説明

部品ローテーション計画の作成方法および作成装置並びに作成用プログラム

【課題】 計画作成作業が複雑となるのを抑えつつ部品を有効活用する。
【解決手段】 点検時にユニットから部品グループ30を取り外す際には(S1)、待機中の予備部品群23の中から選択した他の部品グループ30を当該ユニットに割り当て(S3)、当該ユニットから取り外した部品グループ30を待機中の予備部品群23に追加し(S2)、複数のユニット間で部品をローテーションさせる計画を作成する方法において、待機中の予備部品群23の中から選択した部品グループ30の中に、余寿命が次の点検までの運転時間に満たない部品30が有れば、この部品30を他の予備部品群24に追加して保管し(S4)、かつ既に保管中の他の予備部品群24の中に余寿命が次の点検までの運転時間以上あり尚且つ同じ部品種別に属する置換可能な部品30が有れば、これを待機中の予備部品群23の中から選択した部品グループ30に組み入れる(S5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品ローテーション計画の作成方法および作成装置並びに作成用プログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、ガスタービンの高温部品を複数のガスタービン間でローテーションさせる計画を作成する方法および装置並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン複合発電設備を構成する部品のうち、常に高温・高圧のガスに晒される燃焼器や動・静翼などの部品(ガスタービン高温部品と呼ばれる。)は、過酷な使用環境に耐えるために特殊な材料・構造が採用されており極めて高価である。当該ガスタービンの高温部品は使用中にき裂や減肉等の様々な損傷劣化事象が発生するため、一定期間ごとにガスタービンを停止し、部品の点検・補修が行われる。例えば我が国では、2年毎の定期点検の際に高温部品の点検・補修が行われている。また特に損傷が激しい燃焼器周りの高温部品については、この定期点検の間の簡易点検の際にも、点検・補修が行われている。この点検の際に行われる部品の損傷劣化に対する補修には数ヶ月の期間を要する。そこで、点検時のガスタービンの停止期間を短縮するため、予備部品をそれまで稼動していた部品に換えてガスタービンへと組み込み、補修が済んだ部品を次回以降の点検の際の予備部品の1つとして利用する、部品のローテーションが一般的に行われている。特に複数の発電ユニットの運転時間が異なる場合には、運転時間の合計がなるべく部品の寿命に近づくように部品のローテーションを計画すれば、部品を有効活用することができる。
【0003】
上記の部品ローテーションは、部品グループ単位で計画される。即ち、部品種別毎に1ユニット分の部品でグループを作り、このグループを1つの部品と考えて(即ち、単位として)、ローテーションを計画している。例えばガスタービンの動翼が100枚の翼で構成されているとすると、この100枚の翼をまとめて1つの部品と考えてローテーションを計画している。こうした部品グループ単位でローテーションを行うことで、ローテーション計画の対象が減ることから、計画作業は簡素化される。こうした部品ローテーションの計画を行う方法および装置として特許文献1に記載された技術がある。
【0004】
【特許文献1】特開2004−3442号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術のように、部品グループ単位でローテーションを行った場合には、部品に無駄が生じる可能性が高い。つまり、部品グループ単位でローテーションを行う場合には、ガスタービンに割り当てる予定の部品グループの中に、計画寿命(材料の劣化特性から予め定められた耐用期間)に達するまでの残りの寿命(即ち余寿命)が、割当予定のガスタービンの稼働時間に満たない部品が1つでもあれば、当該グループ全体の部品を廃棄扱いとする。そして、新たにグループ単位で部品を購入し、当該購入した部品のグループを、寿命不足の部品を含むグループの代わりに、ガスタービンに割り当てるようにしている。しかし、同一グループに属する部品であっても、部品毎に損傷劣化状況は異なり得るから、必ずしも余寿命が均一であるとは限らない。このため、個別に見れば充分な余寿命を残した部品までもが廃棄部品として扱われ、当該部品が無駄になる可能性が高い。
【0006】
そこで、部品単位でローテーションを計画することが考えられる。しかし、ガスタービンには膨大な数の部品が使われており、複数のガスタービンへ部品を割当てる組合せの数は膨大となり、当該膨大な組合せの中から最適な部品ローテーション計画を求めることは極めて複雑且つ困難であり、これを実施することは事実上不可能である。このため、上述した部品グループ単位でのローテーション計画が実施されているのが現実である。
【0007】
また、従来の部品ローテーション計画では、充分な数の部品グループが確保されていることを前提としているが、円滑な部品ローテーションを行うために最適な部品グループの数を定める方法について開示されたものは無い。部品グループの数が少ないと、ガスタービンの点検時にすべての部品グループが稼動中あるいは補修中となり、部品の補修が完了するまでガスタービンが停止する事態が生じてしまう。逆に、部品グループ数が多過ぎると、無駄な部品グループを保有することになり、運用コストの増加につながる。
【0008】
そこで本発明は、計画作成作業が複雑となるのを抑えつつ、個々の部品の余寿命を考慮し、各部品をより活用できる部品ローテーション計画の作成方法および作成装置並びに作成用プログラムを提供することを目的とする。また、本発明は、円滑な部品ローテーションを行うために最適な部品グループ数を定めることができる部品ローテーション計画の作成方法および作成装置並びに作成用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ユニットで使用される部品群を相互に置換可能であるとの条件の下で分類し、同じ部品種別に属する1ユニット分の部品群でグループを作り、1グループの部品群を部品グループと定めて、点検対象のユニットから点検時に部品グループを取り外す際には、待機中の予備部品群の中から選択した他の部品グループを前記点検対象のユニットに割り当てると共に前記点検対象のユニットから取り外した部品グループを点検後に前記待機中の予備部品群に追加するようにして、複数のユニット間で部品をローテーションさせる計画を作成する方法において、部品個別に余寿命を管理し、前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループの中に、余寿命が次の点検までの運転時間に満たない部品が有るか判断し、当該余寿命不足の部品が有る場合に、他の予備部品群の中に、余寿命が次の点検までの運転時間以上あり尚且つ同じ部品種別に属する置換可能な部品が有るか判断し、当該置換可能な部品が有る場合にはこれを前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループに組み入れ、当該置換可能な部品が無い場合には新規部品を前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループに組み入れ、前記余寿命不足の部品は前記他の予備部品群に追加して保管または廃却する計画を立案するようにしている。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、ユニットで使用される部品群を相互に置換可能であるとの条件の下で分類し、同じ部品種別に属する1ユニット分の部品群でグループを作り、1グループの部品群を部品グループとして、点検対象のユニットから点検時に部品グループを取り外す際には、待機中の予備部品群の中から選択した他の部品グループを前記点検対象のユニットに割り当てると共に前記点検対象のユニットから取り外した部品グループを点検後に前記待機中の予備部品群に追加するようにして、複数のユニット間で部品をローテーションさせる計画を作成する装置において、部品個別に余寿命を管理する手段と、前記待機中の予備部品群の中から前記点検対象のユニットに割り当てる部品グループを選択する手段と、前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループの中に、余寿命が次の点検までの運転時間に満たない部品が有るか判断する手段と、当該余寿命不足の部品が有る場合に、他の予備部品群の中に、余寿命が次の点検までの運転時間以上あり尚且つ同じ部品種別に属する置換可能な部品が有るか判断する手段と、当該置換可能な部品が有る場合にはこれを前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループに組み入れ、当該置換可能な部品が無い場合には新規部品を前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループに組み入れ、前記余寿命不足の部品は前記他の予備部品群に追加して保管または廃却する計画を立案する手段とを有するものである。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、ユニットで使用される部品群を相互に置換可能であるとの条件の下で分類し、同じ部品種別に属する1ユニット分の部品群でグループを作り、1グループの部品群を部品グループとして、点検対象のユニットから点検時に部品グループを取り外す際には、待機中の予備部品群の中から選択した他の部品グループを前記点検対象のユニットに割り当てると共に前記点検対象のユニットから取り外した部品グループを点検後に前記待機中の予備部品群に追加するようにして、複数のユニット間で部品をローテーションさせる計画を作成する装置としてコンピュータを機能させるプログラムにおいて、部品個別に余寿命を管理する手段と、前記待機中の予備部品群の中から前記点検対象のユニットに割り当てる部品グループを選択する手段と、前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループの中に、余寿命が次の点検までの運転時間に満たない部品が有るか判断する手段と、当該余寿命不足の部品が有る場合に、他の予備部品群の中に、余寿命が次の点検までの運転時間以上あり尚且つ同じ部品種別に属する置換可能な部品が有るか判断する手段と、当該置換可能な部品が有る場合にはこれを前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループに組み入れ、当該置換可能な部品が無い場合には新規部品を前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループに組み入れ、前記余寿命不足の部品は前記他の予備部品群に追加して保管または廃却する計画を立案する手段としてコンピュータを機能させるようにしている。
【0012】
したがって、部品グループ単位でのローテーションを基本としながら、個別の部品単位でのグループ構成部品の入れ替えが行われる。これにより、計画作成作業が複雑となるのを最小限に抑えつつ、より部品を有効に活用することが可能となる。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の部品ローテーション計画の作成方法において、ユニットの稼動開始から当該ユニットが点検のために停止するまでの期間を運転期間として、各ユニットの運転期間をノードとして定め、同一の部品が使用できない前記ノード同士をリンクで結んだグラフを作成し、さらに前記ノードが互いに直接リンクで結ばれている前記グラフの部分をクリークとして定め、前記ノードの数が最大となる前記クリークに含まれる前記ノードの数を、複数のユニット間で部品をローテーションさせるために最低必要な前記部品グループの数として定めるようにしている。
【0014】
したがって、算定された必要グループ数の部品グループを備えておくことで、ユニットの点検時にすべての部品が稼動中あるいは点検・補修中となる事態を防ぐことができる。また、ローテーション計画の対象となる部品グループ数を確定することで、ローテーション計画の策定作業を簡素化できる。また、最低必要な部品グループの数を算定した上で、保有する部品グループ数を決定する、例えば上記最低必要数よりも多い数に決定することで、要求される信頼度に合わせたローテーション計画が可能となる。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の部品ローテーション計画の作成方法において、ユニットはガスタービンであるものとしている。この場合、膨大な数の部品が使用され部品単位でのローテーション計画が極めて難しいガスタービンについて、計画作成作業が複雑となるのを最小限に抑えつつ、より部品を有効に活用できるローテーション計画を策定できる。また、特殊な材料・構造が採用され極めて高価なガスタービン部品を無駄なく使用することで、運用コストを大幅に削減することができる。
【発明の効果】
【0016】
しかして請求項1記載の部品ローテーション計画の作成方法、請求項4記載の部品ローテーション計画の作成装置、請求項5記載の部品ローテーション計画の作成用プログラムによれば、部品グループ単位でのローテーションを基本としながら、個別の部品単位でのグループ構成部品の入れ替えを可能とし、計画作成作業が複雑となるのを最小限に抑えつつ、新規の部品の購入数を削減でき、ユニットの運用コストを大幅に削減することができる。
【0017】
さらに請求項2記載の部品ローテーション計画の作成方法によれば、複数のユニット間で部品をローテーションさせるために最低必要な部品グループの数を定めることができるので、算定された必要グループ数の部品グループを備えておくことで、ユニットの点検時にすべての部品が稼動中あるいは点検・補修中となる事態を防ぐことができる。また、ローテーション計画の対象となる部品グループ数を確定することで、ローテーション計画の策定作業を簡素化できる。また、最低必要な部品グループの数を算定した上で、保有する部品グループ数を決定することで、要求される信頼度に合わせたローテーション計画が可能となる。
【0018】
さらに請求項3記載の部品ローテーション計画の作成方法によれば、膨大な数の部品が使用され部品単位でのローテーション計画が極めて難しいガスタービンについて、計画作成作業が複雑となるのを最小限に抑えつつ、より部品を有効に活用できるローテーション計画を策定できる。また、特殊な材料・構造が採用され極めて高価なガスタービン部品を無駄なく使用することで、運用コストを大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1から図12に本発明の部品ローテーション計画の作成方法および作成装置並びに作成用プログラムの実施の一形態を示す。この部品ローテーション計画の作成方法は、ユニットで使用される部品群を相互に置換可能であるとの条件の下で分類し、同じ部品種別に属する1ユニット分の部品群でグループを作り、1グループの部品群を部品グループと定めて、点検対象のユニットから点検時に部品グループを取り外す際には、待機中の予備部品群の中から選択した他の部品グループを点検対象のユニットに割り当てると共に点検対象のユニットから取り外した部品グループを点検後に待機中の予備部品群に追加するようにして、複数のユニット間で部品をローテーションさせる計画を作成するものである。尚、本実施形態において、待機中の予備部品群とは、予備部品群のうちローテーション計画の対象であって、その中から部品グループが選択される予備部品群をいい、他の予備部品群とは、予備部品群のうちで待機中の予備部品群を除いたものをいう。
【0021】
そして、この部品ローテーション計画の作成方法では、待機中の予備部品群の中から選択した部品グループの中に、余寿命が次の点検までの運転時間に満たない部品が有るか判断し、当該余寿命不足の部品が有る場合には、他の予備部品群の中に余寿命が次の点検までの運転時間以上あり尚且つ同じ部品種別に属する置換可能な部品が有るか判断し、当該置換可能な部品が有る場合にはこれを待機中の予備部品群の中から選択した部品グループに組み入れ、当該置換可能な部品が無い場合には新規部品を待機中の予備部品群の中から選択した部品グループに組み入れ、余寿命不足の部品は他の予備部品群に追加して保管または廃却する計画を立案するようにしている。
【0022】
例えば本実施形態のユニットはガスタービンであり、部品の共用が可能な同形式のガスタービンが複数あるものとして、これら複数のガスタービン間で部品をローテーションさせる計画を作成する例について説明する。例えば、複数の発電所がそれぞれ所有する複数の同形式のガスタービンに用いられる高温部品(例えば初段動翼)のローテーション計画を作成するものとする。
【0023】
各ユニットの点検スケジュールは、「点検情報」として予め与えられるものとする。「点検情報」には、各ユニットの点検時期、例えば「点検開始日」および「点検終了日」が含まれるものとする。
【0024】
また、既に所有している全部品の部品毎の情報が、「部品情報」として予め与えられるものとする。「部品情報」には、例えば「部品を特定する識別名(例えばシリアル番号)」、「部品毎の余寿命」、「部品の状態」、「所属している部品グループを特定する識別名」などが含まれる。「部品の状態」には、例えば、「ユニット『 』で稼動中(『 』にはユニットを特定する識別名が入る。)」「補修中」「予備部品として待機中」などのいずれか該当する情報が入る。
【0025】
また、運用コストが最小となるローテーション計画を作成することができるように、「新規に部品を購入する際のコスト」、「部品の補修に必要となるコスト」、「発電所間で部品を移動させるために必要となるコスト」などが、「部品属性情報」として予め与えられるものとする。また、「部品属性情報」には、予め定められた「部品の計画寿命(耐用期間)」や、「部品の補修に必要となる期間」などが含まれる。「部品属性情報」は、部品種別毎に異なり得るが、同一種の部品では共通の情報となる。
【0026】
また、ローテーション計画を立てる開始日と終了日が、「計画情報」として予め与えられるものとする。また、「計画情報」には、「ローテーション計画の目的」が含まれるものとする。「ローテーション計画の目的」は、例えば「運用コストを最小化する」などの予め用意された目的の中から計画作成者の意図に合うものを選択できるものとする。「ローテーション計画の目的」は、待機中の予備部品群の中から点検対象のユニットに割り当てる部品グループを選択するアルゴリズムに対応しており、計画者が設定した目的に最も合致するように、部品グループの選択順序が探索される。
【0027】
ローテーション計画を進めて行く過程で、ユニットの将来の運転期間に割り当てられた部品の余寿命は、計画上仮想的に減少していく。例えば既存部品であれば「部品情報」に含まれる実際の余寿命から、また新規部品であれば「部品属性情報」に含まれる計画寿命から、割り当てられた運転時間を順次減算していくことで、計画上の余寿命が自動的に計算される。当該計算される計画上の余寿命も部品個別に管理する。また、ローテーション計画を進めて行く過程で、各部品の状態(例えば「ユニット『 』で稼動中」「補修中」「予備部品として待機中」など)も計画上移り変わっていくが、当該計画上の部品の状態も部品個別に管理する。
【0028】
ここで、ユニットの「運転時間」とは、ユニットの「実際の稼働時間」であっても良く、或いは起動停止等の運転負荷による寿命消費への影響を考慮して計算される「等価運転時間」であっても良い。
【0029】
図1に部品ローテーション計画の作成処理の概念を示す。図1中の符号30は個々の部品を表し、符号31は部品グループを表している。また、符号23は待機中の予備部品群を表し、符号24は他の予備部品群の概念を表している。また、ユニットに組み込まれて稼動中の部品グループの群を稼動部品群と呼び、図1中の符号20で示す。また、補修中の部品群を補修部品群と呼び、図1中の符号21で示す。また、購入する新規の部品群を新規部品群と呼び、図1中の符号25で示す。
【0030】
ユニットに組み込まれて稼動していた部品グループ31は、点検時に当該ユニットから取り外され、補修が加えられる。つまり、当該部品グループ31は、稼動部品群20から補修部品群21へと移る(図1中のS1)。補修が終了した部品グループ31は、補修部品群21から待機中の予備部品群23へと移され、次のユニットへの組み込みを待つ(S2)。
【0031】
点検時に部品グループ31が取り外されたユニットに対して組み込む代わりの部品グループ31は、待機中の予備部品群23の中から選択する(S3)。この際、選択した部品グループ31の中に、余寿命がユニットの次の点検までの運転時間に満たない部品30があれば、部品単位で当該部品グループ31から外され、他の予備部品群24に加えられる(S4)。そして、他の予備部品群24の中に、上記部品グループ31から外された部品30の代わりに使用可能な部品30、即ち余寿命がユニットの次の点検までの運転時間を上回り、且つ上記部品グループ31から外された部品30と同じ位置に取付け可能な部品30があれば、該当部品グループ31に組み入れる(S5)。この際、部品グループ31から外された部品30の代わりとなる部品30が他の予備部品群24の中に複数ある場合には、例えば余寿命が短いものから優先的に、該当部品グループ31に組み入れる。一方、他の予備部品群24の中に、部品グループ31から外された部品30の代わりとなる部品30が無い場合には、新しい部品30を購入して、該当部品グループ31に組み入れる(S6)。
【0032】
この部品ローテーションの特徴は、部品グループ単位でのローテーションを基本としながら(S1,S2,S3)、個別の部品単位でのグループ構成部品の入れ替えを行うことにある(S4,S5,S6)。これにより、計画作成作業が複雑となるのを最小限に抑えつつ、より部品を有効に活用することを可能にしている。
【0033】
ここで、待機中の予備部品群として待機している部品グループの数が少ないと、ユニットの点検時にすべての部品が稼動中あるいは点検・補修中となり、それまで稼動していた部品グループに替えてユニットに組み込む部品グループが無くなってしまう。この場合には点検・補修中の部品に対する作業が完了するまで、当該ユニットが停止することになる。このような事態を回避するために最低必要となる部品グループ数(以下、必要グループ数と呼ぶ。)を、例えば本実施形態では次のようにして算定する。
【0034】
図2に必要グループ数を算定する処理のフローチャートを示す。先ず、与えられた点検情報を基に各ユニットの運転期間を計算する(S101)。運転期間とは、ユニットの稼動開始から当該ユニットが点検のために停止するまでの期間を指す。例えば、ユニットの最初の稼動開始から当該ユニットが最初の点検のために停止するまでの期間、または、ユニットの点検後の稼動開始から当該ユニットが次の点検のために停止するまでの期間が運転期間となる。同一ユニットについての運転期間と運転期間との間が点検のための停止期間となる。各ユニットの点検時期は、複数のユニット間での部品ローテーションを可能にするために意図的にずらされている(図3参照)。
【0035】
次に、ユニットの運転期間をノードとし、同一の部品が使用できない運転期間(ノード)同士をリンクで結んだグラフを作る(S102)。グラフでは、例えばノードを円で、リンクを線で表現する。次に、グラフの最大クリークを求める(S103)。クリークとは、すべてのノードが互いに直接リンクで結ばれているグラフの部分を指す。1つのグラフにクリークは複数存在し得るが、その中でそれに含まれるノードの数が最大のものを最大クリークと呼ぶ。最大クリークに含まれるノードの数が必要グループ数となる(S104)。
【0036】
例えば図3に示す3つのユニットの運転スケジュールを例に、必要グループ数の算定する方法を説明する。図3の例では、例えば運転期間1と運転期間2のように、時間が重なっている運転期間については同一の部品は使用できない。また、例えば運転期間1と運転期間4のように、同一ユニットについて隣接する運転期間同士についても同一の部品は使用できない。ここで、実際には、部品属性情報に含まれる「部品の補修に必要となる期間」も考慮することが望ましいが、ここでは説明の単純化のため、部品の補修期間は考えないものとする。図3に示す運転スケジュールをノードとリンクによりグラフで表現すると、図4のようになる。図4中の符号40がノードを示し、符号41がリンクを示す。図4に示すグラフは、部品共用の可否で見た運転期間の関係を表現している。
【0037】
すべてのユニットを円滑に運用していくために必要な部品グループ数は、リンクで直接結ばれたノード同士は同一の色で塗らないという条件の下で、グラフの全てのノードを塗り分けるのに必要となる色の数に置き換えることができる。つまり、当該塗り分けに必要な色数が必要グループ数を示す。そして、当該塗り分けに必要な色数は、最大クリークに含まれるノードと同数となることが、グラフ理論に関する研究から知られている。従って、最大クリークに含まれるノードの数が必要グループ数となる。
【0038】
図4の符号43で示す円内の部分グラフが、図4のグラフの最大クリークを示す。この最大クリークに含まれるノード数は4であるから、図4の例でグラフを塗り分けるには4色、つまり図3に示す運転スケジュールにおいて3つのユニットを円滑に運用していくには、4つの部品グループ(換言すれば、1つの予備部品グループ)が必要となる。尚、最大クリークに含まれるノードに対応した運転期間は、同一の部品が使用できず、必要となる予備部品の数で見て、最も運転スケジュールが厳しい部分となる。したがって、仮に運転スケジュールの見直しにより必要となる予備部品数を減らす場合には、少なくとも最大クリークに含まれるノードに対応した運転期間の変更が必要となる。
【0039】
以上のようにして必要グループ数が算定される。算定された必要グループ数の部品グループを備えておくことで、ユニットの点検時にすべての部品が稼動中あるいは点検・補修中となる事態を防ぐことができる。また、ローテーション計画の対象となる部品グループ数を確定することで、ローテーション計画の策定作業が簡素化される。尚、突発的な事故に対処する等のため、算定された必要グループ数よりも多い部品グループを備えておくようにしても良い。
【0040】
本発明の部品ローテーション計画の作成方法は、部品ローテーション計画の作成装置として装置化される。この部品ローテーション計画作成装置10は、例えば既存の又は新規の計算機(コンピュータ)50を利用して構成される。この計算機50が部品ローテーション計画作成用プログラムを実行することで、当該計算機50が部品ローテーション計画作成装置10として機能する。
【0041】
計算機50は、例えば図5に示すように、中央処理演算装置(CPU)11、RAMやROMおよびハードディスクなどの記憶装置12、キーボードやマウスなどの入力装置13、ディスプレイやプリンタ等の出力装置19、CDやFDなどの媒体に記録されたデータを読み取るディスクドライブ等のデータ読取装置14、ネットワーク15を介して外部の情報処理装置16とデータ通信を行うネットワークインターフェース17などのハードウェア資源がバス18により接続されて構成されている。
【0042】
本実施形態の部品ローテーション計画作成装置10は、例えば図6に示すように、「点検情報」の入力を受け付ける点検情報入力手段1と、「部品属性情報」の入力を受け入れる部品属性入力手段2と、「部品情報」の入力を受け付ける部品情報入力手段4と、点検情報入力手段1より入力された「点検情報」と部品属性入力手段2より入力された「部品属性情報」とに基づいて、必要グループ数を算定する必要グループ数算定手段3と、「計画情報」の入力を受け付ける計画情報入力手段5と、点検情報入力手段1より入力された「点検情報」および部品属性入力手段2より入力された「部品属性情報」および部品情報入力手段4より入力された「部品情報」および必要グループ数算定手段3が算定した必要グループ数および計画情報入力手段5より入力された「計画情報」とに基づいて、部品ローテーション計画を作成するローテーション計画作成手段6と、ローテーション計画作成手段6が作成した部品ローテーション計画を表示する結果表示手段7とを有する。
【0043】
「点検情報」「部品情報」「部品属性情報」は例えばファイル(電子データ)として計算機50のデータ読取装置14より入力される。図5中の符号51〜53はこれらの入力ファイルを示す。従って、計算機50のデータ読取装置14は、点検情報入力手段1および部品情報入力手段4および部品属性入力手段2として機能する。尚、外部の情報処理装置16より「点検情報」「部品情報」「部品属性情報」を受信する場合は、ネットワークインターフェース17が、点検情報入力手段1および部品情報入力手段4および部品属性入力手段2として機能する。「計画情報」は、例えば計算機50のディスプレイにユーザインターフェース画面を表示して、当該画面の案内に従って、計画作成者がキーボードやマウスなどの入力装置13を用いて入力するようにする。図5中の符号54は入力装置13より入力される「計画情報」のデータを示す。従って、計算機50の入力装置13は、計画情報入力手段5として機能する。入力された「点検情報」「部品情報」「部品属性情報」「計画情報」は、計算機50の記憶装置12に記録され管理される。計算機50のCPU11は、必要グループ数算定手段3およびローテーション計画作成手段6として機能する。必要グループ数算定手段3は、図2のフローチャートに示した処理を実行し、必要グループ数を算定する。必要グループ数算定手段3が算定した必要グループ数およびローテーション計画作成手段6により計算される計画上の部品個別の余寿命およびローテーション計画作成手段6により決定される計画上の各部品の状態は、計算機50の記憶装置12に記録され管理される。計算機50の出力装置19は、部品ローテーション計画を表示する結果表示手段7として機能する。
【0044】
ローテーション計画作成手段6が実行する処理の一例を、図7,図8に示すフローチャートに基づいて説明する。ローテーション計画作成手段6では、点検情報に基づいて定められる各ユニットの将来の各運転期間に割り当てる部品グループを決定する。尚、点検情報に基づく各ユニットの将来の運転期間は、図2のS101で必要グループ数算定手段3が既に計算したものを利用して良い。本実施形態では、説明の簡便のため、各運転期間には、開始日の早い順に、運転期間1、運転期間2、・・・、運転期間nとのように、連続番号が付されているものとする。運転期間の数nは、計算機50に入力された「計画情報」に基づいて定められる。
【0045】
ローテーション計画作成手段6は、先ず運転期間のカウンタiを1に設定する(S201)。運転期間iの開始日において予備部品として待機している待機中の予備部品群の中から部品グループを1つ選ぶ(S202)。ここでは、待機中の予備部品群の中から部品グループjが選ばれたとする。
【0046】
次に、部品のカウンタkを1に設定する(S203)。なお、部品には部品1、部品2、・・・、部品mとのように、連続番号が付されているものとする。次に、部品グループjを構成する部品kの余寿命と、運転期間iの運転時間を比較する(S204)。運転期間iの運転時間が部品kの余寿命を超えないならば(S204;No)、部品のカウンタkを進める(S206)。
【0047】
一方、運転期間iの運転時間が部品kの余寿命を超える場合には(S204;Yes)、当該運転期間iの終了日における余寿命が計画寿命を超えてしまう部品kを、他の予備部品群として保管されている部品または新規の部品と入れ替える(S205)。
【0048】
S205の処理をより詳細化したフローチャートを図8に示す。この処理では、保管されている他の予備部品群の中から、部品kの代わりに利用可能な部品を探す(S301)。ここで、部品kの代わりに利用可能な部品とは、余寿命が運転期間iの運転時間を上回り、且つユニットにおいて部品kと同じ位置に取付け可能な部品を指す。もし、こうした部品が他の予備部品群の中にあれば(S301;Yes)、余寿命の足りない部品kに代えて、使用可能な他の予備部品を部品グループjに組み入れる(S303)。部品kの代わりとなる部品が他の予備部品群の中に複数ある場合には、例えばこれらの中から最も余寿命が短いものを選択する。一方、部品kの代わりとなる部品が他の予備部品群の中に無ければ(S301;No)、部品kに替わる新規の部品を購入し、当該新規の部品を部品グループjに組み入れる(S302)。部品グループjから外された部品kは他の予備部品群に加えられ、保管される。上記の処理後、図7のフローチャートに復帰する。
【0049】
上述した余寿命不足の部品kの入替処理後、部品のカウンタkを進める(S206)。そして、部品のカウンタkが部品グループを構成する全部品の数を超えたかを判定する(S207)。部品カウンタkが部品数を超えていない場合には(S207;No)、S204の処理に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0050】
部品カウンタkが部品グループを構成する全部品の数を超えた場合には(S207;Yes)、部品グループjを構成するすべての部品について、余寿命判定(S204)並びに余寿命の足りない部品の入替え処理(S205)が終了したこととなり、当該部品グループjを運転期間iに割り当てる(S208)。尚、当該割り当てによって、当該割り当て前の当該部品グループjを構成する各部品の余寿命から、運転期間iの運転時間が減算され、運転期間iの終了日における部品グループjを構成する各部品の計画上の余寿命が自動的に計算される。
【0051】
次に、運転期間のカウンタiを進める(S209)。そして、運転期間のカウンタiが、計算機50に入力された「計画情報」に基づいて定められた運転期間の数を超えているか判定する(S210)。超えていれば(S210;Yes)、予定されたすべての運転期間への部品グループの割当てが終了したこととなるので、処理を終了する。超えていなければ(S210;No)、S202の処理に戻り、以降の処理を繰り返す。以上のようにしてローテーション計画作成手段6により作成された部品ローテーション計画は、結果表示手段7(例えば計算機50のディスプレイ)に表示される。図12は、作成された部品ローテーション計画の一例を示す。
【0052】
ここで、図7に示す処理を通して得られるローテーション計画が、計画の目的にどれだけ適合したものとなるかは、S202における待機中の予備部品群の中から1の部品グループを選択する処理に大きく依存する。当該S202における部品グループの選択ルールには、計画の目的に合致する既知又は新規のアルゴリズムを適宜採用してよい。以下に、発見的手法と遺伝的アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)とを組み合せて用いることにより、運用コストが最小となる最適な部品ローテーション計画を作成する例について説明する。
【0053】
対象とする問題の構造あるいは性質を考慮して作ったルールを用いて、短時間で良好な解を見つけ出す方法を発見的手法と呼ぶ。本実施形態における発見的手法では、各ユニットの点検の際に、そのユニットへ割り当てることで無駄になる部品の寿命を基にした割当て指標を計算する。
【0054】
計画対象期間のある時点におけるユニットuの点検において、待機中の予備部品群の中の部品グループiの割当て指標Piを計算する手順は、例えば図9に示すフローチャートのようになる。ここで、図9中のPLiは部品グループに含まれる部品iの計画寿命を表し、Liは余寿命を表している。また、Ruはユニットuの次の点検までの等価運転時間を表し、Rminは与えられた運転スケジュールの中での等価運転時間の最小値を表している。imaxは部品グループiに含まれる部品の数である。
【0055】
例として、5つの部品で1つのグループを構成する部品について、ユニットuへの割当てを決める場面を考える。3つの部品グループで待機中の予備部品群が構成されており、それぞれの部品グループを構成する部品の余寿命は、表1のようになっているものとする。
【0056】
【表1】

【0057】
ユニットuの次の点検までの等価運転時間を10,000時間、この部品の計画寿命を50,000時間、また計画対象期間中の等価運転時間の最小値を10,000時間とすると、表1に示すそれぞれの部品グループの指標Piは以下のように計算される。
【0058】
部品グループ1については、すべての部品の余寿命がユニットuの等価運転時間を上回っている(S403;Yes)。また、この部品グループ1をユニットuで稼動させたとして、次のユニットuの点検時の各部品の余寿命を計算すると、部品5の余寿命のみが、等価運転時間の最小値10,000時間を下回る(S404;Yes)。したがって、部品グループ1の割当て指標Pは次式で計算される(S405,S408)。
【0059】
<数式1>
=(19,500−10,000)/250,000=0.038
【0060】
次に、部品グループ2について見ると、部品グループ1と同様、すべての部品の余寿命がユニットuの等価運転時間を上回っている(S403;Yes)。また、部品グループ2をユニットuに割り当てた場合、部品4,5の次の点検時の余寿命が、等価運転時間の最小値10,000時間を下回る(S404;Yes)。したがって、部品グループ2の割当て指標はPは次式で計算される(S405,S408)。
【0061】
<数式2>
={(19,500−10,000)+(19,000−10,000)}
/250,000
=0.074
【0062】
次に、部品グループ3については、部品5の余寿命がユニットuの等価運転時間に満たない(S403;No)。またユニットuに割り当てた場合、部品5以外のすべての部品について、次の点検時における余寿命が等価運転時間の最小値10,000時間を下回る(S404;Yes)。したがって、部品グループ3の割当て指標Pは次式で計算される(S405,S408)。
【0063】
<数式3>
={(12,000−10,000)+(11,000−10,000)}
/250,000
+{(10,000−10,000)+(10,000−10,000)}
/250,000
=0.012
【0064】
上述の割当て指標の小さい予備部品グループ(上記の例では部品グループ3)からユニットに割り当てていくことで、ある程度経済的なローテーション計画が求められる。しかし、この割当て順序を少し変えることで、より経済的なローテーション計画が求まる可能性が高い。そこで、本実施形態では、上述した発見的手法に遺伝的アルゴリズムを組合せて使うことで、より運用コストの少ないローテーション計画を探索する。
【0065】
遺伝的アルゴリズムは、生物の進化過程を模した解の探索手法であり、例えば図10に示す手順で、より優れた個体(解)を進化させていく。遺伝的アルゴリズムと発見的手法を組合せて、最適なローテーション計画を探索する手順は例えば以下のようになる。
【0066】
先ず、初期集団を生成する(S501)。具体的には、染色体にランダムに値を割り当てた個体を、あらかじめ決めた数だけ作成する。染色体とは、ローテーションを決定する情報を数字の並びとして表現したものである。本実施形態では、部品グループiの割当て優先度g(0≦g≦1.0)を、例えば図11に示す染色体60にコード化する。図11のnは全部品グループ数(例えば必要グループ数)であり、mは計画期間における1ユニットあたりの点検回数の最大値である。染色体60の部分60aは、計画内の1回目の割り当てに対する優先度を示し、染色体60の部分60bは、計画内のm回目の割り当てに対する優先度を示す。
【0067】
次に、個体の評価を行う(S502)。具体的には、発見的手法の割当て指標Piと、個体の染色体にコード化された優先度gとを掛けた値(Pi×g)が最も小さくなる部品グループを、図7のS202においてユニットに割り当てる部品グループとして選択する。そして、確定した部品ローテーションのコストを計算し、このコストを基に個体の適合度を計算する。
【0068】
次に、個体の選択・再生を行う(S503)。具体的には、個体の適合度の高さに比例した確率で個体を一定数選択し、選択した個体集合に交叉と突然変異の遺伝的操作を加える。交叉とは2つの個体ペアを選び出し、染色体の一部を交換する操作である。また突然変異とは、各個体の染色体の遺伝子情報を一定の確率で他の値へとランダムに置き換える操作である。そして、新しく作られた個体を、元の集団の適合度の悪い個体と交換する。
【0069】
上記のS502,S503の処理を予め決めた回数に達するまで繰り返す(S504)。予め決めた回数に達したら(S504;Yes)、探索を終了する。そして、その時点までに得られた最良の個体、換言すれば最も運用コストが低くなるローテーション計画を最適解として採用する。
【0070】
以上のように本発明の部品ローテーション計画の作成方法および作成装置並びに作成用プログラムによれば、個別部品の寿命を有効に活用し、新規の部品の購入数を削減することができ、ユニット(本実施形態ではガスタービン)の運用コストを大幅に削減することができる。
【実施例】
【0071】
上述した部品ローテーション計画の作成方法および作成装置並びに作成用プログラムに基づいて、以下の表2に示す3つのガスタービン発電所の合計12のユニットに対する部品ローテーション計画を求めた。
【0072】
【表2】

【0073】
ガスタービンには多種の高温部品が使われているが、本実施例では初段動翼のローテーション計画を求めた。本実施例のガスタービンの1ユニットには92枚の初段動翼が使われている。当該初段動翼の部品属性情報として、計画寿命、購入コスト、補修費用、発電所間を移動させる際の輸送コストを表3のように設定した。
【0074】
【表3】

【0075】
ここで、補修費用としては、余寿命が50%以上残っている部品については点検時に補修費用が発生せず、余寿命が計画寿命の50%以下となった場合は表3の補修費用1のコストが、さらに余寿命が25%以下となった場合は表3の補修費用2のコストが発生するものとした。また、点検時の初段動翼の点検・補修には100日間を要するものとした。
【0076】
本実施例では2003年7月1日を計画の開始時点として、これから10年間の部品ローテーション計画を求めた。計画期間中の各発電ユニットの点検スケジュール、即ち点検情報は表4に示す通りである。
【0077】
【表4】

【0078】
また、計画開始時点において、各ユニットには表5の余寿命を持つ部品グループが割り当てられているものとした。
【0079】
【表5】

【0080】
また、表5に示す稼動中の部品グループとは別に、計画開始時点において、表6に示す部品グループが待機中の予備部品群として待機しているものとした。尚、表6中の予備部品−1に関しては発電所Aに、予備部品−2については、発電所Bに保管されているものとした。
【表6】

【0081】
また、表5,表6に示した部品グループの名称を表7に示す。表5,表6,表7に示す情報が部品情報となる。
【表7】

【0082】
表2〜表7に示す条件において、図2に示す手順に従い必要グループ数を算定したところ、17グループが必要となり、現在所有している14の部品グループに加えて(換言すれば、既存の2つの予備部品グループに加えて)、新たに3つの部品グループを購入して待機中の予備部品群に追加する必要があることが分かった。
【0083】
次に、17の部品グループを12の発電ユニットへと割り当てるローテーション計画を、図7,図8に示す手順に従って求めた。本実施例では、ガスタービンの運用コスト、具体的には新規部品の購入コスト、部品の補修コスト、発電所間で部品を移動させるコストの合計が最小となる部品ローテーション計画を求めた。図7のS202では、上述の実施形態で説明したように、遺伝的アルゴリズムと発見的手法を組合せて使用し、図9に示す手順で求められる発見的手法の割当て指標Piと、図11に示す個体の染色体にコード化された優先度gとを掛けた値(Pi×g)が最も小さくなる部品グループを、ユニットに割り当てる部品グループとして選択した。
【0084】
本実施例では、遺伝的アルゴリズムを次のように設定した。即ち、個体数を300とし、これを1,000世代まで進化させた。また、図10のS502の遺伝的操作としては、適合度に比例した確率で200個体を選び出し、これに確率0.5の一様交叉と、確率0.06の一様変異の操作を加えた。
【0085】
ここで、遺伝的アルゴリズムは確率的な探索手段であり、常に同一のローテーション計画が求まるとは限らない。そこで、図10のS504での繰り返し回数を10回に設定した。これにより、表8に示すコストのローテーション計画が求まった。
【0086】
【表8】

【0087】
表8に示すコストのローテーション計画のうちコストが最小となったローテーション計画における各ユニットへの部品グループの割当ては、図12のようになった。
【0088】
本実施例では、中央処理演算装置(CPU)としてAMD AthlonXP3000+(登録商標)を搭載したパーソナルコンピュータ上にローテーション計画作成手段6を構築した。このローテーション計画作成手段6によれば、約5分の計算で、図12に示す最適なローテーション計画を求めることができた。
【0089】
また、本発明の有効性を検証するため、本実施例で求められたローテーション計画と、従来方法で求められる部品グループ単位でのローテーション計画とのコスト比較を行った。比較結果を表9に示す。
【0090】
【表9】

【0091】
本実施例で求められたローテーション計画でかかるコストは、表8に示す10回の計算により求めたものの平均、最小、最大の各値を示した。また、表9に示す従来方法1は、点検時に待機中の予備部品群として待機している時間の長い予備部品グループから順にユニットへ割り当てていく方法であり、従来方法2は、点検時に余寿命が最小となる部品が含まれる予備部品グループからユニットへと割り当てていく方法である。
【0092】
表9から明らかなように、本実施例で求められたローテーション計画によれば、従来方法1,2と比較して、部品の補修コストが若干増加するものの、新規に購入する部品の数が半分以下に減り、トータルで見て40%以上のコストが削減されている。尚、本実施例で求めたローテーション計画における補修コストが、従来方法1,2を用いて求めたローテーション計画のものよりも増えるのは、本実施例で求めたローテーション計画では、部品をより計画寿命まで活用する結果、余寿命が残り少ない部品を補修する回数が増えるためである。
【0093】
また、本実施例で求められたローテーション計画および従来方法1,2により求めたローテーション計画の廃却損を比較すると表10のようになる。
【0094】
【表10】

【0095】
ここで、廃却損とは、(廃却部品の余寿命/設計寿命)×部品購入価格で計算されるもので、無駄になった部品寿命をコストで評価した値である。表10から明らかなように、本実施例では直接廃却損の最小化を目的としていないものの、新規部品の購入コストの最小化を目的とすることで廃却損も最小化され、従来方法1,2と比べ1/10以下となっている。部品の廃却損を抑えるという意味からも、本発明が有効に機能することが確認できた。
【0096】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述の実施形態では、ユニットをガスタービンとして、ガスタービン高温部品のローテーション計画を求める例について説明したが、本発明の適用が複数のガスタービン間での部品ローテーションに限定されるものではなく、部品のグループ化が可能なユニットを複数備え、これら複数ユニット間で部品ローテーションが可能な他の設備、例えば各種プラントなどにも本発明は適用可能である。
【0097】
また、本発明は、必ずしも必要グループ数算定手段3により求めたグループ数のローテーション計画のみを行うものではない。必要グループ数算定手段3により求まるのは、ユニットを点検時に長期に停止させないために最低限必要となるグループ数、言い換えれば部品の保有コストが最小となるグループ数である。例えば突発的な事故などに対処するため、必要グループ算定手段により算定した数よりも、n多い数のグループを用意し(nは任意の数)、これに対するローテーション計画を求めることができる。これにより、必要とされる信頼度(予備部品グループ数)に合わせたローテーション計画を行うことが可能となる。例えば、必要グループ数よりも1つ多い部品グループを用意すれば、計画期間中常に1つ以上の予備部品が確保されるようになり、例えば部品に障害が発生した場合も、すぐに予備部品を組込むことで、ユニットを長期に停止させないで済むローテーション計画を求めることができる。また、例えば図2に示す手順に従い机上で求めた必要グループ数以上の部品グループを既に所有している場合等には、既存のグループ数に対するローテーションを求めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の部品ローテーション計画の作成方法の実施の一形態を示す概念図である。
【図2】必要グループ数を求める処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】必要グループ数を求める処理の原理を説明するための運転スケジュールの一例を示す。
【図4】図3の運転スケジュールをノードとリンクで表現したグラフを示す。
【図5】本発明の部品ローテーション計画作成装置の一例を示す構成図である。
【図6】本発明の部品ローテーション計画作成装置の一例を示すブロック図である。
【図7】本発明の部品ローテーション計画の作成方法および装置およびプログラムで実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】図7のフローチャートの一部の処理を更に詳細に示すフローチャートである。
【図9】発見的手法により割り当て指標を計算する手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】遺伝的アルゴリズムの処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】遺伝的アルゴリズムで用いる染色体の一例を示す概念図である。
【図12】本発明により求められた部品ローテーション計画における各ユニットへの部品グループの割当ての一例を示す図である。
【符号の説明】
【0099】
1 点検情報入力手段
2 部品属性入力手段
3 必要グループ数算定手段
4 部品情報入力手段
5 計画情報入力手段
6 ローテーション計画作成手段
7 結果表示手段
10 部品ローテーション計画作成装置
20 稼動部品群
21 補修部品群
23 待機中の予備部品群
24 他の予備部品群
25 新規部品群
30 部品
31 部品グループ
40 ノード
41 リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニットで使用される部品群を相互に置換可能であるとの条件の下で分類し、同じ部品種別に属する1ユニット分の部品群でグループを作り、1グループの部品群を部品グループと定めて、点検対象のユニットから点検時に部品グループを取り外す際には、待機中の予備部品群の中から選択した他の部品グループを前記点検対象のユニットに割り当てると共に前記点検対象のユニットから取り外した部品グループを点検後に前記待機中の予備部品群に追加するようにして、複数のユニット間で部品をローテーションさせる計画を作成する方法において、部品個別に余寿命を管理し、前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループの中に、余寿命が次の点検までの運転時間に満たない部品が有るか判断し、当該余寿命不足の部品が有る場合に、他の予備部品群の中に、余寿命が次の点検までの運転時間以上あり尚且つ同じ部品種別に属する置換可能な部品が有るか判断し、当該置換可能な部品が有る場合にはこれを前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループに組み入れ、当該置換可能な部品が無い場合には新規部品を前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループに組み入れ、前記余寿命不足の部品は前記他の予備部品群に追加して保管または廃却する計画を立案することを特徴とする部品ローテーション計画の作成方法。
【請求項2】
ユニットの稼動開始から当該ユニットが点検のために停止するまでの期間を運転期間として、各ユニットの運転期間をノードとして定め、同一の部品が使用できない前記ノード同士をリンクで結んだグラフを作成し、さらに前記ノードが互いに直接リンクで結ばれている前記グラフの部分をクリークとして定め、前記ノードの数が最大となる前記クリークに含まれる前記ノードの数を、複数のユニット間で部品をローテーションさせるために最低必要な前記部品グループの数として定めることを特徴とする請求項1記載の部品ローテーション計画の作成方法。
【請求項3】
前記ユニットはガスタービンであることを特徴とする請求項1または2記載の部品ローテーション計画の作成方法。
【請求項4】
ユニットで使用される部品群を相互に置換可能であるとの条件の下で分類し、同じ部品種別に属する1ユニット分の部品群でグループを作り、1グループの部品群を部品グループとして、点検対象のユニットから点検時に部品グループを取り外す際には、待機中の予備部品群の中から選択した他の部品グループを前記点検対象のユニットに割り当てると共に前記点検対象のユニットから取り外した部品グループを点検後に前記待機中の予備部品群に追加するようにして、複数のユニット間で部品をローテーションさせる計画を作成する装置において、部品個別に余寿命を管理する手段と、前記待機中の予備部品群の中から前記点検対象のユニットに割り当てる部品グループを選択する手段と、前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループの中に、余寿命が次の点検までの運転時間に満たない部品が有るか判断する手段と、当該余寿命不足の部品が有る場合に、他の予備部品群の中に、余寿命が次の点検までの運転時間以上あり尚且つ同じ部品種別に属する置換可能な部品が有るか判断する手段と、当該置換可能な部品が有る場合にはこれを前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループに組み入れ、当該置換可能な部品が無い場合には新規部品を前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループに組み入れ、前記余寿命不足の部品は前記他の予備部品群に追加して保管または廃却する計画を立案する手段とを有することを特徴とする部品ローテーション計画の作成装置。
【請求項5】
ユニットで使用される部品群を相互に置換可能であるとの条件の下で分類し、同じ部品種別に属する1ユニット分の部品群でグループを作り、1グループの部品群を部品グループとして、点検対象のユニットから点検時に部品グループを取り外す際には、待機中の予備部品群の中から選択した他の部品グループを前記点検対象のユニットに割り当てると共に前記点検対象のユニットから取り外した部品グループを点検後に前記待機中の予備部品群に追加するようにして、複数のユニット間で部品をローテーションさせる計画を作成する装置としてコンピュータを機能させるプログラムにおいて、部品個別に余寿命を管理する手段と、前記待機中の予備部品群の中から前記点検対象のユニットに割り当てる部品グループを選択する手段と、前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループの中に、余寿命が次の点検までの運転時間に満たない部品が有るか判断する手段と、当該余寿命不足の部品が有る場合に、他の予備部品群の中に、余寿命が次の点検までの運転時間以上あり尚且つ同じ部品種別に属する置換可能な部品が有るか判断する手段と、当該置換可能な部品が有る場合にはこれを前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループに組み入れ、当該置換可能な部品が無い場合には新規部品を前記待機中の予備部品群の中から選択した部品グループに組み入れ、前記余寿命不足の部品は前記他の予備部品群に追加して保管または廃却する計画を立案する手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする部品ローテーション計画の作成用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−63977(P2006−63977A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218477(P2005−218477)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)