説明

配管天場へのプラスチック管取付方法及び取付装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ヒューム管等の配管内における、配管天場へのポリエチレン管等のプラスチック管の取付に関する。
【0002】
【従来の技術】土中に埋設するガス管等の鋼管を非開削工法にて長距離に渡って埋設するには、最初にヒューム管を推進させた後、ガス管等の鋼管をヒューム管内に引き込んでいる。このとき、通信ケーブルをヒューム管内に設けるために、その保護管としてポリエチレン管をヒューム管内面の天場に取付けることがある。図7はこの例を示したヒューム管の内部図、図8は図7のD−D断面図である。図中、20はヒューム管、21は鋼管、22はポリエチレン管、23は通信ケーブル、25はポリエチレン管22を固定する固定金具を示す。
【0003】図9は従来のポリエチレン管取付方法の説明図、図10はヒューム管内のポリエチレン管取付部の拡大図である。ポリエチレン管22の取付けは、ヒューム管20の推進工事完了後、コイル状のポリエチレン管22を立坑26から伸ばしつつ、ヒューム管20の全長に渡って延長し、作業者がポリエチレン管22を持ち上げて天場に押し付け、同時に他の作業者が固定金具25及びボルト27を用いて固定することによって、端から順次行って行く。なお、アンカーボルト28は予めヒューム管20に埋込んでおく。そして、ポリエチレン管22を完全に固定した後、ガス管等の鋼管21を立坑26より順次溶接延長して、ヒューム管20内に敷設していく。ポリエチレン管22をヒューム管20の内面天場に固定するのは、鋼管21を引込むときに、邪魔にならないようにするためである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前述した作業のうち、人がポリエチレン管22を持ち上げてヒューム管20の内面天場に押し付ける作業は、非常に困難を伴う重労働で作業効率も悪く、特に夏場の暑いときや、ヒューム管の内径が小さく中腰の作業が強いられる場合などはなおさらであった。
【0005】この発明は、これらの課題を解決するためのもので、人力に負っていたプラスチック管の配管天場への取付作業の一部を、簡単な装置で代用し、作業者の負担を軽減するとともに、作業効率を改善する方法及び装置を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】第1の発明の取付方法は、長さ方向の異なる2か所でプラスチック管にそれぞれ反対方向の曲げモーメントを与え、プラスチック管を配管天場に押し付けて固定するものである。
【0007】第2の発明の取付装置は、プラスチック管の入る溝が形成された2つの平行なローラーと、これらのローラーを支持し走行が可能な台車と、これらのローラーの高さ方向の相対位置を変化させる弾性部材とを備えたものである。
【0008】
【作用】この発明の取付装置を配管内に入れ、立坑から伸ばしたプラスチック管を、2つのロール間で下側から上側へ挿通して伸ばす。その後、弾性部材により2つのローラーの相対位置を変え、ローラーをプラスチック管に押圧すると、これらロールの位置で、プラスチック管に相互に反対方向の曲げモーメントが加えられ、プラスチック管の先端部が配管天場に押し付けられる。さらに、台車を配管の軸方向に走行させると、プラスチック管が順次配管天場に押し付けられて行く。
【0009】
【実施例】図1はこの発明の取付装置の実施例を示す斜視図である。1がこの発明に係るポリエチレン管取付装置で、ポリエチレン管の入る溝2を有する押えローラー3と支持ローラー4が、それぞれ軸6、軸8によって平行にフレーム7に取付けられ、さらに軸8がその両端で、台車10に固定された支持棒9に支持されている。そして、押えローラー3は軸6に対し、支持ローラー4及びフレーム7は軸8に対しそれぞれ回動自在に組み立てられている。11は台車10下部の4か所に取付けられたキャスター、12は支持棒9に対し一方の側にあって、両側のフレーム7と台車10とを連結するバネ、13は支持棒9に対しバネ12側と反対側にあって、押えローラー3や支持ローラー4と平行なフレーム連結バ−7aと台車10との距離と調整するレバーブロックである。
【0010】図2は押えローラー3部の断面図を示したものある。ローラーの中心部を軸6が貫通していて、ローラーは自由に回転できる。また、ローラーにはポリエチレン管の入る溝2が複数形成され、その両端にはポリエチレン管の逸脱を防止するストッパーガイド5が形成されている。なお、支持ローラー4も押えローラー3と同じ構造になっている。
【0011】次にこの取付装置の使用例について説明する。まず、図3のように、ヒューム管20内に取付装置1を入れ、レバーブロック13を絞ってフレーム連結バ−7aと台車10とを接近させ、押えローラー3を持ち上げる。そして、立坑から導入したポリエチレン管22を、押えローラー3と支持ローラー4との間で、押えローラー3の下側から支持ローラー4の上側へ挿通させて伸ばし、ポリエチレン管22の先端部をヒューム管20の天場に届かせる。その後、人手によって、ポリエチレン管22先端部を、ヒューム管20の天場に固定金具25で固定する。
【0012】次に、図4のように、取付装置1を牽引して矢印E方向に移動した後、レバーブロック13を緩め、バネ12の作用によって押えローラー3と台車10とを接近させ(フレーム連結バ−7aと台車10の距離は遠ざかる)、押えローラー3でポリエチレン管22を押圧する。これによって、図5のように、押えローラー3と支持ローラー4が、ポリエチレン管22に対し相互に反対方向の曲げモーメントを与えることになる。なお、ポリエチレン管22はその可塑性のため、曲げモーメントによって折れることはない。
【0013】図6はポリエチレン管22に曲げモーメントを与えた時の作用説明図である。ポリエチレン管22に曲げモーメントを与えた時、ポリエチレン管22の描く軌跡は一点鎖線Aのようになり、ポリエチレン管22が配管天場に押し付けられる範囲はあまり多くない。この状態から取付装置1を若干後退させると、ポリエチレン管22はその方向に引きずられ、天場がないとした場合には破線Bのような軌跡を描くが、実際には天場があるため、天場に押し付けられた実線Cのような軌跡となる。このとき、ポリエチレン管22はヒューム管20の天場内表面に密着した状態になるため、人が持ち上げることが不要となり、人の作業はポリエチレン管22を固定金具25で天場に取付けるだけとなる。
【0014】なお、この実施例ではポリエチレン管を取付ける例を示したが、可塑性を有する他の管の取付けにも適用できる。また、2つのローラーの高さ方向の相対位置を変化させるのにバネを用いたが、同様の特性を有する他の弾性体を用いてもよい。
【0015】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の取付方法及びそれを利用した取付装置によれば、人力によってではなく、プラスチック管を容易に配管天場に押し付けることが可能となり、その装置も極めて簡易な構成で済むという効果を有する。また、この発明の取付装置によれば、台車を走行させるだけで、配管の全長に渡って順次プラスチック管を天場に押し付けることができ、作業能率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の取付装置の実施例を示す斜視図である。
【図2】押えローラー部の断面図である。
【図3】取付装置の動作説明図である。
【図4】取付装置の動作説明図である。
【図5】取付装置の作用説明図である。
【図6】取付装置の作用説明図である。
【図7】ヒューム管の内部図である。
【図8】図7のD−D断面図である。
【図9】従来のポリエチレン管取付方法の説明図である。
【図10】ヒューム管内のポリエチレン管取付部の拡大図である。
【符号の説明】
1 取付装置
3 押えローラー
4 支持ローラー
7 フレーム
9 支持棒
10 台車
11 キャスター
12 バネ
13 レバーブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】 長さ方向の異なる2か所でプラスチック管にそれぞれ反対方向の曲げモーメントを与え、プラスチック管を配管天場に押し付けて固定することを特徴とする配管天場へのプラスチック管取付方法。
【請求項2】 プラスチック管の入る溝が形成された2つの平行なローラーと、これらのローラーを支持し走行が可能な台車と、これらのローラーの高さ方向の相対位置を変化させる弾性部材とを備えて成ることを特徴とする配管天場へのプラスチック管取付装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図9】
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【特許番号】第2633151号
【登録日】平成9年(1997)4月25日
【発行日】平成9年(1997)7月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−243321
【出願日】平成4年(1992)9月11日
【公開番号】特開平6−94162
【公開日】平成6年(1994)4月5日
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000004123)日本鋼管株式会社 (1,044)
【出願人】(000231132)日本鋼管工事株式会社 (54)
【参考文献】
【文献】特開 平3−270614(JP,A)
【文献】実開 昭62−184988(JP,U)