説明

適応バルクバイアス電力管理を備える補聴器

電池駆動型補聴器のデジタル処理コア(12)用電力管理システム(1)は特定の高効率のやり方で補聴器回路に電力を供給する。電力管理システム(1)は第1の線形電圧レギュレータ(25,26,28),スイッチトキャパシタ2:1SCコンバータ(21)と直列の第2の線形電圧レギュレータ(25,27),Pバルクバイアス電圧供給部(10),およびNバルクバイアス電圧供給部(11)を備え,コア(12)が上記電力管理システム(1)によって提供される低減電圧において動作するときに,スイッチング速度,閾値電圧およびデジタル処理コア(12)の半導体素子(13,14)からの電流リークを制御する。電力管理システム(1)は既存補聴器と比べて補聴器回路の上記デジタル処理コア(12)が消費する電力の50%〜70%を削減でき,電池寿命を延ばすことができる。この発明はさらにデジタル補聴器に供給電圧を提供する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は補聴器に関する。より詳細には,スイッチモード電力コンバータを備える電池駆動の補聴器に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の開示において補聴器とは人の聴覚損失を軽減する電子機器である。補聴器は耳の中または耳の後ろに装着するために十分に小さいものであり,一または複数のマイクロフォンを用いて周囲からの音をピックアップし,この音を補聴器設定にしたがって電気的に増幅する。現代の補聴器はデジタル信号処理にかなり依存しており,補聴器マイクロフォンからの電気信号は補聴器内にあるデジタル信号処理装置によってデジタル信号に変換され,増幅信号のデジタル表現が補聴器の出力トランスデューサの駆動に適する電気信号に変換されて戻され(converted back),上記トランスデューサは上記電気信号を補聴器ユーザが知覚可能な音波に変換する。
【0003】
補聴器において音信号のデジタル処理を実行する補聴器部分(以下デジタル処理コアと呼ぶ)が,現代の補聴器における全電力のかなりの部分,すなわち利用可能電力合計の最大50%以上を消費しており,これは主として回路の複雑さ(circuit complexity)の増加に起因している。この複雑さは機能数の増大の結果であって,さらに各世代の補聴器において実行するように設計される,より進化したデジタル処理(more advanced digital processing)の結果である。
【0004】
複雑さの増大に対する解決策の一部は,これまでは超小型電子チップ(microelectronic chip)技術のスケール減少であった。現在の設計では130ナノメートル以下ないしそれもよりも小さいサブミクロン・チップ製造プロセスが利用されている。より小型の技術スケールは電力消費の明白な減少を意味するにとどまらず大規模かつより複雑な回路の実装を可能にするが,そうするとさらに多くの電力を消費する。サブミクロン・プロセスの導入以前ではMOSトランジスタの閾値電圧Vは上記プロセス・スケールとともに減少していた。しかしながら,サブミクロン・プロセスでは,この技術におけるリーク電流の増加のためにこのことは当てはまらない。すなわちサブミクロン・プロセス技術は比較的高いVを持ちかつ比較的低速である。
【0005】
近年,特別なlow-V(低V)MOS技術(special low-Vt MOS technologies)がチップ設計者に利用可能となった。Low-V MOSトランジスタは高速動作が可能であり,high-V(高 V)MOSトランジスタを用いてチップ設計を自由にミックスすることができる。High-VMOSトランジスタはlow-Vトランジスタよりもかなり低速で,その動作にはより高い供給電圧を必要とし,典型的には低電力アプリケーション用に用いられており,他方において上記low-Vトランジスタは低い供給電圧で動作可能であるが上記high-Vトランジスタよりも大きな電流リークを持つ。
【0006】
補聴器に用いられる電池は通常は亜鉛空気のものであり,1.6ボルト(新品のとき)から約1.0ボルト(ほぼ使い切ったとき)の範囲の標準電圧を有しており,公称電圧は1.2ボルトである。Low Vを持つMOSトランジスタが用いられる場合,このトランジスタは非常に低い電圧たとえば約500mVで動作させることができるが,トランジスタからの電流リークがかなり高く,利得は低くなる。このような低電圧トランジスタはまた減速性能(a reduced speed capability)を持つ。
【0007】
500mVの電圧で回路を動作させることによって実質的な電力量を節約することができ,low-Vトランジスタは,500mVにおいて,700mVで動作するhigh-Vトランジスタと同じスピードで動作するが,かなりの量の電力を節約すべきである場合には電流リークの問題および利得の問題を解決しなければならない。超小型電子回路の電力消費は供給電圧の2乗に比例する。供給電圧が700mVから500mVに低められると,この動作からもたらされる電力消費の低減は約50%となる。
【0008】
Low-Vトランジスタに適切な低供給電圧を提供する実際的な方法は,low-V MOSトランジスタが必要とする500mVに電圧を低めるスイッチトキャパシタ電圧コンバータを使用することである。2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータ(2:1 switched-capacitor voltage converter)は実装が特に簡単で,回路チップ上のスペースをほとんどとらない。スイッチトキャパシタ電圧コンバータそれ自身は大きな電力を消費せず,非常に安定した電圧低減を提供しかつ最適な電力転送構成をもつものであって,2:1電圧コンバータは,電池寿命のほとんどの間,500mVでデジタル処理コアを駆動することができるように1.2ボルトの電池に必要なヘッドルーム(headroom)(余裕)を提供する。
【0009】
2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータは出力電圧の2倍の安定した入力電圧を必要とし,したがって電池電圧が安定状態でこの電圧を提供するのに十分に高ければ,スイッチトキャパシタ電圧コンバータは補聴器回路に十分な電力を供給することができる。電池から上記スイッチトキャパシタ電圧コンバータに与えることができる線形電圧レギュレータを,電池電圧が変化する場合であっても安定した基準電圧を供給するために設けることができる。
【0010】
MOSトランジスタ回路に低電圧を給電することは,トランジスタがそのVの近くで動作することを意味し,これはある装置から他の装置への様々なトランジスタ・パラメータの統計的拡散の高い増加(a high increase in the statistical spread)という結果をもたらす。本質的に,半導体素子の物理的な大きさの減少によって,サブミクロン・プロセスは広範なパラメータ拡散(a greater parameter spread)をもたらすが,その効果は低電圧での動作時にはさらに大きくなる。
【0011】
トランジスタ・パラメータの一つは駆動強度ないし利得(the drive strength or gain)であり,すなわち信号を増幅する半導体素子の能力,またはデジタル回路において電圧がMOSトランジスタ・ゲートにかかっている(present)ときに電流引込みをスタートする能力(the ability to start drawing current)である。駆動強度の拡散(spread)が大きすぎると実際上の回路の振舞いが設計詳細から大きく外れることがあり,一の回路から次の回路へのパラメータの大きな変動は,単一ウェハから産出される有用なダイを許容できないほど低い割合に低減させ,大幅に生産コストを増加させることがある。特に,個々のトランジスタのタイミング定数(the timing constants)を決定するパラメータは重要である。したがって,有効かつシンプルなやり方で低電圧MOSトランジスタ回路中の拡散パラメータを低減できるようにすることが有益である。
【0012】
高Vを持つMOSトランジスタが用いられる場合,低電圧におけるそれらのスイッチング周波数に限界がある。これは使用可能なクロック周波数,すなわちこの技術を使用して設計された補聴器によって実行可能な信号処理の複雑さを制限する。拡散および電流リークを低減するために,500mVでも作動する高Vトランジスタのバルク電位(the bulk voltage potential)を調整することができるが,安定動作を妥協するというリスクがある。上記バルク電位とソース端子電位の間の差が十分に大きくなると,上記MOSトランジスタのこれらの2つの半導体層を構成するPN接合が電流の導通を開始して上記PN接合をMOSトランジスタ内のダイオード短絡に実際上陥らせることがあり,これは不安定な回路の振舞いにつながる。
【0013】
500mVの供給電圧が供給されるときに使用可能であるこの種の超小型電子回路であれば,低Vを持つMOSトランジスタを使用することが特に有益である。すなわち低電圧回路に関する上述した問題は,MOSトランジスタの上記バルク電位を制御することによって緩和することができる。この技術は,PMOSトランジスタの正の供給電圧を超えるように上記バルク電位を増加させ,かつ同一の回路チップ上のNMOSトランジスタの負の供給電圧未満にバルク電位を減少させることを含む。このバルク電位の調整は適応的なやり方で動的に実行することができ,上記トランジスタの閾値電圧Vを増加させる効果を有し,したがってスイッチング速度および電流リークを減少させる。上記Vがすべてのトランジスタにおいて同一のレベルに調整されると,処理および温度によるパラメータ拡散も低減される。
【0014】
MOSトランジスタの基板効果(the body effect)を示すNMOSトランジスタの閾値電圧Vは,次のように表される。
【0015】
【数1】

【0016】
ここでVtoは0ボルトにおける閾値電圧であり,VSBはソース端子およびバルク間の電位であり,φはソース電位であり,γはバルク閾値電位である。φ,Vtoおよびγがゼロよりも大きい場合,NMOSトランジスタにおいてVSB が増加するとVが増加することが示される。同様に,PMOSトランジスタにおいてVSB が減少すると,Vが減少することが示される。
【0017】
国際特許公開WO−A1−01/50812は,デジタル補聴器回路のある部分に通常の電池電圧よりも低い電圧を提供するスイッチトキャパシタ・ステップダウン電圧コンバータを持つ補聴器を開示している。このステップダウン電圧コンバータそれ自身がある種の電力セービングを提供するが,電池がかなり消耗しているときに電池からかなりの量の電流がいまだ引き出される。補聴器中のいくつかの重要な部分,たとえば補聴器出力トランスデューサの出力コンバータは低電圧において給電することはできない。したがって広範囲の電池電圧にわたって補聴器に電力供給する実際的なやり方が求められている。
【0018】
米国特許第7307858号は電池駆動の頭部装着通信装置に用いる適応電源供給回路を開示している。上記電源供給回路は2:3 スイッチトキャパシタ電圧コンバータおよび線形電圧レギュレータを備えている。上記電池電圧が1.2−1.25Vを下回ると,上記線形電圧レギュレータおよび2:3 スイッチトキャパシタ電圧コンバータの両方が出力電圧Vを提供する。上記2:3 スイッチトキャパシタ電圧コンバータは,負荷電流に依存する適応クロック周波数においてキャパシタのネットワークをスイッチングすることによって上記電池電圧から低電圧をもたらす。上記電池電圧が1.2Vを下回ると,上記2:3 スイッチトキャパシタ電圧コンバータは負荷に対してますます少ない電流(less and less current)を供給することができる。Vの3/2の電池電圧において,上記スイッチトキャパシタ電圧コンバータは必要な電流を負荷に供給することができず,それ自体上記線形電圧レギュレータへの負荷よりも多くなり,その結果,電池電圧が減少するにつれて上記負荷にますます電力を提供しなければならなくなる。
【0019】
この従来技術の回路中の電池電圧が作動閾値を超える場合,負荷電流が増加するので,上記スイッチトキャパシタ電圧コンバータはそのスイッチング周波数を減少する。これは,第1の面において,電池から引出される全電流がほぼ次式の電池電圧であれば最適値を持つことを意味する。
【0020】
【数2】

【0021】
また,第2の面において,上記スイッチング周波数は出力電圧を制御するためにかなり変動しなければならないことを意味する。したがって最適点はマイマルクロック周波数(maimal clock frequency)にある。
【0022】
第1の複雑さは,上記電池から引き出される電流が,上記作動閾値の近くにかなり狭い最小値範囲(a very narrow minimum value range around the operative threshold)を持っているということである。第2の複雑さは,上記スイッチトキャパシタ電圧コンバータを制御する可変周波数である。スイッチトキャパシタ電圧コンバータを作動するこの方法は非常に広い出力電圧範囲を可能にするが,回路中に間違いなく干渉周波数を導入する。この周波数は上記回路の異なる部分に任意に発生し,スイッチング周波数に依存し,回路の負荷電流にも再依存するので,排除するのは非常に難しい。
【0023】
米国特許第7504876号は,超小型電子回路において用いられる基板バイアスフィードバック制御回路を開示している。このバイアスフィードバック制御回路は,上記超小型電子回路のウェル(well)または基板上のバイアス電位を制御することによって,低電圧たとえば0.5−1Vにおいて動作する超小型電子回路における電流リークを低減することを目的とする。上記バイアスフィードバック制御回路は2つの部分回路を備えており,その一の回路は一セットのNMOSトランジスタの負のバイアス電圧を制御するもので,他の一の回路は一セットのPMOSトランジスタの正のバイアス電圧を制御するものである。
【0024】
補聴器回路がもっぱら補聴器回路中のMOSトランジスタのバルクバイアス電位を制御する手段を有するものとして提案される場合には,大きな電力はセーブされないであろう。MOSトランジスタのリーク電流が低減されるが,上記回路は供給電圧をエネルギー効率よく低減する手段をいまだ欠いている。
【発明の開示】
【0025】
上記問題を緩和するために補聴器が案出され,上記補聴器は電池および超小型電子回路を有するもので,上記回路はPMOSトランジスタ(複数)およびNMOSトランジスタ(複数)を含むデジタル処理コア,上記電池によって駆動されかつ上記デジタル処理コアに供給電圧を提供する電源装置(a power supply),P(positive)バルクバイアス電圧発生器およびN(negative)バルクバイアス電圧発生器を備え,上記電源装置が,上記供給電圧を制御するコントローラ,第1の線形電圧レギュレータを有する第1の出力分岐,2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータと直列の第2の線形電圧レギュレータを有する第2の出力分岐,上記デジタル処理コアの上記PMOSトランジスタのPバルクにバイアス電圧を提供する上記Pバルクバイアス電圧発生器,および上記デジタル処理コアの上記NMOSトランジスタのNバルクにバイアス電圧を提供するNバルクバイアス電圧発生器を有しており,上記トランジスタ(複数)のパラメータの最適化に適するものであり,上記コントローラが上記電池電圧を第1および第2の所定リミット(境界)と比較するように構成されており,かつ上記電源装置に,上記電池電圧が第1の所定リミット未満のときに上記第1の出力分岐によって供給電圧を提供させ,上記電池電圧が第1の所定リミットを超えかつ第2の所定リミット未満であるときに上記第1の出力分岐と第2の出力分岐の組合せによって供給電圧を提供させ,上記電池電圧が第2の所定リミットを超える場合に上記第2の出力分岐によって供給電圧を提供させるものである。
【0026】
この構成から得られる恩恵(利点)の一つが,約500mVの公称供給電圧において動作可能であって,現在の補聴器に求められる信号処理を実行するのに十分に高速な最大10MHzのクロック周波数で動作可能なデジタルコアを備える補聴器である。他の恩恵(利点)は,上記供給電圧を提供するために2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータを利用することの簡潔性および効率性(the simplicity and efficiency)にある。
【0027】
この発明はまたデジタル補聴器回路に供給電圧を提供する方法を提供し,上記方法は,電池を用意し,第1の調整電圧(first regulated voltage)を生成し,第2の調整電圧を生成し,上記第2の調整電圧の半電圧(half of the second regulated voltage)を生成し,第1のバルクバイアス電圧を生成し,第2のバルクバイアス電圧を生成し,上記補聴器回路の第1のバルク端子に上記第1のバルクバイアス電圧を与え,上記補聴器回路の第2のバルク端子に上記第2のバルクバイアス電圧を与え,上記デジタル補聴器回路のための上記供給電圧を導出するステップを含み,上記供給電圧が上記第1の調整電圧および上記第2の調整電圧の半電圧の少なくとも一つから導出され,上記供給電圧の導出のステップが上記電池の電圧を決定するステップを包含する(incorporates)。
【0028】
さらなる特徴および利点は従属請求項から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明による補聴器用の電源管理システムを模式的に示す。
【図2】図1に示す電源管理システムのための電圧レギュレータの詳細な模式図である。
【図3】2:1スイッチトキャパシタDC−DCコンバータにおける第1のフェーズを模式的に示す。
【図4】図3に示すコンバータにおける第2のフェーズを模式的に示す。
【図5】電源管理システムにおける負荷電流および電池電圧間の関係を示すグラフである。
【図6】図1に示す電源管理システムのPバルクバイアス電圧レギュレータの模式図である。
【図7】図1に示す電源管理システムのNバルクバイアス電圧レギュレータの模式図である。
【図8】この発明による電源管理システムを有する補聴器のブロック図である。
【実施例】
【0030】
以下,図面を参照してこの発明をより詳細に説明する。
【0031】
図1はこの発明による補聴器用電力管理システム(パワー・マネージメント・システム)の概略図である。上記電力管理システムは,電池2,電池デカップリング・キャパシタ3,電池電圧ノード4,マスタークロック源5,基準電圧源6,供給電圧レギュレータ7,供給電圧ノード8,負荷デカップリング・キャパシタ9,P(P型)バルクバイアス電圧レギュレータ10,およびN(N型)バルクバイアス電圧レギュレータ11を備えている。図1にはPMOSトランジスタ13およびNMOSトランジスタ14を備えるデジタル処理装置コア12も示されている。
【0032】
上記電力管理システム1は,上記デジタル処理装置コア12に安定供給電圧を提供することによって,上記MOSトランジスタ13および14のタイミング拡散および電流リーク(the timing spread and current leakage)をできる限り小さく維持しつつ,補聴器回路における電力消費を最小化することを目的とする。補聴器内の実際のデジタル処理装置コア回路において個々のMOSトランジスタの数は数十万ないし数百万超を数えるが,分かりやすくするために,図1に示すデジタル処理装置12には単一のPMOSトランジスタ13および単一のNMOSトランジスタ14のみが示されている。
【0033】
上記電池2は上記電池電圧ノード4を通じて電力管理システム1のための電力を提供する。上記電池デカップリング・キャパシタ3は上記電池2から電位を切離しかつ安定化させるものであり,上記電池2は,上記電池電圧ノード4において,上記供給電圧レギュレータ7,Pバルクバイアス電圧レギュレータ10およびNバルクバイアス電圧レギュレータ11に電位Vbatを提供する。上記供給電圧レギュレータ7は上記デジタル処理装置コア12に供給電位VDDを提供し,これは上記Pバルクバイアス・レギュレータ10および上記Nバルクバイアス・レギュレータ11によって基準電圧としても用いられる。上記Pバルクバイアス・レギュレータ10および上記Nバルクバイアス・レギュレータ11は供給電圧としてVbatを用いる。上記供給電圧は,上記負荷デカップリング・キャパシタ9によって切離され,安定化されかつ調整される。好ましい実施態様では電池電位Vbatは0.9ボルトから1.6ボルトの範囲が好ましく,上記電位VDDは上記電池電位Vbatよりもかなり小さい値であり,通常は約0.5ボルトである。
【0034】
上記供給電圧レギュレータ7は,上記電池電位Vbat,上記マスタークロック源5および上記基準電圧源6を利用して,上記デジタル処理装置コア12のための安定供給電圧VDDを生成する。上記Pバルクバイアス電圧レギュレータ10およびNバルクバイアス電圧レギュレータ11は,上記給電電位(the power supply voltage potential)VDD,上記電池電位Vbatおよび上記マスタークロック源5を利用して,上記NMOSトランジスタ14のための電位Nbulkおよび上記PMOSトランジスタ13のための電位Pbulkをそれぞれ生成する。
【0035】
上記Pバルクバイアス電圧レギュレータ10からの電位Pbulkは,上記PMOSトランジスタ13のトランジスタ・パラメータ閾値電圧Vおよび電流リークIPleakを制御するために用いられる。上記供給電位VDDを超える値に上記Pバルクバイアス電位Pbulkが増加すると,Vが増加しかつSおよびIPleakが減少する。パラメータ拡散(parameter spread)が最小化される値に上記PMOSトランジスタ13のVおよび利得が到達するように,上記Pバルクバイアス電圧レギュレータ10からの電位Pbulkは調整される。
【0036】
すなわち,上記PMOSトランジスタ13の上記Pバルクバイアス電位Pbulkを上記供給電位VDDを超える値に引上げることによってリーク電流を減らすことができ,これによってVは,上記PMOSトランジスタ13の利得を高めすぎることなく十分とするレベル(a level where the gain of the PMOS transistor 13 is sufficient without being too high)に増加する。
【0037】
同様に,ゼロ電位VSS未満の値に上記NMOSトランジスタ14の上記Nバルクバイアス電位Nbulkを低めることによってリーク電流を減らすことができ,これによってVは,上記NMOSトランジスタ14の利得を高すぎることなく十分とするレベルに増加する。上記Nバルクバイアス電圧レギュレータ11からの上記電位Nbulkは,上記NMOSトランジスタ14のトランジスタ・パラメータ閾値電圧Vおよび電流リークIPleakを制御するために用いられる。Nバルクバイアス電位Pbulkが上記ゼロ電位VSS未満に減少すると,Vが増加しかつIPleakが減少する。すなわち,上記NMOSトランジスタ14の上記Nバルクバイアス電位Nbulkを上記ゼロ電位VSS未満の値に低めることで,リーク電流を低減させかつ上記NMOSトランジスタ14の利得を増加させることができる。
【0038】
図2は図1に示す上記供給電圧レギュレータ7のより詳細な模式図を示している。上記供給電圧レギュレータ7は,第1の抵抗22および第2の抵抗23を含む分圧器,電圧比較器24,線形電圧レギュレータ20,および2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータ(2:1 switched-capacitor voltage converter)21を備えている。上記線形電圧レギュレータ20は,オペアンプ(演算増幅器)25, 電圧差源(voltage difference source)26,第1のPMOSトランジスタ27,および第2のPMOSトランジスタ28を備えている。上記2:1SC電圧コンバータ21は,2フェーズ・スイッチ・コントローラ・ブロック(two-phase switch controller block)29,第1のスイッチ30,第2のスイッチ31,第3のスイッチ32,第4のスイッチ33,およびスイッチング・キャパシタ34を備えている。図2には,電池2,内部電池抵抗15,デカップリング・キャパシタ3,電池電圧ノード4,基準電圧源6,マスタークロック源5,供給電圧ノード8,負荷デカップリング・キャパシタ35および負荷抵抗36も示されている。
【0039】
上記電池2は,上記内部電池抵抗15および上記電池電圧ノード4を通して上記供給電圧レギュレータ7に必要な電力を提供する。上記デカップリング・キャパシタ3は上記電池2からの電圧を安定化する。上記電池電圧ノード4は電位Vbatを有し,電位Vbatは上記分圧器によって基準電圧として用いられる。上記分圧器の2つの抵抗22,23はそれぞれ,上記比較器24の正入力に電位Vbat/2を提供し,上記基準電圧源6は上記比較器24の負入力に基準電位Vrefを提供する。上記比較器24の出力は,2:1SC電圧コンバータ21の2フェーズ・スイッチ・コントローラ・ブロック29のイネーブル入力(ENABLE input)に接続されている。上記比較器24および上記分圧器は,上記電池電圧が2*VDD未満に低下しているときに上記2:1SC電圧コンバータ21を無効にすることを目的とする。
【0040】
図2に示すように,上記供給電圧レギュレータ7は等価負荷抵抗(equivalent load resistance)36によって電位VDDの形態で上記補聴器の上記デジタル処理装置コアに電力を供給する。上記電池2の電位Vbatが2*Vrefに等しい基準電圧を超えていると,2:1SC電圧コンバータ21を通じて上記電位VDDが単独で第1のPMOSトランジスタ27によって提供される。上記電位Vbatが2*Vrefと2・Vref+I/2fCの間にある場合(ここで,Iは負荷電流,fはマスタークロック周波数,Cは回路キャパシタンスである),上記第2のPMOSトランジスタ28および第1のPMOSトランジスタ27は上記2:1SC電圧コンバータ21を通じて上記供給電圧ノード8に伝達される電源をシェア(share)する。上記電池電位Vbatが2*Vref未満に降下すると,たとえば上記電池2が電池切れに近づくと,上記2:1SC電圧コンバータ21は上記比較器24によって完全にシャットオフされ,上記第2のPMOSトランジスタ28が上記補聴器への必要な電源供給を引き継ぐ。この対策は,上記2:1SC電圧コンバータ21が上記線形電圧レギュレータ20に対する余分負荷(extra load)として動作してしまうことを防止するために行われる。
【0041】
上記線形電圧レギュレータ20および上記2:1スイッチトキャパシタ21は,Vrefに等しい定電圧VDDが常に(at all times)上記出力ノード8を通して上記負荷36に利用可能であることを保証することを目的とする。上記線形電圧レギュレータ20は,オペアンプ25,電圧発生器26および第2のPMOSトランジスタ28を含む第1の分岐と,オペアンプ25,第1のPMOSトランジスタ27および2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータ21を含む第2の分岐の2つの出力分岐を備えているように見ることができる。上記出力ノード8は上記オペアンプ25の一端子に戻る接続を備えており,以下に詳述するように,上記出力電圧VDDを調整(レギュレート)するためのフィードバック・ループを効果的に形成する。
【0042】
batが2・VDD+I/(2・f・C)よりも大きい場合,上記フィードバック・ループは第1のPMOSトランジスタ27および2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータ21を通して上記出力ノード8に進む。上記電池電圧Vbatは第1のPMOS27の両端の電圧Vbat−2・VDD+I/(2・f・C)に変換され,この電圧が次に上記2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータ21の両端の電圧VDDにダウン・コンバートされる。ここで上記電圧I/(2・f・C)は上記2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータ21の出力インピーダンスによる抵抗損失とみなすことができる。
【0043】
batが2・VDDよりも大きいが2・VDD+I/(2・f・C)よりも小さい場合,上記フィードバック・ループは,上記第1のPMOSトランジスタ27および2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータ21と上記第2のPMOSトランジスタ28の両方を通して上記出力ノードに進む。上記2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータ21は上記出力ノード8にできるだけ多くの電流を伝達するが,その有限の出力インピーダンスによって制限される。すなわち,上記第2のPMOS28を通して残余電流(the remaining current)が伝達されてVDDが一定値に保持される( to keep VDD constant)。上記第2のPMOS28を通して伝達される電流量は,上記第1のPMOS27の入力と上記第2のPMOS28の入力の間の電圧差Vdifを保つように上記電圧源26によって制御される。Vbatが2・VDD+I/(2・f・C)よりも大きい状態からの遷移は,およそVbat=2・VDD+I/(2・f・C)となったときから次第に生じる。
【0044】
batが2・VDDに満たないとき,上記2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータ21は上記比較器24によってシャットダウンされる。これは上記比較器24の正端子上の電位がVref未満であるからである。この場合に上記2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータ21が有効に保たれるとすると,それはVbat上の余分負荷として作用し,VDDは許容できないほど降下することになろう。この場合には上記フィードバック・ループは第2のPMOS28を通るだけとなり,したがって全電流が上記出力ノード8に伝達される。
【0045】
上記比較器24の正入力上の電位Vbat/2が上記比較器24の負入力上の電位Vrefよりも大きいと上記比較器24の出力はハイ(high)となり,上記2フェーズ・スイッチ・コントローラ・ブロック29を通して上記2:1SC電圧コンバータ21は作動する。作動されると上記2フェーズ・スイッチ・コントローラ・ブロック29は,上記マスタークロック源5によって同期される4つのスイッチ30,31,32,33をそれぞれ制御して,上記4つのスイッチ30,31,32,33のそれぞれに非重複クロック信号(a non-overlapping clock signal)を提供する。
【0046】
上記マスタークロック源5から第1のクロックパルスがあると,上記2フェーズ・スイッチ・コントローラ・ブロック29は上記制御信号φを有効にし,これは第2のスイッチ31および第3のスイッチ32をそれぞれ開放し,かつ第1のスイッチ30および第4のスイッチ33をそれぞれ閉鎖(短絡)して,上記スイッチング・キャパシタ34の第1の端子が上記第1のPOMSトランジスタ27を通してVbatに接続され,上記スイッチング・キャパシタ34の第2の端子が上記供給電圧ノード8を通して上記負荷抵抗36に接続される。上記スイッチング・キャパシタ34は,上記負荷デカップリング・キャパシタ35と直列のキャパシタンスを形成し,上記負荷抵抗36に電流Iが提供される。
【0047】
上記マスタークロック源5から第2のクロックパルスがあると,上記2フェーズ・スイッチ・コントローラ・ブロック29は制御信号φを有効にし,これは第1のスイッチ30および第4のスイッチ33をそれぞれ開放し,かつ第2のスイッチ31および第3のスイッチ32をそれぞれ閉鎖し,上記スイッチング・キャパシタ34の第1の端子が上記供給電圧ノード8を通して上記負荷抵抗36に接続され,かつ上記スイッチング・キャパシタ34の第2の端子がグランドに接続される。ここでは上記スイッチング・キャパシタ34は上記負荷デカップリング・キャパシタ34と並列のキャパシタンスを形成し,上記負荷抵抗36に電流Iが提供される。
【0048】
上記制御信号φおよびφのそれぞれを交代的に(alternating fashion)有効にすることによって,上記2:1SC電圧コンバータ21によって上記電位VDDが上記供給電圧ノード8にもたらされ,上記電流Iが上記負荷抵抗36にもたらされる。上記比較器24が上記2:1電圧コンバータ21を有効とする限り,上記電流Iを上記負荷抵抗36を通して上記2:1SC電圧コンバータ21の出力から流すことができる。上記電池2の電位Vbatが2・Vref+I/2fC未満に降下すればするほど,総電力消費に対して上記線形電圧レギュレータ20がより大きく寄与する。上記電池2の電位Vbatが2*Vref未満に降下すると,上記2:1SC電圧コンバータは上記比較器24によって使用不可とされ,そこから何らかの負荷電流が引出されることが阻止される。これは,実際には,上記線形レギュレータ20に上記負荷抵抗36への使用可能な電力のすべてを供給させるものとなる。
【0049】
図2における上記2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータ21は,入力電圧の2:1電圧変換,さらに上記コンバータ出力インピーダンスVSC=I/(2・f・C)による電圧差,さらに上記第1のPMOSトランジスタ27からの電圧差を提供し,補聴器のデジタル処理装置コアの動作に必要な供給電圧VDDを生成する。この動作の原理が図3および図4に示されており,以下詳細に説明する。
【0050】
図3は2:1スイッチトキャパシタにおける第1フェーズを示しており,2:1SC電圧コンバータ回路は電池B,第1のキャパシタCSC,第2のキャパシタCおよび独立電流源Iを備えている。上記電池Bは第1のキャパシタCSCに電荷を蓄積し,他方第2のキャパシタCは独立電流源Iを通して放電される。
【0051】
図4は,図3に示す2:1SC電圧コンバータ回路の上記2:1スイッチトキャパシタにおける第2フェーズを示すものである。上記電池Bは第1のキャパシタCSCから切断され,上記キャパシタCSCはグランドに接続される。第1のキャパシタCSCはここでは実際上第2のキャパシタCと並列に接続され,その電荷を第2のキャパシタCに伝達する。上記スイッチトキャパシタ2:1SC電圧コンバータの出力インピーダンスZSCは以下のように規定される。
【0052】
【数3】

【0053】
したがって,上記2:1電圧コンバータ21が上記負荷抵抗36に必要な負荷電流Iを供給することができるようにするためには,次の供給電圧が必要である。
【0054】
【数4】

【0055】
図5は,図2における供給電圧レギュレータ回路において電池電圧Vbatの関数として上記電池から引出される電流Ibatを示す図である。この図は3つの部分に分けられる。第1の部分は,図2に示す第2のPMOS28を通して上記電池から引出される電流Ibatが,上記電池電圧Vbatが1ボルトを下回ると500μAの値を持つことを示している。これは,図2における上記線形電圧レギュレータ20が補聴器回路への唯一の電力供給元(the sole provider of power)となる結果である。
【0056】
第2の部分は,上記電池電圧が1ボルトから約1.08ボルトの間にあるときに,電圧の増加にしたがって電池電流Ibatが約250μAに次第に降下し,より多くの電流が図2に示す第1のPMOSトランジスタ27および2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータ21を通して引出されることを示している。上記電池から引出される電流の降下の理由は,上記電池電圧が1ボルトを超えて上昇すると,図2の第1のPMOSトランジスタ27および2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータ21が次第により多くの利用可能電力をデジタル処理装置コアに提供するからである。
【0057】
線形レギュレータを利用する従来技術の電力管理システムは,上記デジタル処理装置コアに電力を安定的に供給可能なものであったが,ほぼ500μAの高定電流でのみ可能であった。約1.08ボルトの電池電圧およびこれを超える約1.6ボルトまでの電圧において,この発明の補聴器中の上記2:1SC電圧コンバータ21は上記デジタル処理装置コアに利用可能電力の100%を提供し,わずか250μAの全電池電流負荷において500mVの必要コア電圧VDDを供給することができる。これが図5の第3の部分によって示されており,上記負荷電流消費が250μAにおいて少なくとも1.6ボルトまで安定していることを示している。上昇した電池電圧であっても,この比較的低い電池電流Ibatが電池寿命の長寿命化を保証し,これはこの発明の補聴器中の上記DC−DC電圧レギュレータ21の効率性のおかげである。
【0058】
図6は,図1に示すPバルクバイアス電圧レギュレータ10の詳細図を示している。上記Pバルクバイアス電圧レギュレータ10は,バルク基準回路60,オペアンプ64,P基準電圧源63,およびP電圧ポンプ65を備えている。上記バルク基準回路60は,基準負荷61および基準PMOSトランジスタ62を含む。上記P電圧ポンプ65は第1のPMOSトランジスタQ,第2のPMOSトランジスタQ,第1のNMOSトランジスタQ,第2のNMOSトランジスタQ,バルク・キャパシタ68,およびホールド・キャパシタ69を含む。図6にはさらに,供給電圧レギュレータ7,ならびに上記PMOSトランジスタ13およびNMOSトランジスタ14を含むデジタル処理装置コア12が示されている。上記Pバルクバイアス電圧レギュレータ10は,上記デジタル処理装置コア12中のすべてのPMOSトランジスタ(複数)へのバック・バイアス電圧(the back bias voltage)VBulkPを調整(レギュレート)して,上記デジタル処理装置コア12の上記PMOSトランジスタ(複数)における十分な利得レベルを維持しつつ上記PMOSトランジスタ(複数)からの拡散および電流リーク(spread and current leak)を低減することを目的にする。
【0059】
上記バルク基準回路60中の基準PMOSトランジスタ62は,上記基準負荷61に負荷電流を提供する電流発生器(current generator)として作動する。差動増幅器ステージ(a differential amplifier stage)として構成されるオペアンプ64は,上記参照負荷61の両端の電位と上記P基準電圧源63の電位VrefPを連続的に比較し,上記P電圧ポンプ65の入力に電位ViPを生成する。上記P電圧ポンプ65からの出力電位VbulkPが上記基準PMOSトランジスタ62のウェル(well)端子にフィードバックされる。上記マスタークロック源5は上記P電圧ポンプ65を駆動し,これによってP電圧ポンプ65は上記供給電位VDDのレベルを超えるまたは供給電位VDDのレベル未満の電位VBulkPを供給することができる。上記電位VBulkPは入力電位ViPによって調整される。
【0060】
上記基準負荷61の両端の電位がVrefP未満になると上記オペアンプ64の出力の電位ViPも降下し,上記P電圧ポンプ65の出力に低バルクバイアス電位(a lower bulk bias voltage potential)VBuilPが生成される。上記低バルクバイアス電位は上記基準PMOSトランジスタ62の利得およびVの増加を生じさせ,これによって上記基準負荷61の両端の電位が上昇する。
【0061】
上記基準負荷抵抗61の両端の電位がVrefPを超えて上昇すると,上記オペアンプ64の出力の電位ViPも上昇し,上記P電圧ポンプ65の出力に高バルクバイアス電位(a higher bulk bias voltage potential)VBulkPが生成される。上記高バルクバイアス電位は,上記基準PMOSトランジスタ62の利得およびVの減少を生じさせ,これによって上記基準負荷抵抗61の両端の電位が降下する。このようにして,上記Pバルクバイアス電圧レギュレータ10は,狭リミット内(within a narrow limit)に入るように上記バルクバイアス電位VBulkPを自動的に調整し(レギュレートし),これによって良好に定義された(well-defined)利得値,良好に定義されたV,低タイミング拡散(a lower spread in timing)および限定的PMOS電流リーク(a limited PMOS current leak)を持つPMOS電流源となる。より高いまたはより低いバルクバイアス電位が必要な場合には上記基準負荷61を容易に調整することができる。
【0062】
上記電圧ポンプ65は,上記デジタル処理装置コア12および上記バルク基準回路60に高(上昇)バルクバイアス電位(the elevated bulk bias voltage potential)VbulkPを生成することを目的とする。上記マスタークロック発生器5からのクロック信号の第1のフェーズの期間中,上記第1および第2のPMOSトランジスタQおよびQは開放され,上記第1および第2のNMOSトランジスタQおよびQは閉鎖される。これは,上記オペアンプ64の出力からの電位ViPが上記バルク・キャパシタ68にかかり(on),上記バルクバイアス電圧VbulkPが上記ホールド・キャパシタ69にかかることを意味する。上記マスタークロック発生器5からのクロック信号の第2のフェーズの期間中,上記第1および第2のPMOSトランジスタQおよびQは閉鎖され,第1および第2のNMOSトランジスタQおよびQは開放される。これは,上記電位VbulkPが上記バルク・キャパシタ68と上記ホールド・キャパシタ69の両方にかかることを意味している。倍電圧(a voltage doubler)として構成されることによって,上記電圧ポンプ65は上記電位VbulkPとして2*ViPの電圧を有効に出力する。
【0063】
図7は図1に示すNバルクバイアス電圧レギュレータ11の詳細図を示している。上記Nバルクバイアス電圧レギュレータ11は,バルク基準回路70,オペアンプ74,N基準電圧源73,およびN電圧ポンプ75を備えている。上記バルク基準回路70は基準負荷71および基準NMOSトランジスタ72を備えている。上記N電圧ポンプ75は第1のPMOSトランジスタQ,第2のPMOSトランジスタQ,第1のNMOSトランジスタQ,第2のNMOSトランジスタQ,バルク・キャパシタ78およびホールド・キャパシタ79を備えている。さらに図7には,供給電圧レギュレータ7,ならびにPMOSトランジスタ13およびNMOSトランジスタ14を含むデジタル処理装置コア12が示されている。上記Nバルクバイアス電圧レギュレータ11は,上記デジタル処理装置コア12中のすべてのNMOSトランジスタ(複数)へのバック・バイアス電圧VBulkNを調整して,上記デジタル処理装置コア12の上記NMOSトランジスタ(複数)の十分な利得レベルを維持しつつ,上記NMOSトランジスタからの拡散および電流リークを低減することを目的とする。上記バック・バイアス電圧VBulkNはVSSよりも小さくなれければならない,すなわち負でなければならないので,上記バルク基準回路70の構成は図6に示す上記バルク基準回路60とやや異なっている。
【0064】
上記バルク基準回路70中の上記基準NMOSトランジスタ72は,上記基準負荷71に負荷電流を供給する電流発生器として作動する。作動増幅ステージとして構成されるオペアンプ74は,上記基準負荷71の両端の電位とN基準電圧源73の電位VrefNを連続的に比較し,上記N電圧ポンプ75の入力に電位ViNを生成する。上記N電圧ポンプ75からの出力電位VbulkNが上記基準NMOSトランジスタ72のウェル(well)端子にフィードバックされる。上記マスタークロック源5は上記P電圧ポンプ65を駆動し,これによってグランド電位VSSのレベルを超えるまたはグランド電位VSSのレベル未満の電位VBulkNの生成が可能になる。上記電位VBulkNは入力電位ViNによって調整される。
【0065】
上記基準負荷抵抗71の両端の電位がVrefNを超えると上記オペアンプ74の出力の電位ViNも上昇し,上記N電圧ポンプ75の出力に高バルクバイアス電位VBulkNが生成される。上記高バルクバイアス電位は上記基準NMOSトランジスタ72の利得およびVの低下を生じさせ,これによって上記基準負荷抵抗71の両端の電位が降下する。
【0066】
上記基準負荷71の両端の電位がVrefN未満に降下すると,上記オペアンプ74の出力の偏差電位(error voltage potential)ViNも降下し,上記N電圧ポンプ75の出力に低バルクバイアス電位VBulkNが生成される。上記低バルクバイアス電位は,上記基準NMOSトランジスタ72からの利得およびVの増加を生じさせ,これによって上記基準負荷抵抗71の両端の電位が上昇する。このようにして,上記Nバルクバイアス電圧レギュレータ11は,狭リミット内に入るように上記バルクバイアス電位VBulkNを自動的に調整し,これによって良好に定義された利得値,良好に定義されたV,低タイミング拡散および限定的NMOS電流リークを持つNMOS電流源となる。より高いまたはより低いバルクバイアス電位が必要な場合には,上記基準負荷71を,図6におけるPバルク基準回路60における基準負荷抵抗61と同様に,調整することができる。
【0067】
上記電圧ポンプ75は,上記デジタル処理装置コア12および上記バルク基準回路70のために低バルクバイアス電位(the lowered bulk bias voltage potential)VbulkNを生成することを目的とする。上記マスタークロック発生器5からのクロック信号の第1のフェーズの期間中,第1および第2のPMOSトランジスタQおよびQは開放され,かつ上記第1および第2のNMOSトランジスタQおよびQは閉鎖される。これは,上記オペアンプ74の出力からの電位ViNが上記バルク・キャパシタ78にかかり,かつ上記バルクバイアス電圧VbulkNが上記ホールド・キャパシタ79にかかることを意味する。上記マスタークロック発生器5からのクロック信号の第2のフェーズの期間中,第1および第2のPMOSトランジスタQおよびQは閉鎖され,かつ第1および第2のNMOSトランジスタQおよびQは開放される。これは,電位Vbat−ViN=VbulkNが上記バルク・キャパシタ78と上記ホールド・キャパシタ79の両方にかかることを意味する。図6における電圧ポンプ65において用いられる電圧の倍化(voltage doubling)と同じ原理が使用されて,上記入力電圧ViNは上記電圧ポンプ75によって有効に倍にされかつ反転される(effectively doubled and negated)。
【0068】
図8はこの発明による電圧管理システムを有する補聴器80の機能を示すブロック図である。上記補聴器80は電池2,マイクロフォン81,電力供給コントローラ82,線形電圧レギュレータ20,スイッチトキャパシタ2:1SC電圧コンバータ21,P(ポジティブ)バルクバイアス電圧供給部(the positive bulk bias voltage supply)10,N(ネガティブ)バルクバイアス電圧供給部11,デジタル信号処理装置83を含むデジタル処理装置コア12,出力コンバータ84,および音響出力トランスデューサ85を備えている。
【0069】
上記電池2は上記線形電圧レギュレータ20および出力コンバータ84に電気エネルギーを供給する。上記電力供給コントローラ82は上記線形電圧レギュレータ20および上記2:1SC電圧コンバータ21をそれぞれ制御する。上記電力供給コントローラ82は上記電池電圧が十分であるときに上記2:1SC電圧コンバータ21が電力を上記デジタル処理コア12に提供することを可能にする。所定の電池電圧の範囲では,上記線形電圧レギュレータ20と上記2:1SC電圧コンバータ21の両方が上記処理コア12に電力を供給する。上記電池電圧が低すぎるようになると(becomes too low),上記電力供給コントローラ82は上記2:1SC電圧コンバータ21を無効とし,上記2:1SCコンバータ21によって上記電池2が弱められることが防止される。上記線形電圧レギュレータ20および上記2:1SC電圧コンバータ21のそれぞれからの供給電圧は,上記Pバルクバイアス電圧供給部10および上記Nバルクバイアス電圧供給部11のための必要な基準電圧も提供する。
【0070】
上記Pバルクバイアス電圧供給部10は,上記PMOSトランジスタ(複数)に必要なバルクバイアス電圧を提供し,かつ上記Nバルクバイアス電圧供給部11は上記NMOSトランジスタ(複数)に必要なバルクバイアス電圧を提供し,上記デジタル処理コア12からの電流リークを少なく維持し,タイミング制約を保つために(to keep timing constraints)上記MOSトランジスタ(複数)の利得を十分に高く維持する。
【0071】
上記デジタル信号処理装置83はデジタル処理コア12の統合部を形成し,上述したように,上記補聴器が聴覚障害を補償することを可能にするために,上記マイクロフォンからの信号の処理を提供する。上記デジタル信号処理装置83からの出力信号は上記出力コンバータ84によって増幅されかつ音響再生のために上記音響出力トランスデューサ85によって音響信号に変換される。上記デジタル信号処理装置83の一部を構成しないデジタル処理コア12の部分は,たとえばスタートアップ時のブートストラップ動作,プログラム記憶,外部プログラミング装置(図示略)との通信,および音信号の直接処理に関連しない他のタスクを担う。
【0072】
長期にわたって1.2ボルトの平均電圧を持つ電池によって給電され,線形電圧レギュレータを有し,0.7ボルトのデジタル処理コア電圧で動作する補聴器のための典型的な従来技術の電力供給では,全電力の約60%が上記デジタル処理コアによって消費され,他方全電力の残りの40%が上記線形電圧レギュレータによって消費される。
【0073】
この発明の電力管理回路の好ましい実施例では,0.5ボルトの電圧においてデジタル処理コアが給電され,従来技術の電力供給の全電力消費と比較して上記線形電圧レギュレータだけによって給電されるときに約70%に全電力消費を低減することができ,かつ上記スイッチトキャパシタ2:1電圧コンバータによって給電されるときには約35%から37%に低減することができる。この対比において,0.5ボルトにおいて作動するときに上記デジタルコアは上記補聴器中の全電力のわずか30%しか消費せず,上記電池電圧が1.08ボルト未満となるときだけ上記線形レギュレータが次第に引継ぐので,有用電池寿命のほとんど全体にわたって低消費電力が達成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池および超小型電子回路を有する補聴器であって,上記回路はPMOSトランジスタ(複数)およびNMOSトランジスタ(複数)を含むデジタル処理コア,上記電池によって駆動されかつ上記デジタル処理コアのための供給電圧を提供する電源装置,Pバルクバイアス電圧発生器,およびNバルクバイアス電圧発生器を含み,上記電源装置が,上記供給電圧を制御するコントローラ,第1の線形電圧レギュレータを有する第1の出力分岐,2:1スイッチトキャパシタ電圧コンバータと直列の第2の線形電圧レギュレータを有する第2の出力分岐,上記デジタル処理コアの上記PMOSトランジスタ(複数)のPバルクにバイアス電圧を提供する上記Pバルクバイアス電圧発生器,および上記デジタル処理コアの上記NMOSトランジスタ(複数)のNバルクにバイアス電圧を提供する上記Nバルクバイアス電圧発生器を有しており,上記トランジスタ(複数)のパラメータの最適化に適するものであり,上記コントローラが上記電池電圧を第1および第2の所定リミットと比較するように構成され,かつ上記電源装置に,上記電池電圧が第1の所定リミット未満であるときに上記第1の出力分岐によって上記供給電圧を提供させ,上記電池電圧が第1の所定リミットを超えかつ第2の所定リミット未満であるとき上記第1の出力分岐と上記第2の出力分岐を併用することによって上記供給電圧を提供させ,上記電池電圧が上記第2の所定リミットを超えているときに上記2の出力分岐によって上記供給電圧を提供させるものである,補聴器。
【請求項2】
上記Pバルクバイアス電圧発生器が,上記デジタル処理コアの上記PMOSトランジスタ(複数)のための上記供給電圧よりも高い出力バイアス電位の供給を可能にする第1の電圧ポンプを備えていることを特徴とする,請求項1に記載の補聴器。
【請求項3】
上記Nバルクバイアス電圧発生器が,上記デジタル処理コアの上記NMOSトランジスタ(複数)のためのゼロ基準電位よりも低い出力バイアス電位の供給を可能にする第2の電圧ポンプを備えていることを特徴とする,請求項1に記載の補聴器。
【請求項4】
上記デジタル処理コアの上記PMOSトランジスタ(複数)および上記NMOSトランジスタ(複数)が0.5ボルトの公称供給電圧において動作するように構成されていることを特徴とする,請求項1に記載の補聴器。
【請求項5】
上記超小型電子回路が,上記2:1SC電圧コンバータ,上記第1の電圧ポンプおよび上記第2の電圧ポンプをそれぞれ駆動するクロック信号を提供するように構成されたマスタークロック発生器を備えていることを特徴とする,請求項1に記載の補聴器。
【請求項6】
デジタル補聴器回路に供給電圧を提供する方法であって,電池を用意し,第1の調整電圧を生成し,第2の調整電圧を生成し,上記第2の調整電圧の半電圧を生成し,第1のバルクバイアス電圧を生成し,第2のバルクバイアス電圧を生成し,上記補聴器回路の第1のバルク端子に上記第1のバルクバイアス電圧を与え,上記補聴器回路の第2のバルク端子に上記第2のバルクバイアス電圧を与え,かつ上記デジタル補聴器回路のための供給電圧を導出するステップを含み,上記供給電圧が第1の調整電圧および上記第2の調整電圧の半電圧の少なくとも一つから導出され,上記供給電圧を導出するステップが上記電池の電圧を決定するステップを包含する,方法。
【請求項7】
上記供給電圧を導出するステップが,上記電池電圧が第1の所定リミット未満である場合に上記第1の調整電圧を用いることを含む,請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記供給電圧を導出するステップが,上記電池電圧が上記第1の所定リミットを超えかつ第2の所定リミット未満である場合に上記第1の調整電圧および上記第2の調整電圧の半電圧の組合せを用いることを含む,請求項6に記載の方法。
【請求項9】
上記供給電圧を導出するステップが,上記電池電圧が上記第2の所定リミットを超える場合に上記第2の調整電圧の半電圧を用いることを含む,請求項6に記載の方法。
【請求項10】
上記第2の調整電圧の半電圧が,上記第2の調整電圧の2:1スイッチトキャパシタ電圧変換から導出される,請求項6に記載の方法。
【請求項11】
上記電圧変換が上記補聴器内のマスタークロック発生器によって制御される,請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記第1のバルクバイアス電圧は上記電池電圧を超えた調整が可能である,請求項6に記載の方法。
【請求項13】
上記第2のバルクバイアス電圧は上記電池電圧を超えた調整が可能である,請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−519326(P2013−519326A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552271(P2012−552271)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052477
【国際公開番号】WO2011/103929
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(500011045)ヴェーデクス・アクティーセルスカプ (99)