説明

酵素又は微生物固定化用担体

【課題】高い生物活性を有し、かつ初期強度が高く、耐久性及び耐アルカリ性に優れた酵素又は微生物固定化用担体を提供すること。
【解決手段】
(a)重合性不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、(d)無機粒子、及び(e)該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物を含んでなる水性液状組成物を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素又は微生物固定化用担体に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素又は微生物の固定化法としては、従来から、包括法、付着法、担体結合法等が行なわれているが、なかでも包括法、付着法は菌体固有の生理、代謝にもとづく反応を効率良く利用できるため、発酵、微生物変換、廃水処理等の分野で注目されている。上記酵素又は微生物を固定化するためには、通常、酵素又は微生物固定化用担体が利用されるが、該固定化用担体として多孔質無機担体を用いた場合、担体への微生物の付着性が悪く、さらに付着後担体上で増殖した菌体が剥離しやすいという欠点を有する。また、無機質担体は一般に水より比重が大きく、流動層型バイオリアクターの固定化物粒子として用いると流動操作が難しいという欠点を有する。
【0003】
一方、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の親水性樹脂、高酸価不飽和アクリル樹脂、不飽和ポリエチレングリコール等の親水性光硬化樹脂は、包括固定化法等に好適な固定化用担体であり、これらの樹脂水溶液や水分散液に微生物菌体を分散して粒状にゲル化させた固定化物粒子は含水ゲル化物のために比重が水の比重に近く、微生物の付着性や増殖性も良好であり、流動層型バイオリアクターの固定化物粒子として提案され、広く利用されている。(特許文献1参照)
しかしながら、これらの親水性樹脂を用いる固定化用担体は含水ゲル化物として使用されるため、機械的強度が弱く、リアクターの操業中に破損しやすく作業性が悪いという欠点がある。
【0004】
また、バイオリアクターは、汚水または廃水等を処理するにあたり種々の薬品を用いるため、上記固定化用担体は耐酸性、耐アルカリ性等の耐薬品性に優れることが望まれている。
【0005】
これらの課題に対し、例えば特許文献2には、水膨潤性熱可塑性樹脂と、該樹脂の製造時及び/又は成形時に添加されてなる無機フィラーを含み、かつ水膨潤時の比重が、特定の範囲に制御されていることを特徴とするバイオリアクター用担体が、微生物反応や酵素反応を効果的に行うことができる上、物理的強度が高く、かつ製造が容易であることが記載されている。しかしながら、該担体においても十分な強度が得られない場合があった。さらに、該担体は耐アルカリ性が不十分であった。
【0006】
また、特許文献3には、平均粒径0.1〜30mm、比重0.99〜1.10の無機質及び/又は有機質粉粒状体物を微生物の付着性及び増殖性にすぐれた親水性樹脂で被覆してなる微生物固定化用担体が、比重を容易に調製でき、機械的強度が向上することが記載されている。しかしながら、該担体においても十分な強度が得られない場合があった。さらに、該担体は耐アルカリ性が不十分であった。
【0007】
また、特許文献4には、合成高分子からなる固定化担体、少なくとも一種の多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、コロイダルシリカ、及び酵素又は微生物菌体を含んでなる組成物を粒状にゲル化させてなることを特徴とする酵素又は微生物菌体の粒状固定化成形物が、機械的強度を向上させることが記載されている。しかしながら、該担体においても十分な強度が得られない場合があった。さらに、該担体は耐アルカリ性が不十分であった。
【0008】
また、特許文献5には、ポリイソシアネート化合物(a)とポリオール化合物(b)を反応させて得られる1分子中に少なくとも2個の末端イソシアネート基を有する親水性ポリウレタンプレポリマー(c)とポリイソシアネート化合物(a)との混合物に水を加えて反応させてなるポリウレタンフォームであって、前記ポリイソシアネート化合物(a)および/または(a)の少なくとも一部が、ポリメリック成分を実質上含まない精製ジフェニルメタンジイソシアネートであることを特徴とする水膨潤性ポリウレタンフォーム及び該ポリウレタンフォームを用いたバイオリアクター用担体が、アルカリ水溶液に対して耐性を有することが記載されている。しかしながら、該担体においても耐アルカリ性は十分ではなく、強度も満足できるものではなかった。
【0009】
また、上記流動層型バイオリアクターでは、比重調整用の無機質系中空ビーズ(中空ガラスビーズ又は中空セライト)や中空ポリマー粒子を含有した低比重の担体が、反応槽内に部分的に滞留することなく十分に流動できるため、槽内部において担体を流動させるために行なわれる攪拌や曝気のエネルギーを最小限に抑えて運用コストを削減できることが記載されている(特許文献6、特許文献7参照)。しかしながら、これらの親水性樹脂を用いる固定化用担体は含水ゲル化物として使用されるため、機械的強度が弱く、リアクターの操業中に破損しやすく作業性が悪いという欠点があり、また無機質系中空ビーズを担体に含有させる方法では担体の圧縮破壊強度等の物性低下が非常に大きく、これを改善し得る中空ポリマー粒子を用いた場合でもかかる担体の強度向上には限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭62−19837号公報
【特許文献2】特開2002−52394号公報
【特許文献3】特開平7−39376号公報
【特許文献4】特開昭62−215389号公報
【特許文献5】特開2004−359950号公報
【特許文献6】特開平10−168105号公報
【特許文献7】特開2002−265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高い生物活性を有し、かつ初期強度が高く、耐久性及び耐アルカリ性に優れた酵素又は微生物固定化用担体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、不飽和基含有樹脂、重合開始剤、及び、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、を含んでなる水性液状組成物を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合又は/及び熱重合して該粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂を硬化させることによって得られる酵素又は微生物固定化担体において、(i)上記水性液状組成物が、無機粒子並びに該無機粒子と反応し得る基及び不飽和基を有する化合物を含有する場合、もしくは、(ii)該水性液状組成物が、無機粒子と、該無機粒子と反応し得る基及び不飽和基を有する化合物とを反応せしめて得られる不飽和基含有無機粒子を含有する場合に担体としての生物活性を低下させることなく、担体の初期強度、耐久性及び耐アルカリ性を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の酵素又は微生物固定化用担体を提供するものである。
1.(a)重合性不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、(d)無機粒子、並びに(e)該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物を含んでなる水性液状組成物(i)を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体。
2.(a)重合性不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、ならびに、(f)無機粒子(d)と該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)とを反応せしめて得られる重合性不飽和基含有無機粒子を含んでなる水性液状組成物(ii)を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体。
3.重合開始剤(b)が光重合開始剤及び/又はレドックス系熱重合開始剤である上記項1又は2記載の酵素又は微生物固定化用担体。
4.無機粒子(d)がコロイダルシリカである上記項1ないし3のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
5.化合物(e)が、1分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイル基及び少なくとも1個以上のアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤である上記項1ないし4のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
6.水性液状組成物が、さらに中空粒子を含有する上記項1ないし5のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い生物活性を有し、かつ初期強度が高く、耐久性及び耐アルカリ性に優れた酵素又は微生物固定化担体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の酵素または微生物固定化用担体は以下に説明する方法(I)又は方法(II)によって製造することができる。
【0016】
方法(I)
本発明の酵素または微生物固定化用担体は、(a)重合性不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、(d)無機粒子、及び(e)該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物を含んでなる水性液状組成物(i)を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造することができる。
【0017】
重合性不飽和基含有樹脂(a)
本発明において用いられる重合性不飽和基含有樹脂(a)としては、1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する樹脂であって、一般に300〜30,000、好ましくは500〜20,000の範囲内の数平均分子量を有し、水性媒体中に均一に分散するのに充分なイオン性又は非イオン性の親水性基、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、エーテル結合等を含む親水性の不飽和基含有樹脂が好適に使用される。
【0018】
ここで、本明細書において数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的にはゲルパーミエーションクロマトグラフとして「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製、)を使用し、カラムとして「TSKgel G4000HXL」を1本、「TSKgel G3000HXL」を2本、及び「TSKgel G2000HXL」を1本(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0019】
重合性不飽和基含有樹脂(a)としては、包括固定化用の固定化担体として既に知られているものを用いることができる(例えば、特公昭55−40号公報、特公昭55−20676号公報、特公昭62−19837号公報等参照)。代表的なものとしては以下に記載するものを挙げることができる。
【0020】
(i)ポリアルキレングリコールの両末端に光重合可能な重合性不飽和基を有する化合物:例えば、
(i−1)分子量400〜6,000のポリエチレングリコール1モルの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸2モルでエステル化したポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
(i−2)分子量200〜4,000のポリプロピレングリコール1モルの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸2モルでエステル化したポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
(i−3)分子量400〜6,000のポリエチレングリコール1モルの両末端水酸基をトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物2モルでウレタン化し、次いで(メタ)アクリル酸2−ヒ
ドロキシエチル等の不飽和モノヒドロキシエチル化合物2モルを付加した不飽和ポリエチレングリコールウレタン化物;
(i−4)分子量200〜4,000のポリプロピレングリコール1モルの両末端水酸基をトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物2モルでウレタン化し、次いで(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の不飽和モノヒドロキシ化合物2モルを付加した不飽和ポリプロピレングリコールウレタン化物、など;
(ii)高酸価不飽和ポリエステル樹脂:例えば、不飽和多価カルボン酸を含む多価カルボン酸成分と多価アルコールとのエステル化により得られる酸価が40〜200の不飽和ポリエステルの塩類など;
(iii)高酸価不飽和エポキシ樹脂:例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸化合物との付加反応物に残存するヒドロキシル基に酸無水物を付加して得られる酸価40〜200の不飽和エポキシ樹脂など;
(iv)アニオン性不飽和アクリル樹脂:例えば、酸基含有重合性不飽和化合物及び(メタ)アクリル酸エステルを必須モノマー成分とするモノマー混合物を共重合させて得られるカルボキシル基、リン酸基及び/又はスルホン酸基を含有する共重合体に光重合可能な重合性不飽和基を導入した樹脂など;
(v)不飽和ポリアミド:例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどのジイソシアネートとアクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのエチレン性不飽和ヒドロキシ化合物とのイソシアネート基含有付加物をゼラチンなどの水溶性ポリアミドに付加反応させた不飽和ポリアミドなど。
【0021】
以上に例示した如き重合性不飽和基含有樹脂(a)はそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0022】
これらの重合性不飽和基含有樹脂(a)のうち、本発明において特に有利に使用しうるものは、前記(i)に該当するポリアルキレングリコールの両末端に光重合可能な重合性不飽和基を有する化合物であり、代表的なものとしては、「ENT−1000」、「ENT−2000」、「ENT−4000」、「ENTG−2000」、「ENTG−3800」(商品名、関西ペイント社製)等を挙げることができる。
【0023】
重合開始剤(b)
本発明において用いられる重合開始剤(b)としては、光重合開始剤及び/又はレドックス系熱重合開始剤を挙げることができる。
【0024】
光重合開始剤としては、エチレン性不飽和化合物の重合に有用なものとして従来から知られているものを特に制限なく使用することができる。具体的には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、O−ベンゾイル安息香酸メチル、ヒドロキシベンゾフェノン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロ)−S−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0025】
また、これらの光重合開始剤による光重合反応を促進させるために、光増感促進剤を該光重合開始剤と併用してもよい。併用し得る光増感促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、ミヒラーケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の3級アミン系;トリフェニルホスフィン等のアルキルホスフィン系;β−チオジグリコール等のチオエーテル系などが挙げられる。これらの光増感促進剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0026】
また前記レドックス系熱重合開始剤としては、従来から既知のものを使用することができ、例えば、−10℃〜50℃程度の比較的低温でラジカル重合を行ない得る、酸化剤と還元剤の組み合わせからなる重合開始剤が好適に使用される。
【0027】
上記酸化剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルパーベンゾエート、クメンヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物類;ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウムなどのペルオキソ二硫酸塩類;過酸化水素等が挙げられる。これらの酸化剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0028】
また、前記還元剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸水素塩類;硫酸第一鉄、塩化第一鉄などの二価の鉄塩類;N,N−ジメチルアニリン、フェニルモルホリンなどのアミン類;ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸銅などのナフテン酸金属塩類等を挙げることができる。これらの還元剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0029】
これらのレドックス系熱重合開始剤のうち、本発明において特に有利に使用しうるものは、酸化剤がペルオキソ二硫酸塩類又は過酸化水素からなり、還元剤が亜硫酸水素塩類又は二価の鉄塩からなる組み合わせのものである。
【0030】
アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)
本発明において用いられるアルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)は、水溶性であり、水性媒体中でアルカリ金属イオン又は多価金属イオンと接触したときに水に不溶性又は難溶性のゲルに変化する能力のある高分子多糖類である。該高分子多糖類としては、一般に約3,000〜約2,000,000の分子量を有し、また、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンと接触させる前の水溶性の状態で通常少なくとも約10g/L(25℃)の溶解度を示すものが好適に使用される。
【0031】
前記水溶性高分子多糖類(c)の具体例としては、アルギン酸のアルカリ金属塩、カラギーナン等が包含される。
【0032】
これら水溶性高分子多糖類(c)は水性媒体中に溶解した状態で、アルギン酸のアルカリ金属塩の場合は、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;或いはアルミニウムイオン、セリウムイオン、ニッケルイオン等の他の多価金属イオン;のうちの少なくとも1種の多価金属イオンと接触するとゲル化しうる。また、カラギーナンの場合は、カリウムイオンまたはナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンと接触するとゲル化しうる。ゲル化が起こるアルカリ金属イオンまたは多価金属イオンの濃度は水溶性高分子多糖類の種類等により異なるが、一般には0.01〜5mol/Lの範囲である。これらの水溶性高分子多糖類は単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0033】
無機粒子(d)
本発明において用いられる無機粒子(d)としては、例えば金属酸化物(シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、チタニア、ジルコニア、アンチモン酸亜鉛などの金属アルコキサイド)の粒子を好適に使用することができる。なかでも、担体強度向上の観点から、シリカ粒子及び/又はアルミナ粒子が好ましく、シリカ粒子がさらに好ましい。該シリカ粒子としては、特に制限されないが具体的には例えば乾式シリカ、湿式シリカ、シリカゲル、カルシウムイオン交換シリカ微粒子、コロイダルシリカ等を使用することができる。
【0034】
また、上記シリカ粒子は、表面が無処理のシリカ粒子であっても、表面が有機物等で処理されたシリカ粒子であってもよい。
【0035】
上記シリカ微粒子の平均粒子径は、10〜300nmであり、好ましくは10〜100nmの範囲であることが好適である。
【0036】
尚、本発明における平均粒子径は、動的光散乱法によって測定される体積基準粒度分布のメジアン径(d50)であって、例えばナノトラック粒度分布測定装置(日機装社製)を用いて測定することができる。
【0037】
上記シリカ粒子としては粒径の観点からコロイダルシリカを特に好適に使用することができる。
【0038】
前記コロイダルシリカは無水ケイ酸の超微粒子を溶媒に分散した分散液である。
【0039】
上記溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等のモノマー類及びこれらの混合物などが挙げられる。なかでも、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が製造の容易さの点から好ましい。
【0040】
上記コロイダルシリカの状態としては一次粒子、一次凝集体(アグリゲート)及び二次凝集体(アグロマレート)等が挙げられるが、一次粒子に近い方が形成される固定化用担体の強度向上の観点から好ましい。
【0041】
上記コロイダルシリカの市販品としては、例えば「スノーテックス」シリ−ズ(日産化学工業社製)、「オスカル」(触媒化学工業社製)、「AEROSIL」シリーズ(日本アエロジル社製)、「シルデックス」シリーズ(旭硝子社製)、「E220A」、「E220」(いずれも日本シリカ工業社製)、「SYLYSIA470」(富士シリシア化学社製)「オルガノゾル」(日産化学社製)などが挙げられる。
【0042】
これらのコロイダルシリカのうち、本発明において特に有利に使用しうるものは、水を分散媒とし、無水珪酸の超微粒子を水中に分散させたコロイド溶液
である。例えば「スノーテックス」シリ−ズ(日産化学工業社製)が挙げられる。
【0043】
また、前記アルミナ粒子としては、コロイダルアルミナなどを挙げることができる。
【0044】
コロイダルアルミナは結晶性アルミナの超微粒子を溶媒に分散した分散液である。コロイダルアルミナとしては、アルミナ粒子の粒子径は、10〜300nm程度であり、10〜100nmの範囲であるものを好適に使用することができる。
【0045】
上記溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等のモノマー類及びこれらの混合物などが挙げられる。なかでも、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が製造の容易さの点から好ましい。
【0046】
このようなコロイダルアルミナとしては、市販品では、例えば「アルミナゾル」シリ−ズ(日産化学工業社製)、「アルミナゾル」シリーズ(川研ファインケミカル社製)などが挙げられる。
【0047】
また、前記ジルコニアとしては「ナノユース」シリーズ(日産化学工業社製)、アンチモン酸亜鉛としては「セルナックス」(日産化学工業社製)、酸化亜鉛としては「Zinc Ox」(ハクスイテック社製)等が挙げられる。
【0048】
無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)
無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)において、無機粒子(d)と反応し得る官能基としては、例えばアルコキシシリル基、ハロシリル基等が挙げられ、なかでもアルコキシシリル基が好ましい。
【0049】
また、上記重合性不飽和基としては、例えばメタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、スチリル基、ビニル基等が挙げられる。なかでもメタクリロイルオキシ基及び/又はアクリロイルオキシ基が好ましい。
【0050】
上記無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)としては、具体的には例えば以下に記載するものを挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0051】
(i)3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤、市販品としては例えば「KBM−5103」(商品名、信越シリコーン社製、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる;
(ii)3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤、市販品としては例えば「KBM−503」(商品名、信越シリコーン社製、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)、「KBE−503」(商品名、信越シリコーン社製、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン)、「KBM−502」(商品名、信越シリコーン社製、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン)、「KBE−502」(商品名、信越シリコーン社製、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン)等が挙げられる;
(iii)p−スチリルトリメトキシシランなどのスチリル基含有シランカップリング剤、市販品としては例えば「KBM−1403」(商品名、信越シリコーン社製、p−スチリルトリメトキシシラン)等が挙げられる;
(iv)ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基含有シランカップリング剤、市販品としては例えば「KBM−1003」(商品名、信越シリコーン社製、ビニルトリメトキシシラン)、「KBE−1003」(商品名、信越シリコーン社製、ビニルトリエトキシシラン)等が挙げられる。
【0052】
なかでも、上記化合物(e)がアクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤及び/又はメタクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤であることが好ましく、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及び/又は3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランであることがさらに好ましい。
【0053】
水性液状組成物(i)
本発明において、前記重合性不飽和基含有樹脂(a)、重合開始剤(b)、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)、無機粒子(d)、及び該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)を含んでなる水性液状組成物中の各成分(a)〜(e)の配合割合は厳密に制限されるものではなく、各成分の種類等に応じて広範にわたって変えることができるが、得られる固定化用担体の初期強度、耐久性及び耐アルカリ性の観点から、通常、重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として、各成分(b)〜(e)がそれぞれ固形分で下記の範囲内であることが好適である。
【0054】
(b)重合開始剤:0.1〜10質量部、好ましくは、0.3〜5質量部、
(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類:0.5〜15質量部、好ましくは、1〜8質量部、
(d)無機粒子:2.5〜35質量部、好ましくは、4〜30質量部、
(e)無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物:0.5〜10質量部、好ましくは、1〜7.5質量部。
【0055】
また、上記化合物(e)の含有量が上記無機粒子(d)100質量部を基準として、10〜50質量部、好ましくは、15〜40、さらに好ましくは、20〜35質量部の範囲内であることが好適である。
【0056】
本発明において上記重合性不飽和基含有樹脂(a)、重合開始剤(b)、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)、無機粒子(d)、及び該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)のみを固形分として含む水性液状組成物(i)は、一般に水とほぼ同じ1.01〜1.03の範囲内の比重を有するが、該水性液状組成物(i)中に顔料、中空粒子等の比重調整材を添加することで所望の比重に調整することができる。比重を高くしたい場合には、ガラスビーズ、タルク、マイカ、バリタ等の比重が1以上の比重調整材を前記重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として0.1〜50質量部の割合で添加することによって粒状成形物の比重が1.03〜1.25の範囲になるように調整することができる。一方、比重を低くしたい場合には、中空ガラスビーズ、中空セライト、中空ポリマー等の比重が1以下の中空粒子を比重調整材として重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として0.1〜30質量部の割合で添加することによって粒状成形物の比重が0.90〜1.01の範囲になるように調整することができる。
【0057】
一般に酵素又は微生物固定化用担体に中空粒子を含有せしめた場合、形成される酵素又は微生物固定化用担体は流動性に優れる反面、強度は低い。一方、本発明に係る酵素又は微生物固定化用担体は該中空粒子を含有する場合においても高い強度を有する。このため、本発明に係る酵素又は微生物固定化用担体は、該担体が中空粒子を含有する場合に特に有用である。
【0058】
また、上記水性液状組成物(i)は、さらに下記の如き重合性不飽和基を有さないシランカップリング剤を含有することができる。
【0059】
(v)2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシジル基含有シランカップリング剤、市販品としては例えば「KBM−403」(商品名、信越シリコーン社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、「KBE−402」(商品名、信越シリコーン社製、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン)、等が挙げられる;
(vi)N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−トリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、市販品としては例えば「KBM−602」(商品名、信越シリコーン社製、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)等が挙げられる;
(vii)3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤、市販品としては例えば「KBM−803」(商品名、信越シリコーン社製、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる;
(viii)3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド基含有シランカップリング剤、市販品としては例えば「KBE−585」(商品名、信越シリコーン社製、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン)等が挙げられる;
(ix)3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロプロピル基含有シランカップリング剤、市販品としては例えば「KBM−703」(商品名、信越シリコーン社製、3−クロロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる;
(x)ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィド基含有シランカップリング剤、市販品としては例えば「KBE−846」(商品名、信越シリコーン社製、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)等が挙げられる;
(xi)3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤、市販品としては例えば「KBE−9007」(商品名、信越シリコーン社製、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)等が挙げられる;
以上に述べた(a)〜(e)の各成分ならびに必要に応じて添加される比重調整材及びシランカップリング剤等を水性媒体中に溶解ないし分散させることにより、水性液状組成物が調製される。この液状組成物の固形分濃度は一般に5〜30質量%の範囲内が適当である。
【0060】
なお、重合開始剤としてレドックス系熱重合開始剤を使用する場合は重合開始剤(b)として酸化剤及び還元剤を同時に水性液状組成物中に含有させてもよいが、水性液状組成物中に含有させるものを酸化剤又は還元剤のいずれか一方とし、もう一方を金属イオンを含有する水性媒体中に、例えば0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%の濃度で含有させるようにしてもよい。
【0061】
酵素又は微生物固定化用担体の製造方法
上記のようにして調製される水性液状組成物(i)は、次いで、前述した如き種類の金属イオンを含有する水性媒体中に滴下するか、又は平均粒子径が5mm以上の粒状物を得る場合には、該水性媒体表面上に所定の時間連続的に注加して液滴を所望の粒径になるまで生長させた後、その液滴を沈降させることにより、該液状組成物が粒状でゲル化せしめられる。
【0062】
金属イオンを含有する水性媒体中への水性液状組成物の滴下は、例えば、注射器の先端から該液状組成物を滴下する方法、遠心力を利用して該液状組成物を粒状に飛散させる方法、スプレーノズルの先端から該液状組成物を霧化して粒状とし滴下する方法などの方法により行うことができる。また、水性液状組成物の水性媒体表面への注加は、所望の孔径のノズル口から細い液流として連続的に供給することによって行うことができる。液滴の大きさは、最終の粒状固定化物に望まれる粒径に応じて自由に変えることができるが、通常、滴下法では、直径が約0.1〜約5mm、好ましくは約0.5〜約4mmの範囲内の液滴として滴下させるのが、また注加法では、約0.5〜3cmの範囲内の液滴とするのが好都合である。
上記の如くして生成せしめた粒状ゲルは、そのまま水性媒体中に分散させた状態で、或いは水性媒体から分離した後、光重合又は熱重合させることにより、該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂(a)を硬化せしめる。これにより粒状ゲルは水に実質的に不溶性で機械的強度の大きい酵素又は微生物菌体固定化用粒状成形物を得ることができる。
【0063】
上記の硬化を光重合によって行う場合、使用しうる活性光線の波長は、該粒状ゲル中に含まれる重合性不飽和基含有樹脂(a)の種類等に応じて異なるが、一般には、約250〜約600nmの範囲内の波長の光を発する光源を照射に使用するのが有利である。そのような光源の例としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、蛍光灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、太陽光等が挙げられる。照射時間は光源の光の強さ、光源からの距離等に応じて変える必要があるが、一般には約0.5〜約10分間の範囲内とすることができる。
【0064】
また、重合性不飽和基含有樹脂(a)の硬化を熱重合によって行う場合、粒状ゲルはレドックス系熱重合開始剤を含有していれば、室温で放置しておくだけでも熱重合が進行して必要な機械的強度が得られるまでに硬化されるが、必要に応じ、加熱硬化させてもよい。硬化温度は一般に0℃〜50℃、特に20℃〜40℃の範囲内が好適である。また、必要な機械的強度を得るためには、少なくとも熱硬化に10分〜30分の時間をかけることが望ましい。
【0065】
このように光重合及び/又は熱重合による硬化処理が終った粒状ゲルは水又は緩衝水溶液で洗浄し、そのままあるいは凍結乾燥して保存することができる。
【0066】
本発明の酵素又は微生物菌体固定化用担体は、表面の構造が特に微生物の付着に適しており、微生物を大量に付着させることができる。該担体に付着させうる微生物は、嫌気性微生物、好気性微生物のどちらでも用いることができ、微生物の種類としては、例えば、アスパルギルス属、ペニシリウム属、フザリウム属などのカビ類、サッカロミセス属、ファフィア属、カンジダ属などの酵母類;ザイモモナス属、シュードモナス属、ニトロソモナス属、ニトロバクター属、パラコッカス属、ビブリオ属、メタノサルシナ属、バチルス属などの細菌類等を挙げることができる。
【0067】
なお、前記重合性不飽和基含有樹脂(a)の硬化温度が常温のような低温度の場合、上記微生物を、予め上記水性液状組成物(i)中に混合し、その後該水性液状組成物(i)を粒状にゲル化させることにより、該微生物を包括固定化してもよい。
【0068】
かくして得られる本発明の酵素又は微生物菌体固定化用担体は、微生物菌体の付着性に優れるため高い生物活性を有する。さらに該担体は高い初期強度、耐久性を有するため、廃水処理槽、バイオリアクター、発酵槽等の用途に適用することが可能である。
【0069】
方法(II)
また、本発明の酵素または微生物固定化用担体は、前記(a)重合性不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類と、以下に説明する(f)無機粒子(d)と該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)とを反応せしめて得られる重合性不飽和基含有無機粒子を含んでなる水性液状組成物(ii)を、前記アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造することができる。
【0070】
上記方法(II)において、重合性不飽和基含有樹脂(a)、重合開始剤(b)、及びアルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)は、前記方法(I)に記載したものを使用することができる。
【0071】
重合性不飽和基含有無機粒子(f)
本発明において用いられる重合性不飽和基含有無機粒子(f)は、無機粒子(d)と、該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)、とを反応せしめて得られるものである。
【0072】
上記無機粒子(d)及び、該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)は、前記方法(I)に記載したものを使用することができる。
【0073】
上記無機粒子(d)に該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)とを反応させる方法は、特に限定されないが、例えば、[i]水を含む有機溶剤の存在下に無機粒子(d)と該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)とを混合し、加水分解縮合を行う方法、[ii]水を含む有機溶剤の存在下で無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)を加水分解した後、化合物(e)の加水分解物と無機粒子(d)とを縮合させる方法が挙げられる。ここで、これら製造方法において使用する水は、原材料に含まれる水、例えば、無機粒子(d)がコロイダルシリカの場合には、コロイダルシリカ微粒子の分散媒である水であってもよい。
【0074】
上記無機粒子(d)と、該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)とを混合させる際の混合方法としては、攪拌羽根を備えた攪拌槽(配合槽)に、上記無機粒子(d)及び該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)を添加し高速攪拌することが挙げられる。攪拌装置としては、剪断力と溶液を全体混合できる複数の攪拌羽根、例えば、プロペラ、タービン、ディスパー、ホモジナイザーなどを備えた攪拌装置が望ましく、特に好ましくはディスパー、ホモジナイザー等が挙げられる。攪拌速度と攪拌時間としては、無機粒子(d)および化合物(e)の混合溶液が水相と溶剤相が相分離せずに均一になる限り特に制限されないが、攪拌速度としては、好ましくは攪拌羽根の周速が50〜10000m/分、さらに好ましくは100〜8000m/分である。
【0075】
上記重合性不飽和基含有無機粒子(f)を製造する際の無機粒子(d)、及び、該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)の配合割合は、固定化担体強度向上の観点から、無機粒子(d)の固形分100質量部を基準として該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)の固形分が10〜50質量部、好ましくは、15〜40、さらに好ましくは、20〜35質量部の範囲内であることが好適である。
【0076】
また、上記重合性不飽和基含有無機粒子(f)において、固定化担体強度向上の観点から無機粒子(d)がシリカ、好ましくはコロイダルシリカであることが好適である。
【0077】
また、上記無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)が前記アクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤(i)、メタクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤(ii)、スチリル基含有シランカップリング剤(iii)、及びビニル基含有シランカップリング剤(iv)からなる群より選ばれる少なくとも一種のシランカップリング剤であることが好ましく、(i)及び/又は(ii)であることが更に好ましく、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及び/又は3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランであることがさらに好ましい。
【0078】
水性液状組成物(ii)
本発明において前記重合性不飽和基含有樹脂(a)、重合開始剤(b)、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)、及び重合性不飽和基含有無機粒子(f)を含んでなる水性液状組成物(ii)中の各成分の配合割合は厳密に制限されるものではなく、各成分の種類等に応じて広範にわたって変えることができるが、得られる固定化用担体の初期強度、耐久性及び耐アルカリ性の観点から、通常、重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として、各成分(b)、(c)及び(f)がそれぞれ固形分で下記の範囲内であることが好適である。
【0079】
(b)重合開始剤:0.1〜10質量部、好ましくは、0.3〜5質量部、
(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類:0.5〜15質量部、好ましくは、1〜8質量部、
(f)無機粒子(d)の表面に該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)を反応させて得られる被覆無機粒子:2.5〜50質量部、好ましくは、5.0〜37.5質量部。
【0080】
本発明において上記重合性不飽和基含有樹脂(a)、重合開始剤(b)、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)、及び、重合性不飽和基含有無機粒子(f)のみを固形分として含む水性液状組成物(ii)は、一般に水とほぼ同じ1.01〜1.03の範囲内の比重を有するが、該水性液状組成物中に顔料、中空粒子等の比重調整材を添加することで所望の比重に調整することができる。比重を高くしたい場合には、ガラスビーズ、タルク、マイカ、バリタ等の比重が1以上の比重調整材を前記重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として0.1〜50質量部の割合で添加することによって粒状成形物の比重が1.03〜1.25の範囲になるように調整することができる。一方、比重を低くしたい場合には、中空ガラスビーズ、中空セライト、中空ポリマー等の比重が1以下の中空粒子を比重調整材として重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として0.1〜30質量部の割合で添加することによって粒状成形物の比重が0.90〜1.01の範囲になるように調整することができる。
【0081】
一般に酵素又は微生物固定化用担体に中空粒子を含有せしめた場合、形成される酵素又は微生物固定化用担体は流動性に優れる反面、強度は低い。一方、本発明に係る酵素又は微生物固定化用担体は該中空粒子を含有する場合においても高い強度を有する。このため、本発明に係る酵素又は微生物固定化用担体は、該担体が中空粒子を含有する場合に特に有用である。
【0082】
以上に述べた(a)〜(c)および(f)の各成分及び必要に応じて添加される比重調整材を水性媒体中に溶解ないし分散させることにより、水性液状組成物が調製される。この液状組成物の固形分濃度は一般に5〜30質量%の範囲内が適当である。
【0083】
なお、重合開始剤としてレドックス系熱重合開始剤を使用する場合は重合開始剤(b)として酸化剤及び還元剤を同時に水性液状組成物中に含有させてもよいが、水性液状組成物中に含有させるものを酸化剤又は還元剤のいずれか一方とし、もう一方を金属イオンを含有する水性媒体中に、例えば0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%の濃度で含有させるようにしてもよい。
【0084】
酵素又は微生物固定化用担体の製造方法
上記のようにして調製される水性液状組成物(ii)は、前記の方法でゲル化せしめられ、粒状ゲルは水に実質的に不溶性で機械的強度の大きい酵素又は微生物菌体固定化用粒状成形物となる。
【0085】
上記粒状ゲルは水又は緩衝水溶液で洗浄し、そのままあるいは凍結乾燥して保存することができる。
【0086】
本発明の酵素又は微生物菌体固定化用担体は、表面の構造が特に微生物の付着に適しており、微生物を大量に付着させることができる。該担体に付着させうる微生物は、前記の同様である。
【0087】
なお、前記重合性不飽和基含有樹脂(a)の硬化温度が常温のような低温度の場合、上記微生物を、予め上記水性液状組成物(ii)中に混合し、その後該水性液状組成物(ii)を粒状にゲル化させることにより、該微生物を包括固定化してもよい。
【0088】
かくして得られる本発明の酵素又は微生物菌体固定化用担体は、粒状固定化物の強度が高く、微生物菌体の付着性に優れたものを得ることができ、バイオリアクター、発酵槽等の用途に適用することも可能である。
【0089】
本発明によって得られる酵素又は微生物固定化用担体が、高い初期強度を有する理由としては、上記化合物(e)が有機成分と無機成分との仲立ちをしているかのように働くため重合性不飽和基含有樹脂(a)と該無機粒子(d)との間に相互作用が生じ、該担体が重合性不飽和基含有樹脂(a)を連続相とし、該連続相中に無機粒子(d)が点在したことに起因するものと推察される。すなわち、連続相である重合性不飽和基含有樹脂(a)中に硬い無機粒子が多数導入されたことで、樹脂自体の運動性が抑制されるためと推察される。
【0090】
また、特に上記化合物(e)が1分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイル基及び少なくとも1個以上のアルコキシシリル基を有するものである場合には、該化合物(e)が重合性不飽和基含有樹脂(a)と反応することによって無機粒子近傍領域の架橋密度が高くなるため、初期強度、耐久性及び耐アルカリ性に優れた担体ガ形成されることが推察される。
【実施例】
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、以下「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0092】
重合性不飽和基含有無機粒子(f)の作製
製造例1
コロイダルシリカ「スノーテックスO」(商品名、日産化学工業社製、粒径10〜20nm、20%SiO水溶液)19.05部にシランカップリング剤「KBM503」(商品名、信越シリコーン社製、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、固形分100%)0.95部を添加して均一になるように攪拌(600rpm、20分程度)し、重合性不飽和基含有無機粒子(f−1)を得た。
【0093】
製造例2
コロイダルシリカ「スノーテックスO」4.7部にシランカップリング剤「KBM503」(商品名、信越シリコーン社製、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、固形分100%)0.3部を添加して均一になるように攪拌(600rpm、20分程度)し、重合性不飽和基含有無機粒子(f−2)を得た。
【0094】
製造例3
コロイダルシリカ「スノーテックスO」19.05部にシランカップリング剤「KBM5103」(商品名、信越シリコーン社製、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、固形分100%)0.95部を添加して均一になるように攪拌(600rpm、20分程度)し、重合性不飽和基含有無機粒子(f−3)を得た。た。
【0095】
製造例4
コロイダルシリカ「スノーテックスO」19.05部にシランカップリング剤「KBM403」(商品名、信越シリコーン社製、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、固形分100%)0.95部を添加して均一になるように攪拌(600rpm、20分程度)し、重合性不飽和基含有無機粒子(f−4)を得た。
【0096】
酵素又は微生物固定化用担体の作製
実施例1
親水性光硬化性樹脂「ENTG−3800」(関西ペイント社製、商品名、固形分40%)50部に、コロイダルシリカ「スノーテックスO」(商品名、日産化学工業社製、粒径10〜20nm、20%SiO水溶液)19.05部、シランカップリング剤「KBM503」0.95部、及び2%アルギン酸ナトリウム水溶液30部を加え、均一に分散して水性液状組成物を得た。得られた水性液状組成物を、4%塩化カルシウムを含む水溶液中に直径2mmの注射針の先端から液面高さ約10cmより滴下した後、高圧水銀灯を用いて紫外線を10秒間照射することで固定化用担体を得た。
【0097】
実施例2〜10、比較例1〜7
実施例1において配合組成を下記の表1に示す通りとする以外は、実施例1と同様にして酵素及び微生物固定化用担体を得た。表1の数値は固形分で表記した。
【0098】
尚、表1において(*1)〜(*3)は下記の通りである。
(*1)「ダロキュア1173」:(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ社製、
光重合開始剤)
(*2)「KBM−403」:(商品名、信越シリコーン社製、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)
(*3)「エクスパンセル551−WE」(商品名、日本フィライト社製、真比重0.03及び平均粒径20μmの中空ポリマー粒子)
担体性能評価試験
上記実施例1〜10及び比較例1〜7で得た担体のそれぞれについて、以下に示した試験方法で圧縮破壊強度と硝化速度を測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0099】
(試験方法)
(1)圧縮破壊強度試験
各担体試料について50回ずつ、「Ez−Test」(商品名、島津製作所社製、小型卓上試験機)を用いて圧縮破壊強度を測定した。圧縮破壊強度は圧縮速度10mm/minで測定したときの破断応力値とした。破断応力(kgf/cm)は目視で破断の開始した時点を観察してそのときの圧縮荷重値(kgf)を読み取り、担体の平均粒子径より計算した断面積でその荷重値を除することにより算出した。
【0100】
(2)耐久性試験
各担体試料を、大過剰の脱イオン水中に室温で24時間浸漬し、十分に洗浄したものを硝化活性試験の試料として用いた。
【0101】
容積各1Lの反応槽に160mg/Lのアンモニア性窒素を含む無機塩培地及び硝化菌含有活性汚泥を満たし、各担体試料250mL(見かけ体積)をそれぞれ投入した後、アンモニア性窒素負荷が0.1kg/m/日、0.3kg/m/日、0.5kg/m/日、となるように順次培地の流入速度を変化させて連続処理試験を行った。各負荷での処理時間はそれぞれ15日間とした。試験期間を通じて培地のpHは7.0〜8.0の範囲、液温は18〜25℃の範囲に調節した。更に曝気を行うことにより培地の溶存酸素濃度を常に5mg/L以上になるようにした。0.5kg/m/日のアンモニア性窒素負荷で90日間連続処理を行った時点で担体をサンプリングし圧縮破壊強度を測定した。
【0102】
(3)耐アルカリ性試験
室温で0.01N水酸化カリウム水溶液に担体を浸漬し、30日後の圧縮破壊強度を測定した。圧縮破壊強度試験方法は前述(1)の通りである。
【0103】
(4)硝化速度測定試験
各担体試料を、大過剰の脱イオン水中に室温で24時間浸漬し、十分に洗浄したものを硝化活性試験の試料として用いた。
【0104】
容積各1Lの反応槽に160mg/Lのアンモニア性窒素を含む無機塩培地及び硝化菌含有活性汚泥を満たし、各担体試料250mL(見かけ体積)をそれぞれ投入した後、アンモニア性窒素負荷が0.1kg/m/日、0.3kg/m/日、0.5kg/m/日、となるように順次培地の流入速度を変化させて連続処理試験を行った。各負荷での処理時間はそれぞれ15日間とした。試験期間を通じて培地のpHは7.0〜8.0の範囲、液温は18〜25℃の範囲に調節した。更に曝気を行うことにより培地の溶存酸素濃度を常に5mg/L以上になるようにした。0.5kg/m/日のアンモニア性窒素負荷で7日間連続処理を行った時点で担体をサンプリングした。これを50mLの無機塩培地(連続処理に用いたのと同じもの)中に10gの担体を投入し、三角フラスコ中で120rpm、8時間往復振盪した後の、培地中のアンモニア性窒素の減少量から1gの担体当たりの硝化速度を計算して硝化活性を評価した。培地のアンモニア性窒素濃度の定量はインドフェノール法(比色法)を用いて行った。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重合性不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、(d)無機粒子、並びに(e)該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物を含んでなる水性液状組成物(i)を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体。
【請求項2】
(a)重合性不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、ならびに、(f)無機粒子(d)と該無機粒子(d)と反応し得る官能基及び重合性不飽和基を分子中に有する化合物(e)とを反応せしめて得られる重合性不飽和基含有無機粒子を含んでなる水性液状組成物(ii)を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体。
【請求項3】
重合開始剤(b)が光重合開始剤及び/又はレドックス系熱重合開始剤である請求項1又は2記載の酵素又は微生物固定化用担体。
【請求項4】
無機粒子(d)がコロイダルシリカである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
【請求項5】
化合物(e)が、(メタ)アクリロイル基及びアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
【請求項6】
水性液状組成物が、さらに中空粒子を含有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。

【公開番号】特開2012−70678(P2012−70678A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218613(P2010−218613)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】