説明

遮熱性ポリエステル繊維

【課題】優れた遮熱性を有し、風合いが良好なポリエステル繊維を提供する。
【解決手段】屈折率が1.6〜5で平均粒径が0.5〜1.5μmの無機化合物粒子を少なくとも含有し、下記要件を満たしていることを特徴とする遮熱性ポリエステル繊維。
(1)無機化合物粒子の含有量が1〜15重量%であること
(2)単繊維の繊維軸に直行する断面の形状が扁平形状で、断面の長軸方向に丸断面単糸が直線状に連結した形状であり、くびれ部を2〜5個有すること。
(3)該扁平形状断面の長軸の幅Aとそれに直交する短軸の最大幅B1の比が2〜6であること。
(4)該扁平形状断面の短軸の最大幅B1と、くびれ部に相当する短軸の最小幅B2の比が1.05以上1.6以下であること

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮熱用ポリエステル繊維に関する。さらに詳しくは、熱線を効果的に遮蔽し、溶融成形性、風合いに優れた、衣料用および各種産業製品に好適に利用可能なポリエステル繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリテトラメチレンテレフタレートなどのポリエステルは、その機械的、物理的および化学的性能が優れているため、繊維および繊維製品に広く利用されている。
【0003】
ポリエステルは分子内のエステル結合、脂肪族炭化水素のC−H結合・C−C結合、ベンゼン環・ナフタレン環において、特定波長の赤外線吸収性を有するが、これら以外の赤外線吸収帯領域においては、吸収はほとんどなく高い赤外線透過性を有する。
このため、ポリエステル繊維を利用したカーテンでは、真夏の室内の温度が上昇する、あるいはポリエステル繊維を利用したスポーツウェアの場合では、着用時の温度が上昇し不快感を生ずるなどの問題を有していた。
【0004】
このような問題を解決する事例として、例えばリン酸化合物またはスルホン酸化合物によって表面処理されているITO粉末および/またはATO粉末を2.0重量%より多く10重量%以下含有する熱線遮蔽性を有するポリエステル繊維が提案されている(特許文献1)。しかし、本手法では繊維での赤外線の吸収による熱線の遮蔽の為、繊維自体の温度が上昇しそれによる輻射熱の作用により、衣服とした場合涼感を体感するには不十分であった。
【0005】
また、特許文献2には芯部に平均粒子径0.8〜1.8μmの酸化チタンを3重量%以上含有し、鞘部に平均粒子径0.8μm以上の酸化チタンを実質的に含有しない芯鞘型複合繊維が提案され、該繊維の芯部により、効果的に熱エネルギーに関係する波長の光を遮り、清涼感を得ることができるとしている。しかし、繊維の鞘部に対しては光は透過することとなり、繊維断面形状の規定もなく十分な遮熱効果を得難いものであった。
【0006】
一方、遮熱性、遮光性を有するものとして2箇所以上のくびれ部を有する特殊な扁平断面からなる遮光用布帛が提案されているが(特許文献3)、可視光の遮蔽性には効果があるもののカーボンを含有する為繊維が蓄熱性を有し遮熱素材としては不十分なものであった。
上述の通り、従来の方法では依然として熱線を効果的に反射し、十分な遮熱効果を有する繊維は得られておらず遮熱性ポリエステル繊維の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−84238号公報
【特許文献2】特開2010−116660号公報
【特許文献3】特開2007−92189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、赤外線の透過性を低減したポリエステル組成物を得ることであり、このポリエステル組成物を成形することによって産業上、有用なポリエステル成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上述の従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明によれば、
屈折率が1.6〜5で平均粒径が0.5〜1.5μmの無機化合物を少なくとも含有し、下記要件を満たしていることを特徴とする遮熱性ポリエステル繊維、が提供される。
(1)酸化チタンの含有量が1〜15重量%であること
(2)単繊維の繊維軸に直行する断面の形状が扁平形状で、断面の長軸方向に丸断面単糸が直線状に連結した形状であり、くびれ部を2〜5個有すること。
(3)該扁平形状断面の長軸の幅Aとそれに直交する短軸の最大幅B1の比が2〜6であること。
(4)該扁平形状断面の短軸の最大幅B1と、くびれ部に相当する短軸の最小幅B2の比が1.05以上1.6以下であること
また、本発明のよりさらに好適な形態として、単糸繊度が0.1〜2dtex、強度が3cN/dt以上である上記遮熱性ポリエステル繊維が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定の粒子を含有し、繊維の断面形状を特定の形状に規定することによって効果的に熱線を反射し、遮熱性、風合いに優れたポリエステル繊維を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の繊維の長さ方向に垂直な断面の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のポリエステル繊維を構成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどの繊維形成性ポリエステルが好ましい。すなわち、テレフタル酸を主たる二官能性カルボン酸成分とし、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどを主たるグリコール成分とするポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルが好ましい。また特許第4202361号公報に記載されたポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとしポリオキシエチレングリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルや、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルでもよい。さらには、かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルや、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステル、ポリ乳酸やステレオコンプレックスポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルでもよい。
【0014】
また、テレフタル酸成分の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置換えたポリエステルであってもよく、及び/又はグリコール成分の一部を他のジオール化合物で置換えたポリエステルであってもよい。
【0015】
ここで、使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の如き芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。
【0016】
また、上記グリコール以外のジオール化合物としては例えばシクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSの如き脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物及びポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。
【0017】
さらに、ポリエステルが実質的に線状である範囲でトリメリット酸、ピロメリット酸のごときポリカルボン酸、グリセリン、トリメチp−ルプロパン、ペンタエリスリトールのごときポリオールなどを使用することができる。
【0018】
本発明のポリエステル繊維には、繊維を構成するポリエステルに対し、少なくとも屈折率が1.6〜5で平均粒径が0.5〜1.5μmの無機化合物粒子を含有することが必要である。
【0019】
無機化合物粒子としては、例えば、Fe(屈折率 n=2.7)、ルチル型TiO(2.72)、アナターゼ型TiO(2.6)、CeO(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl(2.3)、CdO(2.2)、Sb(2.0)、WO(2.0)、SiC(2.0)、In(2.0)、PbO(2.6)、Ta(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO(2.0)、MgO(1.6)、CeF(1.6)、AlF(1.6)、Al(1.6)が例示されるが、中でも二酸化チタン(IV)、チタン酸カリウム、チタン酸鉛、酸化鉛(II)、硫化亜鉛、酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム(IV)が好ましく用いられ、二酸化チタン(IV)が最も好ましく用いられる。
【0020】
該無機化合物粒子の屈折率が1.6未満の場合、赤外線の透過性が高く好ましくない。また、屈折率が5以上の粒子は工業的に使用可能なものはなく、屈折率としては好ましくは1.8以上、さらに好ましくは2.0以上である。
【0021】
これらの無機化合物粒子は必要に応じ、表面処理されていても良い。その場合従来公知の表面処理方法を使用すること出来る。例えば、二酸化ケイ素、アルミナ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムで粒子表面を覆うことによって、ポリエステルへの分散性を向上させたり、粒子の色相を変えたり、ポリエステルに対する粒子表面の活性を低下させ、ポリエステルの熱安定性を向上させることができる。
【0022】
該無機化合物粒子は平均粒径が0.5〜1.5μmであることが必要である。該範囲の粒径を有する粒子を用いることにより、特に近赤外線を主体とする熱に変換されやすい光の波長領域である0.5〜1.5μmの帯域の光を効果的に反射することができる。すなわち、酸化チタンの平均粒径が0.5μm未満であると、より小さい波長領域の光を反射することとなり、遮熱効果が十分に得られない。ただし0.5μm未満の粒子が併用されていることは、可視光領域の光を遮断するうえで好ましい。また、平均粒径が1.5μmを超えると、より高い波長領域の光を反射することとなり遮熱効果が十分に得られず、製糸時の工程安定性も低下し、単糸繊度を細くするとその傾向がより顕著となる。好ましい平均粒径は、0.8〜1.2μmである。
【0023】
さらに本発明のポリエステル繊維は上記無機化合物粒子を1〜15重量%含有していることが必要である。含有量が1%未満であると遮熱効果が不十分となり、15重量%を超えると、遮熱性は向上するが製糸時の工程安定性、および得られる繊維の品位が低下する。好ましい範囲は3〜10重量%である。
【0024】
ここで、本発明のポリエステル繊維への該無機化合物粒子の添加方法としては、粒子化合物を粉体状のまま添加する方法、および高濃度のマスターバッチをあらかじめ作成し、紡糸時に無添加のポリエステルとチップブレンドする方法を挙げることができ、ポリエステル融液への添加、あるいはマスターバッチでの添加による方法が無機化合物粒子の繊維中への分散性の点で好ましく用いられる。
【0025】
本発明のポリエステル繊維は、図1に示すように単繊維の繊維軸に直行する断面の形状が扁平形状で、断面の長軸方向に丸断面単糸が直線状に連結した形状であり、くびれ部を2〜5個有することが必要である。丸断面単糸が直線的に連結した、全体として扁平の断面形状により、該丸断面単糸が単独で存在する場合と比較して単糸間の空間が少なく、光の透過を低減する効果を発現することが可能となり、繊維の曲げ特性が向上し、布帛とした場合に柔軟性に富むものとなる。また、織編物の繊維密度を低くしても扁平型断面による遮蔽性効果が優れる為、より軽量化することが可能となる。さらに単なる扁平形状ではなくくびれ部を有することによって、無機化合物粒子の反射に加え、繊維表面での乱反射や光の屈折効果をより高め、効果的に熱線を遮蔽することが可能となる。くびれ部の数が2個未満となると上記効果が得られ難く、逆にくびれ部の数が5個を超えると工程安定上好ましくない。
【0026】
また、本発明のポリエステル繊維の扁平形状断面は、扁平断面の長軸の幅Aとそれに直交する短軸の最大幅B1の比(扁平率)が2〜6であることが必要である。該扁平率が2未満であると扁平断面の効果が得られ難く、織編物などの布帛とした場合に長軸が布帛表面に平行に配列し難くなり遮熱性が低下する。一方該扁平率が6を越えると製糸安定性が低下する。好ましい範囲は3〜5である。
【0027】
さらに該扁平形状断面の短軸の最大幅B1と、くびれ部に相当する短軸の最小幅B2の比(B1/B2)は1.05以上1.6以下であることが必要である。B1/B2が1.05未満となると上述の丸断面が連結した効果が低下し遮熱性が低下する。また、B1/B2が1.6を超えると、連結部の厚みが薄くなり熱線の透過が大きくなり遮熱性が低下する。好ましい範囲は1.1〜1.4である。
【0028】
本発明のポリエステル繊維の単糸繊度は0.1〜2dtexであることが好ましい。0.1dtex未満となると製糸安定性が低下し、2dtexを超えると織編物とした場合に繊維間の空隙が大きくなり遮熱性が低下する。単糸繊度は0.5〜1.5dtexがより好ましく用いられる。総繊度、フィラメント数としては、繊維の表面積を大きくして優れた遮熱性を得る上で、総繊度10〜200dtex、フィラメント数30〜50000本、より好ましくは30〜200本であることが好ましい。
また、強度は3cN/dtexが好ましい。強度が3cN/dtex未満であると耐久性に劣るものとなる。
【0029】
本発明のポリエステル繊維の製糸方法は、特に制限はなく、従来公知の方法が採用される。すなわち、ポリエステルを乾燥後、上記の要件を満たす断面形状を有する偏平繊維が得られるような口金装置を用いて、溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の引取り速度は400〜5000m/分で紡糸することが好ましい。紡糸速度がこの範囲にあると、得られる繊維の強度も充分なものであると共に、安定して捲取りを行うこともできる。
【0030】
さらに、上述の方法で得られた未延伸糸もしくは部分延伸糸を、延伸工程もしくは仮撚加工工程にて1.2倍〜6.0倍程度の範囲で延伸することが好ましい。仮撚加工方法としては、公知の方法で行うことが出来るが、接触式のヒーターを備えた仮撚加工機を用い、第1仮撚ヒーターの温度が100〜500℃で延伸仮撚加工することが好ましい。
【0031】
本発明のポリエステル繊維の繊維形態は特に限定されないが、繊維の表面積を大きくして優れた熱線遮蔽性を得る上で短繊維(紡績糸)よりも長繊維(マルチフィラメント糸)であることが好ましい。また、他の繊維と混繊して用いることもできる。かかるポリエステル繊維には、通常の空気加工、仮撚捲縮加工、撚糸が施されていてもさしつかえない。
【0032】
本発明のポリエステル繊維を布帛とする場合は、布帛全てに用いてもよく、部分的に用いても良い。その組織は特に限定されず、織物でもよいし編物でもよいし不織布でもよい。
【0033】
本発明のポリエステル繊維は、必要に応じて少量の添加剤、例えば滑剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、固相重合促進剤、整色剤、蛍光増白剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤、難燃剤又は艶消剤等を含んでいてもよい。
【実施例】
【0034】
本発明をさらに下記実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されるものではない。また各種特性は下記の方法により測定した。
【0035】
(1)平均粒径
粒子化合物を含有するポリエステル樹脂または、その成形品をエッチング処理した後、日立社製SEM(S3500−N)で粒子のサイズを観察した。観察した1粒の粒子について、最大となる長さ(Dmax)および最小となる長さ(Dmin)を測定し、平均値(Dave)を測定した。その後、同様の操作を繰り返し、100粒の粒子の平均値(Dave)をそれぞれ求め、この100粒あたりの平均値を平均1次粒径(D)と定義した。
【0036】
(2)繊維断面形状
500倍の繊維の透過型電子顕微鏡による断面写真から、20本の単糸につきA、B1、B2の値を測定し、その平均値から、扁平率(=A/B1)、B1/B2の値を算出した。
【0037】
(3)繊維の引張強度
JIS L1070記載の方法に準拠して測定を行った。
【0038】
(4)製糸安定性
紡糸、延伸工程において、1日当りの断糸、単糸巻き付き回数が、0〜1回を◎、2〜4回を○、5〜8回を△、9回以上を×とした。
【0039】
(5)遮熱性
ポリエステル繊維を用いて目付120g/mの筒編みを作成し、8cm×8cmの大きさに切り抜いた厚紙をその上に載せ、上方からのレフランプを照射した。該布帛の裏面から1cm下部の空間温度を比接触型の温度計を用いて測定し、照射開始から10分〜15分の平均値を求めた。
【0040】
[実施例1]
(二酸化チタンの20重量%エチレングリコールスラリーの調製)
エチレングリコール79.5重量%に対して、20.5重量%のルチル型二酸化チタン(屈折率2.72)を添加して、ガラスビーズを加え、サンドグラインダーで1時間攪拌処理を実施し、得られたスラリーをフィルターに通し、ガラスビーズを除去した。さらにスラリーを10μmのポールフィルターに通じ、粗大な粒子を除去した。
得られた二酸化チタンスラリーを秤量し、120℃の乾燥機で48時間乾燥させ、エチレングリコールを除去し、除去後の残渣物を秤量した。その結果、二酸化チタンの濃度(=[残渣物の質量]/[二酸化チタンスラリー質量])は20重量%であった。
【0041】
(ポリエステルチップの製造)
テレフタル酸ジメチル(DMT)194.2重量部とエチレングリコール124.2重量部(DMT対比200mol%)との混合物に、酢酸マグネシウム・4水和物0.086重量部(DMT対比20mmol%)をSUS製容器に仕込んだ。常圧下で140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、リン酸トリメチル0.042重量部(DMT対比30mmol%)になるよう添加し、5分後、二酸化チタンの20重量%エチレングリコールスラリーを、全樹脂組成物に対して、酸化チタンが5重量%となる様添加して、エステル交換反応を終了させた。その後、反応生成物に三酸化二アンチモン0.087重量部(DMT対比30mmol%)、撹拌装置、窒素導入口、減圧口および蒸留装置を備えた反応容器に移した。反応容器内温を285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空で重縮合反応を行い、固有粘度0.64dL/g(35℃、オルトクロロフェノール中)であるポリエステル組成物を得た。さらに常法に従いチップ化した。
【0042】
(本発明のポリエステル繊維の製造)
上記ポリエステル組成物チップを窒素気流下160℃で6時間乾燥後、285℃でエクストルーダーで溶融し、図1に示す断面形状となる吐出孔を36ホール有する口金から290℃の温度条件で吐出し、紡糸速度2500m/分で引き取った後、一旦巻き取ることなく、予熱温度90℃、熱セット温度120℃、延伸倍率1.62の条件で延伸し、4000m/分の底独活で巻き取り、44dtex/36fils.のポリエステル扁平断面繊維を得た。得られた繊維を2本合糸して筒編みを作成し、遮熱性を評価した。得られた繊維の物性を表1に示す。遮熱性については、酸化チタンを含有させずに作成した比較例9との温度差を示している。
【0043】
[実施例2,比較例1〜9]
実施例1において、単糸繊度、酸化チタンの量、粒径、繊維の断面形状を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。得られた繊維の物性、遮熱性を表1に示す。
表1に示す通り、本発明の範囲内である実施例1、2は、製糸性、物性が良好で遮熱性にも優れたものであり、実施例1の繊維を用いて無撚で110本/2.54cmの織密度で平織物を製織してシャツを作成し着用評価したところ、清涼感に優れるものであった。
【0044】
粒径が本発明範囲外の小さい粒子を添加した比較例1、および粒径が本発明の範囲外の大きい粒子を添加した比較例2は共に遮熱性に劣るものとなった。また、本発明の粒子添加量範囲外に少ない比較例3も同様に遮熱性に劣り、添加量が多すぎる比較例4は紡糸時の工程安定性、物性共に低いものとなった。さらに、くびれ数が多く扁平率も高い本発明の範囲外の比較例5も同様に工程安定性が低く、紡糸温度調整により扁平率のみ低くした比較例6では遮熱性に劣る結果となった。また、くびれ部の形状のみを緩くした比較例7、異型性を向上させ、くびれ部の厚みを薄くした比較例8でも遮熱性が低下する結果となった。
【0045】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のポリエステル繊維は遮熱性に優れかつ風合いが良好で、布帛とした場合に清涼感を有し、スポーツやアウターをはじめとする衣料、および産業資材などの多くの用途に利用可能であり、その工業的価値は極めて大である。
【符号の説明】
【0047】
A:扁平断面の長軸の幅
B1:扁平形状断面の短軸の最大幅
B2:くびれ部に相当する短軸の最小幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率が1.6〜5で平均粒径が0.5〜1.5μmの無機化合物粒子を少なくとも含有し、下記要件を満たしていることを特徴とする遮熱性ポリエステル繊維。
(1)無機化合物粒子の含有量が1〜15重量%であること
(2)単繊維の繊維軸に直交する断面の形状が扁平形状で、断面の長軸方向に丸断面単糸が直線状に連結した形状であり、くびれ部を2〜5個有すること。
(3)該扁平形状断面の長軸の幅Aとそれに直交する短軸の最大幅B1の比が2〜6であること。
(4)該扁平形状断面の短軸の最大幅B1と、くびれ部に相当する短軸の最小幅B2の比が1.05以上1.6以下であること
【請求項2】
単糸繊度が0.1〜2dtex、強度が3cN/dt以上である請求項1記載の遮熱性ポリエステル繊維。

【図1】
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【公開番号】特開2012−112056(P2012−112056A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260088(P2010−260088)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】