説明

配電盤

【課題】部品点数を削減することができ、しかも組立作業を容易にできる配電盤を提供すること。
【解決手段】筐体2の内部に、例えば真空遮断器やコンビネーションスイッチなどの開閉機器が搭載された引出形の台車3と、この台車が走行される床板5を備えている。そして、上記床板は、上記台車が走行する走行部51と、この走行部から突出された位置に設けられた上記台車を所定の位置にロックするインターロック機構4を構成する係止部42とが1枚の板材から一体に形成されてなることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、台車に開閉機器が搭載された引出形機器とその台車を固定するインターロック装置を有する配電盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
引出形機器では、事故防止や安全の確保のためインターロック装置が設けられる。従来の技術として、開閉機器が搭載された台車が走行するクレードルに支え部材を介してロック板を取り付け、そのロック板にインターロックピン落とし穴である2つのロック穴を設けたものが示されている(例えば特許文献1参照)。なお、インターロックのためのインターロックピンは、台車を電気室などの床に置いて移動させる場合に、円滑に動かせるようにするために、台車の最下部、即ち車輪が接する床面の位置より上側に配置される。一方、配電盤内でインターロックピンが接続位置のロック穴や引出し位置のロック穴に嵌って固定された状態にするためには、ロック穴の高さ位置が台車底部分よりは低く、車輪が接する床面の位置よりは高い位置が望ましい。ロック板は、台車の車輪を受ける床面より上方で、適宜の場所にロック穴を設ける必要上、床面から突出するように設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−108324号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来技術では、ロック板を支え部材を介してクレードルに取り付けるようにしているため、部品の点数が増え、取付作業も必要になるという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような従来技術の課題を解消するためになされたもので、部品点数を削減することができ、しかも組立作業を容易にできる配電盤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る配電盤は、筐体の内部に、開閉機器が搭載された台車と、この台車が走行する床板を備えている。そして、上記床板は、上記台車の走行部と、この走行部から突出された位置に設けられた上記台車を固定するためのインターロック機構を構成する係止部とが一体に形成されてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、台車の走行部と、インターロック機構を構成する係止部とが一体に形成されていることにより、部品点数を減らすことが可能となる。しかも、組立の工数が減り、製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る配電盤の要部を概念的に示す構成図。
【図2】図1に示された開閉機器が搭載された引出機器を概念的に示す拡大図。
【図3】図1に示された台車を受ける床板を示す斜視図。
【図4】この発明の実施の形態2に係る配電盤の台車を受ける床板を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による配電盤について図1〜図3を参照して説明する。図において、配電盤1を構成する筐体2の内部は、仕切り壁21により母線室22と遮断器室23に区分されている。遮断器室23は上下に複数(この例では3室)に区分されており、区分された遮断器室23A、23B、23Cには、例えば真空遮断器やコンビネーションスイッチなどの開閉機器(図示省略)が搭載された引出形の台車3がそれぞれ設置される。台車3にはインターロック機構4を構成するインターロックピン41が設けられている。インターロックピン41は台車3に突設された保持部材43に上下動可能に保持され、図示省略している操作レバーにより上方または下方に移動される。
【0010】
そして、遮断器室23A〜23Cの底部には、図2、図3に示すように台車3の車輪31が走行する走行部51と、この走行部51から上方向に突出された位置に設けられたインターロック機構4の係止部42を構成する凸部52とが板材から一体に折曲形成されてなる床板5が設けられている。床板5は台車3の走行方向から見て、走行部51が左側部及び右側部に対称的に形成され、その左側部及び右側部の間の中央部に略コ字形状に突出形成された凸部52が設けられている。そして、走行部51の左端部及び右端部には、台車3の車輪31をガイドする断面L字形の台車ガイド部材6がネジ等の固定手段7により床板5に左右対称的に固定されている。
【0011】
係止部42は、凸部52と、その凸部52の上部所定位置に設けられたインターロックピン41を係止するインターロックピン41の落し穴である2つの貫通孔42a、42bから構成されている。中央部寄りの貫通孔42aは台車3を図1の右方向に移動し、図示省略している回路が接続された接続位置で台車3を固定するときに用い、貫通孔42bは台車3を図1の左方向に移動し、回路から切り離した位置で台車3を固定するときに用いる。なお、筐体2の図1の左端部には、何れも図示省略しているヒンジによって開閉可能に支持された扉が設けられている。配電盤1を構成するその他の部分、搭載機器、装置類等は、例えば従来の技術、公知のものを適宜選択して設備することができる部分であるので、図示及び説明を省略している。
【0012】
次に、上記のように構成された実施の形態1の動作について組立を中心に説明する。床板5は、例えば一般的な鋼板などからプレスにより図3の走行部51、凸部52、及び貫通孔42a、42bが設けられた形状に成形される。台車ガイド部材6は、例えば既製のアングル材が用いられるが、プレスによって形成しても良い。床板5と台車ガイド部材6に固定手段7を構成する例えばネジ穴加工等を行った後、図3に示すように組み立て、図1の遮断器室23A、23B、23Cの底部に固定することで、台車3を搭載する準備が完了する。その後、配電盤1を構成する他の各種機器類等の部材を組み付ける一方、台車3を搭載することで組み立てが完了する。台車3は、通常の使用状態では図1の位置にあり、インターロックピン41は貫通孔42aに対してロックされ、接続位置で固定される。メインテナンス等で台車3を図1の左方に引き出したときはインターロックピン41を貫通孔42bに係合させることでロックされ、引出位置で固定される。
【0013】
上記のように実施の形態1によれば、開閉機器が搭載された台車3の車輪31が走行する走行部51と、この走行部51から突出された位置に設けられ台車3を固定するインターロック機構の係止部42とを板材から一体に折曲形成するようにしたので、係止部42を他の部材で別途形成し、あるいは取り付けたりする必要がなくなるので、部品点数を減らすことが可能となる。このため、組立の工数が減り、製品製作のコストを削減することが可能となる。また、組立工数が減ることで生産工程でのエネルギー使用量の削減による環境負荷軽減にも寄与する。なお、上記凸部52の断面形状は、コ字形状に限定されるものではなく、例えば台形状などその他の形状でも差し支えない。
【0014】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る配電盤について図4を参照して説明する。図において、床板5の走行部51の左右外側各端部には該走行部51の外側端部を上方に折曲して形成された台車ガイド部53がそれぞれ一体的に設けられている。なお、中央部に凸部52、及び貫通孔42a、42bが設けられている点、並びにその他は上記実施の形態1と同様である。
【0015】
上記のように構成された実施の形態2においては、図4に示すような走行部51、凸部52、台車ガイド部53、及び貫通孔42a、42bが設けられた床板5は、板材からプレス成形により容易に得ることができる。
このように実施の形態2によれば、台車ガイド部53を走行部51、凸部52と一体に構成したことで、部品の点数を実施の形態1の場合よりも更に減らし、かつ組立作業も減らすことができる。このため、組立工数がさらに減り、製品製作のコストを一層削減することができる。
【0016】
なお、上記実施の形態1、2では、床板5を板材からプレス加工によって形成した場合について説明したが、形成方法は必ずしもプレス加工に限定されるものではない。また、遮断器室23を上下に3段設けたものを例示したが、遮断器室23の数や配置、遮断機器の数は実施の形態のものに限定されるものではない。また、係止部42が、凸部52と、その凸部52の上部に設けられたインターロックピン41を係止する貫通孔42a、42bから構成されている場合について説明したが、係止部42、またはインターロック機構4は要するに台車3を所定位置で固定できるものであればよい。例えば、貫通孔42a、42bは、インターロックピン41を係止し得る凹所、突部、突起、突片や切欠きなどでも差し支えない。更にはインターロック機構4としては、例えば凸部52の側にインターロックピンを設置して係止部42とし、台車3の側にそのインターロックピンと係合する手段を設け、台車3を所定位置に固定するようにすることもできる。
【符号の説明】
【0017】
1 配電盤、 2 筐体、 21 仕切り壁、 22 母線室、 23(23A、23B、23C) 遮断器室、 3 台車、 31 車輪、 4 インターロック機構、 41 インターロックピン、 42 係止部、 42a、42b 貫通孔、 43 保持部材、 5 床板、 51 走行部、 52 凸部、 53 台車ガイド部、 6 台車ガイド部材、 7 固定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部に、開閉機器が搭載された台車と、この台車が走行する床板を備え、上記床板は、上記台車の走行部と、この走行部から突出された位置に設けられた上記台車を固定するインターロック機構を構成する係止部とが一体に形成されてなることを特徴とする配電盤。
【請求項2】
上記床板は、上記台車の走行方向から見て、上記走行部が左側部及び右側部に形成され、これら左側部及び右側部の間に上方に突出された凸部が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の配電盤。
【請求項3】
上記係止部は、上記凸部とその凸部の上面部に設けられた複数の貫通孔を用いてなることを特徴とする請求項2記載の配電盤。
【請求項4】
上記台車の走行方向から見て、上記走行部の左側部の左端部、及び上記走行部の右側部の右端部に、それぞれ上記台車の車輪をガイドする台車ガイド部が一体に折曲形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の配電盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−279212(P2010−279212A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131753(P2009−131753)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】