説明

遮断器試験装置、プログラムおよび遮断器試験方法

【課題】 補正を行うことなく、実運用状態と同じ条件下で開閉特性試験を行う。
【解決手段】 スイッチギヤの筐体内に収納される遮断器に制御電圧を供給する母線の電圧を測定する電圧測定部と、電圧測定部が測定した電圧を記録する電圧記録部と、電圧記録部に記録されている電圧に応じて電圧制御信号を出力する電圧制御部と、電圧制御信号に応じた直流電圧を供給する直流電源と、遮断器を開閉制御する開閉制御部と、開閉制御部によって開閉制御される場合の遮断器の動作時間を計測する動作時間計測部と、を有し、電圧測定工程においては、電圧記録部は、母線から制御電圧が供給されて遮断器が動作している間の母線の電圧を動作電圧として記録し、試験工程においては、直流電源は、電圧記録部に予め記録されている動作電圧に応じた直流電圧を供給し、開閉制御部は、直流電圧を制御電圧として遮断器に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断器試験装置、プログラム、および遮断器試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチギヤの筐体内に収納されている遮断器を点検する際には、当該遮断器の開閉特性試験が行われる。
遮断器の開閉特性試験は、例えば特許文献1に開示されている機器測定試験リード線を用いて、遮断器とスイッチギヤの直流母線とを接続している接続ケーブルを延長し、遮断器をスイッチギヤの筐体から引き出して行われる。また、例えば、遮断器をスイッチギヤの筐体から引き出したうえで、試験用に設けた専用の電源(作業用電源)を使用した専用の試験装置に接続して行われる。
一方、開閉特性試験によって計測された遮断器の動作時間(入動作時間および切動作時間)の良否は、例えば、当該遮断器の工場出荷時の計測結果と照合することによって判定される。また、例えば、遮断器の製造業者が管理している計測結果の良否範囲と比較することよって判定される。
このようにして、開閉特性試験を行い、スイッチギヤの遮断器を点検することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−300529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、接続ケーブルを延長して遮断器の開閉特性試験を行う場合、当該延長用ケーブルのインピーダンスが遮断器の制御回路に直列に接続されるため、遮断器がスイッチギヤに収納された実運用状態とは異なる条件下での試験となる。また、専用の電源および試験装置を使用して開閉特性試験を行う場合も、遮断器が直流母線に接続されている時とはインピーダンスが異なるため、実運用状態とは異なる条件下での試験となる。
【0005】
一方、工場出荷時の計測結果や製造業者が管理している計測結果によって動作時間の良否を判定する場合、これらは定格電圧における計測結果であるため、直流電源装置からスイッチギヤまでのインピーダンスが存在する実運用状態とは開閉特性が異なる場合も多い。そのため、計測結果同士を比較することによって概略の良否を判定することは可能であるものの、不具合の初期段階における特性変化の兆候などを適時に把握することはできない。
【0006】
ところで、直流電源装置は、スイッチギヤ以外の様々な負荷にも電源を供給しているため、負荷の大小や負荷の動作状況によって制御電圧が変化し、遮断器の開閉特性も変化する。また、直流電源装置の蓄電池の充電状態によっても制御電圧が変化し、開閉特性が変化する。
【0007】
そのため、直流電源装置からスイッチギヤまでのインピーダンスや、負荷の状況、蓄電池の充電状態などによる制御電圧の変動を予め求めておき、遮断器の動作時間を補正する必要がある。さらに、例えば図7および図8に示すように、遮断器の制御電圧と動作時間との関係は、製造業者や機種など、遮断器ごとに異なるため、共通の補正値を用いることはできず、点検対象の遮断器ごとに異なる補正を行う必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する主たる本発明は、スイッチギヤの筐体内に収納される遮断器に制御電圧を供給する母線の電圧を測定する電圧測定部と、前記電圧測定部が測定した電圧を記録する電圧記録部と、前記電圧記録部に記録されている電圧に応じて電圧制御信号を出力する電圧制御部と、前記電圧制御信号に応じた直流電圧を供給する直流電源と、前記遮断器を開閉制御する開閉制御部と、前記開閉制御部によって開閉制御される場合の前記遮断器の動作時間を計測する動作時間計測部と、を有し、前記電圧測定部が前記母線の電圧を測定する電圧測定工程においては、前記電圧記録部は、前記母線から制御電圧が供給されて前記遮断器が動作している間の前記母線の電圧を動作電圧として記録し、前記動作時間計測部が前記動作時間を計測する試験工程においては、前記直流電源は、前記電圧記録部に予め記録されている前記動作電圧に応じた前記直流電圧を供給し、前記開閉制御部は、前記直流電圧を制御電圧として前記遮断器に供給することを特徴とする遮断器試験装置である。
【0009】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、遮断器ごとに動作時間の補正を行うことなく、実運用状態と同じ条件下で開閉特性試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態における遮断器試験装置の構成、および電圧測定工程における接続状態を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態における遮断器試験装置の構成、および試験工程における接続状態を示すブロック図である。
【図3】電圧測定工程において、常時電圧V0、入動作電圧Vc、および切動作電圧Vtを測定する方法を説明するフローチャートである。
【図4】試験工程において、入動作時間Tcおよび切動作時間Ttを計測する方法を説明するフローチャートである。
【図5】試験工程において、入動作時間Tcおよび切動作時間Ttを連続して計測する方法を説明するフローチャートである。
【図6】MPUを用いた場合の遮断器試験装置の構成を示すブロック図である。
【図7】遮断器ごとの制御電圧と入動作時間との関係を示す図である。
【図8】遮断器ごとの制御電圧と切動作時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
===遮断器試験装置の構成===
以下、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態における遮断器試験装置の構成について説明する。
【0014】
図1および図2に示されている遮断器試験装置1は、スイッチギヤ2の筐体内に収納される遮断器21(21a、21b)の開閉特性試験を行うための装置であり、図1および図2は、それぞれ後述する電圧測定工程および試験工程おける接続状態を示している。また、遮断器試験装置1は、端子91ないし98を備え、電圧測定部11、電圧記録部12、電圧制御部13、直流電源14、開閉制御部15、電流センサ16、動作時間計測部17、および表示部18を含んで構成されている。なお、以下の説明においては、遮断器21aを試験対象とする。
【0015】
スイッチギヤ2の直流母線20(20p、20n)は、制御ケーブル4を介して直流電源装置3に接続されている。また、電圧測定工程(図1)においては、遮断器21aおよび21bは、スイッチギヤ2の筐体内に収納され、直流母線20から電源電圧および制御電圧が供給されている。一方、試験工程(図2)においては、試験対象の遮断器21aは、スイッチギヤ2の筐体から引き出され、遮断器試験装置1から電源電圧および制御電圧が供給されている。なお、図1および図2において、20pおよび20nは、それぞれ直流母線20の正極側および負極側を示し、Rcは、制御ケーブル4のインピーダンスを示している。
【0016】
電圧測定部11の測定用の入力端は、端子91および92に接続されている。また、電圧測定部11には、選択信号SLmが入力されている。そして、電圧測定部11から出力される常時電圧V0、入動作電圧Vc、および切動作電圧Vtは、電圧記録部12に入力され、記録されている。なお、端子91および92は、電圧測定工程においては直流母線20pおよび20nにそれぞれ接続されるが、試験工程においては接続されなくてもよい。
【0017】
電圧制御部13には、電圧記録部12に記録されている常時電圧V0、入動作電圧Vc、または切動作電圧Vtが適宜読み出されている。また、電圧制御部13には、選択信号SLtが入力されている。そして、電圧制御部13からは、電圧制御信号CVが出力されている。
【0018】
直流電源14の入力端は、端子93および94に接続され、出力端は、端子95および96に接続されている。また、直流電源14には、電圧制御信号CVが入力されている。なお、端子93および94は、試験工程においては直流母線20pおよび20nにそれぞれ接続されるが、電圧測定工程においては接続されなくてもよい。また、直流母線20pおよび20nではなく別の電源へ接続されてもよい。一方、端子95および96は、試験工程においては、遮断器21aの電源電圧供給用の端子PおよびNにそれぞれ接続される。
【0019】
開閉制御部15には、直流電源14の出力電圧が供給されている。また、開閉制御部15には、選択信号SLtが入力されている。そして、開閉制御部15の出力端は、端子97および98に接続されている。なお、端子97および98は、試験工程においては、遮断器21aの制御電圧供給用の端子CおよびTにそれぞれ接続される。
【0020】
電流センサ16からは、開閉制御部15から遮断器21aに供給される制御電流Icが出力されている。また、動作時間計測部17には、制御電流Icおよび選択信号SLtが入力されている。そして、動作時間計測部17から出力される入動作時間Tcおよび切動作時間Ttは、表示部18に入力されている。
【0021】
===遮断器試験装置の動作===
以下、図3ないし図5を適宜参照して、本実施形態における遮断器試験装置の動作について説明する。
【0022】
なお、選択信号SLmおよびSLtは、遮断器試験装置1に設けられた切り替えスイッチ(不図示)や、入力部を備えたタッチパネルとして構成された表示部18などから入力することができる。また、選択信号SLmは、電圧測定工程において測定する電圧を選択するための信号であり、入動作電圧Vcを測定する場合にはSLm=1とし、切動作電圧Vtを測定する場合にはSLm=2とする。一方、選択信号SLtは、試験工程において計測する動作時間を選択するための信号であり、入動作時間Tcを計測する場合にはSLt=1とし、切動作時間Ttを計測する場合にはSLt=2とし、両方を連続して計測する場合にはSLt=3とする。さらに、電圧測定工程においてはSLt=0とし、試験工程においてはSLm=0とする。
【0023】
まず、図3を参照して、遮断器試験装置1がスイッチギア2と図1のように接続され、SLt=0として、電圧測定部11が直流母線20の電圧(直流母線20pおよび20n間の電圧)を測定する電圧測定工程における動作について説明する。以下においては、SLm=1として、入動作電圧Vcを測定する場合について説明する。
【0024】
SLm=1となり、電圧測定工程が開始されると、遮断器試験装置1は、まず、直流母線20に対する負荷を抑制するため、直流電源14の出力を停止する、または直流電源14の出力の停止を確認する(S11)。例えば、直流電源14の出力を停止する場合には、SLt=0の場合にCV=0とすることによって、直流電源14の出力電圧を0Vとする。また、直流電源14の出力の停止を確認する場合には、端子93および94が直流母線20pおよび20nにそれぞれ接続されていないことや、直接直流電源14の出力電圧を確認する。
【0025】
次に、電圧測定部11は、遮断器21aおよび21bが動作していない間の直流母線20の電圧を常時電圧V0として測定し、電圧測定部11が備えるメモリ(不図示)に一時的に記憶する(S12)。また、操作者は、この状態で試験対象の遮断器21aを閉極させる入操作をする(S13)。
【0026】
次に、電圧測定部11は、直流母線20から制御電圧が供給されて遮断器21aが閉極する入動作をしている間の直流母線20の電圧を入動作電圧Vcとして測定し、常時電圧V0と同様に、メモリに一時的に記憶する(S14)。そして、所定時間(例えば500ms)が経過するまでの間(S16:NO)、入動作電圧Vcの測定を継続する。なお、本実施形態では、操作者は、入操作しても直流母線20の電圧が変動しない場合(S15:NO)には、測定を中止し(S18:YES)、電圧測定工程を終了してもよい(S19)。
【0027】
次に、所定時間が経過すると(S16:YES)、電圧記録部12は、メモリに記憶されている常時電圧V0および入動作電圧Vcを記録し(S17)、電圧測定工程を終了する(S19)。ここで、常時電圧V0は、遮断器21aおよび21bが動作していない間の瞬時電圧または平均電圧であり、1つのデータとして記録される。一方、入動作電圧Vcは、遮断器21aが入動作をしている間の電圧の時系列データとして記録される。なお、メモリや電圧記録部12の容量を節約するため、直流母線20の電圧の変化をステップ状の変化に近似させて、当該変化点までの経過時間と変化後の電圧のみを入動作電圧Vcとして記憶および記録してもよい。
【0028】
このようにして、電圧測定工程において、常時電圧V0および入動作電圧Vcを電圧記録部12に予め記録しておく。また、同様に、SLm=2として電圧測定工程を行うことによって、直流母線20から制御電圧が供給されて遮断器21aが開極する切動作をしている間の直流母線20の電圧を切動作電圧Vtとして測定し、常時電圧V0とともに記録することができる。
【0029】
なお、電圧測定部11は、直流母線20の電圧を測定することによって、直流電源装置3の出力電圧から制御ケーブル4のインピーダンスRcによる電圧降下が減算された電圧を、常時電圧V0、入動作電圧Vc、および切動作電圧Vtとして出力している。また、電圧測定部11は、直流母線20に対する負荷とならないよう、入力インピーダンスを十分に高くすることが望ましい。
【0030】
次に、図4を参照して、遮断器試験装置1がスイッチギア2および試験対象の遮断器21aと図2のように接続され、SLm=0として、動作時間計測部17が遮断器21aの動作時間を計測する試験工程における動作について説明する。以下においては、SLt=1として、入動作時間Tcを計測する場合について説明する。なお、試験工程(図2)において、端子95ないし98と遮断器21aの各端子(P、N、C、T)とを接続するリード線のインピーダンスは、電圧測定工程(図1)における直流母線20と遮断器21aの各端子との間のインピーダンスと略等しいものとする。
【0031】
SLt=1となり、試験工程が開始されると(S21)、まず、電圧制御部13は、電圧測定工程において記録された常時電圧V0のデータを電圧記録部12から読み出し、当該データに応じて電圧制御信号CVを出力し、直流電源14から常時電圧V0を出力させる(S22)。ここで、直流電源14は、入力端が端子93および94を介して直流母線20に接続されており、直流母線20の電圧を電圧制御信号CVに応じて適宜変圧した直流電圧を供給する。
【0032】
次に、開閉制御部15は、出力Cから入操作指令を出力し、遮断器21aの端子Cに入力する(S23)。ここで、開閉制御部15には、直流電源14の出力電圧、すなわち、常時電圧V0が供給されており、当該常時電圧V0が制御電圧として遮断器21aの端子Cに供給され、遮断器21aは入動作を開始する。また、遮断器21aが入動作を開始すると、開閉制御部15から遮断器21aに制御電流Icが供給され、当該制御電流Icは、計器用変流器などの電流センサ16によって測定され、動作時間計測部17に入力される。
【0033】
次に、電圧制御部13は、電圧測定工程において記録された入動作電圧Vcの時系列データを電圧記録部12から読み出し、当該データに応じて電圧制御信号CVを出力し、直流電源14から入動作電圧Vcを出力させる(S24)。なお、電圧測定工程において、直流母線20の電圧の変化をステップ状の変化に近似させた場合には、記録されている変化点までの経過時間が経過した後に、直流電源14の出力電圧を、記録されている変化後の電圧に変化させる。また、動作時間計測部17は、開閉制御部15から入操作指令を出力し、遮断器21aが入動作を開始してからの経過時間を計時する(S25)。そして、制御電流Icが略0になるまでの間(S26:NO)、電圧制御部13は直流電源14の出力電圧の制御を継続し、動作時間計測部17は経過時間の計時を継続する。
【0034】
次に、制御電流Icが略0になると(S26:YES)、電圧制御部13は、再び直流電源14から常時電圧V0を出力させる(S27)。また、動作時間計測部17は、制御電流Icが略0になるまでの経過時間を入動作時間Tcとして出力する。そして、表示部18は、計測結果として入動作時間Tcを表示し(S28)、試験工程を終了する(S29)。
【0035】
このようにして、試験工程において、入動作時間Tcを計測することができる。また、同様に、SLt=2として試験工程を行うことによって、開閉制御部15から制御電圧が供給されて切動作をする場合の遮断器21aの動作時間を切動作時間Ttとして計測することができる。なお、表示部18の代わりに、または表示部18とともに記録部を設け、計測結果としての入動作時間Tcおよび切動作時間Ttを記録してもよい。
【0036】
また、試験工程においては、遮断器21aの開閉制御は、操作者の操作ではなく開閉制御部15によって行われるため、図5に示すように、SLt=3として、入動作時間Tcおよび切動作時間Ttを連続して計測することもできる。図5の入動作試験工程S32においては、SLt=1として試験工程を行う場合における図4のS22ないしS27と同様の処理が行われる。一方、切動作試験工程S33においては、SLt=2として試験工程を行う場合における図4のS23ないしS27と同様の処理が行われる。そして、表示部18は、入動作試験工程S32および切動作試験工程S33においてそれぞれ計測された入動作時間Tcおよび切動作時間Ttを表示し(S34)、試験工程を終了する(S35)。
【0037】
さらに、工場出荷時の計測結果など同様に、定格電圧における計測結果を得るモードを試験工程に設けてもよい。例えば、SLt=4ないし6の場合に、直流電源14から遮断器21aの定格制御電圧に等しい電圧を出力させ、当該出力電圧を制御電圧として遮断器21aに供給して試験工程を行うことによって、工場出荷時の計測結果と比較して良否を判定することができる。この場合、入動作時間Tcを計測する場合にはSLt=4とし、切動作時間Ttを計測する場合にはSLt=5とし、両方を連続して計測する場合にはSLt=6とする。
【0038】
===遮断器試験装置の他の構成例===
遮断器試験装置1のうち、電圧制御部13、開閉制御部15の一部、および動作時間計測部17の一部の機能は、コンピュータによって実現することができる。図6は、当該コンピュータとしてMPU(Micro Processing Unit)19を用いた場合の遮断器試験装置の構成を示している。
【0039】
図6に示されている遮断器試験装置1は、MPU19以外に、図1および図2に示した遮断器試験装置1と同様に、電圧測定部11、電圧記録部12、直流電源14、電流センサ16、および表示部18を含み、さらに開閉器151、152、および時計部171を含んで構成されている。
【0040】
MPU19は、電圧制御部13と同様に、電圧記録部12に記録されている電圧に応じて電圧制御信号CVを出力する。また、MPU19は、開閉制御信号ScおよびStを出力して、それぞれ開閉器151および152を制御することによって、開閉制御部15と同様に、制御電圧を供給して試験対象の遮断器を開閉制御することができる。さらに、MPU19は、時計部171から出力される現在時刻Tpを用いて、試験対象の遮断器の入動作または切動作の開始時および終了時における現在時刻の時間差を当該遮断器の動作時間として計測することができる。
【0041】
前述したように、電圧測定工程において、直流母線20から制御電圧が供給されて遮断器21aが動作している間の直流母線20の電圧を動作電圧(Vc、Vt)として予め測定して記録し、試験工程において、電圧測定工程において記録された動作電圧と同等の電圧を制御電圧として遮断器21aに供給して動作時間(Tc、Tt)を計測することによって、遮断器ごとに動作時間の補正を行うことなく、実運用状態と同じ条件下で開閉特性試験を行うことができる。
【0042】
また、遮断器21aの定格制御電圧に等しい電圧を制御電圧として遮断器21aに供給して試験工程を行うことによって、工場出荷時の計測結果と比較して良否を判定することができる。
【0043】
また、開閉制御部15から遮断器21aに供給される制御電流Icを測定することによって、開閉制御部15が遮断器21aの開閉制御を開始してから制御電流Icが略0になるまでの経過時間を動作時間として計測することができる。
【0044】
また、試験工程において、直流電源14の入力端を直流母線20に接続することによって、直流母線20の電圧を電圧制御信号CVに応じて適宜変圧した直流電圧を直流電源14から供給することができる。
【0045】
また、試験工程において端子95ないし98と遮断器21aの各端子とを接続するリード線のインピーダンスを、電圧測定工程における直流母線20と遮断器21aの各端子との間のインピーダンスと略等しくすることによって、試験工程において、電圧測定工程と同等の制御電圧を遮断器21aに供給することができる。
【0046】
また、遮断器試験装置1の電圧制御部13、開閉制御部15の一部、および動作時間計測部17の一部に相当する機能をMPU19に実現させるためのプログラムにおいて、電圧記録部12に予め記録されている電圧に応じて電圧制御信号CVを出力し、開閉制御信号(Sc、St)を出力して試験対象の遮断器を開閉制御し、当該開閉制御の開始時および終了時における現在時刻の時間差を当該遮断器の動作時間として計測することによって、MPU19を用いて試験工程を行うことができる。
【0047】
また、直流母線20から制御電圧が供給されて遮断器21aが動作している間の直流母線20の電圧を動作電圧として予め測定して記録し、予め記録されている動作電圧と同等の電圧を制御電圧として遮断器21aに供給して動作時間を計測することによって、遮断器ごとに動作時間の補正を行うことなく、実運用状態と同じ条件下で開閉特性試験を行うことができる。
【0048】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 遮断器試験装置
2 スイッチギヤ
3 直流電源装置
4 制御ケーブル
11 電圧測定部
12 電圧記録部
13 電圧制御部
14 直流電源
15 開閉制御部
16 電流センサ
17 動作時間計測部
18 表示部
19 MPU
20(20p、20n) 直流母線
21(21a、21b) 遮断器
91〜98 端子
151、152 開閉器
171 時計部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチギヤの筐体内に収納される遮断器に制御電圧を供給する母線の電圧を測定する電圧測定部と、
前記電圧測定部が測定した電圧を記録する電圧記録部と、
前記電圧記録部に記録されている電圧に応じて電圧制御信号を出力する電圧制御部と、
前記電圧制御信号に応じた直流電圧を供給する直流電源と、
前記遮断器を開閉制御する開閉制御部と、
前記開閉制御部によって開閉制御される場合の前記遮断器の動作時間を計測する動作時間計測部と、
を有し、
前記電圧測定部が前記母線の電圧を測定する電圧測定工程においては、
前記電圧記録部は、前記母線から制御電圧が供給されて前記遮断器が動作している間の前記母線の電圧を動作電圧として記録し、
前記動作時間計測部が前記動作時間を計測する試験工程においては、
前記直流電源は、前記電圧記録部に予め記録されている前記動作電圧に応じた前記直流電圧を供給し、
前記開閉制御部は、前記直流電圧を制御電圧として前記遮断器に供給することを特徴とする遮断器試験装置。
【請求項2】
前記試験工程においては、
前記直流電源は、前記電圧制御信号に応じて、前記電圧記録部に予め記録されている前記動作電圧に応じた前記直流電圧、または前記遮断器の定格制御電圧に等しい前記直流電圧を供給することを特徴とする請求項1に記載の遮断器試験装置。
【請求項3】
前記試験工程においては、
前記動作時間計測部は、前記開閉制御部が前記遮断器の開閉制御を開始してから、前記開閉制御部から前記遮断器に供給される制御電流が略0になるまでの時間を前記動作時間として計測することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遮断器試験装置。
【請求項4】
前記電圧測定工程においては、
前記電圧測定部は、前記母線に接続され、
前記試験工程においては、
前記直流電源は、前記母線に接続され、前記母線の電圧を前記電圧制御信号に応じて変圧して前記直流電圧を供給することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の遮断器試験装置。
【請求項5】
前記遮断器は、前記電圧測定工程においては、前記スイッチギヤの筐体内に収納され、前記試験工程においては、前記スイッチギヤの筐体から引き出され、
前記試験工程において前記開閉制御部から前記遮断器に制御電圧を供給するリード線のインピーダンスは、前記電圧測定工程における前記母線と前記遮断器との間のインピーダンスと略等しいことを特徴とする請求項4に記載の遮断器試験装置。
【請求項6】
スイッチギヤの筐体内に収納される遮断器に制御電圧を供給する母線の電圧を測定する電圧測定部と、
前記電圧測定部が測定した電圧を記録する電圧記録部と、
電圧制御信号に応じた直流電圧を供給する直流電源と、
開閉制御信号に応じて前記直流電圧を制御電圧として前記遮断器に供給する開閉器と、
現在時刻を出力する時計部と、
を備えるコンピュータに、
電圧測定工程において、
前記電圧測定部に、前記母線の電圧を測定させる機能と、
前記電圧記録部に、前記母線から制御電圧が供給されて前記遮断器が動作している間の前記母線の電圧を動作電圧として記録させる機能と、
試験工程において、
前記電圧記録部に予め記録されている前記動作電圧に応じて前記電圧制御信号を出力する機能と、
前記開閉制御信号を出力して前記遮断器を開閉制御する機能と、
前記開閉制御信号による前記遮断器の開閉制御の開始時および終了時における前記現在時刻の時間差を前記遮断器の動作時間として計測する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項7】
スイッチギヤの筐体内に収納される遮断器に母線から制御電圧が供給されて、前記遮断器が動作している間の前記母線の電圧を動作電圧として予め測定して記録し、
予め記録されている前記動作電圧に応じた直流電圧を制御電圧として前記遮断器に供給し、
前記直流電圧が供給されて開閉制御される場合の前記遮断器の動作時間を計測することを特徴とする遮断器試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−149915(P2012−149915A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7008(P2011−7008)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(596133119)中電プラント株式会社 (101)