説明

遺体の処置装置

【課題】遺体の体内物が肛門から漏出することを抑制する。
【解決手段】遺体の直腸内で体内物の水分を吸収してゲル化する吸水剤3と、該直腸内で膨張することにより直腸を封止する封止部材2とを、筒状の案内部材4に吸水剤3が封止部材2よりも該案内部材4の一端開口部側に位置するように収容しておき、該案内部材4の一端開口部側を肛門に挿入し、吸水剤3と封止部材2とを押出部材5により直腸内に押出し、該吸水剤3が封止部材2よりも直腸の奥側に挿入されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺体の処置装置に関し、特に、遺体の肛門から体内物が漏出するのを抑制する遺体の処置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、人間が死亡した後には、各部の筋肉が弛緩してきて、例えば肛門からは直腸内に残留している便や体液等の体内物が漏出し、女性の場合には膣からも体内物が漏出することがある。このように遺体の各孔部から体内物が漏出すると、衛生的に好ましくなく、その後の遺体の搬送作業等に悪影響を与えることになるので、従来より、例えば特許文献1に開示されているような封止部材により遺体の孔部を封止して体内物の漏出を抑制することが行われている。
【0003】
特許文献1の封止部材は、水分を吸収して膨張する水膨潤性繊維により構成された柱状体を水溶性のシートで被覆し、さらに、このシートの表面に潤滑剤を塗布してなるものである。この封止部材を例えば肛門に使用する際には、処置者が柱状体の長手方向一端部を肛門に当てて他端部を指で挿入方向に押すことで、潤滑剤の作用により柱状体がシートと共に直腸内に挿入される。柱状体がシートと共に直腸内に挿入されると、体内物の水分によりシートが溶け、該水分が柱状体の繊維に吸収される。この水分を吸収した繊維が膨張することで柱状体の直径は拡大し、該柱状体が直腸内壁に密着して直腸が閉塞された状態となり、肛門からの体内物の漏出が抑制される。
【特許文献1】特開2003−111830号公報(第3頁、第4頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば人間が病死した場合には、その前に行われた治療の際の洗腸処置等によって体内物が多量に排出することがある。また、洗腸処置等を施さなくても個人差により体内物の水分量は多めの場合がある。このように洗腸処置等を施した場合や遺体の体内物の水分量が多い場合には、特許文献1のように封止部材を孔部に挿入しただけでは、体内物の水分を柱状体で吸水しきれずに、体内物が柱状体の繊維間を流動して孔部から漏出してしまうことがある。
【0005】
また、特許文献1の封止部材では、繊維で構成された柱状体を処置者が指で押して孔部内に挿入するようにしているので、挿入途中で柱状体の形が崩れて所定位置に挿入できずに、柱状体による孔部の封止作用が低下してしまうことが考えられる。従って、柱状体の挿入作業は該柱状体の形が崩れないように注意深く行う必要があり、処置者にとって煩雑な作業である。さらに、そのように柱状体を遺体の孔部に確実に挿入するには、処置者は該孔部に指を差し込まなければならないので、柱状体の挿入作業は処置現場において敬遠される作業である。
【0006】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、洗腸処置等を施した場合や、体内物の水分量が多い場合であっても、遺体の孔部から体内物が漏出するのを抑制できるようにし、しかも、その体内物の漏出を抑制する処置の作業性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、筒状の案内部材に封止部材及び吸水剤を収容し、これら封止部材及び吸水剤を押出部材により遺体の孔部内に押し出すようにした。
【0008】
請求項1に係る発明は、遺体の体内物が肛門から漏出するのを抑制する遺体の処置装置であって、
筒状の案内部材と、
上記案内部材に収容される吸水剤及び直腸封止部材と、
上記吸水剤及び直腸封止部材を上記案内部材の一端開口部から押し出す押出部材とを備え、
上記案内部材の一端開口部側は、肛門から直腸へ挿入されるように形成されるとともに、肛門への挿入前に上記吸水剤が上記案内部材の外部に出るのを抑制するように構成されている。
【0009】
従って、吸水剤及び直腸封止部材を案内部材によって直腸に挿入するようにしたから、吸水剤及び直腸封止部材を直腸に挿入するに際して、処置者は肛門に指を差し込む必要はない。そして、直腸に挿入された直腸封止部材により直腸が封止される。また、体内物の水分が吸水剤により吸収されるので、該体内物が肛門から漏出するのが抑制される。
【0010】
また、上記案内部材の一端開口部側に、上記吸水剤及び直腸封止部材が外部に出てしまわないように該一端開口部を閉塞する閉塞部材を設けてもよい。
【0011】
従って、案内部材の一端開口部が閉塞部材により閉塞されているので、案内部材に収容された吸水剤及び直腸封止部材が、使用前に一端開口部から外部に出てしまうことはない。また、吸水剤及び直腸封止部材を遺体の直腸に挿入する際には、処置者が案内部材の一端開口部を遺体の肛門に挿入してから押出部材を操作するだけで、閉塞部材が案内部材の一端開口部から離脱し、吸水剤及び直腸封止部材が案内部材により案内されて直腸内の所定位置まで挿入される。
【0012】
また、上記案内部材の外周面に鍔部を設けておき、該案内部材を肛門に挿入してその鍔部を肛門の周辺に接触させることにより、該案内部材がそれ以上肛門に挿入されないようにしてもよい。
【0013】
従って、案内部材の鍔部が該案内部材の肛門からの挿入量の目安となる。
【0014】
また、上記案内部材の内面における他端部近傍には径方向内側へ突出し、上記押出部材に係合して該押出部材が当該案内部材から抜け落ちないようにする突起部が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
従って、本発明によれば、吸水剤及び直腸封止部材が挿入された筒状の案内部材を肛門から直腸へ挿入して、吸水剤及び直腸封止部材を押出部材により直腸内に押し出すことができる。これにより、処置者は肛門に指を差し込むことなく、吸水剤及び直腸封止部材を直腸に挿入することができ、また、直腸封止部材によって直腸を封止することができるとともに、吸水剤により体内物の水分を吸水させることができ、該体内物が肛門から漏出することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る遺体の処置装置1を示す。この処置装置1は、図5に示すように、遺体の直腸B内の体内物が肛門Aから漏出するのを抑制するものであり、水分を吸収して膨張する柱状体としての封止部材2と、吸水剤3と、これらを収容して遺体の直腸B内に案内する筒状の案内部材4と、上記封止部材2及び吸水剤3を案内部材4から押し出す押出部材としての押出棒5とを備えている。
【0018】
上記案内部材4は、樹脂材を円筒状に成形してなるものであり、両端が開口している。この案内部材4の大きさは、例えば大人の肛門の形状に対応しており、具体的には、軸方向の寸法は85mm以上100mm以下に設定され、また、内径は20mm以上23mm以下に設定されている。案内部材4の肉厚は、約0.5mmに設定されている。
【0019】
図2に示すように、案内部材4の一端開口部4aの周縁には、該一端開口部4aの径方向中心へ向けて湾曲して延びる複数の羽状部7が一体に設けられている。一端開口部4aの周方向に隣接する羽状部7の間には隙間が設けられており、各羽状部7は、該羽状部7の先端側が案内部材4の軸方向に変位するように撓み変形可能とされている。また、一端開口部4aの径方向に向かい合う羽状部7の先端間の寸法R2は、案内部材4の内径R1の0.3倍以上0.7倍以下の範囲で設定されている。
【0020】
図1に示すように、上記案内部材4の他端開口部4bの直径は、該案内部材4の内径R1と略同じに設定されている。この案内部材4の内面における他端部近傍には、径方向内側へ突出する突起部8が一体に設けられている。
【0021】
上記押出棒5は、棒材10と、該棒材10の両端部に設けられた一対の円板部材11とで構成されている。これら一対の円板部材11は共通しており、外径は案内部材4の内径R1と略同じに設定され、各円板部材11の周縁部には、案内部材4の内面に摺接する周壁部12が設けられ、中心部には断面十字状の嵌合部13が棒材10側へ向けて突設されている。図3に示すように、各円板部材11の周壁部12と嵌合部13との間には、3つの開口部14が互いに周方向に離れて設けられている。この開口部14は、押出棒5を案内部材4の軸方向に移動させる際に、該案内部材4内の空気を円板部材11の両側に流通させるためのものである。この開口部14の大きさや数は自由に設定することが可能である。
【0022】
また、上記棒材10は、細長い円筒状に形成され、長さは、上記案内部材4の軸方向の寸法よりも長く設定されている。該棒材10の両端部に上記円板部材11の嵌合部13が嵌入して棒材10と円板部材11とが一体化されている。このように、押出棒5を棒材10と円板部材11とを組み合わせて構成したので、該棒材10と円板部材11とを適切な材料で構成することが可能になる。
【0023】
上記押出棒5は、一方の円板部材11側から案内部材4の他端開口部4bに挿入されるようになっており、この挿入された状態で、円板部材11の周壁部12と案内部材4の内面との間に摺動抵抗が生じるようになっている。また、押出棒5を案内部材4に挿入すると、円板部材11の周壁部12が案内部材4の突起部8に係合して押出棒5が案内部材4から抜け落ちないようになっている。また、上記のように押出棒5の両端の円板部材11を共通化しているので、どちらの円板部材11を案内部材4に挿入しても案内部材4との関係は同じになる。
【0024】
上記封止部材2は水膨潤性繊維を円柱状に成形してなるものである。この封止部材2の外径は、上記案内部材4の内径R1と略同じに設定され、軸方向の寸法は案内部材4の軸方向の寸法よりも短く設定されている。尚、封止部材2の大きさは、本処置装置1を使用する遺体に合わせて変更することが可能である。
【0025】
この実施形態では、上記水膨潤性繊維として、アクリル繊維の内層と吸水性樹脂からなる外層とで構成された東洋紡績株式会社製のランシール(登録商標)F又はランシール(登録商標)Kを用いている。この水膨潤繊維の吸水速さは、水に接触すると約10秒で平衡吸水量の約50%以上に達する速さである。また、この水膨潤繊維は、吸水した後は、多少の圧力を加えても離水せず、また、水には殆ど溶けない性質を持っている。さらに、この水膨潤繊維は、吸水後の繊維径が吸水前の繊維径の約5倍以上に拡大する一方、繊維の長さ方向の寸法は、アクリル繊維で維持されて殆ど変化しない。また、水膨潤繊維の繊維物性はアクリル繊維で維持されているので、外層の吸水性樹脂が吸水しても殆ど低下しないようになっている。
【0026】
また、上記水膨潤性繊維にはカルボキシル基があり、このカルボキシル基により体内物のアンモニアが選択的に吸着されるようになっている。これにより、臭気の軽減が可能となる。
【0027】
上記吸水剤3は吸水性樹脂の粉末で構成されていて、該粉末の粒子の大きさは、40メッシュ以上150メッシュ以下とされている。この実施形態では、吸水性樹脂として、アクリル系高分子架橋体を用いている。このアクリル系高分子架橋体は、水を吸収するとゲル状に変化し、ゲル状に変化した後には水に溶けない性質を持っている。吸水性樹脂としては、上記アクリル系高分子架橋体以外にも、吸収した水を離水させない樹脂、例えば、デンプン/アクリル酸塩グラフト共重合体、デンプン/アクリロニトリルグラフト共重合体、ポリエチレンオキシド架橋体物等を用いることも可能である。
【0028】
上記吸水剤3には安定化二酸化塩素を混合してもよい。この安定化二酸化塩素を混合することで、消臭及び病原菌の減衰を図ることが可能となる。また、吸水剤3には、安定化二酸化塩素の他に、消臭剤、殺菌剤や防腐剤等を混合してもよい。
【0029】
上記吸水剤3は、図1及び図4に示すように、案内部材4内において封止部材2よりも一端開口部4a側で閉塞部材16と封止部材2との間に収容されている。この実施形態では、吸水剤3の収容量は、0.10g以上3.00g以下の範囲内で例えば0.50gに設定している。吸水剤3の収容量は、0.05g以上5.00g以下の範囲で設定すれば体内物の水分を十分に吸収することが可能である。
【0030】
上記閉塞部材16は、生分解樹脂を案内部材4の他端側に開放するハット状に形成してなるものであり、この閉塞部材16も処置装置1の構成部材である。閉塞部材16は、案内部材4内の一端開口部4a近傍に収容されている。この閉塞部材16の開放側は案内部材4の内面に密着している。また、閉塞部材16の羽状部7と対向する面は、該羽状部7の案内部材4内部側の面に沿うように形成されており、閉塞部材16が羽状部7により案内部材4の一端開口部4aから出ないようになっている。
【0031】
上記閉塞部材16は、上記押出棒5により封止部材2を一端開口部4a側へ押した際に、その押圧力により羽状部7が撓むことで案内部材4の一端開口部4aから外部に出て該案内部材4から離脱するようになっている。尚、この閉塞部材16は、例えば、紙、布や脱脂綿等を成形してなるものとしてもよい。
【0032】
次に、上記のように構成された遺体の処置装置1を製造する要領について説明する。まず、閉塞部材16を案内部材4に他端開口部4bから挿入する。この際、閉塞部材16の開放側を他端開口部4b側に向けておく。この閉塞部材16は樹脂製であるため、案内部材4の突起部8を乗り越える際に弾性変形し、これにより、閉塞部材16を案内部材4に挿入する際の力が小さくなる。
【0033】
そして、上記閉塞部材16の内部に吸水剤3を入れた後、案内部材4の他端開口部4bから封止部材2を挿入する。この封止部材2により閉塞部材16の開放側が覆われる。また、封止部材2は繊維で構成されているため、案内部材4の突起部8を乗り越える際に変形し、これにより、封止部材2を案内部材4に挿入する際の力が小さくなる。
【0034】
その後、押出棒5の一方の円板部材11を封止部材2の閉塞部材16と反対側の端面に押し当て、該押出棒5により封止部材2を閉塞部材16と共に案内部材4の一端開口部4a側へ押し込んでいく。この押し込み動作は、閉塞部材16が羽状部7に当接したら終了する。
【0035】
上記案内部材4に挿入された閉塞部材16及び封止部材2は、羽状部7により一端開口部4aから出るのが阻止されるとともに、押出棒5により他端開口部4bから出るのが阻止される。この際、向かい合う羽状部7の先端間の寸法R2が案内部材4の内径R1の0.7倍以下とされているので、例えば処置装置1を搬送する際等に、閉塞部材16及び封止部材2が一端開口部4aから出るのを確実に阻止することが可能となっている。
【0036】
次に、図5に基づいて、上記のように構成された遺体の処置装置1を使用する要領について説明する。まず、図5(a)に示すように、案内部材4の外面に潤滑剤を塗布した後、該案内部材4の一端開口部4a側を肛門Aに数十mm挿入する。その後、押出棒5を押すと、押圧力が封止部材2、吸水剤3及び閉塞部材16に伝わる。この押圧力により閉塞部材16が羽状部7を案内部材4の外部へ撓ませて一端開口部4aから直腸B内に出て、案内部材4から離脱する。この際、向かい合う羽状部7の先端間の寸法R2が案内部材4の内径R1の0.3倍以上確保されているので、閉塞部材16を押し出す際の押圧力は小さくて済み、押出棒5の操作が簡単に行える。
【0037】
そして、図5(b)に示すように、上記閉塞部材16に続いて封止部材2も直腸B内に出て、このとき、閉塞部材16と封止部材2とが離れて吸水剤3が封止部材2よりも直腸Bの奥側で散らばる。このように、上記封止部材2は案内部材4により所期の形状を保ったまま、直腸Bの所定位置まで確実に挿入され、また、吸水剤3も同様に案内部材4により挿入される。これにより、封止部材2及び吸水剤3を直腸Bに挿入するに際して、従来のように肛門Aに指を差し込む必要はない。
【0038】
上記吸水剤3及び封止部材2を直腸Bに挿入した後、案内部材4を肛門Aから抜いて処置が完了する。
【0039】
その後、上記直腸Bに挿入された封止部材2の水膨潤性繊維が、該直腸Bの体内物の水分を吸収して膨潤すると、封止部材2が膨張して直径が5倍以上に拡大する。この封止部材2が膨張することにより、該封止部材2の外周面が直腸Bの内壁に密着して該直腸Bが封止される。このとき、封止部材2を構成する繊維が膨潤しているので、繊維同士が密着して該繊維間の隙間は殆ど無くなっている。また、この水膨潤性繊維は吸水後に繊維物性が変化しないので、封止部材2の形が膨張した後においても崩れ難くなっている。
【0040】
また、図5(c)に示すように、吸水剤3は直腸Bの奥側で体内物の水分を吸収してゲル化する。このゲル化した吸水剤を符号30で示す。このとき、吸水剤3の量が0.10g以上とされているので、体内物の水分が吸水剤3により確実に吸収される。このように体内物の水分が吸収されることにより、該体内物が肛門Aから漏出するのが抑制される。
【0041】
したがって、この実施形態に係る遺体の処置装置1によれば、案内部材4に収容した吸水剤3及び封止部材2を押出棒5により遺体の肛門Aを介して直腸Bに挿入するようにしたので、体内物が肛門Aから漏出するのを抑制する処置の作業性を良好にすることができる。また、吸水剤3が直腸Bの体内物の水分を吸収するので、洗腸処置等を施した場合や、体内物の水分量が多い場合でも該体内物が肛門Aから漏出するのを抑制することができる。
【0042】
また、吸水剤3を案内部材4内の封止部材2よりも一端開口部4a側に収容したので、吸水剤3を直腸Bの奥側に挿入することができる。これにより、体内物の水分を直腸Bの奥側で吸水剤3に効果的に吸水させることができる。
【0043】
また、封止部材2を水膨潤性繊維で構成したので、体内物の水分を吸収した繊維間の隙間が殆ど無くなり、封止部材2による直腸Bの封止作用を十分に得ることができる。
【0044】
また、吸水剤3を吸水性樹脂の粉末で構成したので、吸水剤3が直腸B内で拡散し易い。このため、直腸Bの広い範囲で体内物の水分を吸水剤3に吸収させることができる。
【0045】
また、吸水剤3は吸水後にゲル化して流動に難くなるので、該吸水剤3が肛門Aから漏出するのを抑制することができる。
【0046】
尚、上記案内部材4には、図6に示す変形例1のように、肛門Aへの挿入量の目安となる目印部40を設けてもよい。この目印部40は、案内部材4の外周面の軸方向中間部に該案内部材4を構成する樹脂材と異なる色を塗布して形成されている。この目印部40の位置は自由に設定することが可能である。そして、案内部材4を肛門Aに挿入する際には、該案内部材4を目印部40が肛門Aの近傍に位置するまで挿入する。これにより、案内部材4の挿入量不足や挿入し過ぎを防ぐことができて、吸水剤3及び封止部材2を直腸B内の所定位置に確実に配置することができる。上記目印部40は、例えばシールを貼り付けたり、シボや凹凸状の模様等で構成してもよい。
【0047】
また、図7に示す変形例2では、上記案内部材4の一端側の肉厚t2を他端側の肉厚t1よりも薄くすることにより、一端側の外径を他端側の外径よりも小さくして段差部41を形成している。これにより、案内部材4を肛門Aに挿入する際、段差部41が肛門Aに達すると挿入力が大きくなり、このことで、処置者は案内部材4の挿入量が分かるようになる。つまり、この変形例2では段差部41が案内部材4の挿入量の目安となる。
【0048】
また、図8に示す変形例3では、案内部材4の外周面に鍔部42を設けている。従って、案内部材4を肛門Aに挿入していくと、鍔部42が肛門Aの周辺に接触することにより案内部材4がそれ以上肛門に挿入されなくなる。つまり、変形例3では鍔部42が案内部材4の挿入量の目安となる。
【0049】
また、この実施形態では、封止部材2が水膨潤性繊維のみで構成されている場合について説明したが、封止部材2は、図示しないが、例えば、綿等の繊維と上述した吸水性樹脂の粉末との混合物で構成してもよい。この混合物で構成された封止部材は、体内物の水分に触れると吸水性樹脂が膨張することにより、封止部材が直腸Bを封止するまで膨張する。このとき、吸水性樹脂は、ゲル化して繊維に保持されて該吸水性樹脂と繊維とが一体化するので、封止部材2による直腸Bの封止作用を十分に得ることができる。
【0050】
また、この実施形態では、遺体の処置装置1を肛門Aに使用する場合について説明したが、例えば膣に使用することも可能であり、この場合には、案内部材4や封止部材2を膣の形状に対応する形状とすればよい。また、案内部材4や封止部材2の形状は体格や性別により変えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係る遺体の処置装置の部分断面図である。
【図2】案内部材を一端開口部側から見た正面図である。
【図3】図1におけるX−X線断面図である。
【図4】閉塞部材、吸水剤及び封止部材の断面図である。
【図5】遺体の処置装置の使用要領を示し、(a)は案内部材を肛門に挿入した状態を示す図であり、(b)は閉塞部材、吸水剤及び封止部材を案内部材から直腸内に押し出した状態を示す図であり、(c)は吸水剤及び封止部材が体内物の水分を吸収した状態を示す図である。
【図6】実施形態の変形例1に係る案内部材の部分断面図である。
【図7】実施形態の変形例2に係る図6相当図である。
【図8】実施形態の変形例3に係る図6相当図である。
【符号の説明】
【0052】
1 遺体の処置装置
2 封止部材
3 吸水剤
4 案内部材
4a 一端開口部
4b 他端開口部
5 押出棒(押出部材)
16 閉塞部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺体の体内物が肛門から漏出するのを抑制する遺体の処置装置であって、
筒状の案内部材と、
上記案内部材に収容される吸水剤及び直腸封止部材と、
上記吸水剤及び直腸封止部材を上記案内部材の一端開口部から押し出す押出部材とを備え、
上記案内部材の一端開口部側は、肛門から直腸へ挿入されるように形成されるとともに、肛門への挿入前に上記吸水剤が上記案内部材の外部に出るのを抑制するように構成されていることを特徴とする遺体の処置装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−231118(P2008−231118A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137926(P2008−137926)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【分割の表示】特願2008−8940(P2008−8940)の分割
【原出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(500329906)
【Fターム(参考)】