし、分配セル積層ローター415の分配セル数は1000〜2000程度であり、分配係数の近い成分が含まれる試料は、分配セル積層ローター415を一回通過させただけでは各成分が十分に分離されない場合がある。これを解消するため、複数の分配セル積層ローターを直列に複数接続することが考えられる。しかし、分配セル積層ローターが複数必要となり、CPC装置が複雑かつ高価格になる。また、分配セル積層ローター内の分配セル数を増やすことも考えられるが、分配セル積層ローターが高価格になりやすい。
【0007】
特許文献1には、分離カラムで分離された試料を再度同一の分離カラムへ再循環させる液体クロマトグラフィーにおいて、それぞれ分離カラムを有する二つの流路と、前記流路の連結と切り離しを行う二つの流路切換バルブとを備え、リサイクル分離時において、前記流路切換バルブの切換えによって、二つの分離カラム間における試料の再導入の導入方向を切換えることを特徴とする液体クロマトグラフィーについて記載されている。かかる方法によれば、極少量の試料の場合には、送液ポンプ等の分離カラム外での拡散を減少させて、試料の分離精度、分解能が改善されることが期待される。しかし、HPLCは本来多量の試料の分取には適していない。従って、多量の試料の分取を目的としてリサイクルHPLCを採用すること自体が無意味なことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−201039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来のCPCやリサイクル型HPLCによっては十分に分離されなかった多量の試料を精度良く分離させる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記問題を解消するため鋭意検討した結果、分配セル積層ローターを通過させた移動相を、繰返し分配セル積層ローターに通過させる方法を見出した(以下、リサイクル運転ともいう)。しかし、試料を用いてリサイクル運転を繰返し行っていくと、試料中の各成分は互いに分離していくが、早く溶出する成分が、1回前のサイクルで分離している遅く溶出する成分に追いつくことが起き、折角分離した成分同士が混合する。そこで、本発明者は、リサイクル運転時の閉流路において、その流路長を長くする側路を設けることにより、多量の試料であっても、精度良く分離されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載のものである。
〔1〕移動相通過管の一端側から他端側に向かって順次前段流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターと、検出器と、後段流路切換えバルブとを介装すると共に、
前記前段流路切換えバルブと後段流路切換えバルブとの間にリサイクル管を接続してなり、前記前段流路切換えバルブと後段流路切換えバルブとを切換えることにより、前段流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターと、検出器と、後段流路切換えバルブと、リサイクル管とを循環する閉流路に切換えるように構成し、
前記閉流路内に、所定の内容積を有する側路を流路切換えバルブを介して備えてなることを特徴とする遠心液―液分配クロマトグラフ装置。
〔2〕移動相通過管の一端側から他端側に向かって順次流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターと、検出器と、前記流路切換えバルブとを介装すると共に、
前記流路切換えバルブを切換えることにより、前記流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターと、検出器とを循環する閉流路に切換えるように構成し、
前記閉流路内に、所定の内容積を有する側路を流路切換えバルブを介して備えてなることを特徴とする遠心液―液分配クロマトグラフ装置。
〔3〕移動相通過管の一端側から他端側に向かって順次前段流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターと、後段流路切換えバルブと、検出器とを介装すると共に、
前記前段流路切換えバルブと後段流路切換えバルブとの間にリサイクル管を接続してなり、前記前段流路切換えバルブと後段流路切換えバルブとを切換えることにより、前段流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターと、後段流路切換えバルブと、リサイクル管とを循環する閉流路に切換えるように構成し、
前記閉流路内に、所定の内容積を有する側路を流路切換えバルブを介して備えてなることを特徴とする遠心液―液分配クロマトグラフ装置。
〔4〕移動相通過管の一端側から他端側に向かって順次流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターと、前記流路切換えバルブと、検出器とを介装すると共に、
前記流路切換えバルブを切換えることにより、前記流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターとを循環する閉流路に切換えるように構成し、
前記閉流路内に、所定の内容積を有する側路を流路切換えバルブを介して備えてなることを特徴とする遠心液―液分配クロマトグラフ装置。
〔5〕分配セル積層ローターに流れる移動相の送液方向を逆転させるバルブを設けた〔1〕〜〔4〕に記載の遠心液―液分配クロマトグラフ装置。
〔6〕〔1〕〜〔5〕に記載の遠心液―液分配クロマトグラフ装置を用いてリサイクル運転を行う方法であって、閉流路をリサイクル運転して試料を各成分に分離していき、検出器が検出するクロマトグラムにおける前サイクルの成分ピーク群が、次サイクルの成分ピーク群に接近したときに、流路を側路に切換えてリサイクル運転を続けることを特徴とするリサイクル方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のCPC装置を用いれば、従来分離できなかった試料を精度良く分離させることが出来る。また、多量の試料であっても分離させることが出来る。更には、リサイクル運転による試料の拡散が小さい。そのため、様々な物質の分離、精製に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のCPCの一例を示す、通常運転時の流路を示す説明図である。
【図2】本発明のCPCの一例を示す、リサイクル運転時の流路を示す説明図である。
【図3】本発明のCPCの一例を示す、側路を用いるリサイクル運転時の流路を示す説明図である。
【図4】本発明のCPCの他の例を示す、通常運転時の流路を示す説明図である。
【図5】本発明のCPCの他の例を示す、リサイクル運転時の流路を示す説明図である。
【図6】本発明のCPCの他の例を示す、下降法の流路を示す説明図である。
【図7】本発明のCPCの他の例を示す、上昇法の流路を示す説明図である。
【図8】本発明のCPCによる通常のリサイクル運転時の分析結果の一例を示すクロマトグラムである。
【図9】本発明のCPCによる側路を用いるリサイクル運転時の分析結果の一例を示すクロマトグラムである。
【図10】従来のCPCの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明のCPCの一例を示す説明図である。
図1中、2は移動相貯槽であり、内部の移動相1は、配管3を経由して送液ポンプ7により吸引される。移動相貯槽2と送液ポンプ7との経路には前段流路切換えバルブ4が介装されている。このとき、流路切換えバルブはポート4aとポート4bとが流通可能となっており、バルブ4と後述するバルブ30とを接続するリサイクル管32への流通は遮断されている。移動相1は、送液ポンプ7によって試料導入装置9に送られる。試料導入装置9から導入される試料は、移動相1と共に配管13、バルブ15、配管17、バルブ21を介して分配セル積層ローター23に送られる。この際、バルブ15、21の流路は矢印c方向、即ち配管17へ流通可能となっており、矢印d方向、即ち配管19への流通は遮断されている。分配セル積層ローター23に組込まれている各分配セルには、予め固定相が充填されている。移動相1と試料とは分配セル内に導入され、試料は固定相に保持される。その後も移動相1は供給され続ける。分配セル内では、試料中の各成分は、移動相と固定相との分配係数の差に起因して各成分が異なる速度で各分配セル中の固定相から溶出される。各成分が分配される移動相1は分配セル積層ローター23を出た後、配管25を経て検出器27に送られる。検出器27と回収槽33との経路には後段流路切換えバルブ30が介装されている。検出器27によって検出される各成分を含む移動相1は配管31を経て回収液35が回収槽33に回収される。この回収液は廃液とされる、または、不図示のフラクションコレクター等により保持時間毎に収集される。この際、流路切換えバルブ30は30aと30bとが流通して、リサイクル管32への流通は遮断されている。
【0016】
一方、各成分の分離が不十分で再び分配を繰返す場合(リサイクル運転)は、図2に示すように後段流路切換えバルブ30を切換えて、移動相の配管31への流通を遮断させて、リサイクル管32へと流通させる。また、同時に前段流路切換えバルブ4も切換えて、リサイクル管32と配管6とを流通可能とさせる。本図においては、後段流路切換えバルブ30はポート30cとポート30aとが流通可能となるように切換える。また、前段流路切換えバルブ4はポート4cとポート4aとが流通可能とするように切換える。これにより、前段流路切換えバルブ4と、送液ポンプ7と、試料導入装置9と、配管17と、分配セル積層ローター23と、検出器27と、後段流路切換えバルブ30と、リサイクル管32とを循環する閉流路が構成される。
【0017】
未分離の試料と移動相は、この閉流路を循環させて、分配セルにおいて分配が繰返される(リサイクル運転)。各成分の分離が十分になされたら、再び前段流路切換えバルブ4および後段流路切換えバルブ30を切換えて、図1の流路に復帰させる。その後、各成分を含む移動相1は、配管31を経て回収液35が回収槽33に回収される。
【0018】
しかし、リサイクル運転を繰返し行っていると、試料がこの閉流路内で徐々に拡散していく。その結果、クロマトグラムにおけるピークは幅広となる。さらに、試料中の前サイクルの保持時間の長い成分に次サイクルの保持時間の短い成分が追いつき、これらのピークが接近してきて、分離が不十分になる場合がある。図8はこの状況を示したクロマトグラムである。このクロマトグラムによれば、保持時間220分以降の部分においては、前サイクルの保持時間の長い成分に次サイクルの保持時間の短い成分が追いつき、これらのピークが重なり始めている。かかる不都合を解消するために、閉流路の流路長を予め長くしておき、次サイクルのピークの接近を防ぐことが考えられる。しかし、閉流路でのピークの拡散は流路内容積が大きいほど生じやすいため、かかる方法によっても試料の分離は達成されない。そこで、リサイクル時当初の閉流路の流路長を短くして閉流路内容積を小さくすることによりピークの拡散を少なく保っておき、ピークの重なりが生じる直前に閉流路の流路長を長く切換えることで、ピークの接近を防ぐこととした。図9はこの状況を示したクロマトグラムである。このクロマトグラムによれば、保持時間220分の時点で後述するように流路長を長くすることにより、保持時間230分以降の部分においては、前サイクルの保持時間の長い成分と次サイクルの保持時間の短い成分とのピークの重なりが起きていない。よって、精度の良い分離が可能となっている。
【0019】
かかる流路長の切換えは、閉流路内でのリサイクル運転時において、閉流路内に設置されるバルブにより、流路長の長い側路へ移動相の流通を切換えることにより行う。図2は通常のリサイクル運転時の構成を示す説明図であり、図3は流路長を長くした際のリサイクル運転時の構成を示す説明図である。通常のリサイクル運転時においては、図2に示すように試料導入装置9を出た移動相1は、配管17を経由して分配セル積層ローター23に送液される。ここで、リサイクル運転が繰返され、前サイクルの保持時間の長い成分と次サイクルの保持時間の短い成分とのピークが接近してきたら、図3に示すようにバルブ15、21を切換えて、配管17とは流路長の異なる配管19へと送液する。これにより、前サイクルの保持時間の長い成分と次サイクルの保持時間の短い成分とのピークの接近が解消され、精度の高い分離が達成される。
【0020】
図4は、本発明のCPCの他の一例を示す説明図である。
図4には、図1の前段流路切換えバルブ4と後段流路切換えバルブ30とリサイクル管32とに替えて、流路切換えバルブ5が介装されている。その他の構成は同様である。この流路切換えバルブ5は、4以上のポートを持つバルブである。
【0021】
図4はリサイクル運転をしない場合のCPC構成を示す説明図である。
この場合は流路切換えバルブ5は、ポート5aとポート5bとが、ポート5cとポート5dとがそれぞれ流通可能となっている。図5はリサイクル運転時のCPC構成を示す説明図である。リサイクル運転時には、流路切換えバルブ5は、ポート5cとポート5bとが流通可能となっている。
【0022】
この方法によれば、リサイクル運転終了後の流路の洗浄が、リサイクル管を用いる図1の場合よりも容易となる点で有利である。
【0023】
図6は、本発明のCPCの他の一例を示す説明図である。
図6には、図4の構成に加えて、分配セル積層ローター23の手前に流路切換えバルブ11が介装されている。その他の構成は同様である。この流路切換えバルブ11は、分配セル積層ローター23に流れる移動相の送液方向を逆転させるバルブである。図6では移動相は矢印aの方向に移動し、分配セル積層ローター23を出た後、再び流路切換えバルブ11に戻り、検出器27へと送られる(下降法)。図7では、流路切換えバルブ11が切換えられて、移動相は矢印bの方向に移動し、分配セル積層ローター23を出た後、再び流路切換えバルブ11に戻り、検出器27へと送られる(上昇法)。流路の逆転は成分を反転溶出させる場合に行われる。また、使用する移動相と固定相との比重に応じて上昇法と下降法とが選択される。
【0024】
図1〜3において検出器27は、後段流路切換えバルブ30と分配セル積層ローター23との経路に介装しているが、後段流路切換えバルブ30と回収槽33との経路に介装してもよい。同様に図4、5において検出器27は、流路切換えバルブ5と分配セル積層ローター23との経路に介装しているが、流路切換えバルブ5と回収槽33との経路に介装してもよい。
【0025】
側路19は、前述した閉流路内であればいずれの場所に設置しても構わないが、検出器への負荷を避けるためには検出器よりも手前に設置することが好ましい。また、側路19は複数箇所に設置しても構わない。側路19は長さの異なる複数を設けても良い。
【0026】
側路19は、その容積に応じて、得られるクロマトグラムにおける前サイクルの成分ピーク群と次サイクルの成分ピーク群との間隔を変更させる。例えば、ポンプ7の送液量が5mL/min.の場合において、50mLの内容積を有する側路19を装着すると、前サイクルの成分ピーク群と次サイクルの成分ピーク群との間隔は10分間拡がる。側路19の内容積は、成分ピーク群を拡げる間隔に応じて適宜選択する。
【0027】
また、通常はCPC装置を構成する配管(図1における配管3、6、13、17、25、29、31、32)と同一の径のものが用いられる。ピークの拡散を防止するためである。側路19はどの様な形状であっても良いが、設置スペースを小さくすることが出来るため、ループ形状のものが好ましい。
【0028】
図1〜3においては側路19に流路を切換える流路切換えバルブは、3のポートを有するバルブ15と21との2つを用いているが、例えば、試料導入装置に使用される4以上のポートを有する1つのバルブを用いても良い。
【0029】
側路19は、試料が試料導入装置9に導入される前に、予め移動相1で満たしておくことが好ましい。
【0030】
本発明において、移動相供給部や流路切換えバルブ、送液ポンプ、試料導入装置、分配セル積層ローター、検出器はいずれも公知のものを用いて構成することが出来る。送液ポンプは試料の拡散を小さくするためには、ポンプヘッドの容積が小さいものほど好ましい(例えば100μL以下)。また、CPC装置にはガス除去装置や保温装置などの公知の機器を接続することを妨げない。
【実施例】
【0031】
以下、本発明によるCPCによる試料の分離結果を説明する。
【0032】
送液ポンプ:SSC―3465(株式会社センシュー科学製)、検出器:SSC―5410(株式会社センシュー科学製、波長254nm)、試料導入装置:レオダイン7125i(RHEODYNE社製)、分配セル積層ローター:CPC240(株式会社センシュー科学製)を用いて図1の装置を構成した。側路は1mm×50m、内容積39mLのループ形状ものを図1と同様に取付けた。
【0033】
この装置を用いて、移動相としてアセトニトリル、固定相としてヘキサンを用いて、2成分含有試料の分離を行った。分配セル積層ローターの回転数は1400rpmとし、温度は室温(25℃)とした。移動相の流速は5mL/min.とし、圧力は5.5MPaとなった。
【0034】
図8は側路を介さずにリサイクル運転をした場合における試料の検出結果を示すクロマトグラムである。リサイクル回数1回目ではピークは1本であるが、リサイクル回数4回目辺りからピークの分裂が確認できる。リサイクル回数18回(時間240〜250分辺り)以降は各成分のピークが重なってしまい、各成分が分取出来なくなっている。図9は時間205分で閉流路を側路を介するように切換えた場合の試料の検出結果を示すクロマトグラムである。その結果、220分以降の試料ピークの間隔が広がり、各成分が分取しやすくなった。
【符号の説明】
【0035】
100・・・本発明のCPC装置の一例
200・・・本発明のCPC装置の他の一例
300・・・本発明のCPC装置の他の一例
1・・・移動相
2・・・移動相貯槽
3、6、13、17、25、29、31・・・配管
4・・・前段流路切換えバルブ
4a、4b、4c・・・バルブのポート
5・・・流路切換えバルブ
5a、5b、5c・・・バルブのポート
7・・・送液ポンプ
9・・・試料導入装置
11・・・流路切換えバルブ
15・・・流路切換えバルブ
19・・・側路
21・・・流路切換えバルブ
23・・・分配セル積層ローター
27・・・検出器
30・・・後段流路切換えバルブ
30a、30b、30c・・・バルブのポート
32・・・リサイクル管
33・・・回収槽
35・・・回収された試料と移動相
400・・・従来のCPC装置
401・・・移動相
402・・・移動相貯槽
403、413、417、425・・・配管
407・・・送液ポンプ
409・・・試料導入装置
415・・・分配セル積層ローター
419・・・検出器
426・・・回収槽
427・・・回収された試料と移動相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動相通過管の一端側から他端側に向かって順次前段流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターと、検出器と、後段流路切換えバルブとを介装すると共に、
前記前段流路切換えバルブと後段流路切換えバルブとの間にリサイクル管を接続してなり、前記前段流路切換えバルブと後段流路切換えバルブとを切換えることにより、前段流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターと、検出器と、後段流路切換えバルブと、リサイクル管とを循環する閉流路に切換えるように構成し、
前記閉流路内に、所定の内容積を有する側路を流路切換えバルブを介して備えてなることを特徴とする遠心液―液分配クロマトグラフ装置。
【請求項2】
移動相通過管の一端側から他端側に向かって順次流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターと、検出器と、前記流路切換えバルブとを介装すると共に、
前記流路切換えバルブを切換えることにより、前記流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターと、検出器とを循環する閉流路に切換えるように構成し、
前記閉流路内に、所定の内容積を有する側路を流路切換えバルブを介して備えてなることを特徴とする遠心液―液分配クロマトグラフ装置。
【請求項3】
移動相通過管の一端側から他端側に向かって順次前段流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターと、後段流路切換えバルブと、検出器とを介装すると共に、
前記前段流路切換えバルブと後段流路切換えバルブとの間にリサイクル管を接続してなり、前記前段流路切換えバルブと後段流路切換えバルブとを切換えることにより、前段流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターと、後段流路切換えバルブと、リサイクル管とを循環する閉流路に切換えるように構成し、
前記閉流路内に、所定の内容積を有する側路を流路切換えバルブを介して備えてなることを特徴とする遠心液―液分配クロマトグラフ装置。
【請求項4】
移動相通過管の一端側から他端側に向かって順次流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターと、前記流路切換えバルブと、検出器とを介装すると共に、
前記流路切換えバルブを切換えることにより、前記流路切換えバルブと、送液ポンプと、試料導入装置と、分配セル積層ローターとを循環する閉流路に切換えるように構成し、
前記閉流路内に、所定の内容積を有する側路を流路切換えバルブを介して備えてなることを特徴とする遠心液―液分配クロマトグラフ装置。
【請求項5】
分配セル積層ローターに流れる移動相の送液方向を逆転させるバルブを設けた請求項1〜4に記載の遠心液―液分配クロマトグラフ装置。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の遠心液―液分配クロマトグラフ装置を用いてリサイクル運転を行う方法であって、閉流路をリサイクル運転して試料を各成分に分離していき、検出器が検出するクロマトグラムにおける前サイクルの成分ピーク群が、次サイクルの成分ピーク群に接近したときに、流路を側路に切換えてリサイクル運転を続けることを特徴とするリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−249588(P2010−249588A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97584(P2009−97584)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(307024705)株式会社 センシュー科学 (5)