説明

配管構造及び真空式下水道システム

【課題】非常時に排水の逆流を防止できる配管構造を提供する。
【解決手段】真空ステーション3に向かって下り勾配の本管81が接続される配管構造1である。
そして、本管81の下流端近傍を分岐して形成され、設定した水頭圧が作用すると排水を流すバイパス管4を備えている。また、このバイパス管4には、設定した水頭圧が作用すると開弁するリリーフ弁5が配置されている。
加えて、本管81を分岐した複数の枝管82と、枝管82に接続される真空弁21を有する真空弁ユニット2と、をさらに備え、設定した水頭圧として、本管81に貯留された排水の水頭圧によって真空弁21が開弁して逆流する状態よりも小さい水頭圧を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管構造及び真空式下水道システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自然流下式の下水道システムに代えて、排水を真空圧によって収集する真空式下水道システムの採用が増加している。
【0003】
真空式下水道システムでは、住居や工場などから排出される排水は、真空弁ユニットに溜められ、所定量だけ貯留されると、真空圧によって空気とともに気液混送流として真空管路を通って真空ステーションまで搬送される。
【0004】
このような真空式下水道システムとして、例えば特許文献1には、集水タンク内の水位の上昇率に基づいて圧送ポンプや真空ポンプの動作を制御するポンプ制御装置が開示されている。この構成によれば、真空ステーション近くのリフト部から多量の排水が一気に集水タンクに流入して排水が溢れることを防止できる。
【0005】
また、山岳地帯などの傾斜面に真空管路を敷設する場合、リフト部がなく下り勾配の続く本管と、リフト部がある枝管と、によって真空管路を構成することで、真空圧を効率よく利用する真空式下水道システムが用いられる。
【0006】
このように本管に下り勾配が続く場合、排水は本管内を自然流下して集水タンクまで到達する。そして、集水タンクに貯留された排水は、圧送ポンプによってさらに下流側に圧送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−110225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本管が下り勾配になっている真空式下水道システムでは、真空ステーションが停電したり圧送ポンプが故障したりする非常時には、集水タンク内に排水が自然流下しつづけて溢れる可能性がある。
【0009】
そして、集水タンクから溢れた排水は、真空管路を通じて枝管に流入し、枝管内の水頭圧によって真空弁を開いて逆流する可能性がある。
【0010】
そこで、本発明は、非常時に排水の逆流を防止できる配管構造と、この配管構造を備えた真空式下水道システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の配管構造は、真空ステーションに向かって下り勾配の本管が接続される配管構造であって、前記本管の下流端近傍を分岐して形成され、設定した水頭圧が作用すると排水を流すバイパス管を備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記バイパス管には、設定した水頭圧が作用すると開弁するリリーフ弁が配置される構成にできる。
【0013】
さらに、前記本管を分岐した複数の枝管と、前記枝管に接続される真空弁を有する真空弁ユニットと、をさらに備え、前記設定した水頭圧として、前記本管に貯留された排水の水頭圧によって前記真空弁が開弁して逆流する状態よりも小さい水頭圧を設定する構成にできる。
【0014】
また、前記バイパス管には、前記本管と前記リリーフ弁との間に仕切弁が設置される構成にできる。
【0015】
そして、本発明の真空式下水道システムは、上記したいずれかの配管構造を備え、前記真空ステーションには、前記本管から流入した排水を貯留する集水タンクと、前記集水タンク内の空気を排出する真空ポンプと、が設置されており、前記真空ステーションが停電になった場合に、前記真空ポンプの前記集水タンクに近い側を封止する真空ポンプ分離弁を備えることを特徴とする。
【0016】
また、前記集水タンク内の排水が所定水位となった場合又は前記真空ステーションが停電になった場合に、前記本管の前記バイパス管を分岐した箇所より下流側を封止する集水タンク分離弁を備える構成にできる。
【0017】
さらに、前記本管の下流端近傍に、自然流下した前記排水の水勢を抑制する減勢工を設置する構成にできる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明の配管構造は、真空ステーションに向かって下り勾配の本管が接続される配管構造であって、本管の下流端近傍を分岐して形成され、設定した水頭圧が作用すると排水を流すバイパス管を備えることを特徴とする。
【0019】
このため、設定した水頭圧が作用するとバイパス管に排水が流れることで、集水タンクから排水が溢れても、水頭圧によって真空弁を開いて逆流することがなくなる。
【0020】
また、バイパス管には、設定した水頭圧が作用すると開弁するリリーフ弁が配置されることで、常時においてバイパス管から空気を吸い込むことがなくなるため、真空圧を排水の収集のために有効に利用できる。
【0021】
さらに、本管を分岐した複数の枝管と、枝管に接続される真空弁を有する真空弁ユニットと、をさらに備え、設定した水頭圧として、本管に貯留された排水の水頭圧によって真空弁が開弁して逆流する状態よりも小さい水頭圧を設定することで、真空弁が開弁して逆流することを確実に防止できる。
【0022】
また、バイパス管には、本管とリリーフ弁との間に仕切弁が設置されることで、リリーフ弁を交換したり修理したりする場合に、容易にリリーフ弁を取外すことができる。
【0023】
そして、本発明の真空式下水道システムは、上記したいずれかの配管構造を備え、真空ステーションには、本管から流入した排水を貯留する集水タンクと、集水タンク内の空気を排出する真空ポンプと、が設置されており、真空ステーションが停電になった場合に、真空ポンプの集水タンクに近い側を封止する真空ポンプ分離弁を備えることを特徴とする。
【0024】
このため、真空ステーションが停電になった場合でも、真空ポンプに排水が取り込まれなくなることで、真空ポンプが故障することを防止できる。
【0025】
また、集水タンク内の排水が所定水位となった場合又は真空ステーションが停電になった場合に、本管のバイパス管を分岐した箇所より下流側を封止する集水タンク分離弁を備えることで、集水タンク内の排水が所定水位となった場合又は真空ステーションが停電になった場合でも、集水タンク内に排水が流れ込まなくなることで、真空ステーション全体を保護することができる。
【0026】
さらに、本管の下流端近傍に、自然流下した排水の水勢を抑制する減勢工を設置することで、速度が速いため射流となった排水の流速を遅くして、常流として集水タンクに取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例の配管構造の構成を説明する説明図である。
【図2】実施例の真空式下水道システム全体の構成を説明する説明図である。
【図3】実施例の真空式下水道システムの常時における作用を説明する説明図である。
【図4】実施例の真空式下水道システムの非常時における作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0029】
まず、図2を用いて本発明の配管構造1を備える真空式下水道システムSの全体構成を説明する。
【0030】
本実施例の真空式下水道システムSでは、図2の全体図に示すように、丘陵や山岳地の家庭91や工場(不図示)などから排出された排水は、自然流下管路92を通じて真空弁ユニット2に流入する。
【0031】
つづいて、この真空弁ユニット2に流入した排水は、真空弁ユニット2に一時的に貯留され、真空ステーション3で発生された真空圧(大気圧よりも低くなった圧力)によって、流下部82aとリフト部82bとを有する枝管82の内部を気液混送流となって本管81まで搬送される。
【0032】
本管81に流入した排水は、本管81内を真空圧によらずに重力によって自然流下して、真空ステーション3の集水タンク31に流れ込んで貯留される。
【0033】
このような構成の真空式下水道システムSは、真空圧と大気圧との差圧によって汚水を強制的に収集・搬送するシステムであり、真空下水管路の埋設深度が浅い、埋設物の回避が容易である、真空弁ユニット2に電源が不要である、汚水の漏れがない、管路の清掃が不要である、スカムが発生しにくい、などの特徴を備えている。
【0034】
また、真空式下水道システムSの真空弁ユニット2は、図示しないが、汚水を受容して一時的に貯留する貯留槽、貯留槽内の液位の変動を検知する水位検知管、開閉作動することで一定量溜まった排水を圧送する真空弁、水位検知管内の液位変動に伴って生じる圧力変動によって真空弁を開閉する真空弁コントローラ、などを備えて地中に埋設されている。
【0035】
さらに、本実施例の真空式下水道システムSは、真空管路全体として、従来のような放射状配管ではなく、ツリー状配管を形成している。すなわち、真空式下水道システムSは、幹となる本管81と、幹を途中で分岐させた枝となる複数の枝管82,・・・と、を備えている。
【0036】
この本管81は、合成樹脂によって長尺円筒状に形成されるもので、複数の枝管82が接続されるため枝管82よりも内径が大きく、その長さも枝管82より長く形成されている。
【0037】
また、本実施例の本管81は、図示のように傾斜した山肌に沿うようにして直線状に敷設されていることで、その軸方向も傾斜しているため、いったん流入した排水は途中でほとんど貯留されることなく一気に自然流下する。
【0038】
そして、本管81の下り勾配の末端(下端)には真空ステーション3が接続されている。このため、本管81の内部では、枝管82から流れ込んだ排水は、本管81の内面に沿って重力によって自然流下して、射流となって真空ステーション3に到達する。
【0039】
なお、この本管81には、途中に減勢のためのリフト部、貯留部、平坦部などが設けられていてもよく、本管81が全体として、枝管82から流れ込んだ排水が真空圧によらずに真空ステーション3まで到達するように形成されていれば本発明を適用できる。
【0040】
また、枝管82は、合成樹脂によって長尺円筒状に形成されるもので、本管81よりも内径が小さくされており、1つの本管81に対して枝状に複数接続されている。
【0041】
そして、枝管82は、一般に真空式下水道システムSに採用される真空管路と同じように、真空ステーション3に近い側に向かって下り勾配の流下部82aと、真空ステーション3に近い側に向かって上り勾配のリフト部82bと、を備えている。
【0042】
このため、真空弁ユニット2から枝管82に流れ込んだ排水は、リフト部82bの手前で一旦堰き止められ、真空圧によって気液混送流となってリフト部82bを乗り越え、その後流下部82aを自然流下して次のリフト部82bまで到達する。
【0043】
そして、本実施例の真空ポンプ方式の真空ステーション3は、図1に示すように、本管81から流入した排水を貯留する集水タンク31と、集水タンク31内の上部の空気を吸引することで真空圧を発生する2つの真空ポンプ32,32と、集水タンク31内に貯留された排水を下流側に圧送する圧送ポンプ33と、集水タンク31内の水位を計測する水位計34と、真空ポンプ32,32の排気を脱臭する脱臭装置35(図2参照)と、真空ポンプ32,32と圧送ポンプ33とを制御する制御装置36と、を備えている。
【0044】
制御装置36は、CPUやメモリなどを有する汎用のマイクロコンピュータであり、常時には、集水タンク31内の空気部分の真空圧が一定となるように真空ポンプ32,32を作動させるとともに、水位計34によって計測された水位が一定水位になると圧送ポンプ33を作動させる。
【0045】
また、この制御装置36は、バッテリなどの非常用の電源を備えており、後述するように、非常時には、集水タンク分離弁62と真空ポンプ分離弁63を閉じる。
【0046】
さらに、本実施例の真空ステーション3は、停電したり圧送ポンプ33が故障したりする非常時に備えて、集水タンク31を保護する集水タンク分離弁62と、真空ポンプ32を保護する真空ポンプ分離弁63,63と、を備えている。
【0047】
この集水タンク分離弁62は、非常時に集水タンク31に排水が流入することを防止する弁であり、バイパス管4を分岐した箇所よりも下流側、かつ、集水タンク31の上流側(真空ポンプ32から遠い側)の配管に設置される。
【0048】
また、真空ポンプ分離弁63は、非常時に真空ポンプ32が排水を吸い込むことを防止する弁であり、真空ポンプ32より上流側(集水タンク31に貯留された排水側)のエア吸込管に設置される。
【0049】
この他、真空ステーション3は、排水の逆流を防止する逆止弁71,73、射流となった排水の流速を落として常流にする減勢工72,74なども備えている。
【0050】
なお、真空ステーション3として、上記した真空ポンプ方式ではなく、貯留槽内の排水を下流に流すために圧送ポンプを用いるタイプのエジェクタ方式(EJ型)にも本発明を適用できる。
【0051】
そして、本実施例の真空式下水道システムSは、上記した基本系統とは別系統として、本管81の下流端近傍を分岐して形成されるバイパス管4と、バイパス管4の途中に配置されるリリーフ弁5と、を有する配管構造1が形成されている。
【0052】
このバイパス管4は、本管81の下流端近傍を分岐して形成され、本管81と真空ステーション3の下流側とを短絡的に接続する管路である。そして、このバイパス管4には、所定の水位となって設定した水頭圧が作用すると、排水が流れるようになる。
【0053】
また、リリーフ弁5は、上記した真空弁ユニット2の真空弁21と同様に、バネ反力によって弁体を弁座に押し当てて止水する構造となっている。したがって、弁体を押し開ける程度の水頭圧が作用すれば開弁するため、電気を用いることなく、停電時にも有効に作動する。ただし、このリリーフ弁5のバネ反力は、水頭圧が作用した場合に確実に開弁するように、一般的な真空弁21のバネ反力よりも弱く調整されている。
【0054】
また、リリーフ弁5が開弁するときの設定した水頭圧(クラッキング圧)としては、本管81に貯留された排水の水頭圧によって、いずれかの真空弁21が開弁して建物側に逆流する状態よりも小さい水頭圧を設定する。
【0055】
例えば、設定した水頭圧として、最も下流側(真空ステーション3に近い側)の枝管82に配置された真空弁ユニット2のうち、最も下流側に配置された真空弁ユニット2の真空弁21が開弁する状態での水頭圧を、所定の安全率で除すことで計算できる。
【0056】
加えて、このリリーフ弁5には、非常時から復旧したときなどに、夾雑物が詰まって、弁体と弁座の隙間から空気を吸い込むことを防止するために、弁が完全に閉じたことを検知する監視手段を設置することが好ましい。
【0057】
さらに、バイパス管4には、本管81とリリーフ弁5との間に仕切弁61が設置されている。この仕切弁61は、リリーフ弁5を取外して修理したり、清掃したりする際に閉じられる。
【0058】
また、仕切弁61は、リリーフ弁5が隙間なく完全に閉弁していなくて真空圧を浪費してしまうような真空圧異常時が検知されると、自動的に閉弁するように構成することができる。
【0059】
そして、この仕切弁61とリリーフ弁5とは、バイパス管4の途中に設置した同一のマンホール内に収容することが好ましい。
【0060】
次に、本実施例の配管構造1の作用について、図3,4を用いて説明する。なお、家庭91から本管81に到達するまでの排水の詳細な流れは、すでに説明したものと同様であるから説明は省略する。
【0061】
まず、図3を用いて、真空式下水道システムSの常時における動作について説明する。
【0062】
常時には、制御装置36は、集水タンク分離弁62及び真空ポンプ分離弁63を開弁する一方で、リリーフ弁5を閉弁する。なお、仕切弁61は開いている。
【0063】
常時において、排水は、真空ポンプ32で発生された真空圧と大気圧との差圧によって、枝管82のリフト部82bを逐次超えていき、本管81まで到達する。
【0064】
そして、いったん本管81に流入した排水は、本管81内を重力により速度を増しながら流下し、開いている集水タンク分離弁62を通過し、逆止弁71を通過し、射流となって減勢工72に流れ込む。
【0065】
減勢工72に射流状態で流れ込んだ排水は、減勢工72内で跳水して常流となった後、集水タンク31に流れ込んで貯留される。その後、貯留された排水は、圧送ポンプ33によって吸い上げられ、逆止弁73を通過し、減勢工74に流れ込み、下流に位置する下水本管に流れ込む。
【0066】
つづいて、図4を用いて、真空式下水道システムSの非常時における動作について説明する。ここでは、非常時として、真空ステーション3が停電した場合を想定する。
【0067】
非常時には、停電したことを検知した制御装置36は、非常用の電源を使って、集水タンク分離弁62及び真空ポンプ分離弁63を閉弁する一方で、リリーフ弁5を開弁する。なお、仕切弁61は開いている。
【0068】
また、非常時において、真空ポンプ32は停電によって停止しているものの、本管81内部や枝管82内部に残留した真空圧によって、排水は枝管82のリフト部82bを逐次超えていき、本管81まで到達する。
【0069】
そして、いったん本管81に流入した排水は、本管81内を重力により速度を増しながら流下するが、本管81の末端において閉じている集水タンク分離弁62で堰き止められる。
【0070】
堰き止められた排水は、本管81内に下流側から少しずつ貯留されていき、下流端より少し上流側で分岐されたバイパス管4内に流入する。また、本管81内に下流側から貯留された排水は、最下流の枝管82内にも流入(逆流)する。
【0071】
したがって、バイパス管4内に流入した排水は、開いている仕切弁61を通過してリリーフ弁5まで到達し、リリーフ弁5の弁体に水頭圧を作用させる。同様に、枝管82内に流入(逆流)した排水も、真空弁21の弁体に水頭圧を作用させる。
【0072】
そして、リリーフ弁5に設定した水頭圧が作用するようになれば、水頭圧によってリリーフ弁5の弁体が押し開けられて、バイパス管4内を排水が流れるようになる。ここで、設定した水頭圧が作用する状態では、真空弁21が開くことはないため、排水が真空弁ユニット2を逆流することはない。
【0073】
そして、水頭圧を受けて射流となった排水は、開いているリリーフ弁5を通過し、減勢工74内で跳水して常流となって、真空ステーション3より下流側へ流入する。
【0074】
その後、停電が解消して真空ステーション3が復旧すると、制御装置36は真空ポンプ32を作動させて真空圧を発生させ、集水タンク分離弁62及び真空ポンプ分離弁63を開弁し、リリーフ弁5を閉弁する。
【0075】
次に、本実施例の配管構造1の効果を列挙して説明する。
【0076】
(1)このように、本実施例の配管構造1は、真空ステーション3に向かって下り勾配の本管81が接続される配管構造1であって、本管81の下流端近傍を分岐して形成され、本管81の下流端近傍において設定した水頭圧が作用すると排水を流すバイパス管4を備えることを特徴とする。
【0077】
このため、設定した水頭圧が作用するとバイパス管4に排水が流れることで、非常時に集水タンク31から排水が溢れても、水頭圧によって真空弁21を開いて逆流することがない。
【0078】
つまり、本実施例のように傾斜した本管81を有する真空管路では、本管81と枝管82を合計した内部空間が広くなり、内部空間全体が一定の真空圧に保持されることとなる。
【0079】
したがって、真空ステーション3が故障しても、しばらくの間は真空圧によって排水を吸い込みつづけることとなる。そうすると、密閉状態の本管81や枝管82に下流側から排水が貯留されていき、最終的には真空弁21から排水が逆流する可能性がある。
【0080】
そこで、本管81や枝管82に排水が貯留されて一定の水頭圧が作用すると、真空ステーション3を迂回するようにして排水を流すバイパス管4を設置することで、逆流を防止できる。
【0081】
(2)また、バイパス管4には、設定した水頭圧が作用すると開弁するリリーフ弁5が配置されることで、常時においてバイパス管4から空気を吸い込むことがなくなるため、真空圧を排水の収集のために有効に利用できる。
【0082】
つまり、非常時だけを考慮するとバイパス管4にはリリーフ弁5がなくてもよいが、常時のことを考慮すると真空圧を逃がさないようにリリーフ弁5を設けることが好ましい。
【0083】
(3)さらに、本管81を分岐した複数の枝管82,・・・と、枝管82に接続される真空弁21を有する真空弁ユニット2と、をさらに備え、設定した水頭圧として、本管81に貯留された排水の水頭圧によって真空弁21が開弁して逆流する状態よりも小さい水頭圧を設定することで、真空弁21が開弁して逆流することを確実に防止できる。
【0084】
(4)また、バイパス管4には、本管81とリリーフ弁5との間に仕切弁61が設置されることで、リリーフ弁5を交換したり修理したりする場合に、容易にリリーフ弁5を取外すことができる。
【0085】
加えて、リリーフ弁5と仕切弁61とを同一のマンホールに収容すれば、設置スペースを有効活用できるうえ、メンテナンス時の作業が容易になる。
【0086】
(5)そして、本実施例の真空式下水道システムSは、上記したいずれかの配管構造1を備え、真空ステーション3には、本管81から流入した排水を貯留する集水タンク31と、集水タンク31内の空気を排出する真空ポンプ32と、が設置されており、真空ステーション3が停電になった場合に、真空ポンプ32の集水タンク31に近い側を封止する真空ポンプ分離弁63を備えることを特徴とする。
【0087】
このため、真空ステーション3が停電になった場合でも、真空ポンプ32に排水が取り込まれなくなることで、真空ポンプ32が故障することを防止できる。
【0088】
(6)また、集水タンク31内の排水が所定水位となった場合又は真空ステーション3が停電になった場合に、本管81のバイパス管4を分岐した箇所より下流側を封止する集水タンク分離弁62を備えることで、集水タンク31内の排水が所定水位となった場合又は真空ステーション3が停電になった場合でも、集水タンク31内に排水が流れ込まなくなることで、真空ステーション3全体を保護することができる。
【0089】
(7)さらに、本管81の下流端近傍に、自然流下した排水の水勢を抑制する減勢工72を設置することで、速度が速いため射流となった排水の流速を跳水により遅くして、常流として集水タンク31に取り込むことができる。
【0090】
このため、勢いよく集水タンク31に流入した排水によって、集水タンク31内に貯留された排水が跳ねて真空ポンプ32が排水を吸い込むことを防止できる。
【0091】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0092】
例えば、前記実施例では、リリーフ弁5として、従来から用いている真空弁21を改良して用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、真空圧に耐えうる弁体やプランジャーなどの隔離弁を有し、圧力変動に呼応して開閉可能な弁類や、同等の機能を有する機器を用いることができる。
【0093】
また、前記実施例では、非常時として真空ステーション3が停電した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、圧送ポンプ33の故障などで集水タンク31内の排水が所定水位となった場合にも、本発明を適用できる。
【0094】
さらに、前記実施例では、仕切弁61は制御装置36の命令によって動作する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、仕切弁61として通電状態(常時)で閉の電磁ソレノイド弁を用いれば、制御装置36の命令によらずに停電時のバイパス制御を実現できる。
【0095】
同様に、前記実施例では、集水タンク分離弁62及び真空ポンプ分離弁63は制御装置36の命令によって動作する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、集水タンク分離弁62及び真空ポンプ分離弁63として通電状態(常時)で開の電磁ソレノイド弁を用いれば、制御装置36の命令によらずに停電時の分離制御を実現できる。
【符号の説明】
【0096】
S 真空式下水道システム
1 配管構造
2 真空弁ユニット
21 真空弁
3 真空ステーション
31 集水タンク
32 真空ポンプ
33 圧送ポンプ
34 水位計
36 制御装置
4 バイパス管
5 リリーフ弁
61 仕切弁
62 集水タンク分離弁
63 真空ポンプ分離弁
72,74 減勢工
81 本管
82 枝管
82a 流下部
82b リフト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ステーションに向かって下り勾配の本管が接続される配管構造であって、
前記本管の下流端近傍を分岐して形成され、設定した水頭圧が作用すると排水を流すバイパス管を備えることを特徴とする配管構造。
【請求項2】
前記バイパス管には、設定した水頭圧が作用すると開弁するリリーフ弁が配置されることを特徴とする請求項1に記載の配管構造。
【請求項3】
前記本管を分岐した複数の枝管と、前記枝管に接続される真空弁を有する真空弁ユニットと、をさらに備え、前記設定した水頭圧として、前記本管に貯留された排水の水頭圧によって前記真空弁が開弁して逆流する状態よりも小さい水頭圧を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配管構造。
【請求項4】
前記バイパス管には、前記本管と前記リリーフ弁との間に仕切弁が設置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の配管構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の配管構造を備え、
前記真空ステーションには、前記本管から流入した排水を貯留する集水タンクと、前記集水タンク内の空気を排出する真空ポンプと、が設置されており、
前記真空ステーションが停電になった場合に、前記真空ポンプの前記集水タンクに近い側を封止する真空ポンプ分離弁を備えることを特徴とする真空式下水道システム。
【請求項6】
前記集水タンク内の排水が所定水位となった場合又は前記真空ステーションが停電になった場合に、前記本管の前記バイパス管を分岐した箇所より下流側を封止する集水タンク分離弁を備えることを特徴とする請求項5に記載の真空式下水道システム。
【請求項7】
前記本管の下流端近傍に、自然流下した前記排水の水勢を抑制する減勢工を設置することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の真空式下水道システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−246924(P2011−246924A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119638(P2010−119638)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】