説明

配管内のガス置換方法及びガス置換装置

【課題】安全に短時間で、また置換するために必要なガス量が少ない配管内の可燃性ガスを空気に置換する配管内のガス置換方法、及びガス置換装置を提供する。
【解決手段】配管21内の可燃性ガスの一部を不活性ガスに置換し、該配管21内に局所的に不活性ガス濃度の高い不活性ガス領域を形成する不活性ガス置換工程と、該不活性ガス置換工程により、該配管21内に不活性ガス領域を形成した後、該配管21内に残留する該可燃性ガスに接触しないように、該配管内に空気を供給し、供給する空気により該不活性ガスを押出し、該配管内の可燃性ガス及び不活性ガスを空気に置換する空気置換工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内の可燃性ガスを空気に置換する配管内のガス置換方法、及びガス置換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所で発生する高炉ガスなどの燃料ガスを輸送する燃料ガス輸送配管は、定期点検工事や補修工事を行いながら使用している。この燃料ガス輸送配管を定期点検工事や補修工事で内部点検作業等を行う場合は、ガス中毒、火災及びガス爆発を防止するために、配管内の燃料ガスを不活性ガスである窒素ガスで置換した後、この窒素ガスを空気で置換している。特に重油と高炉ガスなどの製鉄所副生ガスを混焼している発電用ボイラーでは定期点検工事等で発電設備を停止する際、炉内爆発防止のため重油専焼中に燃料ガス輸送管内の燃料ガスを不活性ガスである窒素ガスで置換した後に発電機の解列を行っている。
【0003】
図6は、一般的な高炉ガス輸送配管の概略的な配管系統を示す図である。高炉ガスはU字水封弁1、高炉ガス輸送配管2を介してボイラー3に送られる。高炉ガス輸送配管2の途中には、高炉ガスを緊急遮断することが可能な緊急水封弁4、予熱器5、流量制御ダンパー6が配設されている。高炉ガス輸送配管2に滞留する高炉ガスを空気に置換する場合は、高炉ガス輸送配管2の一端近傍に接続された窒素ガス供給管7を用いて、高炉ガス輸送配管2に窒素ガスを送りながら、高炉ガス輸送配管2に配設されたブリーダ弁8(8a、8b、8c、8d、8e)から高炉ガスを排出する。
【0004】
ブリーダ弁8で高炉ガスを排出しながら、ブリーダ弁8に近接して設けられる試料採取弁9(9a、9b、9c、9d、9e)で試料ガスを採取し、高炉ガスの濃度を図示を省略したガス濃度計で測定する。この濃度が、所定の値以下であることを確認した後、窒素ガスの供給を停止して、高炉ガス輸送配管2に接続した空気ブロワ10で空気を供給しながら、ブリーダ弁8で高炉ガス輸送配管2内の窒素ガスを排出し、高炉ガス輸送配管2のガスを空気に置換する。空気への置換の完了は、試料採取弁9で酸素濃度を測定することで行う。
【0005】
上記の方法は、従来から一般的によく用いられている高炉ガスの置換方法であるが、ガス置換の効率が必ずしも高いとは言えず、ガス置換に必要な窒素ガスの量が多いことや、ガスの置換に時間を要するなどの課題が指摘されている。配管、又は容器内のガスを効率的に又は安全に置換する方法の一つとして、地下式貯槽内の空気を窒素ガスに一度置換した後、この窒素ガスをメタンガスに置換する場合に、少ない窒素ガス量で効率的に置換する方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−301786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製鉄所などで使用される燃料ガス輸送配管は、配管の内径は大きいところでは2〜3mにも及び、長さも100mを超えるなど容量が大きい。また燃料ガス輸送配管は、曲り部、分岐部を有するなど複雑な形状、経路を有する。特許文献1に記載の技術は、地下式貯槽内の空気を窒素ガスに一度置換した後、この窒素ガスをメタンガスに置換する場合に、少ない量で効率的に置換する方法に関するものであるが、この方法は、置換すべき対象物の形状が単純であり、かつ空気、窒素ガス、メタンガスの比重量の違いを利用しガスの置換を行うものであり、この方法を燃料ガス輸送配管内のガスの置換方法として利用することはできない。
【0007】
大容量でかつ、配管の長さが長く、曲り部、分岐部を有するなど複雑な形状を有する配管内の可燃性ガスを、短時間にかつ少ない不活性ガス量で効率的に置換する技術がないのが現状であり、これら配管内のガスを短時間に、かつ少ない窒素ガス量で効率的に置換する方法の開発が待たれている。特に重油と高炉ガスなどの製鉄所副生ガスを混焼している発電用ボイラーでは定期点検工事等で発電設備を停止する際、炉内爆発防止のため重油専焼として燃料ガス輸送管内の高炉ガスなどの製鉄所副生ガスを不活性ガスである窒素ガスで置換した後に発電機の解列を行っているため、ガス置換の時間短縮は切実な問題である。また、配管内の可燃性ガスを、安全にかつ短時間で効率的に空気に置換する技術が開発されれば、燃料ガス輸送配管に限定されることなく、多くの場所で使用されるであろうことは言うに及ばない。
【0008】
本発明の目的は、安全に短時間で、またガス置換するために必要なガス量が少ない配管内の可燃性ガスを空気に置換する配管内のガス置換方法、及びガス置換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、配管内の可燃性ガスを空気に置換する配管内のガス置換方法であって、
配管内の可燃性ガスの一部を不活性ガスに置換し、該配管内に局所的に不活性ガス濃度の高い不活性ガス領域を形成する不活性ガス置換工程と、
該不活性ガス置換工程により、該配管内に不活性ガス領域を形成した後、該配管内に残留する該可燃性ガスに接触しないように、該配管内に空気を供給し、供給する空気により該不活性ガスを押出し、該配管内の可燃性ガス及び不活性ガスを空気に置換する空気置換工程と、
を含むことを特徴とする配管内のガス置換方法である。
【0010】
また本発明で、前記不活性ガス置換工程での不活性ガス領域の形成は、前記配管の一端から前記不活性ガスを供給しながら、前記配管の中央部及び/又は他端部から前記可燃性ガスを排出することで行い、
前記空気置換工程での空気の供給は、前記不活性ガスを供給した前記配管の端部と同じ端部側から行うことを特徴とする請求項1に記載の配管内のガス置換方法である。
【0011】
また本発明は、さらに、前記不活性ガス置換工程により、前記配管内に所定の長さの不活性ガス領域が形成されたことを確認する確認工程と、を含み、
不活性ガス領域の形成の確認は、前記配管の軸方向の可燃性ガス濃度を検出し、予め定める位置の可燃性ガス濃度が、所定の濃度以下であることで確認することを特徴とする請求項1又は2に記載の配管内のガス置換方法である。
【0012】
また本発明で、前記可燃性ガスは、比重量が前記不活性ガスの比重量と近似することを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の配管内のガス置換方法である。
【0013】
また本発明で、前記可燃性ガスは、製鉄所の高炉ガスであり、前記不活性ガスは、窒素ガスであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載の配管内のガス置換方法である。
【0014】
また本発明で、前記不活性ガス及び前記空気の供給は、前記配管の横断面に対し多方向から供給することを特徴とする請求項1から5のいずれか1に記載の配管内のガス置換方法である。
【0015】
また本発明で、前記配管に装置、機器が配設されているときは、前記不活性ガス置換工程の置換操作とは別に、該装置、機器内の可燃性ガスを不活性ガスに置換する操作を行い、その後前記空気置換操作を行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか1に記載の配管内のガス置換方法である。
【0016】
また本発明で、前記空気置換工程の空気で不活性ガスを押し出す方向とは異なる方向にもガス置換すべき他の管路を有するときは、前記不活性ガス置換工程の置換操作とは別に、該他の管路内の可燃性ガス濃度を十分に低下させる不活性ガス置換操作を行い、その後前記空気置換操作を行うことを特徴とする請求項1から7のいずれか1に記載の配管内のガス置換方法である。
【0017】
また本発明で、前記可燃性ガスが混合ガスからなるときは、前記不活性ガス置換工程の配管内の可燃性ガスの排出を配管の上部から行い、前記確認工程での可燃性ガスの検出は、混合ガスのうち比重量の大きいガスを対象とすることを特徴とする請求項3から8のいずれか1に記載の配管内のガス置換方法である。
【0018】
また本発明で、前記可燃性ガスが混合ガスからなるときは、前記不活性ガス置換工程の配管内の可燃性ガスの排出を配管の下部から行い、前記確認工程での可燃性ガスの検出は、混合ガスのうち比重量の小さいガスを対象とすることを特徴とする請求項3から8のいずれか1に記載の配管内のガス置換方法である。
【0019】
また本発明は、配管内の可燃性ガスを空気に置換する配管内のガス置換装置であって、
該配管に接続し、不活性ガスを供給可能な不活性ガス供給手段と、
該配管に接続し、該配管内のガスを排出可能なガス排出手段と、
該配管内のガス濃度を検出可能なガス濃度検出手段と、
該配管内に接続し、該配管内に空気を供給可能な空気供給手段と、
該配管内の予め定める位置の該可燃性ガス濃度が、所定の値以下であることを該ガス濃度検出手段が検出すると、該空気供給手段から該配管へ空気を供給可能に制御し、該配管内の予め定める位置の可燃性ガス濃度が、所定の値を超えたことを該ガス濃度検出手段が検出すると、該空気供給手段から該配管へ空気を供給不能に制御する制御手段と、
を含むことを特徴とする配管内のガス置換装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の配管内のガス置換方法は、配管内に局所的に不活性ガス濃度の高い不活性ガス領域を形成し、その後、配管内に残留する可燃性ガスに直接接触しないように、配管内に空気を供給し、供給する空気で不活性ガスを押出し、配管内の可燃性ガス及び不活性ガスを空気に置換する。従来のガス置換方法では、配管内全体を不活性ガスに置換した後、空気を供給し配管内を空気に置換していたけれども、本発明のガス置換方法は、配管内に局所的に不活性ガス濃度の高い領域を形成した後、この不活性ガスを空気で押出すことでガス置換を行うので、従来のように配管全体を不活性ガスに置換する必要がない。このため不活性ガスに置換する時間が短縮されるとともに、ガス置換に必要な不活性ガスの量も従来法に比較して少なくすることができる。
【0021】
また本発明によれば、不活性ガス領域の形成は、配管の一端から不活性ガスを供給しながら、配管の中央部及び/又は他端部から可燃性ガスを排出することで行うので、効率的に、また確実に不活性ガス領域を形成することができる。また空気置換工程での空気の供給は、不活性ガスを供給した配管の端部と同じ端部側から行うので、可燃性ガスと供給する空気との間に不活性ガス領域が存在し、空気が可燃性ガスと直接接触することがなく、安全に配管内を空気に置換することができる。
【0022】
また本発明によれば、さらに、配管の軸方向の可燃性ガス濃度を検出し、予め定める位置の可燃性ガス濃度が、所定の濃度以下であることで不活性ガス領域が形成されたことを確認するので、不活性ガス領域の形成を確実に確認することができる。また可燃性ガス濃度の管理値を、可燃性ガスの燃焼範囲、爆発範囲に基づき決定することで安全に配管内のガス置換を行うことができる。
【0023】
また本発明によれば、可燃性ガスの比重量が不活性ガスの比重量と近似するので、不活性ガスによる置換操作の際、配管内を不活性ガスが局所的に流れるガスの吹き抜けが発生しにくい。これにより、短時間で効率的に不活性ガス領域を形成させることができる。
【0024】
また本発明によれば、可燃性ガスは、製鉄所の高炉ガスであり、不活性ガスは、窒素ガスである。高炉ガスは、一般的に一酸化炭素、水素などの可燃性ガスのほか、窒素ガス、二酸化炭素を含み、ガスの比重量は、1.34(kg/mN)程度である。これに対して窒素ガスの比重量は、1.25(kg/mN)であり、高炉ガスと窒素ガスとは比重量が近似する。よって短時間で効率的に不活性ガス領域を形成させることができる。
【0025】
また本発明によれば、不活性ガス及び空気の供給は、配管の横断面に対し多方向から供給するので、不活性ガス及び空気の供給を配管の横断面方向に対して略均一になすことができる。この結果、配管径の大きい配管であっても、配管内での局所的なガスの吹き抜け、ガスの混合を抑制することができる。
【0026】
また本発明によれば、配管に装置、機器が配設されているときは、不活性ガス置換工程の置換操作とは別に、装置、機器内の可燃性ガスを不活性ガスに置換する操作を行う。配管に配設された装置、機器は、配管と異なり複雑な形状、構造を有することから、不活性ガス領域を形成する不活性ガス置換操作では、装置、機器内の可燃性ガスが不活性ガスに十分に置換されない可能性もある。しかしながら本発明のガス置換方法では、不活性ガス置換工程の置換操作とは別に、装置、機器内の可燃性ガスを不活性ガスに置換する操作を行うので、これらについても確実に不活性ガスに置換することが可能となり、配管及び装置等のガス置換を安全、確実に行うことができる。
【0027】
また本発明によれば、空気置換工程の空気で不活性ガスを押し出す方向とは異なる方向にもガス置換すべき他の管路を有するときは、不活性ガス置換工程の置換操作とは別に、他の管路内の可燃性ガス濃度を十分に低下させる不活性ガス置換操作を行い、その後空気置換操作を行うので、安全、確実にガス置換を行うことができる。
【0028】
また本発明によれば、可燃性ガスが混合ガスからなるときは、不活性ガス置換工程の配管内の可燃性ガスの排出を配管の上部から行い、確認工程での可燃性ガスの検出は、混合ガスのうち比重量の大きいガスを対象とするので、不活性ガス領域の形成を確実に検出することができる。比重量の大きいガスは、配管の下部に滞留しやすい。よって可燃性ガスの排出を配管の上部から行い、比重量の大きいガスが検出された時点では、比重量の小さいガスは既に排出された可能性が高い。これにより可燃性ガスが混合ガスであっても、不活性ガス領域の形成を確実に検出することができる。
【0029】
また本発明によれば、可燃性ガスが混合ガスからなるときは、不活性ガス置換工程の配管内の可燃性ガスの排出を配管の下部から行い、確認工程での可燃性ガスの検出は、混合ガスのうち比重量の小さいガスを対象とするので、不活性ガス領域の形成を確実に検出することができる。比重量の小さいガスは、配管の上部に滞留しやすい。よって可燃性ガスの排出を配管の下部から行い、比重量の小さいガスが検出された時点では、比重量の大きいガスは既に排出された可能性が高い。これにより可燃性ガスが混合ガスであっても、不活性ガス領域の形成を確実に検出することができる。
【0030】
また本発明のガス置換装置は、配管内に不活性ガスを供給可能な不活性ガス供給手段と、配管内のガスを排出可能なガス排出手段と、配管内のガス濃度を検出可能なガス濃度検出手段と、配管内に空気を供給可能な空気供給手段と、配管内の予め定める位置の可燃性ガス濃度が、所定の値以下であることをガス濃度検出手段が検出すると、空気供給手段から配管へ空気を供給可能に制御し、配管内の予め定める位置の可燃性ガス濃度が、所定の値を超えたことをガス濃度検出手段が検出すると、空気供給手段から配管へ空気を供給不能に制御する制御手段と、を含むので、本ガス置換装置を用いて安全に、また効率的に配管内のガスを置換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は本発明の実施の一形態としての配管内のガス置換装置20の概略的構成を示す図である。ここに示した燃料ガス輸送配管21は、高炉ガスをボイラー22に供給するための管路で、配管途中に緊急水封弁28、流量制御ダンパー29、燃料ガスを予熱する予熱器23、バーナへの燃料を遮断するバーナ弁24a、24bを有する。また燃料ガス輸送配管21には、配管内の燃料ガスを最終的に空気に置換するためのガス置換装置20が装着されている。
【0032】
本ガス置換装置20は、ガス置換を行う燃料ガス輸送配管21に接続し、配管内のガスを排出するガス排出管30(30a、30b、30c、30d、30e)、ガス排出管に接続する試料採取管32(32a、32b、32c、32d、32e)、窒素ガスを供給する窒素ガス供給管40、予熱器窒素ガス供給管42、及び管路に配設されるブリーダ弁31(31a、31b、31c、31d、31e)、試料採取弁33(33a、33b、33c、33d、33e)、窒素ガス供給弁41、予熱器窒素ガス供給弁43、空気を供給する空気供給手段50、ガス濃度を測定するためのガス濃度計60、各種自動弁などを制御する制御装置70などを含み構成される。
【0033】
燃料ガス輸送配管21には、燃料ガス輸送配管21内のガスを排出するためのガス排出管30a、30bが、燃料ガス輸送配管21の両端25、26近傍に設けられている。また燃料ガス輸送配管21の中央部に2ヶ所、ガス排出管30c、30dが配設されている。また、予熱器23内のガスを排出するために、予熱器23の上部にもガス排出管30eが設けられている。各ガス排出管30は、管路の途中にガスを排出するブリーダ弁31を備える。ブリーダ弁31は、後述の制御装置70からの制御信号を受けて開閉する自動弁である。
【0034】
また各ガス排出管30は、ブリーダ弁31と燃料ガス輸送配管21とを接続する管路に分岐部を有し、分岐部には、燃料ガス輸送配管21内のガス濃度を検出するための試料採取管32が接続されている。試料採取管32は、管路途中にガスを採取するための試料採取弁33を有する。試料採取弁33は、後述の制御装置70からの制御信号を受けて開閉する自動弁である。
【0035】
窒素ガス供給管40は、燃料ガス輸送配管21に窒素ガスを供給するための管路であり、制御装置70からの制御信号を受けて開閉する窒素ガス供給弁41を管路途中に有する。窒素ガス供給管40は、燃料ガス輸送配管21内の可燃性ガスを窒素ガスに置換するためのものであるから、燃料ガス輸送配管21の一端25近傍に接続されている。また、燃料ガス輸送配管21の途中に設置された予熱器23内の高炉ガスを窒素ガスに置換するために、予熱器窒素ガス供給管42も設けられている。
【0036】
これは、予熱器23は燃料ガス輸送配管21と大きさも異なり、複雑な形状を有するので、燃料ガス輸送配管21の窒素ガス置換操作のみでは、予熱器23内のガスを窒素ガスに十分に置換できない恐れがあることによる。また、大口径の燃料ガス輸送配管に窒素ガスを供給するときは、配管の横断面に比重量差によるガスの偏りが生じることを抑制する点から、図2に示すように多方向から窒素ガスを供給すことが望ましい。
【0037】
空気供給手段50は、空気ブロワ51と、空気ブロワ51からの空気を燃料ガス輸送配管21に送る空気供給管52とを含み構成される。空気ブロワ51は、燃料ガス輸送配管21に空気を送るもので、制御装置70からの制御信号を受けて開閉する空気供給弁53を備える空気供給管52を通じて、燃料ガス輸送配管21へ空気を供給する。この空気供給管52は、燃料ガス輸送配管21の窒素ガスを空気に置換するためのものであるから、燃料ガス輸送配管21の一端25近傍に接続されている。窒素ガスと空気との比重量差は小さいものの、配管径が大きい場合は、空気の供給の偏りが懸念されるため、図3に示すように、多方向から空気を導入することが好ましい。
【0038】
ガス濃度を測定するためのガス濃度計60は、試料採取管32から試料ガスを採取して、可燃性ガス濃度、及び酸素濃度を測定する。本実施形態に示す高炉ガスは、後述のように多種のガスの混合物である。このような混合ガスからなる可燃性ガス濃度の検出には、燃料ガスに含まれる特定のガスを代表ガスとし、このガスの濃度を検出する方法であってもよい。ガス濃度計60の濃度測定範囲及び精度は、燃料ガスを窒素ガスで置換するときの管理値、窒素ガスを空気で置換するときの管理値から決定すればよい。またガス濃度計60の測定原理等は特に限定されないけれども、オンラインで測定可能なガス濃度計であることが望ましい。
【0039】
制御装置70は、ガス濃度計60からのガス濃度信号に基づき、空気ブロワ51の起動停止、ブリーダ弁31、試料採取弁33、窒素ガス供給弁41、空気供給弁53などの弁の開閉を制御する。制御装置70は、ガス濃度計60からのガス濃度信号を入力する入力部、入力部を介して入力されるデータを記憶する記憶部、データを予め定める手順で演算する演算部、演算部が算出するデータを出力する出力部を備える。空気ブロワ51は、制御装置70の制御信号を受けて起動停止し、ブリーダ弁31、試料採取弁33、窒素ガス供給弁41、空気供給弁53などは、制御装置70の制御信号を受けて開閉をする。制御装置70は、コンピュータを用いて実現することが可能であり、データ処理手順は、プログラムとしてコンピュータに入力することができる。なお、制御装置70には、バーナ弁24が全て閉止などの条件で作動するインターロック機能が設けられている。
【0040】
また、燃料ガス輸送配管21は、燃料ガス入口部25に燃料母管から分離するためのU字水封弁80を備える。U字水封弁80は、U字部に水を張り込むことでガスを遮断することができる。このためU字水封弁80には、水位検出用のレベルスイッチ88(88a、88b)、水を供給するための給水管81、U字水封弁80からオーバーフローする水を排出するオーバーフロー管82、及びU字水封弁80の水を排出するための排水管83が接続されている。給水管81、オーバーフロー管82、及び排水管83には、各々制御装置70からの制御信号を受けて開閉する自動弁84、85、86、87が設けられている。
【0041】
次ぎに、本発明の配管内のガス置換方法について説明する。本発明の配管内のガス置換方法は、配管内の可燃性ガスを空気に置換するとき、配管内に局所的に不活性ガス濃度の高い不活性ガス領域を形成させ、可燃性ガスと空気との間にこの不活性ガス領域(不活性ガスの塊)を置くことで、配管内に可燃性ガスが残留していても、空気と可燃性ガスとを直接接触させることなく配管内を空気に置換することができる特徴を有する。これは、不活性ガスの塊を空気で押出すことで、不活性ガスが配管内で栓として機能し、配管内に残留する可燃性ガスと空気とが直接接触することなく、可燃性ガスを押出すことができるとするものである。以下、本発明のガス置換装置20を用いて、図1に示す燃料ガス輸送配管21のガスを置換する方法を説明する。
【0042】
図4は、本発明の配管内のガス置換手順を示すフローチャートである。また図5(a)〜図5(d)は、配管内のガスの移り変わりを模擬的に示す図である。ここに示す手順は一例を示すだけであり、操作や判断を変更してもよいことはもちろんである。まずバーナ制御装置(ボイラー制御装置)からの指令によりバーナ弁24a、24bを閉とし、バーナを消火させガス置換の実施の条件を整えた後、制御装置70によりU字水封弁80に水張りを行う(ステップS1)。これにより、後述のガス置換操作により、ガスがU字水封弁80の上流側(ボイラーと反対側)から燃料ガスが流れこむことを防止することができる。
【0043】
図5(a)は、バーナ点火中の燃料ガス輸送配管21内の状況を模擬的に示す図である。バーナ点火中は、U字水封弁80は、排水管83に設けられている排水弁86が開となっており、図5(a)に示すように、U字水封弁80には、水は張り込まれていない。よって、ボイラー制御装置(バーナ制御装置)からの指令によりバーナ弁24a、24bを閉じ、ガス置換の実施条件が成立した後、制御装置70は、U字水封弁80に接続する給水管81の給水弁84、及びオーバーフロー管82のオーバーフロー弁85を開とし、排水管83に設けられている排水弁86を閉となるように制御する。これによりU字水封弁80に水を張ることができる。また、水位検出用のレベルスイッチ88aで水張完了後は給水弁84を閉じ、給水弁84をバイパスする小容量の給水弁87を開として常時少量の給水を行い蒸発等による水位低下を防止する。なお、水位検出用のレベルスイッチ88bは水抜き完了、及びバーナ点火中のU字水封弁水位上昇を警告するために使用する。
【0044】
ステップS1でU字水封弁80の水張りを行った後、ステップS2で燃料ガス輸送配管21内に窒素ガスを供給しながら燃料ガスの排出を行う。窒素ガスの供給は、燃料ガス輸送配管21の一端25近傍に配設された窒素ガス供給管40を通じて行う。燃料ガスの排出は、燃料ガス輸送管路21の中央部に配設されたガス排出管30d、30e、及び窒素ガス供給管40とU字水封弁80との間に位置するガス排出管30aを用いて行う。窒素ガスの供給、燃料ガスの排出は、制御装置70から窒素ガス供給弁41、ブリーダ弁31a、31d、31e弁へ制御信号を送り、これら弁を開くことで行う。図5(b)は、燃料ガス輸送配管21内に窒素ガスを供給しながら燃料ガスをブリーダ弁31d、31eから排出している状況を示す。
【0045】
本発明のガス置換方法は、可燃性ガスと空気との間に不活性ガス領域(不活性ガス濃度の高い領域)を設け、可燃性ガスと不活性ガスとを空気でピストンフロー的に押出し、配管内を最終的に空気に置換しようとする方法であるから、ステップS2の窒素ガス置換操作において、燃料ガス輸送配管21内の全て領域において燃料ガスが窒素ガスに置換されている必要はない。所定の長さの窒素ガス濃度の高い領域が形成されればよい。このため、燃料ガスの排出は、窒素ガス供給管40と燃料ガス輸送配管21の中央部に配設されたガス排出管30d、30eから行えばよい。燃料ガスの排出を窒素ガス供給管40とU字水封弁80との間に位置するガス排出管30aを用いて行うのは、この部分に燃料ガスが残留しないようにするためである。
【0046】
窒素ガス置換操作である窒素ガスの供給、燃料ガスの排出は、燃料ガス輸送配管21内に窒素ガス濃度の高い領域を設けることを主目的に行うものであり、これらの操作において配管内で局所的なガスの吹き抜けや、窒素ガスと燃料ガスとの混合を抑制することが必要である。よって窒素ガスの供給速度、燃料ガスの排出速度は、配管内で局所的に窒素ガス、及び燃料ガスが吹き抜けることのない速度であることが必要である。ステップS2の窒素ガスの供給、燃料ガスの排出操作とほぼ同時に、ステップS3で排出ガス中の可燃性ガス濃度の測定を開始する。これは窒素ガス置換操作の終点を判断するためのものである。可燃性ガス濃度の測定は、試料採取弁33a、33d、33eを開け、ガスを採取してガス濃度計60に導くことで行う。
【0047】
本実施形態では、高炉ガスを用いているので、可燃性ガスを代表するガスを一酸化炭素として、一酸化炭素濃度を測定することで、これを可燃性ガス濃度の指標とすることができる。高炉ガスの成分割合の一例を表1に示す。表1に示すように、高炉ガスに含まれる可燃性ガス成分として一酸化炭素の濃度が高いため、これを代表ガスとすることができる。また本発明の実施形態のようにガス排出管30が、燃料ガス輸送配管21の上部に配設されている場合は、比重量の大きいガスを代表ガスとすることで配管内のガス濃度の偏析を防止することができる。また、毒性のあるガスを代表ガスとすることが安全上の観点から望ましい。さらに混合ガスを代表させる可燃性ガスとしては、濃度測定が容易で、精度よく測定可能な可燃性ガスであることが望ましい。
【0048】
【表1】

【0049】
本実施形態のように可燃性ガスが混合ガスからなるときは、混合ガスのうち特定のガスを代表ガスとすることが可能なことは、上述の通りである。可燃性ガスの排出を配管の下部から行う場合にあっては、比重量の小さいガスを代表ガスとすべきである。これは比重量の小さいガスは、配管の上部に滞留しやすい。よって可燃性ガスの排出を配管の下部から行い、比重量の小さいガスが検出された時点では、比重量の大きいガスは既に排出された可能性が高いことによる。これにより可燃性ガスが混合ガスであっても、可燃性ガスの濃度を確実に検出することができる。
【0050】
不活性ガス領域の形成完了は、試料採取弁33dでの一酸化炭素濃度が管理値となった時点とする。試料採取弁33dで一酸化炭素濃度が管理値となったことは、窒素ガス供給管40近傍の一酸化炭素濃度はさらに低いことから、これにより窒素ガス供給管40と試料採取弁33dとの間に不活性ガス領域が形成されたことが確認できる。なお、不活性ガス領域の形成に必要な窒素ガス量、及び窒素ガスを供給すべき時間などを把握した後は、その操作を行うことで、可燃性ガス濃度の測定を省略することもできる。
【0051】
不活性ガス領域の形成完了を判断する可燃性ガス濃度は、燃料ガスの空気中での燃焼範囲を参考に決めることができる。本発明の実施形態では、不活性ガス領域の形成完了の管理値の一例として、試料採取弁33dでの一酸化炭素濃度が5容量%以下に到達した時点とすることができる。一酸化炭素濃度が5容量%以下の状態は、燃料ガスの約80容量%が窒素ガスに置換されたことを示し、空気中での燃焼範囲も64〜75容量%と狭くなっている。さらに後述の配管への空気の供給に伴い、不活性ガス領域は、配管内を移動するため、試料採取弁33dでの一酸化炭素濃度はさらに低下する。これらのことから配管内に残留する燃料ガスが燃焼する可能性は極めて小さいと言える。
【0052】
窒素ガス置換操作は、配管内の燃料ガスを局所的に窒素ガスに置換し、窒素ガス濃度の高い領域を形成することを目的に行うものであるから、ガス置換を行う配管の端部から窒素ガスを供給することが可能で、配管に機器、装置が装着されていないような場合は、窒素ガス領域の形成が確認された時点で、窒素ガス置換操作を終了することができる。しかしながら、本実施形態のように、窒素ガス供給管40が、ガス置換をしようとする燃料ガス輸送配管21の端部に接続されていない場合や、配管に機器、装置が装着されている場合は、この部分の燃料ガスが窒素ガスに十分に置換されたことを確認した後、窒素ガス置換操作を終了することが望ましい。
【0053】
窒素ガス供給管40とU字水封弁80と間に位置する燃料ガス輸送配管27の燃料ガスを窒素ガスに置換するには、配管内に不活性ガス領域を形成するための窒素ガスの流れとは、異なるガスの流れが必要となる。このため、試料採取弁33dで一酸化炭素濃度が管理値となり、不活性ガス領域の形成が確認されたとしても、燃料ガス輸送配管27の燃料ガスが窒素ガスに置換されていない可能性もある。本実施形態では、空気置換操作時に不活性ガス領域を栓として、配管容量の大きい方へ不活性ガスを送りながら残留する燃料ガスを排出する。このため、ガス排出管30c、30dを接続する燃料ガス輸送配管部は、配管に空気を供給する後述の空気置換操作に伴い、不活性ガス領域を形成する窒素ガスが移動してくるため、さらに可燃性ガスの濃度は低下する。
【0054】
しかしながら、燃料ガス輸送配管27は、窒素ガス置換が終了した後は空気置換操作に伴う窒素ガスの供給がないので、空気置換操作に伴い可燃性ガス濃度が低下することはない。よって、この部分の可燃性ガス濃度は、十分に低下させておくことが望ましい。たとえば、試料採取弁33aでの一酸化炭素濃度が1容量%以下で窒素ガス置換終了とすることができる。この値に達すると、燃料ガスの空気中での燃焼範囲は、約73〜76容量%と非常に狭く、燃料ガスに空気が混入したとしても爆発にいたる可能性はほとんどない。
【0055】
窒素ガス供給管40及び、空気供給管52が燃料ガス輸送配管21の端部に設けられており、一方向にガスを流すのみで配管内のガス置換を行うことができるならば、このような操作が必要ないことは言うまでもない。燃料ガス輸送配管部27を有するような配管にあっては、不活性ガス領域の形成と、この部分の窒素ガスへの置換が完了したことが確認された後、後述の空気置換操作へ移行することが望ましい。
【0056】
同様に、予熱器23など燃料ガス輸送配管21と異なる形状を有する部分については、燃料ガス輸送配管21内に不活性ガス領域を形成する窒素ガス置換操作を流用して、燃料ガスの置換を行うだけではなく、燃料ガス輸送配管21内に不活性ガス領域を形成する窒素ガス置換操作に引き続き、別途窒素ガスに置換する操作を行うことが望ましい。これは形状が複雑であり、燃料ガス輸送配管21内に不活性ガス領域を形成する窒素ガス置換操作のみでは、十分に窒素ガスに置換することができない恐れがあることによる。予熱器23内のガス置換操作は、燃料ガス輸送配管21内に不活性ガス領域を形成する窒素ガス置換操作とは、全く別個に行うこともできるが、燃料ガス輸送配管21内に不活性ガス領域を形成する窒素ガス置換操作に引き続き行うことが効率的である。
【0057】
例えば、燃料ガス輸送配管21内に不活性ガス領域を形成する窒素ガス置換操作により、予熱器23のガス排出管30eに設けられた試料採取弁33eでの一酸化炭素濃度が20容量%に到達した後、予熱器23に設けられている予熱器窒素ガス供給管42から窒素ガスを供給しながら、予熱器23に接続するブリーダ弁31eからガスを排出すれば、先の燃料ガス輸送配管21内に不活性ガス領域を形成する窒素ガス置換操作で、予熱器23のところまで窒素ガスが来ていることが分かり、効率的に窒素ガス置換操作を行うことができる。
【0058】
ステップS4において、所定の位置での一酸化炭素濃度が、所定の管理値以下になったことが確認された後は、窒素ガスの供給、ガスの排出を停止し(ステップS5)、引き続き燃料ガス輸送配管21に空気を送りこむ。これにより、燃料ガス輸送配管21内を空気に置換することができる。空気の供給は、配管末端部26のブリーダ弁31bを開け、空気供給管52に配設された空気供給弁53を開とし、空気ブロワ51を起動して行う(ステップS6)。弁の開操作、空気ブロワ51の起動は、制御装置70の制御信号に基づき行われる。図5(c)は、空気置換直後の配管内のガスの様子を模擬的に示す図である。
【0059】
空気供給と同時に、ガス濃度計60も酸素濃度の測定に切替え、配管末端部26の試料採取弁33bで酸素濃度が所定の管理値以上になったことを確認した後(ステップS7)、残りのブリーダ弁31a、31c、31d、31eを開け、ガスを排出する(ステップS8)。図5(d)は、空気置換終了近くの配管内のガスの様子を模擬的に示す図である。ブリーダ弁31a、31c、31d、31eを開放した後、試料採取管33a、33c、33d、33eで酸素ガス濃度が管理値以上となっていることを確認の後(ステップS9)、空気ブロワ51を停止し(ステップS10)、ガス置換操作を終了する。なお、ステップS7での酸素濃度の管理値としては、濃度20容量%を採用することができる。
【0060】
次ぎに本発明の実施形態の変形例を示す。先の実施形態とは異なり、各試料採取管から採取するガスに含まれる可燃性ガス濃度と酸素ガス濃度とを同時にガス濃度計で検出する。ガス濃度を測定するガス濃度計は、別々のガス濃度計であってもよいことはもちろんである。不活性ガス領域を形成した後、配管内を空気に置換するとき、ガス中の可燃性ガス濃度と酸素濃度を同時に測定しながら行う。測定された酸素ガス濃度と可燃性ガス濃度とから、可燃性ガスが燃焼する可能性があると判断すると、空気供給弁53を閉じ、窒素ガス供給弁41を開け、窒素ガスを燃料ガス輸送配管21内に供給する。一方、測定された酸素ガス濃度と可燃性ガス濃度とから、可燃性ガスが燃焼する可能性はないと判断すると、空気供給を継続する。
【0061】
測定された酸素ガス濃度と可燃性ガス濃度とから、可燃性ガスが燃焼する可能性がある又は可燃性ガスが燃焼する可能性がないことの判断は、制御装置70で行う。これらの判断に基づき、空気供給弁53、及び窒素ガス供給弁41の開閉を制御することで、より安全に配管内の可燃性ガスを空気に置換することができる。
【0062】
本発明の配管内のガス置換方法は、上記のように、配管内の可燃性ガスを空気に置換するとき、可燃性ガスと空気との間に不活性ガス領域を形成させ、空気と可燃性ガスとを直接接触させることなく、配管内に空気を供給し、配管内の可燃性ガスを排出させる点に特徴を有する。このため、可燃性ガスを不活性ガスで置換する操作、及び不活性ガスを空気で置換する操作において、これらガスができるだけ混合しないようにすることが、効率的なガス置換、安全性の点から重要である。
【0063】
ガス置換を短時間で終了させるには、不活性ガス又は空気を大流量で供給することが望ましいが、供給する不活性ガス又は空気と配管内のガスとを可能な限り混合しないようにするには、適正なガス流量とする必要がある。供給する不活性ガス又は空気の流速が極端に遅すぎると、拡散によるガスの混合が無視できず、供給する不活性ガス又は空気の流速が速すぎると、配管内でガスの吹き抜けが生じやすくなるので、配管内でのガス流れが、押出し流れとなるガス流速が望ましい。
【0064】
また不活性ガス領域の形成完了の可燃性ガス濃度の管理値は、可燃性ガスの比重量と不活性ガスの比重量とを考慮して決めることが望ましい。本発明の実施形態で示した表1の高炉ガスの比重量は、1.34(kg/mN)、窒素ガス、空気の比重量は、各々1.25(kg/mN)、1.29(kg/mN)であり、比重量が近似する。このような場合は、不活性ガス領域の形成の際、供給する不活性ガスが配管内を局所的に吹き抜けたり、配管内の上部、又は下部に滞留することも少ないと推察される。これに対し、ガスの比重量の大きく異なるガスを置換するような場合、例えばメタンガスを窒素ガスで置換するような場合は、各々の比重量が0.72(kg/mN)、1.25(kg/mN)と大きく異なるので、置換操作のときガスが吹き抜けやすく、またガスの混合が生じやすいので、窒素ガスの置換終了の管理値である可燃性ガス濃度を小さくする必要があろう。
【0065】
これについては、窒素ガスを空気で置換するときにも当てはまることであるが、空気は窒素ガスと比重量差が殆どないため、配管内の横断面において各所で流速の差が生じないように空気を供給すれば、空気が形成された窒素ガスの塊を追い越し、可燃性ガスと混合し燃焼、爆発する可能性は極めて低いと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の一形態としての配管内のガス置換装置20の概略的構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の一形態としての配管内のガス置換装置20を構成する窒素ガス供給管40の配置の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の一形態としての配管内のガス置換装置20を構成する空気供給管52の配置の一例を示す図である。
【図4】本発明の配管内のガス置換方法の手順を示すフローチャートである。
【図5】図5(a)〜5(d)は、本発明の配管内のガス置換方法を説明するための図であって、配管内のガスを模擬的に示したものである。
【図6】従来の一般的な高炉ガス輸送配管の概略的な配管系統を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
20 ガス置換装置
21 燃料ガス輸送配管
23 予熱器
25 燃料ガス輸送配管の一端
26 燃料ガス輸送配管の他端
27 窒素ガス供給管とU字水封弁との間に位置する燃料ガス輸送配管
30 ガス排出管
31 ブリーダ弁
32 試料採取管
40 窒素ガス供給管
41 窒素ガス供給弁
42 予熱器窒素ガス供給管
50 空気供給手段
51 空気ブロワ
52 空気供給管
53 空気供給弁
60 ガス濃度計
70 制御装置
80 U字水封弁
84 給水弁
85 オーバーフロー弁
86 排水弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内の可燃性ガスを空気に置換する配管内のガス置換方法であって、
配管内の可燃性ガスの一部を不活性ガスに置換し、該配管内に局所的に不活性ガス濃度の高い不活性ガス領域を形成する不活性ガス置換工程と、
該不活性ガス置換工程により、該配管内に不活性ガス領域を形成した後、該配管内に残留する該可燃性ガスに接触しないように、該配管内に空気を供給し、供給する空気により該不活性ガスを押出し、該配管内の可燃性ガス及び不活性ガスを空気に置換する空気置換工程と、
を含むことを特徴とする配管内のガス置換方法。
【請求項2】
前記不活性ガス置換工程での不活性ガス領域の形成は、前記配管の一端から前記不活性ガスを供給しながら、前記配管の中央部及び/又は他端部から前記可燃性ガスを排出することで行い、
前記空気置換工程での空気の供給は、前記不活性ガスを供給した前記配管の端部と同じ端部側から行うことを特徴とする請求項1に記載の配管内のガス置換方法。
【請求項3】
さらに、前記不活性ガス置換工程により、前記配管内に所定の長さの不活性ガス領域が形成されたことを確認する確認工程と、を含み、
不活性ガス領域の形成の確認は、前記配管の軸方向の可燃性ガス濃度を検出し、予め定める位置の可燃性ガス濃度が、所定の濃度以下であることで確認することを特徴とする請求項1又は2に記載の配管内のガス置換方法。
【請求項4】
前記可燃性ガスは、比重量が前記不活性ガスの比重量と近似することを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の配管内のガス置換方法。
【請求項5】
前記可燃性ガスは、製鉄所の高炉ガスであり、前記不活性ガスは、窒素ガスであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載の配管内のガス置換方法。
【請求項6】
前記不活性ガス及び前記空気の供給は、前記配管の横断面に対し多方向から供給することを特徴とする請求項1から5のいずれか1に記載の配管内のガス置換方法。
【請求項7】
前記配管に装置、機器が配設されているときは、前記不活性ガス置換工程の置換操作とは別に、該装置、機器内の可燃性ガスを不活性ガスに置換する操作を行い、その後前記空気置換操作を行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか1に記載の配管内のガス置換方法。
【請求項8】
前記空気置換工程の空気で不活性ガスを押し出す方向とは異なる方向にもガス置換すべき他の管路を有するときは、前記不活性ガス置換工程の置換操作とは別に、該他の管路内の可燃性ガス濃度を十分に低下させる不活性ガス置換操作を行い、その後前記空気置換操作を行うことを特徴とする請求項1から7のいずれか1に記載の配管内のガス置換方法。
【請求項9】
前記可燃性ガスが混合ガスからなるときは、前記不活性ガス置換工程の配管内の可燃性ガスの排出を配管の上部から行い、前記確認工程での可燃性ガス濃度の検出は、混合ガスのうち比重量の大きいガスを対象とすることを特徴とする請求項3から8のいずれか1に記載の配管内のガス置換方法。
【請求項10】
前記可燃性ガスが混合ガスからなるときは、前記不活性ガス置換工程の配管内の可燃性ガスの排出を配管の下部から行い、前記確認工程での可燃性ガスの検出は、混合ガスのうち比重量の小さいガスを対象とすることを特徴とする請求項3から8のいずれか1に記載の配管内のガス置換方法。
【請求項11】
配管内の可燃性ガスを空気に置換する配管内のガス置換装置であって、
該配管に接続し、不活性ガスを供給可能な不活性ガス供給手段と、
該配管に接続し、該配管内のガスを排出可能なガス排出手段と、
該配管内のガス濃度を検出可能なガス濃度検出手段と、
該配管内に接続し、該配管内に空気を供給可能な空気供給手段と、
該配管内の予め定める位置の該可燃性ガス濃度が、所定の値以下であることを該ガス濃度検出手段が検出すると、該空気供給手段から該配管へ空気を供給可能に制御し、該配管内の予め定める位置の可燃性ガス濃度が、所定の値を超えたことを該ガス濃度検出手段が検出すると、該空気供給手段から該配管へ空気を供給不能に制御する制御手段と、
を含むことを特徴とする配管内のガス置換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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