説明

遷移先表示装置及びプログラム

【課題】 予測対象者の検査回数が少ない場合でも、その先の将来の健康状態の推移を精度良く予測して表示できるようにする。
【解決手段】 健診データベース中の所定のレコード群の各検査項目の検査値分布を、同レベルの検査値数の比率が各検査項目間で同一となるように区分して得た各レベルの境界検査値を用い、健診データベース中で同一受診者の時系列データを持つレコード群を受診時年齢に対応する年齢区間に所属させて成る各年齢区間の各検査項目の検査値分布を区分する手段と、算出起点の検査項目・年齢区間・レベルから後続の年齢区間の各レベルへ遷移する確率を算出する手段と、表示を指示された検査項目を年齢区間毎にレベル区分して年齢区間順に並べた区間区分図を画面上に表示する手段と、表示を指示された検査項目の任意の年齢区間・レベルから後続の年齢区間の各レベルへ遷移する確率を取得して遷移確率に応じた態様で区間区分図上に表示する手段とを有する遷移先表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在の検査値から将来(例:数年先)のレベル(≒検査値の概略)を精度良く予測して表示し、及び、将来の予測レベルや任意に指定したレベルから更にその先の将来のレベルを精度良く予測して表示する機能を備えた遷移先表示装置と、コンピュータを遷移先表示装置として機能させるためのプログラムに関する。
検査項目としては、例えば、BMI、最高血圧、最低血圧、白血球数、赤血球数、血色素量、Ht(ヘマトクリット)、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球血色素量)、MCHC(平均赤血球血色素濃度)、血小板、GOT、GPT、γGTP、総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール、随時血糖等を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
従来の保健指導では、産業医や担当医が受診者の健診結果を見て、自身の経験に基づいて判断して指導する手法や、過去の検査結果からの直線回帰式によって将来の健康状態を予測・表示して指導する手法が行われている。
しかし、産業医や担当医の経験に基づく手法には、多大な労力や費用を必要とするという問題点がある。また、過去の検査結果からの直線回帰式に基づく手法では、トレンドは読み取れるものの、精度が悪く、長期の予測には耐え得ないという問題点がある。
【0003】
現時点では、集団としての生理学的な変化や個人の特性の両面を考慮し、生体が本来有する生理学的な特性や個人毎の健康状態を活用することにより、予測対象者の検査回数が少ない場合や、現在又は将来の一時点に於いて任意の検査結果を仮定した場合に、その仮定の検査結果から、その先の将来の健康状態の推移を精度良く予測して表示する手法は提供されていない。また、現在又は将来の一時点に於いて、予測対象とするべき任意の検査結果を簡単に仮定するための手法も提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2006−343792号公報(特許文献1)には、第1の時点で第1の条件を満たし、且つ、第2の時点で第2の条件を満たした受診者の中で、或る疾病aを発症した受診者の割合(発症率)を対応付けるルールを、疾病別や条件別に多数作成しておき、受診者の検査値が入力されると、何れのルールを満たすかを調べて、該当する疾病とその発症率を表示等するシステムが記載されている。
なお、第1の条件とは、例えば、性別:男性,年齢:40代,BMI≧25,血糖値<125,間食:する,等であり、第1の条件に対応する第2の条件とは、性別や年齢のような不変又は第1の条件から既定となる項目を除いた項目値、例えば、BMI≧30、血糖値<140,間食:する,等である。
【特許文献1】特開2006−343792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、集団としての生理学的な変化や個人の特性の両面を考慮し、生体が本来有する生理学的な特性や個人毎の健康状態を活用することにより、予測対象者の検査回数が少ない場合や、現在又は将来の一時点に於いて任意の検査結果を仮定した場合に、その仮定の検査結果から、その先の将来の健康状態の推移を精度良く予測して表示できるようにすることを目的とする。
また、現在又は将来の一時点に於いて、予測対象とするべき任意の検査結果を簡単に仮定するための手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の構成を、下記[1]〜[8]に記す。
[1]構成1
医療の各検査項目について統計処理可能な量のデータを有する健診データベース中の所定のレコード群の各検査項目の検査値分布を、同じレベルに含まれる検査値数の比率が各検査項目間で同一となるようにそれぞれ所定数個のレベルに区分することによりそれぞれ求められた各レベルの境界を与える境界検査値を用い、前記健診データベース中で同一受診者の時系列データを持つレコード群をそれぞれ当該レコードの受診時年齢に対応する年齢区間に所属させて成る各年齢区間の各検査項目の検査値分布をそれぞれ区分する、区間レベル区分手段と、
算出起点の検査項目・年齢区間・レベルから後続の年齢区間の各レベルへ遷移する確率を、当該算出起点に属する検査値数と、当該算出起点から後続の年齢区間の各レベルへそれぞれ遷移した各検査値数とに基づいて、それぞれ算出する遷移確率算出手段と、
表示を指示された検査項目を年齢区間毎にレベル区分して年齢区間順に並べて成る区間区分図の表示データを作成する区間区分図作成手段と、
表示を指示された検査項目・年齢区間・レベルから後続の年齢区間の各レベルへ遷移する確率を前記遷移確率算出手段から取得して、各遷移を遷移確率に応じた態様で図解して成る遷移態様図の表示データを作成する遷移態様図作成手段と、
前記区間区分図と前記遷移態様図の画面上への表示を制御する表示制御手段と、
を有することを特徴とする遷移先表示装置。
【0007】
所定のレコード群は、或る特定の群に偏ることなく、多数の人の特性を満遍なく表し得るデータを構成できればよく、例えば、数年間に渡って蓄積した膨大な健診データの中から、1回だけ受診した人(受診者IDが一つのみ)を抽出したレコード群を採用することができる。
検査項目としては、例えば、BMI、最高血圧、最低血圧、白血球数、赤血球数、血色素量、Ht(ヘマトクリット)、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球血色素量)、MCHC(平均赤血球血色素濃度)、血小板、GOT、GPT、γGTP、総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール、随時血糖等を挙げることができる。
区分数と各レベルの比率としては、例えば、各検査項目について、それぞれ検査値が低い方から順に、2.50%(レベル1)、23.75%(レベル2)、23.75%(レベル3)、23.75%(レベル4)、23.75%(レベル5)、2.50%(レベル6)、のように区分する手法を例示できるが、これに限定されない。
同一受診者の時系列データを持つレコード群は、同一受診者のレコードが、隣接する年齢区間の両方に跨がって含まれるようにすることにより、検査値の経年推移を各同一受診者について得るものである。例えば、6年間継続し且つ毎年1回受診した受診者のレコード群であり、年齢区間を5才刻みとするような場合である。
【0008】
区間区分図の例としては、例えば、図4内に遷移態様図とともに示されている図を挙げることができるが、図4の例に限定されない。表示を指示された検査項目を、年齢区間毎にレベル区分して、年齢区間順に並べて表示するものであればよい。図4の例では、隣接する年齢区間の間に或る間隔が設けられているが、密接されていてもよい。また、後述の構成4のように、少なくとも一部を非表示としてもよい。
遷移確率に応じた態様で図解して成る遷移態様図とは、例えば、算出起点から遷移先レベルへ矢印を引き、その太さを、遷移確率が大きいほど太く描いた図である。或いは、遷移確率に応じて、矢印の線種を、実線、破線、点線、鎖線等で描いた図や、これに、上記太さの相違を取り入れた図でもよい。また、矢印の輝度や色を、遷移確率が大きいほど目立つものとしてもよい。或いは、遷移先のレベル領域の表示を遷移確率に応じて変えてもよい。例えば、遷移確率が大きいレベルほど目立つように、例えば、ハイライト表示する等してもよい。また、遷移確率の数値を傍らに表示してもよく、さらに、その場合に於いて、遷移確率の大きさに応じて書体やポイントを異ならせてもよい。また、後述の構成5のように、表示を指示された検査項目・年齢区間・レベルから後続の年齢区間の各レベルへの遷移の少なくとも一部を非表示としてもよい。
【0009】
[2]構成2
構成1に於いて、
前記区間レベル区分手段は、前記健診データベース中の所定のレコード群をそれぞれ当該レコードの受診時年齢に対応する年齢区間に所属させて成る各年齢区間の各検査項目の検査値分布を、同じレベルに含まれる検査値数の比率が各検査項目間で同一となるようにそれぞれ所定数個のレベルに区分することによりそれぞれ求められた各レベルの境界を与える境界検査値を用い、前記健診データベース中で同一受診者の時系列データを持つレコード群をそれぞれ当該レコードの受診時年齢に対応する上記と同じ年齢区間に所属させて成る各年齢区間の各検査項目の検査値分布をそれぞれ区分する、
ことを特徴とする遷移先表示装置。
例えば、境界値を算出する場合と、区間レベルを区分する場合とで、年齢区間を、〜19才、20〜24才、25〜29才、30〜34才、・・のように揃える場合である。
[3]構成3
構成1又は構成2に於いて、
前記表示制御手段は、前記区間区分図上に前記遷移態様図を表示する、
ことを特徴とする遷移先表示装置。
[4]構成4
構成1〜構成3の何れかに於いて、
前記表示制御手段は、前記区間区分図の少なくとも一部を非表示とする、
ことを特徴とする遷移先表示装置。
[5]構成5
構成1〜構成4の何れかに於いて、
前記表示制御手段は、表示を指示された検査項目・年齢区間・レベルから後続の年齢区間の各レベルへの遷移の少なくとも一部を非表示とする、
ことを特徴とする遷移先表示装置。
【0010】
[6]構成6
構成1〜構成5の何れかに於いて、
前記遷移確率算出手段は、予測対象者の各検査項目の検査値に対応する各検査項目・年齢区間・レベルを算出起点としてそれぞれ遷移確率を求めた後続の年齢区間の各レベルの中で、遷移確率が最大のレベルをそれぞれ遷移先仮レベルとして保持し、
さらに、
前記遷移確率算出手段によりそれぞれ求めた遷移先仮レベル又は遷移先仮レベルの組合せの中に、前記健診データベース中の所定のレコード群を区分して得た検査項目・レベルの中から任意に選ばれる検査項目・レベル又は複数の検査項目・レベルの組合せとしての第1データであって該第1データとは異なる検査項目の或るレベルとしての第2データを所定値以上の確率で生起させる両データの組合せとして規定される何れかの導出ルールの第1データに該当するものが有るか否かを調べ、有る場合は、当該の導出ルールを用いて導出した第2データに基づいて当該第2データと検査項目が同じ遷移先仮レベルを修正する遷移先修正手段、
を有し、
前記遷移態様図作成手段は、前記遷移先仮レベルが前記遷移先修正手段により修正された場合は、当該修正を取り入れた遷移態様図を作成する、
ことを特徴とする遷移先表示装置。
第1データを前提としたとき第2データが生起する確率を、本明細書では、適宜、「信頼度」ということとする。信頼度の閾値を与える所定値としては、例えば「80%」を用いることができるが、これに限定されず、適宜に増減してよい。
【0011】
修正を取り入れた遷移態様図としては、例えば、
(1)遷移先仮レベル(遷移確率が最大のレベル)と、導出ルールの第2データで示されるレベル(修正後レベル)の両者が、それぞれ、両者の意味が分かるように明瞭に区別された表示(強調表示)となるようにする態様,
(2)遷移先仮レベル(遷移確率が最大のレベル)の強調表示を止め、導出ルールの第2データで示されるレベル(修正後レベル)が遷移蓋然性の高いレベルとして強調表示されるようにする態様,
(3)上記(2)に於いて、遷移蓋然性は高いが、遷移確率が最大のレベル(遷移先仮レベル)とは異なる旨が、併せて表示されるようにする態様,
(4)上記(2)に於いて、遷移先仮レベル(遷移確率が最大のレベル)の強調表示を止めるのみならず、他のレベルへの遷移確率に基づく表示も止め、導出ルールの第2データで示されるレベル(修正後レベル)のみが、遷移蓋然性の高いレベルとして強調表示されるようにする態様,
等のように、種々の態様を挙げることができる。なお、修正を取り入れた遷移態様図としては、上記以外の表示態様を実現する図であってもよい。
【0012】
[7]構成7
構成6に於いて、
前記遷移先修正手段は、前記区間区分図上の前記後続の年齢区間からユーザ入力により選択されたユーザ選択レベル又は前記遷移確率算出手段によりそれぞれ求めた遷移先仮レベル又はそれらの組合せの中に、前記健診データベース中の所定のレコード群を区分して得た検査項目・レベルの中から任意に選ばれる検査項目・レベル又は複数の検査項目・レベルの組合せとしての第1データであって該第1データとは異なる検査項目の或るレベルとしての第2データを所定値以上の確率で生起させる両データの組合せとして規定される何れかの導出ルールの第1データに該当するものが有るか否かを調べ、有る場合は、当該の導出ルールを用いて導出した第2データに基づいて当該第2データと検査項目が同じ遷移先仮レベルを修正し、
前記遷移態様図作成手段は、前記ユーザ選択レベルを前記表示を指示された検査項目・年齢区間・レベルとして処理する、
ことを特徴とする遷移先表示装置。
【0013】
即ち、ユーザ入力により選択されたレベル(ユーザ選択レベル)を、導出ルールの第1データ(又はその構成要素)の候補として、導出ルールを探索等する装置である。
また、ユーザ入力により選択されたレベル(ユーザ選択レベル)を起点として、その後続の年齢区間の各レベルへの遷移確率や、或いは、導出ルールの第2データで示されるレベル(修正後レベル)を、表示等する装置である。
【0014】
[8]構成8
コンピュータを、構成1〜構成7の何れかの遷移先表示装置として機能させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0015】
構成1は、医療の各検査項目について統計処理可能な量のデータを有する健診データベース中の所定のレコード群の各検査項目の検査値分布を、同じレベルに含まれる検査値数の比率が各検査項目間で同一となるようにそれぞれ所定数個のレベルに区分することによりそれぞれ求められた各レベルの境界を与える境界検査値を用い、前記健診データベース中で同一受診者の時系列データを持つレコード群をそれぞれ当該レコードの受診時年齢に対応する年齢区間に所属させて成る各年齢区間の各検査項目の検査値分布をそれぞれ区分する、区間レベル区分手段と、算出起点の検査項目・年齢区間・レベルから後続の年齢区間の各レベルへ遷移する確率を、当該算出起点に属する検査値数と、当該算出起点から後続の年齢区間の各レベルへそれぞれ遷移した各検査値数とに基づいて、それぞれ算出する遷移確率算出手段と、表示を指示された検査項目を年齢区間毎にレベル区分して年齢区間順に並べて成る区間区分図の表示データを作成する区間区分図作成手段と、表示を指示された検査項目・年齢区間・レベルから後続の年齢区間の各レベルへ遷移する確率を前記遷移確率算出手段から取得して、各遷移を遷移確率に応じた態様で図解して成る遷移態様図の表示データを作成する遷移態様図作成手段と、前記区間区分図と前記遷移態様図の画面上への表示を制御する表示制御手段と、を有することを特徴とする遷移先表示装置であるため、予測対象者の検査回数が少ない場合でも、その先の将来の健康状態の推移を精度良く予測して表示することができる。
構成2は、構成1の予測精度を更に高めた表示を行うことでできる。
構成3は、遷移態様図と区間区分図を連携して表示できるため、より、直感的に理解し易い表示を提供できる。
構成4や5は、区間区分図及び/又は遷移態様図の少なくとも一部を非表示とすることにより、非表示としないものに注意を集中して見ることができる。
構成6は、構成1の予測精度を更に高めた表示を行うことでできる。
【0016】
構成7は、構成6に於いて、
前記遷移先修正手段は、前記区間区分図上の前記後続の年齢区間からユーザ入力により選択されたユーザ選択レベル又は前記遷移確率算出手段によりそれぞれ求めた遷移先仮レベル又はそれらの組合せの中に、前記健診データベース中の所定のレコード群を区分して得た検査項目・レベルの中から任意に選ばれる検査項目・レベル又は複数の検査項目・レベルの組合せとしての第1データであって該第1データとは異なる検査項目の或るレベルとしての第2データを所定値以上の確率で生起させる両データの組合せとして規定される何れかの導出ルールの第1データに該当するものが有るか否かを調べ、有る場合は、当該の導出ルールを用いて導出した第2データに基づいて当該第2データと検査項目が同じ遷移先仮レベルを修正し、前記遷移態様図作成手段は、前記ユーザ選択レベルを前記表示を指示された検査項目・年齢区間・レベルとして処理する、ことを特徴とする遷移先表示装置であるため、現在又は将来の一時点に於いて任意の検査結果を仮定した場合に、その仮定の検査結果から、その先の将来の健康状態の推移を精度良く予測して表示することができるとともに、現在又は将来の一時点に於いて、予測対象とするべき任意の検査結果を簡単に仮定するための手法を提供することができる。
構成8は、コンピュータを構成1〜7の何れかの装置として機能させるためのプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】健診データ処理&予測処理の手順を示すフローチャート。
【図2】実施の形態の装置の構成を示すブロック図(a)と、レベル区分の手法の説明図(b)。
【図3】健診データベースの構成例を示す説明図(a)と、検査値をレベル化する実例を示す説明図(b)。
【図4】検査値の年齢範囲別の確率分布と遷移確率を男性・中性脂肪の場合について例示する説明図(導出ルール適用前)。
【図5】導出ルールの抽出例を示す説明図(a)と、遷移先のレベルを導出ルールの第2データで置換する例を示す説明図(b)。
【図6】図4の説明図で導出ルール適用後を示す。
【図7】図4の説明図で任意の年齢区間・レベル(45〜49才・レベル6)を選択した場合の表示の変化を示す説明図。
【図8】図4の説明図で任意の年齢区間・レベル(45〜49才・レベル6)を選択した場合の表示の変化を、区間区分図の一部を非表示とし、さらに、仮定の予測を併せて表示して示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
実施の形態の方法・装置は、図2(a)に示すコンピュータシステムに於いて実現される。即ち、制御装置10がROM13や必要に応じて記憶装置11から所定のプログラムを読み出して、図1に示す手順を実行することにより、実現される。
【0019】
ハードディスク或いはSSD等で構成される記憶装置11には、統計処理可能な量の健診データを有する健診データベースが格納されている。また、本願の健診データ処理機能を実現するためのアプリケーション等の各種のアプリケーションを、必要に応じて格納させてもよい。
【0020】
健診データベースの構成例を、図3(a)に示す。
図示の例では、一意の受診者IDと受診年月日に対応付けて、18個の検査項目(BMI,最高血圧(SBP),最低血圧(DBP),白血球数,赤血球数,血色素量(Hb),ヘマトクリット(Ht),MCV,MCH,MCHC,血小板,GOT,GPT,γGTP,総コレステロール,中性脂肪,HDLコレステロール(図ではHDLと略記),随時血糖)を有する。これらの検査項目は一例であり、他の検査項目を追加する等、適宜に増減してよい。また、別のテーブル(不図示)には、共通の受診者IDに対応付けて、年齢や性別等の受診者の属性が記録されている。
【0021】
制御装置10は、CPU等を有する公知の構成を有する。
図2(a)の例では記憶装置(ハードディスク)11は制御装置10に接続されているが、例えば、LAN等を介して接続されていてもよい。また、入力装置としても、図示のキーボード・マウスに限定されず、例えば、ICカードに記録された健診結果を読み取って健診データベースに蓄積する構成や、LAN(更にはインターネット)を介して入力される健診結果を健診データベースに蓄積する構成でもよい。予測対象者のデータ(各検査項目の検査値)の入力に関しても同様である。また、出力装置もディスプレイに限定されず、プリンタやスピーカでもよい。要は、図1の手順を実行できる構成であれば、ハードウェアの構成は任意である。
【0022】
図1に即して、実施の形態の装置の機能を実現する手順を説明する。
まず、健診データベースから、図3(a)に示す各検査項目の項目値を有するレコードのデータを取得する。また、各レコードの受診者IDにより対応付けられる各受診者の属性(年齢・性別)のデータも、不図示のテーブルから併せて取得する。
本例では、健診データとして、1回受診データ(レコード数:64194件)と、6回受診データ(受診者ID総数:12099)を用いている。
【0023】
1回受診データとは、データを蓄積した6年間の内、何れか1年の1回のみ、当該受診者IDのレコードが存在するデータである。
1回受診データは、レベル区分処理(S21)にて年齢区間別・性別に分類され、それぞれ検査項目毎に所定数個のレベルに区分され(=離散化され)、さらに、各レベルの境界検査値が算出される。算出された各境界検査値は、6回受診データのレベル化(=離散化)に用いられる。また、年齢区間別・性別に分類され、検査項目毎にレベル化された1回受診データは、ルール抽出処理(S41)に供される。ルール抽出処理(S41)の詳細は、後述する。
【0024】
6回受診データとは、データを蓄積した6年間の各年に、当該受診者IDのレコードが一つずつ存在するデータである。なお、受診年月日の「年」が同じレコードが同一の受診者IDで複数有る場合は、その受診者IDのデータは除外されている。
6回受診データは、レベル区分処理(S21)にて年齢区間別・性別に分類され、それぞれ、1回受診データの同じ年齢区間でのレベル化により算出した各レベルの境界検査値を用いて、検査項目毎にレベル化(=離散化)される。また、年齢区間別・性別に分類され、検査項目毎にレベル化された6回受診データは、遷移確率算出処理(S31)に供される。遷移確率算出処理(S31)の詳細は、後述する。
【0025】
なお、ステップS13の「1回受診データと6回受診データのグループ分け」は、受診者IDと受診年月日を照合することにより、行うことができる。
【0026】
ステップS21では、前述のように、1回受診データを年齢区間別・性別に分類し、各分類を、それぞれ、検査項目毎に所定数個のレベルに区分する。また、6回受診データを年齢区間別・性別に分類し、各分類を、それぞれ、1回受診データのレベル化で得た対応する年齢区間・性・レベルの境界検査値を用いてレベル化する。
【0027】
1回受診データの任意の年齢区間・性・検査項目のレベル化は、図2(b)に示すように、当該年齢区間・性・検査項目の最小値の検査値から始め、その総数のうち、2.50%まで含まれる検査値、26.25%まで含まれる検査値、50.00%まで含まれる検査値、73.75%まで含まれる検査値、97.50%まで含まれる検査値、100.00%まで含まれる検査値を、それぞれ求めることによって行う。2.50%以下は検査値が低い側の異常値、97.50%より大は高い側の異常値である。また、2.50%より大で、且つ、97.50%以下は、正常値とされる範囲である。年齢区間としては、本例では、5才刻みを採用している。即ち、〜19才まで、20〜24才、25〜29才、30〜35才、・・・の5才刻みを採用している(図4参照)。
【0028】
1回受診データのレベル化で得られた各境界検査値は、それぞれ、6回受診データの同じ年齢区間・性・検査項目のレベル化に用いられる。例えば、1回受診データの40〜44才・男性・中性脂肪のレベル化で得られた各レベルの境界検査値を、6回受診データの40〜44才・男性・中性脂肪のレベル化に用いる。このように年齢区間・性・検査項目を揃えているため、年齢や性によって検査値の標準値等にズレが有る場合等でも、データ量が比較的少ない6回受診データを、多量のデータ量を持つ1回受診データと同等の良好な精度で、レベル化することができる。
【0029】
こうして、1回受診データ及び6回受診データの各年齢区間・各性・各検査項目の検査値を、同じレベルに含まれる検査値数の、当該年齢区間・性・検査項目での全検査値数に対する比率が、各検査項目間で同一となるように、それぞれ所定数個(本例では6個)のレベルに区分した後、次に、両受診データの各検査値を、それぞれ該当するレベル(離散値)で置換したデータを作成する。これにより、両受診データの各年齢区間・各性・各検査項目の各検査値を「検査項目・レベル」で統一的に扱うことが可能になる。検査値を該当するレベルで置換した一例を、図3(b)に示す。
【0030】
さらに、1回受診データに関しては、各検査項目の年齢区間別・性別の確率分布を求めて、レベル(離散値)で表現した区間区分図を作成する。区間区分図とは、年齢区間毎にレベルで区分して、年齢区間順に並べた図である。図4に、男性・中性脂肪の場合について各年齢区間の各レベルの確率分布を求めて作成した区間区分図を例示する。レベル1が検査値の低い側、レベル6が高い側である。なお、図4では、隣接する年齢区間には間隔が設けられているが、密接させてもよい。
【0031】
本例では、図4のような区間区分図をディスプレイへ出力し、この区間区分図上に、遷移確率や遷移先を表示する。即ち、遷移態様図を表示する。例えば、或る年齢区間の或るレベルから後続の年齢区間の各レベルへ遷移する場合の遷移確率の大小を、当該或る年齢区間の或るレベルから後続の年齢区間の各レベルへ引いた矢印の太さで表現するようにしてもよい。或いは、矢印の輝度の大小や、矢印の線種(実線,破線,点線,等)で表現してもよく、これに、上記太さの相違を加味して表示してもよい。なお、図4では、縦軸は確率分布であるが、実際の検査値が分かるように、縦軸の確率分布を検査値に変換して表示してもよく、両者を表示するようにしてもよい。つまり、ユーザフレンドリーな表示となるように、適宜、改良してよいことは勿論である。
遷移先表示の詳細については、後述する。
【0032】
ステップS31では、6回受診データを用いて、遷移確率算出処理を実行する。
前述したように、6回受診データでは、データを蓄積した6年間の各年に、受診者IDが同じレコードが一つずつ存在する。したがって、本例のように5才刻みで年齢区間を設定すると、隣接する年齢区間(例:40〜44才,45〜49才)には、必ず、同一受診者のデータが含まれることとなる。このため、6回受診データを用いると、各人の検査値の経年推移について精度の良い推定を行うことができ、ひいては、任意の年齢区間の任意のレベルから後続の年齢区間の各レベルへ遷移する確率について、精度の良い推定を行うことができる。
【0033】
遷移確率の算出は、或る検査項目・年齢区間・レベルに属している各データが、後続の年齢区間では、それぞれ何れのレベルへ推移するかを、各検査項目・年齢区間・レベルについてそれぞれに属するデータ数をカウントすることによって行う。
例えば、中性脂肪・男性の例では、40〜44才・レベル4に属する6回受診データは213件(不図示)であるが、年齢区間45〜49才では、41件(=19.2%)がレベル6、64件(=30.0%)がレベル5、51件(=23.9%)がレベル4、31件(=14.6%)がレベル3、26件(=12.2%)がレベル2、0件(=0%)がレベル1に属する。これより、図示のような推定が可能となる。
かかる計数結果に基づいて、ステップS31では、各検査項目の任意の年齢区間・レベルを起点とする、後続の年齢区間の各レベルへの遷移確率を算出するのである。
【0034】
ステップS41ではルール抽出処理を実行する。データとしては、レベル区分処理(S21)に於いて年齢区間別・性別に分類し、検査項目毎に所定数個(6個)のレベルに区分した、1回受診データを用いる。
ルール抽出処理では、或る検査項目・レベル又は2以上の或る検査項目・レベルの組合せ(第1データ)を前提としたとき、当該前提とした第1データの何れの検査項目とも異なる或る検査項目の或るレベル(第2データの検査項目・レベル)が生起する確率が、所定値(例:80%)以上の場合に、当該第1データ・第2データの組合せを、当該第1データから当該第2データを導出する導出ルールとして抽出する。
【0035】
例えば、図5(a)に示すように、「最高血圧・1を前提としたとき、最低血圧・1が生起する確率は、83.33%(confidence;参照)」であり、所定値(80%)以上である。このため、「最高血圧・1を第1データとし、最低血圧・1を第2データとする」導出ルールが抽出される。同様に、「Ht・2で、且つ、MCHC・3を前提としたとき、血色素量・2が生起する確率は100%であり、所定値(80%)以上である。このため、「Ht・2且つMCHC・3を第1データとし、血色素量・2を第2データとする」導出ルールが抽出される。
【0036】
このような導出ルールを適宜に用いることにより、相関を有する検査項目の検査値(レベル)又はその組合せから、相関を有する別の検査項目の検査値(レベル)を精度良く推定し、或いは修正することが可能となる。例えば、遷移確率算出処理(S31)で算出した後続の各レベルへの遷移確率の大小関係(例:何れのレベルへの遷移確率が最大であるか,等)を、精度良く修正することが可能となる。
【0037】
なお、ルール抽出処理では、第1データとして有り得ない組合せ、即ち、検査項目が同じで且つレベルが異なる組合せ(例:Ht・2、且つ、Ht・3)を第1データの候補とすることは、予め、除外されている。これにより、無駄に生起確率を演算することを防止でき、コンピュータの負荷を軽減できる。
また、第1データと第2データが同時に生起する確率(support参照)が極めて小さい場合(例:3%より小)も、生起確率の演算対象から除外されて、負荷の軽減が図られている。
【0038】
ステップS51では、予測処理を実行する。
まず、予測対象者のデータを取得する。このデータとしては、健診データベースと同じ検査項目(図3(a)参照)の各検査値、及び、予測対象者の属性(年齢・性別)を挙げることができる。なお、健診データベースと同じ検査項目の全ての検査値が揃っていなくてもよい。つまり、一部の検査値のみでもよい。また、予測対象者は、実在の受診者でもよく、仮想の受診者でもよい。
【0039】
この予測対象者のデータは、例えば、キーボードやマウス等の入力装置から入力されてもよく、ICカード等のデータを読み込む構成でもよい。また、LANや、更にはインターネットを介して入力されるデータを取得する構成でもよい。或いは、予めハードディスク等に記録されている健診者リストから、予測対象者を所定の順序で読み出して、順に取得するような構成でもよい。
【0040】
こうして取得した各検査項目の検査値を、次に、レベル化する。即ち、それぞれ、該当するレベルに置換する。レベル化の境界検査値としては、ステップS21(レベル区分処理)にて1回受診データに基づいて算出した境界検査値の中で、当該予測対象者の年齢と性別に該当する境界検査値を用いる。
【0041】
次に、現在のレベルから、後続の年齢区間の各レベルへ遷移する確率を、それぞれ取得する。現在のレベルとは、予測対象者の検査値の属するレベルである。また、後続の年齢区間とは、予測対象者の5年後の年齢が属する年齢区間である。後続の年齢区間の各レベルへの遷移確率は、ステップS31(遷移確率算出処理)にて6回受診データに基づいて算出した各値を取得する。また、各遷移確率の中で最大の遷移確率となる遷移先のレベルを、遷移先仮レベルとして、メモリ12上に保持する。
【0042】
後続の年齢区間の各レベルへの遷移確率について説明する。
例えば、予測対象者の年齢が42才(年齢区間:40〜44才)で、検査項目「中性脂肪」の検査値に対応するレベルが「4」の場合、図4内に黒丸印で示した位置が、現在のレベルである。この位置を起点として、後続の年齢区間(45〜49才)の各レベルへの遷移確率は、レベル6が19.2%、レベル5が30.3%、レベル4が23.9%、レベル3が14.6%、レベル2が12.2%、レベル1が0.0%である。これらは、ステップS31の遷移確率算出処理にて計数値に基づいて算出されて、メモリ12上に保持されているものとする。
【0043】
この場合に於いて、遷移確率が最大となるのは、レベル5へ遷移する場合の30.0%であるため、このレベル5が、遷移先仮レベルとして保持される。図4では、遷移確率が最大のレベル5へ向かう矢印が最も太く表されている。即ち、図4では、遷移確率の大きい順に、最太実線矢印、太実線矢印、細実線矢印、細破線矢印、細点線矢印、細2点鎖線矢印で表されている。矢印の起点としては、例えば、当該のレベルの中央位置を設定できるが、これに限定されない。例えば、前述したように、図4の縦軸に確率分布及び/又は実際の検査値を表示できるため、予測対象者の検査値の高さを起点に設定してもよい。
図4の表示は上記のとおりであるが、後述の図6〜8では、ルールを用いた修正等に応じて、矢印の線種や太さ、或いは、矢印の指す位置等が、適宜、変更されている。
【0044】
遷移確率最大の遷移先レベル(遷移先仮レベル)が決まると、次に、導出ルールに基づく修正が行われる。即ち、予測対象者の各検査値に基づいてそれぞれ求めた遷移先仮レベル(遷移確率が最大の遷移先のレベル)又は遷移先仮レベルの組合せの中に、導出ルールの第1データに該当するものが有る場合に、当該の導出ルールを用いて導出した第2データ(検査項目・レベル)で、当該第2データと検査項目が同じ遷移先仮レベルを置換する修正が行われる。
【0045】
例えば、予測対象者の各検査項目の検査値に基づいて、遷移先仮レベルとして、「「Ht・2」「MCHC・3」「血色素量・3」が決まった場合を考えると、図5(a)に示されるように、「「Ht・2」「MCHC・3」を第1データとし、「血色素量・2」を第2データとする導出ルールが存在する。このため、この場合は、遷移先仮レベルとして保持された中の「血色素量・3」が、第2データ「血色素量・2」に置換される。この様子を、図5(b)に示す。
【0046】
このような修正を、中性脂肪の区間区分図を用いて説明する。
図6は、当初図4であったものが、導出ルールによって矢印の太さが変更された様子を表す。即ち、中性脂肪の年齢区間40〜44才のレベル4から後続の年齢区間への遷移確率最大のレベル(遷移先仮レベル)は図4に示すようにレベル5であるが、導出ルールの中に「中性脂肪・4」を第2データとするルールがあり、当該の導出ルールの第1データが、当該予測対象者の各検査値に基づいて求めた1又は2以上の遷移先仮レベルによって構成されるものであったため、「中性脂肪・5」が「中性脂肪・4」で置換され、その結果、矢印の太さが、図6のように変更されたものである。
【0047】
なお、上記では、図4から図6へ表示が切り換えられる場合に即して説明したが、遷移先仮レベルの算出後、直ちに導出ルールに基づく修正を自動的に実行するように構成した場合には、図4の表示は実際には行われず、直ちに、図6の表示が行われる。また、図4から図6への切り換えを、ユーザの指示入力に応じて行うように構成してもよい。
また、図4や図6の表示は一例を示すものであり、例えば、図6の矢印の太さや線種を図4と同様とし、これに代えて、導出ルールによって変更されたレベルを強調表示(例えば、ハイライト表示)等して、ユーザに示しても良い。
【0048】
遷移確率に応じた表示態様や、導出ルールによる修正を取り入りて表示する態様の例としては、例えば、以下のような表示態様を挙げることができる。即ち、
遷移確率に応じた表示態様としては、例えば、
(a)算出起点から遷移先レベルへ矢印を引き、その太さを、遷移確率が大きいほど太くするような表示態様。
(b)遷移確率に応じて、矢印の線種を、実線、破線、点線、鎖線等で表現するような表示態様。
(c)矢印の輝度や色を、遷移確率が大きいほど目立つものとした表示態様。
(d)遷移先のレベル領域の表示を遷移確率に応じて変えた表示態様。例えば、遷移確率が大きいレベルほど目立つように、例えば、ハイライト表示する表示態様。
(e)遷移確率の数値を傍らに表示した表示態様。さらに、その場合に於いて、遷移確率の大きさに応じて書体やポイントを異ならせた表示態様。
を例示することができる。
【0049】
また、修正を取り入れた所定の態様としては、例えば、
(1)遷移先仮レベル(遷移確率が最大のレベル)と、導出ルールの第2データで示されるレベル(修正後レベル)の両者を、それぞれ、両者の意味が分かるように明瞭に区別して表示(強調表示)する態様。
(2)遷移先仮レベル(遷移確率が最大のレベル)の強調表示を止め、導出ルールの第2データで示されるレベル(修正後レベル)を遷移蓋然性の高いレベルとして強調表示する態様。
(3)上記(2)に於いて、遷移蓋然性は高いが、遷移確率が最大のレベル(遷移先仮レベル)とは異なる旨を、併せて表示する態様,
(4)上記(2)に於いて、遷移先仮レベル(遷移確率が最大のレベル)の強調表示を止めるのみならず、他のレベルへの遷移確率に基づく表示も止め、導出ルールの第2データで示されるレベル(修正後レベル)のみを、遷移蓋然性の高いレベルとして強調表示する態様。
(5)遷移先仮レベル(遷移確率が最大のレベル)と、導出ルールの第2データで示されるレベル(修正後レベル)が隣接する場合には、その境界部分を矢印の指示先に設定して表示する態様。
等を例示することができる。
なお、遷移確率に応じた表示態様や、修正を取り入れた所定の態様としては、上記以外の表示態様であってもよい。
【0050】
前記導出ルールに基づく修正の説明に於いて、修正された「検査項目・レベル」が、別の導出ルールの第1データ又はその一部を構成している場合もあり得る。その場合には、当該の導出ルールにより導出される第2データによって更に別の検査項目の遷移先仮レベルが置換される等して、次々と変動が波及し、最終的に当初に置換された「検査項目・レベル(図5(b)の血色素量・2)」が再び置換されてしまう事態も生じ得る。このような循環現象による不定状態を防止するため、本装置では、導出ルールの第2データで置換された「検査項目・レベル」を、導出ルールの第1データとして用いないようにシステムを構成している。
なお、これに代えて、例えば、「再度の置換が実施されようとした時点で、導出ルールの適用を止める」等の構成とすることもできる。
【0051】
また、本装置では、何れかの「検査項目・レベル」が選択されると、当該の検査項目に関しては、当該「検査項目・レベル」を第1データの構成要素として処理するように、システムを構成している。即ち、当該の検査項目に関しては、当該「検査項目・レベル」を遷移先仮レベルとみなして処理するように、システムを構成している。
【0052】
このことを、図4と図7を参照して説明する。
図4に於いて、遷移先仮レベルは「レベル5」である。このとき、例えば、図示のように「レベル6」を選択すると、図4の検査項目「中性脂肪」に関しては、当該の「レベル6」を用い、且つ、他の検査項目に関してはそれぞれの遷移先仮レベルを用いて、導出ルールが適用される。さらに、当該の「レベル6」を起点として、その後続の年齢区間の各レベルへの遷移確率がそれぞれ取得されて、図7に示すように、当該取得した遷移確率に応じた太さや線種の矢印で、各レベルへの遷移が表示される。
このため、ユーザは、例えば、現状では、5年先には「レベル5」に遷移する確率が最大であるが、不摂生等を重ねた結果、例えば、「レベル6」に遷移してしまったとしたとき、その後、どのように遷移していくかを、分かり易く把握することができる。
【0053】
図7を別様に表示した例を図8に示す。
図8では、区間区分図の一部を非表示としている。
また、図8では、選択した「レベル6」への遷移を仮定の予想(最大可能性)として2点鎖線太矢印で示すとともに、当該「レベル6」からの遷移先についても、2点鎖線太矢印(最大可能性)と、2点鎖線矢印(次の可能性)とで示している。
また、図8では、予測対象者の各検査項目の検査結果から、遷移確率は「レベル5」が最大であったが、導出ルールによる修正では「レベル4」が導出されたため、両レベルの境界を矢印の指示先に設定して表示している。
【0054】
このような出力は、ディスプレイのみならず、例えば、プリンタで出力するように構成することもできる。また、LAN更にはインターネットを介して、問い合わせ元の端末装置へ送信するように構成してもよい。
本願の装置で遷移確率を算出し、さらに、導出ルールで修正した結果を多数の健診者のデータに当てはめてみた結果、良好な精度を得ることを確認できた。
【符号の説明】
【0055】
10 制御装置(CPUを備える)
11 記憶装置(ハードディスク等)
12 記憶装置(RAM)
13 記憶装置(ROM)
16 入力装置(キーボード,マウス等)
17 出力装置(ディスプレイ等)
18 LAN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療の各検査項目について統計処理可能な量のデータを有する健診データベース中の所定のレコード群の各検査項目の検査値分布を、同じレベルに含まれる検査値数の比率が各検査項目間で同一となるようにそれぞれ所定数個のレベルに区分することによりそれぞれ求められた各レベルの境界を与える境界検査値を用い、前記健診データベース中で同一受診者の時系列データを持つレコード群をそれぞれ当該レコードの受診時年齢に対応する年齢区間に所属させて成る各年齢区間の各検査項目の検査値分布をそれぞれ区分する、区間レベル区分手段と、
算出起点の検査項目・年齢区間・レベルから後続の年齢区間の各レベルへ遷移する確率を、当該算出起点に属する検査値数と、当該算出起点から後続の年齢区間の各レベルへそれぞれ遷移した各検査値数とに基づいて、それぞれ算出する遷移確率算出手段と、
表示を指示された検査項目を年齢区間毎にレベル区分して年齢区間順に並べて成る区間区分図の表示データを作成する区間区分図作成手段と、
表示を指示された検査項目・年齢区間・レベルから後続の年齢区間の各レベルへ遷移する確率を前記遷移確率算出手段から取得して、各遷移を遷移確率に応じた態様で図解して成る遷移態様図の表示データを作成する遷移態様図作成手段と、
前記区間区分図と前記遷移態様図の画面上への表示を制御する表示制御手段と、
を有することを特徴とする遷移先表示装置。
【請求項2】
請求項1に於いて、
前記区間レベル区分手段は、前記健診データベース中の所定のレコード群をそれぞれ当該レコードの受診時年齢に対応する年齢区間に所属させて成る各年齢区間の各検査項目の検査値分布を、同じレベルに含まれる検査値数の比率が各検査項目間で同一となるようにそれぞれ所定数個のレベルに区分することによりそれぞれ求められた各レベルの境界を与える境界検査値を用い、前記健診データベース中で同一受診者の時系列データを持つレコード群をそれぞれ当該レコードの受診時年齢に対応する上記と同じ年齢区間に所属させて成る各年齢区間の各検査項目の検査値分布をそれぞれ区分する、
ことを特徴とする遷移先表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に於いて、
前記表示制御手段は、前記区間区分図上に前記遷移態様図を表示する、
ことを特徴とする遷移先表示装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに於いて、
前記表示制御手段は、前記区間区分図の少なくとも一部を非表示とする、
ことを特徴とする遷移先表示装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに於いて、
前記表示制御手段は、表示を指示された検査項目・年齢区間・レベルから後続の年齢区間の各レベルへの遷移の少なくとも一部を非表示とする、
ことを特徴とする遷移先表示装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに於いて、
前記遷移確率算出手段は、予測対象者の各検査項目の検査値に対応する各検査項目・年齢区間・レベルを算出起点としてそれぞれ遷移確率を求めた後続の年齢区間の各レベルの中で、遷移確率が最大のレベルをそれぞれ遷移先仮レベルとして保持し、
さらに、
前記遷移確率算出手段によりそれぞれ求めた遷移先仮レベル又は遷移先仮レベルの組合せの中に、前記健診データベース中の所定のレコード群を区分して得た検査項目・レベルの中から任意に選ばれる検査項目・レベル又は複数の検査項目・レベルの組合せとしての第1データであって該第1データとは異なる検査項目の或るレベルとしての第2データを所定値以上の確率で生起させる両データの組合せとして規定される何れかの導出ルールの第1データに該当するものが有るか否かを調べ、有る場合は、当該の導出ルールを用いて導出した第2データに基づいて当該第2データと検査項目が同じ遷移先仮レベルを修正する遷移先修正手段、
を有し、
前記遷移態様図作成手段は、前記遷移先仮レベルが前記遷移先修正手段により修正された場合は、当該修正を取り入れた遷移態様図を作成する、
ことを特徴とする遷移先表示装置。
【請求項7】
請求項6に於いて、
前記遷移先修正手段は、前記区間区分図上の前記後続の年齢区間からユーザ入力により選択されたユーザ選択レベル又は前記遷移確率算出手段によりそれぞれ求めた遷移先仮レベル又はそれらの組合せの中に、前記健診データベース中の所定のレコード群を区分して得た検査項目・レベルの中から任意に選ばれる検査項目・レベル又は複数の検査項目・レベルの組合せとしての第1データであって該第1データとは異なる検査項目の或るレベルとしての第2データを所定値以上の確率で生起させる両データの組合せとして規定される何れかの導出ルールの第1データに該当するものが有るか否かを調べ、有る場合は、当該の導出ルールを用いて導出した第2データに基づいて当該第2データと検査項目が同じ遷移先仮レベルを修正し、
前記遷移態様図作成手段は、前記ユーザ選択レベルを前記表示を指示された検査項目・年齢区間・レベルとして処理する、
ことを特徴とする遷移先表示装置。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1〜請求項7の何れかの遷移先表示装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−14581(P2012−14581A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152229(P2010−152229)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、文部科学省、地域産学官連携科学技術振興施策、助成研究(地域イノベーションクラスタープログラム(都市エリア型)岐阜県南部エリア)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【出願人】(599144712)タック株式会社 (25)