説明

部品収納用キャリアテープ

【課題】円盤状または板状の部品を縦置きにするという特殊なニーズに対応でき、部品を安定して保持できる部品収納用キャリアテープを提供することを目的とする。
【解決手段】部品収納用のキャリアテープ5は、第1凹部1dを設けた第1キャリアテープ材1と、第1凹部1dよりも浅い第2凹部2dを設けるとともに、第2凹部2dの底に部品を挿入する孔2bを設けた第2キャリアテープ材2とで構成されている。第1キャリアテープ材1と第2キャリアテープ材2は、第1凹部1dと第2凹部2dとが一致するように重ねられている。孔2bは、孔2bの周囲の部分がコイン形電池4を縦置き状態に支持可能な大きさに設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイン形電池等のように円盤状の部品、あるいは板状の部品を立てて挿入し保持する部品収納用キャリアテープに関する。
【背景技術】
【0002】
コイン形電池等の円盤状の部品を電子機器へ自動実装で組み込む際には、キャリアテープが用いられることが多い。通常、円盤状の電子部品は、キャリアテープ内で、厚み方向が鉛直方向になるように寝かせて収納される(以下、「横置き収納」と称す)。また電子機器へ実装する際にも、そのままの姿勢で装填される。従来のキャリアテープには、円盤状の形に合わせるために円錐台状のエンボスポケットが形成されている。また、円盤状の電子部品を横置き収納するため、エンボスポケットの深さは浅いのが一般的である(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2005−29183号公報
【特許文献2】特開2005−22687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、電子機器の多様化に伴い、電子機器へ円盤状の電子部品を実装する際、電子部品を立てた状態で装填したいというニーズが発生している。この場合、キャリアテープでも電子部品を立てた状態で収納する(以下、「縦置き収納」と称す)ニーズが生じている。
【0004】
しかしながら特許文献1あるいは2に示されるようなキャリアテープの場合は、横置き収納を想定したエンボスポケットの形状であるため、当然縦置き収納することはできない。また、縦置き収納の形状に合わせてエンボスポケットを加工すると、局部的な深絞り状態となってテープが破れ易いという課題があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するもので、局部的な深絞りを必要とせず、部品を立てて保持することが可能な新規な部品収納用キャリアテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明は、第1凹部を設けた第1キャリアテープ材と、第1凹部よりも浅い第2凹部を設けるとともに、第2凹部の底に部品を挿入する孔を設けた第2キャリアテープ材と、で構成されたキャリアテープである。そして第1凹部と第2凹部とが一致するように、第1キャリアテープ材と第2キャリアテープ材とが重ねられている。第2凹部の孔は、第2凹部の底の、孔の周囲の部分が部品を縦置き状態に支持可能な大きさに設定されている。
【0007】
上記の構成によれば、部品を縦方向に第2キャリアテープ材の孔に挿入することによって、部品を立てた状態で容易に保持することができる。したがって局部的な深絞り状態のエンボス加工の必要性がなくなり、テープが破れることもなくなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部品を縦置き状態にしたいという特殊なニーズにも対応できる部品収納用キャリアテープを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による第1の発明は、第1凹部を設けた第1キャリアテープ材と、第1凹部よりも浅い第2凹部を設けるとともに、第2凹部の底に部品を挿入する孔を設けた第2キャリアテープ材と、で構成されたキャリアテープである。そして第1凹部と第2凹部とが一致するように、第1キャリアテープ材と第2キャリアテープ材とが重ねられている。第2凹部の孔の大きさは、第2凹部の底の、孔の周囲の部分が部品を縦置き状態に支持可能なように設定されている。この構成により、部品を縦方向に第2キャリアテープ材の孔に挿入することによって、部品を立てた状態で容易に保持することができる。
【0010】
本発明による第2の発明は、第1の発明において、第1凹部が部品を収容する第3凹部を有する底部と、この底部から立ち上がった側壁と、を有することを特徴とする部品収納用キャリアテープである。この構成により、部品は第1凹部に形成された第3凹部に収納されるため、輸送中に衝撃や振動等が生じた場合にも、傾くことなく安定して保持することができる。
【0011】
本発明による第3の発明は、第2の発明において、第1凹部の側壁が底部から傾斜して立ち上がっていることを特徴とする部品収納用キャリアテープである。このように傾斜を持たせることによって、第1キャリアテープ材と第2キャリアテープ材とを重ねることが容易となる。
【0012】
本発明による第4の発明は、第2の発明において、第1凹部が底部と、この底部から傾斜して立ち上がった側壁とを有する部品収納用キャリアテープである。このように傾斜を持たせることによって、第1キャリアテープ材と第2キャリアテープ材とを重ねることが容易となる。
【0013】
本発明による第5の発明は、第1から第4の発明において、第1キャリアテープ材に送り用の第1パイロット孔を設け、第2キャリアテープ材に送り用の第2パイロット孔を設けた部品収納用キャリアテープである。そして、第1パイロット孔の位置と第2パイロット孔の位置とを一致させている。この構成により、第1キャリアテープ材と第2キャリアテープ材をずれることなく、送ることができる。また第1キャリアテープ材に第3凹部を設けた場合、部品を挿入保持する第2キャリアテープ材の孔の位置関係がしっかりと固定され、部品を立てた状態で安定して保持させることが可能となる。
【0014】
本発明による第6の発明は、第5の発明において、第1パイロット孔の径と第2パイロット孔の径とが同じであることを特徴とする部品収納用キャリアテープである。この構成により、第1キャリアテープ材と第2キャリアテープ材のずれをさらに防止することができ、部品をより安定して保持することができる。また送りに対する強度上も好ましい。
【0015】
本発明による第7の発明は、第1から第6の発明において、第1キャリアテープ材と第2キャリアテープ材とが熱溶着されていることを特徴とする。この構成により、第1キャリアテープ材と第2キャリアテープ材のずれをさらに確実に防止することができ、部品を安定して保持することができる。
【0016】
本発明による第8の発明は、第7の発明において、第1キャリアテープ材と第2キャリアテープ材との間に熱溶着層を有することを特徴とする部品収納用キャリアテープである。この構成により、キャリアテープ材の強度を維持しつつ確実に熱溶着することができる。
【0017】
本発明による第9の発明は、第1から第8の発明において、第2キャリアテープ材の第2凹部を覆うようにトップテープ材が配置された部品収納用キャリアテープである。そして、第2キャリアテープ材の第2凹部の周辺部でトップテープ材と第2キャリアテープ材とが熱溶着されている。このトップテープ材によって、部品は上下方向の動きが制約され、さらに安定して保持することができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
(実施の形態)
図1は(a)本発明の実施の形態による部品収納用キャリアテープの平面図と、(b)A−A線における断面図である。部品としては、一例としてコイン形電池4を想定している。なお、図1(b)ではコイン形電池4を収容した状態を示している。キャリアテープ5は第1キャリアテープ材1と第2キャリアテープ材2とトップテープ材3とで構成されている。
【0020】
可撓性のポリスチレン(PS)より成る第1キャリアテープ材1は、第1キャリアテープ材1の長手方向に沿って第1凹部1dを有する。第1凹部1dは、底部1eと、底部1eから傾斜して立ち上がった側壁1aとを有する。そして、底部1eにはコイン形電池4を挿入する第3凹部1bが設けられている。第3凹部1bは第1キャリアテープ材1の長手方向に一定の間隔で形成されている。また、第1キャリアテープ材1の両側部には、長手方向に沿って送り用の第1パイロット孔1cが一定間隔で設けられている。
【0021】
ポリエチレン(PE)とPSの2層構造を有する第2キャリアテープ材2は、第2キャリアテープ材2の長手方向に沿って第1キャリアテープ材1の第1凹部1dよりも浅い第2凹部2dを有する。第2凹部2dは、底部2eと、第1キャリアテープ材1の傾斜角度とほぼ同程度の傾斜を有する側壁2aとを有する。また第2凹部2dの底にはコイン形電池4を挿入する孔2bが設けられている。孔2bは、孔2bの周囲の部分がコイン形電池4を縦置き状態に支持可能な大きさに設定されている。具体的にはコイン形電池4の厚さ方向に対し垂直な断面形状よりやや大きく形成されている。
【0022】
また、第2キャリアテープ材2の両側部には、長手方向に沿って送り用の第2パイロット孔2cが一定間隔で設けられている。なお本発明において「縦置き」とは、円盤状あるいは板状の部品の厚み方向が略水平となり、厚み方向に垂直な、最も広い面が略鉛直方向になるように立てた状態にすることを意味する。
【0023】
第1キャリアテープ材1と第2キャリアテープ材2は第1凹部1dと第2凹部2dとが一致するように、重ねられている。この時、側壁1aと側壁2aが同程度の傾斜を有しているため、第1キャリアテープ材1と第2キャリアテープ材2をずれなく重ね合わせることができる。また側壁1aが傾斜し、上方が広くなっているため第1キャリアテープ材1に対し第2キャリアテープ材2を挿入しやすい。このように、側壁1a、2aは底部1e、2eに対し傾斜していることが好ましい。
【0024】
コイン形電池4は第2キャリアテープ材2の孔2bを通して挿入され、第2キャリアテープ材2の孔2bによって、コイン形電池4の胴体部分が保持される。そのためコイン形電池4を縦置き状態で倒れることなく収納できる。さらに第1キャリアテープ材1の底部1eの第3凹部1bによってコイン形電池4の下部の円形周縁の一部が挟持されることが好ましい。これら2箇所を保持されることによりコイン形電池4を縦置き状態で倒れることなくさらに安定して収納できる。
【0025】
第1キャリアテープ材1の第1パイロット孔1cと第2キャリアテープ材2の第2パイロット孔2cは、位置関係(幅方向のピッチと長手方向の送りピッチ)が同じで且つ径の大きさも同じである。しかしながら径が異なり、位置が一致しているだけでもよい。この場合、第1キャリアテープ材1と第2キャリアテープ材2とが固定されていれば、径の小さい方でキャリアテープ5を送ることができる。ただし第1パイロット孔1cの径と第2パイロット孔2cの径とが同じであるほうが、送りに対するキャリアテープ5の強度上、好ましい。
【0026】
また第1キャリアテープ材1と第2キャリアテープ材2は、熱溶着部2fにおいて熱溶着によって貼り合わせていることが好ましい。第1キャリアテープ材1と第2キャリアテープ材2は、例えば接着剤で貼り合わせることもできるが、第1キャリアテープ材1と第2キャリアテープ材2の一方に接着剤を塗布すると、ずれて貼り付けてしまう場合がある。そのため、熱溶着することが好ましい。
【0027】
なお第2キャリアテープ材2のPE層は第1キャリアテープ材1と接する側に形成されている。熱シールする際には融点の低いPE層が溶けて、PS製の第1キャリアテープ材1及び第2キャリアテープ材2のPS層を溶着固定する。このようにPE層のような熱溶着層を形成することが好ましい。これにより第2キャリアテープ材2の基材であるPS層で強度を確保しつつPE層で第1キャリアテープ材1と熱溶着することができる。
【0028】
トップテープ材3はポリエチレンテレフタレート(PET)とPEの2層より成り、コイン形電池4を装填した後で第2キャリアテープ材2に第2凹部2dの周辺部である熱溶着部3fにおいて熱溶着によって貼り合わせられている。トップテープ材3のPE層は第2キャリアテープ材2と接する側に形成されている。熱シールする際に融点の低いトップテープ材3のPE層が溶けて、トップテープ材3のPET層と第2キャリアテープ材2のPS層を溶着固定する。このように第2凹部2dを覆うようにトップテープ材3を配置し、第2キャリアテープ材2とトップテープ材3とを熱溶着することが好ましい。熱溶着が好ましい理由は第1キャリアテープ材1と第2キャリアテープ材2との場合と同様である。
【0029】
本実施の形態では第1キャリアテープ材1のパイロット孔1cと第2キャリアテープ材2のパイロット孔2cの位置と径の大きさが同じであり、また更に第1キャリアテープ材1と第2キャリアテープ材2が熱溶着されている。そのため、縦置き収納したコイン形電池4の円形周縁の一部を挟持する第1キャリアテープ材1の底部の第3凹部1bとコイン形電池4を挿入保持する第2キャリアテープ材2の孔2bの位置関係がしっかりと固定される。したがって、コイン形電池4を縦置き収納状態で倒れることなく安定して保持することができる。また、トップテープ材3によって、コイン形電池4の上下方向の動きが制限されるため、輸送中に衝撃や振動等が生じた場合にも、傾くことなく安定して保持することができる。
【0030】
なお、本実施の形態の説明では、部品としてコイン形電池4を例として説明したが、コイン形電池に限定されるものではなく、円盤状あるいは板状の種々の部品に適用できる。この場合の部品は、電子部品に限定されない。
【0031】
また、本実施の形態の説明において、第3凹部1bの形状は円弧状としたが、円弧状に限定されるものではなく、種々の部品の形状に応じて変更すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によると部品を縦置きにするという特殊なニーズに対応可能な部品収納用キャリアテープを提供できる。また、部品の保持が安定しているので、電子機器への実装時におけるピックアップ不良もなく、その工業的価値は高い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)本発明の実施の形態による部品収納用キャリアテープの平面図、(b)同断面図
【符号の説明】
【0034】
1 第1キャリアテープ材
1a 側壁
1b 第3凹部
1c 第1パイロット孔
1d 第1凹部
1e,2e 底部
2 第2キャリアテープ材
2a 側壁
2b 孔
2c 第2パイロット孔
2f,3f 熱溶着部
2d 第2凹部
3 トップテープ材
4 コイン形電池
5 キャリアテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状または板状の部品を立てて収納する部品収納用キャリアテープであって、
第1凹部を設けた第1キャリアテープ材と、
前記第1凹部よりも浅い第2凹部を設けるとともに、前記第2凹部の底に部品を挿入する孔を設けた第2キャリアテープ材と、を備え、
前記孔は、前記第2凹部の底の、前記孔の周囲の部分が前記部品を縦置き状態に支持可能な大きさに設定され、
前記第1凹部と前記第2凹部とが一致するように、前記第1キャリアテープ材と前記第2キャリアテープ材とを重ねて形成した部品収納用キャリアテープ。
【請求項2】
前記第1凹部は前記部品を収容する第3凹部を有する底部と、前記底部から立ち上がった側壁と、を有する請求項1記載の部品収納用キャリアテープ。
【請求項3】
前記側壁は、前記底部から傾斜して立ち上がっている請求項2記載の部品収納用キャリアテープ。
【請求項4】
前記第1凹部は底部と、前記底部から傾斜して立ち上がった側壁と、を有する請求項1記載の部品収納用キャリアテープ。
【請求項5】
前記第1キャリアテープ材に送り用の第1パイロット孔を設け、前記第2キャリアテープ材に送り用の第2パイロット孔を設け、前記第1パイロット孔の位置と前記第2パイロット孔の位置とを一致させた請求項1から4のいずれか一項に記載の部品収納用キャリアテープ。
【請求項6】
前記第1パイロット孔の径と前記第2パイロット孔の径とが同じである請求項5記載の部品収納用キャリアテープ。
【請求項7】
前記第1キャリアテープ材と前記第2キャリアテープ材とが熱溶着されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の部品収納用キャリアテープ。
【請求項8】
前記第1キャリアテープ材と前記第2キャリアテープ材との間に熱溶着層を有する請求項7記載の部品収納用キャリアテープ。
【請求項9】
前記第2キャリアテープ材の前記第2凹部を覆うようにトップテープ材が配置され、前記第2キャリアテープ材の前記第2凹部の周辺部で前記トップテープ材と前記第2キャリアテープ材とが熱溶着されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の部品収納用キャリアテープ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−36927(P2010−36927A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199347(P2008−199347)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】