説明

配筋検査装置

【課題】鉄筋の種類ごとに異なる色でマーキングした柱や梁などの立体的な構造体の鉄筋を全周囲レンズを用いて一枚の画像に撮影して、配筋検査を行うことができ、配筋検査の省力化と配筋検査結果の整合性の確保が簡単にできる。
【解決手段】鉄筋の鋼種や径ごとに異なる色で色マーキングを施し、全周囲レンズ2と照明3手段と、全周囲レンズ2からの光をデジタルデータに変換して、画像データ処理装置に送る受光装置4を立体組の鉄筋配置の内部に挿入できる支持棒1の端に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場における鉄筋の配筋の検査をカメラ、閲覧装置を用いて、自動化する配筋検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋工事における配筋検査では、鉄筋の量、位置、間隔などが設計どおりに正しく配置されているか否かをチェックするのであるが、従来は、検査員が工事現場に持参した設計図面との照合を行うとともに、その状態をデジタルカメラなどで撮影して行っていた。
【0003】
かかる撮影量は膨大であり、それらの撮影写真を事後に検査結果として報告するときに、撮影場所や時間などが不明となることがあった。そこで、カメラの撮影手段を用いて建造物の配筋検査を行う配筋検査システムが開発され、下記特許文献がある。
【特許文献1】特開2005−16108号公報
【特許文献2】特開2011−80216号公報
【特許文献3】特開2010−122008号公報
【特許文献4】特開平9−189518号公報
【0004】
前記特許文献1は、作業事務所に設置されるパソコンおよびデータベースと、作業現場に装着され、場所情報と部材情報を記録した情報記録カードとを備え、情報読取機能付デジタルカメラにより施工位置を撮影することにより、画像と日付・時刻情報を記録し、同時に、情報記録カードに記録された場所情報と部材情報を読み込み、読み取られた画像情報、日付・時刻情報、場所情報および部材情報をデータベースに記録するものである。
【0005】
特許文献2は、デジタルカメラを用いた建造物の配筋検査を含む各種検査と、該各種検査に関わる工事施工或いは作業の管理との少なくとも一方に適用可能なものであって、事務所に設置したOAパーソナルコンピュータで、あらかじめ入力された個別の配筋図面データに基づいて、区画ごとの検査に関する作業指示データの作成を行い、それらの作業指示データを転送した現場端末で、ある区画での作業指示データに基づいて、当該ある区画の作業記録をデジタルカメラで全て撮影し終えたときに撮影完了である旨の報知を行うように構成されている。
【0006】
特許文献3は、異形鉄筋の径長を含む配筋情報を取得する配筋情報取得装置であって、撮影された前記異形鉄筋の画像データを取得する手段と、前記画像データにおける1ピクセルあたりの長さである1ピクセル長を特定する手段と、前記画像データにおける前記異形鉄筋の径長のピクセル数をカウントする手段と、前記径長のピクセル数と、前記1ピクセル長とを乗ずることによって、前記径長を算出する手段と、を備えることを特徴とする配筋情報取得装置である。画像データを取得する手段は、デジタルカメラを用いて、異形鉄筋を撮影する。
【0007】
特許文献4は、配筋した鉄筋に臨む所定撮影位置に平面状スリット光の光源とフィルタ付きカメラとが一定間隔で取り付けられた取付台及び該取付台が固定された回転軸を有する撮像装置を設け、前記フィルタを前記スリット光のみ透過するものとし、前記光源から前記鉄筋と交差する平面に沿って前記スリット光を発光し且つ鉄筋表面における前記スリット光の反射光により前記スリット光と鉄筋表面との交差点群を前記カメラで撮影し、前記カメラの画面上における前記交差点群の像の重心位置の二次元座標を求め、所定撮影位置の対地三次元座標と前記取付台上の光源及びカメラの取付位置と前記回転軸の角度位置とから対地三次元座標系における光源座標及びカメラ座標を求め、前記取付台上の光源とカメラ間の線分に対する前記スリット光及びカメラ光軸の傾斜角を定め、前記二次元座標と前記光源座標及びカメラ座標と前記両傾斜角とからスリット光投影法により前記二次元座標に対応する重心三次元座標を算出し、前記回転軸の回転により前記スリット光と前記鉄筋との交差位置を変えながら前記交差点群の撮影から前記重心三次元座標の算出までの測定サイクルを繰返し、算出した2以上の前記重心三次元座標の点を結んだ線の位置及び向きを求めてなる鉄筋の配筋位置及び姿勢計測方法である。
【0008】
また、下記特許文献は、工事写真撮影対象部を撮影自在なデジタルカメラを設け、前記デジタルカメラで撮影した前記工事写真撮影対象部の複数のデジタル写真をもとにして、それらを工事写真集として整理自在なコンピュータを設けてある工事写真管理システムである。
【特許文献5】特開2003−288384号公報
【0009】
この特許文献5は、デジタルカメラによって撮影する工事写真撮影対象部毎に、工事写真撮影対象部に係わる説明情報を作成して保存自在な携帯情報端末を設け、前記携帯情報端末で作成した前記説明情報を、対応した前記デジタル写真の一部に重ねて表示する写真合成手段を設けてある。この前記写真合成手段は、前記デジタル写真と前記説明情報とのファイル名どうしの関連付けによって合成対象を規定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1〜4における従来の配筋検査方法は、いずれもデジタルカメラでの写真撮影によるものであり、鉄筋をすべて組み立てた後に、柱や梁などの立体的な形状を持つ構造帯のすべての鉄筋を写すことが難しく、撮影した1枚の画像から配筋が正しくされているかを把握することは出来ない。
【0011】
また、複数の方向から撮影した画像を用いる場合は、各画像間の整合性を取るためにカメラの位置を測定する必要があり、鉄筋の周辺の型枠がある場合には撮影が出来ない場合もある。
【0012】
特許文献3では、鉄筋にマーカを取り付けて撮影したデジタルカメラの写真を画像認識手法を用いて鉄筋の検査を行う方法を提案しているが、柱や梁の様な撮影した写真にすべての鉄筋が映らない立体的な形状を持つ部材への適用は難しい。
【0013】
特許文献5は、工事写真管理システムとして、工事写真対象部の複数のデジタル写真の合成手段を提案しているが、立体的な構造物を対象に合成するためには多くの写真の撮影と関連付けが必要である。また、型枠などの隠れている鉄筋の撮影は難しい。
【0014】
本発明は前記従来例の不都合を解消し、鉄筋の種類ごとに異なる色でマーキングした柱や梁などの立体的な構造体の鉄筋を全周囲レンズを用いて一枚の画像に撮影して、これにより配筋検査を行うことができる配筋検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、鉄筋の鋼種や径ごとに異なる色で色マーキングを施し、全周囲レンズと照明手段と、全周囲レンズからの光をデジタルデータに変換して、画像データ処理装置に送る受光装置を立体組の鉄筋配置の内部に挿入できる支持棒端に取り付け、撮影した場所の記号を表示させ、写真から撮影場所を判断出来るようにする掲示板を支持棒に設け、画像データ処理装置は、受光装置からのデータを画像として保存し、また、画像から色マーキングと掲示板の記号を部位ごとに表示することを要旨とするものである。
【0016】
請求項1記載の本発明によれば、立体組の鉄筋配置の内部に挿入できる支持棒を用いて、この支持棒端に全周囲レンズと照明手段と、全周囲レンズからの光をデジタルデータに変換して、画像データ処理装置に送る受光装置を取り付けたので、支持棒を介して、全周囲レンズと照明手段、受光装置を立体組の鉄筋配置の内部に設置でき、かつ、全周囲レンズで一枚の画像に撮影して、画像データ処理装置に送ることができる。
【0017】
請求項2記載の本発明は、掲示板は、撮影した場所の記号を表示させ、写真から撮影場所を判断出来るようにする電光掲示板であることを要旨とするものである。
【0018】
請求項2記載の本発明によれば、撮影範囲内で電光掲示板により、部材番号や位置コードを表示して、確認を行うことができる。
【0019】
請求項3記載の本発明は、受光装置からデータを受ける画像データ処理装置は、受光装置からのデータを画像として保存し、保存した画像から色マーキングと電光掲示板の記号を自動的に認識し、鉄筋の種類ごとの本数および、鉄筋間の間隔を部位ごとに表示することを要旨とするものである。
【0020】
請求項3記載の本発明によれば、画像データ処理装置により、保存した画像から色マーキングと電光掲示板の記号を自動的に認識し、検査に必要なデータを表示させることができる。
【0021】
請求項4記載の本発明は、画像データ処理装置は、設計の鉄筋種類ごとの本数および、鉄筋間の間隔を表示して、画像からの認識結果との比較結果を保存することを要旨とするものである。
【0022】
請求項4記載の本発明によれば、設計と実際の配筋とを比較して検証することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように本発明の配筋検査装置は、鉄筋の種類ごとに異なる色でマーキングした柱や梁などの立体的な構造体の鉄筋を全周囲レンズを用いて一枚の画像に撮影して、配筋検査を行うことができ、配筋検査の省力化と配筋検査結果の整合性の確保が簡単にできるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の配筋検査装置の1実施形態を示す説明図で、図中1は支持棒である。
【0025】
支持棒1は少なくともその先端部が、柱筋や梁筋等の立体組の鉄筋配置の内部に挿入できるものであり、材質は金属製、合成樹脂製、木製等を問わない。
【0026】
支持棒1の先端部に、全周囲レンズ2と照明3と受光装置4を設け、これらが立体組の鉄筋配置の内部にセットできるようにする。
【0027】
全周囲レンズ2は、レンズ(魚眼レンズ)を中心に周辺360度を写し、これを受光装置4に写し出すものである。
【0028】
照明3は、撮影部位の光環境を最適化するもので、LED等の発光灯であり、コンパクトカメラのフラッシュやストロボが利用できる。
【0029】
受光装置4は、全周囲レンズ2からの光を映像として取り込み、デジタル画像データに変換して、後述の画像データ処理装置7に送るものである。
【0030】
支持棒1は、その途中にこの支持棒1にそってスライド可能なハンドルである位置ガイド5を設け、この位置ガイド5で、支持棒1の柱(鉄筋)や梁(鉄筋)の中央部に支持棒1の先端の全周囲レンズ2が配置できるように、柱や梁の幅に合わせて支持棒1の挿入位置を調整する。なお、支持棒1に目盛を設け、これで位置ガイド5を合わせるようにしてもよい。
【0031】
なお、位置ガイド5は支持棒1を支承するクリップとして作用させることもでき、この位置ガイド5を鉄筋(フープ筋)に固定することで、支持棒1の全体を掛止させておくことができる。
【0032】
支持棒1の前記位置ガイド5の近傍に、電光掲示板6を設け、さらにその先に画像データ処理装置7を設けた。
【0033】
電光掲示板6は、撮影する場所を記号や数字として表示させ(通り芯等)、写真から撮影場所を判断出来るようにする。また、この電光掲示板6は画像データ処理装置7に接続され、画像データ処理装置7を操作制御装置として画像データ処理装置7により表示制御でき、画像データ処理装置から撮影する部位を選択することで自動的に対象とする柱や梁の設計図面の記号を表示できる。
【0034】
電光掲示板6の表示は全周囲レンズ2により撮影される。
【0035】
画像データ処理装置7は電子カメラの本体部分に相当するものであり、モニターを備えた操作部でもあり、受光装置4からのデータを画像として保存するものである。
【0036】
また、画像データ処理装置7は保存した画像から後述の色マーキング8と電光掲示板6の記号を自動的に認識し、鉄筋の種類ごとの本数および、鉄筋間の間隔を部位ごとに表示する。
【0037】
さらに、画像データ処理装置7には、設計の鉄筋種類ごとの本数および、鉄筋間の間隔を表示して、画像からの認識結果との比較を自動的に行い、その結果を保存する機能を持たせることもできる。
【0038】
このようにして、支持棒1の先端部に全周囲レンズ2を置き、支持棒1の後端部に画像データ処理装置7を置くことで、画像データ処理装置7を全周囲レンズ2から離れた場所に設置し、画像データ処理装置7を操作して全周囲レンズ2での撮影ができるようにした。
【0039】
次に、使用法について説明する。鉄筋には鋼種や径ごとに異なる色を施すことにより、色マーキング8を付けて置く。(図4参照)この色マーキング8をもとに、画像から色を区別することで鉄筋の鋼種や径を判断する。
【0040】
図2〜図4は柱の場合で、柱主筋9aにせん断補強筋としてのフープ筋9bが巻回しされ、立体的に組まれ、その外側には型枠10が配置されている。
【0041】
型枠10内で、鉄筋組内に支持棒1を差し入れ、その先端に設けた全周囲レンズ2と照明3と受光装置4を鉄筋組内に置き、電光掲示板6と画像データ処理装置7とは型枠10の外に出るように、位置ガイド5で位置を調整する。なお、電光掲示板6は大きさにもよるがこれを型枠10に置いてもよい。
【0042】
照明2で照らしながら、全周囲レンズ2で写し、図5のような画像を得る。
【0043】
受光装置4は、全周囲レンズ2からの光をデジタル画像データに変換して画像データ処理装置7に送る。図6は、画像データ処理装置7に送る内容をわかり易いように展開画像として示したものである。
【0044】
画像データ処理装置7は、受光装置4からのデータを画像として保存し、及び表示する。その際、保存した画像から色マーキング8と電光掲示板6の記号11を自動的に認識し、鉄筋の種類ごとの本数および、鉄筋間の間隔を部位ごとに表示する。図7はこれをわかり易いように、展開画像として示したものであり、色マーキング8の脇に記号11として数字が表示されている。
【0045】
図8は検証(検査)の説明図であり、画像データ処理装置7に設計の鉄筋種類ごとの本数および、鉄筋間の間隔を表示し、この表示αを画像の対比部分βに対比させ、画像の認識結果との比較判断を行い、また、その結果を記録として保存する。
【0046】
なお、設計の鉄筋種類ごとの本数および、鉄筋間の間隔を表示は、設計図で紙により行い、これを目視で、画像データ処理装置7の画像と認識するのでもよい。
【0047】
前記のごとく、認識結果との比較判断結果を保存することで、配筋検査を行ったことを後日証明できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の配筋検査装置の1実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明の配筋検査装置の使用例を示す斜視図である。
【図3】本発明の配筋検査装置の使用例を示す平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】全周囲レンズでの撮影画像である。
【図6】全周囲レンズでの撮影画像をわかりやすいように展開した図である。
【図7】全周囲レンズでの撮影画像を展開した画像のマーキング認識を示す画像をわかりやすいように展開した図である。
【図8】検証(検査)の説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1…支持棒 2…全周囲レンズ
3…照明 4…受光装置
5…位置ガイド 6…電光掲示板
7…画像データ処理装置
8…色マーキング 9a…柱主筋
9b…フープ筋 10…型枠
11…記号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋の鋼種や径ごとに異なる色で色マーキングを施し、
全周囲レンズと照明手段と、全周囲レンズからの光をデジタルデータに変換して、画像データ処理装置に送る受光装置を立体組の鉄筋配置の内部に挿入できる支持棒端に取り付け、撮影した場所の記号を表示させ、写真から撮影場所を判断出来るようにする掲示板を支持棒に設け、画像データ処理装置は、受光装置からのデータを画像として保存し、また、画像から色マーキングと掲示板の記号を部位ごとに表示することを特徴とする配筋検査装置。
【請求項2】
掲示板は、撮影した場所の記号を表示させ、写真から撮影場所を判断出来るようにする電光掲示板である請求項1記載の配筋検査装置。
【請求項3】
受光装置からデータを受ける画像データ処理装置は、受光装置からのデータを画像として保存し、保存した画像から色マーキングと電光掲示板の記号を自動的に認識し、鉄筋の種類ごとの本数および、鉄筋間の間隔を部位ごとに表示する請求項1記載の配筋検査装置。
【請求項4】
画像データ処理装置は、設計の鉄筋種類ごとの本数および、鉄筋間の間隔を表示して、画像からの認識結果との比較結果を保存する請求項3記載の配筋検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−57190(P2013−57190A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195651(P2011−195651)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)