説明

酸性イオン性液状媒体中でポリエステルを合成する方法

本発明は、二酸、ジエステル、ヒドロキシ酸若しくはヒドロキシエステルとジオールとの間、又はヒドロキシ酸若しくはヒドロキシエステルの間の直接ポリエステル化反応によって10000超の平均モル質量Mwを有するポリエステル又はコポリエステルを合成する方法に関するものであり、この方法は、電荷が平衡にあるアニオン及びカチオンから成る少なくとも1種の酸性イオン性液体を含み且つ少なくとも前記カチオンがブレンステッドの定義に従う強酸であるか又はブレンステッドの定義に従う強酸である基を含むかのいずれかである反応媒体中で、大気圧で60〜150℃の温度において前記ポリエステル化反応を実施することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒及び触媒の両方としての働きをするイオン性液体又はイオン性液体の混合物を用いて温和な条件下でポリエステルを合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、環境用途のため(堆肥にできる脂肪族若しくは脂肪族−芳香族ポリエステル等)又は生物医学的用途のため(ラクチド、グリコリド、p−ジオキサノン若しくはカプロラクトンコポリマー等)に急速に開発されている、生物分解可能且つ/又は再生利用可能な多用途向け熱可塑性プラスチックである。
【0003】
ポリエステルは、3つの主要な合成ルートから得ることができる。[Fradet, A.; Tessier, M. Polyesters., In Synthetic methods in step-growth polymers. M.E. Rogers and T.E. Long, Eds. New York, J. Wiley and Sons: 17-132 (2003)]:
(i)ラクトン環の開環による重合(これは数種の特殊なモノマーに向けられる);
(ii)酸ジクロリド等の高反応性モノマーを用い又は活性剤の存在下でジカルボン酸を用いる低温(0〜120℃)における溶液重合;
(iii)有機金属触媒の存在下で数時間の、一般的に真空下における、ジオールと二酸又はジエステルとの間の高温(170〜300℃)におけるバルク(塊状)ポリエステル化。
【0004】
イオン性液体(IL)は一般的に、水の沸点より低い融点を有する有機塩と定義される[Wasserscheid, P.; Welton, T., Ionic Liquids in Synthesis, 2nd edition. Wiley-VCH, Weinheim: 2007]。これらは、塩の電気的中性を保証する化学量論的割合のアニオンとカチオンとの組合せから形成される。
【0005】
前記カチオンは一般的にバルキー(嵩高)であり、対称性が低い。特によく用いられるものは、アンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム又はホスホニウムタイプの構造のものである。イミダゾリウムは刊行物に特に頻繁に記載されたカチオンであり、その中でも特にN,N’−ジアルキルイミダゾリウムカチオンは有利な物理化学的特性、特に比較的低い融点を有する。
【0006】
前記アニオンは、単純なアニオン、例えばハライド、又は多核性アニオンである。第1世代のILの「ルイス酸」性状の多核性アニオン(Al2Cl7-、Al3Cl10-、Au2Cl7-、Fe2Cl7-等)は水に対して非常に過敏であり、周囲空気中における安定性が低いので、第2世代のILにおいてもっと安定なアニオン、例えばビス((トリフルオロメチル)スルホニル)イミダート[Tf2-]、ビス(メチルスルホニル)イミダート[(MeS)2-]、ジシアナミド [N(CN)2-]及びヘキサフルオロホスフェート(PF6-)アニオンに置き換えられた[MacFarlane, D.R. et al., Chem. Commun., 2001, 1430]。
【0007】
ILの新規の物理化学的特性は、ILを有機合成用の特上の媒体にし、合成化学用の溶媒としてのそれらの使用は最近10年ほどで急増してきている。その理由は、それらが無視できる程度の蒸気圧を有し、非常に良好な化学及び熱安定性を有し、不燃性であり、容易に再利用できるということである。それらはまた、標準的な溶媒より選択性が高く且つ迅速であることが多い転化を可能にする。多くの有機化学反応がこれらの新規の媒体中で研究されてきている:電気化学反応、求核又は求電子置換又は付加反応、エン合成反応及び酸化反応[上述のWasserscheid, P.; Welton, T., 2007]。
【0008】
イオン性液体は、(i)求核置換、(ii)酸性触媒作用下での反応又はフリーデルクラフツ反応、(iii)高温において実施される反応(転移、ディールズアルダー及びヘック反応)、並びに(iv)酸化及びエポキシ化、の4つのタイプの反応について、特に有利であることが証明されている。
【0009】
ILの大規模工業用途、例えばアルケンの二量体化のためのフランス石油研究所のダイマーゾル(Dimersol)法[Chauvin, Y., Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 3740]、エポキシブテンの異性化のためのイーストマン(Eastman)法[Holbrey, J.D.; Plechkova, N.V.; Seddon, K.R. Green Chemistry 2006, 8, 411]及び国際公開WO2003/062171号に記載されたBASF社からのバジル(Basil)リン酸化法等が開発されている。
【0010】
イオン性液体に触媒的特性を付与するためには、該イオン性液体のアニオン又はカチオンに強酸基(ブレンステッド酸)を導入するのが有利であるように直ちに思われた。文献に記載された最初のブレンステッド酸イオン性液体は、イミダゾリウム又はホスホニウムタイプのカチオン上にスルホン酸官能基を持つアルキル鎖を含むものである[Cole, A.C. et al., J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 5962]。これらのILは、フィッシャーのエステル化反応において溶媒及び触媒として用いられ、次いでエーテル調製用の第1アルコールの二量体化反応において溶媒及び触媒として用いられた。その後、ピリジニウムカチオンを含有する類似体が合成され、エステル化反応用にも用いられた[Xing, H. et al., Ind. Eng. Chem. Res. 2005, 44, 4147]。また、HSO4-又はH2PO4-タイプのアニオンを用いることによってIL中に酸性性状を導入することも可能である[国際公開WO2000/016902号;Fraga-Dubreuil, J. et al., Cat. Commun. 2002, 3, 185]。Arfanらは、硫酸水素N−アルキルピリジニウム([Me(CH2)nPy][HSO4])が様々な酸とネオペンタノールとのエステル化反応のための優れた触媒であることを示した[Arfan, A. et al., Org. Process Res. Dev. 2005, 9, 743]。このエステル化反応は、非常に良好な収率で実施され、簡単なデカンテーションによって溶媒−触媒の再利用が可能である。
【0011】
この主題について益々多くの研究が発表されているが、これらの媒体中における重合反応はそれほど多くは報告されていない。導電性ポリマーフィルム(ポリ(p−フェニレン)、ポリチオフェン又はポリピロール)をもたらして非常に特定的なカテゴリーの反応を構成する電気化学的重合以外には、ほとんどの文献はラジカル重合に関するものである[Kubisa, P., Prog. Polym. Sci., 2004, 29, 3; Kubisa, P., J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem., 2005, 43, 4675; Strehmel, V. et al., Macromolecules, 2006, 39, 923; Carmichael, A.C. et al., Chem. Commun., 2000, 22, 1237]。また、カチオン重合、アニオン重合又は配位重合反応もいくつか報告されている[Mastrorilli, P. et al., J. Mol. Cata. A: Chem., 2002, 184, 73]。これらすべての重合において、ILを用いることによって得られる利点は、触媒を容易に分離して再利用することが可能になり、潜在的に毒性のある金属触媒をポリマーから除去することが可能になり、さらに場合によってはより高い重合速度及びモル質量を得ることも可能になるということである。
【0012】
IL中での重縮合及び重付加反応を報告した研究は数少ない上、これらの研究の大部分は非常に希釈された媒体中での芳香族ポリオキサチアゾール、ポリイミド及びポリアミド等の高性能ポリマーの合成に関する[Vygodskii, Y.S. et al., Macromol. Rapid Comm. 2002, 23, 676; Mallakpour, S. et al., High Perform. Polym., 2007, 19, 427]。IL中でのある種のポリエステル化反応が近年研究され(グリコール酸コポリマーの合成)[Dali, S. et al., J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem., 2006, 44, 3025; Dali, S. et al., e-Polymers, 2007, No. 065]、次の2つのタイプの問題:(i)ポリマーのモル質量が増大した時の溶解性の問題、及び(ii)標準的なバルクポリエステル化触媒、一般的にルイス酸、塩又は金属アルコキシドの比較的劣った有効性:が明らかになった。また、Chengjie F. et al., Polymer, 2008, 49, 461-466の文献(これには非酸性イオン性液状媒体中での高温(100〜220℃)におけるオリゴマーの重縮合による脂肪族ポリエステルの合成が記載されている)及び国際公開WO2008/043837号(これには、イオン性液体がポリマー溶剤として、しかし触媒特性なしで記載されている)にも注目すべきである。
【0013】
主要なポリエステル合成方法には、揮発性の有機溶媒及び(酸の塩化物の場合に)有害な塩酸の放出をもたらす試薬を使用することという欠点や、合成されるポリエステルの性状に必ずしも適合しない高温の採用を必要とすることという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開WO2003/062171号
【特許文献2】国際公開WO2000/016902号
【特許文献3】国際公開WO2008/043837号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Fradet, A.; Tessier, M. Polyesters., In Synthetic methods in step-growth polymers. M.E. Rogers and T.E. Long, Eds. New York, J. Wiley and Sons: 17-132 (2003)
【非特許文献2】Wasserscheid, P.; Welton, T., Ionic Liquids in Synthesis, 2nd edition. Wiley-VCH, Weinheim: 2007
【非特許文献3】MacFarlane, D.R. et al., Chem. Commun., 2001, 1430
【非特許文献4】Chauvin, Y., Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 3740
【非特許文献5】Holbrey, J.D.; Plechkova, N.V.; Seddon, K.R. Green Chemistry 2006, 8, 411
【非特許文献6】Cole, A.C. et al., J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 5962
【非特許文献7】Xing, H. et al., Ind. Eng. Chem. Res. 2005, 44, 4147
【非特許文献8】Fraga-Dubreuil, J. et al., Cat. Commun. 2002, 3, 185
【非特許文献9】Arfan, A. et al., Org. Process Res. Dev. 2005, 9, 743
【非特許文献10】Kubisa, P., Prog. Polym. Sci., 2004, 29, 3
【非特許文献11】Kubisa, P., J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem., 2005, 43, 4675
【非特許文献12】Strehmel, V. et al., Macromolecules, 2006, 39, 923
【非特許文献13】Carmichael, A.C. et al., Chem. Commun., 2000, 22, 1237
【非特許文献14】Mastrorilli, P. et al., J. Mol. Cata. A: Chem., 2002, 184, 73
【非特許文献15】Vygodskii, Y.S. et al., Macromol. Rapid Comm. 2002, 23, 676
【非特許文献16】Mallakpour, S. et al., High Perform. Polym., 2007, 19, 427
【非特許文献17】Dali, S. et al., J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem., 2006, 44, 3025
【非特許文献18】Dali, S. et al., e-Polymers, 2007, No. 065
【非特許文献19】Chengjie F. et al., Polymer, 2008, 49, 461-466
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、先行技術において通常採用される温度より低い温度でしかも金属触媒を用いることなく行われるポリエステルの合成方法であって、有害な塩酸の発生を引き起こすことなく温和な条件下で迅速且つ簡単に実施される、前記ポリエステル合成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、以下に説明する本発明の主題である合成方法によって達成される。本発明者らは実際、アニオン、カチオン又はそれら両方がブレンステッド酸性状を有するイオン性液体中での直接ポリエステル化により、標準的なバルク法や溶液法によるポリエステルの調製に必要とされるものよりはるかに低い温度及びはるかに短い反応時間でも、質量平均モル質量Mw>10000のポリエステルの合成を達成できることを見出した。
【0018】
従って、本発明の1つの主題は、立体排除クロマトグラフィーにより測定される質量平均モル質量Mwが10000超であるポリエステル又はコポリエステルを、
(i)カルボン酸官能基を少なくとも2個有する化合物、カルボン酸エステル官能基を少なくとも2個有する化合物、カルボン酸官能基を少なくとも1個有し且つヒドロキシル官能基を少なくとも1個有する化合物、及びカルボン酸エステル官能基を少なくとも1個有し且つヒドロキシル官能基を少なくとも1個有する化合物から選択される少なくとも1種の第1のモノマー若しくはオオリゴマーと、ヒドロキシル官能基を少なくとも2個有する化合物から選択される少なくとも1種の第2のモノマー若しくはオリゴマーとの間のポリエステル化反応によって、又は
(ii)カルボン酸官能基を少なくとも1個有し且つヒドロキシル官能基を少なくとも1個有する化合物、及びカルボン酸エステル官能基を少なくとも1個有し且つヒドロキシル官能基を少なくとも1個有する化合物から選択される単一のモノマー若しくはオリゴマーのポリエステル化反応によって、
合成する方法であって、
前記ポリエステル化反応が金属触媒を含まない反応媒体中で大気圧又は真空下で60〜150℃の温度において実施され、前記反応媒体が、電荷が平衡にあるアニオン及びカチオンから成る少なくとも1種の酸性イオン性液体を含み、少なくとも前記カチオンがブレンステッドの意味における強酸であるか又はブレンステッドの意味における強酸である基を含むかのいずれかであることを特徴とする、前記方法にある。
【0019】
本発明に従えば、用語「ブレンステッドの意味における強酸」とは、1つ以上のプロトンH+をもたらすことができる任意の化学種を意味する。
【発明の効果】
【0020】
このような触媒特性を有する酸性イオン性液体を反応媒体として用いることにより、本発明は温和な条件下で且つ適度な温度におけるポリエステルの合成を可能にする。本発明に従う合成方法は、反応温度をかなり低くし、反応時間をかなり短縮すること、及び溶媒−触媒を容易に再利用することを可能にする。反応温度が低くなれば、例えば生物活性を有するが熱に脆い単位を有する官能性ポリエステルの直接合成も可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
より特定的には、本発明において用いられるポリエステル化反応は、(1)カルボン酸タイプの基とアルコールタイプの基との間、及び/又は(2)カルボン酸エステルタイプの基とアルコールタイプの基との間、及び/又は(3)カルボン酸タイプの基とカルボン酸エステルタイプの基との間の縮合反応である。これらの反応は、ポリエステルをもたらすことについて当業者によく知られており、それぞれ次のように書かれる:
R−COOH(基A)+HO−R'(基B)→R−COO−R'+H2O(1)
R−COOR1(基A)+HO−R'(基B)→R−COO−R'+R1OH(2)
R−COOH(基A)+R2COO−R'(基B)→R−COO−R'+R2COOH(3)
ここで、
R及びR'は互いに独立して、高モル質量のポリマー分子をもたらすことができる任意のタイプのモノマー、オリゴマー又はポリマー分子を表し、
1はアルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル又はイソブチル基であり、
2はアルキル基、好ましくはメチル又はエチル基である。
【0022】
以下の説明においては、これらの重合反応を「ポリエステル化」と称し、カルボン酸タイプの基−COOH及びエステル誘導体基−COOR1を「タイプAの基」と称し、アルコールタイプの基−OH及びエステル誘導体基−OOCR2を「タイプBの基」と称する。
【0023】
本発明に従う合成方法に従えば、ポリエステル化反応を実施するために互いに反応させる化合物は、
・タイプAの基を1個以上有する次式I:
(A)x3
に相当するタイプAxの化合物から選択されるもの;又は
・タイプBの基を1個以上有する次式II:
(B)y4
に相当するタイプBxの化合物から選択されるもの;又は
・タイプAの基を1個以上有し且つタイプBの基を1個以上有する次式III:
(A)x5(B)y
に相当するタイプAxyの化合物から選択されるもの:
である。式I、II及びIII中、
x及びyは1以上の整数であり、
基R3、R4及びR5は互いに独立して、脂肪族、環状脂肪族、芳香族又は混合基{これらは随意にヘテロ原子又は採用する合成条件下で反応性ではない基(例えばケトン、スルホン、アミド若しくはイミン基)を含有していてよい}である。
【0024】
本発明の方法に従って得られるポリエステルは、直鎖状又は分岐鎖状(随意に架橋した)構造のものである。
【0025】
当業者にはよく知られたように、互いに反応性の基(タイプAの基及びタイプBの基)の間の化学量論的比を調節することによって、高モル質量のポリマー又は反応性末端基を有するオリゴマー又は非分岐鎖状ポリマー又は架橋ポリマーを得ることができる。
【0026】
本発明に従う方法の第1の実施形態に従えば、ポリエステル化反応を実施するために互いに反応させる化合物は、タイプAの基を2個含有するもの(タイプA2の化合物)、又はタイプBの基を2個含有するもの(タイプB2の化合物)、又はタイプAの基を1個含有し且つタイプBの基を1個含有するもの(タイプABの化合物)であり、得られるポリエステル又はコポリエステルは直鎖状構造のものである。従って、本発明の条件下において、
(i)タイプA2の1種以上の化合物とタイプB2の1種以上の化合物との反応;
(ii)タイプABの1種以上の化合物の反応;又は
(iii)タイプA2の1種以上の化合物とタイプB2の1種以上の化合物及びタイプABの1種以上の化合物との反応:
が、線状構造のポリマーであって随意に交互の性状のもの、即ち同じタイプのモノマー単位群が鎖に沿って互いに規則的且つ繰返しの序列でつながったもの(例えばタイプ1−タイプ2−タイプ3−タイプ1−タイプ2−タイプ3−・・・)をもたらす。
【0027】
本発明の1つの特定的な実施形態に従えば、タイプAの基を1個だけ含有し且つタイプBの基を複数個含有する1種以上の化合物(タイプABxの化合物)を(随意にタイプBの基を複数個含有する化合物と共に)反応させることによって、又はタイプAの基を複数個含有し且つタイプBの基を1個だけ含有する1種以上の化合物(タイプAxBの化合物)を(随意にタイプAの基を複数個含有する化合物と共に)反応させることによってエステル化反応を実施して、多分岐と称される高度に分岐した構造のポリマー(ポリエステル又はコポリエステル)を生じさせる。
【0028】
本発明に従う方法の別の実施形態に従えば、不溶性又は不融性の架橋ポリマーを得るために、当業者に周知の計算に従って、複数個のタイプAの基(を含有する化合物)及び/又は複数個のタイプBの基を含有する化合物の間で媒体の組成を調節する。
【0029】
本発明に従う方法のさらに別の実施形態に従えば、反応させる化合物の内の1種以上は、タイプA及び/又はBの反応性基を有するオリゴマー、例えばポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド又はポリイミンである。得られるポリエステルは、異なるタイプのポリマーブロックを含有し、一般的にブロックコポリマーと称される。
【0030】
本発明の方法に従って用いることができる酸性カチオンイオン性液体は、式qXn+nYq-のイオン性液体から選択されるのが好ましい。ここで、Xn+は1の正電荷(n=1)又は2以上の正電荷(n>1)を有する酸性カチオンを表し、Yq-は1の負電荷(q=1)又は1より大きい負電荷(q>1)を有するアニオンを表す。
【0031】
かかるカチオンXn+の中では、特に下記の一般式X1〜X8のアンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、トリアゾリウム、モルホリニウム及びホスホニウムを挙げることができる。
【化1】

{ここで、
基R6〜R11及びR13〜R25は互いに独立して、水素原子、式−(CH2)m−SO3Hのアルキルスルホン酸基(ここで、mは1〜6の範囲の整数であり、好ましくはmは3又は4である)又は脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基若しくは混合基(これらの基は随意に1個以上のヘテロ原子を含有していてよい)を表し、
上記の式X1〜X8の各カチオンにおいて、基Rnの少なくとも1つは水素原子又は式−(CH2)m−SO3Hのアルキルスルホン酸基を表すものとし、
12は水素原子又は式−(CH2)p−SO3Hのアルキルスルホン酸基(ここで、pは1〜6の範囲の整数であり、好ましくはpは3又は4である)を表す。}
【0032】
本発明において、用語「混合基」とは、異なるタイプの部分、即ち脂肪族及び/又は環状脂肪族及び/又は芳香族から成る基を意味する。
【0033】
1の負電荷(q=1)又は1より大きい負電荷(q>1)を有するイオン性液体のアニオンYq-は、単核アニオン、例えばハライド(Y=F、Cl、Br、I);多核アニオン、例えばテトラフルオロボレート(Y=BF4)、ヘキサフルオロホスフェート(Y=PF6)、サルフェート(Y=SO4)、ハイドロジェンサルフェート(硫酸水素)(Y=HSO4)、ジハイドロジェンホスフェート(リン酸二水素)(Y=H2PO4)、ハイドロジェンホスフェート(リン酸水素)(Y=HPO4)及びホスフェート(Y=PO4)アニオン;カルボキシレートアニオン、例えばホルメート(Y=HCOO);アセテートアニオン(Y=CH3COO);トリフルオロアセテートアニオン(Y=CF3COO);プロパノエートアニオン(Y=CH3−CH2−COO);ビス((トリフルオロメチル)スルホニル)イミダートアニオン(Y=(CF3−SO2)2N) ビス(メチルスルホニル)イミダートアニオン(Y=(CH3−SO2)2N);ジシアナミダートアニオン(Y=N(CN)2);スルホネートアニオン、例えばメチルスルホネート(Y=CH3SO3)、トリフルオロメチルスルホネート(Y=CF3SO3)、ベンゼンスルホネート(Y=C65−SO3)及びp−トルエンスルホネート(Y=CH3−C64−SO3)から選択されるのが好ましい。
【0034】
本発明に従って用いることができるイオン性液体はまた、カチオンが上記の式X1〜X8のカチオンの内の1つから選択され且つアニオンYq-がプロトン性ポリ酸の酸性アニオン{例えば硫酸水素アニオン(Y=HSO4)又はリン酸二水素アニオン(Y=H2PO4)}から選択される少なくとも1種のブレンステッド酸基を含むイオン性液体から選択することもできる。
【0035】
本発明の1つの特に好ましい実施形態に従えば、前記イオン性液体は、次式(IV):
【化2】

{ここで、
mは3又は4であり、
Yは上記のアニオンYq-から選択され、
26は脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基又は混合基(これらの基は1個以上のヘテロ原子を随意に含有していてよい)である}
の3−(3−アルキル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸及び4−(3−アルキル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸から選択される。
【0036】
上記の式(IV)のイオン性液体は、次の酸:4−(3−メチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−メチル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−エチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−エチル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−プロピル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−プロピル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−ブチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−ブチル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−イソブチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−イソブチル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−ペンチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−ペンチル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−ヘキシル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−ヘキシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−オクチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−オクチル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−ドデシル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−ドデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−オクタデシル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−オクタデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−(2−エトキシエチル)−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−(2−エトキシエチル)−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−(2−メトキシエチル)−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−(2−メトキシエチル)−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−(2(2−メトキシエトキシ)エチル)−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸及び3−(3−(2(2−メトキシエトキシ)エチル)−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸:のハイドロジェンサルフェート、トリフルオロメタンスルホネート、トシレート、ジハイドロジェンホスフェート又はビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミダートから選択されるのが好ましい。
【0037】
本発明に従えば、前記酸性イオン性液体自体が反応媒体を構成することができる。この場合、反応媒体は単一の酸性イオン性液体から成ることもでき、2種以上の本発明に従って定義される酸性イオン性液体の混合物から成ることもできる。
【0038】
前記反応媒体には、本発明に従って用いることができる酸性イオン性液体に加えて、少なくとも1種の非酸性イオン性液体を含ませることもできる。かかる非酸性イオン性液体の非限定的な例としては、特に塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム及びビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド酸ブチル−3−メチルイミダゾリウムを挙げることができる。
【0039】
本発明に従えば、ポリエステル化反応を実施するために互いに反応させる化合物は、最終ポリマーの質量割合が反応媒体の総質量に対して1%〜99%の範囲、好ましくは10%〜70%の範囲となるような量で、反応媒体中に存在させる。
【0040】
反応媒体の温度は、大気圧においてほぼ80〜120℃であるのが好ましい。
【0041】
本発明の1つの別形態に従えば、ポリエステル化反応の間に反応媒体上又は中に不活性ガス流(例えば窒素又はアルゴン)を導入する。これにより、反応副生成物(水、アルコール、酸)の除去を促進し、従って高モル質量のポリエステルの生産を促進することができる。
【0042】
本発明の別の別形態に従えば、ポリエステル化反応の間に反応媒体を0.1〜100ミリバールの真空にする。これにより、反応副生成物(水、アルコール、酸)の除去を促進し、従って高モル質量のポリエステルの生産を促進することができる。
【0043】
ポリエステル化反応の時間は、1分〜48時間の範囲であることができ、採用する温度に依存し、温度が高くなれば所望のモル質量を有するポリマーを得るために必要とされる時間が短くなる。
【0044】
本発明に従う方法の好ましい実施形態に従えば、ポリエステル化反応は、約110℃において30分間実施される。
【0045】
ポリエステル化反応の終わりに、反応媒体を室温に戻し、当業者によく知られた分離技術により、例えば室温においてポリマーが沈殿する場合には濾過により、ポリマーを回収することができる。
【0046】
ポリマーが室温において反応媒体中に可溶の場合には、該ポリマーについての非溶剤、例えば水、メタノール、エタノール若しくはイソプロパノールから沈殿させることにより、又は該ポリマーについての溶剤、例えばクロロホルム又はトルエンで抽出することにより、ポリマーを回収することができる。前記酸性イオン性液体は次いで、非溶剤又は溶剤を加えた場合にはこれを蒸発させた後に、新たな反応用に用いることができる。
【0047】
以下、調製例によって本発明を例示するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【実施例】
【0048】
以下の実施例において、Mwは質量平均モル質量を意味し、立体排除クロマトグラフィー(CH2Cl2、1ミリリットル/分、Phenomenex(登録商標)カラム(Phenogel 105、104、103、500、100A)、屈折率検出、ポリスチレンキャリブレーション)によって測定した。
【0049】
例1
【0050】
12−ヒドロキシドデカン酸(12−HDA)のポリエステルの調製
【0051】
窒素入口及び出口並びに電磁式撹拌機を備えた15ミリリットルのすり合わせ式試験管中に、216mgの12−HDA(1ミリモル)及び358mg(1ミリモル)のイオン性液体(4−(3−ブチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸:[BIm4S]・HSO4)を入れた。この混合物を500ミリリットル/分の窒素流量下で110℃において30分間撹拌した。次いで10ミリリットルの2−プロパノールを加え、この反応媒体を5分間還流した。撹拌しながら冷ました後に、白色固体が得られた。濾別して真空下で乾燥させた後に、180mgの白色固体が回収された。Mw=35800;1H−NMR(CDCl3、300MHz、ref.δ(CHCl3)=7.26ppm):δ=4.05(2H、t);2.34(2H、t);2.28(2H、t);1.60(4H,m);1.27ppm(14H、m)。
【0052】
例2
【0053】
[BIm4S]・Tf2N中での12−ヒドロキシドデカン酸(12−HDA)のポリエステルの調製
【0054】
窒素入口及び出口並びに電磁式撹拌機を備えた15ミリリットルのすり合わせ式試験管中に、216mgの12−HDA(1ミリモル)及び541mg(1ミリモル)の4−(3−ブチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸ビス((トリフルオロメチル)スルホニル)イミダート[BIm4S]・Tf2Nを入れた。この混合物を10ミリバールの真空下で110℃において10分間撹拌した。次いで10ミリリットルの2−プロパノールを加え、この反応媒体を5分間還流した。撹拌しながら冷ました後に、白色固体が得られた。濾別して真空下で乾燥させた後に、185mgの白色固体が回収された。Mw=31200;1H−NMR(CDCl3、300MHz、ref.δ(CHCl3)=7.26ppm):δ=4.05(2H、t);2.34(2H、t);2.28(2H、t);1.60(4H、m);1.27ppm(14H、m)。
【0055】
例3
【0056】
[BIm4S]・HSO4−[BMIm]・Tf2N混合物中での12−ヒドロキシドデカン酸(12−HDA)のポリエステルの調製
【0057】
窒素入口及び出口並びに電磁式撹拌機を備えた15ミリリットルのすり合わせ式試験管中に、216mgの12−HDA(1ミリモル)、398mgの[BMIm]・Tf2N(0.95ミリモル)及び18mgの[BIm4S]・HSO4(0.05ミリモル)を入れた。この混合物を10ミリバールの真空下で110℃において2時間撹拌した。次いで10ミリリットルの2−プロパノールを加え、この反応媒体を5分間還流した。撹拌しながら冷ました後に、白色固体が得られた。濾別して真空下で乾燥させた後に、164mgの白色固体が回収された。Mw=53300;1H−NMR(CDCl3、300MHz、ref.δ(CHCl3)=7.26ppm):δ=4.05(2H、t);2.34(2H、t);2.28(2H、t);1.60(4H、m);1.27ppm(14H、m)。
【0058】
例4
【0059】
L−乳酸ポリエステルの調製
【0060】
窒素入口及び出口並びに電磁式撹拌機を備えたすり合わせ式試験管中に、水中の90%溶液としての300mgのL−乳酸(前もって真空下で100℃において4時間脱水してオリゴマー化させたもの)及び300mgのBIm4S・HSO4を入れた。この混合物を500ミリリットル/分の窒素流量下で110℃において4時間撹拌した。この反応媒体を10ミリリットルのクロロホルムで3回抽出した。クロロホルムを蒸発させた後に、260mgの白色固体が得られた。Mw=38200。1H−NMR(DMSO−d6、300MHz、ref.δ(DMSO)=2.50ppm):δ=5.19(1H、q);1.46ppm(3H、d)。
【0061】
例5
【0062】
12−ヒドロキシドデカン酸(12−HDA)とグリコール酸(GA)とのコポリエステルの調製
【0063】
窒素入口及び出口並びに電磁式撹拌機を備えたすり合わせ式試験管中に、303mgの12−HDA(1.4ミリモル;70モル%)、46mgのGA(0.6ミリモル;30モル%)及び719mg(2ミリモル)BIm4S・HSO4を入れた。この混合物を500ミリリットル/分の窒素流量下で110℃において2時間撹拌した。次いで10ミリリットルの2−プロパノールを加え、この反応媒体を10分間還流した。撹拌しながら冷ました後に、得られた白色沈殿を濾別し、真空下で乾燥させた。240mgの白色固体が回収された。Mw=15500;1H−NMR(CDCl3、300MHz、ref.δ(CHCl3)=7.26ppm):δ=4.82(2H、s);4.72(2H、s);4.68(2H、s);4.59(2H、s);4.16(2H、t);4.05(2H,t);2.43(2H、t);2.30(2H、t);1.64(4H、t);1.37ppm(14H、t)。
【0064】
例6
【0065】
オリゴマーの後ポリエステル化によるコハク酸と1,12−ドデカンジオールとのポリエステルの調製
【0066】
窒素入口及び出口並びに二面クロスヘッドタイプの電磁式撹拌機を備えたすり合わせ式試験管中に、311mgのオリゴ(ドデカメチレンスクシネート)(Mw=2000)及び622mgの[BIm4S]・HSO4 を入れた。この混合物を、500ミリリットル/分の窒素流量下で110℃において2時間撹拌した。次いで10ミリリットルの2−プロパノールを加え、この反応媒体を85℃に5分間加熱した。撹拌しながら冷ました後に、白色固体が得られた。濾別して真空下で乾燥させた後に、233mgの白色固体が回収された。Mw=25800;1H−NMR(CDCl3、300MHz、ref.δ(CHCl3)=7.26ppm):δ=4.07(4H、t);2.61(4H、s);1.61(8H、m);1.26ppm(16H、m)。
【0067】
例7
【0068】
オリゴマーの後ポリエステル化によるドデカン二酸と1,12−ドデカンジオールとのポリエステルの調製
【0069】
窒素入口及び出口並びに二面クロスヘッドタイプの電磁式撹拌機を備えたすり合わせ式試験管中に、300mgのオリゴ(ドデカメチレンドデカノエート)(Mw=1800)及び600mgのBIm4S・HSO4を入れた。この混合物を、500ミリリットル/分の窒素流量下で110℃において2時間撹拌した。次いで10ミリリットルの2−プロパノールを加え、この反応媒体を85℃に5分間加熱した。撹拌しながら冷ました後に、白色固体が得られた。濾別して真空下で乾燥させた後に、240mgの白色固体が回収された。Mw=21600;1H−NMR(CDCl3、300MHz、ref.δ(CHCl3)=7.26ppm):δ=4.04(4H、t);2.28(4H、t);1.60(8H、m);1.27ppm(28H、m)。
【0070】
例8
【0071】
ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートとドデカン二酸とのポリエステルの調製
【0072】
窒素入口及び出口並びに二面クロスヘッドタイプの電磁式撹拌機を備えたすり合わせ式試験管中に、127mgのビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(0.5ミリモル)、115mgのドデカン二酸(0.5ミリモル)及び358mgの[BIm4S]・HSO4 (1ミリモル)を入れた。この混合物を、500ミリリットル/分の窒素流量下で110℃において1時間撹拌した。次いで10ミリリットルの2−プロパノールを加え、この反応媒体を85℃に5分間加熱した。撹拌しながら冷ました後に、白色固体が得られた。濾別して真空下で乾燥させた後に、204mgの白色固体が回収された。Mw=28300;1H−NMR(CDCl3、300MHz、ref.δ(CHCl3)=7.26ppm):δ=8.10(4H)、4.70−4.26(8H、m)、2.32(4H、t);1.60(4H、m);1.24ppm(12H、m)。
【0073】
例9
【0074】
オリゴマーの後ポリエステル化によるビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートとドデカン二酸とのポリエステルの調製
【0075】
窒素入口及び出口並びに二面クロスヘッドタイプの電磁式撹拌機を備えたすり合わせ式試験管中に、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートとドデカン二酸(1/1、モル/モル)との間の反応によって得られた300mgのオリゴマー(Mw=680)及び600mgの[BIm4S]・HSO4を入れた。この混合物を500ミリリットル/分の窒素流量下で110℃において1時間撹拌した。10ミリリットルの2−プロパノールを加え、次いでこの反応媒体を85℃に5分間加熱した。撹拌しながら冷ました後に、白色固体が得られた。濾別して真空下で乾燥させた後に、265mgの白色固体が回収された。Mw=25200;1H−NMR(CDCl3、300MHz、ref.δ(CHCl3)=7.26ppm):δ=7.26ppm):δ=8.10(4H)、4.70−4.26(8H、m)、2.32(4H、t);1.60(4H、m);1.24ppm(12H、m)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)カルボン酸官能基を少なくとも2個有する化合物、カルボン酸エステル官能基を少なくとも2個有する化合物、カルボン酸官能基を少なくとも1個有し且つヒドロキシル官能基を少なくとも1個有する化合物、及びカルボン酸エステル官能基を少なくとも1個有し且つヒドロキシル官能基を少なくとも1個有する化合物から選択される少なくとも1種の第1のモノマー若しくはオオリゴマーと、ヒドロキシル官能基を少なくとも2個有する化合物から選択される少なくとも1種の第2のモノマー若しくはオオリゴマーとの間のポリエステル化反応によって、又は
(ii)カルボン酸官能基を少なくとも1個有し且つヒドロキシル官能基を少なくとも1個有する化合物、及びカルボン酸エステル官能基を少なくとも1個有し且つヒドロキシル官能基を少なくとも1個有する化合物から選択される単一のモノマー若しくはオリゴマーのポリエステル化反応によって、
立体排除クロマトグラフィーにより測定される質量平均モル質量Mwが10000超であるポリエステル又はコポリエステルを合成するための方法であって、
前記ポリエステル化反応を金属触媒を含まない反応媒体中で大気圧又は真空下で60〜150℃の温度において実施し、前記反応媒体が、電荷が平衡にあるアニオン及びカチオンから構成される少なくとも1種の酸性イオン性液体を含み、少なくとも前記カチオンがブレンステッドの意味における強酸であるか又はブレンステッドの意味における強酸である基を含むかのいずれかであることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記ポリエステル化反応が、
R−COOH(基A)+HO−R'(基B)→R−COO−R'+H2O(1)
R−COOR1(基A)+HO−R'(基B)→R−COO−R'+R1OH(2)
R−COOH(基A)+R2COO−R'(基B)→R−COO−R'+R2COOH(3)
(ここで、
R及びR'は互いに独立して、高モル質量のポリマー分子をもたらすことができる任意のタイプのモノマー、オリゴマー又はポリマー分子を表し、
1はアルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル又はイソブチル基であり、
2はアルキル基、好ましくはメチル又はエチル基である)
と書かれる(1)カルボン酸タイプの基とアルコールタイプの基との間、及び/又は(2)カルボン酸エステルタイプの基とアルコールタイプの基との間、及び/又は(3)カルボン酸タイプの基とカルボン酸エステルタイプの基との間の縮合反応であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記のポリエステル化反応を実施するために互いに反応させる化合物が、
・タイプAの基を1個以上有する次式I:
(A)x3
に相当するタイプAxの化合物から選択されるもの;又は
・タイプBの基を1個以上有する次式II:
(B)y4
に相当するタイプBxの化合物から選択されるもの;又は
・タイプAの基を1個以上有し且つタイプBの基を1個以上有する次式III:
(A)x5(B)y
に相当するタイプAxyの化合物から選択されるもの:
{これら式I、II及びIII中、
x及びyは1以上の整数であり、
基R3、R4及びR5は互いに独立して、脂肪族、環状脂肪族、芳香族又は混合基であり、これらは随意にヘテロ原子又は採用する合成条件下で反応性ではない基(例えばケトン、スルホン、アミド若しくはイミン基)を含有していてよい}
であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記のポリエステル化反応を実施するために互いに反応させる化合物が、タイプAの基を2個含有するもの(タイプA2の化合物)、又はタイプBの基を2個含有するもの(タイプB2の化合物)、又はタイプAの基を1個含有し且つタイプBの基を1個含有するもの(タイプABの化合物)であり、得られるポリエステル又はコポリエステルが直鎖状構造のものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記エステル化反応を、タイプAの基を1個だけ含有し且つタイプBの基を複数個含有する1種以上の化合物(タイプABxの化合物)を反応させることによって、又はタイプAの基を複数個含有し且つタイプBの基を1個だけ含有する1種以上の化合物(タイプAxBの化合物)を反応させることによって実施し、そして得られるポリマー(ポリエステル又はコポリエステル)が高度に分岐した構造のものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
反応させる化合物の内の1種以上がタイプA及び/又はBの反応性基を有するオリゴマーであること、並びに得られるポリエステルが異なるタイプのポリマーブロックを含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記イオン性液体が式qXn+nYq-
[ここで、
n+は1の正電荷(n=1)又は2以上の正電荷(n>1)を有する酸性カチオンを表し、
q-は1の負電荷(q=1)又は1より大きい負電荷(q>1)を有するアニオンを表し、
前記カチオンXn+は、次の一般式X1〜X8:
【化1】

{ここで、
基R6〜R11及びR13〜R25は互いに独立して、水素原子、式−(CH2)m−SO3Hのアルキルスルホン酸基(ここで、mは1〜6の範囲の整数である)又は脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基若しくは混合基(これらの基は随意に1個以上のヘテロ原子を含有していてよい)を表し、
上記の式X1〜X8の各カチオンにおいて、基Rnの少なくとも1つは水素原子又は式−(CH2)m−SO3Hのアルキルスルホン酸基を表すものとし、
12は水素原子又は式−(CH2)p−SO3Hのアルキルスルホン酸基(ここで、pは1〜6の範囲の整数である)を表す}
のアンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、トリアゾリウム、モルホリニウム及びホスホニウムから選択される]
のイオン性液体から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記アニオンYq-がハライド;テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、サルフェート、ハイドロジェンサルフェート、ジハイドロジェンホスフェート、ハイドロジェンホスフェート及びホスフェートアニオン;カルボキシレートアニオン;アセテートアニオン;トリフルオロアセテートアニオン;プロパノエートアニオン;ビス((トリフルオロメチル)スルホニル)イミダートアニオン;ビス(メチルスルホニル)イミダートアニオン;ジシアナミダートアニオン及びスルホネートアニオンから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アニオンYq-がプロトン性ポリ酸の酸性アニオンから選択される少なくとも1種のブレンステッド酸基を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記イオン性液体が次式(IV):

(ここで、
mは3又は4であり、
Yは請求項8又は9に記載のアニオンYq-から選択され、
26は脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基又は混合基(これらの基は1個以上のヘテロ原子を随意に含有していてよい)
の3−(3−アルキル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸及び4−(3−アルキル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸から選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記の式(IV)のイオン性液体が次の酸:4−(3−メチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−メチル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−エチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−エチル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−プロピル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−プロピル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−ブチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−ブチル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−イソブチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−イソブチル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−ペンチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−ペンチル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−ヘキシル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−ヘキシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−オクチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−オクチル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−ドデシル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−ドデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−オクタデシル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−オクタデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−(2−エトキシエチル)−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−(2−エトキシエチル)−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−(2−メトキシエチル)−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸、3−(3−(2−メトキシエチル)−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸、4−(3−(2(2−メトキシエトキシ)エチル)−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸及び3−(3−(2(2−メトキシエトキシ)エチル)−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸:のハイドロジェンサルフェート、トリフルオロメタンスルホネート、トシレート、ジハイドロジェンホスフェート又はビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミダートから選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応媒体が塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム及びビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド酸ブチル−3−メチルイミダゾリウムから選択される少なくとも1種の非酸性イオン性液体をも含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記反応媒体の温度を大気圧において80〜120℃にすることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ポリエステル化反応を110℃において30分間実施することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ポリエステル化反応の間、反応媒体上又は中に不活性ガス流を導入することを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記ポリエステル化反応の間、反応媒体を0.1〜100ミリバールの真空にすることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2013−501086(P2013−501086A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522229(P2012−522229)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051605
【国際公開番号】WO2011/012814
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(507018539)ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー (パリ6) (10)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PIERRE ET MARIE CURIE (PARIS 6)
【出願人】(503261111)ユニヴェルシテ・ドゥ・レンヌ・1 (9)
【Fターム(参考)】