説明

配管切断方法

【課題】配管の外径寸法、断面形状にかかわらず、簡単な方法により容易に切断することができる。
【解決手段】放射線源に連通する配管1の切断位置Tより放射線源側の側面1aに貫通孔3を空けるとともに、その貫通孔3より伸縮性を有する袋体4を配管1内に配置し、放射線遮蔽材6を袋体4内に注入するための注入ノズル5を袋体4に挿入させ、その袋体4内に放射線遮蔽材6を流入させて膨張させ、その袋体4を配管内面1bに全周にわたって液密に接触させて配管通路を閉塞させ、切断位置Tで配管1を切断し、その切断した開口1cに蓋部材7を取り付けるとともに、貫通孔3を閉塞するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所の原子炉本体などの放射線源に連通する配管を切断するための配管切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所の原子炉本体に取り付けられるダクトなどの配管類は、原子炉本体に近いことから、切断によってその切断面から原子炉本体が露出し、極めて高い線量の放射線が放出されることになる。このような切断作業では高い線量の放射線を扱うことになるため、作業員が被爆するおそれがある。そのため、近年ではマニピュレータ等を使用した遠隔操作による切断、解体作業を行う方法があるが、遠隔操作による作業は、特殊且つ高度な技術が必要であり、一般作業員では対応が困難となっている現状がある。
【0003】
これに対し、遠隔操作によらない方法で、しかも切断面から放射線を放出させずに配管を切断する方法が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1には、固定ダイスと、この固定ダイスに対して油圧シリンダによって接離する可動ダイスとを備え、それら両ダイスで配管の所定箇所を圧着可能とした圧着処理機を使用し、配管の所定の3箇所を圧着した後、中央の圧着部を切断、分離することで、配管の切断端部が前記中央でない圧着部によって塞がれた状態とした配管の切断方法について記載されている。
【特許文献1】特開2000−180594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の放射線により汚染された配管を切断する方法では以下のような問題があった。
すなわち、上述した原子炉本体に取り付けられている配管では外径寸法が2m程度となるものがあり、このような大口径の配管に上述した特許文献1の圧着処理機を適用すると、その装置が大型となってしまう。つまり、大型の圧着処理機を配管周りに配置することが困難な場合があり、適用可能な配管径寸法が制限されるという問題があった。
また、この圧着処理機は異なる外径寸法や断面形状の配管に適用することが難しいことから、切断する配管形状に合った圧着処理機をその都度製作する必要があり、汎用性といった面で欠点があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、配管の外径寸法、断面形状にかかわらず、簡単な方法により容易に切断することができる配管切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る配管切断方法では、放射線源に連通する配管を切断するための配管切断方法であって、配管の切断位置より放射線源側の側面に貫通孔を空けるとともに、貫通孔より伸縮性を有する袋体を配管内に配置する工程と、袋体内に流体を流入させて膨張させ、その袋体を配管内面に全周にわたって液密に接触させて配管通路を閉塞させる工程と、切断位置で配管を切断する工程と、その切断した開口に蓋部材を取り付けるとともに、貫通孔を閉塞する工程とを有することを特徴としている。
【0007】
本発明では、放射線の漏出が少ない配管側面に袋体が入るだけの小さい貫通孔を空け、配管内に袋体を挿入、配置させ、その袋体内に流体を注入し、袋体を膨張させて配管側面に液密に接触させることで、配管通路を閉塞させることができる。このとき、放射線源から放出される放射線が袋体によって遮蔽されるので、袋体を挟んで放射線源と反対側に放射線を漏出させることなく、配管を切断することができる。このように、配管に貫通孔を形成し、配管内に配置した袋体を膨張させてから、配管を切断するといった簡単な方法であり、大型な装置を用いずに容易に切断作業を行うことができる。
【0008】
また、本発明に係る配管切断方法では、流体を袋体内に注入するための注入ノズルを、袋体に挿入させることが好ましい。
【0009】
本発明では、配管内に配置された袋体内に注入ノズルが備えられているので、例えば配管外方の貫通孔付近で袋体を閉止しておくことで、袋体を配管内で確実に且つ効率よく膨張させることができ、袋体と配管内面との密着効果が高まり、配管通路を確実に閉塞することができ、配管を通過する放射線をより確実に遮蔽することができる。
【0010】
また、本発明に係る配管切断方法では、貫通孔を閉塞するときに、袋体を配管内から取り除くことが好ましい。
【0011】
本発明では、貫通孔に袋体が介在しないので、貫通孔の閉塞作業時に袋体の閉止処理が不要となり、作業の簡略化を図ることができるうえ、袋体が経年劣化等を起こすことによって内部の流体が配管内に流出するといった不具合を防ぐことができる。
【0012】
また、本発明に係る配管切断方法では、貫通孔を閉塞するときに、袋体を配管内に残置させておくことが好ましい。
【0013】
本発明では、膨張した状態を維持させた袋体を配管内に残置させた状態で、貫通孔を閉塞することで、蓋部材と袋体による二重の遮蔽構造となることから、配管内の放射線の漏出をより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の配管切断方法によれば、配管内に配置した袋体内に流体を注入することで、配管通路を閉塞して放射線を遮蔽することができ、袋体を挟んで放射線源の反対側の位置で、放射線を漏出させることなく配管を切断するといった簡単な方法により容易に切断作業を行うことができる。そのため、大型な装置を使用することがないうえ、遠隔操作による技術的難易度の高い作業が不要となるので、高度な技術を要しない一般作業員でも配管切断作業を行うことができる。
また、配管の外径寸法、断面形状に合わせて袋体の大きさや、流体の袋体内への注入量を調整することで、いかなる外径寸法、断面形状の配管にも対応すること可能であり、汎用性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態による配管切断方法について、図1乃至図3に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態による配管切断方法によって切断される配管の一部を示す水平断面図、図2(a)〜(e)は配管切断手順を示す図、図3は図2(b)に示すA−A線断面図である。
【0016】
図1の符号1は、本実施の形態による配管切断方法によって切断するための配管を示している。
図1に示すように、この配管1は、原子力発電所に備えられている原子炉本体2(放射線源)の内部に連通して取り付けられており、外径寸法が例えば2m程度の円形断面の鋼管である。原子炉本体2は、内部エネルギーをガンマ線(以下、放射線Pという。なお、この放射線Pは、アルファ線、ベータ線、中性子線を含む。)として放出しており、この原子炉本体2に連通する配管1内には管軸方向に沿って原子炉本体2側から離れる方向に向かって放射線Pが直進した状態となっている。
なお、図1に示す破線は、本実施の形態による配管1の切断位置Tを示しており、原子炉本体2の近傍位置となっている。
ここで、配管1において、原子炉本体2側を「上流側」とし、その反対側を「下流側」として以下説明する。
【0017】
このような配管1を切断位置Tで切断する方法について、図2に基づいて説明する。
図2(a)に示すように、配管1の側面1aの切断位置Tより上流側の位置に、後述する膨張前の袋体4が入るだけの小さい貫通孔3を空けるとともに、この貫通孔3から伸縮性を有する袋体4を配管1内に挿入する。配管1に形成される貫通孔3の大きさとしては、例えば直径2mの配管1において、直径50mm程度とされる。なお、本実施の形態の放射線Pは上述したように直進性を有するガンマ線であることから、貫通孔3からの配管1の外部に漏出する放射線Pの量は直進方向に放出される量に比べて少ない状態となっている。
【0018】
ここで、袋体4は、伸縮性を有し、内部に流体(後述する放射線遮蔽材6)を流入させることで風船状に膨張可能であり、例えばゴム製の材料からなる。また、袋体4の大きさ、および配管1内への挿入状態は、詳しくは後述するが、配管1内で膨張させたときに、袋体4が配管内面1bに隙間なく液密な状態で接触するように設定される。
【0019】
そして、袋体4の内部に流動性を有する放射線遮蔽材6を注入するための注入ノズル5を、その先端の注入口5aが配管1の内側に位置するようにして挿入する。なお、注入ノズル5を袋体4内に挿入するタイミングとして、注入ノズル5を入れた状態の袋体4を貫通孔3から配管1内に挿入してもよい。
ここで、放射線遮蔽材6(流体)は、時間の経過に従って硬化することのない流動性を有する材料であって、例えばホウ素、グリセリン、或いは水などの流体を使用することができる。
注入ノズル5は、貫通孔3の孔寸法より小さな管径をなし、その基端側が放射線遮蔽材6を送出するための図示しない注入ポンプに接続されている。
【0020】
続いて、図2(b)および図3に示すように、注入ノズル5から放射線遮蔽材6を注入して袋体4を膨らませ、その袋体4を配管内面1bに全周にわって液密に接触させて配管通路を閉塞させ、注入ノズル5を袋体4から取り出す。このとき、袋体4と貫通孔3との間も隙間なく液密に接触させた状態にしておく。なお、袋体4内への放射線遮蔽材6の注入圧は、袋体4の外周面で配管内面1bを押圧する適宜な圧力とされる。そして、袋体4は、所定の注入圧で膨張させた状態で維持させる。
これにより、配管通路が閉塞され、配管1内の放射線Pが膨張した袋体4によって遮蔽されるので、袋体4より下流側(切断位置T側)への漏出が防がれた状態となる。
【0021】
なお、配管1内に配置された袋体4内に注入ノズル5が備えられているので、例えば配管外方の貫通孔3付近で袋体4を閉止しておくことで、袋体4を配管1内で確実に且つ効率よく膨張させることができ、袋体4と配管内面1bとの密着効果が高まり、配管通路を確実に閉塞することができ、配管1を通過する放射線Pをより確実に遮蔽することができるようになっている。
【0022】
次に、図2(c)に示すように、膨張した袋体4の位置(符号R)より下流側の切断位置Tで配管1を例えばガス切断等によって切断し、切り離す。そして、図2(d)に示すように、切断した配管1の開口1cに蓋部材7を例えば溶接等の固定手段によって隙間のないように取り付ける。
【0023】
次いで、図2(e)に示すように、配管1の開口1cに蓋部材7を取り付けた後、袋体4内の放射線遮蔽材6を排出して袋体4を収縮させつつ、袋体4を配管1から取り除き、貫通孔3を例えば鋼板からなる閉塞材8を溶接手段等によって配管1に溶接して閉塞する。ここまでの手順により配管1の切断作業が完了となる。
このように、本配管切断方法では、貫通孔3に袋体4が介在しないので、貫通孔3の閉塞作業時に袋体4の閉止処理が不要となり、作業の簡略化を図ることができるうえ、袋体4が経年劣化等を起こすことによって内部の放射線遮蔽材6が配管1内に流出するといった不具合を防ぐことができる。
【0024】
上述のように本実施の形態による配管切断方法では、配管1内に配置した袋体4内に放射線遮蔽材6を注入することで、配管通路を閉塞して放射線Pを遮蔽することができ、袋体4を挟んで図1に示す放射線源2の反対側の位置で、放射線Pを漏出させることなく配管1を切断するといった簡単な方法により容易に切断作業を行うことができる。そのため、大型な装置を使用することがないうえ、遠隔操作による技術的難易度の高い作業が不要となるので、高度な技術を要しない一般作業員でも配管切断作業を行うことができる。
また、配管1の外径寸法、断面形状に合わせて袋体4の大きさや、放射線遮蔽材6の袋体4内への注入量を調整することで、いかなる外径寸法、断面形状の配管にも対応すること可能であり、汎用性に優れるという効果を奏する。
【0025】
次に、本発明の実施の形態の変形例について、添付図面に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図4は実施の形態の変形例による配管切断の完了状態を示す図であって、図2(e)に対応する図である。
図4に示すように、本変形例では、貫通孔3を閉塞するときに、袋体4を配管1内に残置させておく方法である。つまり、膨張した状態を維持させた袋体4を配管1内に残置させた状態で、貫通孔3を閉塞することで、蓋部材7と袋体4による二重の遮蔽構造となることから、配管1内の放射線Pの漏出をより確実に防止することができる。
【0026】
以上、本発明による配管切断方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では配管1が取り付けられる対象を原子力発電所の原子炉本体2としているが、これに限定されることはなく、内部に高い放射線源を有する物体を対象とすることができる。
また、本実施の形態では配管1の断面形状が円形断面をなし、その外径寸法が2m程度としているが、とくに切断対象となる配管の外径寸法、断面形状に制限はなく、例えば矩形状や外径寸法が50cm程度の小口径の配管であってもかまわない。
【0027】
また、本実施の形態では袋体4内に注入ノズル5を挿入し、その注入ノズル5から流体を袋体4内に注入しているが、注入ノズル5を用いない方法であってもかまわない。つまり、袋体4の開口部側を流体の注入管などに接続し、その注入管から直接袋体4内に流体を流入させることもできる。
【0028】
さらにまた、切断した配管の開口1cに取り付けられる蓋部材7や、貫通孔3を閉塞するための閉塞材8の形状、大きさ、材質等の構成、仕様は、閉塞する配管1や貫通孔3の大きさ等の条件に応じて任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態による配管切断方法によって切断される配管の一部を示す水平断面図である。
【図2】(a)〜(e)は配管切断手順を示す図である。
【図3】図2(b)に示すA−A線断面図である。
【図4】実施の形態の変形例による配管切断の完了状態を示す図であって、図2(e)に対応する図である。
【符号の説明】
【0030】
1 配管
1a 側面
1b 配管内面
1c 開口
2 原子炉本体(放射線源)
3 貫通孔
4 袋体
5 注入ノズル
6 放射線遮蔽材(流体)
7 蓋部材
8 閉塞材
P 放射線
T 切断位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源に連通する配管を切断するための配管切断方法であって、
配管の切断位置より放射線源側の側面に貫通孔を空けるとともに、該貫通孔より伸縮性を有する袋体を前記配管内に配置する工程と、
前記袋体内に流体を流入させて膨張させ、その袋体を配管内面に全周にわたって液密に接触させて配管通路を閉塞させる工程と、
前記切断位置で前記配管を切断する工程と、
その切断した開口に蓋部材を取り付けるとともに、前記貫通孔を閉塞する工程と、
を有することを特徴とする配管切断方法。
【請求項2】
前記流体を前記袋体内に注入するための注入ノズルを、前記袋体に挿入させることを特徴とする請求項1に記載の配管切断方法。
【請求項3】
前記貫通孔を閉塞するときに、前記袋体を前記配管内から取り除くことを特徴とする請求項1又は2に記載の配管切断方法。
【請求項4】
前記貫通孔を閉塞するときに、前記袋体を配管内に残置させておくことを特徴とする請求項1又は2に記載の配管切断方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−32253(P2010−32253A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192423(P2008−192423)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)