説明

配管の合流部構造

【課題】ポンプの能力通りの流量が得られる合流部構造にする。
【解決手段】配管の合流部構造は、第1の流体を流している本管10に第2の流体が流れる支管20を接続して、本管10の第1の流体に、第2の流体を支管20の流出口21から流出させて混合させており、支管20の流出口21の直前に拡大部22を設けることで、支管20における流出口21の直前の直径を、本管10の直径相当に拡大している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管を接続して流体を混合するための配管の合流部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
配管は、各種流体を移送するために様々な工場で設置されている。
製鉄業では、配管により燃焼ガスや循環水等の様々な流体を移送しており、具体的な例を挙げると、図4に示すように、熱間圧延の工程100においては鋼板101の表面に発生した酸化鉄(以下、スケールという。)を取り除くために、スプレーノズル102等から、加圧した水を鋼板101に吹きかけたり、圧延機のワークロール103を冷却するために、スプレーノズル102等から、ワークロール103に水を供給したりする等している。
【0003】
また、熱間圧延の工程100において使用した水は使用箇所によって粗ミル環水と仕上ミル環水とに分けられる。これらはあわせてミル環水と呼ばれる。図5に示すように、ミル環水は、スルース104で回収されて、ビット105から沈殿槽106及びろ過器107を通して水に含まれるスケール等の不純物が除去され、給水槽108へ送られる。その後、不純物が除去された水は、ミルに戻されることで、循環利用されている。また、除去した不純物は、濃縮槽109で濃縮され、スラリーにされて脱水機110にかけられる。脱水機110の圧搾水、濃縮槽上澄液及び循環水の一部はブロー水として排水設備111を通して、系外に放出される。そして、これらの水を移送するために、工場内には、適宜合流及び分岐させられた配管が設置されている。また、水の移送は、配管上に適宜配置したポンプ112によりなされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、配管で合流させるために、図6に示すようなT字型合流管121を用いる場合がある。しかし、T字型合流管121では本管131に接続される支管132を流れる流体の圧力損失(以下、圧損という。)が大きいために、図7に示すようなY字型合流管122を用いることが多い。Y字型合流管122の場合、本管131と支管132との合流角度(本管131の中心軸と支管132の中心軸とがなす角度)θによって支管132の圧損が異なり、合流角度θを小さくなるほど(支管132が本管131の上流側に倒れているほど)、支管132の圧損が小さくなる。
しかし、このように多用されるY字型合流管122でも、本管131の流量が支管132の流量よりも圧倒的に多い場合、支管132を流れる流体が本管131を流れる流体に押し負けて、ポンプの能力通りの流量が得られない、という問題がある。
本発明の課題は、ポンプの能力通りの流量が得られる合流部構造にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明に係る請求項1に記載の配管の合流部構造は、第1の流体を流している本管に第2の流体が流れる支管を接続して、前記本管の第1の流体に、前記第2の流体を前記支管の流出口から流出させて混合させる配管の合流部構造において、前記支管における前記流出口の直前の直径を、前記本管の直径相当に拡大していることを特徴とする。
また、本発明に係る請求項2に記載の配管の合流部構造は、請求項1に記載の配管の合流部構造において、前記支管の流出口の直前に拡大管を設けることで、前記支管における流出口の直前の直径を、本管の直径相当に拡大していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、支管の流出口直前の直径を、本管の直径相当に拡大させることで、支管から本管への流出量が多くすることができ、ポンプの能力通りの流量を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を図面を参照しながら詳細に説明する。
(構成)
図1は、本発明を適用した配管の合流部構造を示す。
図1に示すように、配管の合流部構造は、第1の流体に第2の流体を混合させるために、第1の流体が流れる本管10に第2の流体が流れる支管20を接続している。ここで、第1及び第2の流体は、配管が製鉄業において配置されているものであれば、循環水等である。
【0008】
支管20の流出口21よりも上流における直径D1は、本管10の直径D2よりも小さく、本管10と支管20との接続部では、本管10と支管20との合流角度(本管10の中心軸と支管20の中心軸とがなす角度)θが、支管20が本管10の上流側に倒れる角度となっている。
また、支管20では、流出口21の直前の直径D3を、本管10の直径D2相当に拡大させている。具体的には、本管10の直径D2よりも小さい直径D1の支管20に拡大部(ディフューザ)22を設けることで、流出口21を含めた流出口21の直前の直径D3を、本管10の直径D2相当に拡大(拡径)させている。
(作用及び効果)
作用及び効果は次のようになる。
【0009】
前述のように、配管の合流部構造では、第1の流体を流している本管10に第2の流体が流れる支管20を接続することで、本管10の第1の流体に第2の流体を支管20から流出させて混合させている。
そして、支管20において本管10との合流点の径、すなわち本管10への接続部の径を、流出口21の直前で拡大していることで、支管20から本管10に流出する第2の流体の流量を増加させることができる。
【0010】
これは、図1に示すように、本管10と支管20との接続部、すなわち支管20の端面(流出口21)付近では、本管10の第1の流体が支管20の第2の流体を巻き込むように流れている。例えば支管20の流出口21の外周から本管10の流れが剥離して、その剥離のために支管20の流出口21が負圧になり、その負圧により支管20の第2の流体が本管10の第1の流体に巻き込まれるようになる。
【0011】
このようなことから、前述のように、支管20を流出口21の直前で拡大して、支管20の管断面積を大きくすることで、本管10の第1の流体の流れに巻き込まれる第2の流体の流量を増やすことができる。
また、本管10と支管20との接続部で、支管20が本管10の上流側に倒れるような合流角度θとして、本管10に接続される支管20の端部の流出口21を本管10内で下流側に向けることで、本管10の第1の流体の流れに支管20の第2の流体をより効果的に巻き込むようにしている。
【0012】
次に、配管の合流部の圧力損失を検討してみる。配管の合流部における圧力損失(損失ヘッド)hは、下記(1)式のような関係で表せる。
h=ζ・v/(2・g) ・・・(1)
ここで、ζは圧力損失係数である。圧力損失係数とは、配管内を流れる流体が受けた圧損を算出するために用いる値である。また、vは支管内の流速であり、gは重力加速度である。この(1)式によれば、圧力損失係数ζが小さくなるほど、圧力損失hは小さくなる。
【0013】
図2は、合流後の流量比、すなわち支管20の流量Qと、支管20の流量Qが本管10の流量Qに合流した後の流量Q(=Q+Q)との比である流量比Q/Qを0.1としたときに(Q/Q=0.1)、支管20の拡径部22の断面積Aと本管10の断面積Aとの比である断面積比A/Aを変化させた場合の、圧力損失係数の変化を示す。また、図3は、前記流量比Q/Qを0.5としたときに(Q/Q=0.5)、断面積比A/Aを変化させた場合の、圧力損失係数の変化を示す。また、図2及び図3では、合流角度θをパラメータとしている。
【0014】
図2及び図3に示すように、断面積比A/Aが1に近くなるほど、すなわち、支管20の流出口21直前の直径D3が、本管10の直径D2に近づくほど、合流点での圧力損失係数が小さくなり、合流点での流体の圧損が小さくなる。
このような結果から、配管に接続されるポンプを、より本来の能力に近い吐出圧で運転でき、支管20から本管10への流入量を多くすることができる。
なお、前記実施形態を次のような構成により実現することもできる。
すなわち、前記実施形態では、液体の合流について説明したが、これに限定されるものではなく、気体や混相流体等の流体を用いる場合にも本発明を適用できる。
【0015】
(実施例)
実施例は次のようになる。
配管の合流部構造を図1に示す合流部構造にして、本管10として、外径(径称)250AのSGP管(配管用炭素鋼鋼管)を用い、支管20として、ディフューザ前で外径(D4)150A、ディフューザ後で外径(D3)250AのSGP管を用いている。一方、比較例(従来例)として、配管の合流部構造を前記図6(T字型)又は図7(Y字型)に示す合流部構造にして、本管131として、外径(径称)250AのSGP管を用い、支管132として、外径150AのSGP配管を用いている。本発明を適用した場合(図1)及び比較例の場合ともに、本管のポンプ能力は、流量180m/h、揚程40mであり、支管のポンプ能力は、流量20m/h、揚程35mである。
図6に示すようなT型字型合流管121の場合、支管132の実際の流量が5m/hとなった。これは、前述のように、支管132の流量よりも本管131の流量が圧倒的に多いために、支管132の流体が本管131の流体に押し負けて、合流し難くなっていることが原因になっていると考えられる。
【0016】
また、図7に示すY型字型合流管122の場合、支管の実際の流量は、T型字型合流管121の場合と比較して流量は増加したものの、9m/hとなった。これは、前述のように、T型字型合流管121の場合と同様、支管132の流量よりも本管131の流量が圧倒的に多いために、支管132の流体が本管131の流体に押し負けて、合流し難くなっていることが原因していると考えられる。
これに対して、本発明を適用した場合(図1に示す合流部構造の場合)、支管20の実際の流量は、12m/hとなり、比較例(T型字型合流管、Y型字型合流管)よりも流量が多くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の配管の合流部構造を示す図である。
【図2】流量比Q/Q=0.1とした場合の、断面積比A/A及び合流角と圧力損失係数ζとの関係を示す特性図である。
【図3】流量比Q/Q=0.5とした場合の、断面積比A/A及び合流角と圧力損失係数ζとの関係を示す特性図である。
【図4】熱間圧延の工程において、鋼板の表面の酸化鉄をスプレーノズルで取り除く処理の説明に使用した図である。
【図5】熱間圧延の工程を実現する配管の例を示す図である。
【図6】従来の配管の合流部構造であるT字型合流管を示す図である。
【図7】従来の配管の合流部構造であるY字型合流管を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
10 本管、20 支管、21 流出口、22 拡大部、D1 支管の直径、D2 本管の直径、D3 拡大部の直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流体を流している本管に第2の流体が流れる支管を接続して、前記本管の第1の流体に、前記第2の流体を前記支管の流出口から流出させて混合させる配管の合流部構造において、
前記支管における前記流出口の直前の直径を、前記本管の直径相当に拡大していることを特徴とする配管の合流部構造。
【請求項2】
前記支管の流出口の直前に管径拡大部を設けることで、前記支管における流出口の直前の直径を、本管の直径相当に拡大していることを特徴とする請求項1に記載の配管の合流部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−228705(P2009−228705A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71934(P2008−71934)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】