説明

遮へい壁

【課題】ブロック壁からなる遮蔽壁において、作業性を向上するため枠体を有するブロック壁を枠体と支柱によってブロックを支持する構成とする。また、複数のブロックを枠体と支柱と横枠により囲んで支持する構成とする。さらに廃棄物の発生を極力抑制する新規な遮へい壁を提供する。
【解決手段】放射線源を有する設備の建屋壁内に設けられる遮へい壁と建屋壁との間に枠体を有し、遮へい壁内に垂直方向の支柱とを有し、ブロックを前記枠体と支柱で支持して構成する。また、内部に充填排出可能な流動性を持つ遮へい材を有する複数のブロックを積層させ、ブロック壁と建屋壁との間に設けた枠体と垂直方向の支柱とによりブロックを支持して、設置および撤去可能なブロック壁からなる遮へい壁を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所等の放射線源を有する設備における、設置および撤去可能なブロック壁からなる放射線用遮へい壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所の遮へい壁には、定検時の機器搬出入のため撤去ができるように、図7に示すコンクリート製のブロック41を、図8に示すように積み重ねたブロック壁40からなる遮へい壁SWを設置している。
【0003】
ブロック壁40は、人力作業のために約30kg程度の小型のコンクリート製のブロック41を組合せて、床面Fの上に幅W、高さHの壁を構成している。ブロック壁40の撤去は、1000個以上のブロック41を上から順番に撤去し、仮置き場所まで移動させる。また復旧時にはその逆の作業を行い、下から順番に組み上げていくため、ブロック壁40の撤去と復旧には膨大な作業量を要していた。従来のブロック壁40は、組み上げた後の周囲壁との隙間を大量のモルタル42で充填する必要があるため、撤去時には必ずモルタル42のハツリ作業及び大量のモルタル廃棄物の処分が必要となる。
【0004】
また、図9に示す様に、従来のブロック壁40は上下のブロック41を千鳥状にかみ合わせて積層しているために、例えば必要開口43を得るためには、撤去範囲44のように広範囲のブロックを撤去する必要があり、無駄な作業が発生している。
【0005】
上記のように、従来のブロック壁は作業対象となるブロック個数が多く作業に膨大な時間を要している。そのため、ブロック壁の撤去、復旧作業が容易にでき、定検作業の効率化を図ることが必要である。さらに、現状のブロック壁撤去に際して発生するブロック壁周囲のモルタル廃棄物が放射性廃棄物となるため、これを極力発生させないようにすることも環境保護の視点から必要と考えられる。
【0006】
従来、例えば特許文献1に示す様に、鋼製箱型の内部に流体又は液体を充填、排出するようにして、遮へい用の着脱壁を建屋壁から容易に着脱可能に構成した例が知られている。鋼製箱型は単体で構成され、流体または液体からなる遮へい材を充填排出する。この構成では、単体の遮へい壁で構成されているために、相対的に狭い作業空間で人力作業のみで設置する遮へい壁の大きさに制限があり大面積の遮へい壁には適用が難しい。また遮へい材の特性については特に言及されていない。
【0007】
また、特許文献2に示す様に、流動性物質からなる遮へい材を充填した簡易放射線遮蔽容器を積層設置する仮設遮蔽設備が開示されている。この構成では、容器を複数個上下左右に積層連結する形状に形成した後、縦一列の遮蔽容器を水等で満杯にする。この場合は容器自体で遮へい壁を形成するため、積層に耐えるように容器強度を十分に高めなければならない。一方で強度を高めると自重が増加し作業性が悪化するため、十分な遮蔽質量をもつ遮へい材を使用することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭60−147690号公報
【特許文献2】特開平8−114700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ブロック壁からなる遮蔽壁において作業性を確保することを目的とし、ブロック壁のブロックを枠体および支柱、或いは横枠によって分割支持する構成とする。また、構成するブロック数を減らし、かつ個々のブロックの重量を個別に支持する新規な遮へい壁を提供する。また、ブロック壁の材質は恒久的な十分な遮へい性を確保するために従来のコンクリートと同等以上の比重を確保する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、放射線源を有する設備の建屋壁内に設けられるとともに、複数のブロックを積層させて構成された設置および撤去可能なブロック壁からなる放射線の遮へい壁において、前記遮へい壁は建屋壁との間に枠体を有し、前記遮へい壁内に垂直方向の支柱を有し、前記ブロックを前記枠体と支柱で支持して構成したことを特徴とする。
【0011】
また、遮へい壁において、固体遮へい材料から形成された複数のブロックから構成された設置および撤去可能なブロック壁からなることを特徴とする。
【0012】
また、遮へい壁において、内部に充填排出可能な流動性を持つ遮へい材を有する複数のブロックから構成された設置および撤去可能なブロック壁からなることを特徴とする。
【0013】
また、遮へい壁において、前記遮へい壁はさらに前記支柱と直交する横枠を有し、前記枠体と支柱と横枠の少なくとも二つで囲まれた領域に前記複数のブロックを設置したことを特徴とする。
【0014】
また、遮へい壁において、前記枠体および支柱は、前記ブロックを支持する係合部を有することを特徴とする。
【0015】
また、遮へい壁において、前記ブロックは単体で前記枠体および支柱から着脱自在に支持されていることを特徴とする。
【0016】
また、遮へい壁において、前記遮へい材は常温で流動性のある材料を用いたことを特徴とする。
【0017】
また、遮へい壁において、前記遮へい材は比重が少なくとも2.15以上である材料を用いたことを特徴とする。
【0018】
また、遮へい壁において、前記遮へい材は硫酸バリウムを主材料とすることを特徴とする。
【0019】
さらに、遮へい壁に用いられるブロックにおいて、該ブロックは前記枠体及び支柱と係合する係止部を側面に設けたことを特徴とする。
【0020】
さらに、遮へい壁に用いられるブロックにおいて、該ブロックの最上部に積層した遮へい壁面より前方に突出した遮へい材の給入口を有し、前記ブロックの最下部に遮へい壁面より前方に突出した遮へい材の排出口を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、複数のブロックを積層させて構成された設置および撤去可能なブロック壁からなる放射線の遮へい壁において、建屋壁との間に枠体を有し、遮へい壁内に垂直方向の支柱を有し、複数のブロックを前記枠体と支柱で支持して構成したことにより、従来のブロックに比べ作業性を大幅に向上させることが可能になる。また、枠体と垂直方向の支柱と、これに直交する横枠により複数のブロックを支持して構成したことにより、従来のブロックに比べて作業箇所を限定でき、作業性を大幅に向上させることができる。
【0022】
さらに、ブロック壁の周囲に設けた枠体の使用により、モルタル等の使用量を低減することができ、廃棄物の発生を大幅に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1のブロック壁の正面図
【図2】本発明の実施例1のブロック壁の拡大正面図
【図3】本発明の実施例1のブロック単体の斜視図
【図4】本発明の実施例1のブロック壁の側面模式図
【図5】本発明の実施例2のブロック壁の正面図
【図6】本発明の実施例3のブロック壁の正面図
【図7】従来例のブロック単体の斜視図
【図8】従来例のブロック壁の正面図
【図9】従来例のブロック壁の撤去範囲を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施形態について、図面により説明する。
【実施例1】
【0025】
図1において、本発明の実施例1におけるブロック壁からなる遮へい壁SW(Shielding Wall)を説明する。
【0026】
建屋壁の一部に鋼製枠体4を設け、その内部に鋼製支柱3を設けて、中空の鋼製ブロック1を鋼製枠体4と鋼製支柱3で支持する。上下の鋼製ブロック1の間にはスペーサの機能を持つ遮へい鉄板5が挿入されている。6は遮へい材の給入口、7は遮へい材の排出口である。8は鋼製ブロック1の側面に設けられた段差状の係止部(アゴ)である。9は鋼製支柱3に設けられて鋼製ブロック1の係止部8と係合する係合部としての係合溝である。係合溝と係止部は何れに設けても良い。これにより、幅W、高さHの遮へい壁SWが床面F上に構成される。
【0027】
図3、図4において、1は鋼製ブロック、2は内部に充填される流動性のある液状の遮へい材である。鋼製ブロック1の側面には、支持用の係止部8が突出している。鋼製ブロック1の上部には遮へい材2を充填する給入口6が設けられ、鋼製ブロック1の下部には遮へい材2を排出する排出口7が設けられている。10は遮へい材2を充填する充填パイプ、11は遮へい材2を排出する排出パイプである。5は鋼製ブロック1の底部に設けられたスペーサの機能を持つ遮へい鉄板である。
【0028】
硫酸バリウム等からなる流動性のある液状の遮へい材2の給入口6は、鋼製フレーム1の最上部に設置し、遮へい材2の給入を容易にするため、鋼製フレーム1を積層したブロック壁の壁面より前方(手前側)に突出させて設置する。また、排出口7は鋼製フレーム1の最下部に設置し、給入口6と同様に、遮へい材2の排出を容易にするため、ブロック壁の壁面より前方に突出させて設置する。粉体からなる遮へい材の場合はこのような構成では給入排出は困難である。
【0029】
1個の鋼製ブロック1の容積を約1.0m程度とすることにより、従来の遮へい壁SWに用いるブロックのほぼ100倍の容積となるため、容積だけで単純に比較すれば作業効率を100倍程度向上することが可能となる。
【0030】
1個のブロックを大きくしたことにより、重量が重くなるが、遮へい壁SWの材質を鋼製のフレーム(箱体)からなる鋼製ブロック1とその中に充填する遮へい材2に分け、遮へい材2を排出することによって、鋼製ブロック1だけを撤去・復旧可能とし、ブロックの軽量化と作業の容易化を図ることができる。
【0031】
充填する遮へい材2は、常温で流動性のあるものとし、比重は十分な放射線遮へい性を確保するために少なくともコンクリートの比重(2.15g/cm)以上の材料を用いる。硫酸バリウムを溶液に分散させた材料は、医療材等として使われており人体への害はなく、また常温で液体になり、比重も4.5g/cm程度を有しており、遮へい材として適している。遮へい材2は、撤去作業をする前に遮へい材排出口7から排出しドラム缶等に詰めて保管し、復旧時に再び充填することにより再利用が可能である。流動性の遮へい材2の排出は、ブロック壁下部に設けた排出口の下にドラム缶等の排出容器を置いても容易に排出が可能であり、排出容器を台車等で移動して保管し、復旧時には再利用が可能である。上記の構成により、恒久的に十分な遮へい性を得ることが出来る。
【0032】
廃棄物を極力発生さないため、ブロック壁周囲にはモルタルの使用をしないよう、壁開
口全体を鋼製枠4で作り、撤去時のモルタルのハツリ及び復旧時のモルタル充填を不要とする。
【0033】
鋼製ブロック1は、鋼製枠体4,鋼製支柱3によって個別に支持されており、積層時に上部重量を支える必要が無く、必要最小限の強度で構成する事ができるため、薄い軽量鋼板を用いて軽く形成できる。また、鋼製ブロック1を内部点検等で交換する場合にも、鋼製ブロック毎に個別に容易に取り出すことができ、作業性に優れている。
【0034】
本発明の実施例1によるブロック壁は、鋼製フレームからなる鋼製ブロック1を、約1.0m程度の大きな単体として製作し、鋼製ブロック1の中に常温で流動性をもつ遮へい材2を流し込むことによって遮へい性能を確保する。鋼製ブロック1の周囲に設けた鋼製枠体は、単体のブロック壁の鋼製フレームを引き抜く際に撤去する必要はない。したがって、モルタル等を使用する必要がわずかであることから廃棄物の発生を抑制でき、作業の効率化が図れる。
【実施例2】
【0035】
次に、本発明の実施例2を図5について説明する。建屋壁の一部に鋼製枠体24を設け、その内部に鋼製支柱23を設けて、中実のコンクリート製の単体のブロック21を鋼製枠体24と鋼製支柱23で支持する。上下のコンクリート製のブロック21の間にはスペーサの機能を持つ遮へい鉄板5が挿入されている。
【0036】
29は鋼製枠体24と鋼製支柱23に設けられた、ブロック21に係合する係合溝である。コンクリート製の大型ブロックであるブロック21は、縦横略1mの大きさを持つブロック又はパネルであり、その厚さは要求される遮へい率によって任意の厚さを持つ。ブロック21は、前記係合溝29に係合する係止部28を有し、その重量は鋼製枠体24と鋼製支柱23で支持されている。ブロック21は大重量を持つため図示しない吊り輪、金具等が固定され、搬送機械を用いて遮へい壁WSから着脱される。
【実施例3】
【0037】
次に、本発明の実施例3を図6について説明する。34は鋼製枠体、33は鋼製支柱、35はこれに直交した鋼製横枠である。これらで区分された各領域には、従来用いられているコンクリート製のブロック41が複数充填されている。鋼製枠体34と鋼製支柱33に係合溝はなく、複数のブロック41の重量は鋼製横枠35で支持されている。また鋼製枠体34、鋼製支柱33、鋼製横枠35の少なくとも二つで囲まれた領域に複数のブロック41が設置されている。
【0038】
上記の構成において、遮へい壁SWの、鋼製枠体34と鋼製支柱33と横枠35で分割された各領域のいずれかを除去する必要が有るときは、その領域のみのブロックを撤去すれば良く、無駄なブロックの除去作業が無くなるため作業効率が大幅に向上する。また廃棄物の発生を極力抑制することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 鋼製ブロック
2 流動性遮へい材
3、23、33 鋼製支柱
4、24、34 鋼製枠体
5 遮へい鉄板
6 給入口
7 排出口
8 係止部
9 係合溝
35 鋼製横枠
20 ブロック壁
21、41 コンクリート製ブロック
SW 遮へい壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源を有する設備の建屋壁内に設けられるとともに、複数のブロックを積層させて構成された設置および撤去可能なブロック壁からなる放射線の遮へい壁において、
前記遮へい壁は建屋壁との間に枠体を有し、前記遮へい壁内に垂直方向の支柱を有し、前記ブロックを前記枠体と支柱で支持して構成したことを特徴とする遮へい壁。
【請求項2】
請求項1に記載された遮へい壁において、固体遮へい材料から形成された複数のブロックから構成された設置および撤去可能なブロック壁からなることを特徴とする遮へい壁。
【請求項3】
請求項1に記載された遮へい壁において、内部に充填排出可能な流動性を持つ遮へい材を有する複数のブロックから構成された設置および撤去可能なブロック壁からなることを特徴とする遮へい壁。
【請求項4】
請求項1に記載された遮へい壁において、前記遮へい壁は、さらに前記支柱と直交する横枠を有し、前記枠体と支柱と横枠の少なくとも二つで囲まれた領域に前記複数のブロックを設置したことを特徴とする遮へい壁。
【請求項5】
請求項2または3に記載された遮へい壁において、前記枠体および支柱は、前記ブロックを支持する係合部を有することを特徴とする遮へい壁。
【請求項6】
請求項2、3又は5のいずれか1項に記載された遮へい壁において、前記ブロックは単体で前記枠体および支柱から着脱自在に支持されていることを特徴とする遮へい壁。
【請求項7】
請求項3に記載された遮へい壁において、前記遮へい材は常温で流動性のある材料を用いたことを特徴とする遮へい壁。
【請求項8】
請求項7に記載された遮へい壁において、前記遮へい材は比重が少なくとも2.15以上である材料を用いたことを特徴とする遮へい壁。
【請求項9】
請求項8に記載された遮へい壁において、前記遮へい材は硫酸バリウムを主材料とすることを特徴とする遮へい壁。
【請求項10】
請求項2または3に記載された遮へい壁に用いられるブロックにおいて、該ブロックは前記枠体及び支柱と係合する係止部を側面に設けたことを特徴とする遮へい壁用のブロック。
【請求項11】
請求項3に記載された遮へい壁に用いられるブロックにおいて、該ブロックの最上部に積層した遮へい壁面より前方に突出した遮へい材の給入口を有し、前記ブロックの最下部に遮へい壁面より前方に突出した遮へい材の排出口を有することを特徴とする遮へい壁用のブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−169883(P2011−169883A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150734(P2010−150734)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)