説明

配送物の温度管理システム

【課題】所定の関係者が自由にリアルタイムで配送車の荷室の温度、配送車の位置および流通過程における作業状況を把握でき、ようにした配送物の温度管理システムを提供する。
【解決手段】温度センサ5a、5bの検知した配送車1の荷室の温度データと、GPS受信装置4が受信した配送車1の位置データと、作業状況入力部3aにより入力された流通過程における作業状況を示す作業識別データとを、制御装置3から無線送信してインターネット通信網8を通じてサーバ7に入力、記憶させ、これらデータを、インターネット通信網8を通じてアクセス許可された端末機器9の表示部9aにリアルタイムで同時に表示して閲覧できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配送物の温度管理システムに関し、さらに詳しくは、所定の関係者が自由にリアルタイムで配送物の温度状態、配送車の位置を把握できるようにした配送物の温度管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生鮮食料品や加工食品等の流通過程においては、配送物であるこれら食料品の温度と、流通に要する時間とを適正にするように管理することが品質を一定水準に維持するために極めて重要である。そこで、食料品を積載したトラック等の配送車に温度センサやGPS受信装置を設置し、これらの機器が取得した荷室の温度データや輸送中のトラックの現在位置を示す位置データなどの各種データを、車載機からインターネット通信網を通じて物流センタに送信する管理システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、近年、食料品の流通過程における品質管理の重要性や、ディスクロージャーを重視する観点から、配送元、配送者、配送先等の様々な関係者がこれらデータをリアルタイムで把握できるようにするシステムが必要になってきた。しかしながら、特許文献1で提案されている管理システムでは、物流センタ(センターサーバ)と車載機との間だけで、各種データを受送信するシステムになっているため、流通過程における荷室の温度データや配送車の位置データを、配送元や配送先等の所定の関係者が自由にリアルタイムで把握することができないという問題があった。
【特許文献1】特開2003−233655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、所定の関係者が自由にリアルタイムで配送物の温度状態、配送車の位置を把握できるようにした配送物の温度管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明の配送物の温度管理システムは、検知した温度データを無線送信する温度センサと、GPS受信装置と、制御装置とを配送車に設置し、荷室に配置した前記温度センサの検知した温度データと、GPS受信装置が受信した位置データとを前記制御装置から無線送信して通信網を通じてサーバに入力、記憶させ、該サーバに入力、記憶させたこれらデータを、前記通信網を通じて該サーバにアクセス許可された端末機器の表示部に、リアルタイムで同時に表示するようにしたことを特徴とするものである。
【0006】
ここで、流通過程における作業状況を入力する作業状況入力部を前記制御装置に設け、該作業状況入力部により入力された作業識別データを前記制御装置から無線送信して前記通信網を通じてサーバに入力、記憶させ、該サーバに入力、記憶させたこのデータを、前記通信網を通じて該サーバにアクセス許可された端末機器の表示部に、リアルタイムで同時に表示するようにすることもできる。また、前記制御装置に予め、荷室の温度範囲を規定する温度範囲データを入力しておき、該温度範囲データと、前記荷室に配置した温度センサが検知した温度データとの比較に基づいて、荷室の空調装置の温度制御を行なうようにすることもできる。また、前記荷室を複数に区分し、区分したそれぞれの荷室に前記温度センサを配置することもでき、この際に、複数に区分したそれぞれの荷室を、異なる温度範囲に規定することもできる。また、前記温度センサを、前記荷室に加え、配送物を収容し荷室に積載される配送ユニットにも配置することもできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の配送物の温度管理システムによれば、配送車の荷室に配置した温度センサの検知した温度データと、GPS受信装置が受信した配送車の位置データとを、制御装置から無線送信して通信網を通じてサーバに入力、記憶させ、該サーバに入力、記憶させたこれらデータを、前記通信網を通じて、該サーバにアクセス許可された端末機器の表示部に表示して、リアルタイムで閲覧できるようにしたので、端末機器をサーバにアクセスできるようにしておけば、自由にリアルタイムで配送物の温度状態および配送車の位置を把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の配送物の温度管理システムについて、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0009】
図1に例示するように、本発明の配送物の温度管理システムは、配送車1に配置する温度センサ5a、5bと、GPS受信装置4と、制御装置3とを有している。温度センサ5a、5bは検知した温度データを制御装置3に無線送信する。
【0010】
この温度センサ5a、5bは、着脱自在に構成され、設定した所定の時間間隔で検知した温度データを制御装置3に送信する。温度センサ5a、5bと制御装置3とは、ともに配送車1に設置されて近い距離にあるので、温度センサ5a、5bのバッテリーの消費を抑えることができる。
【0011】
GPS受信装置4はGPS衛星からの位置情報を受信して制御装置3に配送車1の位置データを入力する。制御装置3は、流通過程における作業状況を入力するボタン等で構成される作業状況入力部3aを有している。作業状況とは、例えば、「荷積み作業」、「走行中」、「荷下ろし作業」、「待機」、「休憩」、「集荷」、「高速道路(走行中)」等の流通過程における種々の作業状況であり、運転手がそれぞれの作業状況を実施する際に、該当する作業状況入力部3aのボタン等を押すことにより制御装置3に入力する。作業状況入力部3aにより入力されたデータは、作業識別データとなる。
【0012】
温度データ、位置データおよび作業識別データは、制御装置3から無線LAN通信により、所定のアクセスポイントを経由してインターネット通信網8に送信され、インターネット通信網8に接続された所定のサーバ7に入力、記憶される。
【0013】
サーバ7には、配送元、配送者、配送先等の所定の関係者の端末機器(パソコン)9が、パスワード入力等によりアクセスできるようになっている。端末機器9によりサーバ7にアクセスすると、入力、記憶された温度データ、位置データおよび作業識別データがリアルタイムで同時に表示部9aに表示されて閲覧できるようになっている。また、これらデータの履歴を閲覧、取得することもできる。
【0014】
配送元としては、例えば、生鮮食料品の生産者や加工食料品の製造メーカ、病院や学校等向けに給食を調理する給食センタ、医薬品や医療品メーカ等であり、配送先とは、スーパーマーケット等の小売店、ホテル、飲食店、給食を消費する病院、学校、介護施設等、医薬品や医療品の配送拠点等である。配送者とは、配送車1を運行する輸送会社等である。
【0015】
温度センサ5a、5b等の配置例を図2に示す。温度センサ5a、5bは保冷室等の荷室2の内部に配置される。荷室2の数は単数の場合もあり、図示するように複数に区分されている場合もある。荷室2が複数に区分されている場合は、それぞれの荷室2a、2bに温度センサ5a、5bを配置する。温度センサ5a、5bは任意の位置に配置することができるので、配送物の近傍に配置すると、検知する温度データ(荷室2の温度)と配送物との温度差を小さくできる。
【0016】
配送車1に配送物を荷積みする際には、運転手が配送元で制御装置3の作業状況入力部3aにより入力操作をして、「荷積み作業」に該当する作業識別データが制御装置3に入力される。荷積み作業が終了して配送車1を走行させる際には、作業状況入力部3aにより「走行中」に該当する作業識別データが制御装置3に入力される。同様に、配送先に到着して荷下ろしする際には、作業状況入力部3aにより「荷下ろし作業」に該当する作業識別データが制御装置3に入力される。その他、流通過程において必要な作業を作業状況入力部3aに設定し、その作業に該当する作業識別データを制御装置3に入力できるようにしておく。
【0017】
これにより、サーバ7にアクセスした端末機器9では、関係者が流通過程における荷室2a、2bの温度、配送車1の位置および作業状況をリアルタイムで同時に表示部9aで把握することができる。端末機器9の表示部9aでは、荷室2の温度はグラフや数値等で表示される。また、配送車1の位置は、地図上のポイントや経度・緯度の数値等として表示部9aに表示され、作業状況は、例えば、「荷積み作業」、「走行中」、「荷下ろし作業」等の文字で表示される。
【0018】
生鮮食料品や加工食品等の配送物には、それぞれ適正な温度があるので、リアルタイムで経時的な荷室2a、2bの温度データを把握することで、配送物の品質が一定水準に保たれているか否かを判断することができる。このように、関係者がオープンな状態で管理上必要な情報を得ることが可能になる。
尚、配送車1の運転席には、温度センサ5a、5bが検知した温度データを表示する表示部を設けておくことが望ましい。これにより、運転手も荷室2a、2bの温度状況を把握することができる。
【0019】
ここで、例えば、荷室2a、2bの温度データに大きな変化があった場合には、表示部9aに表示された作業状況に基づいて、その要因を分析することができる。例えば、一時的に荷室2a、2bの温度が上昇した際に、作業状況が「荷積み作業」を示していれば、荷室2の扉を開口したことによる温度上昇であり、特別な異常ではないと分析でき、詳細な管理を行なうことができる。さらに表示部9aに表示された位置データを参照することにより、一段と詳細にその要因を分析することができる。
【0020】
図3に例示するように、配送物を収容して荷室2a、2bに積載される配送ユニット10にも温度センサ5c、5dを取り付けてもよい。配送ユニット10とは配送物を収容するカゴ車、パレット、コンテナ、カート等である。荷室2a、2bに加えて配送ユニット10にも温度センサ5c、5dを配置すると、一段と精度よく配送物の温度状態を把握できるようになる。温度センサ5c、5dを配送ユニット10に配置した場合は、荷室2a、2bに配置する温度センサ5a、5bを省略することも可能である。
【0021】
図4に例示するように、制御装置3により荷室2の空調装置6の温度制御を行なうようにすることもできる。この実施形態では予め、制御装置3にそれぞれの荷室2a、2bの温度範囲を規定する温度範囲データを入力しておく。
【0022】
流通過程では、温度センサ5a、5bが検知した温度データと温度範囲データとが制御装置3により比較され、検知した温度データが温度範囲データよりも低温側にある場合は、空調装置6により冷房を弱くし、検知した温度データが温度範囲データよりも高温側にある場合は、空調装置6により冷房を強くして、荷室2a、2bを規定した温度範囲になるように自動温度制御する。
【0023】
例えば、区分された一方の荷室2aをチルド温度帯、他方の荷室2bを冷凍温度帯として異なる温度範囲に規定する場合もある。このような場合は、それぞれの荷室2a、2bに空調装置6を設けることにより、それぞれの荷室2a、2bを精度よく規定した温度範囲に温度制御することができる。
【0024】
また、温度センサ5a、5bが検知した温度データが、規定した温度範囲データの範囲から外れた際に、その異常を運転手に伝える警告装置を設けることもできる。警告装置が異常を伝えた際には、運転手が空調装置6の温度調整操作を行なって、荷室2a、2bが規定した温度範囲になるようにする。
【0025】
上記した実施形態では、インターネット通信網8を用いているが、インターネット通信網8に替えて、専用回線等のその他の通信網を用いることもできる。また、制御装置3に設けた作業状況入力部3aを省略することもできる。
【0026】
本発明は、例えば、農産物(野菜、果物等)、水産物(魚貝類)、畜産物(肉)等の生鮮食料品、牛乳、乳製品、弁当(米飯)、パン類、惣菜、冷凍加工品等の加工品、医薬品、医療品等の流通過程において適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の配送物の温度管理システムの全体概要を例示する説明図である。
【図2】図1の配送車における構成要素の配置を例示する説明図である。
【図3】図2の変形例を示す説明図である。
【図4】図2の変形例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 配送車
2 2a、2b 荷室
3 制御装置
3a 作業状況入力部
4 GPS受信装置
5a、5b、5c、5d 温度センサ
6 空調装置
7 サーバ
8 インターネット通信網
9 端末機器
9a 表示部
10 配送ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知した温度データを無線送信する温度センサと、GPS受信装置と、制御装置とを配送車に設置し、荷室に配置した前記温度センサの検知した温度データと、GPS受信装置が受信した位置データとを前記制御装置から無線送信して通信網を通じてサーバに入力、記憶させ、該サーバに入力、記憶させたこれらデータを、前記通信網を通じて該サーバにアクセス許可された端末機器の表示部に、リアルタイムで同時に表示するようにした配送物の温度管理システム。
【請求項2】
流通過程における作業状況を入力する作業状況入力部を前記制御装置に設け、該作業状況入力部により入力された作業識別データを前記制御装置から無線送信して前記通信網を通じてサーバに入力、記憶させ、該サーバに入力、記憶させたこのデータを、前記通信網を通じて該サーバにアクセス許可された端末機器の表示部に、リアルタイムで同時に表示するようにした請求項1に記載の配送物の温度管理システム。
【請求項3】
前記制御装置に予め、荷室の温度範囲を規定する温度範囲データを入力しておき、該温度範囲データと、前記荷室に配置した温度センサが検知した温度データとの比較に基づいて、荷室の空調装置の温度制御を行なう請求項1または2に記載の配送物の温度管理システム。
【請求項4】
前記荷室を複数に区分し、区分したそれぞれの荷室に前記温度センサを配置した請求項1〜3のいずれかに記載の配送物の温度管理システム。
【請求項5】
前記複数に区分したそれぞれの荷室を、異なる温度範囲に規定するようにした請求項4に記載の配送物の温度管理システム。
【請求項6】
前記温度センサを、前記荷室に加え、配送物を収容し荷室に積載される配送ユニットにも配置した請求項1〜5のいずれかに記載の配送物の温度管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−9294(P2009−9294A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169094(P2007−169094)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(000133526)株式会社チノー (113)
【出願人】(507215389)石井商事運輸株式会社 (2)
【出願人】(507215840)株式会社ジェイ・サポート (2)
【出願人】(507216272)株式会社チェーン・ロジスティクス研究所 (2)