説明

酵素又は微生物固定化用担体

【課題】高い生物活性を有し、かつ高い強度を有する酵素又は微生物固定化用担体を提供すること。
【解決手段】
(a)不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、及び(d)ポリウレタン樹脂水分散体を含んでなる水性液状組成物を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素又は微生物固定化用担体に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素又は微生物の固定化法としては、従来から、包括法、付着法、担体結合法等が行なわれているが、なかでも包括法、付着法は菌体固有の生理、代謝にもとづく反応を効率良く利用できるため、発酵、微生物変換、廃水処理等の分野で注目されている。上記酵素又は微生物を固定化するためには、通常、酵素又は微生物固定化用担体が利用されるが、該固定化用担体として多孔質無機担体を用いた場合、担体への微生物の付着性が悪く、さらに付着後担体上で増殖した菌体が剥離しやすいという欠点を有する。また、無機質担体は一般に水より比重が大きく、流動層型バイオリアクターの固定化物粒子として用いると流動操作が難しいという欠点を有する。
【0003】
一方、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の親水性樹脂、高酸価不飽和アクリル樹脂、不飽和ポリエチレングリコール等の親水性光硬化樹脂は、包括固定化法等に好適な固定化用担体であり、これらの樹脂水溶液や水分散液に微生物菌体を分散して粒状にゲル化させた固定化物粒子は含水ゲル化物のために比重が水の比重に近く、微生物の付着性や増殖性も良好であり、流動層型バイオリアクターの固定化物粒子として提案され、広く利用されている(特許文献1参照)。このようなバイオリアクターでは、槽内部において担体を流動させるために行なわれる攪拌や曝気のエネルギーを最小限に抑えて運用コストを削減するため、反応槽内に部分的に滞留することなく十分に流動できる低比重の担体が求められる場合があり、比重調整用の無機質系中空ビーズ(中空ガラスビーズ又は中空セライト)や中空ポリマー粒子を担体に含有させることが提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、これらの親水性樹脂を用いる固定化用担体は含水ゲル化物として使用されるため、機械的強度が弱く、リアクターの操業中に破損しやすく作業性が悪いという欠点があり、また無機質系中空ビーズを担体に含有させる方法では担体の圧縮破壊強度等の物性低下が非常に大きく、これを改善し得る中空ポリマー粒子を用いた場合でもかかる担体の強度向上には限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭62−19837号公報
【特許文献2】特開平10−168105号公報
【特許文献3】特開2002−265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い生物活性を有し、かつ高い強度を有する酵素又は微生物固定化用担体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、不飽和基含有樹脂、重合開始剤、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、及びポリウレタン樹脂水分散体を含んでなる水性液状組成物を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂を硬化させることによって得られる酵素又は微生物固定化担体が、高い生物活性を有し、且つ高い強度を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の酵素又は微生物固定化用担体を提供するものである。
1. (a)不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、及び(d)ポリウレタン樹脂水分散体を含んでなる水性液状組成物を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体。
2. 不飽和基含有樹脂(a)が不飽和基及びウレタン結合を有する樹脂(a1)である上記項1に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
3. 重合開始剤(b)が光重合開始剤及び/又はレドックス系熱重合開始剤である上記項1又は2に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
4. ポリウレタン樹脂水分散体(d)の平均粒子径が、30〜1,000nmの範囲内である上記項1ないし3のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
5. ポリウレタン樹脂水分散体(d)が、不飽和基含有樹脂(a)固形分100質量部に対して1〜50質量部(固形分)の割合で使用される上記項1ないし4のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
6. 水性液状組成物が、さらに中空粒子を含有する上記項1ないし5のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い生物活性を有し、かつ高い強度を有する酵素又は微生物固定化担体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の酵素または微生物固定化用担体は、(a)不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、及び(d)ポリウレタン樹脂水分散体を含んでなる水性液状組成物を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造される。
【0011】
不飽和基含有樹脂(a)
本発明において用いられる不飽和基含有樹脂(a)としては、1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和結合を有する樹脂であって、一般に300〜30,000、好ましくは500〜20,000の範囲内の数平均分子量を有し、水性媒体中に均一に分散するのに充分なイオン性又は非イオン性の親水性基、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、エーテル結合等を含む親水性の不飽和基含有樹脂が好適に使用される。
【0012】
ここで、本明細書において数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフとして「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製、)を使用し、カラムとして「TSKgel G4000HXL」を1本、「TSKgel G3000HXL」を2本、及び「TSKgel G2000HXL」を1本(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0013】
不飽和基含有樹脂(a)としては、包括固定化用の固定化担体として既に知られているものを用いることができる(例えば、特公昭55−40号公報、特公昭55−20676号公報、特公昭62−19837号公報等参照)。代表的なものとしては以下に記載するものを挙げることができる。
【0014】
(i)ポリアルキレングリコールの両末端に光重合可能な重合性不飽和基を有する化合物:例えば、
(i−1)分子量400〜6,000のポリエチレングリコール1モルの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸2モルでエステル化したポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類。
【0015】
(i−2)分子量200〜4,000のポリプロピレングリコール1モルの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸2モルでエステル化したポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類。
【0016】
(i−3)分子量400〜6,000のポリエチレングリコール1モルの両末端水酸基をトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物2モルでウレタン化し、次いで(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の不飽和モノヒドロキシエチル化合物2モルを付加した不飽和ポリエチレングリコールウレタン化物。
【0017】
(i−4)分子量200〜4,000のポリプロピレングリコール1モルの両末端水酸基をトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物2モルでウレタン化し、次いで(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の不飽和モノヒドロキシ化合物2モルを付加した不飽和ポリプロピレングリコールウレタン化物、など。
【0018】
(ii)高酸価不飽和ポリエステル樹脂:例えば、不飽和多価カルボン酸を含む多価カルボン酸成分と多価アルコールとのエステル化により得られる酸価が40〜200の不飽和ポリエステルの塩類など。
【0019】
(iii)高酸価不飽和エポキシ樹脂:例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸化合物との付加反応物に残存するヒドロキシル基に酸無水物を付加して得られる酸価40〜200の不飽和エポキシ樹脂など。
【0020】
(iv)アニオン性不飽和アクリル樹脂:例えば、酸基含有重合性不飽和化合物及び(メタ)アクリル酸エステルを必須モノマー成分とするモノマー混合物を共重合させて得られるカルボキシル基、リン酸基及び/又はスルホン酸基を含有する共重合体に光重合可能な重合性不飽和基を導入した樹脂など。
【0021】
(v)不飽和ポリアミド:例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどのジイソシアネートとアクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの重合性不飽和ヒドロキシ化合物とのイソシアネート基含有付加物をゼラチンなどの水溶性ポリアミドに付加反応させた不飽和ポリアミドなど。
【0022】
以上に例示した如き不飽和基含有樹脂はそれぞれ単独で使用することができ、或いは2種若しくはそれ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
上記不飽和基含有樹脂としては、前記(i)に該当するポリアルキレングリコールの両末端に光重合可能な重合性不飽和基を有する化合物を好適に使用することができる。このような化合物の代表的なものとしては、例えば、「A−400」、「A−600」、「A−1000」(商品名、新中村化学工業社製、ポリエチレングリコールのジアクリレート化物)等を挙げることができる。
【0024】
また、本発明に係る酵素又は微生物固定化用担体においては、高い強度を有する担体を得ることができるため、不飽和基含有樹脂(a)として不飽和基及びウレタン結合を有する樹脂(a1)を使用することが特に好ましい。このような樹脂としては例えば前記(i−3)に記載の不飽和ポリエチレングリコールウレタン化合物、(i−4)に記載の不飽和ポリプロピレングリコールウレタン化物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0025】
不飽和基含有樹脂(a)として上記不飽和基及びウレタン結合を有する樹脂(a1)を使用する場合に高い強度を有する担体を得られる理由としては、該不飽和基及びウレタン結合を有する樹脂(a1)中に存在するウレタン結合と後記のポリウレタン樹脂水分散体(d)中に存在するウレタン結合との間に水素結合が生じ、強い相互作用が発生することが推察される。
【0026】
重合開始剤(b)
本発明において用いられる重合開始剤(b)としては、光重合開始剤及び/又はレドックス系熱重合開始剤を使用することができる。
【0027】
上記光重合開始剤としては、重合性不飽和化合物の重合に有用なものとして従来から知られているものを特に制限なく使用することができる。具体的には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、O−ベンゾイル安息香酸メチル、ヒドロキシベンゾフェノン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロ)−S−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0028】
また、これらの光重合開始剤による光重合反応を促進させるために、光増感促進剤を該光重合開始剤と併用してもよい。併用し得る光増感促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、ミヒラーケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の3級アミン系;トリフェニルホスフィン等のアルキルホスフィン系;β−チオジグリコール等のチオエーテル系などが挙げられる。これらの光増感促進剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0029】
また、前記レドックス系熱重合開始剤としては、従来から既知のものを使用することができ、例えば、−10℃〜50℃程度の比較的低温でラジカル重合を行ない得る、酸化剤と還元剤の組み合わせからなる重合開始剤が好適に使用される。
【0030】
上記酸化剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルパーベンゾエート、クメンヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物類;ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウムなどのペルオキソ二硫酸塩類;過酸化水素等が挙げられる。これらの酸化剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0031】
また、前記還元剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸水素塩類;硫酸第一鉄、塩化第一鉄などの二価の鉄塩類;N,N−ジメチルアニリン、フェニルモルホリンなどのアミン類;ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸銅などのナフテン酸金属塩類等を挙げることができる。これらの還元剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0032】
これらのレドックス系熱重合開始剤のうち、本発明において特に有利に使用しうるものは、酸化剤がペルオキソ二硫酸塩類又は過酸化水素からなり、還元剤が亜硫酸水素塩類又は二価の鉄塩からなる組み合わせのものである。
【0033】
アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)
本発明において用いられるアルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)は、水溶性であり、水性媒体中でアルカリ金属イオン又は多価金属イオンと接触したときに水に不溶性又は難溶性のゲルに変化する能力のある高分子多糖類である。該高分子多糖類としては、一般に約3,000〜約2,000,000の分子量を有し、また、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンと接触させる前の水溶性の状態で通常少なくとも約10g/L(25℃)の溶解度を示すものが好適に使用される。
【0034】
前記水溶性高分子多糖類(c)の具体例としては、アルギン酸のアルカリ金属塩、カラギーナン等が包含される。
【0035】
これら水溶性高分子多糖類(c)は水性媒体中に溶解した状態で、アルギン酸のアルカリ金属塩の場合は、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;或いはアルミニウムイオン、セリウムイオン、ニッケルイオン等の他の多価金属イオン;のうちの少なくとも1種の多価金属イオンと接触するとゲル化しうる。また、カラギーナンの場合は、カリウムイオンまたはナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンと接触するとゲル化しうる。ゲル化が起こるアルカリ金属イオンまたは多価金属イオンの濃度は水溶性高分子多糖類の種類等により異なるが、一般には0.01〜5mol/Lの範囲である。これらの水溶性高分子多糖類は単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0036】
ポリウレタン樹脂水分散体(d)
本発明において用いられるポリウレタン樹脂水分散体(d)としては、従来公知のものを制限なく使用できる。具体的には例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリオール及びカルボキシル基含有ジオールを反応させてなるウレタンプレポリマーをアミン等の中和剤で中和し、水中に分散させた後、ポリアミン等の鎖延長剤を含む水性媒体と混合して得られるポリウレタン樹脂水分散体を好適に使用することができる。
【0037】
上記ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルイソシアネート、(m−もしくはp−)フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;これらのウレタン化付加物のビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等を挙げることができる。これらのポリイソシアネートはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0038】
前記ポリオールとしては、例えば重量平均分子量が200〜10,000の範囲内のものを使用することができる。具体的には例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレン(ブロック又はランダム)グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、ポリオクタメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;ジカルボン酸(アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等)とグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等)との縮重合させたポリオール、例えばポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ−3−メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等のポリエステルポリオール;ポリカプロラクトンポリオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンポリオール;ポリカーボネートポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、オクタンジオール、トリシクロデカンジメチロール、水添ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等の低分子量グリコール類;グリセリンモノ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基含有ポリオール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。なかでも、得られる担体の強度向上の観点から、上記ポリオールの少なくとも一種として重合性不飽和基含有ポリオールを使用することが好ましい。該重合性不飽和基含有ポリオールを使用することにより、重合性不飽和基を有するポリウレタン樹脂水分散体を得ることができる。
【0039】
前記カルボキシル基含有ジオールとしては、例えばジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸等が挙げられる。これらのカルボキシル基含有ジオールは単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0040】
前記ウレタンプレポリマーは、中和剤により中和することができる。中和剤としては、特に制限はなく、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルプロパノールアミンなどのアミン化合物が挙げられる。
【0041】
また、上記ウレタンプレポリマーは、必要に応じて鎖延長してもよい。鎖延長反応に用いられる鎖延長剤としては、少なくとも2個の活性水素基を有する化合物であり、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチルー1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、シクロヘキサンジメタノール等のアルコール;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアミン類、モノエタノールアミン、ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミンなどのアルカノールアミン;ヒドラジン、ヒドラジン水和物等のヒドラジン系化合物;水等が使用可能である。
【0042】
本発明において用いられるポリウレタン樹脂水分散体(d)は該ポリウレタン樹脂水分散体(d)の水中における安定性向上及び得られる担体の強度向上の観点から平均粒子径が30〜1,000nm、好ましくは50〜800nm、さらに好ましくは50〜500nmの範囲内であることが好適である。
【0043】
本明細書において上記ポリウレタン樹脂水分散体(d)の平均粒子径は、「サブミクロン粒子アナライザーN5」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いて、測定温度:20℃、希釈溶媒:脱イオン水の条件で測定した。
【0044】
また、上記ポリウレタン樹脂水分散体(d)中のポリウレタン樹脂は、高い形状安定性を有することが好ましく、水中だけでなく、水と親水性有機溶剤の混合溶媒(親水溶媒)中においても、分散状態を維持できることが好ましい。具体的には、20℃で、固形分30質量%のポリウレタン樹脂水分散体(d)100質量部とアセトン100質量部とを混合した場合に、ポリウレタン樹脂が混合液中に分散し、当該混合液を目視で観察した場合に、混合液が白濁していることが好ましい。
【0045】
水性液状組成物
本発明において、前記不飽和基含有樹脂(a)、重合開始剤(b)、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)、及びポリウレタン樹脂水分散体(d)を含んでなる水性液状組成物中の各成分(a)〜(d)の配合割合は厳密に制限されるものではなく、各成分の種類等に応じて広範にわたって変えることができるが、一般には、不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として、各成分(b)〜(d)がそれぞれ下記の範囲内であることが好適である。
(b)重合開始剤:0.1〜10質量部、好ましくは、0.3〜5質量部、
(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類:0.5〜15質量部、好ましくは、1〜8質量部、
(d)ポリウレタン樹脂水分散体:1〜50質量部、好ましくは、3〜40質量部(固形分)。
【0046】
本発明において上記不飽和基含有樹脂(a)、重合開始剤(b)、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)及びポリウレタン樹脂分散体(d)のみを固形分として含む水性液状組成物は、一般に水とほぼ同じ1.01〜1.03の範囲内の比重を有するが、該水性液状組成物中に顔料、中空粒子等の比重調整材を添加することで所望の比重に調整することができる。比重を高くしたい場合には、例えば、ガラスビーズ、タルク、マイカ、バリタ等の比重が1以上の比重調整材を前記不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として0.1〜50質量部の割合で添加することによって粒状成形物の比重が1.03〜1.25の範囲になるように調整することができる。一方、比重を低くしたい場合には、例えば、中空ガラスビーズ、中空セライト、中空ポリマー等の比重が1以下の中空粒子を比重調整材として不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として0.1〜30質量部の割合で添加することによって粒状成形物の比重が0.90〜1.01の範囲になるように調整することができる。
【0047】
一般に酵素又は微生物固定化用担体に上記中空粒子を含有せしめた場合、形成される酵素又は微生物固定化用担体は槽内での流動性に優れる反面、強度が低い。一方、本発明に係る酵素又は微生物固定化用担体は該中空粒子を含有する場合においても高い強度を有する。このため、本発明に係る酵素又は微生物固定化用担体は、該担体が中空粒子を含有する場合に特に有用である。
【0048】
以上に述べた(a)〜(d)の各成分及び必要に応じて添加される比重調整材を水性媒体中に溶解ないし分散させることにより、水性液状組成物が調製される。この液状組成物の固形分濃度は一般に5〜30重量%の範囲内が適当である。
【0049】
なお、重合開始剤(b)としてレドックス系熱重合開始剤を使用する場合は重合開始剤(b)として酸化剤及び還元剤を同時に水性液状組成物中に含有させてもよいが、水性液状組成物中に含有させるものを酸化剤又は還元剤のいずれか一方とし、もう一方を金属イオンを含有する水性媒体中に、例えば0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の濃度で含有させるようにしてもよい。
【0050】
酵素又は微生物固定化用担体の製造方法
上記のようにして調製される水性液状組成物は、次いで、前述した如き種類の金属イオンを含有する水性媒体中に滴下するか、又は平均粒子径が5mm以上の粒状物を得る場合には、該水性媒体表面上に所定の時間連続的に注加して液滴を所望の粒径になるまで生長させた後、その液滴を沈降させることにより、該液状組成物が粒状でゲル化せしめられる。
【0051】
金属イオンを含有する水性媒体中への水性液状組成物の滴下は、例えば、注射器の先端から該液状組成物を滴下する方法、遠心力を利用して該液状組成物を粒状に飛散させる方法、スプレーノズルの先端から該液状組成物を霧化して粒状とし滴下する方法などの方法により行なうことができる。また、水性液状組成物の水性媒体表面への注加は、所望の孔径のノズル口から細い液流として連続的に供給することによって行うことができる。液滴の大きさは、最終の粒状固定化物に望まれる粒径に応じて自由に変えることができるが、通常、滴下法では、直径が約0.1〜約5mm、好ましくは約0.5〜約4mmの範囲内の液滴として滴下させるのが、また注加法では、約0.5〜3cmの範囲内の液滴とするのが好都合である。
上記の如くして生成せしめた粒状ゲルは、そのまま水性媒体中に分散させた状態で、或いは水性媒体から分離した後、光重合又は熱重合させることにより、該粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂(a)を硬化せしめる。これにより粒状ゲルは水に実質的に不溶性で機械的強度の大きい酵素又は微生物菌体固定化用粒状成形物となる。
【0052】
上記の硬化を光重合によって行う場合、使用しうる活性光線の波長は、該粒状ゲル中に含まれる不飽和基含有樹脂(a)の種類等に応じて異なるが、一般には、約250〜約600nmの範囲内の波長の光を発する光源を照射に使用するのが有利である。そのような光源の例としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、蛍光灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、太陽光等が挙げられる。照射時間は光源の光の強さ、光源からの距離等に応じて変える必要があるが、一般には約0.5〜約10分間の範囲内とすることができる。
【0053】
また、不飽和基含有樹脂(a)の硬化を熱重合によって行う場合、粒状ゲルはレドックス系熱重合開始剤を含有していれば、室温で放置しておくだけでも熱重合が進行して必要な機械的強度が得られるまでに硬化されるが、必要に応じ、加熱硬化させてもよい。硬化温度は一般に0℃〜50℃、特に20℃〜40℃の範囲内が好適である。また、必要な機械的強度を得るためには、少なくとも熱硬化に10分〜30分の時間をかけることが望ましい。
【0054】
このように光重合及び/又は熱重合による硬化処理が終った粒状ゲルは水又は緩衝水溶液で洗浄し、そのままあるいは凍結乾燥して保存することができる。
【0055】
本発明の酵素又は微生物菌体固定化用担体は、表面の構造が特に微生物の付着に適しており、微生物を大量に付着させることができる。該担体に付着させうる微生物は、嫌気性微生物、好気性微生物のどちらでも用いることができ、微生物の種類としては、例えば、アスパルギルス属、ペニシリウム属、フザリウム属などのカビ類、サッカロミセス属、ファフィア属、カンジダ属などの酵母類;ザイモモナス属、シュードモナス属、ニトロソモナス属、ニトロバクター属、パラコッカス属、ビブリオ属、メタノサルシナ属、バチルス属などの細菌類等を挙げることができる。
【0056】
なお、上記した微生物は、不飽和基含有樹脂(a)の硬化温度が常温のような低温度であれば、予め(a)〜(d)の各成分からなる水性液状物に混合しておいて包括固定化してもよい。
【0057】
かくして得られる本発明の酵素又は微生物菌体固定化用担体は、微生物菌体の付着性に優れるため高い生物活性を有する。さらに該担体は高い強度を有するため、排水処理槽、バイオリアクター、発酵槽等の用途に適用することが可能である。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、以下「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0059】
不飽和基含有樹脂(a)の合成
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却管、窒素導入管、空気導入管及び滴下装置を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、数平均分子量約4,000のポリエチレングリコール2,000部とイソホロンジイソシアネート222部とを仕込み、80℃まで昇温した後、ラウリン酸ジブチルスズ0.3部を加え、2時間反応させた。反応液中に空気を吹き込みながら、アクリル酸2−ヒドロキシエチル116部にハイドロキノン1部を溶解させたものを10分かけて滴下し、80℃で3時間反応させた。その後40℃まで冷却した後に、脱イオン水5,458部を加えることで、1分子の両末端に重合性不飽和結合を有する固形分30%の不飽和基含有樹脂(a−1)を得た。なお、不飽和基含有樹脂(a−1)は不飽和基及びウレタン結合含有樹脂(a1)に該当する。
【0060】
また、20℃で、上記製造例1で得た不飽和基含有樹脂(a−1)100部(固形分30部)とアセトン100部を混合し、目視で混合液を観察したところ、混合液は透明であった。
【0061】
ポリウレタン樹脂水分散体(d)の合成
製造例2
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却管、窒素導入管、空気導入管及び滴下装置を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中で、「プラクセル210」(商品名、ダイセル化学工業社製、ポリカプロラクトンジオール、分子量1,000)200部、ジメチロールプロピオン酸13.4部、N−メチルピロリドン58.3部を攪拌しながら60℃に加熱し、全ての原料を溶解した。溶解を確認後、60℃に保持しながらヘキサメチレンジイソシアネート33.6部を30分かけて滴下し、そのまま1時間反応させた。その後80℃まで昇温し、80℃に保持しながら2時間反応させた後、イソホロンジイソシアネート44.4部を添加し、さらに2時間反応を行った。次いで40℃まで冷却しアセトン233部を加え、均一になるように攪拌した後、ジメチルエタノールアミン7.12部を2分かけて滴下し、10分間攪拌することで、均一にした。その後、脱イオン水566部を20分かけて滴下し、ジエチレントリアミン4.81部を脱イオン水48.1部に溶解させた水溶液を30分かけて滴下した。その後50℃まで昇温し、1時間反応させた後、減圧脱溶媒することで、固形分30%、平均粒子径88nmのポリウレタン樹脂水性分散体(d−1)を得た。
【0062】
なお、ポリウレタン樹脂水分散体におけるポリウレタン樹脂の平均粒子径は、「サブミクロン粒子アナライザーN5」(商品名、ベックマン・コールター社製)を使用して測定温度:20℃、希釈溶媒:脱イオン水の条件で測定した。
【0063】
製造例3〜12
製造例2において配合組成を下記の表1に示す通りとする以外は、製造例2と同様にしてポリウレタン樹脂水分散体(d−2)〜(d−11)を得た。
【0064】
なお、上記製造例2〜12で得たポリウレタン樹脂水分散体(d−1)〜(d−11)について、20℃で各ポリウレタン樹脂水分散体100部(固形分30部)とアセトン100部を混合し、目視で混合液を観察したところ、全ての混合液が白濁していた。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
(*1)「プラクセル220」:(商品名、ダイセル化学工業社製、ポリカプロラクトンジオール、分子量2000)
(*2)「PCDL T5651」:(商品名、旭化成社製、ポリカーボネートジオール、分子量1000)
(*3)「PCDL T5652」:(商品名、旭化成社製、ポリカーボネートジオール、分子量2000)
(*4)「PTMG1000」:(商品名、三菱化学社製、ポリテトラメチレングリコール、分子量1000)
(*5)「PTMG2000」:(商品名、三菱化学株式会社製、ポリテトラメチレングリコール、分子量2000)
(*6)「ブレンマーGLM」:(商品名、日油株式会社製、グリセリンモノメタクリレート、分子量160)
実施例1
製造例1で得た不飽和基含有樹脂(a−1)67部、3%アルギン酸ナトリウム水溶液20部、製造例1で得たウレタン樹脂水分散体(d−1)6.7部及び脱イオン水16.3部を加え、これに真比重0.03及び平均粒径20μmの中空ポリマー粒子「エクスパンセル551−WE」(商品名、日本フィライト社製)0.5部を均一に分散した後、光重合開始剤「ダロキュア1173」(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.3部を加えて十分に撹拌し、水性液状組成物を得た。得られた水性液状組成物を、1%の塩化カルシウム水溶液中に、注射針の先端から液面高さ約10cmより滴下して粒状化した後、高圧水銀灯を用いて紫外線を1分間照射することで酵素及び微生物固定化用担体(S−1)を得た。
【0068】
実施例2〜15、比較例1〜3
実施例1において配合組成を下記の表2に示す通りとする以外は、実施例1と同様にして酵素及び微生物固定化用担体(S−2)〜(S−18)を得た。
【0069】
担体性能評価試験
上記実施例1〜15及び比較例1〜3で得た担体(S−1)〜(S−18)のそれぞれについて、以下に示した試験方法で圧縮破壊強度と硝化速度を測定した。測定結果を下記表2に示す。
【0070】
(試験方法)
(1)圧縮破壊強度試験
各担体試料について50回ずつ、「Ez−Test」(商品名、島津製作所社製、小型卓上試験機)を用いて圧縮破壊強度を測定した。圧縮破壊強度は圧縮速度10mm/minで測定したときの破断応力値とした。破断応力(kgf/cm)は目視で破断の開始した時点を観察してそのときの圧縮荷重値(kgf)を読み取り、担体の平均粒子径より計算した断面積でその荷重値を除することにより算出した。
(2)硝化速度測定試験
各担体試料を、大過剰の脱イオン水中に室温で24時間浸漬し、十分に洗浄したものを硝化活性試験の試料として用いた。
【0071】
容積各1Lの反応槽に160mg/Lのアンモニア性窒素を含む無機塩培地及び硝化菌含有活性汚泥を満たし、各担体試料250mL(見かけ体積)をそれぞれ投入した後、アンモニア性窒素負荷が0.1kg/m/日、0.3kg/m/日、0.5kg/m/日、となるように順次培地の流入速度を変化させて連続処理試験を行った。各負荷での処理時間はそれぞれ15日間とした。試験期間を通じて培地のpHは7.5〜8.5の範囲、液温は18〜25℃の範囲に調節した。更に曝気を行うことにより培地の溶存酸素濃度を常に5mg/L以上になるようにした。0.5kg/m/日の負荷で7日間連続処理を行った時点で担体をサンプリングした。これを50mLの無機塩培地(連続処理に用いたのと同じもの)中に10gの担体を投入し、三角フラスコ中で120rpm、24時間往復振盪した後の、培地中のアンモニア性窒素の減少量から1gの担体当たりの硝化速度を計算して硝化活性を評価した。培地のアンモニア性窒素濃度の定量はインドフェノール法(比色法)を用いて行った。
【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【0075】
(*7)「A−1000」:(商品名、新中村化学工業社製、ポリエチレングリコールのジアクリレート化物、分子量1108)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、及び(d)ポリウレタン樹脂水分散体を含んでなる水性液状組成物を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体。
【請求項2】
不飽和基含有樹脂(a)が不飽和基及びウレタン結合を有する樹脂(a1)である請求項1に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
【請求項3】
重合開始剤(b)が光重合開始剤及び/又はレドックス系熱重合開始剤である請求項1又は2に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
【請求項4】
ポリウレタン樹脂水分散体(d)の平均粒子径が、30〜1,000nmの範囲内である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
【請求項5】
ポリウレタン樹脂水分散体(d)が、不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部に対して、1〜50質量部(固形分)の割合で使用される請求項1ないし4のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
【請求項6】
水性液状組成物が、さらに中空粒子を含有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。

【公開番号】特開2011−250764(P2011−250764A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128216(P2010−128216)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】